祝森絵都作家デビュー20周年 (自)287p

 『ウエルカムの部屋』
 有名大学を卒業し、一流会社に就職。そして知性と容姿を備えた男性と婚約……誰もがうらやむ人生を歩みながら、突然の婚約破棄、自称発明家の夫と結婚してしまった私。
 周囲の大反対の中、ゴージャスなマンションを買い、意気揚々と結婚生活を始めたまではよかったが……。

 『彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日』
 元彼の結婚式に、初めて一人で訪れたバー。仄暗いカウンターの片隅で心を落ち着けようと思ったのに、隣席の見ず知らずの男が、星座がどうの血液型がどうのと質問攻めにされ、うんざりした私は思わず、自分の思いをぶつけてしまう。

 『17レボリューション』
 失恋を機に、これからは「なんとなく」をやめて、つき合う相手を自分で決めようと決意した千春。価値基準は「イキがいいか、悪いか」。そして、手始めに親友イヅモに絶交を申し渡した私は……。

 『本物の恋』
 病院帰りの昼下がり、私はカフェテラスで見かけた男を見て驚いた。それは8年前、たった一度だけ出会った男の姿だった。そして突然、狂おしいほどにその「夜」の出来事がよみがえってきて……。

 『東の果つるところ』
 祖先から代々受け継がれた因習にしばられた草間一族の娘として生まれたきた草間由果。理不尽な掟にしばれれまいと家を飛び出し、女優「武澤花緒」として生きることを決意するが、順風満帆に進むかにみえたその行く先々には草間一族の影がつきまとい……。

 『本が失われた日、の翌日』
 1冊の本を求めて書店を探し回るが、書店はおろか図書館にも、古本屋にもカフェの本棚にさえも、本は見当たらない。本という本は、完全にこの世界から失われてしまったのだ。もちろん、私の書いた本も。

 『ブレノワール』
 母の危篤の知らせを聞き、パリの街からブルターニュ地方へと飛び立った僕。父を失い、幼い僕を連れ親戚の家に身を寄せた母は、伯父たちの営む林檎農園を手伝い、日々忙しくしながら僕を育ててくれた。しかし、祖先のルールに則り、生者よりも死者を優遇するバロウ家のやり方となじまず家を飛び出した僕と母の間にはいつしか埋められない溝ができてしまい……。

 『ヨハネスブルグのマフィア』
 南アフリカ、タンザニアへの旅行を控え、黄熱病の予防接種に出かけた私は、誰もが待ちくたびれる待合室で、身じろぎもせず読書に耽る男を目にする。微動だにしないその姿は、大勢の人の中で耀いて見え、受診後、彼に声をかけられた私は、ためらいもなくついて行ってしまう。

 『気分上々』
 「いい男はむやみにぺらぺらしゃべらない。何があっても言い訳しない。」そんな言葉を柊也に残して他界した父。「お父さんみたいな、いい男」になってと母親にも泣かれてしまい、まぁいいかで始めた「親父ごっこ」だったが、いつしか親父の遺言から苦しめられることになって……。

 久々の森絵都さん。たっぷり楽しみました。

 個人的には『チーズと塩と豆と』にも入っている『ブレノワール』が好き。2度目の今回もやっぱり胸が熱くなりました。今後の展開が気になる『彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日』は、続きがあればぜひぜひ読んでみたいです。
 『17レボリューション』と表題作『気分上々』は、久々の森絵都らしいYAで、中高生におすすめです。私もできたらイヅモのような達観した友人に、ビシビシ指摘してほしいなぁ〜。不思議と大人になってからは、なかなか親身になって叱ってくれる人はいないものだし。

 カレンダーが4月になったからって、誰もが輝く「春」のスタートとはいかないのは当たり前だけど、それでも気持ちを切り替えて頑張れば、また新しい景色が見えるかもしれない。なにはともあれ、新学期スタートにふさわしい「気分上々」な物語を届けてくださってありがとうございます。