Namuraya Thinking Space

― 日々、考え続ける ― シンプルで、しなやかに ― 

◇1596 『2050年の技術−英「エコノミスト」誌は予測する』 >文藝春秋/英「エコノミスト」 編集部

直接的に自分の仕事に関係するわけではないのだが、テクノロジーについては興味を持っている。理系ではないので、細かな技術のことは分からないが、世の中にどういったテクノロジーが生まれてきているのかを知っておくのは重要なことだと思うから。最近の技術の革新のスピードは加速度的であり、少し目を離すとついていけなくなりそうなので、ときどきこういった本を手にして、知識の棚卸をしておきたい。

以前から日経ビジネスの技術に関する記事などを読み込んできたが、購読をやめてしまったので今は新聞記事に頼っているだけ。ごく限られた情報源ではあるが、気になっているのは次のようなテクノロジーだ。

・IoT
・人工知能
・3Dプリンター
・ドローン
・自動運転
・電気自動車
・シェールガス革命
・ウェアラブル端末
・ブロックチェーン
・AR.VR
・人工光合成
・バイオ治療
・ロボット手術

さて、本書ではどのような技術が取り上げられているのだろうか。その一部を箇条書きで記録しておきたい。

・途上国では車を「所有する」段階を飛び越えて、「共有する」のステージに入る可能性がある。

・地球が住めない環境になったとき、宇宙ステーションなどを作って進出するのではなく、人間の体を作り変えて宇宙などの環境でも生きられるようにできるのではないか。

・ムーアの法則は、技術の「ペースメーカーとしての役割」が重要だった。

・量子コンピューターは情報を量子系間のデリケートな相関(エンタングルメント)のかたちでコード化する。原理的にこれらの相関は非常に豊かな構造を持っており、情報をけたはずれの密度で保管し、操作することができる。

・美容整形、タトゥー、視力矯正手術(レーシック)などと同じ感覚で、ゲノムをいじるようになる時代が来る。

・脳とインターネットが直結する。そのとき、ウイルスやマルウェアにどうやって対抗するか。

・DNAを記憶媒体にできれば、小さくて大容量の情報が保持できる。

・地ビールの鋳造は小さな地場メーカーでも対応できる。これは「発酵技術」を使用しているから。この技術を使用して、ミニ化学プラントを至る所に設立できるのではないか。

・治療用ワクチンから、予防用ワクチンへ。特に結核用や呼吸器用など。

・医療データの収集は医師の意思決定を支援する。

・標的療法:すべての細胞ではなく、病気になった分子や細胞を標的とする治療法。

・分子イメージング:X線、超音波、MRI、光などのモダリティ(撮画手段)を、細胞あるいは特定の分子など細胞の構成要素に照準を合わせるメカニズムを組み合わせるもの。

・衣服やカーテンなので太陽光発電を行う。

・核分裂ではなく「核融合」を使う、まったく新しい原理の原子力発電。

・材料のゲノム・プロジェクト。

・19世紀は蒸気の時代、20世紀は石油の時代、21世紀はデータが動力源となる時代。

・個人の情報資産を預かるデータ銀行。



【目次】

■はじめに 破壊的で大規模な技術の変化「メガテック」

〈第一部 制約と可能性〉

■第1章 日本のガラケーは未来を予測していた
過去、現在、SFで描かれる未来。この3つが2050年を見通すための鍵になる。15年前、スマートフォンの登場を予測した人々は、日本の女子高生に注目した。

■第2章 ムーアの法則の終わりの先に来るもの
チップの極小化によるコンピュータの高性能化(ムーアの法則)は、原子のレベルに近づき限界を迎えつつある。だが、そこからコンピュータの発展の未来が見えてくる。

■第3章 第7の波、AIを制する者は誰か?
メインフレーム型コンピュータの第一の波を制したのはIBM。第二の波はパソコン。その波を制したビル・ゲイツは、遥か未来のAIの登場について当時考えていた。

■第4章 なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?
経済学者のロバート・ゴードンは、産業革命と比べると、今日のデジタル革命では、生産性、労働賃金、生活水準はほとんど上がっていないと指摘したが、その盲点は?

■第5章 宇宙エレベーターを生み出す方程式
どんな技術が実現可能か。物理学者はその答えを導き出す方程式をすでに手に入れている。タイムマシンや光速を超える情報伝達は実現しないが、老化や疾病は克服できる。

■第6章 政府が「脳」に侵入する
人間の脳はインターネットに接続され、図書館、スーパーコンピュータ、宇宙望遠鏡と直結する。だが同時に、スパムやマルウエア、ウイルスも一緒に取り込んでしまう。

■特別SF1 傷つく自由(アレステア・レナルズ)

〈第二部 産業と生活〉

■第7章 食卓に並ぶ人造ステーキ
世界人口は約100億人に達するが、食糧危機は起こらない。細胞培養を通じて、多くの食品が工場で製造されるからだ。牛乳も卵も、生産に生身の動物は必要なくなる。

■第8章 医療はこう変わる
集中治療室での診断情報の解釈から難易度の高い外科手術まで、学習能力をもったAIが担うようになる。一方、糖尿病、癌などでは予防用ワクチンの開発が進むだろう。

■第9章 太陽光と風力で全エネルギーの3割
太陽電池は透明な軽量フィルムとなり、自宅の窓やカーテンはもちろん、衣服でも発電が可能になる。原発は先進国では廃炉が進み、中国、インド、ロシアのみに。

■第10章 車は編まれ、住宅は印刷される
3D印刷の市場規模はまだ67億ドル程度だが、2040年には1兆ドルを超える。その未来を見抜いた中国は、すでに大量生産ラインで活用。建物まで印刷している。

■第11章 曲がる弾丸と戦争の未来
すでに西側のスナイパーの狙撃距離は2475メートルを記録。今後は、空中で軌道を修正できる弾丸の開発で、照準線の向こうに隠れている敵を狙撃できるようになる。

■第12章 ARを眼球に組み込む
誰もがスマートフォンの代わりにARメガネを使いはじめる。街からは看板や信号が消え、他言語はリアルタイムで翻訳。その技術はやがて眼球自体に取り入れられる。

■特別SF2 博士の救済(ナンシー・クレス)

〈第三部 社会と経済〉

■第13章 人工知能ができないこと
AIがわれわれを超える知性を持つことを心配する人は多い。しかし、アルファ碁は対局の最中に火災報知器が鳴り響いても、次の一手を探しつづけるだけだ。

■第14章 プライバシーは富裕層だけの贅沢品に
コンピュータはすでに医師よりも正確に乳癌の発症を予測できる。だが、その認識パターンは膨大かつ曖昧で、人間の理解を超えている。ゆえに因果関係の把握は不可能だ。

■第15章 10億人の経済力が解き放たれる
アフリカでは農民のほとんどが女性である。市場価格を知らない彼女たちは、業者の言い値で取引し、貧困状態にとどまっている。彼女たちを救うのはスマートフォンだ。

■第16章 教育格差をこうして縮める
中産階級の子供が最初の2年で親から語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比べて数百万語多い。幼児教育から始まるこうした格差を、技術の力でいかに埋めるか。

■第17章 働き方は創意を必要とされるようになる
私たちは現在、毎日150回以上携帯電話を確認し、メッセージ等の通知に10.5秒に1回の割合で作業を中断させられている。こうした働き方はいつまで続くのか。

■最終章 テクノロジーは進化を止めない
「産業革命は蒸気電力の開発から始まった」。実は、これは誤解である。技術の誕生は革命の結果に過ぎず、原因ではない。今も昔も、テクノロジーに意思などないのだ。

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◇1595 『大前研一「ビジネスモデル」の教科書』 >KADOKAWA/大前研一

「大前研一」という著者と、「ビジネスモデル」というキーワードに、書店で即購入してしまったのだが、結果としては(自分にとっては)「ハズレ」だった。内容的には、現在世の中で成功しているあるいは伸び悩んでいるビジネスモデルを、自分なりに分析せよというもの。お題が提示され、それに対する大前さんの回答が記載されている。

そのお題というのが、例えば「あなたがザ・コカ・コーラカンパニーのCEOならば健康志向の高まりから炭酸離れが進むなか、どのような戦略で対処するか?」というようなもの。この問いかけの後、前提条件となる企業の状況などが記載されているのかと思い読み進めると、いきなり大前さんの回答が書かれているとう構成。ケーススタディのようなものを想像していたのだが、趣旨としては、企業の財務状況や取り巻く環境は自分で調べて自分で回答を出せということのようだ。

ケースが12件記載されているので、2件目からは本書の趣旨に沿って自分なりに考えながら読み進めた。しかしながら、財務状況や業界環境をネットで調べるところまでヤル気にはならず、効果は半減であろうか。

本書で有用だと感じたのは、ケーススタディに入る前に紹介されている「大前式の学習法」のところ。具体的には次のようなことを心掛けているとのことである。

・自分にとって本当に必要な情報を取得するためには、ただ闇雲に情報を収集するようなことをしてはいけない。情報収集の究極的な目的は「対象(例えば企業)の本質的問題とは何か?」を炙り出すことである。そして、本質的問題を炙り出すためには、まず対象の全体像を知る必要がある。全体像が不明な情報の断片から本質的問題を求めることは不可能なのだ。全体像を意識せずに情報収集を行うと、情報の「不足(漏れ)」と「重複」をまねき、さらには全く無関係な情報収集に時間を浪費してしまうことになる。その結果、大量の欠陥情報に埋没したまま、「要はなんだったんだ?」と思考停止状態に陥ることになる。

・さらにここで気をつけるべきは、決して「はじめから結論を予測(または仮定)して情報収集をしてはいけない」ということだ。先入観を持って情報収集してしまうと当然限られた情報しか手に入らず、必然的に本質的問題に辿りつくことができない。またその企業がおかれている状況を整理し、抱えている問題を明確にするためには、財務情報といったその企業自体の情報だけではなく、その企業を取り巻く「全体像」を捉える必要がある。そのためには、「企業の情報」に加え、「市場(カスタマー)の情報」や「競合の情報」を含めて総合的に情報収集する必要があるだろう。

・ケーススタディに限らず、普段のネットを活用した情報収集、学習の方法として、私は「土曜の午後のネット出張」を習慣にすることをお勧めしている。自分が知りたいと思っている業界のトップ3くらいの会社を、毎週土曜の午後をフルに使って克明に調べる。ネット上でいろいろな会社に出張するような意識でリサーチするのである。
 
・私は日々、様々なニュースメディアから情報収取することを習慣にしている。1日平均500程度のニュースや記事に目を通しているのだが、毎朝4時に起きてまずNHK-BS、CNN、BBCなどで世界のニュースを3時間かけてチェックする。また日本ではあまり入手できない情報、特に中国や韓国、東南アジアの情報を中心に流しているNNAや中央日報、新華社などを毎日欠かさずチェックしている。これからの企業トップにとって、ICT感覚と同時に「グローバル感覚」は非常に重要である。経営を学ぼうとする学生であっても、経営トップの立場で物事を考える癖をつけないなら、日々、海外の生の情報を収集するのは極めて大切な習慣である。

