自称 アイヌ(Ainu)
人口 北海道 23,782人(2006年。北海道による「ウタリ生活実態調査」)、本州 約5,000人(東京2,700人、1988年)

特徴
個人名は「アイヌ名(アイヌ語:ainu re)」といい多彩なもので同名は少ない。男は「~アイヌ(人、男、夫)」で終わるものが多くアイヌがつかない場合も公式には語尾にアイヌをつけた。 なお、個人名は4歳から5歳になってからで、遅いものは8歳から9歳からだった。それまでは、ポイソン「子供」、エカチ「少年」、ヘカチ「少年」などと呼んだ。また、魔物を遠ざけるため、赤ん坊をテイネプ「べちゃべちゃ濡れているもの」、ションタク「糞の塊」とも呼称した。

『北千島アイヌ語』(村山七郎、吉川弘文館、1971)によれば、正式な個人名は、子供が成長して7歳から8歳ごろに性格がはっきりしてきたころに命名する。赤子に名をつけるのは産婆で、名前は決して変えず双生児が生まれればいつも一方を殺してしまうとしている。

明治時代の戸籍には、男性の個人名は女性と区別するためカタカナで表記した。また、現在はアイヌ名を持たないものが多い。

命名の原則
1. 同じコタンの者との同名は避ける。
2. 死んだ人の名前は避ける。
3. 縁起のいい名をつける。
4. 子供の癖、特徴、特別な出来事にちなんだ名をつける。
5. 魔神や厄災を避けるためにわざと悪い名をつける。

和名化
『1799~1801年のエトロフ島におけるアイヌの和名化と風俗改変の空間的・社会的拡散過程』(遠藤匡俊『地理学評論 2012年5月号』(日本地理学会)所収)によるとアイヌの和名化は択捉島では1799年に紗那から始まって1800年には全島に波及した。1800年には1127人の人口のうち18.5%の209人が和名化して1801年には比率は35.4%となった。

『エトロフ島 つくられた国境』(菊池勇夫、吉川弘文館、1999)には、近藤重蔵が日本名を付けたアッケシのアイヌの名前がある。
アイヌ名 日本名
イキタレ→第助
イロンシス→太郎助
コタンシュ→孝助
ブリウヱン→武助
シタラヱシキ→藤助 

その他の例
アヘヌヤシ→阿部助
イチヤンケムシ→市平
イトカラアイノ→唐助
イモンケセツクル→三吉
クテキラ→大助
トヘヌベシ→勇助
メントルシ→髭助
ユワレ→和助
ルリシビ→利助(留利助、瑠利助とも)

他では1855年に蝦夷地が幕府領となってから名前の和風化を奨励するようになる。『アイヌの足跡 増補改訂版』(満岡伸一、白老民族文化伝承保存財団、1987)では、明治に役人がふざけた名前を付けた例を記しており、アッチコッチ、ウマノクソ、チャワン、ビッコ、ヤキメシ、ワラシが出ている。ただし、アイヌ人は、エカシテバ ekasi-tepa 「おじいさんの・ふんどし」と名付けるように名前には無頓着だったとしている。

また、雑誌の『いぶり 創刊号』(未見)にかわかみ・ひろしが「差別の現実に浮くるること」という記事を書いており、白老の明治16年、明治17年の戸籍や旧土人給与知の名簿にホトケ、ホットケ、オソマツ、ヲナヲコ、ヲナラという例を書いている。

千島アイヌの個人名
『千島アイヌの軌跡』(ザヨンツ・マウゴジャータ、草風館、2009)によれば、自分のアイヌ名を放棄せずロシア式の姓名と合わせて使用することもあった。

イワン・(イワシピ)・プレチン ()がアイヌ名

日本時代には、ロシア式からの日本式へと変更した。

アベリアン→安兵衛(やすべ)
イヨン→弥次郎(やじろう)
イワン→岩吉(いわきち)
ヱレシー→栄四郎(えいしろう)
オンドレーイ→乙吉(おときち)
ケプリアン→健次郎(けんじろう)
セネポント→静二(せいじ)
セルゲイ→清吾(せいご)
ダニユル→団二(だんじ)
チモフェー→千助(ちすけ)
ヤーコフ→弥輔(やすけ)
ワシリー→和四朗(わしろう)

