陽だまりの図書館

    今年もよろしくお願いします。15期生の健闘を祈ります。もうひとがんばり!

『煽動者』 ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)5



 相手の表情や身振りで心を読むキネシクスを専門とするCBI(カリフォルニア州捜査局)の捜査官キャサリン・ダンス。ベテランなはずの彼女だったが、相手を見誤り、麻薬組織の殺し屋を無罪放免にしたかどで、捜査から外され、銃を所有することもできない民事部に飛ばされてしまう。
 キャサリンが担当したのは、ライブが行われたナイトクラブで火災が起こり、1人が死亡した事故。突然の煙と火事の知らせに人々がパニックになり、将棋倒しによって死傷者が出てしまったのだという。しかし、捜査が進むうちに新たな真実が……。火事は外で起き、非常口を塞いだという大型トラックは何者かによって動かされたものだったのだ。不審に思い、捜査を始めるキャサリンだったが、それをあざ笑うかのように第二の事件が……。(市図)495P

 待ちに待ったシリーズ第4弾。リンカーン・ライムも心待ちにするシリーズだけど、キャサリン・ダンスも外せない。不思議なことに、リンカーン・ライムもキャサリン・ダンスも人物的には、大好き!という感じではないのだけど、何度も何度も予想を裏切られ、最後の最後にもえぇ〜っとなり、ふぅーっと安堵するジェフリー・ディーヴァーさんの書く物語がとにかくたまらなくおもしろい。
 悪は徹底的に「悪」なので、攻防に目が離せないし、騙されるのは事件だけでないし……。

 ということで、読む前からワクワクがとまらず、騙されないようにじっくりと状況を把握しながら読み進めるのでした。

 今回の犯人は人の集まる屋内でパニックを起こさせ、それを喜ぶ人物。パニックを起こし、暴徒化した人々は誰の制止も聞かず、足元に人が倒れようとおかまいなしで踏みつけ、その恐ろしさは今後の日常生活にも影響が出そう。しかも、ネットやSNSを使った情報操作も今どきで、さもありなんと怖かったです。

 そこから騙されていたとは……ということで、今回もまんまとやられました。

 そして、いや、まさか、これで終わりではないですよね。事件の解決よりも、今後が気になった第4弾でした。(☆は個人的なものです)

『マチネの終わりに』 平野啓一郎(朝日新聞出版)4



 
 出会った当時、彼らは「人生の道半ばにして正道を踏み外し」つつあった。つまり、四十歳という、一種、独特の繊細な不安の年齢に差し掛かっていた。彼らの明るく喧噪に満ちた日常は、続くと想像しても、いずれにせよ物憂かった。彼らもまた《神曲》の詩句にある通り「どうしてかは上手く言えない」まま、気がつけば、その「暗い森の中」へ迷い込んでいたのであった。P7


 自分の演奏に疑問を抱き始めた38歳のクラシック・ギタリスト蒔野聡史は、終演後、レコード会社の担当の知り合いだという女性を紹介される。彼女の名は小峰洋子、フランスのRFP通信の記者だという。父親が自らがギタリストになったきっかけともいえる映画「幸福の銀貨」の監督だと知り、興味を惹かれる聡史に、高校時代の聡史の演奏を聴いたことがあると告白する洋子。
 ほどなく、2人は惹かれ合うが、洋子には結婚を予定したアメリカ人の婚約者がいて……。(市図)403P

 TV番組で又吉さんが絶賛していたので、興味をひかれて予約した本。恋愛小説と知り、躊躇していたのですが……。

 プラトニックな関係のまま、お互いに惹かれ合うのに、ままならぬ2人は以前ブームにもなった韓流ドラマのようでもありましたが、とにかく文章がきれいで読み惚れてしまう。平野啓一郎さん、こんな文章を書く方だったんですね。

 YA小説以外はなかなか手に取らない恋愛小説ですが、めずらしく好きなタイプの恋愛もの。しかしながら、こんなにもどかしいのも、読むのにエネルギーがいることを実感しました。

『いまさら翼といわれても』 米澤穂信(角川書店)4



 「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」。がモットーの省エネ高校生 折木奉太郎と、地元の豪農の出で成績優秀の女子高生 千反田える、奉太郎の友人で自らデータベースと名乗るクールな福部里志、そしてそんな里志に心を寄せる図書委員の伊原摩耶花の4人の古典部のメンバーが活躍(?)する古典部シリーズの第6弾。(学図)353P