・ニュースというのは記憶するため、覚えるために見るのではない。私は常に自分が独自に頭の中で描いている経済地図、政治地図、ビジネス世界地図などをベースにして世の中の動きを見るようにしている。自分が認識している世界地図のイメージと違う要素のものが出てきた時に、「この情報は絶対捉えておくべきだ!」と瞬間的にその情報の価値や質を捉えるのである。膨大な情報を覚えようとするのではなく、あくまでも自分の作り上げてきた地図と違う動きがあったときに、それを瞬時に価値ある情報と判断できる癖をつけるべきだ。私は自分のアンテナに引っかかって気になるニュースが出てきたら、その話題に特化してとことん追うようにしている。




【目次】

1 大前式ビジネスモデルの描き方
 もしあなたが社長ならばどうするか?
 大前式ケーススタディの「3つの特徴」とは
 答えが見えなくても結論を言い切る
 「分析・考察・結論づけ」の技術
 大前の「思考プロセス」を学べ

2 実践ケーススタディ「もし、あなたが経営者ならば」
 ザ コカ・コーラカンパニー―新しい「ビジネスモデル」をつくる
 ローソン―正念場での「成長戦略」の描き方
 Uber―「急成長の痛み」に向き合う
 任天堂―変化に対応し「ヒット」を生む
 キヤノン―業界の危機、「生き残り」の戦略
 Xiaomi(シャオミ)―「ローカル企業」が世界一を狙う
 ゼンショーホールディングス―「ブラック企業」からの復活
 クックパッド―好調の裏に隠れた「真の課題」
 日本経済新聞社―「買収」をムダにしない戦略
 Airbnb―「法規制」と「成長」のジレンマ
 ニトリホールディングス―「最高益」の時こそやるべきこと
 島精機製作所―どうしたら「中国」に勝てるか

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◇1594 『21世紀の歴史−未来の人類から見た世界』 >ジャック・アタリ/作品社

フランスのミッテラン政権下で、当時38歳にして大統領補佐官に就任したジャック・アタリ氏の著書。読み応えのある本であり、なかなか手を伸ばせないのでいたのだが、『文明の衝突』に触発されて、漸く手に取ることができた。本棚で3〜4年は寝かせていたのではなかろうか。

前半の3分の2程度は、歴史の概観を振り返る内容。こちらは世界史の学習をしていたおかげで、比較的スムースに読み進めることができた。歴史的な事実にアタリ氏なりの分析を加えて書かれており、非常に面白く有益であった。一方、後半の3分の1は未来予測であるが、超帝国、超紛争、超民主主義と、かなり飛躍した内容であり、ちょっと現実味が薄いなと感じてしまった。まぁこのくらい現実離れした予測の方が面白いと言えば面白いのだが。

そんな中、着目したのは3つ。1つ目は「中心都市」の変遷である。古代から現代にかけて、中心都市は西へ西へと移動している。具体的には、ブルージュ、ヴェネチア、アントワープ、ジェノヴァ、アムステルダム、ロンドン、ボストン、ニューヨーク、ロスアンジェルス、である。ロスアンジェルスはシリコンバレーのことを指している。地理的にはこれ以上、西へは行けないが、筆者は将来的には中心都市というものはなくなり、分散していくだろうとのこと。

個人的にはロスから更に西へ移動すると「日本があるな」と感じた。しかしながら筆者は、日本は人口減少などにより経済力は世界5位以下に落ちるであろうと予測している。また、そのさらに西の中国については、共産党の権力に終止符が打たれるだろう、と習近平が聞いたら激怒しそうな予想をしている。

2つ目は「ノマド」について。ノマドとは定住する農耕民族に対する「遊牧民」の意味を持つが、現代では筆者が「オブジェ・ノマド」と呼ぶ、ノートPCなどのガジェットにより、人は定住せずに(一つの会社に所属せずにという意味か)働くことができるとしている。これは現在起こりつつあるクラウドソーシングの勃興を予測しているともいえよう。またノマド以外にも「海賊」の勃興も予測しているが、これなど「イスラム国」がまさに筆者のいう海賊的な組織であり、その慧眼に驚いた。

3つ目はアタリ氏が「未来への教訓」と前置きして述べている普遍的な歴史からの教訓。現代に通用しそうな事象であり興味深いので、今日はこちらを引用しておきたい。

ここで普遍的な歴史の教訓。未来への教訓。

・知識の伝承は進化のための条件である。

・神聖なるものはタブーを正当化する。

・言葉は強烈な武器となる可能性がある。市場がバランスを失うと危険が生じる。

・人類は、ノマドと定住民との衝突によって、権力と自由を手に入れてきた。
・巨大勢力がライバルに攻撃されると、勝利するのは、しばしば第三者である。勝者は、しばしば、打ち負かした側の文化に傾倒する。世界の権力は、おもな富が東側に残っていたとしても、西に向けて移動していく。

・宗教の教義は、たとえどれほど影響力があったとしても、個人の自由の歩みを遅らせることには成功しなかった。実際に、宗教であろうが宗教から独立した権力であろうが、現在までにいかなる権力も、この歩みを持続的に押し止めることはできなかった。

・ヴェネチアを含め、その後のすべての「中心都市」とは過剰と傲慢の産物である。

・外国人エリートの受け入れは、成功の条件である。

・金融と保険とは密接なつながりがあり、この二つは市場の勢力にとり、きわめて大きな重要性をもつ。

・新たなコミュニケーション技術の確立は、社会を中央集権化すると思われがちだが、時の権力者には、情け容赦のない障害をもたらす。

・永遠と思われる帝国でさえ、未来永劫にわたって存続することはあり得ない。

・欠乏こそが人々に新たな富を探し求めさせる。不足とは、野心を生み出すための天の恵みである。技術を発明したのが誰であるかはさほど重要ではなく、文化的・政治的にこれを活用できる状態にあることが重要である。

・専制的な国家は市場を作り出し、次に市場が民主主義を作り出す。

・金融の中心地としての破綻は、「中心都市」の終焉を告げる。

・戦争の勝利者になる国とは、常に参戦しなかった国、または、いずれにしても自国領土で戦わなかった国である。

・ある技術革新が一般化するまでには、たとえそれが社会的に必要とされているものであるとしても、約半世紀の月日が必要である。

・テクノロジーと性の関係は、市場の秩序の活力を構造化する。

・多くの革新的な発明とは、公的資金によってまったく異なった研究に従事していた研究者による産物である。




【目次】

序文 21世紀の歴史を概観する
第1章 人類が、市場を発明するまでの長い歴史
第2章 資本主義は、いかなる歴史を作ってきたのか?
第3章 アメリカ帝国の終焉
第4章 帝国を超える“超帝国”の出現―21世紀に押し寄せる第一波
第5章 戦争・紛争を超える“超紛争”の発生―21世紀に押し寄せる第二波
第6章 民主主義を超える“超民主主義”の出現―21世紀に押し寄せる第三波
付論 フランスは、21世紀の歴史を生き残れるか?

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◇1593 『文明の衝突』 >サミュエル・ハンチントン/集英社

夏休みはずっと積読になっていて、なかなか手を出せなかった書籍に挑戦。第一弾が本書である。イスラム国の台頭などを予言していると絶賛する人もいる反面、出口治明さんなど歴史に詳しい方が本書の論調に否定的だったと記憶している。出口ファンの私としては、ネガティブな先入観を持って読み始めてしまったかもしれない。

一番印象的だったのは、中国が有史以来のほとんどの時期を通じて世界最大の経済大国であったという記述。確かにそのとおりであり、中国五千年の歴史からすれば、アヘン戦争以降のたかだか200年弱の低迷など些細な出来事なのかもしれない。その中国が急成長して巻き返しに出ていることは周知の事実である。

また、「引き裂かれた国家」と題して、2つの異なる文明のはざまに立つ大国として描かれていたのがロシア、トルコ、メキシコという、現在も注目されている3国だったのも興味深かった。ロシアは欧化主義とスラブ主義、トルコは中東の一部であるとともに西欧の窓口であり、メキシコは南米と北米のはざまに立たされている。

500ページに渡る大著をなんとか読み終えたのだが、本書のキモは序章の下記の文書に集約されていると感じた。この部分だけを抜粋しておきたい。

・歴史上初めて国際政治が多極化し、かつ多文明化している。近代化というのは西洋化することではなく、近代化によって何か意味のある普遍的な文明が生み出されるわけではないし、非西欧社会が西欧化するわけでもない。

・文明間の勢力の均衡は変化している。相対的な影響力という意味では、西欧は衰えつつある。アジア文明は経済的、軍事的、政治的な力を拡大しつつある。イスラム圏で人口が爆発的に増えた結果、イスラム諸国とその近隣諸国は不安定になっている。そして、非西欧文明は全般的に自分たちの文化の価値を再確認しつつある。

・文明に根ざした世界秩序が生まれはじめている。類似した文化をもつ社会がたがいに協力しあう。社会をある文明から別の文明に移行させようとする努力は成功しない。そして、国々は自分たちの文明の主役、つまり中核となる政府を中心にまとまっていく。

・西欧は普遍主義的な主張のため、しだいに他の文明と衝突するようになり、とくにイスラム諸国や中国との衝突はきわめて深刻である。地域レベルでは、文明の断層線(フォルト・ライン)における紛争は、主としてイスラム系と非イスラム系とのあいだで「類似する国々の結果」をもたらし、それがより広い範囲でエスカレートする恐れもあるし、それゆえにこうした戦争を食いとめようとして、中核をなす政府が苦心することになるだろう。

・西欧が生き残れるかどうかは、自分たちの西欧的アイデンティティを再確認しているアメリカ人や西欧人が、自分たちの文明は特異であり、普遍的なものではないということを認め、非西欧社会からの挑戦にそなえ、結束して、みずからの文明を再建して維持していけるかどうかにかかっている。また、異文明間の世界戦争を避けられるかどうかは、世界の指導者が世界政治の多文明性を理解し、力をあわせてそれを維持しようと努力するかどうかにかかっている。




【目次】

第一部 さまざまな文明からなる世界
 第一章 世界政治の新時代
 第二章 歴史上の文明と今日の文明
 第三章 普遍的な文明? 近代化と西欧化

第二部 文明間のバランスのシフト
 第四章 西欧の落日:力、文化、地域主義
 第五章 経済、人口動態、そして挑戦する文明圏

第三部 文明の秩序の出現
 第六章 文化による世界政治の構造変化
 第七章 中核国家と同心円と文明の秩序

第四部 文明の衝突
 第八章 西欧とその他の国々:異文化間の問題点
 第九章 諸文明のグローバル・ポリティックス
 第十章 転機となる戦争から断層線(フォルト・ライン)の戦争まで
 第十一章 フォルト・ライン戦争の原動力

第五部 文明の未来
 第十二章 西欧とさまざまな文明と単数形の文明

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◇1593 『「分かりやすい説明」の技術−最強のプレゼンテーション15のルール 』 >藤沢晃治/講談社ブルーバックス