再度の改名においては、忠、貞、孝、梯、仁、義、禮、智、信を頭文字に使用するものが多かった。

男性の個人名の接辞
-ainu 「人」、「男」、「夫」
-ash 「立つ」
ekasi- 「長老」
kamui- 「神」
kotan- 「集落」
-kur 「人」、「男」
-no 「~をよくする」
-uk 「~を取る」

アイヌ人の男性の個人名(1,944個)
アイェトゥリ
アイキランケ
アイクシテ
アイコウイン
アイツライン
アイトゥレ 「矢の垢」
アイトサン
アイニジ
アイヌニツネ
アイヌラックル ainu-rak-kur 「人・臭い・人」。人間に生きる知恵を教えた文化英雄で名前負けと言われる。
アイノシルシ
アイノネ 「人間となる」
アイヒカン
アイヤニ
アイラパッテ
アイランケ
アイリプンケ
アウカシュ
アウトヨ
アウヱリキ
アエコヤン
アエトモ
アエハシ
アエヒリカ
アエヘカ
アエラフトエ
アエランケ
アエリキリン
アカラカ
アキシペ
アク 「弟」
アクタクル
アクチャイヌ
アクメカル
アコシ
アコルカム
アザエ
アサクアイヌ
アサマクンネ
アシクニハ
アシケトク
アシナイノ
アシニケ
アシラン
アシリアイノ 「新しい人」
アシリカンナ
アシリクロ
アシリタク
アシンノカラ
アチウテシ
アチャエタク
アチャポ 「伯父」
アチャユエノ
アツクル
アッサケ
アッチャシクル
アッチャリラ
アツテニコ
アツマイン
アツムヤシク
アツヤエーク
アト゚イ 「海」
アニツプレ
アニノ
アバカアイヌ
アヒイ
アフネカアイノ
アフンテクル
アベキムイ
アベシヨシ
アヘトカリ
アヘヌヤシ
アペピーロー
アマイタック
アミアンク
アムチヤリ
アムリキン
アモホロ
アヤシ
アユツケ
アヨホシ
アラケマウシ
アラテバ 「半分のふんどし」
アラユク
アリカッテ
アリクシ
アリクシヤ
アリサマ
アリトカン
アリマウカ
アリマキナ
アルランコエキ
アルンカ
アレッアイヌ ア・レッ・アイヌ「座って・さえずる・男」
アワアンクル 「座っている人」
アワウケ
アヱラト
アヲクタ
アヲリキン
アンクニトク
アンタイノ
アンチカレ
アンツマツ
アンテポニ
アンデレッキ
アントウアイヌ
アントタン
アンヌ
アンネン
アンノウツケ
アンノウム
アンノヤ
アンノラン
アンラ 「クロユリ」
アンラク
アンラサレ
アンラム
イアラクル
イアンノトイ
イウシマウイ
イエイケウ
イエカレ
イエクパ
イェノイェ
イエンカリ
イオンワッカ
イカイサウック
イカエラ
イカシアイヌ
イカシアツ
イカシトベフ
イカシパ
イカシフシユ
イカシホシ
イカシマトク ikasma-tuk 「ありあまって・育つ」
イカシモリ
イカシユク
イカシュロ
イカシリ
イカセス
イカップヌーレー
イカニッカ
イカラキ
イカリトム
イカルクテ
イカレロン
イカンソエ
イカンクマ
イカンビタ
イカンフリ
イキサクサ
イキタム
イキタレ
イキツカ
イキヌンバ
イキラシ
イキリカシ 「厳しい納屋」
イキリワンシ
イクサンクル
イクサンダ
イクトモ i-kuttom 「それ・喉」と解釈できる名前。
イクニンケ
イクフカンテ
イクヘ
イクラム
