陽だまりの図書館

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 子どもの人工友だち(AF)としてAIを搭載したアンドロイドのクララ。多くのAFたちが並ぶ店の中、最新の機種ではなかったが、ショーウィンドウから見える人々を見つめ、来たる日のために人間観察に余念のないクララは、店長からも一目置かれた存在だった。
 ある日、少女ジョジーが彼女の前に現れる。「あなたこそ、探していたAF」と言われ、心を動かされるクララは、期待するなと店長に言われながらも、ジョジーが自分を迎えに来る日を待つ。そして、ついにその日がやって来て……。

 友だちとして選ばれ、少女と暮らすことになったアンドロイドのクララが主人公の近未来の物語。身体の弱いジョジーのことを第一に献身的に尽くすクララと対照的に、アンドロイドの彼女を軽んじる人々。クララの勇気と知性、使命を全うしようとする姿勢に心が震える。

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 定年まであと3年、植木道楽の父が遺した庭を眺めながら、縁側で一服するのが何よりの楽しみな宅次は、二百坪ばかりのその庭にマンションを建てたい妻と意見が合わず、言い争いの日々。そんな中で足の痺れから、体調を崩し、ついに意識を失ってしまう……。『かわうそ』ほか12編

 「指先から煙草が落ちたのは、月曜日の夕方だった」という冒頭がいかに素晴らしいかを説いたのは大学の先生だったか。向田さんの作品は母が好きで、よく読んだ記憶があるけれど、太田光さんの『向田邦子の陽射し』を読んでいたら、たまらなくなって読み返していた。細かいところまで、本当によく覚えていて、この作品が少なからず自分の一部になってしまっていることに改めて驚く。
 見たくないこと、見ないでもいいことをこれでもかと見せてくれる向田邦子作品。安定感のある文章は心地よく、再読とは思えないほど、楽しく読めた。

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 子どもの頃プレゼントされた2枚の絵から、ゴッホとゴーギャンに惹かれ、以来本物を見たいと憧れ、はれてパリのオークション会社に勤務することとなった高遠冴。
ある日、冴のオークション会社にただならぬ感じの女性が現れる。画家だという彼女はサラと名乗り、見てもらいたいものがあるのだと言う。彼女がオークションにと持ち込んだのは一丁の拳銃。
しかも、ゴッホが自殺を図ったリボルバーだと言い出して……。

とここまでは、王様のブランチの織り込み済み。問題はその真相なんだけど、ゴッホに思い入れが深いだけに、真相によっては受け入れ難いかもと、ドキドキしながらページをめくりました。
そして、やっぱり原田マハさん、すごいよ。こんな着地があるなんて、いやいや、すごすぎる。

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 彼氏に振られ、合コンに誘われたものの数合わせ、心のよりどころのアイドルグループのコンサートチケットはなかなか当たらない。周りはみんなうまくやっているのに、私だけがなぜ?
 悩める咲良だったが、ある日通勤に使うバスを待っていると、入手できなかったアイドルグループのCDが。人目がないことをいいことに、落とし物と書かれたそのCDを持ち帰った咲良だったが、翌朝目覚めると手首から肘にかけて『神様当番』の文字が……。

 悩み多きOL、残念な弟をもつ小学生、インスタで知り合った少女に恋する高校生、やる気のない学生に凹むイギリス人英語講師、零細企業の社長。悩める6人が目の前に現れた神様の願いを叶える物語。
 四の五の言う前にまずは動けってことかなぁ。読みたいのに何も読める気がしなくて、こんな時こそ青山さん。ほっこりさせてもらったので、また明日から頑張ろう。

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 仕事で出かけた旅から友だちとの行き当たりばったりの旅。あるいは日常で旅を感じる瞬間など、「旅」にまつわるエッセイあれこれ。

 何なんだろう。読み始めるともうワクワクして、楽しくて。一つ一つは短いのに物語のように楽しめて、心から満足できる。ほんの少し、あと1つだけって、まるでドロップを味わうみたい。
 江國さんだから、豪華な旅かと思いきや、日常の中にある“旅”のことも。旅は必ずしも観光でも娯楽でもなく、どこか遠くに出かけることでもないんだなぁと。帰りたくないなぁと思うのに、帰ったらホッとするその理由にも納得でした。

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 趣味の欄に「読書」と書いたがゆえに、課長に呼び出され、会長宅で2泊3日を過ごすハメになってしまった会社員の鮫島巧一。待ち受けていたのは、会長をはじめとする読書家の4人の老人たち。
 4人は戸惑う巧一に、とある稀覯本の話をはじめ、屋敷内にあるはずの、その本を探してほしいと持ちかける。(『待っている人々』ほか3編)

 『三月は深き紅の淵を』という正体不明の本をめぐる4つの物語。関連があるようなないような3つの物語が4つ目の物語で覆って、読めば読むほど謎は深まり、足をとられ、でも読まずにはおれないこの感覚を、なんと呼ぼう。間に別の本を挟むか、続けて読むか悩ましいところ。
 

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