前著に引き続き「分かりやすい」をテーマにしたもの。内容的にはあまり変わらないが、前著が「表現」、つまり書面での文書や図形の書き方を意識しているのに対して、本書では口頭での「説明」を意識しているのが相違点であろう。文書は、分からない点があってら、戻って読み返すことができるが、説明の場合、対象者が1〜3人程度の少人数になされている場合であればまだしも、大人数を対象とした説明の場では、なかなか質問などできないのが実情であろう。自分が理解できなかったところで立ち止まったり、分かるところまで戻ったりできない口頭の説明だからこそ、文書以上に情報の発信側の責任が大きいと理解した。

本書でも脳内での情報処理の動きなどが述べられているので、こちらを引用しておきたい。その他のチェック項目などは目次を見ていただければ十分であろう。

・脳内関所の作業項目
(1)情報の大きさをチェックし、受け入れるか否かを決める。
(2)たくさんある脳内整理棚の中から適切な一個を選ぶ。
(3)情報のムダを省き整理する。
(4)情報が論理的であるかチェックする。
(5)情報を入れる脳内整理棚の最終一区画を決定する。

・ビジネスレターのポイント
(1)読み手の時間を奪わないこと。
(2)事実を正確に伝えること。
(3)読み手にこちらの希望の行動を取らせること。



【目次】

●第1章「分かる」とは、どういうことか
 重要な報告
 分かりにくいアナウンス
 解読不能のエラー・メッセージ
 目につかない道路標識
 脳内関所の作業項目
 説明はサービス

●第2章 説明術・基礎編
 説明術 1 映画館では走るな
 説明術 2 眠っている人を早く起こせ
 説明術 3 セミになれ
 説明術 4 ヘリコプターを使え
 説明術 5 盲点を発見せよ
 説明術 6 コックになれ
 説明術 7 取っ手を付けろ

●第3章 説明術・応用編
 説明術 8 詰め将棋を作れ
 説明術 9 比喩という武器を使え
 説明術 10 指揮者になれ
 説明術 11 幼稚園の先生になれ
 説明術 12 ウニャウニャに注意せよ
 説明術 13 栄養素を抽出しろ
 説明術 14 サイズの合う靴を作れ
 説明術 15 糖衣錠を作れ

●第4章「分かりやすい説明」のチェック・ポイント
 チェックポイント 1 聞き手とのタイムラグを知れ
 チェックポイント 2 要点を先に言え
 チェックポイント 3 しみ入るように話せ
 チェックポイント 4 抽象的説明と具体的説明のバランスを取れ
 チェックポイント 5 説明もれを防げ
 チェックポイント 6 情報構造を浮かび上がらせろ
 チェックポイント 7 キーワードを使え
 チェックポイント 8 論理的に話せ
 チェックポイント 9 比喩を使え
 チェックポイント 10 聞き手の注意を操作せよ
 チェックポイント 11 引率せよ
 チェックポイント 12 「繰り返しの劣化」に注意せよ
 チェックポイント 13 持ち時間を守れ
 チェックポイント 14 聞き手に合わせた説明をせよ
 チェックポイント 15 聞き手を逃がすな

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◇1592 『「分かりやすい表現」の技術−意図を正しく伝えるための16のルール』 >藤沢晃治/講談社ブルーバックス

池上彰さんと佐藤優さんの対談で紹介されていた本。私自身、仕事で文書を書くときはメールなどの短い文書も含めて、できるだけ相手に伝わりやすいようにと心がけてはいるのだが、自分の中では自明の理であることでも、相手にとっては想定していない背景が含まれたりしていると、うまく伝わらないことがある。

また、本書でも紹介されているが社内用語を社外の人に言っても通じない。とくにバックオフィス勤務だと、社外の方と接する機会が少ないので要注意だ。幸い私は海外勤務の際に、銀行、会計士、弁護士など、社外の方とも接する機会があったので、この辺りは意識できていると思う。

さて、本書を読んで一番の収穫は、「分かる」のメカニズムが分かったこと。箇条書きにすると次のようになる。

・人間の記憶には短期的な「一次記憶」と、長期的な「二次記憶」がある。

・一次記憶は「作業記憶」とも言われ、外界から得られた情報を整理(作業)する過程で、一時的に作業域として使われる場所。保持できる情報の容量は小さく、保持期間も短い。

・二次記憶は「意味記憶」とも言われており、整理された情報がしまわれる記憶域である。こちらは情報の容量も大きく、保持期間も長い。

・「分かる」とは、「情報が脳内で整理され」て、二次記憶に到達した状態をいう。別の言い方をすれば、情報が定着した状態、つまり、あとで取り出すことが可能な「脳内整理棚」にしまわれている状態のこと。

・二次記憶領域つまり脳内整理棚は、単なる入れ物ではなく、情報をその構造タイプによってグループ分けする仕分け棚になっている。脳に入ってきた新しい情報は、その情報が持つ構造のタイプによって分類され、その構造名のついた区画に入れられる。

・さらに言い換えると、「分かる」とは、新しい情報の構造に関して、自分がすでに知っている情報を構造と照らし合わせ、それと一致するものを認識すること。情報の構造を把握し、その情報構造に対応する整理棚内の区画に収納できたこと。

・逆に「分からない」状態とは、一次記憶域を通過しただけで、二次記憶域には入れられなかった状態。情報がきちんと整理できなかった状態、どの整理棚に入れてよいか区別できなかった状態をいう。


ここまでが本書のキモであろう。ここから解釈できるのは、「分かりやすく伝えること=情報の整理を受け手側にさせるのではなく、情報を発信する側があらかじめ整理しておくこと」であろう。これ以降は、その具体的なノウハウが列挙されている。(ノウハウの部分は、下記の目次を参照いただきたい)

もう1点、本書では重要なことが述べられている。「分かる」ためには、パターン認識(既知の情報と一致させること)が必要なのだが、パターン認識というのは指紋が一致するように、過去の情報と完全に一致することを意味している。しかしこれだと、例えば「猫」という文字を見たとき、ゴシック体の「猫」を記憶している人には、明朝体の「猫」を見てもそれが「猫」だと認識できないことになる。

我々人間が、ゴシック体であろうが、明朝体であろうが、はたまた手書きのクネクネした「猫」であろうが、それを「猫」だと認識できるのは、物事を抽象化しているからだとのこと。なるほど、その通りだと思うのだが、なぜこれを重要だと感じたかというと、現在さかんに取りざたされている人工知能の深層学習(ディープラーニング)はまさにこの原理を応用しているから。本書が執筆されたのは1999年だが、今から20年近く前にこういった発想があったことに興味を抱いたのだ。



【目次】

第1章 「分かりにくい表現」がいっぱい!

 - 中央線は「直進」か「右へ」か? (東京駅地下での標示)
 - 横浜は直進か左折か? (道路標識)
 -「通話ごと非通知」?(NTTからのお知らせ)
 -「分かりにくい表現」の文化的背景
 - 小さい文字、早口、小声での講演
 - 合格発表の不思議
 - 格調高い法律条文
 - セミナーの無神経な日程表

第2章 「分かりやすい」とはどういうことか

 -「分かる」とはどういうことか
 - 分かった人と分からなかった人
 - 脳内整理棚のしくみ
 -「分かる」瞬間
 -「分ける」は「分かりやすい」の原点
 - たとえ話が分かりやすい理由
 - 抽象化の大切さ

第3章 「分かりにくい表現」の主犯たち

 犯人1 親切心の欠如
 犯人2 「受け手」のプロフィールの未定義
 犯人3 受け手の熱意の読み違い
 犯人4 大前提の説明洩れ
 犯人5 ガイドの欠如
 犯人6 複数解釈ができてしまう
 犯人7 情報のサイズ違反
 犯人8 欲張り
 犯人9 具体性に欠ける
 犯人10 重みづけの欠如
 犯人11 共通項でくくらない
 犯人12 相互関係を明示しない
 犯人13 視覚特性の無視
 犯人14 自然な発想に逆らう
 犯人15 受信順序を明示しない
 犯人16 直訳

第4章 「分かりやすい表現」のチェック・ポイント

 ルール1 おもてなしの心を持て
 ルール2 「受け手」のプロフィールを設定せよ
 ルール3 受け手の熱意を見極めよ
 ルール4 大前提の説明を忘れるな
 ルール5 まず全体地図を与え、その後、適宜現在地を確認させよ
 ルール6 複数解釈を許すな
 ルール7 情報のサイズ制限を守れ
 ルール8 欲張るな。場合によっては詳細を捨てよ
 ルール9 具体的な情報を示せ
 ルール10 情報に優先順位をつけよ
 ルール11 情報を共通項でくくれ
 ルール12 項目の相互関係を明示せよ
 ルール13 視覚特性(見やすさ)を重視せよ
 ルール14 自然発想に逆らうな
 ルール15 情報の受信順序を明示せよ
 ルール16 翻訳は「言葉」ではなく「意味」を訳せ

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○1591 『ITビジネスの原理』 >尾原和啓/NHK出版

『GE・巨人の復活』に続いて、良書に巡り合った。プラットフォーム・ビジネスの根本的な仕組みがよく理解できる。特に「インターネットのビジネスはユーザを安く仕入れて高く売るもの」という説明は、今までもやもやしていたものが、ストンと腹落ちするような感覚を抱かせるものだった。

本書を読むと、グーグルのビジネスモデルの強力さ・強烈さが理解できる。TACという用語は本書で初めて知ったが、恐らくグーグルにとっての変動費はTACくらいではなかろうか。後は優秀な人材を採用・保持するための人件費やサーバの償却費や維持費など、固定費が大きいと想定される。非常に高い限界利益率をキープしており、ネットユーザーが増加の一途をたどる昨今、収益が大幅に落ち込むことは考えづらい。(3年ぶりに減益というニュースが流れたが、これはEU制裁金による特殊事情であろう)

ネット検索をするために、必要なキーワードを入力する、という今では当たり前になった行為の裏側で、純粋想起、情報粒度の細分化、窓口の拡大などが行われているというのは非常に興味深い。

ちなみに私は「原理」とか「原則」という言葉が好きである。本書はまさに「ITビジネスの原理」について語りつくした本。インターネットには関係のない業界のビジネスパーソンも必読だと感じた。

・プラットフォームを作ることで、みんなが幸せになれる。ITビジネスにおいて、プラットフォームはコンテンツとユーザを結ぶもの。つまり、コンテンツを提供する企業、コンテンツを作っている人とユーザを結ぶもの。そして、ユーザとユーザを結ぶものであり、人と人とを結ぶもの。

・インターネットの最大の特徴は、空間(距離)的、時間的な制約なしに世界中を結ぶということ。

・「点在する情報を一か所に集める」という作業は、インターネットが非常に得意とするところ。

・インターネット以前のビジネスは「モノを安く仕入れて高く売る」ものだったが、インターネットのビジネスは「ユーザを安く仕入れて高く売る」もの。ユーザを仕入れるための窓口が、検索機能や地図アプリ、無料メールなどである。

・典型的な例として、グーグルはグーグルマップなどの検索機能を通じて、ユーザを安く仕入れ高く売っている。また、グーグルマップという携帯アプリを搭載している端末メーカはグーグルの窓口になることで収入を得る。(グーグルは端末メーカーに対して検索の窓口になったことへの手数料を支払う)これがインターネットビジネスである。

