Namuraya Thinking Space

― 日々、考え続ける ― シンプルで、しなやかに ― 

週刊経営財務[2017.01.16]道を切り拓く・世界一への財務戦略

会計関係の雑誌に対するインタビュー記事なので、多少の配慮はあるのだろうが「今後はCFOが重要。CEOになるには営業や開発をやるよりCFOになった方がよい」とのこと。永守さんにここまで言われると、会計を勉強してきてよかったなと思える。とは言うものの、一方では「日本には経理部長候補しかいない。CFOになれる財務の専門家がいない」という辛口も。私自身は、会計畑でやってきた訳だが、もう少し違った角度から、自分の仕事を見直してみるよい潮時なのかもしれない。

インタビューの最後に掲載されていた次の言葉には襟を正す思いであった。「将来はアメリカと同じようにCEOと同格のCFOという人がもっと日本に出てこないと、いまのコンプライアンスの問題からはじまって、いろいろな制度が機能しません。日本もいよいよ欧米並みのCFOがものすごく重要視される時代がきますよ。だから、経験と知識を伸ばしてそういう時代に備える。そういう時代になれば、引っ張りだこになるでしょう。今から10年前、20年前とは違って、いかにCFOとかそういう役目の方が大事な時代に来ているかということをよく認識して、もっとプライドを持って仕事をしていただきたいですね」

それでは気になった箇所を要約して引用。

・財務の基本というのは「最後はキャッシュ」。バランスシート上に利益が出ていても、キャッシュがなければ会社は潰れる。財務戦略の基本は「絶対に会社を潰さない」こと。

・営業が必ず回収までやること。マーケティング=モノを売る、のではなく、売ったものは必ず回収する。マーケティングの中には「回収」というものがある。

・会社が潰れる寸前というのはキャッシュが突然足らなくなる。しかしながら、半年先くらいまでの資金計画ができていれば、その間に対策を講じることができる。そういった場合に、一流企業の手形は割り引いてキャッシュ化できる、いざというときの保険。安易に割り引いてはいけない。

・資金調達のコツは「安易なお金を受け入れないこと」。親戚や親のお金を入れてはいけない。また、地方銀行や信用金庫など、比較的借りやすいところも金利が高い。街金融は言わずもがな。そこで、ハードルは高くてもメガバンクから借りる。そうすると安い金利で借りることができる。また、中小金融公庫や京都府の中小企業向け融資などは、無担保だったり担保が有利だったりする分、審査が非常に厳しい。しかしながら、こういった厳しいところから借りることができると、他の銀行からも借りやすくなる。

・どの段階でどの金融を利用するかが大事。成長段階では多少苦労した方がよい。

・成長を目指す段階では自己資本比率を気にし過ぎてはいけない。自己資本比率が高いに越したことはないが、いまここで1億円を投資すれば会社がもっと伸びるかもしれない、という時に、「いや、自己資本比率が下がるから借金はやめておこう」といったら、町工場で終わってしまう。会社の規模が小さいときはすべて自己責任だから、お金を借りてでも会社を大きくしていくべき。その段階で自己資本比率は無視してもよい。会社の規模に応じて、重視すべき指標がある。

・財務の視点から会社の経営をきちんと見る人がいないと会社は伸びない。どこで借金をするか、どこでリスクを取るかという判断はCFOの役目。潰さないことの次に大事なのは、会社を伸ばすこと。

・アメリカのベンチャーはエンジニアが素晴らしい技術をもって会社をつくると、自分は財務のことが分からないとビジネススクールを出た人を雇ってその人に財務を任せる。日本の場合は企業のオーナーが全部自分でやろうとする。これが、伸びる会社が出てこない最大の原因になっている。技術系の社長であればあるほど、CFOを重視しないといけない。

・「お前は集計屋か。下から上がってくる数字を集計しているだけじゃないか」とよく叱った。

・経理部長とCFOの違いは何かと言えば、過去のことをやる人と未来のことをやる人の違い。「いまから世の中がこう変わってくるんだ。だからここでこういうふうに投資しておかないと危ないな」、「ここでキャッシュポジションを高めて行いと企業が将来危なくなるぞ、来年は不況がくるぞ」、「今から円高がやってくる」など、未来をきちんと見計らって財務をやる。これがCFO。

・アメリカでは数学や理科系のCFOがたくさんいる。開発をやっていた人がCFOになるケースもある。日本では経理部長の出身者がCFOをやっているが、日本とアメリカでは意味合いが全く違う。これが理解できていない人が多い。

・M&A成功の3条件。(1)絶対に高値で買わないこと。適正価格で買うこと。(2)自分の社風にあった会社を買うこと。ポリシーに合わない会社を買っても成功しない。(3)技術や顧客が合わさることによって、新たな売上があがったり、収益が高まったりするといったシナジーが期待できる会社を買うこと。(海外企業は、業績がピーク時に売る。それを買うとそのままでは絶対に利益が出ない) さらには、「誰から買うか、誰に売るか」も大事。

・統計によるとM&Aの失敗は88%。一方、買収というのは買うまでが20%で買ってからのPMIにかけるべき労力が80%。しかしながら多くの企業がPMIに力を入れないがゆえに、失敗する。

・グローバル展開にあたってはリージョンのごとの統括会社が必要。これは日本からのコントロールが難しいから。基本的に日本人で欧米人を使える人は極めて少ない。英語や知識ではない。やはり、ドイツの会社はドイツ人、イタリアの会社はイタリア人が経営するのが一番よい。とはいえ国ごとにマネジメントするのは大変なので、欧州で一つの統括会社をつくり、そこの全体を見るCEOとCFOを置いた。

・不正についてはある程度起こることを前提にした仕組みをつくる。不正が起こっても会社がぐらつかないようにしておくことが大事。各地の統括会社に監査部門を置き、いろいろな形で監査する体制にしている。監査法人、内部監査、特命監査などで悪いことができないようにしておく。こうして善人を悪人にしない仕組みをつくっていく。

・CCCの管理は財務的な側面からも有効だが、一番の本音は不正防止。不正で一番多いのが在庫で、次が売掛金。(買掛金は支払わなかったら相手が言ってくる) CCCで縛ると余計な在庫を持ったり、売掛金を放置しておくことができなくなる。月末近くに利益が足りなくて余分な在庫をつくったり押し込み販売をしたりすると、CCCが悪化する。これにより不正が激減した。要するにお金の流れをいちばん重視すると会社は健全化するということ。

・為替については、為替予約によってリスクヘッジをしたりしてきたが、結論としては何もやらないことにした。為替の変動は誰にも分らない。そんな中で為替予約をすると、急激な円高や円安に対しても、「どうせ予約しているんだろう」と甘えが出てしまう。しかしながら為替予約をしていないと、皆が危機感をもって真剣に原価改善に取り組んでくれる。しかも、多国籍で経営していれば、全てをカバーすることはできない。結局円高だろうが円安だろうがプラスマイナスゼロになるよう、債権債務のバランスをとっていくことが大事。

・アメリカ人に対して「円高で20%目減りしているから、売上を20%あげろ」といってもついてこない。「あなた方は円に何の関係もありません。あなたの国の通貨で最高の売上と最高の利益をあげてください」といったほうがよい。そのうえで為替差損益はすべて日本で持つ。これは実損ではなく評価損。3〜5年で見たら、プラスマイナスゼロ。

・ROE重視と言いつつ、自社株買いというのはおかしい。健全な利益を上げてROEを上げていくべき。

・配当性向は30%を目安にしているが、30%は払ったことがない。想定以上に利益が増えるので、結果として30%にならないのだ。

・今の会社の規模では自己資本比率を意識している。何故なら、資金調達にそなえて格付けが大事になるから。AAやA+以上になると、調達コストが格段に安くなる。自己資本比率が50%を切ると格付けが悪くなるので、外部調達はあと何億までなら大丈夫と、自己資本比率を意識しながら、実行している。

・指標は会社の成長に合わしてその都度変えていっている。現在は株式価値=時価総額を上げていくため、一株当たり利益を重視している。つまり営業利益と最終利益。海外では最終利益しか見られないが、日本電産では本業の利益をものすごく大事にしている。

◇1540 『トコトンやさしい5Sの本』 >平野裕之/日刊工業新聞社

「トコトンやさしい」シリーズは、当たりの本に出会うと本当に分かりやすくて、ためになる。Amazonでどんなシリーズがあるのかを検索していたら、コストダウンだとか5Sだとかの本があり、思わず衝動買い。せっかく工場にいるので、原価計算だけではなく、工場がどのように運営されているのかも知りたいと思ったのだ。

新しいことを学ぶときに意識しているのは、世の中の一般的な手法と、自社の独自の実務的な手法の両者を比較しながら学習していくということ。一般論だけでは実務が動かず、かといって実務だけを学んでいると改善点に気づきにくい。

さて、本書はAmazonで中身を見ずに買ったのだが、、、工場の実務について書かれた本であり、私にとってはちょっとマニアックすぎたであろうか。経理の仕事に活かせる部分はないかと意識しながら読み進めたが、書類の整理整頓などとはレベルの違う、徹底した整理整頓の理屈が展開されており圧倒されてしまった。

そんな中、「5S抵抗の12項目」というは、5Sのみならず、改善や改革を進める際に出てきそうな抵抗の形だなと思い、興味深く読み進めた。このページだけ引用しておこう。他のページについては、とりあえず、今のところはさらっと流し読みしておき、また機会があればきちんと読み込みたい。


1.職場の照れ:今さら整理・整頓なんて
2.トップの自尊心:5S運動の委員長を、社長のオレがやるのか
3.職場のあきらめ:どうせすぐに汚くなるんだから
4.5Sの不認知:整理・整頓なんかしたって、業績が上がるわけではない
5.叱れない職場:そんなつまらないことで、とやかく言うのはどうも
6.職場の見栄:整理・整頓なんて、すでにできている
7.個人管理:これだけ書類が散らかっていても、オレにはわかるんだから
8.過去の栄光:そんなものは、20年も前にやったよ
9.部門間の壁:5Sや改革は現場の問題だ
10.問題転換:忙しくて整理や清掃をやっているヒマがない
11.感情のもつれ:お前に命令されてやるのはイヤだ
12.職場の身勝手:いーじゃないか、儲かってるんだから。オレの好きなようにやらせてくれよ

NPO法人ファザーリング・ジャパンの川島高之理事代表の講演を拝聴。「働き方改革」は、随分と浸透してきており、前半部分は知っている内容が多かったので割愛。(たまたま私が知っていただけで、内容的には非常に濃くて面白いものだった)

今日はちょっと疲れたので、印象に残ったところを箇条書きで記録するに留めておきたい。

・仕事以外の人々と接して、様々な経験をすることで、視野や人脈が広がる、多様性や柔軟性が身につく。

・仕事時間を濃縮し、生産性を高めていく過程で効率的になる、段取り上手になる、主体的になる。一回で決めるぞという気迫が身につく。

・チームで仕事をすることで、業務の見直しと属人化の回避になる。休みやフレックスと取得しやすくなり、お互い様の精神が生まれる。

・部下の「自立」をサポートするのが今流のボス術。

・部下のWANTSを聞き出す。そのうえで、部下のCANと職場のNEEDSを見極め、3者を出来るだけ一致させていく。

・(1)傾聴:部下の話を「聞き流す」のではなく「聴き入れる」。(2)共感:部下の置かれた環境を理解し、安心と信頼感を与える。(3)称賛:部下の良いところを認め、努力したことをほめる。

・マミートラック:出産前は重要な仕事を任されていたのに、育児休暇から復帰後は、軽業務しか担当させてもらえず、やりがいを失ってしまうこと。

・日の目を見ない職種にこそ、スポットライトを当てて、その仕事が組織全体の成功に不可欠で価値があることを認める。

・自分でやる覚悟:部下への指示はあいまいではないか? 部下を説得できないから怒鳴っているのではないか? 「聞いてないぞ」は部下から頼られていない証拠。だから部下を叱るのではなくボスが自省すべき。

・やらないことを決める覚悟:大ボスからの指示に対して、ダメなものはダメと言い切る覚悟を。組織や部下の業務を減らすために、やらなくていいことを決める覚悟を。そのために、過去の慣習や業務を徹底的に疑ってかかること。

・部下に任せる覚悟:部下の力を信じでドンドン任せる。部下が意見を言いやすい雰囲気を作る。効果として、部下は任されるほど育つ。上司はマネジメントに費やせる時間が増える。

・ヒマになる覚悟:上司自信が「予定が無い」という予定を作る。2週間に1回程度。心身の休息、見聞を広げる、一人時間で熟考する、部下が相談しやすくなる、いざという時、部下の代打になる。

・決断する覚悟:「よしわかった、やってみろ」「あとは、俺が責任をとる」「俺の腹は決まった、あとは俺が大ボスを説得してくる」 決断を先延ばししたり、他者に転嫁する上司が、部下の時間とヤル気を奪っている。

・見栄を捨て、過去を忘れる覚悟:部下に弱音を吐いてもいい。自分の失敗を部下に話す。部下の方が上のことは素直に認める。過去の栄光にすがらない。「成功は負債だ」を意識する。

・やらない覚悟:私生活の時間を仕事カレンダーから天引き。年初に私生活の予定をブロックする。→やりきる覚悟:残った時間(仕事時間)は全力投球で最大の成果を。→やれない覚悟:それでもできないことは能力の限界だと思って諦める。

・会議は8分の1に。回数を半減、時間を半減、人数を半減。1/2x1/2x1/2=1/8

・メールを筋肉質に:短く明確に結論から。メールを軽く:やたらと添付しない。メール数を減らす:宛先・CCは最小限に。一目瞭然に:内容に合わせて件名変更。溜め込まない:即レス、即削除、即移動。メールに頼り過ぎない:10行以上なら電話か面談。

・資料作成に時間をかけない。事前の骨組み合意で手戻りとやり過ぎを回避。社内資料に凝りすぎていないか。資料作成は自己満足になっていないか。簡素化できないのは煮詰まっていない証。定型化・データ共有化。

・誰が、いつまでに、何をやるのか、互いの役割や業務を明確化する。

・仕事のゴールを定め、どこまで「深入り」するかを、決めておく。

・事業計画や戦略策定などの作成に膨大な時間をかけない。

・いつのまにか「手段が目的化」していないかチェックする。

・本質を見極める:この仕事の究極の目的は? 上司からの指示の本質的な意図は? 顧客が要は何を望んでいるのか? 全身や改善しない根っ子の問題は? 叱られた根本的な原因は?