イクルイ イ・ク・ルイ「それ(酒)を・飲む・激しい」
イクルカサン
イクレシュイェ
イクンバツカアイヌ
イケシコアイノ
イケシツルハ
イケハ
イコイレアン
イコエキ
イコエフ
イコクタ
イコシユク
イコチマイン
イコツチヤ
イコツユシ
イコトイ
イコハカイヌ
イコマナイヌ
イコラッテ
イコリカヤニ
イコリキナ
イコルパ
イコレアシ
イコレキ
イコレフ
イコロク
イコロコンナ
イコロハシウ
イコンヌセ
イコンランケ
イコンリアイヌ
イコンロシケ
イサアイノ
イサイコカレ
イサケリ
イサナシラ
イサハンクル
イサラ
イサンケアレ
イシヤウルクル
イシンテ
イソウレウク
イソカトク
イソコラン
イソタイヌ
イソチウ
イソツクイカシ
イソテクウク
イソトルケ
イソナイ
イソナシ
イソノシケ
イソラン
イソリ
イソリッカ
イソンカトク
イソンノアシ 「狩りの名人になるように」
イタカアレ
イタカクシ
イタキアニ
イタキシア
イタキシコマ
イタキシリ
イタキシロマ
イタキマ
イタキヤ
イタキレ
イタキンサン
イタクエアシカイ
イタクトゥレン
イタクトンコロ 「強く話す人」
イタクニセ
イタクニップ 「もの言う人」
イタクヌムケ
イタクノア
イタクノト
イタクパテク 「言葉だけ」
イタクパロカ
イタクマウク
イタクモレアイノ
イタクラッチ
イタクリキン
イタクレコ
イタクレフニ
イタケマ
イタケレク
イタコアイノ
イタツクニ
イタノクト
イタマイル
イタリセ
イタリチンネ
イタリマウカ
イチベベカリ
イチャカアイノ
イチヤリカイ
イチヤンアイノ
イチヤンケム
イチヤンコエキ
イチユラン
イツコ
イッコラン
イツフイ
イテカニ
イデシケレ
イトカラアイヌ
イトカリ
イトテシュ
イトテン
イトニシキ
イトマンクル
イトミアイノ
イトメサン
イトリカウク
イトルシンカ
イトヱマヌ
イトンコツ
イトンピヤ
イトンべウツク
イナウシアイヌ
イナウレス
イナオカントリ
イナクサト
イナクシ
イナホカリ
イナワツテ
イナヲアツテ
イナヲクシ
イナヲサン
イナヲラン
イニシヲ
イニセテッ 「物を掬う手」
イニンカリ
イヌカウリ
イヌカル
イヌキシヤラ
イヌクマ
イヌマカシ
イネコッアイヌ
イヒリーキ
イブコカリ
イブベアイノ
イペアシケ
イへウラ
イヘカウク
イペタアコ
イベチカレ
イへナリ
イペニックル
イヘララ
イペランタ
イホカイ イホカィヌ「商い人」
イボコ
イポッスネ
イポホニ
イホレサン
イホントク
イマキタヌ
イマクマ
イマサカ
イマシヌシヤ
イマシメ
イマラウリ
イマンヌシヤ
イムシウタレ
イムヌフテ
イメツケウ
イモスエ
イモタル
イモトクテ
イモムシ
イモルトイ
イモンクン
イモンケセツクル
イモンタサ
イモンニク
イヤルキ
イユクテアン
イユクノ
イユロコツ
イヨコテ
イヨッタクンデ
イヨノエカシ
イラウシテ
イラサク
イラシキ
イラバエ
イラミキロ
イラムクテ
イリマカ
イリモ
イリワフラ
イルキ
イルサアイノ
イルチカン
イルヲセ
イレクホリ
イレツブネカ
イレヤウク
イレンカ
イレンカシ
イロチマイン
イロンシス
イワイセ
イワオクテ
イワクテ
イワケシ
イワシビ
イワニー
イワレカアイヌ
イヲレサン
