2007年11月27日

赤ちゃんが言語を獲得するまで その6 〜謎めいたノドですが・・〜

さて、大事な問題は、です。
ヒトの赤ちゃんというのは、実はまだチンパンジータイプのノドなんだってことでした。
これまた次の図を見てもらえば分かると思いますが、軟口蓋の終わり、つまりノドチンコがすいぶん下まで垂れ下がっているわけです。
これでは空気を口から外へ送り出すことはまず無理です。

新生児と大人のノド

また、小さな口のわりに舌がとても大きいんですね。
ヒトの場合、お母さんのお腹から出てきた段階で、すでに舌はアゴや口に比べてはるかに大人に近い大きさまで発育をとげているんです。

赤ちゃんが口を開けると、舌はあふれんばかりに口の中を占めていて、およそ大人のように、舌を前後左右に操って動かしてみせる余地が生まれようがありません。
それどころか、空気を口から吐き出すためのスペースすら見い出すのが難しいように見えます。
事実、生まれたばかりの赤ちゃんは、口を使っての呼吸をほとんどしていません。

この赤ちゃんのチンパンジータイプのノドが、なんと!生後3ヶ月すぎくらいにかなり唐突に変化をし始めるんです。
下アゴやノドを包んでいる骨格が短期間に急速に成長して、気管の先端部が沈んでいきます。
そして軟口蓋とのあいだで、咽頭が拡がってくる。

また、舌は大人並みですからあまり発育をとげないので、発達する口腔のスペースとのバランスは大人のものに近くなっていきます。
舌は大きくなった口腔の中でゆとりを持って運動するようになって、そのすきまに歯が生えてくる。
このノドの劇的で急速な変化のあとで、ようやく赤ちゃんは口を使って共鳴した音をかなりの音量で出せることが、物理的に保証されるようになるわけです。

まぁしかし一応言っておきますと、この生後3ヶ月すぎくらいのときに、ようやくチンパンジーから進化をとげる・・・ってわけではないですよ。 (^_^;)


誕生の当初から、ヒトの赤ちゃんの脊椎は頭骨と直交していて、直立二足歩行を支えるその形態的な特徴は、チンパンジーたちのそれとはそもそもからして明らかに違っているわけです。
ところがそれにもかかわらず、頭骨と脊椎の挾ざまに位置するノドの構造は、最初の頃はチンパンジーと似たような状況にあるわけです。
面白いですよね。

もう一度、「その5」の最初の拡大図を見てください。
僕らが食べ物を飲み下すと、気管と食道という二つの穴が待ち受けています。
うまく背中側の穴に落ち込めば問題はありませんが、腹側の気管の穴にいってしまうと大変なことになっちゃいますね。
ホントに、なんでわざわざこんな構造にしたんでしょうね。

まぁそうなってるんだからしょうがありません。
万が一、気管の穴に呑み下したものが入っちゃいそうになったら、さてどうするか。
入っちゃいそうになるやいなや、肺から空気をものすごい勢いで送り出して「咳き込む」わけです。

咳き込んで異物を取り除こうとするとき、それが成功するか否かはひとえに肺から送り出される空気圧の強さにかかっています。
肺活量が少ないほど、失敗して窒息してしまう危険性が高くなるんですね。

もしも、赤ちゃんのノドが最初から大人並みだったらどうなるでしょう。
かなりの件数の窒息死事故が、日常茶飯事となっちゃうんじゃないでしょうか。
とにもかくにも肺活量はとてつもなく少ないし、気管の長さも短いですから喉頭からすぐに肺に到達してしまいます。
ミルクが呼吸器に流れ込まずに3ヶ月をおわることの方が、めずらしいくらいになってしまうでしょう。

けれどもチンパンジータイプのノドならば、そういう心配は一切無用ですね。
次の図を見てください。

新生児のノド後ろの低いところで食道の先端が開いていて、前の高い位置に気管の先が口を開いています。
しかも気管の先は、竹を刀でスッパリと斜めに切ったような形になっていて、切り口を背中側に向けていますね。

位置が高くこういう形になっているので、食べ物は、というかミルクは気管には入りません。
こっちの方が機能的ですよね、どう見ても。(^_^;)

ただしこういうノドの構造の場合、食べたものは喉頭の前壁、斜めに切った竹の前側にぶつかってしまうことになります。
そして食べ物は、喉頭の両側を通る左右の道に分かれて、食道で再び合流することになる。

まぁほとんどの動物は、そうやって食べているわけです。


*前後のエントリーは左上の「過去の記事とシリーズ」からとべます♪

nagayanonasu at 15:24│Comments(4)TrackBack(0)clip!ヒトという動物 

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この記事へのコメント

1. Posted by あゆ   2007年11月27日 16:45
よくできているもんですね。

赤ちゃん的発音になってしまうのを「舌足らず」と言いますが 実は「舌大きすぎ」だったんでしょうかね。
2. Posted by アキラ@あゆさん   2007年11月27日 22:39
・あゆさん
>実は「舌大きすぎ」だったんでしょうかね。
<
あ、そっか! なるほど。そうですよ。

それを思うと、足らないのは口蓋の大きさの方ですね、きっと。
「舌足らず」じゃなくて「アゴ足らず」だったんだ♪
お〜、面白い。
3. Posted by ぺこぽこ   2007年11月27日 23:44
ふうーむ?
面白いですねぇ。

と、言うことは3ヶ月以前と以降では、泣き方も変わってくる、と言うことですね。
そう言えば、新生児の泣き方と、赤子は違う気がします。。。

ん?そういえば『首がすわる』って3ヶ月位じゃなかったでしたっけ?
4. Posted by アキラ@ぺこぽこさん   2007年11月28日 10:35
・ぺこぽこさん
はい、泣き方も鼻へ抜けるか口へ抜けるか、変わってくるということです。

「首がすわる」・・一般的には大体3ヶ月くらいですよね。
ただけっこう個人差があるので、このノドの変化とリンクしてるかどうかはビミョーですねぇ。

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