 待ってました!といっても、もう細かいことは靄の中。でも、そんなことはどうでもいい。ということで。

 今回は6編。なるべくネタバレせずにご紹介。

 『箱の中の欠落』
 夕方、突然里志に電話で呼び出された奉太郎。里志もからんだ生徒会の選挙。厳重な警戒にも関わらず、生徒数以上の投票数が出てしまった理由を奉太郎にも考えてほしいというのだが。当然のことながら即座に断る奉太郎。しかし、里志がこだわる理由を聞かされて……。
 連作短編の形をとりながら、ここでさりげなく問題提起が行われていたわけだ。ふむふむ。

 『鏡には映らない』
 漫画を描くための文房具を買いに行った摩耶花は、偶然中学時代の同級生に出会う。近況など話す中で、奉太郎のことを口にした摩耶花に、眉をひそめる同級生。奉太郎の心証を徹底的に貶めた、中学時代のある出来事。真相を確かめるべく、動き出した摩耶花だったが……。
 奉太郎、意外といいヤツ。というか、予想通り?

 『連峰は晴れているか』
 窓の外のヘリの音に、中学校時代の英語教師の小木がヘリ好きだったことを思い出した奉太郎。ところが、里志に小木が三度も雷に打たれたと聞かされた奉太郎は、ある予感に突き動かされて……。
 「気になるんだ」まさか、奉太郎がそんなセリフを吐くなんて。もちろん、そんな奉太郎が気になる千反田なんですが。

 『わたしたちの伝説の一冊』
 古典部との兼部で、漫研に所属する摩耶花は、漫画を読んで楽しむ「読むだけ派」と、作品を生み出し、投稿を重ねる「描いてみたい派」の抗争(?)に巻き込まれてしまう。漫研存続の危機に直面した摩耶花は、どうにか良い方向にと考えるが……。
 奉太郎が中1の時に書いた「走れメロス」の感想文が、実に興味深い。

 『長い休日』
 朝から妙に調子のいい奉太郎は、こともあろうか散歩に出かけ、クラスメートの実家である神社で千反田に遭遇。行きがかり上、いっしょに祠の掃除をすることになった奉太郎は、省エネになった理由を千反田に尋ねられて……。
 これが一番印象的かも。お姉さんの暗示とも言える一言も効いている。

 『いまさら翼と言われても』
 文化会館で行われる合唱祭。ソロを歌う予定の千反田がいなくなったと摩耶花から、奉太郎に電話がかかる。一緒に歌うおばあさんとバスで会場まで来たという千反田はいったいどこに?急いで会場に向かう奉太郎だったが……。
 表題作。なんとも絶妙なタイトルです。これは、次に続くね。はたして、いつになるのでしょう。

 『氷菓』が実写映画になるそうな。広く知れ渡るのはよいことに違いないけれど、微妙。

『メソポタミヤの殺人』 アガサ・クリスティー(早川書房)4



 付き添い看護婦として、ケルジー夫妻とともにバグダッドを訪れたエイミー・レザランは、同じ船に乗り合わせた開業医のライリーより、仕事を依頼される。アメリカより遺跡調査に訪れているライドナー博士の妻が精神的に不安定なため、彼女の相談相手になってほしいというのだ。
 博士にもその妻にも乞われていると知り、自分にならできるかもと依頼を引き受けたレザラン看護婦。ライドナー夫人の美しさや人となりに魅せられ、彼女のためにと動き始めたものの、生活を共にする調査隊のメンバーと彼女の関係はぎくしゃく、誰もが疑心暗鬼の現場、夫人につきまとう怪しい影、そしてついに事件が!(自)426P

 「今月の」と銘打っていたのに、久々のクリスティーです。(ホント、何とかしたい)

 主人公は知的好奇心旺盛な看護師(当時は看護婦)の女性。舞台は中東の遺跡発掘の調査現場。謎の脅迫状に怯える美しく自由奔放な女性、そして彼女を取り巻く人々の思惑……と設定もバツグン。いわゆる謎解き大好きな方々の期待は裏切りません。
 事件が起き、怪しげなベルギー人が真相に迫り、全員集めて謎の解き明かし。予想だにしない犯人とそのトリックと今でこそできすぎた感はあるものの、こちらは1930年代に書かれたもの。

 物語は看護師の手記の形をとっているので、ポアロは途中参加で怪しさを醸し出しています。(アクロイド殺しのトラウマ感あり)

