前回の続きです。カナダに居てカナダではなくフランスのテレビ番組の話をするのは、カナダでの滞在に少し飽きているので快適なアパートに落ち着いてネットで「Cash Invetigation」を見ているからです。カナダに飽きるのも、ここでは簡単に地元の人間を話しが出来ないからです。フランスと違ってカナダのカフェはあまり開放的でないように感じます。

さて、「Les vendeurs de maladies(病気の売り手)という番組ですが、ここでは薬品会社が製品を売るために研究者を抱き込んで、多くの人間に関する新しい病気を発明するというものです。

そこで取り上げられていいるのが、メタボリック症候群と骨粗鬆症なのです、これには驚きました。まさに日本でも盛んに話題になっている症状ですし、私も健康診断で、ウエストを測られて93センチだったので、メタボですねと言われたりした経験がありますし、3年ほど前ですが、血圧が130を少し超えていたので降圧剤を飲みますかと言われたことがあるからです。

30年以上前から規則的にジョッギングをしていて、走った後は血圧が100位に下がることを知っていたし、武田邦彦教授が降圧剤はうつ病に関係していると主張も知っていたので、笑って断りました。ただ薬を常用して薬品会社に儲けさせて中には心身の状態を悪化している人が多いのだろうと思っています。

番組によると、メタボリック症候群は、あたかも新しい病気のように装われているが、実際は肥満症、高血圧症、悪玉コレストロールの過度を含んだ状態に過ぎず、もし治療が必要ならばそれぞれを扱えばいいものであり、その曖昧な概念を病気を断定することで、各症状に過剰な重要性を付加し治療に向かわせるものとなります。

メタボだと言われ、肥満だとか、少し血圧が高いとか、コレストロールの数値が標準を上回ると、やせる薬や降圧剤やコレストロールを下げる薬品を処方されるし、医者もメタボのお墨付きでそれらの治療を施しやすくなる訳です。

そうなると、肥満度や血圧やコレステロールの標準値が問題になる訳で、その数値を低くしようとする圧力が企業の方からかかり、その数値が少なくなれば患者の数が突然増えることになる訳です。考えてみれば、肥満気味だとか、少し血圧が高いとか、コレステロール値が高いとかいう人は、年を取るにつれてどんどん増えて行きます。ほとんどすべての人間が疑似患者になりうるわけです。またこれらの症状は慢性的なものですから、薬物治療は半永続的になるでしょう。薬は常に消費されるのです。

これほど薬品会社に都合のよい話はありません。薬の売り上げがうなぎ上りに増えるからです。

さらに都合のいいことに、やせ薬や降圧剤やコレストロール値を抑える薬の効果が具体的の示されないことです。例えば降圧剤を服用した後で血圧を測定すれば、血圧が実際に下がるのでしょう、しかし、それによって脳梗塞等の病気を防いでいると言うのは、都合のよい推定に過ぎません。擬似薬物を使った比較研究も長期にわたって行われなければならないので、どれだけの信憑性があるか疑問です。

私の体験から適度の運動をすれば血圧は必ず下がると言えます。

さらに副作用でうつ病等の他の病気にり患して寿命を縮めることは十分あり得ます。そのような事例が「Santé: la loi du marché」という番組で紹介されています。

それは、コレストロール値を下げるクレストール(Crestor)という薬です。臨床実験で都合の悪いデータの改ざんが行われて予防薬として医学行政の許可を受けたこの薬が数兆円という莫大な利益を生み出したのですが、副作用による筋力の低下や糖尿病を引き起こしアメリカで訴訟に発展しているそうです。裁判は時間が掛かりますから、その間にも薬は売れ続けます。すでに決着した裁判で、300億円ほどの賠償金を支払ったそうですが、利益に比較すれば宣伝費のようなものでしょう。

骨粗鬆症の薬に関する調査は恐ろしいものでした。

基本的に老化していくと人間の身体は弱ってきます。骨も例外ではありません。そうすると日常生活で老人が骨折することが多くなります。そこで科学的に骨の密度が落ちていることが証明されます。そこで骨粗鬆症という病名が付き、骨密度の低くなった人に医者が予防として薬を処方することができるようになります。

骨折すると寝たきりになり正常な生活が送れなくなる等の広告が音楽やイメージを心理学を応用して不安を煽りながらマスコミに流れるわけです。骨折で寝たきりになった老人のニュースが取り上げられれば、それは即宣伝になります。不幸な事件を取り上げるのが一般のマスコミですから、殺人事件のように稀だが悲惨な事実は格好の題材です。

すると、検査等で骨密度が低下した人は、自分も骨折、特に腰の骨の骨折を心配するようになります。番組によると30歳の女性の骨密度を正常としているので、30歳以上の女性は多かれ少なかれ骨密度が低いと診断される仕組みになっているそうです。このように膨大な患者予備軍を生産するためのプロジェクトが、骨粗鬆症という病名の元に進んでゆくのです。基本政策は、恐怖を煽ることです。患者予備軍の人に、もしかしたら私もと思わせて医者に相談して予防薬を摂取させることです。

統計的には、腰の骨を折る人は100人に2人だそうです。番組で取り上げられている薬はホサマックス(FOSAMAX)で、臨床実験の結果、有効性は51%と薬品会社(?!)が報告しています。すなわち、100人に2人の患者が1人で済むと言うことです。そのために何人の人が薬を服用するのでしょうか。恐怖の宣伝が浸透すればするほど、薬の消費は増えます。予防薬なので常時の服用が必要になります。売り上げの上昇は止まりません。しかし、問題はそれだけではありません。重篤な副作用で健康な人が病気になり日常生活が破綻することが報告されています。顎の骨が溶けて行く病気だそうです。損害賠償の裁判になりますが、薬品会社は負けても膨大な利益に比べれば経費にしか過ぎないのです。裁判は当然長く続きます。この世界では、時間を稼ぐことは金を稼ぐことと同じなのです。

どんな副作用が強い薬でも一旦それが承認されれば、裁判になっても時間を稼ぐことによって金を稼ぐことができるのです。

当然、この種の商売に置いては、消費者が多ければ多いほど利益が上がります。そして、メタボリック症候群にしろ、骨粗鬆症にしろ潜在的な患者数は膨大です。誰もが心配する症状なのです。恐怖をうまく操作して人を操る商売です。現代の薬品会社は高齢化社会は実に魅力的な環境なのです。

諺に、「病は気から」とあります、薬品会社やテレビのニュースにつられて不安になったら用心しなければなりません。

余裕のない生活をしている人には慰めになるかもしれません。金が無ければ有害な薬を買うことも出来ませんから。

薬は頓服に限ります。常用しなければならない薬には十分 注意したいものです。

さて前回のブログと合わせて考えてみると、「成りすまし」しろ「病気の売り手」にしろ、人間の基本的な情念、恐怖を利用していることです。アランは、もし人間が恐怖を克服することができれば、幸福に近づけると言っています。デカルトの「情念論」の知恵はここにも生きています。