陽だまりの図書館

September 2011

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 四つ葉小学校五年三組にやってきた転校生リョウ。リョウが丘のふもとに突然できたタケノコみたいな不思議な建物に住んでいると知って驚くシュンペイたちだったが、すぐに意気投合。
 そんなある日、お母さんがいやがるからとの理由で、リョウの自宅に呼んでもらえないことに怒ったハルカが放課後リョウの家に押しかけたのだが、何があったのか翌日学校を休んでしまい……。(自)

 久々の児童書です。転校生リョウと、シュンペイ、ヒロ、ツカサ、ハルカたち五年三組の仲間たちとのハートウォーミングな友情の物語。小学校の頃夢中で読んだあかね書房の本をなつかしく思い出しました。

 謎めいた家に住む転校生リョウの隠された秘密とは……?ハルカのちょっとした好奇心から、物語は意外な方向へと進んでいきます。そして、そこからハラハラどきどきの冒険が始まって……最後まで一気読みです。

 家族や友だちへの思いや好奇心、そして勇気…小学生の頃に大切にしていた「キラキラしたもの」がいっぱい詰まっていて、子どもたちはもちろん、大人も楽しめる1冊。物語にマッチした挿絵もすてきです。

 日本図書館協会選定図書

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 『ヒロくん』
 30代女性にして、大手不動産会社の課長となった武田聖子。「早く子どもを」と望む実家はいい顔をしないが、大学の元同級生の夫博樹とは、つかず離れずのいい関係。初めて5人の部下をもつことになった聖子は、管理職としてどうあるべきか、画策するが……。

 『マンション』
 34歳独身の石原ゆかりは、ある日親友のめぐみが完成間近のマンションを買ったと聞き、ショックを受ける。しかし、マンション購入は結婚をあきらめることではなく、むしろ投資と気づいたゆかりは、理想のマンションを探そうと指南本を買い、住宅情報誌をチェックし始めることに。

 『ガール』
 かつてはディスコで顔パス、お立ち台も独占していた滝川由紀子。しかし、気づけば32歳、男性社員の視線もいつしか、20代の後輩の方へ。そんな中、40を前にして年齢不詳のファッションに身を包み、終始ハイテンションな先輩光川の姿に敬意を覚えながらも、ああはなりたくないと思う由紀子は……。

 『ワーキング・マザー』
 バツイチで、子持ちの36歳、自動車メーカーに勤務する平井孝子。息子の祐平が小学校に入学したのを機に、再び営業でバリバリ働こうとはりきっている孝子だが、彼女の意欲とは裏腹に、周囲は腫れ物にさわるかのような扱いで……。

 『ひと回り』
 老舗文具メーカーに勤める34歳の小坂容子。会社の制度で新入社員の指導社員となった容子だが、担当の新人和田慎太郎は、背も高く、誰もが好感をもつイケメン。年齢が12も違うのに、久々のときめきを覚えた容子は、とにもかくにも彼のことが気にかかり……。

 30代でバリバリ働く女性たちの奮闘ぶりを描く短編集。(学図)312p

 結婚しろ!子どもはまだか?とプレッシャーをかける親、男女差別アリアリの職場、理解のない上司、使えない部下、そして冷たい世間の目。働く30代女性に立ちはだかる問題の山積みなこと。
 そんな荒波の中を、力強く生きる(?)女性たちの物語に、同情したり、腹が立ったりしながら、最後はエールを送りたくなる、爽快感たっぷりの物語です。

 香里奈さん(由紀子)、麻生久美子さん(聖子)、吉瀬美智子さん(容子)、板谷由夏さん(孝子)で来年GW頃に映画公開とか。物語をまとめ、4人が友人という設定なので華やかなものになりそうですね。年齢不詳女のお光さんを壇れいさんが演じるというのが見ものです。

 それにしても奥田さん、どうしてこうも女性が描けるのでしょう。ライフスタイルやファッションもそうだけど、女同士の微妙な心理状態まで、見事に書き表していて、恐るべしです。
 話してよかった。立場はちがっても、女は合わせ鏡だ。自分が彼女だったかもしれないし、彼女が自分だったかもしれない。そう思えば、やさしくなれる。p245

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 東京の下町にある、築70年の今にも崩れ落ちそうな古い日本家屋の古本屋「東京バンドワゴン」。古本屋とカフェを営む堀田家のメンバーは、79歳になる三代目店主の勘一、その息子で伝説のロッカー我南人(がなと)60歳、孫の紺、藍子と、我南人の愛人の子ども青、紺のお嫁さんの亜美、その息子研人と、藍子の娘花陽(かよ)の8人家族。
 にぎやかな家族とその家族を取り巻く人々との、春・夏・秋・冬の物語。(学図)321p

