陽だまりの図書館

 とある出来事をきっかけに、仕事もパートナーも失ってしまった荒井尚人。ハローワークの職員の勧めで、資格を取り「手話通訳士」として働き始めるが……。

 初めて読む作家さん。手話通訳士という仕事はもちろん、手話に種類があることや、ろう者の視点で見る社会など、考えさせられる中での殺人事件。こわごわ読み始めたけれど、途中から一気に引き込まれて、まさにページを捲る手が止まらない状態に。続編も読まなくては!

 イラつきながら、カフェで給仕をしていた朝倉満は、客の男から「この職場は君に合っていない。君からは怒りの匂いもする」と言われ、男の元で働くように促される。戸惑いながらも男のまとう香りに惹かれ、名刺の裏に書かれた住所を訪ねる満だったが……。

 前作の登場人物のその後を知りたいと逸る気持ちを抑えながら、再び訪れた洋館や庭、むせかえるようなハーブの香りに酔いしれていく。静寂な時間と内に隠された激しい感情。息を詰めながら、たどり着いたラストの衝撃と余韻が何ともいえません。

誰が言い出したのか、海岸線を南下する時に左手に現れる弓投げの崖を決して見てはいけないという言い伝え。そんなことをふと思い出しながら、車を運転していた安見邦夫は
トンネル内で、走行車線に止まった車を発見。事故かと思い、右側をすり抜けようとしたが……

考察タイプのミステリ、連作4話。どの章にもおしまいにヒントとなる写真がついていて、読み終えた後に考察するというしかけ。物語はともかく、いろんな人がネット上でいろんな風に考えを巡らせているのが面白い。
個人的にはウェルカム蝦蟇倉市というところか。

 16歳の少女であるきみと17歳の少年のぼく。とあることで知り合った2人は、言葉を交わすうちに互いを大切に思うようになる。
互いの街を訪れ、植物園を訪れたり、川べりを散歩したり、彼女がつむぐ壁に囲まれた街の物語を聞く時間はかけがえのないものに思われたが……

というのは、ほんのさわりなんだけど、読み進める端から映像が立ち上がって、毎日細切れの読書だったけれど、とても心地いい時間が過ごせました。まるで、現実と物語の世界を行ったり来たりしているような、ずっとそこに留まっていたいような。また時間を置いて読み返そうと思います。

 昭和2年、西洋料理の教習所を家業にする品川家に女中奉公にやってきて、料理を任されることになった17歳のしずえ。
料理学校の後継者として期待されながら、祖母や母に反発して家を飛び出し、SNSで料理研究家として注目されるようになった留季子。
時代も年齢も境遇もまるで違う2人を結びつけるレシピとは……

 素材を丁寧に吟味し、工夫を凝らして美味しい料理を作る。時代は変わっても思いは同じということで、改めて料理の奥深さや楽しさを実感する物語であるのと同時に、時代ゆえの切なさもあって。とりあえず、生姜焼きと冷や汁とタケノコはすぐ食べたい。

 高校に入学して一年半。おもしろいイベントを次々と計画する楽しいクラスだと思っていたのに、クラスメイトの自殺が相次ぎ、クラスは不穏なムードに。ショックからか、同じマンションに住む幼馴染の美月が不登校となり、担任から連絡を頼まれた垣内は、気の進まぬままインターフォンを鳴らすが、美月から予想だにしない告白をされて……。
 
 クラスメイトの不審な死から始まる犯人探し。学校にまつわる謎、疑心暗鬼の日々……と、久しぶりに先が気になってしかたない青春ミステリ。もちろん一気読みでした。『六人の嘘つきな大学生』『俺ではない炎上』そして『教室がひとりになるまで』とまだ3作目だけど、読んでいる途中にタイトルの意味に唸らされる。現実にはありえない設定、踏み込めばいろいろありそうだけど、全く気にならず、最後まで読ませてくれました。

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