第三十七回:急に下痢、嘔吐があった時の対応(その2)
(知らない間にかくれ脱水)
受診する、治療するは診断だけではなく脱水症対策です
受診する、診断するそして食事療法、薬物療法です
1.受診する
(1) 時間的な経過観察をしっかり報告しましょう。
(2) 便をオムツごと持参しましょう。「血便が出ました」:血便でない事もあり、程度がわかります。感染がこわいときは便の状態を報告しましょう
(3) 最近は携帯、スマホに記録し、「こんなんです!」と医師に画面を見てもらう、報告される事がある。持参した便を直接目視した方がわかりやすいが、感染型特に冬の下痢ノロの時はちょっと不安。しかしながら即検査し、すぐ結果を出すこともできます
(4) 診断後に薬の治療、ケアの仕方、何に注意するかが指示される。自宅での保護者の役割は大きい。又は預かる施設の役割でもある
(5) 状態が悪い時は点滴、入院も考えられますが、その前にできる事をやりましょう。
2.薬物療法、対症療法
(1) 早急に吐き気止め、下痢止めは使用しない方よい、抗生物質は使わない方がよい等々の意見もある。全身状態、状況により医師に判断していただく。
(2) 薬
経口薬
坐薬
注射
補液・水分補給
(3) 嘔吐の場合:
〈1〉吐き気止めを使用しその後1時間~2時間後位に経口補液を与える
2時間ぐらいは消化器に負担をかけないため、少量頻回から始めて、脱水の予防、
治療を開始する。
〈2〉少量とは1回、小さじ1杯5cc、中さじⅠ杯10cc位から
5分~10分~20分間隔で増量する。
増量とは同量で行くか、一回に2倍ずつ増量するか、2~3回毎に増量するかは
かかりつけ医に相談しましょう。
一気飲み、あせって増やし過ぎる時には再嘔吐することがあるので、注意しましょう
(個人差、全身状態によるが少量頻回が原則)
そして基礎疾患の治療です
(4) 下痢の場合:
ⅰ、整腸剤、止痢剤はすぐに使用せず、まず脱水症の対応をする。
ⅱ、整腸剤、止痢剤は全身状態、疾病により使用することがある
ⅲ、脱水の兆候があれば嘔吐の場合と同様2)③で対応する
ⅳ、そして基礎疾患によるのでかかりつけ医に相談しましょう
(5) 食べていいでしょうか?
普通食の補給は症状が軽減してから、元気さが出てからですので3~4時間ではありませんが、症状改善と共に水分補給、補液療法でならし、消化に良い物で慣らしそれ以後栄養補給、普通食を考えましょう。(当院ではその様にすすめておりますが、かかりつけ医に相談してみましょう)
3.食べる事の注意
(1) 離乳食は一段階前の内容に戻してください
(しかし離乳食のすすめ方が教科書的でないことが最近多いので、離乳食の内容をかかりつけ医に相談、指示してもらいましょう)
(2) 一般的に初期治療として
ⅰ、脂質の多い物は避けましょう
ⅱ、刺激の多い物は避けましょう
ⅲ、甘い物は避けましょう
ⅳ、発酵し易いもの、イモ類は避けましょう
ⅴ、かんきつ類の果物、野菜は減量しましょう
ⅵ、少量頻回ですすめれば牛乳はそのままでも可です
ⅵ、消化の良い炭水化物をすすめましょう(でんぷん類、オカユ、オモユはよい)
ⅶ、脂肪の少ない、軽い蛋白質を少しずつ与えましょう
ⅷ、母乳は継続、ミルクは薄くしなくてもよいです
ⅸ)何もなければ味噌汁(塩分含有)の上澄みでも可です
(3) 脱水状態の改善と共に食事の内容、量はすみやかに増やしていきましょう。
「とりあえず絶食しましょう」はやめましょう。
4.補液・水分補給は
(1)まず脱水しているかどうかですが、その程度を判断することが難しい
「普段と違うな」という感が必要です=おさらいします
脱水の可能性のある症状、状態があれば受診しましょう!!
ⅰ)病気の診断だけではなく、嘔吐、下痢、発熱があった時は要注意
ⅱ)口唇、口腔がカラカラ、皮膚も渇いている時
ⅲ)涙もよだれも出ない時
ⅳ)尿が少ない、尿が出ない、おむつが濡れない時
ⅴ)ぐったりしている、元気がない、遊ばない、笑わない(普段は笑う)
手足に力が入らずダランとしている時
ⅵ)食欲がない、食べない、飲まない時
ⅶ)間欠的に意味なくギャーギャー泣く、元気なく泣く、お腹が痛い様な動作の時
ⅷ)軽度の脱水は体重の1~2%減であるが、乳幼児では気が付きにくい。3%以上になると上記のような症状が確かなものとなってきますので見逃さない様にしましょう。
(3)一般的には健康な時の水分補給は水でも可です。しかしがぶ飲みは水分過剰になりますので要注意。少量頻回、少し多めでトライしましょう
(4) 初期の水分補給はイオンサプライと称する飲料水でも可です
(5) 症状が伴う初期の水不足、軽度の下痢、嘔吐等の脱水の時には一般の成人用イオン水、スポーツドリンクは糖分が多いため、不向きです。乳児用イオン飲料はよい。糖分の高いジュース、お茶は避けましょう。そして経口補液療法を試みましょう
(6)経口補液療法(ORT)
ⅰ)軽度脱水と認めたら始めましょう
ⅱ)現在の処「OS1」(200cc、500cc)は少々値が張るが、何日も使用する物ではないので、軽度脱水症から使用しましょう。(電解質と糖分と水分のバランスがよい)
当院でも状況によりすすめております。
自分でつくるのであれば「湯ざまし1L+砂糖40g+食塩3g」+果汁を搾るも可。
ⅲ)少量、頻回、増量の方法は2)③に記載。してあります
(7)経口補水液は
*少量頻回同量投与の一例
(南武嗣 :外来小児科、2008:11(3):328~330) 大塚製薬パンフレットより
はじめの1時間に飲ませる目安 |
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1回の分量 |
1時間の量 |
体重7㎏以下 |
3分毎にスプーン3杯ずつ |
70~80ml |
体重10Kg迄 |
5分ごとに10ml |
120ml |
体重15㎏迄 |
5分ごとに15ml |
180ml |
体重20㎏迄 |
5分ごとに20ml |
240ml |
*軽度~中等症の場合:継続して投与し3~4時間かけて50~100ml/㎏を飲ませる
*4時間以降は乳児30~50ml/㎏/1日。幼児300~600ml/日。学童~成人500~1000ml/日
上記1日当たり目安量を参考に脱水状態を合わせて適宜増減してお飲み下さい
(大塚製薬パンフレット、一部大塚製薬MMWR資料、参照)
いわゆる脱水状態を早く把握して、早く対応しましょう!!!
そして本格的なケア、キュアです