◇1539 『僕が「プロ経営者」になれた理由−変革のリーダーは「情熱×戦略」』 >樋口泰行/日本経済新聞出版

樋口さんに関しては、ダイエーの再建を引き受けたりして気骨のある経営者だと思っていた。前作の『「愚直」論』も、樋口さん「熱さ」が伝わってくるよい著書だった。今回も、その等身大の姿をさらけ出しており、好感が持てる本。何枚かポートレートが掲載されているのだが、非常によい顔になったと思う。年下の私が言うのも何だが、こういう風に年を取りたいなと思わせる顔。

一番印象的だったのは、経営者として「帯域幅」を広げる必要があるという記述。二律背反するものを自己完結させていく、というのは、私自身が重要だと思っていることでもあり、非常に共感しながら読み進めた。特に1〜2章は経営に関する普遍的な内容になっており、素晴らしい。

後半は、ご自身の奮闘記になっているので、1〜2章の具体例と思えばよいであろう。残念だったのは、ところどころに網掛けがしてある点。こういった本からは、読者一人ひとりが重要だと思えるところを心に書き留めていけばよいのだ。わざわざ出版社や編集者に「ここが大事です」と教えてもらう言われはない。読者を馬鹿にしていると感じてしまった。

さて、それでは気になったところを要約して引用。

・日本人に受け入れられるキャラクターや営業力と、真逆のアメリカ人に受け入れられるキャラクターやアグレッシブさの両方を持ち合わせていなければ、日本法人の成績は上げられない。

・日本的なウエットさと、アメリカ的なロジカルな体質を付加して共存させていく、つまり「帯域幅」を広げていくこと。

・「たくさんの部下を持つマネージャーはルーターのようなものである」 ルーターの帯域幅が狭く、伝送スピードが遅いとデータのやり取りがすぐ停滞してしまうように、マネージャーの帯域幅が狭ければ仕事が滞留してしまう。

・外部とのいろいろなリレーションシップに長けていることと、内部のハイスピードで俊敏性の高いオペレーションとを両立できている状態を保ち続けなければならない。

・年齢とともに見える景色はどんどん変わる。

・若い人にとって民主的な職場にならなければならない。

・終身雇用が悪いのではなく、終身雇用に甘える社員が悪いのであって、終身雇用にふさわしい人にならなければいけない。

・上司の立場では、失敗を恐れるなと発破をかけるならば必ず自分も絡んで、「連帯責任だ」と言い切るぐらいの度量がなければならない。

・戦略性の高い人と実行力・現場力が高い人では求められる能力は二律背反だ。現場力が高い人は、現場が大好きで義理人情に厚く、「俺についてこい」で人を導く。一方、戦略性の高い人は現場との親和性が低いことが多い。両方の能力を身につけているリーダーは滅多にいない。しかし相矛盾する両方が一人のリーダーのなかで自己完結していないと変革は進まない。なぜならば戦略を理解して現場に入り、「あの人の言うことならばやってみよう」と信頼してもらえなければ大規模な変革は身を結ばないのである。

・自分自身でトゥ・ドゥ・リストをつくり、そこに書き記された仕事(項目)を部下に託した場合、託したらすぐにリストから消せるようなマネジメント力を身につけてほしい。部下が完了するまでリストから消せないようでいるのは、マネジメントになっていない証左だ。




【目次】

第1章 どうすれば「自分の価値」を高められるのか?―キャリアとスキルとビジネス経験
第2章 なぜ、リーダーをめざすのか?―変革の時代のリーダー像
第3章 なぜ、組織を変え続けるのか?―変革をマネジメントするということ
第4章 なぜ、戦略がうまくいかないのか?―徹底的にやり切るためのリーダーシップ
第5章 なぜ、マイクロソフトは変わったのか?―外資系IT企業にも大企業病は忍び寄る
第6章 これからITはビジネスをどう変えるのか?―クラウド革命とITリテラシー

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PRESIDENT[2016.08.15]元外交官に学ぶ先送り

書類整理をしていたら、雑誌の記事のコピーが出てきた。「先送り=悪いこと」という固定観念を持っていた私にとっては、斬新な発想だったので、コピーしておいたもの。ブログに書こうと思ってそのままになっていたようだ。せっかく発掘したので、概要を記録しておきたい。

・日本人の政治家やビジネスパーソンは、交渉のテーブルで「先送り」という行為をあまり戦術的に使用しない。一方、アメリカなどの国は巧みに先送り戦術を駆使して、関係する相手国を翻弄する。

・組織や個人として「先送り」を戦術として成功させる最大のポイントは、ロングスパンで練った戦略を持つこと。やむを得ず先送りするのと、戦術的に先送りするのとは、まったく異なる行為。

・先送りとは、自分にとってベストな状況が到来するのを待つこと。不利な状況では無理して頑張らない。

・交渉上手な国は、日本人には信じられないほどのロングスパンで、先を読み、戦略を練る。時間軸を持ち、10年先はこうなると予測しながら、逆算して現状を判断する。よって、目先の利益・判断に流されることがない。

・日本国内のグローバル人材の研修などで、今この瞬間の問題について答えられる人はたくさんいるが、3年後の課題を聞くと答えられない人が多い。頭の中に先のビジョンや時間軸というものがないのかもしれない。


先送りがよいとは思わないが、ロングスパンで考えることは重要。自分のキャリアパスはもちろんのこと、自分が所属している組織、会社の戦略そのものなども、自分なりに考えてみる必要があるだろう。

◇1538 『日本電産永守重信・社長からのファックス42枚』 >川勝宣昭/プレジデント社

ワンマン、カリスマ経営者のイメージが強い永守さんだが、個人的には好きなタイプの経営者。時間だけは誰もに平等に与えられていると、とにかく長く働く、人の倍働くという戦略で、日本電産を大きくしてきた方。正月も午後からは仕事で、365日働くという猛烈社長だった方である。そんな永守さんだが、最近は労働生産性の大切さを認識され、残業ゼロを目指しているという。この自己否定ともいえる変節には驚いた。さすがである。

さて、そんな永守さんの片腕として働いた経験をお持ちの筆者・川勝さん。買収先の企業に実質のトップとして赴任し、企業再生を実践してきた方。川勝さんが悩んでいるときに届く、永守さんからの手書きのファックス。そんなファックスの中から、選りすぐりの42枚が選ばれている。

もともと好きな方の発言集なので、非常に面白く読み進めた。川勝さんの永守社長に対する尊敬と畏怖の念が伝わってくる良書である。たくさんの箇所に線を引いてしまったが、中でも特に印象に残ったところを引用したい。

・自分のポストを脅かす部下を育てろ!

・当たり前のことを当たり前にやれる会社にせよ。日常管理を担当者任せにしない。日常管理力の強化こそ経営者の仕事だという意識が必要である。

・「すぐやる」はスピードを、「必ずやる、出来るまでやる」は物事を徹底することを意味していると解釈できる。

・会社づくりにおける土づくりとは、企業風土をよくすること。永守社長ほど「意識改革」を企業改革の筆頭に持ってくる経営者はいない。

・企業再生の際には永守社長からA3の紙1枚が渡される。そこには「再建の指針」とあり、主要な経営目標数値が30項目ほと並んでいた。最初に「意識改革」に関するものが数項目、次にコストダウン、売上強化、リーダーの心構えと続いて、最後に「会社を1年以内に黒字化すべし」と結ばれていた。

・私と「経営感性」を同期化せよ。

・日本電産の経営計画発表会の資料は、前期実績を〇△×で評価するだけ。細かな言い訳は書かない。その代わりに、前期の結果を受けて来期はどうすべきか、何をやるか、どうやるかということがたくさん書いてある。計画未達の理由を長々説明すると「いつまで、できない理由をダラダラ喋っているんだ。大事なのは、どう戦うかだろう」と厳しく叱責される。

・「結果責任主義」とは、考え方ではなく行動規範。結果がどのようになるかを事前に予測し、計画どおりの結果が出るように手を打つことが経営者の役目だということ。

・材料・外注費は売上高比50%以下、経費は売上高比5%以下、売上については訪問件数を月100件にせよ。

・「経営は原単位だぞ。原単位を押さえていないと経営はできないんだぞ」→「明日から全部伝票を見る経営をやれ。君が見るんだ。君が、全部、見ろ」

・「君な、向こうから困難サンがやって来たとしよう。困難サンが、向こうからトコトコ、君のほうにやって来たと考えてみなさい。君としては嫌だ嫌だという気持ちだろう。困難サンから逃げたいと思うだろう。で、逃げる。横に避ける。そうしたら、困難サンはすーッと脇を通りすぎていくだろ。その瞬間、通りすぎる困難サンの背中をちょっと見てみたら、君、背中には解決策というリュックを背負っているではないか。だから、困難から逃げるということは、結局、解決策も逃がしちゃうということなんだよ」

・2割の社員の支持が、改革が始まるための条件だ。

・「市場価格は神の声」この言葉がファックスで流れてきたときは思わず襟を正す思いになった。これこそ永守流経営の神髄。日本電産が他の会社と異なる最大の特徴である。市場価格を参考値として見るか、神の声として聞くかによって経営はまったく違ってくる。自社から世の中を見るか、世の中から自社を見るかの違い。世の中にそういう価格が存在する以上、それを自社のものにして、その価格でも利益が出る経営をすべきである。

・コストダウンは社長の仕事。なぜなら、これが経営に1番影響を与えるマターだから。経営者は経営に最も重要な事柄を選び、重要なものから自ら泥をかぶってやる。しかも低パフォーマンスで満足しない。経営者が先頭に立って徹底して取り組むと、社員も真剣になる。

・単価が継続的に下落する市場環境での経営目標は「売上高」以外に「売上数量」を設定する。10%単価が下がったら、数量を10%余計に売るという経営をするか、10%の購入品原価引き下げを実施しないと、逆ザヤとなり経営が維持できなくなってしまう。

・「部下の過失は経営者の過失、組織の過失は経営者のマネジメントの過失」

・「君は経営者か、経営管理者か」

・「マンネリ・油断・驕り・妥協・怠慢・諦め」が会社をおかしくする。


1つ1つの言葉に、経験に裏打ちされた重みを感じる。一見不合理にも思えるものも、川勝さんの解説を読むと腹落ちする。売上の目標項目が顧客訪問件数月100件だけ、というのもシンプルで面白い。こういったことを、まさに「徹底」するからこそ、成果がでるのであろう。

最後に、読んでいて思わず涙してしまった一文を紹介したい。永守さんが言うから味があるんだろうな。

・花の咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ



【目次】

第1章 会社を変えよ!それがスタートだ
第2章 “スピード”こそ最大の武器
第3章 徹底する会社は、気持ちがよいものだ
第4章 困難から逃げるな、逃げると解決策も逃げていく
第5章 営業を機関車にせよ
第6章 ダントツのコストダウン
第7章 リーダーで会社は9割が決まる

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録画しておいたNHKのスーパープレゼンテーションを視聴。この番組はTEDで行われたプレゼンから選ばれた一本を、伊藤穰一が解説を加えるという構成。TEDについては、英語の勉強のためiPhoneに英文字幕が出るアプリをインストールしており、そちらで見ることが多いのだが、伊藤さんの解説が聞けたり、自分では選ばないようなジャンルのものが取り上げられていたりするので、NHKの番組も録画だけはしている。

