鷺と雪
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高等科最高学年となった英子、同級生には次々と縁談が持ち上がる年に。ある日兄と出かけた銀座で、英子は思いがけない話を聞く。英子の友人桐原侯爵の道子の義理の叔父にあたる滝沢子爵が、浅草の暗黒街をルンペンの身なりで歩いていたというのだ。
道子に頼まれ、運転手ベッキーさんの案内で、叔父が住むという小石川を訪れた3人。しかし、そこに叔父の姿はなく、道子が叔母に事情を聞くと叔父は「神隠し」にあったのだと打ち明けられたのだという。腑に落ちない英子は桐原の写真をもとに、浅草を訪れるが…(借)
お嬢様英子とお抱え運転手ベッキーさんのシリーズ第3作、直木賞受賞作です。『不在の父』『獅子と地下鉄』『鷺と雪』の3話からなるこの作品ですが、シリーズ最終巻とあって、名残惜しくページがめくれず、2話まで読んで、他の本で気晴らしをしたりしていました。
それというのも時代は戦争の足音が忍び寄る昭和11年。もう前2作までのようにお嬢様英子と博識で用心棒のようにカッコいい女性運転手ベッキーさんの活躍を楽しむというように進まないことはわかっていたからです。
そして表題作『鷺と雪』…やはりと思う男性との再会、そしてベッキーさんが以前口にした『漢書』の一節、なんとなく予想できたもののラストは全くの予想外でした。北村さんが目指したゴールがここだったとは…しばらく呆然としたのは言うまでもありません。
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夏のお休みも十日まで。放蕩者がお金を使い尽くすように、たちまち過ぎてしまった。休暇の終わりに後何日と指を折るのは、お財布に残った紙幣の数を、《もう二枚、ああ最後の一枚》と勘定するようなものかもしれない。…中略…さて、夏休みをいかに有効に過ごしたかというと、これといって特筆すべきこともない。ただ、本なら何冊か読んだ。
『鷺と雪』の冒頭です。自分のこの休みそのものだったから、笑ってしまいました。夏休みもあと1日、すでに2学期に向けて動き出しています。夏休みの終わりによい読書ができてよかった。Y先生貸してくださってありがとうございました。2学期もしっかり働きます。