資産家の父と母の間には一人息子がいました。息子が結婚し、実家で新婚生活を始めました。やがて父が亡くなり、相続人である母と息子2人で遺産分割をすることになりました。

 しかし、母は、老後は息子夫婦に面倒を見てもらうのだからと、相続放棄をして息子に全財産をわたしました。それから数年後母よりも先に息子が亡くなりました。

 息子の嫁と姑である母とは折り合いが悪く、嫁は孫を連れて出て行きました。ところが、息子の四十九日の際に姑に向かってこう言い放ちました。「お義母さん。この家も財産も私と子どものもの。だから出て行ってください!」

 このような場合、親は相続人ではありません。「息子に老後の面倒を見てもらうのだから、全財産を子どもに渡す」という考え方は自体は自然なものですが、最悪の結果をもたらす場合もあります。

 この場合、息子に全部の財産を相続させることは避けておくべきです。いずれ自分が死亡すれば財産は息子にわたるわけですからね。

 この場合、不動産の名義は母名義にしておくか、名義変更はせずに、遺言もしくは死因贈与契約で息子に全財産を相続させる旨の意思表示を示すことです。

 また、息子にどうしても財産を渡しておきたいのであれば、父の生前に母の受取人で生命保険に加入するという方法が考えられます。生命保険は相続放棄をしても受け取ることができます。こうすることによって、息子
が先に死亡しても、母の生活資金を確保することができます。