今回、随分前に放送されて見ないままとなっていたものをまとめて見たのだが、その中でも印象的だった折り紙に関してのプレゼンを取り上げたい。折り紙は「origami」とローマ字読みでも通用するようになっており、茶道などと同様に日本文化を伝える大切なツールになっているとのこと。

プレゼンテーターはRobert Lang(ロバート・ラング)氏。折り紙を数学の知識を駆使して展開していくのだが、その礎をつくったのは吉澤章さんという日本の折り紙作家だそうだ。吉澤さんが考案した「折り方の記号化」によって、折り紙の言語が確立され、情報伝達が可能になり、遺伝と淘汰が進んだとのこと。遺伝だの淘汰だのといった言葉を使用するところが、アカデミックである。

印象的だったのは「美しいものを極めると、科学に使われるようになる」という一言。伊藤さんも「アートとサイエンスが近づいた事例の一つ」だと認識している。

具体的には、折り紙の「折りたたむ」技術が、医療分野のステント(血管を拡大する器具)に使われたり、自動車のエアバッグに使用されたりしている。また宇宙開発では太陽光を集めるための大きなレンズを、折り紙の技術でコンパクトにして移動させ、目的地に到着してから「開く」という工夫がなされている。また、缶コーヒーの缶がデコボコしているのを見たことがあるが、あれも折り紙の技術だとのこと。わざわざお金をかけて何をしているんだろうと思っていたのだが、デコボコさせることで薄くても強度を保つことができるため、材料費を安く上げることができるそうだ。

文化や芸能といった世界から抜け出して、科学や実用の世界にまで広がっているorigami。日本人としては大いに誇りを持ちたいところであるが、これを使って稼いでナンボ、なのかもしれない。日本初の技術で後れを取りたくないものである。

◇1537 『僕らが毎日やっている最強の読み方−新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』 >池上彰・佐藤優/東洋経済新報社

東京への出張があったので、帰りに駅の書店で購入。何度か平積みになっているのを見かけていたが、過去に読んだものと同じような内容なのだろうと、読むのを控えていた。たまたま帰りの電車で読む本がなかったので、手に取ってみた次第。

結果的には大当たり。お二人の本はかなり読みこんでいるので既知の情報も多かったのだが、一番の収穫は新聞の読み方について。これは目から鱗が落ちる思いをしたし、新聞をしっかり読まなければと思っていた自分にとっては、とても安心できる内容だった。私が咀嚼したなりに、要約してみよう。

世の中で起きていることを「知る」には新聞がベースとなり、世の中で起きていることを「理解する」には書籍がベースになる。新聞、雑誌、ネット、書籍を読みこなすためには、すべての土台となる基礎的な知識が大事。土台がないと、新しい情報を得てきても積みあがっていかない。新聞は飛ばし読みが基本であり、世の中で何が起こっているか、どういう流れになっているかが概観できればよい。新聞ですべてを理解しようとせず、理解するのは書籍に頼ればよい。

私は日経新聞を電子版で読んでいるのだが、毎日結構な時間を割いてしまっている。最近は、これは非効率だと思い、30分程度に絞るようにしているのだが、それでも気になる記事があるとついつい読み込んでしまう。どうすれば効率的に新聞を読めるだろうかと考えていたので「記事は読み込まなくていい」という池上さんのコメントを読んで、非常に安心したのだ。

それでは気になった箇所を要約して抜粋。

・「何を読むか」「どう読むか」だけでなく「何を読まないか」も重要な技法のひとつ。

・『フィナンシャル・タイムズ』は平易な英語で書かれており、分かりやすく、英語の学習にもなる。

・雑誌も新聞と同じく拾い読みでよい。ビジネス誌の特集は書籍よりも情報が早く、初動でざっと要点を押さえるには便利だが、本格的に知識を身につけたいと思ったら書籍に進むべき。

・『失敗の本質』はお薦め。続編の『組織の不条理』もあわせて読むとよい。

・一般的な情報への接し方には3タイプある。(1)活字を日常的に読む読書人階級、(2)書籍は読まないが新聞だけは日常的に読む層、(3)新聞も雑誌も書籍も読まない、テレビやネットしか見ない層。(1)の読書人階級は感覚的に日本に200万人ほどいるであろう。

・ネットの大原則:(1)ネットは上級者のメディア。情報が玉石混交であるため、選別にはかなりの知識とスキルが必要。(2)ネットには二次情報、三次情報が多く、非常に効率が悪い。同じ時間なら新聞や雑誌を読む方が効率的。(3)「知りたいことだけを知ることができる」のがネットの長所でもあり短所でもある。ネットでは自分の考えに近いものが「大きく」見えるという「プリズム効果」があるので要注意。

・ニュースサイトは「NHKオンライン」や「東洋経済オンライン」が優れている。

・ネットの利用価値は「原文」にある。メディアの中で気になるものがあれば、省庁のホームページに出ているデータなど、原文にあたること。

・クラウドはエバーノートとドロップボックスが便利。

・クラウドに情報を保存する際は、「保存に値する情報かどうか」を吟味、精査してからにすること。きちんと目を通して頭の中に叩き込んでから保存しないと、情報としての価値はない。

・どんなジャンルでもベースになるタネ本はせいぜい3冊以内。この3冊は精読・熟読する。

・論理的な思考力を身につけるためには、難解な本と格闘する経験が不可欠。難解な本の代表例:『資本論』『精神現象学』『存在と時間』『善の研究』

・直接仕事には関係ないが知識・教養として知っておいた方がいいことに関しては、通俗化された良書を活用する。阿刀田高さんの『旧約聖書を知っていますか』 『新約聖書を知っていますか』『コーランを知っていますか』や講談社ブルーバックスの『「分かりやすい表現」の技術』『「分かりやすい説明」の技術』など。

・効率的な読書をするためには「本を仕分ける」こと。娯楽で読む本と仕事で読む本。自分が理解できる本と理解できない本。

・小説で疑似体験を積むことも大事。ジョン・ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が池上さんのお薦め。

・英語の参考書:『システム英単語』『総合英語Forest』

・『近代文語文問題演習』は2週間で消化できるボリューム。これで江戸時代中期から明治にかけての資料をかなり読みこなせるようになる。

・リクルートの受験サプリで、世界史、英文法、数学を体系的に学び直す。




【目次】

序章 僕らが毎日やっている「読み方」を公開
第1章 僕らの新聞の読み方―どの新聞を、どう読むか。全国紙から地方紙まで
第2章 僕らの雑誌の読み方―週刊誌、月刊誌からビジネス誌、専門誌まで
第3章 僕らのネットの使い方―上級者のメディアをどう使いこなすか
第4章 僕らの書籍の読み方―速読、多読から難解な本、入門書の読み方まで
第5章 僕らの教科書・学習参考書の使い方―基礎知識をいっきに強化する
特別付録(「人から情報を得る」7つの極意;本書に登場する「新聞」「雑誌」「ネット」「書籍」「映画・ドラマ」リスト:池上×佐藤式70+7の極意を一挙公開!)

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先日、自動運転に関する記事を紹介したが、情報や知識の羅列だけではなく、自分で考えることが大切。なかなか自分で考えた記事を書くのは難しいのだが、週1回でよいから、自分の意見や考えを書けるようにしていきたい。今回は、「自動運転」という面白いテーマに出会ったので、そこから発想を得たもの。

まず、自動運転の定義を整理しておこう。自動運転にはレベル1から4までの段階があり、今の世の中に普及している安全運転支援(自動停止装置やアクセル踏み間違い防止など)はレベル1。今回私が取り上げるのはレベル4の完全自動運転と呼ばれるもの。1年くらい前の記事では2020年代後半に実現と書いてあったが、この予想は前倒しで実現されるのではなかろうか。

自動運転はドライバーが運転しなくてよくなる=移動中の時間が有効に使えるという利点が大きいのだが、それ以外にも、先日の記事にもあった、交通事故の防止、渋滞の緩和、環境負荷の低減(燃費の良い走り方のコンピューターによる制御)などが、メリットとなる。

また、Uberなどのシェアライドは、今は個人のドライバーが自分の車を使ってタクシー業を自営するシステムだが、将来的にはドライバーがいらなくなり自動運転に切り替わっていくであろう。そうなると、どんな人が来るか分からない人間の運転手よりも、画一的なサービスの提供が可能な自動運転の方が主流になっていくであろう。だからUber運転手は、副業としてならよいが、これを本業にして生活のすべてをドライバー稼業に依存してしまってはいけないのだ。

シェアライドが進むということは、今まで週末しか使用されていなかった車、通勤時のみで日中は駐車場に置きっぱなしであった車などが、四六時中利用されるということ。これにより車の販売総量は減少するという予想も出ている。1台の車が、複数名の「足」になるのだから当然の帰結である。

シェアリング・エコノミーの本質は、このように使われていない資産を最大限に有効活用しようというもの。そうなると、次に気になるのが「家」の有効活用である。

家の有効活用といえば、Airbnbが真っ先に思い浮かぶが、これは自宅や空き家を個人的に他の人に貸すためのITインフラである。Uberがドライバーと乗客をマッチングさせるシステムだとすれば、Airbnbは家主と宿泊客をマッチングさせるシステム。これもシェアリングの一種ではあるが、私が考える「家」はもう少し広義である。

週末や通勤時しか活用されていない車と同じように考えると、「日中は会社で働いていて活用されていない家」と「夜は従業員が退社してしまっていて活用されていないオフィス」というものが浮かび上がってくる。これを解消するのがホームオフィスなのであろう。

自宅で仕事ができるようになるというのは、従業員にとっては通勤時間の削減になるし、育児や介護などといった個人的な事情にも自宅勤務であれば対応が可能になる。だからホームオフィスは従業員に対するベネフィットだと、ずっと思ってきた。しかしながら、特殊な事情のある人が数人だけホームオフィスを構えるのでは効果はないが、従業員の半数がホームオフィスで働くようになれば、会社は事務所のスペースを半減することができる。都心部の家賃であれば、結構な額になるはずだ。

つまり従業員は今まで使用されていなかった日中の自宅をオフィスとして使用することができ、会社は夜には誰も使用していない空きスペースを半分にすることができるのだ。オフィススペースを半分にするということは、恐らくフリーアドレス(会社に固定席がなくどこに座ってもよいという仕組み)に変わっていくであろう。そうすると、従業員は出社とともにロッカーに入れてあるパソコンと書類を取り出し、退社時にはそれらをロッカーに戻すという作業が発生する。

これはどういうことかというと、夜のオフィス内には机と椅子しか残らないということを意味する。であれば、夜の間だけ、他社へこのオフィスを転貸することも可能になるのではなかろうか。従来のように個人の座席が決まっており、重要書類などが机の上に置かれたままの状態であれば、他人がオフィスに立ち入るなどもってのほかであっただろう。しかしながら、すべてのロッカーが施錠されており、机の椅子だけの状態であれば、欧米など時差のある国を相手にした深夜シフトの仕事などはこのオフィスで対応可能かもしれない。

さらに突拍子もないことを考えてみよう。自動運転ができるキャンピングカーを購入し、日中はUberとして、お金を稼いでもらうのだ。夜は自分たちが自宅として使用するのだが、日中の誰も住んでいない時間は、主に長距離移動の乗客をターゲットにする。自宅部分のすべてを乗客に解放する必要はないが、普通の車よりもゆったりしたスペース、できれば横になれるくらいのスペースを提供すれば、1時間以上の長距離顧客などを取り込むことができるかもしれない。

だらだらといろんなことを書いてきたが、こうやって1つの記事からいろんなことを発想するのは案外と楽しいものである。頭の体操にもなるし、ここからさらに興味が広がることもあるだろう。断続的でもよいので、このような「考える」作業を続けていきたいものである。

◇1536 『リーダーは前任者を否定せよ−プロ経営者の仕事術』 >藤森義明/日本経済新聞出版社

元LIXILの藤森さんの著書。藤森さんの経営哲学には何度か触れたことはあるが、雑誌やウェブのインタビューばかりであり、ご自身が書かれたものを読むのは初めて。

本書を読んで感じたのは「とてもオーソドックスな経営手法だな」というもの。バリバリの外資系経験者が、M&Aなどを駆使してLIXILを大改革したような印象があったのだが、改めて活字で読むと、とても普通のことを行っている。ただし、普通のことではあるが、そのスピード感と徹底度合いが桁違いに異なる。結局、成果を出す人というのは、当たり前のことを当たり前に、しかし早く徹底してできる人なのだろう。

私自身はどうなのだ、と振り返ると、スピード感はそれなりにある方だと自負しているが、徹底度が足りないように感じる。本書にも「自分を知り、自分を変えられるか」という指摘が出てくるが、私自身の今後の課題は「徹底と実行」であろう。

