5月31日はT高校のアルバムの群像(学年全員写真)撮影の日。こちらはプール棟の上へはしごを使って登る。地上からおよそ10メートル強はあるだろう。大判カメラ(注1*4×5判)をセット。撮影時間である14時20分に備えて昼休みの12時45分からアルバム委員全員に3年生323名全員が入るスペースにパイロン(三角コーン)を置いてもらい、撮影時の並び方等の打ち合わせも完了。今日は晴れで初夏の紫外線が肌に痛いほどさしてくる。経験上こういう日に限って、いざ撮影という時に天候がよく変わる。

14時10分。5限終了のチャイムとともにアルバム委員が出てくる。打ち合わせ通り14か所のパイロンに委員が立つ。パイロンが目印ということを知らない他の生徒が動かしてしまう恐れがあるので各委員それぞれ、死守という格好だ。

14時20分、次々と撮影場所に学年生徒達が出てくる。14時30分、ほぼ学年全員が集結。担任の先生方も揃われた。打ち合わせ通りアルバム委員のひとりが各教室に生徒が残っていないか確認に行く。OK。アルバム委員長のS君が学年全員に撮影上の注意点を話そうと10メートル強の真下で『みんな、よく聞いてくれ』と大きな声を出している。なにせ320名以上の集団である。それぞれが近くの友人たちと好き勝手に喋っている。委員長がどんなに大声を出そうと、みんなの耳へは届いてはいかない。3~4分、委員長とみんなのやりとりをこちらは地上10メートル強から静観。委員長のS君、みんなの耳に届くようにさらに声をあげて頑張るが完璧に劣勢。でも頑張っている。時間も押してくるので、さていよいよこちらの出番かな。

すーっと大きく息を吸い地声で大きく「さあ、みんな聞いてくれ」
なぜか一瞬にして323名が静寂に。「いよいよ撮るけれど注意点三つ、一つ目は頼むから目印より外に出ないでくれ。外へ出れば写らない! 二つ目はテンション上げるのは良いけれど頼むから体を動かさないでくれ。シャッタースピードは低速シャッターなので動けばブレる。動いた人は一生ブレっぱなしだ! 三つ目は未来の自分に笑顔を送ってくれ!…以上!!!」
一瞬の静寂から『ドワーッ』と323の笑顔で答えが返ってくる。323名の若きパワーはすさまじい。50半ばを過ぎたおじさんにとって、そのパワーは元気をもらう即効性ビタミン剤を投与された気分だ。このパワーをアルバムの頁に注入だ。そーっとフィルムカットフォルダーの引きふたを引き抜く。

※PS 案の定いざシャッターを切る段になり、雲がかかったり、眩しいほどの太陽光があったりと露出がコロコロ変わりそのたびに大判カメラの設定のやり直し。そのたびに323名が『ドワ―』の反応。私の背筋から冷や汗とあぶら汗がたらたら出たのは言うまでもない。
※注1 大判カメラ(4×5判=シノゴバンと読みます)…縦横サイズが4インチ×5インチのとても大きいフィルムサイズを使用できるカメラでカメラ本体に蛇腹が付いていてさまざまなムーブメント(アオリといい、ピントを合わせたいすぐ手前から無限遠まで全てにピントを合わせることが出来るなど、さまざまなカメラワークや撮影表現ができるカメラです。4×5判以外に8×10判や5×7判があります。

T高校の3年生323名の代表である17名のアルバム委員達とともに創りあげて行く学校アルバム制作過程と、その中でのほのぼのとしたドラマを、このコラムをご覧になる皆さんに発信して行きたいと思います。