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6角の革が擦り切れており、穴があいている場所もある。
ここの革を交換してほしいという依頼。

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元は1枚革を漉いて、ロゴ布本体を包み縫いする構造。
同じような革を漉いて切り抜き包み縫いする方法が一番良いがコストがかかる。


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元の革からロゴ部分だけを切り取り元の位置に。


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穴が開いている。革漉きは仕事がきれいに仕上がるが、使用時に
擦れに注意し、月に1度はクリームを塗ったりして手入れをしないと
このように傷んでしまう。
財布を買う時はこうした点に留意し、安価な包み縫いタイプを避けるか
お手入れをまめにすることをお勧めする。

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札入れ本体。ファスナーをぐるりと貼り付けてあり、剥がれないように
不織布を貼ってあった。札入れ本体と表布もしっかり貼り合わせてあった。
中央縦の縫い目はカード収納の仕切り。

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化粧としてのベロと底の芯材。

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挟んであるだけ。

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真ん中のは表のシェリーラインの裏にあたる。
裏当てしてロゴ布と合体させている。一枚ロゴ布ではないのね。

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ここがさらにめくれます。これはふっくらさせるための芯材で、
薄いスポンジが不織布に貼ってあります。
さて66とはなんぞ。(笑)

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きれいに剥がれました。
芯材は再利用してもいいのですが、劣化しているし復元方法が
変わるので使用しません。


ここから手順はたくさんあったが、写真は1枚しかありません。
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写真はボケていますが、札入れ側が1.2mmで札入れ部と同じ面積の1枚革。
縁取り側は既製品で似た色の3mm革があったので採用し一枚革をくり抜き。

<構造>
芯材は全て再利用せず、1.2mmのヌメ革を染色し芯革とする。
札入れの内側ミシン目をこの革に目打ちでうつす。ここがズレると
縫う作業に支障が出る。
縁取り革は3mmあるので今後の使用にも耐えるだろう。

縁取り革は元の革から型紙を作った。芯革とこの革でロゴ布を挟んで、
磨き上げて一体化させる。このためロゴ布周囲を8mm幅で切断し
貼り合わせても切り口が見えないようにした。

①まず縁取り革とロゴ布を縫い合わせる。
②芯革にうつした針穴に合わせて3mmピッチの菱目打ちで穴を開ける。
③①と②を合わせてさらに①に穴をうつす。
④多少のズレは気にせず、3mmピッチの穴を優先して菱目打ちで開ける。
⑤②と④を仮縫いして穴を確認し、札入れとのサイズ感を合わせる

重要なのは札入れのミシン目との整合性、新しい革2枚の折り曲げ状態での目合わせ。

針目が合うことを確認したら2枚の革をボンドで貼り合わせ、数か所針をすぐ刺して
穴がずれないようにする。この作業を4回ほどに分けて慎重にすすめる。

乾燥したら、はみ出ている革を切断して整え、コバを磨く。

あとは札入れ部と表革を1目ずつ縫い合わせる。1cm程度の厚みがあるので
すこしでも穴がズレていたらやっとこで針をひきぬく。おおむね合っていたが
縫い合わせには12時間かかった。このように1目ずつの作業なので、札入れ
本体とはボンド付けしていない。

<取り扱いと手入れ>
厚いヌメ革に差し替えたので擦れに対して強くなった。
ぶつけたり擦れたりして角が柔らかくなってきたら、指に少し水を付けて湿らせ、
古布で軽くこするようにすると硬さと艶がよみがえる。
一部革を染色しているので使用時に濡れると色うつりする。
濡れたらタオルで水分を取り、自然乾燥でよい。
ヌメ革は濡れると硬くなる性質があることを念頭に。
毎日使うなら3か月ごとに革用クリーム(ラナパーなど)で手入れするとよい。
しまっておくとカビが生えたり内部がくっついたりするので、しまいっぱなしにせず
時々風に当てたり、中に紙を入れておくことをお勧めする。

気になるのはロゴ布とシェリーラインそのものの汚れと劣化。
クリーニングしてみたかったが、取返しがつかなくなるのがこわいのでノータッチ。
とくにロゴ布部分は擦れやひっかき傷に弱そうなので優しく。

以前よりハリ感が気になるかもしれないが、カードを入れれば問題ないと思われる。

バッグも財布もたまに休ませるとよいので、シーズンやシーンで替えたりすることを
お勧めする。