さて、藤森さんに関して、過去にどんな記事に触れたかなと、自分のブログを検索してみたら、3件がヒットした。最初に藤森さんのことを知ったのはまだ日本GEの会長のころである。過去の記事を読み返してみると、当然なのだが本書で語られていることがたくさん出てくる。今回読んでいて気になった箇所は、ほとんど過去のブログでエントリーしたものと重複するので、今日は引用なしとしたおこう。

ちなみに過去のエントリーは次の通り。

 LIXILグループ藤森義明の経営教室
 グロービス:LIXIL 藤森社長
 0549 『外資系トップの仕事力』

最後に、ちょっとだけ気になったのが、本書の語り口調が少し自慢気に感じてしまうところ。自慢すべき実績を残したのは間違いないのだが、個人的にはもう少し謙虚な語り口のほうが好みである。

また、LIXILといえば買収した中国企業のジョウユウが粉飾決算を行っていたというアクシデントがあったのは記憶に新しい。本書を手にしたのは、藤森さんがジョウユウの事象をどのように咀嚼しているかを知りたかったから。しかしながら、ジョウユウに関して割かれていたのはわずか2ページであった。守秘義務もあり、多くは語れないのかもしれないが、個人的にはこのあたりの失敗談も知りたかった。



【目次】

第1条 前任者を踏襲するトップは不要―変革こそリーダーの仕事
第2条 3年で結果を出す―プロフェッショナル・マネジャーとは
第3条 HOWを極める―リーダーに求められる2つの絶対基準
第4条 変革は待っていても起こらない―プロセスをどう組織に叩き込むか
第5条 ウェルチ直伝、ナンバーワン経営の極意
第6条 世界で戦うということ―真のグローバルリーダーとは
第7条 最強のチーム、最強の自分のつくり方―ノーと言える部下はいるか

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週刊東洋経済[2016.12.31-2017.01.07]イチからわかる自動運転

年末年始になると経済関係の週刊誌はこぞって2017年予測を実施する。今回、ダイヤモンド社のものと本誌・東洋経済を購入。世界情勢の予想、経済政策の予想、そして企業の動きや新技術の動向などが取り上げられている。残念ながらダイヤモンド社の特集は、何となく今ひとつ。どこが悪いという訳ではないのだが、総花的で頭にすっと入ってこなかった。

一方、東洋経済の特集はコンパクトによくまとまっていた。この手の特集は、雑誌一冊をまるまる使うようなボリュームなので、すべてを精読していると時間がなくなってしまう。ざっと概観を流し読みし、気になるところを熟読した。今回、読み込んだのは世界情勢の部分と技術動向の部分。

世界情勢については、既知の範囲内。日々の新聞情報を追いかけていれば、それほど大きな情報ギャップはない。しかしながら、新技術の方は、意識して情報をキャッチしていかないと、なかなか自分のアンテナにひっかかってこないのだ。

自動運転については、個人的にも画期的な技術だと思っており、非常に注目しているのだが、本書の特集記事で非常にコンパクトにまとめられていたので、重要箇所を抜き書きしておきたい。

・ポストスマートフォン時代を見据えて、自動運転にもIT企業各社の投資がなだれ込んでいる。

・現時点で自動運転の定義は明確化されておらず、デファクトスタンダードを狙う動きが加速している。

・ボストンコンサルティングは、2035年の新車販売台数のうち、自動運転の割合は25%で、同年時点の市場規模は770億ドルと予想している。

・自動車メーカーが自動運転に取り組む狙いは3つ。(1)交通事故の削減、(2)交通渋滞の緩和、(3)環境負荷の低減。

・IT企業が自動運転に取り組む狙いは、自動運転を通じたビッグデータの蓄積・解析、クラウドによる維持管理などが将来のビジネスにつながるとみているもの。

・本体だけでなく、センサーなどの部品も有望。車や道路インフラに装備するセンサーは、ボッシュ、コンチネンタル、デンソー、日立オートモーティブシステムズ、オムロンなどが、単眼または複眼のカメラとレーダーの融合した機器を供給している。

・単眼カメラの画像認識技術に特化し、世界でシェアを急拡大しているのが、イスラエルのモービルアイというベンチャー企業。

・GPU(画像処理をする部品)大手の米ネヌヴィディアは、人工知能の機械学習を通じた独自システムの開発を進めている。

・高精度3次元地図に関しては、ドイツのヒアと、オランダのトムトムがしのぎを削っている。

・次世代移動通信システム「5G」を自動車分野に取り込もうとしているのが、ノキア、エリクソン、AT&Tなど通信大手。

・通信におけるサイバーセキュリティ対応では、イスラエルのアルグスなど、軍需機関からスピンアウトしたベンチャーが躍進している。

・ライドシェアは自動運転の採算において重要な役割を果たしている。自動車メーカーが新車売り切り型のビジネスモデルで自動運転車を販売すると、開発や宣伝コストが重くのしかかる。しかしライドシェアは膨大な利用回数が見込めるため、自動運転車と組み合わせてその都度手数料を得れば、開発や販売にかかるコストを吸収しやすい。

・一方で、ライドシェアが普及すると、日系メーカーが現在行っている新車売り切り型のビジネスモデルが成立しづらくなる。ライドシェアへの参入によって自らの首を絞めかねないというジレンマに陥っている。

・日本は自動運転に関する考え方は他国とは異なっている。つまり、運転者や歩行者の安心安全を第一に掲げ、自動ブレーキや車線逸脱警報装置などを世界に先駆けて普及させてきているのだ。

・IT化が進むと、自動車メーカーはハードウェアとしての車を製造する下請け企業になり、収益が大幅に落ち込み、事業の存続も難しくなる可能性がある。発注元になるのはグーグルなどのIT企業だ。

・完全自動運転の場合、車の維持・管理と運用を行うのは、ビッグデータの蓄積・解析やクラウドによる維持・管理を行うIT企業、サービスプロバイダになる。自動車メーカーは彼らに対し、商用車の扱いで車を販売することになる。サービスプロバイダは自動車メーカーに大量の発注をするため、車両の仕様や価格などについて決定権を持つことになる。

・日本の自動車メーカーにとって、今後の最も大きな課題は自動車ディーラーとの関係。自動運転によって走行データのみならず、顧客の日常生活にまでかかわるデータを自動車メーカーが管理することになるが、現在、顧客に関するデータのほとんどはディーラーに帰属している。これを自動車メーカーが一括管理することになると、ディーラーは単なる新車受け渡しの場、または修理工場になってしまう。

・自動運転が普及すると、運転免許証は不要になる可能性がある。

・移動コストは大幅に削減される。自動化による走行ルートの効率化やライドシェアの普及により、米国では車1台あたりの移動コストは従来の15%になると試算されている。これにより米国全体で年間約450兆円の節約になるという。


一番印象的だったのは、「ライドシェアが普及すると、日系メーカーが現在行っている新車売り切り型のビジネスモデルが成立しづらくなる。ライドシェアへの参入によって自らの首を絞めかねないというジレンマに陥っている」という部分。持たざるものが持てるものに打ち勝つときというのは、持てるもののメリットを足かせに変えてしまうとき。たとえば、代理店を多く抱えるメーカーが、代理店に気を使ってネット直販に出遅れた、というようなパターンである。このような状況においては、たとえカニバリズムが発生したとしても、思い切った手を打たなければならないのかもしれない。

◇1535 『社員のやる気に火をつける!コスト削減の教科書』 >村井哲之/ダイヤモンド社

工場勤務になってもうすぐ1年。経理の仕事は幅広く、コスト削減のフォローアップなども大事の仕事の1つ。単に数字をまとめるだけでは面白くないので、自分なりにどういった手法があるのかを学んでおこうと思ってて手に取ってみたもの。最近少し忙しく、また残念ながら近くに大きな書店がないので、本書はAmazonで取り寄せ。

Amazonのレビューの評価もよかったので期待して読み始めたのだが、私にとっては今ひとつ。コスト削減の対象が、電気・ガス・水道など水道光熱費に特化して書かれており、他には電話代やコピー代など限られた範囲のものしか取り上げていないのだ。様々な分野の、いろいろなコスト削減アイデアを期待していたので、とても残念。申し訳ないが、後半は読み飛ばしてしまった。

1点だけ、非常に共感を覚えるフレーズがあったので引用しておきたい。

・コスト削減は、「人財」を守りながら、企業活性化をするための経営戦略。コスト削減はリストラをしないため、さらには従業員を増やすために行うものである。



【目次】

序章 コスト削減は、従業員を増やすことである!
第1章 そのコスト削減は間違っています!コスト削減10の誤解
第2章 「正しい」コスト削減のための5つのポイント
第3章 正しいコスト削減のキーワードは、「徹底した見える化」
第4章 まだまだできる!コスト削減20の教材

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宋文洲さんのメルマガより。いい話だなと思って、プリントアウトしていたのだが、そのまま忘れてしまっていた。その通りだなと思った箇所を引用。話の背景は、老人ホームなどで元社長などという肩書を持ちだす人は嫌われるというもの。

(1)過去の立場や知名度を知られていなくても、過去の業績や功績を知られていなくても、一人の人間として他の人間とその場で打ち解け、人々に愉快な思いを与える人

(2)人に理解されなくても、敵視されても、依然として自分の意見や価値観を失わずその場の空気に流されない人

(3)いくらお金があっても、いくら成功しても、それを知らない人たちと普通に人生を送り、普通に些細なことを楽しめる人

(4)そして自信がない時に、自信がないことを受け入れた上、恰好をつけず全力で状況対応に当たることができる人

◇1534 『マッキンゼー流入社1年目問題解決の教科書』 >大嶋祥誉/ソフトバンククリエイティブ

本書も会社の先輩から借りたもの。最近、若手の教育も担当しているので、その一助として貸してくれたものであろうか。

書いてあることをざっとまとめると次のような感じ。問題解決と言いつつ、フレームワークの具体的な使い方など実践的なものはほとんどなく、さらりと触れている程度。むしろ、精神論的な部分が多かったのは残念。

・完璧を目指す。あるべき姿を追い求める。

・資料は一目で何が言いたいか、が分かるように。そのためには細部にまでこだわる。

・どんなときにも常に前向きで。PMA(Positive Mental Attitude)が大事。

・自分が何を期待されているかを理解する。そのうえで、自分のユニークさを活かしてバリューを出す。

・本来の問題解決とは、起こった事象に対処することではなく、根本原因を探り、どうすればその事象が起きないのかという、問題の本質まで掘り下げて解決すること。

・モグラ叩きはしない。モグラが出てこないような解決策を講じる。(電源を切る!)

・毎日22時には就寝する。「クリアな思考」を保つことが最重要。

・ガントチャートで仕事(プロジェクト)を整理する。




【目次】

第1講義 マッキンゼー流プロフェッショナルの流儀
第2講義 マッキンゼー流問題解決の基本プロセス
特別講義 マッキンゼー流フレームワーク入門キット
第3講義 マッキンゼー流情報の取扱い力
第4講義 マッキンゼー流問題解決力を高める思考術
第5講義 マッキンゼー流自分力の高め方
第6講義 マッキンゼー流プロジェクトで結果を出す力
第7講義 マッキンゼー流プレゼンの技術

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私のブログは、これまで学んできたことが集約されたデータベースになっている。元々、本を読んでもその内容を簡単に忘れてしまうことから、読書の備忘録として始めたのだが、それが、雑誌・映画・ニュース番組など対象が広がり、さらには海外での経験談、考えたことなどを含むようになってしまった。

そんな中、決定的に欠落しているものがある。「仕事の記録」である。守秘義務があるため、このブログには仕事を通じて得た具体的な情報は一切記載していない。一般的な内容だったり、仕事を通して感じたことは多少書いているが、それも極稀なこと。もともと「知」や「情報」に対しては貪欲な方で、かつ、きちんと体系的に整理したい、と考える方。果たしてこのブログが体系的と言えるかどうかは分からないが、少なくともカテゴリー区分を行い、私なりに整理しているつもりである。

仕事で得る情報には、フロー情報とストック情報があるというのが私の持論。つまり、日々、更新されていき、1年後には不要になってしまうフローの情報と、普遍的でいつまで経っても使えるストックの情報に分けられるであろう、というもの。これにしたがって、仕事に関しても日々の膨大な情報の中から、これはストック情報だ、と思えるものを1冊のファイルと、1つの会社PCのフォルダに保管してきた。

厳選して情報をストックしてきたので、だいたいはどんなデータがあったかをすぐに引っ張り出すことができる。しかしながら、決して体系的とは言えず、自分のこだわりからすると「ちょっと不満」である。会社の情報もブログ形式で整理することができればいいのに、と常々思っていた。