・TAC(Traffic Acquisition Cost)という財務指標がある。これは、ユーザを獲得するために払っているコストのこと。例えばグーグルの場合、検索に関してAOLと提携しているが、AOLのサイトからウェブ検索が実行されると、検索結果画面には「enhanced by Google」と表示される。このページの広告をクリックすると、グーグルには広告料が入る。この時、グーグルはAOLに窓口になってもらっていることの対価として先に得た広告料収入の何十パーセントかをAOLへ支払っている。この手数料のことをTACと呼んでいる。インターネットビジネスにおいては、いかにこのTACをゼロに近づけるかというのが課題である。

・ヤフーの検索はディレクトリ型だったが、グーグルはこれを、ユーザが知りたがっているものを直接入力するものに変えた。ユーザの欲しがっている情報を、そのまま言語化させることに成功したのだ。言い方を変えると、ユーザが求めているものは何かを明確にする、ユーザのインテンション(意図)を先鋭化することができたのだ。

・「純粋想起」とは、「検索といえばグーグル」のように、何のヒントや手がかりもなく、ブランド名などを思い浮かべること。人はまず頭に思い浮かんだ場所へ行くもの。よって、純粋想起を獲得したサイトには人が集まる。

・インターネットビジネスは、情報を求めるものと求められるもののマッチングビジネスであるため、情報を求めている人が多いところに情報を出す人が集まる。そして、情報を出す人が多いところに、情報を求める人が集まることになる。このように雪だるま式に多くの情報が集まることになるのを「収穫逓増の法則」と呼ぶ。よって、最初の閾値(ティッピングポイント)を超えた企業が強くなる。インターネットビジネスにおいて、最初にティッピングポイントを超えたのがグーグルなのだ。

・インターネットビジネスにおいて、ユーザがカネを払うかどうかは、情報の対価だけではなく、その情報を調べる時間や支払いにかかる時間、手間などトータルのコストに見合うかどうかで決まる。「情報そのもののコストに、その情報を探すための検索コスト、情報を手に入れるために必要なコスト」の3つを合わせたものが、価格に見合うかどうか。具体的には、iTunesで200円で楽曲を買うのと、Winnyで20分かけて検索してタダで手に入れるのとのどちらがよいかという選択肢になる。多くの人は20分かけるよりも200円支払う方を選ぶのだ。また、支払いに関しても、毎回クレジットカード番号を入力するのは手間だと感じるが、iTunesであれば、一度登録してしまえば次から支払いに関する手間はゼロになる。

・ITビジネスはそのあまりの進化の速さから、一時的に過激なやり方が生まれてしまうことがある。製品やサービスがインターネットにつながっていることで、ユーザからのフィードバックがすぐにわかり、短期的な収益に最適化が図られてしまうことがあるからだ。しかし、同じようにお客が離れていったことにいち早く気づくこともできる。速いフィードバックや改善のサイクルを活かして、持続可能なビジネスへと進化させ発展させていくことができることも、ITやインターネットビジネスが持つ原理である。

・書類の書き起こし作業やコールセンター対応など、会社の就業時間とは関係なく行うことができ、通勤時間・通勤経費のコストもかからない。これまでは商品としての単位に足りないために売れなかったものが、仕事を細切れにすることで、売れるもの、価値のあるものにできるのだ。細かくした仕事の一つひとつは、0.1、0.01であっても、それをたくさん集めることで100の力、1000の力にすることができる。梅田望夫氏はこれを「ゼロ×無限大」と表現している。

・印刷所の空きキャパシティをインターネットでリアルタイムで把握し、印刷を安く提供するビジネスがある。このように、ITやインターネットは仕事を細切れにすることで価値を生み出すだけではなく、その細切れを集めることによって新しい価値を生み出し、普段使われていない部分を有効活用することができる。

・初音ミクというキャラクターを利用して、ユーザがさまざまなコンテンツを製作している。以前はスタジオジブリのような工房が全てを一貫して行っていた仕事を、さまざまなプロセス、パーツに分解することで、音楽だけ、ダンスの振り付けだけ、など部分部分で参画することができるようになった。一つのタスクをレイヤー(層)でアンバンドル(細分化)することは、価値(バリュー)を細分化することになる。これをバリューアンバンドルという。

・Twitterが広まったのは、リツイートという機能によるところが大きい。通常のユーザは情報を発信すること(=自らツイートすること)にハードルの高さを感じるが、リツイートであれば、自分が得た情報を気軽に発信できる。発信コストが低いことが、Twitterが爆発的に増えた要因である。このようにTwitterはソーシャル・フィルタ、ソーシャル・アンプリファイア(増幅器)としてのツールとして成功したのだ。

・PCは姿勢が前に傾くリーンフォワードのツール、スマホはソファなどで見るリーンバックのツールである。リーンバックのツールでは、自ら情報を取りに行くのではなく、テレビと同じように目的性が低く、何となく見ていることも少なくない。その状態では、大して意味のない情報が垂れ流されても、さほど気にならない。受け取る側が気にしないため、発信する側もまあいいかと垂れ流す。これにより情報のフロー性が高まるのだ。

・従来のディレクトリ型検索では、レストランを検索する際はレストランのカテゴリーを検索しなければならなかった。グーグルの検索方式では、サイト自体がレストランに関係なくても、キーワードにヒットするものが1つでもあれば拾い上げることができる。筆者はこれを「情報の粒度」が小さくなったと呼んでいるが、今まで拾いきれなかった情報も拾えるようになった。また、ディレクトリ型は人間が手動で分類していたが、グーグルは機械が対応するため、情報の更新頻度が高くなるというメリットもある。

・キーワード検索や地図検索などは、自ら情報を取りに行くプロアクティブな受信技術。一方、モバイル端末の登場と普及により、情報が絶え間なく、大量に流れてくることを苦にしないリアクティブな受信技術が必要になった。何となくネットに接続している時間に流れ込んでくる情報は、すべてが有用なものではない。どうでもいい情報をどうでもいいものとして右から左へ受け流すことが非常に重要になるのだ。

・不祥事などが発生した際、現在では隠しておくメリット、発信しないメリットは劇的に小さくなり、むしろ隠しておくことのデメリット、発信しないことによるデメリットが大きくなった。

・日本でLINEのスタンプが消費されるのは、ハイコンテクストな国ならではの事象。コミュニケーション消費では常に人とは違う新しい刺激を求める、つまり前と違うことで人を喜ばせたいという原理がある。これがローコンテクストの国では、スタンプのような隙間を作っても、その隙間が伝わらない可能性が強い。というよりも、そもそも伝わらないという前提で生きている国であり、そこも言葉で語ろうとするのだ。

・グローバル社会は英語ではなく、非言語コミュニケーションを指向している。ナイキやスタバのロゴから英語表記が消えたのが好例。今後はアイコンや写真が重要なコミュニケーションツールになるだろう。(あるアメリカ人が、日本は英語が通じないが、生活に困ることはなかったと言っていた。駅にはたくさんのアイコンによる案内表示があるし、レストランでは写真付きのメニューがあり、会計もレジに金額が表示される)




【目次】

第1章 ITビジネスは何で稼いできたのか
 ITビジネスは何を売っているのか
 Googleはなぜ勝ったのか
 課金ビジネスが成功しなかった理由
第2章 ネットが世界を細分化する
 マッチングビジネスの新しいカタチ
 分解されるタスク、分割される価値
第3章 ネットワークとコミュニケーション
 情報の進化(1)フローとストック
 情報の進化(2)情報の粒度
 モバイルがインターネットを変えた
第4章 消費されるコミュニケーション
 人はなぜ情報を発信するのか
 情報発信のインセンティブ
 コミュニケーションが消費される
第5章 ITの目指すもの、向かう場所
 ハイコンテクストなインターネット
 そしてインターネットは、人を幸せにする装置へ

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○1590 『GE・巨人の復活−シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦』 >中田敦/日経BP

GEの変革を描いた力作。GEと日本の電機メーカーでは収益率が倍半分違うが、本書を読むとそれにも納得できる。米国でトップクラスの大企業にも関わらず、その「変革のスピード」には目を見張るものがある。

もともと製造業にはスマイルカーブと呼ばれる収益モデルがあり、素材に近いほど、またアフターサービスに近いほど儲かるが、ちょうど製造工程の中間あたりの「組み立て」の工程では利益が出にくいというのが通説である。従来は、垂直統合が主流だったが、昨今はスマイルカーブのそれぞれの機能が細分化され、水平分業になっている形態が多い。日本の電機メーカーは、ともすれば組み立て屋になってしまい、アフターサービスなどでもうまく稼げていない状況ではなかろうか。かといって、鴻海のように組み立て専業にも徹しきれておらず、収益率が低下している。

GEでは、アフターサービスだけでなく、通常のオペレーションにまで入り込み、継続的な収益を確保するモデルを築き上げている。製品を売るだけならば、その販売時点でしか利益は生まれないが、オペレーションに入り込めば、顧客がそのオペレーションを続ける限り、継続的な収益が見込めるのである。その代表例が航空エンジンのデータ分析であり、それによる燃費効率を向上させるフライトモデルの提案である。

このようなビジネスモデルについては、どこのメーカーでも多少は実行しているのかもしれないが、GEのすごいところは、トップ自らが率先垂範し、徹底している点である。シリコンバレーの開発方法を学び、会社の文化さえ変えようとしている様は、すさまじいとしか言いようがない。しかも、この改革の立役者であるイメルトCEOまで交代させてしまうという徹底ぶり。本書が、より多くの日本の経営者の方に読まれることを願いたい。

・GEはアウトソーシングを積極的に推進していたが、現在はソフトウェア開発のアウトソーシングを全面否定している。社員全員がプログラミングの何たるかを理解し、デジタル化を実現する術を身につけなければならないとして、アウトソーシングからインソーシング(内製回帰)へ方針転換した。これは世界最大の重電メーカーであるGEが、猛スピードで「ソフトウェア企業」へと姿を変えようとしていることを意味している。

・GEのデジタル製造業への取り組み

(1)GEの製造ラインをデジタル化し、製造業としての自社の生産性を高めること。インダストリアルインターネットでは、産業機器にセンサーを取り付けて稼働状況をモニタリングし、そのデータをインターネット経由で収集し、蓄積したデータを分析することによって、産業機器の運用における無駄や問題点を見つけ出し、その生産性を高める取り組み。この実現のために必要なソフトウェアがGE自社開発の「Predix」である。また、アディティブマニュファクチャリングと呼ぶ、3Dプリンターの活用もあげられる。これは製造拠点の生産ラインに3Dプリンターを導入し、従来は金型などを使って製造していた部品を3Dプリンターによる製造に切り替えることである。「Additive」とは「積み重ね」という意味で、樹脂や金属粉を薄い層として積み重ねることで立体物を造形することを指す。これによりジェットエンジンのパーツを軽量化したり、溶接に伴う手間を軽減したりすることが可能になる。

