2020年07月

P1190759

新潟工科大学の大学生と出雲崎のプロジェクトを考えています。

出雲崎と言えば、


『あなた 追って 出雲崎  悲しみの日本海~ ♪』


というフレーズが思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
黒人演歌歌手ジェロのデビュー曲「海雪」のサビです。

10年ほど前になりますが、大変に売れて、様々な賞を受賞しました。

ジェロは、この歌で紅白歌合戦にも出ています。

今思えば、ベタな歌詞の歌が大ヒットしたのものだなと思いますが、作詞は、ビックネームの秋元康さんです。

さらに、史上初の黒人演歌歌手という企画も巧妙でした。

この、大ヒット曲「海雪」には、面白い逸話が残っています。

秋元康さんが作詞を手掛けた時点で、秋元さんは出雲崎を訪れておらず、

ジェロも曲の公開当時は冬の日本海すら見たことが無かったためカリフォルニアの海を

イメージしつつ歌ったというのです。

つまり、ステレオタイプな日本海ならばどこでもよい歌と言ってしまってよさそうですが、

のちに、ジェロは出雲崎町にて「ご当地コンサート」を開いたそうです。

紅白に出場するほど大ヒットしたために、町おこしで地元に呼ばれ、

「海雪」もご当地ソングに追認されたのかもしれません。

出雲崎のアイデンティティについて考えると複雑な気分です。


さらに、時を350年ほどさかのぼると、江戸時代に松尾芭蕉が、

「荒波や佐渡に横とう天の川」を出雲崎で詠んだとされています。

この俳句も出雲崎の風景を写実的に詠んだものかどうか定かではないようです。

出雲崎には、元禄二年七月四日に訪れており、この句は、元禄二年七月七日に、直江津で披露されました。

『荒波や~』と始まりますが、天候の記録を見るとそれほど波が高かったのか疑問です。

少なくとも北西の風が吹きつける冬ではありません。

以前から作ってあった句を直江津の句会で披露したのではないかという説もあるようです。

350年以上の時を経て、二人のビックネームに虚構のイメージでうたわれていたとすれば、

背後にある構造が根深いようです。

もちろん、出雲崎が特別であるとは思っていません。





写真 (2)


作品例に、住宅を一軒追加いたしました。
※リンク先HP作品例

昨年竣工した住宅で、コロナ禍以前に計画され竣工したのですが、コロナ禍のテレワークやステイホームの期間にその真価を発揮しました。

コロナウイルスは、住宅の設計思想に大きな変化を与えそうです。

現在の住宅の多くは、労働者住宅をその起源とするものとされ、職場とは別の家族の生活の場を作る事を大きな目的として進化してきました。

仕事と、家庭生活は水と油のように分かれているものとされ、家に書斎という仕事スペースがあっても、閉じられた小さな部屋として孤立していました。

近年、テレワークが求められるようになると、書斎を大きくする必要があるという意見や、書斎スペースを設ける努力が語られるようになりました。


しかし、近年ではオフィス環境が、多様化して働く環境が自由で流動的なイメージに進化していただけに、テレワーク化したら書斎に閉じこもるというのは、働く環境が後退したイメージを持ちます。

共働きでテレワーク化したら、ストレスが溜まり、どちらかが近くのコワーキングスペースへと避難するだろうとも言われます。



労働者住宅を起源とする現在の多くの住宅の空間や間取りの定石に、仕事の場をプラスアルファするのは、限界があるような気がします。

住居への価値観は保守的であり、なかなか変わらないとも予想されていますが、労働者住宅を起源とするのではなく、多くが職住近接型だった町家などを起源として進化した住宅を考えていく事が、アフターコロナの建築の重要なテーマになるような気がします。

求められる住宅像は、家庭生活という一つの焦点を持った場ではなく、仕事というもう一つの焦点を持った場が重ねあわされた住宅であり、外の社会とつながる場として性格を色濃く持ち合わせた場になるように思います。


また、コロナ禍を機に、換気の重要性が語られています

技術的な問題で終わらせるのではなく、デザイン思想にまで広げて考えてみたいと思います。
自然換気についての考えを、地域の風の恩恵を取り込むところまで拡大すると、生き物が、自然の恩恵の集まるところに集まるように、自然の恩恵と共に生きる幸せな感覚に目覚めます。

この住宅では、海陸風までを視野に入れ、実用を超えた領域にまで思いを馳せています。
自然環境を人間が利用するものであると考える「人間中心主義」を脱して、自然を尊び、自然と共生する喜びを感じることができる場の構築を目指しています。

とても風通しがよく、冷暖房のいらない中間期の恩恵を十分に得る事ができる実用的な住宅となりました。


ナカノデザイン一級建築士事務所(新潟上越)













↑このページのトップヘ