この度、ふと思いついたのだが、ストック情報を何もブログにアップする必要はないのである。テキストまたはワード形式で、獲得した知識を次々に会社のPCに蓄積していけばよいではないか。よい機会なので、今まで得てきたストック情報をもう一度精査し、咀嚼し、本当に必要な箇所だけを新たに書き残す。そんな「知」の棚卸ができればよいのだが。。。

重要なことで緊急性がないものは、いつまで経っても進まないというのも、仕事から得た経験値である。

〇1533 『樅ノ木は残った』 >山本周五郎/新潮文庫

背表紙あらすじ:【上巻】仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申しつけられる。明くる夜、藩士四名が「上意討ち」を口にする者たちによって斬殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。

【中巻】幕府老中・酒井雅楽頭と伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。それが、伊達藩に内紛をひきおこし、藩内の乱れを理由に大藩を取り潰そうという幕府の罠であることを見抜いた原田甲斐は、藩内の悪評をも恐れず、兵部の懐に入りこむ。そして、江戸と国許につぎつぎひき起こされる陰謀奸策、幼君毒殺の計略をも未然に防ぎ、風前の灯となった伊達家安泰のため、ひたすら忍従を装う。

【下巻】著者は、「伊達騒動」の中心人物として極悪人の烙印を押されてきた原田甲斐に対する従来の解釈をしりぞけ、幕府の大藩取り潰し計画に一身でたちむかった甲斐の、味方をも欺き、悪評にもめげず敢然と闘い抜く姿を感動的に描き出す。雄大な構想と斬新な歴史観のもとに旧来の評価を劇的に一変させ、孤独に耐えて行動する原田甲斐の人間味あふれる肖像を刻み上げた周五郎文学の代表作。

尊敬する先輩から紹介されて購入はしたものの、ずっと積読になっていた本。読み始めると一気に、と言いたいところだが、結構読み進めるのに苦労してしまった。

人物の相関関係が複雑なのだ。しかも、人の名前を出身地の地名で呼んだり、幼名?で呼んだりするので、別人だと思っていた人が同一人物だったりするので、余計にややこしくなる。例えば主人公の原田甲斐だが、「原田」「甲斐」の他に、「船岡」だとか「宗輔」と呼ばれたりしている。私は海外の小説が苦手なのだが、その理由の1つは名前を覚えるのが難しいこと。呼び名としての短縮形があったり、ミドルネームがあったりしてややこしい。本書もそんな海外小説を読んでいるかのようなもどかしさから始まった。

ちなみにタイトルからして読み間違っていた。随分と長い間、『楡ノ木は残った』だと思っていたのだ。『楡家の人々』と記憶が混在していたのであろうか。

さて、上下2冊の大作を何とか読み終えたのだが、感想は「非常に日本人らしい小説」というもの。無粋なので甲斐の置かれた環境を、会社組織の派閥争いのように置き換えて読み進めてしまったのだ。「組織のために自分を殺す」というのは、なかなか日本以外ではありえない美学なのではなかろうか。

会社が分割されることを阻止するため、あえて自分の意見とは反対の「分割賛成派」の派閥に属しているかのように振る舞う。派閥というのは、書面などで通知されるものではなく「何となく」存在するもの。その「何となく」という雰囲気を利用して、あたかもその派閥に属しているかのように振る舞う。そのためには、大事な親友から嫌われることも厭わない。

考えてみると、日本の近代社会というのは、「家」のために尽くすのが普通のことであり、重要なことだとみなされてきた。特に侍社会では。日本人の会社という「器」に対する無自覚な忠誠心は、このような伝統的な気質によるものなのかもしれない。しかしながら、そんな組織という集団の文化から、「個」の文化へと変化しつつあるというのが、今現在の日本社会であろう。そんな世の中を生きている今の20代の若者が、本書を読んで共感を抱くであろうか。。。

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面白い夢を見たときは、忘れないように書き留めておこうとしているのだが、とても面白い夢を見たときほど、これほど面白かったのだからきっと覚えているだろう、とメモするのを怠ってしまう。そうすると、結局は覚えていないという状態がよくある。

今回は、夢の中で夢を見て、それを書き留めようとするのだが枕元にメモがなく、あわてて書斎にメモを取りに行く、というもの。何とか忘れずに書斎のメモに夢の内容を書き留める。これは面白い、さっそく明日ブログに書こう、と思って寝室に戻る。奇妙な夢というよりリアルな夢である。

そこで目が覚めた。書斎でメモを書いたところまでは思い出せるのだが、メモに書いた内容がまったく思い出せない。劇中劇という演劇の中で劇を演じるという形態があるが、これなどは「夢中夢」である。面白い経験だったが、夢の中で見た夢の内容が気になって仕方がない。いつか思い出す日がくるのだろうか。。。

◇1532 『グローバル人事・課題と現実−先進企業に学ぶ具体策』 >ヘイ・コンサルティング・グループ/日本経団連出版

会社の先輩から借りた本。2007年の出版だが、今でも色あせておらず、日本企業の課題を鋭く指摘している。本書の出版から約10年が経過し、多くの企業がグローバル化へと舵を切っている一方、大企業であればあるほど、10年で文化を変えるのは難しい、と感じてしまつた。

本書のエッセンスを一言でいうと、日本人だけのハイ・コンテクスト社会として成り立ってきた企業文化を、グローバル標準であるロー・コンテクストを前提とした文化に変えていこう、ということだと理解した。文化を変えるためには、まず制度も変えることが必要。本書から読み取れるのは、「人事制度」というストラクチャーを通じて、考え方や文化まで変えなければならないということであろう。

さて、この大前提を踏まえて、気になったところを要約して引用しておきたい。

・基本的に経済というのはアウトソーシング(だれかほかの人が提供するサービスやモノを利用する)であり、アウトソースするには、相手を信頼することが前提となる。

・組織の健全性を保つための上司の評価項目:(1)オープンなコミュニケーション、(2)採用やスタッフィング、(3)人材開発、(4)チームスピリッツの向上、(5)多様性の促進、(6)目標設定。

・GEのアシミレーション:新任の上司とその組織のスタッフが組織が抱える課題などをすべて付箋紙に書き出して、議論する場。議論というよりは新任上司がスタッフの疑問に1つ1つ答えていく形式が多い。すべての疑問が解決されるわけではないが、これにより、共通理解が生まれ、新任リーダーと既存スタッフの緊張関係や疑心暗鬼が緩和される。外資系企業は人事異動をドラスティックに行う印象があるが、実はこのようなきめ細かな配慮を実施している。

・コマツの海外展開:海外法人のトップは、現地の人材をなるべく登用する。一方で、生産やサービスなど、コマツクオリティを求められる部分では、コマツスピリットを体得した人材を派遣する。

・トヨタの「集権」:集権とは本社が管理することではなく、全世界の社員にトヨタ式の姿勢、思考、行動様式を徹底的に浸透させる責任をもつという意味。事業責任は各国の拠点に分権し、人事管理を本社に集権している。

・人事の機能は4つに区分される。(1)給与計算・支払などの人事実務、(2)研修などのサービス機能、(3)事業に必要な人材を採用・確保・育成する戦略人事、(4)組織改革などを支援する社内コンサルタント機能。(1)(2)はアウトソースされる傾向にある。(3)は事業を担う拠点ごとに存在。

・組織が大きくなると率先型のリーダーシップは効果を発揮しない。(10人までが限界) 100人の部隊を率いるには、むしろ社員のキャリアに関心を持ち、成長するために何が必要かを考え、計画的に人を育てる育成型のリーダーシップが求められる。部下の努力が成果につながるような仕事の仕組みや環境をつくる能力が必要。

・東京にいる優秀なスタッフが、必ずしも海外でも優秀だとは限らない。

・海外のスタッフにも、やりがいのある仕事やポジションを任せないと、優秀なスタッフは辞めてしまう。日本と海外とでは時間軸が異なる。海外の優秀なスタッフはせいぜい3〜5年しか待てない。任せる経営ができないと、結局、日本からの派遣社員にとって都合のいい、従順なスタッフだけが残ることになる。

・メタナショナル、メタリージョナル:完全なグローバル化を進めると、世界各地に均質均一なシステムの押し付けになってしまう。基本的考え方は統一しつつも、各地域の特性に合わせた最適経営を行うことをメタナショナルと呼び、これを東南アジアなど地域ごとという枠に広げたものをメタリージョナルと呼んでいる。

・英語によるインフラ整備・ツールの充実も重要。経営方針、社内規則、社内用語などをすべて英語化してイントラネットに掲載していくこと。

・「人」という資産を、いかに経営のなかで活かしていくか。いかに人を公平に扱うかではなく、どうやったら人が活きるのかを考えるのが人事の仕事。


個人的に一番気になったのは、海外の優秀スタッフの時間軸の話。優秀なスタッフは待つことができないというのを中国駐在中に実際に経験したから。次の機会で課長に昇格だと考えていた若手スタッフが、待ちきれずにライバル企業に転職してしまったのだ。しかも課長というポジションで。もし、再び海外赴任の機会があるならば、同じ轍は踏まないようにしたいものである。



【目次】

第1章 いまなぜグローバル人事が最重要課題なのか
・グローバル化で何がどう変わっているのか
・フラット化する世界にどう対応すべきか
・これからの企業組織のあり方

第2章 グローバル人事をどのように成功させるか
・なぜグローバル人事を進めるのか
・グローバル人事実践の具体的プログラム
・新たな仕組みや手法への取り組み

第3章 全世界の社員が成果に貢献する企業へ
・ビジネスのグローバル化を補強する三菱商事の人材マネジメント
・地域ごとのグローバル化進展に合わせたキヤノンの人材育成事情
・トヨタウェイの世界展開をベースとするトヨタのグローバル人事
・グローバル化を先取りする帝人のグループコア人材制度
・海外提携企業にも人材を派遣するマツダの実践的グローバル戦略

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今回、ようやく『ナビゲーター世界史』を4冊読み終えた。時間がないビジネスパーソンがイチから世界史を学び直すのは、なかなか骨の折れる作業である。感想にも書いたが、近代ヨーロッパあたりの歴史が苦手でなかなか頭に入ってこない。逆に得意なのは中国史と、世界大戦がはじまる前後から現代にかけてであろうか。

そもそも歴史を学ぶ意味とは何か、と考えたとき、未来を知ることはできないから過去に学ぶしかない、というのが答えの一つになる。もちろん、古代史から順番に学ぶに越したことはないのだが、「未来を知るため」という目的に特化するのであれば、現代の環境が近しい近現代史に焦点を絞ってもよいのではないか、と思い始めた。

他にもやりたいことがいっぱいあるので、世界史だけにこだわっていると知識が偏ってしまいそうな不安感がよぎってしまう。時間が無限にあればいいのに。もっと学生の頃にきちんと勉強しておくんだった、とつまらない後悔をするのは毎度のこと。その度ごとに、だからといって今勉強を始めない理由にはならない、と自分を叱咤している。

佐藤優さんが推薦しているリクルート社のスタディサプリという学習アプリがよいらしい。月額980円で学び放題(無料テキストの閲覧と講師による講義動画が見放題)というから、格安である。このような廉価でアプリを提供しているのは、高校生の段階からリクルートというブランドを知ってもらい、将来のビジネスにつなげるためであろう、というのが佐藤さんの分析。

このアプリを使って、世界史を学習し直すのもよいかもしれない。一度、最初から通して見て、その後、近現代史を何度か繰り返して学習する。社会人になって時間がなくなると、ついつい本を1冊読んで勉強したつもりになりがちだが、よくよく考えてみれば、受験勉強というのは「繰り返し」の作業である。本当に学びたいもの、自分に定着させたいものは、繰り返し学ぶしかないのであろうなぁ。

アプリを使うかどうかは、もう少し考えてみよう。せっかく高校の勉強をやり直すなら、英文法と数学も勉強し直したい。私の仕事は経理であり、会計の知識が求められる分野だが、今後、経理としてはファイナンスの知識が必須になってくるであろう。数学の初歩的な知識をきちんと学習し直すなら、今ではなかろうか。

〇1531 『敦煌』 >井上靖/新潮文庫

背表紙あらすじ:官吏任用試験に失敗した趙行徳は、開封の町で、全裸の西夏の女が売りに出されているのを救ってやった。その時彼女は趙に一枚の小さな布切れを与えたが、そこに記された異様な形の文字は彼の運命を変えることになる…。西夏との戦いによって敦煌が滅びる時に洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて陽の目を見たという史実をもとに描く壮大な歴史ロマン。

壮大な物語。敦煌で発見された経典の山を題材に、ここまで想像力を働かせて、物語を紡ぎあげるとは。もちろん、史実も丁寧に調べたのであろうが、この物語構築力はすごい。『天平の甍』でも感じたことだが、井上靖クラスの作家にとっては、むしろこのくらい事実が分からない断片的な史実の方が、空想を膨らますことができ、筆が進むのかもしれない。