(2)GEの「ものづくりビジネス」を「デジタルサービス」に転換すること。産業機器の販売から、産業機器とソフトウェアを組み合わせたサービスを販売するビジネスモデルへと転換する。イメルトCEO曰く、「製造業のあらゆるビジネスをアズ・ア・サービス・モデルに変える」とのこと。GEが提供するのは、顧客が購入した産業機器から得られる成果(アウトカム)最大化するようなソフトウェアやサービスである。GEが社内で実施するのと同じインダストリアルテットワークの取り組みを、顧客の現場でも実施する。例えば航空機のエンジンであれば、センサーデータから航空機の飛行パターンを分析し、航空会社に大して「燃費効率を改善する飛行プラン」を提供する。

(3)GEが製造業デジタル化のために開発した様々な技術を、これまでGEとは取引のなかった、新しい顧客へ販売すること。インダストリアルテットワークを実現するためのソフトウェアであるPredixを「プラットフォーム」として公開し、誰でも利用可能にする。またアディティブマニュファクチャリングを実現するための3Dプリンターを販売することなどを目指す。

・エリック・リースの『リーンスタートアップ』を読んだイメルトは、GEの従来方式に危機感を抱き、シリコンバレーのスタートアップ企業の方式を取り入れることにした。シリコンバレー方式は、顧客からのフィードバックこそが成功の源泉であり、失敗が奨励され、失敗からの学びに価値があるというもの。(過去のGEでは、ビジネスとは5年計画で考えて推進していくものであり、失敗はいついかなる時も許されないものだった) GE版のリーンスタートアップである「FastWorks」を制定したり、経営幹部へのリーンスタートアップの教育などを実施していった。

・ファストワークスとは、(1)顧客が抱える問題を発見する、(2)問題解決に必要な仮説を特定する、(3)MVP(実用上最小限の製品、Minimum Viable Product)を開発する、(4)顧客によるテストから学ぶ、(5)テスト結果から今後の方針を決定する、というサイクルを何度も繰り返すことで、優れた製品やサービスを目指すという方法論である。

・産業機器の故障予測などのためにGEが編み出した手法が「デジタルツイン」である。これは、Predix上に産業機器のデジタル版を作り、現実の機器から集めたセンサーデータを随時反映させる。このデジタルツインによって、今後の機器の故障を予測するのだ。デジタルツインは物理モデルとデータモデルという2つのモデル(産業機器などの振る舞いを数式化したもの)で構成している。

・デジタルツインのポイントは、稼働している産業機器1台ごとにモデルを作成し、それぞれシュミレーションやデータに基づく予測を実行しているところにある。同じ種類のエンジンでも1台ずつ個別に作る。これはアマゾンやグーグルが消費者一人ひとりの嗜好を予測するのを真似ているから。航空機のエンジンを例にとると、空気中に粉塵などが多い中国の空を飛んだエンジンと、粉塵の少ないアメリカの空を飛んだエンジンとでは、同じ飛行時間でも故障のリスクが全く変わってくるから。

・日本では顧客企業の「要件定義」に基づいてアプリケーションを開発するのに対して、GEでは、顧客企業にとって必要なアプリケーションの機能をGEが考え、GEの責任で開発し、顧客に対してアプリケーションをサービスとして提供する。顧客にどのようなデジタル改革が必要か顧客自身も分かっていないと考えているため、顧客に要件定義は求めない。

・MVPのソフトウェア開発には「アジャイル開発」を採用する。アジャイルとは「機敏な」という意味。2000年前後に生まれたソフトウェア開発手法で、開発に際して詳細な計画を立てるのではなく、動くソフトウェアを数週間〜1カ月といった短期間で開発し、作ったソフトウェアを検証するというさぎょうを繰り返すことで、ソフトウェアを機敏に、効率よく開発することを目指すもの。これに対して、従来方法の「ウォーターフォール開発」は、事前に作った詳細な計画の通りに、数年かけてソフトウェアを開発する方法。

・GEではリーンスタートアップを根付かせるために、社訓をも変えてしまった。新しい社訓は次の通り。(1)顧客が我々の成功を決定する(Customers Determine Our Success)。(2)速くあるためにリーンであり続ける(Stay Lean to Go Fast)。(3)勝利のために学び、適応する(Learn and Adapt to Win)。(4)互いに権限を委譲し、動機付けし合う(Empower and Inspire Each Other)。(5)不確かな世界で結果を出す(Deliver Results in an Uncertain World)。




【目次】

プロローグ さらばウェルチ、過去と真逆に歩む
第1章 設立125年のスタートアップ
第2章 GEデジタルはこうして生まれた
第3章 目指すはエアビーとウーバー
第4章 アイデアはデザイン思考で育む
第5章 グーグルそっくりのPredix
第6章 デジタルで製造現場も変わる
第7章 失敗が心地よい企業へ

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◇1589 『論理的に考え、書く力』 >芳沢光雄/光文社新書

佐藤優さんの著書で紹介されていた本。東京に出張にいった際、駅の書店で見かけたので購入。最近、電車の待ち時間のわずかな時間を利用して本を買うことが多いのだが、目次をペラペラとめくった程度で決めてしまうので、後から自分が求めているものと違った、というケースが増えてきた。これだったらAmazonで買うのと変わらないなぁ。。。

先日読了した『最速のリーダー』もそうだったのだが、本書もちょっとニーズから外れてしまっていた一冊。ただし、これは私のニーズに合わなかったというだけであり、本書がダメだと言っている訳ではないので、誤解なきよう。

本書で一番気になったのは、「場合分け」と「背理法」。以前は数学で学んでいたようだが、マークシート方式になってから、あまり重要視されなくなっているとのこと。しかしながら、論理的な思考力を磨くためには、こういった考え方を身につけておくべきだという主張。論理学については、もう一度きちんと学習しておく必要があると感じているので、このキーワードも頭に入れておきたい。

その他、気になった箇所を要約して引用。

・仏教における智慧は、「聞慧(もんえ)」「思慧(しえ)」「修慧(しゅうえ)」の「三慧」から成り立っている。聞慧とは、授業で聞いたり本を読んだりして、聞いたことや書いてあることを事実として知ること。思慧とは、聞慧として身に付いた物事に関して、それらの間の繋がりを組み立てたり、それらの背景を理解したりするように、自分で考えることができること。修慧は、思慧として身に付いた物事に関して、きちんと説明できるように書いたり、それらをいろいろ応用して実践したりすることができること。

・もちろんインドと日本では数字表現などが違いますからそっくりそのままではありませんが、日本では単なる計算問題として扱われている問題でも、インドではいちいち証明問題のようにロジックの流れを言葉で明記しながら解答を導き出さなければ点数をもらえないのです。(『最新東洋事情』深田祐介より)

・(1)アメリカのエリート大学は、文系、理系を問わずインド人の圧勝である。(2)日本人留学生の中にも英語がペラペラの学生はいるのだが、そういう人たちもディベートなどになると黙ってしまう。そもそも日本人には論理的思考に基づいて議論をする習慣がない。(3)みんなをその気にさせるためには、自分と異なる意見を全部出してみて、議論を積み重ねながら争点を絞り込み、自分はなぜこの意見を支持するのか論理的に説明する。最終的には意見の違う相手を説得して異論を収束し、みんなを納得させなければならない。(『サピオ』2001.03.28号、大前研一のコメントより)

・「すべて(all)」と「ある(some)」を正しく使い分けること。真、逆、偽、対偶を理解して使えるようになること。

・英語の数学書を読むとき「the elements」は「その元」と訳さず、「すべての元」と訳すとよい。

・逆向きに考える。ゴールから考える。


ここまで書き終えてふと思い出したのが、中国駐在中のこと。中国経験のながい営業の人が、現地スタッフの採用面談の際、算数の文章問題(日本語で書かれた問題)を解いてもらっていたのだ。これによって、国語力と数学力の両方が分かるという。今思えば非常に合理的な手法である。



【目次】

第1章 ゆとり教育の「負の遺産」
第2章 マークシート式問題の本質的な弊害
第3章 教育と入試のあるべき姿
第4章 論理的に考え、書く力を磨くために意識したいこと

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◇1588 『最速のリーダー−最少の時間で最大の成果を上げる』 >赤羽雄二/KADOKAWA

最近、生産性向上に興味があり(というか、必要性に迫られており)、ついつい手を出してしまう、この手の本。

なぜ生産性改革が必要かという背景などは、他の著書で十分に理解しているので、私としては、具体的な方法論が欲しかったのだが、残念ながら、そこまで突っ込んだ手法には出会えなかった。

一口に「生産性」といっても、具体的になればなるほど、実務の世界というのは会社によってそれぞれ事情や考え方が異なるので、一般論に解を求めるのは無理なのかもしれない。それでも自分自身が、所属企業の常識にとらわれすぎていて、発想のブレークスルーができていないのではないかという恐怖心から、この手の本を手にしてしまうのだ。

さて、本書の前半部分に上司としての心構えが書かれていたので、その部分を引用させていただきたい。今日はこの辺で。

・大きな問題は、ほとんどの上司が、自分の指示があいまいであると自覚していないことです。

・気の弱い上司は、一人遅くまで残って何とか仕事を片付けようとします。体力の限界まで続け、何とか自分の上司の期待に応えようとします。

・経営者が断固とした決断で残業をゼロにし、8時間で最大の成果を出すように推進することで初めて、小さな子どものいる女性でも残業しないことに対して周囲の目を気にすることなく、仕事に取り組むことができます。

・経営者がすべきでないのは、部下に任せておけばできることにいちいち口出しすることです。




【目次】

第1章 なぜ、あなたの部下の残業はなくならないのか?
第2章 生き残りに必須の「時短」―残業ゼロを推進できる組織マネジメント
第3章 大企業もベンチャーも関係ない!―残業ゼロを実現するチームマネジメント
第4章 まずは部下より自分が変わる!―残業ゼロを実現する上司・リーダーの仕事術
第5章 知っていれば誰でも必ずできる!―部下の残業ゼロを実現する仕事術
第6章 発想の転換が必要!―残業ゼロを当然とするスタート・アップ
第7章 人と企業が生まれ変わる!―ツーランクアップの時短術

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◇1587 『強い会社が実行している「経営戦略の教科書」』 >笠原英一/KADOKAWA

オーソドックスな経営戦略の手法が、非常にコンパクトに体系的にまとめられている。3C分析にContextを追加した4C分析や、4P、SWOT分析、7S、ポーターやコトラーの基本的理論など、盛りだくさんな内容が150ページ程度に収まっている。筆者自身、本書は2週間程度で書き上げたと述べているが、それまでに筆者の頭の中で何度も繰り返し検証されてきたロジックだからこそ、こういった体系的な整理ができたのではなかろうか。

私自身、工場経理に配属となり1年強だが、管理会計と言うのは独自の思想や考え方が反映されているため、ともすれば理解しがたく感じることがある。そういった思想を盛り込みながらも、一般論と照らし合わせて誰にでも理解できるようなテキストを作成したいと考えているところなので、本書のまとめ方は大いに参考になった。

