Adelaide Town Hall
Gavin Bryars
GB Records
2016-09-02



イギリスの作曲家ギャヴィン・ブライアーズがアデレード交響楽団を指揮して、自作、スケンプトン、ペルトと、比較的聞きやすい管弦楽作品を録音したCD。ライブ録音されており、各曲の間には拍手が入っている。

ブライアーズは、1943年、イギリス、ヨークシャー生まれの作曲家。コントラバス奏者としてジャズを演奏していたが、同時にジョン・ケージ、アール・ブラウン、モートン・フェルドマンなど、ミニマル音楽の作曲家に作曲を学んでいる。
 
1曲目は、ハワード・スケンプトンの「レント」。スケンプトンは、1947年、イギリス、チェスター生まれの作曲家。アコーディオン奏者としても知られており、シリアスな管弦楽曲のほかに、子供のための音楽教育などの活動も行つている。
 
「レント」はとても抒情的な管弦楽曲。悲劇的でロマンチックな映画音楽のようだ。私の頭の中には、薄暗く、静かに霧が立ち込める湖に美少女が作んでいるようなシーンが思い浮かんだ。弦楽合奏曲かと思っていたら、途中から管楽器が入ってきた。よく聴くと抒情的なメロディが形や規模を変えて繰り返されているのが分かる。ロマン派の管弦楽曲のように音楽が展開して行かないところが、却って現代的なのかもしれない。

2曲目が指揮をしているブライアーの作品。「ザ・ポラツィ・フラグメンツ」の意味はよく分からない。ポラツィは固有名詞か?スケンプトンよりは不穏な感じがする。この曲も調性の枠内で書かれていて、とてもロマンチック。マーラーかシェーンベルクあたりのアダージョを肥大化させたような音楽になっている。雰囲気は暗く、濃厚な甘さが感じられるが、最後は清らかな感じで終わった。
 
3曲目は、アルヴォ・ペルト。「もしバッハが養蜂家だったら」という変わった題名がついている。曲も変わっていて、打楽器やピアノが一定のリズムを刻みながら、オーケストラいろんな音響でそれを取り巻いている。ペルトには珍しく原色的な色彩感があり、音楽の押し出しが強い。少々グロテスクな感じがするが、悲しみの色も濃い音楽だった。

4,5曲目は再び指揮者のブライヤーズの曲。「アンネリアのアリア」は題名通りソプラノによるアリアが入っている。歌詞は分からないが、英語で歌われていた。5曲目「エピローグ」はテノールの歌が入っていて、似たような暗くゆったりとした曲調のロマンチックな曲だ。主人公が過去を回想して涙を流す場面に使われそうな音楽だった。
 
01 ハワード・スケンプトン Howard Skempton―Lento
02 ギャヴィン・ブライアーズ Gavin Bryars―The Porazzi Fragment
03 アルヴォ・ペルト Arvo Part―If Bach Had Been A Beekeeper
04 ギャヴィン・ブライアーズ Gavin Bryars―Ennelina's Aria From'G'
05 ギャヴィン・ブライアーズ Gavin Bryars―Epilogue From'G'
指揮:ギャヴィン・ブライアーズ
管弦楽:アデレード交響楽団
録音:アデレード・タウン・ホール

 Gavin Bryars
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