もともと小説から読書好きになった私としては、小説を読み始めると止まらなくなってしまうので、時間の制約がある現在、小説はできるだけ読まないようにと封印している。それでもたまには歴史小説ならよいだろうと、手にしてみたのだが、300ページ程度の本を、無我夢中で読み進めて一気に読了してしまった。

物語は主人公の趙行徳が、科挙の試験に落ちるところから始まる。自信満々で臨んだ試験の場で、待ち時間の間に寝入ってしまい、受験できなかったのだ。普通であれば落ち込むところが、街で見かけた女性をきっかけに、西域へと足を向ける。その後、数々の戦場を潜り抜け、最終的には敦煌に残された経典を洞窟に隠す行為にかかわるのだが、その波乱万丈の人生は、面白いとしか形容のしようのないもの。

しかも、敦煌といえば、私が中国駐在中に旅行した数々の世界遺産の中で、唯一、もう一度行ってみたいと思っているところ。あの広大さ、あの壮大さ、あの荘厳さ。小説に没頭しながらも、砂漠のシーンなどが出てくると、あの忘れられない光景が、フラッシュバックのように頭によみがえってくるのだ。

井上靖原作の敦煌は、現地の協力も得て、映画化されている。残念ながら今まで見る機会がなかったのだが、映画の撮影は実際に敦煌で行われたものであり、観光地には映画撮影の様子を収めた写真が掲げられていたのを思い出す。映画の方も一度、見てみなければ。

【鳴沙山】
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【千仏洞】
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『自分の時間を取り戻そう』の感想を書いたところ、講演会にお誘いいただいた。これまでにも、献本をいただいたりしたことはあったが、講演会へのお誘いというのは初めて。茨城に転勤してからは、講演会などのイベントへ参加する機会が少なく残念に思っていたので、このようなチャンスはうれしい限り。

さて、今回の講演会、タイトルが正式には「公演会」だとのことで、何とお芝居で幕を開けるという凝った構成。編集者の方を交えて、『自分の時間を取り戻そう』の制作秘話が演劇形式で進められていく。テレビ番組は生産性が低いと喝破していたちきりんさんが、何故に芝居を、と訝しく思いながら見ていたのだが、お芝居だけに「これはフィクションです」という落ち。これには大笑いした後、よく練られた企画だなぁと感心した。(なぜフィクションであることが強調されていたかはご想像にお任せします)

芝居の後は普通の講演会。中でも一番印象的だったのは、「知識や情報ではなく、それを得て自分がどう考えたかが大事であり、そこに付加価値が付く」というコメント。これには、ハッとさせられた。

私のブログは、そもそもが読書の感想や備忘録を蓄積していくためのもので、自分にとっての外部記憶装置のような存在だった。たまたまブログという形式をとっているが、多くの人に読んでもらうのが目的ではなく、自分のために書いてきたもの。とはいえ、他人の目に触れるかもしれないという緊張感で、あまり変なこと、恥ずかしいことは書けないという意識でやってきた。

ところが、今日の講演を聞いて、知識や情報に価値があるのではなく(もはや、検索すれば大概の知識や情報は簡単に手に入ってしまう)、その知識や情報から何を考えたかが大事、つまり、ブログに書くのであれば知識や情報に加えて自分の意見を書き残すことが大事だということに、今更ながら気づかされたのだ。

10年以上もブログを書いてきて何を今更という感じだが、事実は事実として認めざるを得ない。百歩譲って、今まで書いてきたものは「考えたこと」ではなく「感じたこと」である。もちろん、これだけの文章を書いてきたので、考えて書いたものもそれなりにはあるのだが、せいぜい月1〜2本程度ではなかろうか。

講演会の質疑の時間に「税理士の資格は必要ですか」という質問が出た。私自身は米国公認会計士の資格を保有しているのだが、正直、役に立っているのはその知識のうちの2割程度だと思う。(会計士を職業にしておらず会社勤めなので余計に割合が低いのだ) しかしながら、会計を学習してよかったと思うのは、会計的な本や記事を読んでもすらすらと頭に入ってきて理解できること。つまり私にとっての会計士の学習は、本やネットなどから探してくる会計知識を取捨選択したり咀嚼したりできるツールになっているということである。

日本の会計士と異なり、米国のそれは、知識詰め込み型ではなく考え方の理解を促すもの。だから、結果として「会計を理解する」というツールを手に入れることができたのだと思う。言い換えると、データを手に入れたのではなく、アプリケーションを手に入れたようなものであろうか。

そういった意味で、このブログもデータの集積ではなく、考えるためのアプリケーションのような存在になればと思う。もともと「苗村屋読書日記」というタイトルで始めたブログだが、「日々、考え続ける」ことを目的として、タイトルまで変更したのではなかったか。

最後になりましたが、素敵なお話を聞かせていただいたちきりんさん、またこのような貴重な機会をいただいた編集者の横田さん、本当にありがとうございました。

【素敵なメッセージカードをいただきました!】
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◇1530 『ナビゲーター世界史B(4)』 >鈴木敏彦/山川出版社

ナビゲーター世界史もついに大詰め。帝国主義から二度の世界大戦に至る部分については、ある程度流れが分かっているので、比較的頭に入ってきやすい。やはり鬼門は2巻から3巻のヨーロッパ史。記憶力が低下している頭では、繰り返して定着させるしかない。本書と、青木先生の世界史講義を、ゆっくりと何度か読み返そう。

とりあえず、重要だと思ってページを折った箇所を整理しておきたい。

・帝国主義時代の始まり:一般に、19世紀末〜20世紀初頭は、帝国主義の時代と呼ばれる。それは、欧米列強諸国が植民地・勢力圏の拡大(再分割)や覇権(圧倒的な経済力を基礎に世界を支配するような権力)を求めて争い、それに勝ち抜くために軍備の増強に努めた時代だった。

帝国時代が始まった主な要因は3つ。(1)第二次産業革命の開始。アメリカやドイツを中心とした重化学工業の発達や、石油や電力などの新エネルギー源への転換により、イギリスが覇権を握っていた時代から、米独を中心とする新たな覇権をめぐる争いの時代が始まった。(2)独占資本の成立。第二次産業革命により大規模な工場が出現し、1870年代以降の恐慌によって、強力な企業による弱体企業の吸収が進んだ結果、独占資本が成立した。これら独占資本は政府と結びつき、植民地・勢力範囲の拡大を進めた。(3)資本輸出(国外投資)の拡大。第二次産業革命で出遅れたイギリスやフランスは、資本輸出に力を入れて植民地・勢力範囲の拡大を図った。

・第一次世界大戦においてイギリスがアラビア半島などにおいて、戦争協力を得るための秘密外交を行った。特に重要なものは次の3つ。(1)フセイン・マクマホン協定(1915年):アラブ民族運動のリーダーの一人フセインと、イギリスの外交官マクマホンとの間で交わされた協定で、「イギリスは、アラブ人のオスマン帝国からの独立に協力する」との約束をしたもの。(2)サイクス・ピコ協定(1916年):アラビア半島の一部を、三国協商の国々で分け合おうというもの。具体的には、イギリスが南メソポタミアを、フランスがシリアを、ロシアがせんそ黒海盗難沿岸を得て、パレスチナは国際管理下におく約束とした。(3)バルフォア宣言(1917年)イギリス(外相)が、シオニズム(ユダヤ人がパレスチナで国家を建設しようという運動)に協力しようという内容。ユダヤ人から戦争資金を供出させるためのもの。これら3つの協定はそれぞれ矛盾しており、この結果が、今日まで続いている中東紛争やパレスチナ問題の原因となった。

・ファシズムとは、日本語では「全体主義」と訳される。そのポイントは3つ。(1)独裁体制(暴力的手段で民主主義を抑え込む体制)を採り、(2)自民族や国家を非合理に賛美し(排外的ナショナリズム)、(3)軍備を拡大して対外侵略を強行する政治体制、のこと。

なぜ、独・伊・日の3国にファシズムが台頭したのか。これら3国は米・英・仏と比べると、歴史的に見て後発資本主義国と言われるように、資本主義になるのが歴史的に遅れ、そのために封建社会から近代市民社会へ移るのが遅く、市民階級の成長が未発達で議会政治や民主主義の伝統が国民に定着していなかったから。また、これら3国は「持たざる国」であり、米・英・仏=「持てる国」と比べると、その野心に応じた広い国土や植民地を持っていなかったため、軍事力に訴えても植民地を獲得し、新たに経済ブロックを作り出して、自国の強化・拡大を図ろうとしたため。


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ブログのエントリーを分類するカテゴリーについては、件数が増えてくるたびに分割するようにしている。あまり件数が多いと、どんな記事が入っているかが分からなくなってくるから。今回は「雑記」カテゴリーが100件を超えたので、雑記として書いてきた「奇妙な夢」シリーズを独立させることにした。

数えてみると夢シリーズだけで20以上のエントリーがある。我ながら変な夢が多いなぁと思いつつ、スピンアウトした後の、カテゴリー名を考えてみた。「奇妙な夢」なので、「奇夢」ではどうかと思ったのだが、どうやらそのような単語はない。できれば2文字の漢字に統一したいのだが、「悪夢」ではないし。。。意外と「夢」の付く熟語は少ないことに気が付いた。

こういう時にWebは便利。いろいろ調べてみると「怪夢」という単語がヒットした。「不思議な夢、不可解な夢」という意味であり、夢野久作の小説のタイトルにもなっている。まさに私が見ているのは不思議な夢、不可解な夢なので、ぴったりのイメージ。という訳で、次回から「奇妙な夢」シリーズがスピンアウトします。

◇1528 『ナビゲーター世界史B(3)』 >鈴木敏彦/山川出版社

ナビゲーター世界史の3巻目。実は近代ヨーロッパ史が世界史の中で一番苦手である。何度読んでも複雑に感じてしまい、また前後関係がぐちゃぐちゃになってしまう。これはもう、繰り返し学ぶしかないのであろう。年表などを手元に置いて読み進めるとよいのかもしれないが、まぁ受験勉強をしているわけではないので、ゆっくりと焦らずに。

それでは重要箇所を要約。

・世界に先駆けてスペイン・ポルトガル両王国が「大航海時代」のスタートを切った3つの理由:(1)キリスト教世界をさらに拡大させようという宗教的情熱。この両王国はイスラーム教徒と戦いながら国づくりをしけきたため、海外制服にも向かうような戦闘的宗教精神に満ちていた。(2)アジアと直接貿易して、利益を増やそうという経済的な動機。十字軍以来、東方貿易(レヴァント貿易)が拡大する中で、アジア(インド)との貿易はとても利益があることが分かったが、胡椒などの香辛料はイスラーム商人を通じて手に入れていたため高かった。ヨーロッパとインドの間には広大なオスマン帝国やマムルーク朝の領土が横たわっていたため、海路による直接取引を志向した。(3)ルネサンス期の科学技術の発達。羅針盤の改良や公開技術の発達、地球が球体であるという考えやそれに基づく地図の発達。

・大航海時代の影響=ヨーロッパが優位に立つ「世界の一体化」が進んだこと。地球規模での商業活動が始まった。商業の中心が、地中海から大西洋に移った。新大陸からヨーロッパへの大量の銀の流入により急激な物価上昇(インフレーション)が起こった。この価格革命により中世ヨーロッパの支配階級だった封建領主らが没落し、封建体制の解体が加速された。

・「近代世界システム」アメリカの歴史家ウォーラーステインらが1970年代に唱え始めた考え。大航海時代には西ヨーロッパ中心の世界的な分業体制が形成され、世界の一体化がもたらされた。その流れは次の通り。(1)16世紀ころから、西ヨーロッパは毛織物などの工業製品を生産して飛躍的に発展し、資本主義経済体制を生み出し、その中心地域(=「中核」)となった。他方で工業原料や食糧への需要は急増した。(2)「中核」となった西ヨーロッパは、東ヨーロッパ・ラテンアメリカなどを資本主義経済に巻き込んでいき、「中核」に対して製品市場や工業原料・食糧の供給地の役割を担う従属地域(=「周辺または周縁」地域)とした。(3)その後19世紀までに、「中核」はアジア・アフリカをも「周辺または周縁」として組み込み続けたため、西ヨーロッパを中心とする世界的な分業体制(近代世界システム)が確立された。そして、今日に至るまで、このシステムの下、「中核」に属する国や地域は豊かさを維持し続け、「周辺または周縁」に属する国や地域は貧しいままにおし留められ、貧富の格差が固定・拡大されてきた。

・16世紀の近代ヨーロッパでは、主権国家が確立された。主権国家とは「領土と主権が明確な国家」のこことされるが、「国家単位でのまとまりが強い国家」「国家単位での利益が重視される国家」という特色からも説明される。主権とは「一定の領域(国家の領土)内での最高権力のことで、他国からの干渉に対してはそれを排除する、自主独立の政策決定権」のこと。このような主権国家同士が、強調したり対立したりして成り立つ仕組み(国際関係)を、主権国家体制と呼ぶ。