 バンドの話かと思い、ずっと読んでなかった!違うと知って読み始めました。

 亡くなったおばあちゃんが語りのホームドラマ。頑固なおやじと大家族とくれば、あの懐かしのドラマを思い出します。勘一という名前も、ちょっとそのことを彷彿とさせるような気も。
 次から次へといろんなことが起きて、ドタバタしながら物語が進みます。とにかく登場人物が多いので、脳内キャスティングも大変です。

 ちょっとミステリの要素もあるし、人情豊かでホロリとする場面もあるし、なるほど人気の理由もうなづけます。ホームドラマが好きな人におすすめです。

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 新しいPCが来ました!
 しばらくは慣れるのに時間がかかりそうですが、まずは一安心

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 「シティ・マラソン」をテーマにしたマラソン三都物語。(市図)213p

 『純白のライン』 三浦しをん
 不動産会社に勤務する広和は、ある日突然社長室に呼び出される。社長の愛娘が男友達に近づくのを阻止するために、彼女の参加するニューヨークシティマラソンに出てほしいと言われ(しかも、出立は翌日)、急遽渡米することになった広和は…
 うまくいかない苦しみも哀しみも悔しさもある。けれど、忘れてはいけなかった。それらすべて受け入れてなお、働き、走り、考えつづけて生きる毎日を、体と心は求めてやまないのだということを。p61

 『フィニッシュ・ゲートから』 あさのあつこ
 シューズメーカーに勤務する悠斗のもとに、かかった深夜の電話。それは、高校時代に同じ陸上部だったかつての親友湊からのものだった。東京マラソンに参加するつもりだという湊の言葉に、苦い思いがよみがえってきた悠斗だったが……。

 『金色の風』 近藤史恵
 家族の反対を押し切り、一人パリに語学留学することを決めた夕。言葉も通じぬ見知らぬ土地で、疎外感をおぼえながらも生活し始める夕は、ある日ゴールデンレトリバーを連れてランニングする女性と出会う。
 苦しさは堪(こら)えるのではなく、ただ受け止めて、そういうものだと思う。p212

 three-bellsさんのところで見かけて、無性に読みたくなってしまいました。

 東京マラソンが始まってから、急速に身近になった市民参加のマラソン大会。地元でも、去年から知り合いがどんどん参加し始めて、あぁもう10歳若かったらと思わずにはいられません。
 物語は「ニューヨーク」「東京」「パリ」と三都市を舞台にしたもの。人のいい男性が主人公のほのぼの楽しい三浦さんの作品。ちょっとややこしい人間関係のあさのさんを間に挟んで、ラストはヒリヒリ感さえ、心地いい透明感のある近藤さんの作品。走る人にも走らない人にも楽しめる1冊です。

 個人的には(三浦さんも好きですが)、パリで一人暮らしを始める近藤さんの作品に惹かれました。見知らぬ異国で生活を始めること……う〜ん、こんなのも若い頃に経験してみたかったなぁ。いろんなものがちょっとずつなじんできて、いつしか生活の一部に、そして自分がその土地の一部になっていく感じは自分にも経験はあるけれど、外国となると話は別。
 そういえば、東京マラソンのスタートした日は、息子の私立大学受験の日だったなぁ〜(すごい人ごみで大学にたどり着くのが大変だったそうな)としみじみ。マラソンも留学もちょっとむずかしいから、また山にでも登ろうかな。

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 末期がんに侵された父親が息子慎吾に遺した1冊のノート。そこには、幼い息子が誘拐された事件の経緯が記されていた。身代金は会社の再建をかけた全金額の5000万円。犯人は内部の人間なのか……。5000万円を金塊に変え、運ばせた意味は……。「強い人間になって、やり遂げてほしい」というのが父親の最後の言葉だった。

 時が経ち、慎吾はOA機器メーカーのリカード社のコンピュータ設計技師としてカナダに出向いていた。そんなある日、リカード社の三代目社長の武藤の孫で中学生の兼介が誘拐される。犯人の声はコンピュータに合成されており、警察の追跡もままならない。12年前を髣髴とさせるこの誘拐事件は、過去の事件と関連はあるのか?(学図)440p

 Tくんに紹介してもらったミステリ。岡嶋二人さんも、そしてそのペンネームが「おかしな二人」からきているように「共著」であること、今は別々に活動していることなど初めて知りました。

 12年隔てて起きた2つの誘拐事件。前回誘拐された幼児が、今回は犯人から指名された身代金の運び人となって事件に関わっていきます。読みはじめから、ぐんぐん引きこまれ、真相まで一気に読ませてくれます。コンピュータを駆使した完全犯罪を描いたこの作品が20年以上も前に書かれたと知って、びっくりしました。
 

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