また、1つ1つの理論については、一般的なビジネスパーソンであれば既知の内容かもしれないが、それらを結び付けて体系的・実務的に整理したところが本書の素晴らしいところだと言えよう。ただし、最終章のプレゼンテーションについては、蛇足のように感じた。確かに社内におけるプレゼンも重要だが、他の章とトーンが変わってしまい、せっかくの体系的な本の一貫性を損ねてしまうように感じたのだ。

それでは気になった箇所を要約して引用。

・戦略策定とは名ばかりの業績計画策定プロセスにどっぷりつかって、予算と資源配分のみの社内政治に明け暮れていては、本来の戦略策定の目的である高い業績の達成は期待できない。

・企業戦略は「経営資源の配分」、事業戦略は「経営資源の活用」

・企業戦略策定時の5つのステップ。
(1)企業が社会に提供する価値や、社会的役割としての企業理念を確認する。
(2)企業のおかれた経営環境と自社がそれまでに構築してきた経営資源を把握する。
(3)それらを基に、中長期的に達成しようとしている成長目標を確認する。
(4)企業理念や成長目標を実現していくための活動領域である事業領域とそこに含まれる戦略立案の単位となる事業(SBU)を設定する。
(5)事業領域に含まれる事業(SBU)に適切に資源配分する。

・4C分析とは3C+Context(文脈)。ContextとはPESTELのこと。Politics(政治)、Economy(経済)、Society・Culture(社会・文化)、Technology(技術)、Environment(環境)、Law・Regulation(法律)。

・SWOT分析。SとWはコントロール可能な自己の強みと弱み、OとTはコントロール不可能な外部環境。

・環境予測可能性が低く、対環境相互作用性も低いような場合は、目標は試行錯誤しながらkせつを検証していくための一つの指標という意味合いで設定されるべき。守ることよりも環境の変化に柔軟に対応することを最優先に考えて、当初のアイデアを修正して、より良い戦略にしていくたたき台的にとらえる必要あり。

・製品×市場のマトリックスで事業領域を捉える。
(1)市場浸透(Market Penetration)
(2)市場開発(Market Development)
(3)製品開発(Product Development)対既存市場
(4)多角化(Diversification)新製品・新市場
→複数の事業間で限りのある経営資源をどのように配分するか?

・国ごとのGDPなどマクロ指標ではなく、コーヒー消費量や女性の就業率など、個別指標に目を向けてマーケティングを実施する。

・現状分析と情報収集とは異なる。仮説を持った上で情報を収集すること。

・経営とは部分的に無知の状態における意思決定である。(アンゾフ)

・Think Big → Start Small → Scale Up Fast

・目標設定はSMARTで。
Specific(明確に)
Measurable(数字で)
Achievable(達成可能な範囲で)
Result Oriented(結果掲示で)
Time Based(時間を区切って)

・環境予測性:市場・競合・マクロ環境の変化をどの程度予測できるか。

・対環境相互作用性:市場や競合にどの程度影響を行使できるか。

・マーケティングとは、選んだ顧客に対して価値を創造するプロセスであり、価値は顧客のニーズを充足させることによって創造される。

・マーケティング戦略=顧客の満たされないニーズを見つけ、定義し、それに対してユニークなソリューションを提供することにより、顧客価値を創造する一連の施策。

・総論として、市場を同質のグループに細分化し(Segmentation)、その中で積極的に働きかけるターげと顧客を選定すると同時に、その顧客の仮説的ニーズを定義し(Targeting)、提供するソリューションとしての紅葉を顧客の心の中で位置付ける)Positioning)活動。STPともいう。

・4P
Product;製品、効用の具現
Price:価格、効用の表示
Place;販路、効用の配達
Promotion:販促、効用の伝達

・製品とは顧客が紅葉を使用できる状態になったもの。

・価格設定に際しては、少なくとも顧客価値、自社の原価、競合他社の価格の3つを考慮すること。

・顧客価値=効用÷コスト

・勝てない競争には参加せず、自分に競争上の強みがある領域のみで戦い、明らかに不利な戦いは避ける。

・チャネル構想を考える際の基準はリーチとリッチネス。リーチとは、対象となる標的顧客の数及び顧客の物理的な分散、リッチネスとは顧客からのニーズの吸い上げ及び顧客に対する提案内容の両面に求められるコミュニケーションの複雑性。

・チャネル関係はパートナーシップであるという認識を持つことがポイント。

・チャネルとは顧客と企業が交わる接点であり、製品やサービスを購入したり、使用しsたりする場所や方法に関する全てが関係する。チャネルは企業がその顧客に到達するルートであり、顧客との継続的な関係にほかならない。チャネルについて考えるときは、戦略全体について考える必要がある。効果的なチャネルの管理は、一企業にとどまらず、その業界全体を再構築する可能性を秘めている。(スティーブン・ウィーラー『チャネル競争戦略』)

・販売促進(Promotion)の6つのM
(1)プロモーションの目的確認(Mission)
(2)標的市場の設定(Market)
(3)プロモーションの予算決定(Monery)
(4)メッセージ作成(Message)
(5)媒体選択(Media)
(6)プロモーションの有効性確認(Measurement)

・必要不可欠な3つのプロセス
(1)オペレーション管理プロセス(生産・製造)
(2)顧客関係性管理プロセス(営業・販売)
(3)イノベーション管理プロセス(研究・開発)

・組織変革のポイント
(1)危機感の共有・醸成
(2)部門での連帯感の構築
(3)部をブランド化
(4)変革プランの作成
(5)リスクと柔軟性
(6)短期的な成果の実現
(7)進捗の測定と評価
(8)みんなで祝杯、セレブレーション




【目次】

0 強い会社は、戦略の「立て方」が違う
1 強い会社は、自社の「立ち位置」が見えている―企業戦略
2 強い会社は、各事業が「シェア」を順調に広げていく―事業戦略
3 強い会社は、戦略を確実に「具現化」させる―機能戦略
4 強い会社は、目に見えないものも「評価」する―業績・成果
5 強い会社は、やるべきことを明確に伝える―プレゼンテーション

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◇1586 『新世代CEOの本棚』 >文藝春秋/文藝春秋

先日読了した『マッキンゼーが予測する未来』よりも、本書の方が未来予測に関しては有用だと感じた。30代の経営者たちのとがった生き方・考え方が好もしい。

興味深く感じたのは本書に登場する若手経営者が、大きく分けて3つのカテゴリーの本を読んでいるという点。(私が30代の頃は、ミステリーかノウハウ本しか読んでいなかったのに比べると格段の差である。純粋にすごいなぁと思ってしまう)

その3つのカテゴリーとは、(1)古典的な経営書や歴史書、(2)スタートアップに関する伝記やノウハウ本、(3)最新の技術動向に関するもの、である。

(2)(3)は若手経営者にとっては必須のものかもしれないが、(1)についても、きっちりと読み込んでいるところが素晴らしい。私など、最近になって漸くたどり着いた領域なのだが、まぁ始めるに遅すぎることはないというので、今更と諦めず、コツコツと読書に励んでいこう。

興味を惹かれた経営者は、次の方たち。まず、ミクシィ元CEOの朝倉祐介さん。気になった言葉はグーグルよりもアマゾンで検索して関連書籍を購入したり、組織のグチャグチャを歴史本で擬似体験するように心がけたり、本に対しての信頼感を感じた。また、悩んだ時はオフィスから離れて本を片手に集中して考えるのが良いとのこと。

次にメタップスCEOの佐藤航陽さん。本を読むことと実行することをセットとして考えていて、何かを知りたいと思った時は、1週間くらい部屋にこもって朝から晩まで本を読むとのこと。その後は、本から得た仮説を実際に試してみるのに忙しくて本は一切開かないそうだ。また、情報と資本でレバレッジをかけるという考え方や、これからのフロンティアはゲノムと宇宙だと見切っている点などもすごいなと思った。

佐藤さん以外の方も述べられているのだが、全篇を通じて感じたことは、これからの世の中は、宇宙、バイオ、自動運転、EV(電気自動車)、ドローン、といった方向に向かうとのこと。インターネットで情報通信革命に関わった世代は、世の中を根本的に変える仕事がしたくなるとのことで、そのキーとなるのが前述の技術なのであろう。



【目次】

01 堀江貴文(ライブドア元CEO)―「ノーベル賞科学者のプロデュース術」を学ぶ
02 森川亮(LINE元CEO、C Channel CEO)―自分の脳を「だます」本で、判断力を研ぎ澄ます
03 朝倉祐介(ミクシィ元CEO)―組織の「グチャグチャ」は歴史本で疑似体験
04 佐藤航陽(メタップスCEO)―「感情」「経済」「テクノロジー」で未来を俯瞰
05 出雲充(ユーグレナ社長)―ドラゴンボール「仙豆」から、ユーグレナを着想
06 迫俊亮(ミスターミニットCEO)―「とりつかれたような読書」から見えてきたもの
07 石川康晴(クロスカンパニーCEO)―倒産危機を救ってくれた、松下幸之助の『商売心得帖』
08 仲暁子(ウォンテッドリーCEO)―「採用」「解雇」の二大難問に答えてくれた本
09 孫泰蔵(Mistletoe CEO)―『ワンピース』は、チーム経営の最高の教科書
10 佐渡島庸平(コルクCEO)―ストーリーづくりは「観察力」が9割、「想像力」が1割

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◇1585 『マッキンゼーが予測する未来−近未来のビジネスは4つの力に支配されている』 >リチャード・ドッブス/ダイヤモンド社

たまにこの手の本を読んで自分が持っている情報に欠落点はないかを棚卸したくなるのだ。普段から、本書で取り上げられているような点を意識しながら新聞や雑誌を読んでいるおかげで、幸いにも全く認識していないトレンドはなかった。しかしながら、さすがはマッキンゼー、発展途上にある小さな都市名まできちんと捕捉しており、細かなファクトの積み上げが、大きな理論の裏付けとなっている。

本書で紹介されている、「破壊的な力を持つ4つの根本的なトレンド」とは次のとおり。

(1)経済活動とダイナミズムの重心となる場所の移動(中国などの新興国へ)
(2)技術の発展が、その範囲・規模・経済的インパクトにおいて加速し、増大すること(インターネット接続やデータ革命)
(3)人口動態の変化、人類の平均年齢の上昇(人口成長が止まり、フラットな台地状の推移へ)
(4)「流れ(フロー)」と呼んでいる貿易の力に加え、資本、人々、それに情報を移動を通じ、世界が相互に結合する度合いの高まり


これに対抗するためにも「発生した問題に対して、素早く身軽に行動が取れる敏捷性は、加速するグローバルなフローの時代には、企業存続の成否を分ける特質である。突然の危機に備え、事前に対応策に投資し、危機の到来を察知し、素早く対応できる企業こそが、生死を分ける競争優位を持つことになる」とのこと。