・16世紀頃から、主権国家が徐々に形成されてきたのは、国王が領主やローマ教皇を圧倒するほどの権力を握り(主権者であることが明確になり)、その結果、領土(国王の統治権のおよぶ範囲)も明確になってきたから。国王の権力が協力になった理由は3つ。(1)政治(軍事)的要因:イタリア戦争など大規模な戦争においては、莫大な兵力や豊かな財政を準備できる強力な王権(国王)しか生き残れないことがはっきりとしたから。(2)経済的要因:大航海時代以降、経済規模が急拡大し、強い王権の下で国家が強くまとまらないと、商工業が発展できない時代になったから。(3)宗教的要因:16世紀の宗教改革によって、ローマ教皇権(カトリック勢力)が衰退し、国王はカトリック教会の干渉を退けて、権力を自由に行使できるようになったから。

・1618年〜1648年のドイツで起こった三十年戦争は、最後で最大の宗教戦争と呼ばれている。ベーメン(ボヘミア、現在のチェコ)で起こった宗教対立をきっかけに、主権国家間の勢力争いに発展した。この結果、1648年に結ばれたウェストファリア条約により、主権国家体制が確立されたと言っても過言ではなく、17世紀以降のヨーロッパ体制を決める重要な条約だった。ポイントは4つ。(1)ドイツ内で、それまで認められていたカトリック・ルター派に加えて、新たにカルヴァン派の信仰の自由が承認された。(2)スイスとオランダの、ハプスブルク家からの独立が承認された。(3)フランスがアルザス地方などを獲得、スウェーデンが北ドイツに領土を得た。(4)ドイツ(神聖ローマ帝国)の領邦の主権が、ほぼ完全に認められた。


・・・この前後には、ルネサンス、宗教改革、植民活動、市民社会の成立と、近代社会を大きく変える出来事が次々に起こるのだが、今の私の実力では、どの事象をどのように纏めたら分かりやすいかが、理解できていない。冒頭にも書いたが、この3巻目は再読必須である。本書は4冊組のシリーズであり、1巻から全編を繰り返して読もうとすると気が重くなるが、まずは理解の薄い3巻だけを繰り返し読むというのであれば、実現できそう。まずは何度か通読して、歴史の大きな流れを頭に入れてしまいたい。

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今日は久しぶりに鮮明に覚えている夢を見た。会社の同僚のT君が登場。私の夢に、現実世界の人物が登場するのは珍しいこと。しかしながら、なぜかT君は、筋肉ムキムキでブーメランパンツを履いている。まるでボディビルダー。

どうやら何かの大会らしい。かなりの人だかりだ。隣にいたT君は、「そろそろ俺の番だ」と、人混みをかき分けて消えていった。よく見ると、目の前に高いポールが立っていて、その隣には水泳の飛び込みのようなジャンプ台がある。T君がジャンプ台の階段を一歩一歩踏みしめながら登っていくのが見える。

ジャンプ台とポールの距離は2メートルほどだろうか。飛び込み台の先端に立ったT君は、姿勢を正し、身体を上下に動かして反動をつけて、一気に跳躍。しかしながら、ジャンプ台の下にプールはない。危ない!と思ったが、見事、ポールにつかまっている。

どうやら、ジャンプ台から跳躍してポールにつかまる競技のようだ。その後、ポールダンスをしながら、ゆっくりと降りてくる。ジャンプの高さとポールダンスとで、技術点と演技点を競う、点数式の競技。

結局、T君とは合流できず、また、T君の点数も分からないまま目が覚めてしまった。

◇1528 『スーパー経理部長が実践する50の習慣』 >前田康二郎/日本経済新聞社

所用で東京に出かけた際に、品川の駅で購入。平積みされていて、ベタなタイトルだなと思って手に取ってみて、こんなタイトルだと買う気にならないなと思いつつ目次を見たところ、結構的を得たことが書いてある。電車の時間が気になっていたので、本は一期一会と衝動買いしてしまった。

帰りの電車でさっそく読み始めたのだが、何となくデジャブ感。デジャブにしては既視感が強すぎると思っていたところ、ウェブに連載されている記事を読んだのだと思い出した。家に帰って調べてみたところ、日経BizGateに連載されていた記事。正直、買わなくてもよかったかなと後悔したが、せっかく買ったので最後まで目を通してみた。(Webに掲載されているのは書籍の半分程度の内容かもしれないが、エッセンスはWebでも十分に知ることができる)

全般を通じて語られているのが、経理部はただの事務屋にならずに、数値を分析したり、それをもとに提案したりして、付加価値を出していこうという趣旨。その通りだなぁと共感した箇所を要約して引用しておこう。

・自分が担当している範囲については、数字をまとめるだけでなく、分析して、「意見」を考える習慣をつけてみる。

・予算を集めた際、経理は集計するだけでなく、それが「正しいのか」「ふさわしいのか」を見極める。保守的すぎる数値やアグレッシブすぎる数値にはメスを入れ、最終的な落としどころの数値を見定め、経営者と現場とのやりとりの末に、その数値に着地できるように、根拠を示しながらサポートする。

・経理社員は自分から能動的に情報を取りにいかないと、旬の情報を知りにくい環境にある。

・数値を集計する際に、前回・前々回と比較してどうか、次回はどうなるのか、など多角的に考えながらまとめていく。そうすると、数値が間違っている場合、なるべき数値と違うと感じてチェックをし直すことができる。

・経理部からよい「空気」を出すように心がける。それが経理社員の最低限のマナー。(会社の愚痴を言わない)

・誰に対しても平等に接する。ルールをないがしろにしない。

・請求書を見たら、その先を考える。(仕入先の資金繰り担当者の立場で考える)

・経営者は数値の質問に答えられない担当者に質問をしてくる。質問に即答する担当者は、「自分が知っておいたほうがよい数値が出て来たら、あいつはすぐに報告してくれるだろう」と質問しなくなる。

・なんとなく「荒れている」会社というのは、ワークフローが形骸化されていたり、重要視されていなかったりして、しっかりしていないことが多い。そういった場合、ワークフローをしっかりしたものにすれば、課題の大半は解決してしまうことが多い。

・会社で起こる人間関係の問題の多くは「ワークフローのあいまいさ」に原因があると考えている。それぞれの役割が明確になっていない場合に、どちらがやるのか、どちらに責任があるのかというところから、問題が発生してくる。

・1週間に1つの課題を解決していけば、1年で50の課題を解決できる。それだけで、ほとんどの会社の問題や社員の不満が解消される。(改善の積み重ねが大切。改善を積み重ねていると、若手からも提案が出やすくなる)

・「数字」はお互いの言いにくい部分を補うコミュニケーションツールになり得る。(若手社員であっても、数字を根拠に指摘や提案がしやすくなる)


さて、本書だが、何だかカバーがごわごわして読みにくいなと思っていたら、カバーが二重になっていた。表にかけられていたカバーを外すと、古いバージョンのカバーが表れたのだ。古いバージョンの方は、Webの連載で見たことがある表紙。この表紙のままだったら、買わなかったかもしれない。書店の戦略にうまく乗せられたということであろうか。。。



【目次】

1 「経理は事務職」は遠い過去
2 日常の行動習慣が「デキる」をつくる
3 「デキる経理」の資質とモラル
4 「デキる経理」のコミュニケーション力
5 組織の規模・環境に応じた経理社員の仕事上のポイント
6 経理部門内での立場・役割と仕事の基本
7 経理以外の部署に何を中心に「経理」を伝えるか
8 「デキる経理」心得帳

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以前、別の番組でアトキンソン氏のことが取り上げられており気になっていたので、楽しみながらの視聴となった。元ゴールドマン・サックス証券の金融アナリストであり、畑違いかつ経営の経験もなかったとのこと。しかしながら、日本が大好きで茶道もたしなむ。そんなアトキンソン氏に目を付けたのが先代社長。「数字が分かって日本文化にも詳しい」と請われて入社したそうだ。

しかし入ってみると、「伝統」という名のもと職人の世界はどんぶり勘定で、解決すべき問題が山積していた。例えば若い職人の離職率は8割近く、職人不足が深刻だった。そこで、アトキンソンは、300年の伝統を持つ会社で様々な改革に乗り出した。 アトキンソン改革(1)職人の正社員化と待遇改善、(2)どんぶり勘定を止め徹底的に無駄を省く、(3)仕事の進捗状況や原材料仕入れを数値化し効率アップ。また、後継者不足に悩んでいたため、新入社員を毎年採用し、研修も実施するようになった。

気難しい職人を相手に理詰めで説いていく。その一言ひとことが納得性が高くて興味深かった。例えば、従来、遠方の社員寮ではシャンプーまでも会社負担で購入していたそうだが、「あなたは自分の仕事の対価として、シャンプーが欲しいのですか?給料でほしいのですか?」と問い詰めた。また、仕事が粗くて塗装が剝がれてきた神社では、職人に対して「あなたの息子をここに連れてきて、これはお父さんが手掛けた仕事なんだと胸を張って言えますか」と詰め寄った。こういった、理に適った一言ひとことが職人たちの意識を変えていった。

こういった改革を進める中での、アトキンソン氏の言葉が印象的だった。「何をするにしても反対は出る。みんながハッピーになれるわけがない。1個1個の問題をどう解決するか決めて、徹底的に実行していく」 アトキンソン改革によって、非正規社員が正社員になり、昇給無しが有りに変わり、研修も実施されるようになった。社員に対して負担を強いるが、結果はプラスになって返ってきているという。

完成した仕事を見る眼も厳しい。「美しいか美しくないか」のみで判断しているという。技術のことは分からないし、分からない方がいいという。なぜなら、技術が分かってしまうと、これは難しいからこの程度で仕方がないであろうという妥協が生まれてしまうから。また、神社や寺社の裏側、高くて目に見えないところまでも、細部に渡って完璧を求める。これは、次世代の職人に対する挑戦だという。次世代の人が、この仕事を見て、闘志を燃やすようなものを残したいとのこと。日本人以上に日本人らしい職人気質である。



【番組ホームページより】

日光東照宮の華麗な陽明門で修復を手がける小西美術工藝社は、300年以上の歴史を持つ老舗の職人集団。その社長は、元金融アナリストで英国人。ひょんなことから社長に就任したが、「伝統」の名の下にどんぶり勘定で生活も不安定だった職人の会社を大改革した。さらに、観光立国を目指す日本の切り札は、貴重な文化財だと主張する。知られざる文化財修復の世界に身を投じた、日本を愛する英国人の「伝統」改革と提言とは?

◇1527 『大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」』 >池上彰/講談社α新書

古本屋で100円で売られていたので、買ってみたのだが、100円である理由が判明。今から15年近く前、2002年の書籍なのだ。池上さんがまだNHKの「週刊こどもニュース」のキャスターをやっていることの著書。このころから、分かりやすい解説を心掛けていたのだと、妙なところで感心してしまった。

15年も前の著書だが、イスラム教に関する基本的な部分に変わるものがあるわけではなく、今読んでも十分に通用する内容。しかしながら、もし同じ本が今出されていたら、おそらくIS(イスラム国)や各地で勃発しているテロ行為などについても言及があったであろう。

それにしても、2002年という時点でこのような本が出版されていたとは、自分の勉強不足を思い知ってしまった。確かに当時は9.11の直後であり、自分自身としても、もっとイスラムなどに興味を持ってもよかったであろう。最近になって、ようやく勉強を始めた訳だが、今まで学んできたことの大半がこの本の中に、分かりやすく解説されているといってよい。

前半部分は、たまたま先日読了した『世界を変えた10冊の本』のコーランの説明内容とほとんど重複しており、すらすらと読み進めた。また、パレスチナ問題や湾岸戦争についても、既知の知識が多く、今まで得た知識の復習と定着という感じで読み進めることができた。たとえ知っている内容であっても、池上さんのような分かりやすい説明で読み直すことで、きちんと整理されて記憶に定着していくことができるであろう。

本書の収穫はアフガニスタンに関する記述。アフガンに関してはソ連の侵攻があったというぼんやりとした知識しかなく、なぜソ連はアフガニスタンに侵攻したのか、その結果どうなったのか、などはしっかりと知らなかった。今回、背景などをきちんと理解することができたのは非常によかった。20ページ程度の説明なのだが非常にコンパクトによくまとまっている。せっかくまとまっている内容を、さらに要約するのは申し訳ない気もするのだが、自分の頭の整理のため、記録しておきたい。

・アフガニスタンはもともと、ザヒル・シャー国王が統治する平和な国だった。1973年9月、ザヒル・シャー国王が病気療養のためにイタリアに行っている間に、ソ連の後押しを受けたダウド元首相がクーデターを起こした。ソ連から見るとアフガニスタンは隣国であり緩衝地帯として必要な国。その国が次第にアメリカと仲良くし始めたため、ソ連がダウド元首相を支援してクーデターを起こさせた。