 さてと、本棚には15冊。片や、クリスティー文庫は100巻(+α)……お四国巡りより遠い気がする。

『また、桜の国で』 須賀しのぶ(祥伝社)5



 大正9年、ロシア人の父、日本人の母をもつ9歳の棚倉慎(まこと)は、自宅の庭で迷い込んだ少年と出会う。彼の名はカミル。革命と内乱で親を失い、アメリカの赤十字により、シベリアから日本へと送られ、仏教会の育児院で保護されているポーランド人の子どもたちの1人だった。たどたどしいながらも日本語をしゃべるカミルと心を通わす慎に、カミルは誰にも言えない秘密を打ち明けるのだった。

 時は流れ、中学校を卒業後、外務省職員となった慎は、北満州の総領事館に10年勤めた後、ポーランドのワルシャワにある日本大使館に書記生として赴任することに。1939年9月30日、新聞にはドイツ、イタリア、イギリス、フランスの4首脳が記念撮影よろしく肩を並べ、イギリスの首相チェンバレンとドイツの総統ヒトラーが笑顔で握手する写真とともに、欧州に平和がもたらされたと謳われていた。

 しかし、その翌日、ドイツ軍はズデーテン地方に侵攻し、わずか1日で緊張感高まる情勢に。20年前にようやく独立を果たしたポーランドの運命は。そして、慎の選んだ道とは。(自)497P

 直木賞候補作、その2です。舞台は第二次世界大戦のポーランドとあって、難しいかなぁと思っていたのですが、スーッと引き込まれ、どっぷりとはまり、はぁーっとなってしまいました。(やれらた感で)

 題材は「ワルシャワ蜂起」。ナチス率いるドイツ軍に侵略され、期待していたドイツ軍・フランス軍にも裏切られたポーランドの首都ワルシャワを舞台に、ゲットーが作られ、ユダヤ人が迫害されていく様子、その中で屈することなくポーランド国民の誇りを胸に生きていこうとする人々の姿を、ロシア人の父親を持つ日本大使館職員棚倉慎の目を通して描いたものです。

 ポーランドをめぐる歴史的な知識は、アウシュヴィッツ(これは以前、ドイツ語読みなので、ポーランドでは「オシフェンチム」と呼ぶのだと聞いたことがあります)くらいだったので、読むことすべてが初めて知ることばかりで、ただただ圧倒されました。つらいし、重いし、しんどいし、決して楽しい読書ではないのだけれども、とても考えさせられるし、何度も胸が熱くなる、重厚で読み応えのある物語でした。

 直木賞、わからなくなりました。

『蜜蜂と遠雷』 恩田陸(幻冬舎)4



 新しい才能が現れるコンクールとして世界的に名高い芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場することになった若きコンテスタントたち。一人は、内外のジュニアコンクールを制覇し、CDデビューもして注目を集めながら13歳で母を失い、過去の人となってしまった20歳の栄伝亜夜。もう一人は、就職、結婚を経て一児の父親となり、最高齢の28歳で再びコンクールに挑戦することになった高島明石、そして、ジュリアード音楽院の教授であり、実力派のピアニストでもあるナサニエル・シルヴァーバーグの愛弟子マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
 それぞれが、自分の実力を試そうとする中、突然現れた、まだあどけなさの残る少年 風間塵(じん)。16歳という若さでありながら、世界中の音楽家や音楽愛好者が尊敬してやまない、今は亡きユウジ・フォン=ホフマンに5歳から師事していたという。亡き師より『ギフト』であるという推薦状を持って現れた少年の実力は如何に?そして、コンクールの優勝は誰の手に?(自)508P

 上下2段組みで500ページ以上。目次はもちろん、課題曲や登場人物の弾く曲名が小さな文字でぎっしり書かれていて、読む前からハードルが高いのですが、これぞ恩田マジックでさくさく読めます。殆どがコンクールの数日間の話だし、登場人物たちが演奏を繰り広げ、それを聞くという繰り返しなんだけど、まったく飽きないどころか、まるで参加者の一人になったかのような臨場感です。

 音のない「小説」という世界で、こうも音楽に浸りながら読み進められるという恩田さんの筆致のすごさ。しかも、どんな曲か具体的に知らなくても、どんな曲か感覚的にわかって、魂がふるえる感じなのだから驚きます。

 主な登場人物であり、演奏者である4人の若者たちがコンクールを通してどう変わっていくのか、またホフマンが風間塵をなぜ『ギフト』と呼んだのか、最後まで目が離せません。(あっ、最後と言えば、まちがっても何ページあるのかなぁとか何刷だろうとか、おしまいのページをめくらないこと)

 「直木賞」楽しみです
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