それでは気になった箇所を要約して抜粋。

・多様化した新興国市場での競争に勝てる企業
(1)次の成長機会を考えるときに、国や地方といった大まかな単位ではなく、もっと詳細な都市や都市の集積で考え、それに従って資本や人材の再配分を行う。
(2)現地の好みやニーズに合わせて製品と価格設定をカスタマイズし、速く、低コストのサプライチェーンを築き、さらにコスト競争力があって幅広い層にアピールする価格帯をカバーできるよう、ビジネスモデルの革新を図る。
(3)市場にいたる複数の販売ルートを設計し、コントロールし、それに沿ってブランド、マーケティング、および販売戦略を再考する。
(4)組織機構、人材戦略、事業運営の慣行を新興国を重点市場とするシフトを反映させて全面的に変更する。

・破壊力のある12の技術
(1)新世代ゲノム科学
(2)新素材の開発
(3)エネルギーの貯蔵
(4)石油とガス採掘・回収技術の進歩
(5)再生可能エネルギー
(6)ロボット工学の進展
(7)自律的あるいは自律的に近い自動車
(8)3Dプリンティング
(9)携帯機器によるインターネット
(10)IoT(モノのインターネット)
(11)クラウド技術
(12)知識作業のオートメーション化

・都市こそがその国の国民が先進近代社会とグローバル・エコノミーに直接の接点を持つ場所であるがゆえに、このことが重大な意味を持ってくる。都市が貧しい農民を、はるかに生産性の高い労働者、グローバル市民、そして消費者へと変えていくからである。現在の都市化の波は、世界中の貧困にあえいでいた7億人の人々が、貧困層から脱することに決定的な役割を果たしている。

・都市というものが成長を推進する強力なエンジンであることの理由は、数々存在する。高密度の人口集中地域には、規模の経済、労働の専業化、知識の拡散および売買により、生産性の向上が生まれる。そして、こうした生産性の向上は、ネットワーク効果によりさらに強化される。

・2010年から2025年の間の世界のGDP成長のほぼ半分は、開発途上国の440の都市から生み出されるものとなるのだ。

・3Dプリンターも将来、物理的製品の販売方法や物流の手法の定義を変えるかもしれない。たとえば、靴、宝飾類、各種の道具などは、電子ファイルの形で販売され、購入者は送られたデータを3Dプリント・サービスや、自宅のプリンタを使って、モノとしてプリントアウトするようになるかもしれない。

・ゲノム配列のデスクトップ分析機を用いて医師が診断を下すことが当たり前の診断手順の一部となったり、MRIやCTの画像データに基づき、3Dプリンタを使って生物学的分子構造や臓器の模型をもっと簡単に作製することが、普通の手順になっているのかもしれない。また、材料科学の発展によりナノ素材の開発が進み、新たな薬物送達方法が生まれる可能性もある。

・世界中の相互結合が強くなれば、これまで予想もしなかったような新しい結果が生まれてくる可能性がある。何十年も前であれば、ギリシャのような小国の経済が破たんしたとしても、世界の金融界のレーダーに映ることはほとんどなかったに違いない。しかしながら、ヨーロッパが単一通貨を使い、金融部門の高度な統合が達成されたことにより、ギリシャの財政危機は、ドイツ、フランス、イギリスの銀行の危機を招いた。

・資源や穀物といった商品価格の動向も、これまでにない興味深い新しいパターンを示している。これは、ある種の資源(石油)が別の資源(穀物)生産の主要コストとなる事実、それに資源間の代替を可能にする技術の興隆(たとえばトウモロコシを原料とするエタノールが原油を代替する)、といった理由からである。相関関係の強まり、需要の高まり、それに供給の制約が組み合わさり、これから何年もの間、商品相場の不安定な動きにつながるだろう。

・中国とインドのみで25億人の人々が今後グローバル経済に合流し、統合されてくる。これにより、資源の価格はいかなる技術進歩による効率改善などの価格低減効果があってもカバーしきれない価格上昇圧力を、商品価格に加えるだけの需要増を生み出している。そう考えると、今後50〜75年間、または火星での鉱山採掘を始めるまでは、多くの天然資源価格は上がっていくしかないのだ。

・テスラは顧客からの購入予約手付金を義務付けており、これによって会社の操業に価格運転資本を事実上顧客に負担してもらっている。またアマゾンは、顧客からの代金を即時に回収する一方、仕入れ先への支払いサイクルを1か月後に実施することで、運転資金の確保を行っている。

・インタラクション職種(看護師、介護士、外科医、販売員、弁護士など)といった職種の多くは「非貿易」部門に該当する。こうした分野の職種は、ほぼ全面的に国内顧客を対象に製品やサービスを提供しており、輸出や輸入が困難である。一方で、これらのインタラクション職種は、従来以上に細分化され、分解される可能性がある。とくにヘルスケアの分野では顕著であり、例えば慢性疾患患者の生活習慣、食事、運動に関するカウンセリングなどは、従来医師の仕事であったが、今後は中級スキルを持つ看護師などが代替する可能性がある。また、こういった作業の分解が起こることで、一部の作業は遠隔地で実行することが可能になる可能性もある。

・先進国だけでなく中国やインドのような新興国ですら、労働力の需給ギャップが生じてきている。この需給ギャップとは、高度スキルの動労者は需要に対して不足するのに対し、低スキル労働者は過剰となってしまうこと。これによりいわゆる職のアンマッチが生じてくる。

・アメリカ企業のほぼ3分の2が優秀な採用候補者を見つけられずに空いたままのポジションがあるというアンケート結果がある。この空きポジションの大半は科学、技術、工学、数学というSTEM分野である。しかし、こうした専攻分野で学ぶ人はアメリカ大学生の15%しかいない。中国では42%、インドでは26%がSTEM分野を専攻。今後2030年までにこの両国だけでSTEM分野における世界中の学生数の造化の3分の2を占めると言われている。(世界平均が23%、日本は21%) 

・カルロス・ゴーンの言葉「ビジネススクールでは、車内の危機に対応できる人材を育てているかもしれない。だが、私の考えでは、外からの危機に対応する備えのほうが重要なのです。外からの危機に備えるうえで問題なのは企業戦略ではなく、リーダーの持つ、戦略をどのように適応させるかを考えだす能力なのです。何でもが借入れで賄われ、技術が猛烈なスピードで進むという、これほどにも変動の多い世界に私たちは生きているのですから、私たちは外からの危機をこれからもずっと多く経験するに違いないのです。自分の住む範囲とはまったく違う外側のどこかで始まった出来事が、自分たちを大きく揺さぶってしまうかもしれないのです」

・古いグローバル競争の世界で自社の企業文化、戦略、プロセスを築いてきた企業にとっての重要な課題は、一群の伝統的競合企業を越えて自社の思考範囲を拡大し、新しい競合企業の成長をモニターし、新たに生まれてきた産業や業種の経済性、利益構造やビジネスモデルを理解しようとし、努力を傾けることである。それに加えて、自社が持つ資産、コア・コンピテンシーと呼ばれる中核能力、競争優位の源泉が何なのかを突き詰め、明確に理解することに、時間と知的エネルギーを注がなければならない。成功を収める経営者であれば、手を組む正しい相手を選び、たとえそれが自社の既存事業を破壊することにつながるとしても、決定的な措置を講じる用意ができているだろう。

・格差拡大の原因として見逃されることが多いのが「生産性」という要因。いくつかの調査によれば、裕福な人たちが生産性を向上させると、その人たちが人数比例を越えた利益を享受するため、偏った生産性の向上は、全体の不平等を助長する傾向があるのだ。したがって、幅広い分野での大きな生産性改善が、格差拡大問題の解決策となるはずだ。

・過去の成長を後押ししてきた人口構成のトレンドが、今日では弱くなってきており、国によっては逆転しマイナスに転じている。グローバルの雇用数の成長率は、出生率の低下と人口高齢化のせいで、ちょうど0.3%にまで低下する可能性があり、世界の雇用総数も今後半世紀のどこかでピークに達する可能性が高い。そうなると、生産性の向上のみが、GDP成長を推進する要素となる。近年のGDP成長の軌跡を延長し、維持するには、生産性の伸びを歴史的な実績の2倍に加速する必要がある。

・生産性の伸びを促すために必要な10項目
(1)サービス産業分野での競争を妨げる障壁の除去
(2)公的部門と規制部門に効率と業績の管理を導入し、重点実施。
(3)特に新興国を中心に、物理的およびデジタル・インフラストラクチャーへの投資。
(4)革新的な製品やサービスのR&D投資と、そうした研究開発需要の喚起措置。
(5)生産性改善にインセンティブを与え、イノベーションを支援する法制の導入。
(6)改善機会と変化を促進する触媒を見つけるためにデータを活用する。
(7)データの公開とデジタル・プラットフォームを通じて、生産性向上の全景観の中から新しい手法やツールを見つけ出し、その力をテコに普及を図る。
(8)女性、若者、高齢者の労働市場への参加を促進する。
(9)さまざまなスキルや労働力プールの強化を支援するため、移民制度の調整を行う。
(10)職業により求められるスキルの教育のマッチングを改善し、労働市場をこれまでよりも柔軟にする。

・自動運転によって事故死が減ることが予想されるが、そうすると一方で臓器移植用の心臓が枯渇するかもしれない。今までは交通事故死者がドナーとなり、心臓移植を受けられる人たちがいたのが事実なのだ。そうすると、次は人工心臓に対する需要の急増が見込まれるかもしれない。このように、物事が副次的に結びつく世の中では、不安定性が増し、現状の能力を超えての速い意思決定のスピードが必要となり、挑戦課題があらゆる側面から発生してくるだろう。

・人間や企業は慣性の力に引きずられる度合いが驚くほど高く、リーマンショックを経験した直後でさえ、多くの企業が過去の実績に基づいて資源配分を実施していた。こういった現状を認識し、組織のリーダーは、まずリーダー自身が自らの直観力をリセットする能力を開発しなけれなばならない。全てのリーダーに必要な最初のステップは自己再認識である。自分が変化に効果的に対応しようと考えるのなら、自分自身の傾向やバイアスを理解し、自分の意思決定プロセスを推進する要素に気づくことこそが、根本的な問題である。そしてリーダーたちは、解決策の実施を託された人たちの思考法や行動を変えるために、自分自身の時間と努力を投入しなくてはならない。

・もう一つの生存のカギは、好奇心と学ぶ気持ちとを組織の中に埋め込むことだ。常に変化しているトレンドの海を、理解し、モニターし、航海していく能力は、将来必ず大きな見返りをもたらしてくれるに違いない。




【目次】

我々は、直観力をリセットしなければならない
第1部 4つの破壊的な力
 上海を超えて―異次元の都市化のパワー
 氷山のひとかけら―さらに加速する技術進化のスピード
 年齢を重ねる意味が変わる―地球規模の高齢社会の課題に対処する
 貿易、人間、金融とデータの価値―音速、光速で強く結び付く世界
第2部 直観力をリセットするための戦略思考
 次に来る30億人―新たな消費者層の力を引き出す
 逆回転が始まった―資源に訪れる新たな機会
 1つの時代の終わり―資本コストが下がり続ける時代よさらば
 労働力需給のギャップを解消する―技術革新が生み出す新たな労働市場のミスマッチ
 小魚がサメに変貌するとき―新たな競合の出現と競争のルールの変化
 国家の政策こそ問題だ―社会と政府にとっての戦略的課題