・アフガニスタンには人民民主党というソ連シンパの政党があった。しかしながら、クーデターでトップになったダウド元首相は、自分の言うことを聞かない人民民主党を抑えつける。これに反発した人民民主党がクーデターを起こし、ダウド元首相は殺されてしまう。結果として人民民主党が政治を行うようになったが、この時、内部対立が起き、親ソ連とアンチソ連の2つのグループに分かれてしまう。最終的にアンチソ連の派閥が勝利。これに対してソ連は、自分たちの言うことを聞く国にしようと、1979年12月24日、 アフガニスタンに攻め込んだ。

・アフガニスタンの国の軍隊である「アフガニスタン政府軍」の幹部の中にはソ連軍で訓練を受けた者も多く、ソ連軍の言うことを聞こうと考えた。一方、他国が勝手に我が国に攻め込むのはよくない、とソ連軍と戦おうと考えた兵士も多かった。結果として、政府軍の兵士がソ連寄りとソ連反対に分かれて互いに戦争(内戦)を始めた。さらには一般国民も、ソ連軍と戦おうと武器を持って立ち上がった。

・アフガニスタンはもともとイスラム教の国であるが、ソ連は宗教の自由を認めない国。ソ連がアフガニスタンを完全に支配することになったら、イスラム教を自由に信じることができないのではないかと考えた。イスラム教徒にとっては、ソ連軍と戦うことが「イスラム教を守る戦い」=「ジハード(聖戦)」ということになる。こうして多くの若者たちが武器を持ってソ連軍と戦ったが、これらの兵士たちは「ムジャヒディン(イスラム聖戦士たち)」と呼ばれた。

・このムジャヒディンをアメリカが応援。ソ連と対立するアメリカは、敵の敵は味方と考えたのだ。アフガニスタンの東隣にある、親米でイスラム教徒の国・パキスタンを経由して、アメリカからムジャヒディンに武器が渡された。ムジャヒディンは国と宗教を守ろうと、必死で戦うが、一方のソ連軍は何のための戦いか分からず戦意を失っていった。ソ連の国自体も経済がうまくいっておらず、大量の軍隊をアフガニスタンにおいておく余裕がなくなり、1989年2月、アフガニスタンから撤退した。

・その後、ソ連という国自体がなくなってしまった。アフガニスタンの北側だった、旧ソ連領地は、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンという3つの国に分かれた。

・ソ連軍撤退後は、ムジャヒディンが政治を行うようになった。しかしながら反ソ連という共通の目的を失った後は、宗派や民族が異なるムジャヒディンたちの間で対立が始まり、各派が入り乱れて戦争を始めた。アメリカもソ連を追い出したことで目的を果たしたとして、アフガニスタンから撤退。結局、最新式の武器や数多くの地雷が残されたままとなった。

・この混乱期に登場したのがタリバンである。タリバンとは、アラビア語で学生(タリブ)の複数形。パキスタンの神学校の卒業生たちが起こした集団であるため、このような名前になっている。タリバンの軍隊は1994年、突然アフガニスタンに登場し、またたくまに国の90%を支配するに至った。

・タリバンはパキスタンの難民キャンプから生まれた。ソ連軍がアフガニスタンに攻め込んで以来、戦争から逃れて多くの難民がパキスタンに入ってきた。特にパキスタンの西部には、アフガニスタン最大民族のパシュトゥン人と同じ民族が住んでいたことから、多くの難民がやってきた。この難民キャンプの子供たちは、イスラム原理主義の団体が建てた神学校(マドラサ)で、イスラム教を、特に「神のために死を恐れずに戦え」というイスラム原理主義を教え込まれた。

・こうした教育を受けた若者たちの中から生まれたのがタリバンである。1994年に突然現れたタリバンは、最新の兵器をパキスタンから与えられていた。パキスタンの難民キャンプで育ち、パキスタンの神学校で教育を受けたタリバンであれば、アフガニスタンの支配に成功した後、パキスタンの言うことを聞く政府になるだろう考えたのだ。




【目次】

1 宗教とはなんだろう
2 ユダヤ教とキリスト教のことも知っておこう
3 イスラム教とはどんな宗教?
4 イスラム社会にもいろいろある
5 イスラム原理主義という言葉をよく聞くけど?
6 アフガニスタンはどうなっていたの?
7 中東問題はどうなっているの?
8 湾岸戦争とはどんな戦争だったの?
9 日本の神とイスラム教の神はどう違う?
10 仏教のことも知っておこう

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お菓子の卸業者を、なぜカンブリア宮殿が取り上げるのだろうと、不思議に思いながら見始めた。カンブリア宮殿も毎回当たりという訳ではなく、今回は面白くなかったな、と思うような回もあるので、そんな内の一つかなと思いながら、軽い気持ちで見ていると、後半から画面を食い入るように見入ってしまった。

吉寿屋(よしや)というのは、神吉武司・秀次両氏による、お菓子の卸売りと小売りとを兼ねている会社。年季の入ったお二人の語り口が非常に味があり、かつ重みがある。謙虚さの中に、こつこつと努力を続けてきた自負と自信を感じるインタビューだった。特に「初心とは帰るものではなく、貫くもの」という一言は強烈に胸に響いた。

素晴らしいなぁと感じた点を記録しておきたい。

・よしやは、年商121億円、内お菓子の小売りは3.8億円。利益率3.5%は卸売りとしてはかなりの高利益。(計算すると利益は4.2億円になる)

・稼いだ利益の内、半分は税金。残りを三等分し、社員還元、内部留保、先行投資へと振り分ける。つまり利益の6分の1を社員に還元している。その額は年間7千万円。

・社員への還元の例:最優秀社員は年棒3000万円、売上増加に対するボーナス500万円、その他、じゃんけんでテレビ・炊飯器などの家電がもらえるなど。

・社員への還元は、過去の実績・業績に対するものであり、報酬をもらったからといって、将来頑張る必要はないと言い切っている。見返りは一切求めない。

・利益が出たら、それを社員に還元するのはごく当たり前のこと。

・武司・秀次両氏とも早起き。経営者が一番よく働き、よく工夫しなければならない。一方で、俺が働くからお前も働けと言っては駄目。

・社員は、こういった経営者の思いをきちんと感じてくれている。言わなくても伝わる。だからこそ「思い」は大事。

・朝出社すると、お菓子倉庫に向かって挨拶する。「お菓子の皆さま、おはようございます。今日も一日よろしくおねがいします。ありがとうございます。ありがとうございます」

・卸売業界は薄利多売。少しでも利益を確保するために、「1円大作戦」として、徹底して無駄を省いている。メーカーから送られてくる段ボール箱を、自社の小売店への配送に使う。使い古したら、段ボール箱を資源として売却。これだけで年間200万円になる。

・早起き、経費削減などは、一切お金がかからず、明日からでも始められるようなシンプルなもの。しかし、継続しなければいけない。最低でも7年は続けないと結果は出ない。

・業績が上がらないと、社員を幸せにはできない。

・社員だけでなく、運送業者の人々や菓子メーカーにも気を配る。業界の悪習慣であった返品制度を廃止し、売れ残っても返品しないこととした。

・お菓子を返品すると廃棄処分されてしまう。お菓子として生まれてきたからには、お菓子としての人生をまっとうさせてやりたい。だから、半額でも売り切る。

・事務所の壁に「三井住友銀行以外とは取引してはならない」という紙が貼ってあった。恩義を大切にしているのであろう。

・50年、この仕事をしてきて、景気がいいと感じたのは5年くらい。景気に左右されていては、商売はできない。

・「初心に帰る」という言葉が嫌い。初心を忘れるから帰らなければならなくなる。初心とは帰るものではなく、貫くもの。




【番組ホームページより】

創業52年を迎えた菓子問屋の吉寿屋。卸売りのほか、専門店「お菓子のデパート よしや」という直販店を関西を中心に101店舗展開している。小売店の価格は定価の約2割引き。品揃えはロングセラー商品からスーパーやコンビニで見たことのない菓子まで...なんと1400種類。まさに「お菓子のデパート」だ。商品の単価が安く儲けが薄いと言われる菓子業界の中にあって、吉寿屋は、独自の社員をやる気にさせる報奨制度を作り上げ、業界トップの利益率をたたき出しているという。その結果、創業以来"赤字無し"の健全経営を続けているのだ。そんな独自すぎる仕組みを作り上げた人物こそ、創業者の神吉武司。そして、仕入れ部門で武司を支え続けてきた現・会長で弟の秀次だ。兄弟二人三脚で作りだしたユニークな最強菓子会社「吉寿屋」。その強さの秘密に迫る。

〇1526 『天平の甍』 >井上靖/新潮文庫

背表紙あらすじ:天平の昔、荒れ狂う大海を越えて唐に留学した若い僧たちがあった。故国の便りもなく、無事な生還も期しがたい彼ら―在唐二十年、放浪の果て、高僧鑒真を伴って普照はただひとり故国の土を踏んだ…。鑒真来朝という日本古代史上の大きな事実をもとに、極限に挑み、木の葉のように翻弄される僧たちの運命を、永遠の相の下に鮮明なイメージとして定着させた画期的な歴史小説。

しばらく堅い本ばかり読んでおり、久しく小説を手にしてないなと思い、簡単に読めそうな薄手の本を選択。軽い気持ちで読み始めたのだが、一気に引きずり込まれてしまった。さすがは井上靖である。

堅い本を読んでいると、読書に疲れるといおうか、継続して読み続けることができなくなるので、大概は2〜3冊を並行して読み進めている。本を継続して読み続ける力のことを「読書体力」と言うのだと聞いたことがあるが、私など、読書体力は低い方であろう。ミステリーなど先が楽しみな本は一気に読むことができるが、難しい書籍になるとお手上げである。嘆いていても仕方がないので、2〜3冊を並行読みすることで、何とか机に向かう時間を確保している。

話が反れてしまった。本書は小説ということもあろうが、そんな私を飽きさせず、一気に最後まで没頭させてくれた物語であった。確かに200ページ程度の短い物語なのだが、その中には主人公・普照(ふしょう)の20年に及ぶ唐(中国)での生活が凝縮されている。しかも、長安(現在の西安)や洛陽といった、かつて自分が訪れた地が出てくるので、余計に感慨深いものがあった。

中国本場の仏教をきちんと日本へ伝えたい。そんな思いで命を懸けて唐に渡る若者が4人。1人は勉学に励み、1人は高僧を日本へ招くことに熱意を傾け、1人は勉学よりも広大な土地を見分することを選び、もう1人は脱落して現地で妻子をもうける。その熱意にこたえるべく、渡日を決意するのが高僧・鑑真である。

本書では、もちろん鑑真が大きな役割を担ってはいるのだが、むしろ4人の若者たちの生き方に焦点を当てている。しかしながら、私が心惹かれてしまったのは、ひたすら写経に打ち込む業行という老僧である。自分で仏教を学ぶことをあきらめ、むしろ唐にある経典を写経して日本に持ち帰った方が国の役に立つ。そんな思いで人生の大半を写経に費やしてきた僧である。

最初はその偏屈で頑なな態度に、反感を抱いたが、自分を捨て、ひたすら日本の仏教発展のために取りつかれたように一心に写経に励む姿を読み進めるうちに、反感は敬意に変わっていった。一つのことに集中して、継続することの難しさ。それを成し遂げる意志の強さ。そんなものに感動したのであろうか。

その業行の一生は空しくも海に消えてしまう。考えてみると、唐へ行くにも命がけ、帰ってくるのも命がけなのだ。文中でも触れられていたが、無事に唐にたどりついて勉学に励もうとも、帰路で遭難してしまえばすべてが無駄になる。今では飛行機で2時間足らずで行くことのできる隣国だが、当時の人々にとってはどれほど遠い地に思えたことであろうか。

また、今はインターネットが普及して、テキストデータであればメールなどで一瞬にして送れてしまう。さらには、写経などしなくとも、データのコピーもできるし、コピー機やPDFなどの画像データとして複写することもできる。この文書を「写す」という作業と「運ぶ(送る)」という作業が、時間もコストもかからずに、誰もが容易にできるようになってしまっているのが、現代社会である。

果たして、便利なことが良いことなのだろうか。便利さゆえに失われているものがあるのではなかろうか。そんな疑問も抱きつつ。

ラスト近くで普照が夢に見た、業行が写し取った巻物が1つ1つ海へ沈んでいくシーン。私など、このブログのデータがすべて失われるところを想像してしまった。パソコン、USB、外付けハードディスク、エバーノート、など複数の媒体にコピーは取ってあるものの、画像データなどがきちんと系統立てて保管されているとは言えない。十数年の蓄積が一瞬で失われるところを想像すると、業行の頑なさも理解できるような気がした。

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