インコトク
インチウ
インネマツ
インパク
インレンカ
ウィカレイ
ウイタㇰアシ
ウェケカランケ
ウェーニキ
ウエカサン
ウエサナシ
ウエモイケ
ウエリシテ
ウエンシュナシ
ウエンシルシ
ウエンチ ウエン・チ「悪しき・陰茎」
ウェントゥク
ウェンポ
ウェンホットルン
ウェンレップ
ウカイシャケ
ウカリクシ
ウカルサンゲ
ウコッテ
ウコテテ
ウコヌカル
ウサクサレ
ウサムダレ
ウサモツテ
ウサレキノ
ウシロク
ウダトムウングル
ウタリアン 「仲間が多い」と解釈できる名前。
ウタレ
ウタレコンド
ウッテアイノ
ウテクンテ
ウテレキ ウテㇽケ 「跳躍」
ウトカンテ
ウトマサ(ウトウ)
ウトムリウク
ウトリキ
ウトルミ
ウトレントク
ウナータ
ウナカウシ
ウナケシ
ウナシタ
ウヌカル 「相見る」。女性の個人名でもある。
ウハカウ
ウバリリヤン
ウパレッテ
ウピシテクル
ウフキリ
ウへシチウ
ウヘンクロアイノ
ウヘンスー
ウマエカシ
ウメヲ
ウラキリ
ウラタリ
ウラヘンカ
ウラリトエニ
ウルハイケ
ウレキアシ
ウレタンノ
ウロッケ
ウワセラン
ウンタ
ウンマシ 「ウマの糞」
ヱイサク
エイパロ
エウチャチヲ
エウミンカ
エーハンテ
エカシオトンプイ 「祖父の肛門の穴」
エカシカオ
エカシケ
エカシコロ
エカシサムシ
エカシテウク
エカシテカニ
エカシテキオク
エカシテバ ekasi-tepa 「祖父のふんどし」
エカシトク
エカシトクル
エカシトコロ
エカシトベツ
エカシトム
エカシハシュイ
エカシプニ
エカシヘシ
エカシモ
エカシュ
エカシラエ
エカシラツ
エカシランゲ
エカシンノク
エクニシノ
エクルクンチ
エケクシテ
エケマニ
エコキマ
エコナカ
エコマ
エコヌムケ 「宝物を選ぶ」
エコラッセ
エコリアチ 「宝物を集める」
エサハアイノ
エサンバシ
エサンペカ
エシャラ
エショマロケ
エシリカヌ
エソクテ
エソンカイ
エタエクル
エタキウェン
エタマイル
エタマカウ
エチャシルイ
エチヤリビタ
エッテトッウ
エテコンナ
エテハン
エテンナ
エトナウ
エトメチュイ
ヱトランク
エトンビ
エナオカシトリ
エネセヌク
エネンタ
ヱノトク
エハシュイ
エバロ
エパングル
エハンテヌ
エヒソ
エビタイン
エヒテキ
エヒララ
エプカロク
エフツチ
エフヌク
ヱベトク
エヘチカリ
エホレサン
エボロサン
ヱボンノシク
エミシ エンチュ「人」が原義と解釈できる名前。
エモレエ
ヱラツケ
エラマヲイ
エララグル 「いたずらする人」
ヱランマカ
エリカテカ
エリリ
エレルシコロ
エワキアイノ
エンカトム
エンカリペ
エンキピ
エンタコ
エントヌシ
エンリシウ
オオククイン
オカツフ
オキラウアチャポ 「つのある伯父」の意。綽名。
オサレアイノ
オタウシ 「砂に住む」
オッカユ
オッフランケ
オトト
オナハオコ 「父の後を追う」
オニシトムシ
オニビシ
オハイベーカ
オビシテクル
オプケクル 「放屁する人」
オブシカ
オプルツ
オベフキ
オペリクン オッㇷ゚「カジキマグロをとる鉾」、エリクン「上手」から。
オマンレ
オヤツフリ
オヤワイン
オヤワッカ
オロアシ
オロキセ
オンゴッテ
オンネシ 「貴い糞」