1.芸予地域活性化の提言

①芸予地域の現状

 広島県と愛媛県にまたがる瀬戸内海西部に浮かぶ島々は、両県の旧国名である安芸と伊予から由来する芸予諸島と称され、親しまれてきました。かつては、その気候・風土を活かした造船、観光、柑橘類栽培の盛んな地域として知られていましたが、長引く造船不況や日本社会の高齢化に伴い、現在では衰退の一途をたどっています。

 芸予諸島の一角をなし、最も人口の栄えた広島県の旧因島市を例にとりますと、造船景気に沸いた1970年代初頭には4万5千人の人口を誇っていましたが、広島県尾道市と合併した2006年には2万7千人にまで減少し、現在もなお減少を続けています。この傾向は、他のどの島々にも共通する悩ましい問題となっています。

②望まれる地域振策

 これまでにも官民を問わず様々な地域活性化の取り組みが行われてきましたが、地域ごとの単発的なあるいは一過的なイベントに終わることが多く、残念ながら大きな実を結ぶにいたってはいません。

しかし、この地域にはとても大きな潜在力があり、その活用が望まれています。例えば、造船において日本は世界第3位の造船大国ですが、その○○%がこの芸予地域に集中しています。また、造船に並んで海運業も盛んで、愛媛県今治市を中心とした芸予地域に国内の船主のほとんどが集中しており、この地域だけで日本全体の外航船舶の約30%を保有しています。これらの船主は国際的にも「Ehime Owner(愛媛船主)」として知られるところであり、ギリシャや香港の海運王たちと肩を並べる程の知名度があります(朝日新聞GLOBE、ニュースの裏側)。

 さらに、柑橘類の栽培においては、生口島のレモン生産量は日本一(日本の生産量の35%)を誇っています。

 観光面においても、この地域一体で活躍した村上水軍に由来する多くの史跡が各島々に点在する他、それぞれが特有の観光資源を有しています。例えば、大三島(愛媛県今治市)は全国にある山祇神社や多くの三島神社の総本社である大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)を擁しています。大山祇神社の所蔵する文化財は、刀剣、甲冑、弓箭具などの武器武具類の多いことが特色であり、その所蔵量は全国の8割を占めるといわれています。また、生口島には「西の日光」とも呼ばれる耕三寺があり毎年多くの観光客を集めています。

③解決策として期待される特区

 上記の豊富な資源は有力な町おこしのツールとなることが大いに期待されています。しかし、この地域が行政上広島県と愛媛県にまたがっているということが大きな障壁となり、それら資源の一体的な活用を妨げています。

 この行政の壁を超えて貴重な資源を一体的に活用するには構造改革特別区域(通称:特区)を導入することが有効ではないかと考えられます。当コラムでは、芸予地域を活性化するための手段として特区制度を活用することを提案し、その有用性を紹介して参りたいと思います