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◇1584 『東芝解体・電機メーカーが消える日』 >大西康之/講談社現代新書

こちらも中国出張の飛行機で読了。東芝の話だけであれば手に取らなかったであろうが、何かの書評で日本の電機メーカー全般について述べられているという記事を見たのを覚えていて、成田空港の書店で購入したもの。

2007年に読んだ佐藤文昭氏の『日本の電機産業再編へのシナリオ』という本が非常に印象に残っているのだが、この本ではズバリ、日本の電機メーカーは多すぎると主張していた。ホールディングカンパニー2社にまで絞り込むべきだという大胆な提案であったが、その後、半導体、液晶、パソコンなどの分野では統合が進みつつある。

本書では、日本の電機メーカーが凋落した裏事情まで赤裸々に述べられている。もちろん、日本国内の需要が十分であったため、ガラパゴス化して世界で戦えなかっただとか、メーカーの数が多すぎて優秀な研究者・技術者が各所に分散してしまっている、といった一般論も述べられているが、なるほどなと思ったのは、多くの電機メーカーがある分野に依存していたという事実。その分野とは電力と通信である。もっと具体的に言えば東京電力を始めとする電力ファミリーの長兄が東芝であり、NTTを中心として電電ファミリーの長兄がNECである。これらの企業はファミリーに依存し過ぎたため、自助努力を忘れ、世界で伍していく力を失ったということ。

現在回復の基調にあるソニーやパナソニックについても述べられている。巷ではソニーは出井社長が、パナソニックは中村社長が諸悪の根源のように囁かれている。私自身は、ちょうど経営に興味を持ち始めた頃にお二人の大胆な経営計画をリアルタイムで目の当たりにして、理論と実践の両輪を廻すことができる素晴らしい経営者だな、と思っていた。とはいうものの、結果を出せない経営者というものは酷評されてしまうのだと、世の中の非情さを感じたものであった。後付けの批判は誰にでもできるが、私自身は出井さんのガバナンス改革や、中村さんの子会社とのねじれの解消などは、強いリーダーシップがなければできなかったであろうし、これらの判断が今になってじわじわと良い方向で効いてきているのではないかと感じている。本書の筆者である大西さんも、同じような論調だったので、少しほっとした。

日本では勝ち組と見られている日立製作所に対しても手厳しいコメントを残している。日立はたまたま茨城の地が拠点だったため、電力ファミリーや電電ファミリーの主役の座に収まることができなかった。これが幸いして、社会主義的な発想から抜け出した大胆な改革を断行することができたのであろう、というのが筆者の論。また、日経新聞の誤報として話題になった三菱重工業との統合の話は、三菱側のOBがスリーダイヤの名前を消すなと猛反対して潰れたという。今の三菱重工業の苦境を見ていると、統合しなくて正解だったのかな、とも思う。

最後に意外だったのが、三菱電機。臨機応変な構造改革を繰り返し、規模では劣るものの純利益では日本の電機メーカーの中でトップである。デジタル分野での消耗戦を避け、得意のFA事業に集中するという戦略が功を奏している。当たり前と言えば当たり前の戦略なのだが、「総合電機」という面子にこだわってきた他社とは一線を画している。

三菱電機が好例だが、やはり日本企業は大胆な設備投資が必要なデジタル分野よりも、FAなどのすり合わせ技術が必要な分野に向いていると思う。この辺りの話は、冨山和彦さんの『稼ぐ力を取り戻せ』を読むとよく理解できる。本書でも述べられている東芝やシャープの例を引くまでもなく、企業は変革を続けていかないと生き残れないのだ。そんな当たり前のことを再認識させてくれる良書であった。



【目次】

序章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」―電機メーカーを長年支え続けた“本業”の正体
1 東芝 「電力ファミリーの正妻」は解体へ―待ちうける“廃炉会社”への道
2 NEC 「電電ファミリーの長兄」も墜落寸前―通信自由化時代30年を無策で過ごしたツケ
3 シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上―知られざる経済産業省との「暗闘」
4 ソニー 平井改革の正念場―脱エレクトロニクスで、かすかに見えてきた光明
5 パナソニック 立ちすくむ巨人―「車載電池」「住宅」の次に目指すもの
6 日立製作所 エリート野武士集団の死角―「技術の日立」を過信し、消費者を軽んじた
7 三菱電機 実は構造改革の優等生?―「逃げながら」「歩み続ける」経営力
8 富士通 コンピューターの雄も今は昔―進取の気性を失い、既得権にしがみつく

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先週末は一日中眠く、惰眠をむさぼってしまった。最近は、歳のせいかあまり長時間は眠れなくなっていたのだが、たまに例外的に(年1〜2回程度だろうか)だらだらと寝てしまうことがある。こういった睡眠欲が激しいときに無理をすると、ひどい口内炎ができたり、いつまで経っても疲れが取れなかったりするので、生活リズムが狂うのを承知の上で、最近は欲望の赴くまま眠るようにしている。

結果として、土曜日23時ごろの就寝から、日曜日の朝7時まで寝て、その後8〜11時、13〜16時、そして20時から翌朝6時までと、かなりのロングスリープとなってしまった。惰眠をむさぼると奇妙な夢を見るのも毎度のこと。逆に平日は眠りが短くて深いせいかほとんど夢は見ない。

さて、前置きが長くなってしまったが今回は大きな魚と戦う夢を見た。からだはクジラほどもある大魚なのだが、顔つきは四角くてのっぺりした感じ。この大魚が暴れて困るので、征伐するのが私の役割だ。

時代設定は現代ではないようで、手にしている武器は銛のようなもの。手で投げて顔を攻撃するのだが、堅いうろこに跳ね返されてしまう。そこでやむを得ず、使いたくはなかったが毒薬を使うことにした。小瓶から海へ毒薬を注ぐ。もちろん、大魚だけでなくほかの魚も殺してしまうので最後の手段だと思っていたのだが、背に腹は代えられない。

毒が大魚の近くまで漂うころ、突然大魚が大きな口を開けて周りの小魚を飲み込み始めた。その後、海底に頭を突っ込んで、倒立の体制を取る。何をしているのだろうと思っていたところ、どうやら小魚を自分の体内に取り込むことで毒薬から守ろうとしているらしいことが分かった。また海底に頭を突っ込んでいるのは自分自身が毒薬から逃れるためだろう。

意外と頭がいいんだな、などと思っていると目が覚めた。長い眠りの割には短い夢。いつもながら変な夢である。

◇1583 『牙を研げ−会社を生き抜くための教養』 >佐藤優/講談社現代新書

佐藤さんの本は、読み過ぎた感があり、しばらく読まなくてもいいかなと思っていたところ。第一、非常に早いペースでどんどん新刊が出てくるので、すべて読もうとすると他の本が読めなくなってしまう。しかしながら、本書は今までの「間接的に」仕事に役に立つ教養ではなく、「直接的に」役立つ本というコンセプトだったので、興味を持って購入。

会社勤めの経験のない佐藤さんにとって、仕事=外交官なのかもしれないが、少なくとも普通のビジネスパーソンにとっては、直接的に役に立つとは感じられなかったというのが正直な感想。しかしながら、今までの著書と同じく、間接的には非常に有用だと感じた。また、間接的とはいえ、構成やコンセプトがよく練られており、自分に足りないものは何か、自分が目指すものを何かを再考するきっかけを与えてくれる本であった。

本書は7章立てであるが、私なりの解釈で無理やり仕事や教養に結びつけるのであれば、下記の通りとなるであおる。

第1章:リーダーシップ
第2章:宗教
第3章:論理(ロジカルシンキング)
第4章:地政学(国際情勢)
第5章:経済学
第6章:日本の近現代史
第7章:数学

これら以外に、教養と呼ばれる分野のものや、ビジネスパーソンに必要なスキルを列挙すると、次のものが挙げられる。

・会計(ファイナンスや国際税務を含む)
・経営学(マーケティングなど)
・語学(英語や中国語)
・技術トレンド
・歴史(世界史)
・哲学

さて、こういった学ぶべき項目を列挙した上で、あとがきに書かれていた「読書のマトリックス」を紹介しておこう。これは、竹中平蔵氏の仕事術に出てくる「天井がある」と「天井がない」という縦軸と、「仕事」「教養」「趣味」という横軸の、6マスのマトリックスである。(竹中氏のオリジナルでは、「教養」部分がない4つのマトリックス)

この天井の有無については、私自身が「スポット的に取り組むもの」と「継続的に取り組むもの」に区分して、目標を立てているのと似ている気がしたのだ。つまり、スポット的に取り組むもの=天井がある、継続的に取り組むもの=天井がない、となる。

上記にて列挙した13の項目と6つのマトリックスを組み合わせて、自分なりの読書マップを作ってみる。その前に、13項目も勉強しきれないので、選択と集中が必要。今の自分には必要なさそうなのが、経済学、数学、経営学、哲学である。40歳も半ばとなり、会社生活も折り返しを過ぎた今、経理畑の仕事についている自分にとってマーケティングなどの経営学は不要不急の分野。それよりも、直接的に役立つ会計分野をより深く学習すべきという考え方によるもの。経済学、数学、哲学も同様の考えから、一旦は学ばないことにする。また、歴史については世界史と日本史を区分せず、むしろ近現代史に特化した学びにしたい。

そうすると、8項目に絞られるわけだが、これを6つのマトリックスに配置していく。

 仕事教養趣味
天井なしLS・語学地政学技術
天井あり会計・論理宗教歴史

技術と歴史に関しては、仕事か教養のカテゴリーに入りそうだが、そうすると趣味的なものがなくなってしまうので、無理やり趣味に配置した。まぁどちらも好きな分野なので、趣味と言ってもよいであろう。

また、天井ありの分野も、厳密に言えば極めれば極めるほどどんどんと深く入っていける分野ではあるが、ビジネスパーソンとして一定の知識があればよいだろうと、判断したもの。それに対して天井なしと区分したのは、地政学や技術など世の中の状況によって目まぐるしく変化し続けるものであり、適宜情報をアップデートする必要があるもの。また、リーダーシップ(表中ではLSと略した)や語学に、天井がないのは自明の理であろう。

今までの私の行動パターンだと、天井ありのもの、つまりゴールが見えているものにまず取り組んで、それを終わらせた後に天井なしの分野に取り組むのが常であったが、そうするといつまで経っても天井なしの分野に取り掛かることができない。よって、最近は、天井なしの分野に1日1時間など時間を区切って取り組み、余剰時間で天井ありの分野を学習することにしている。

自分ではかなり絞り込んだつもりなのだが、それでもまだ8つもの分野が残っている。天井ありと定義した項目も、まだ天井に達していない状態。こちらの天井ありカテゴリーのものは、一度きちんとテークノートして頭の整理を図った方がよいかもしれない。



【目次】

第1章 中間管理職のための仕事術―独断専行の研究
第2章 ビジネスパーソンのための宗教入門―国際社会を動かす論理を体得する
第3章 論理力を鍛える―論理的思考法の身につけ方
第4章 教養としての地政学―国際ニュースの読み方
第5章 貧困と資本主義―商品社会のカラクリ
第6章 ビジネスパーソンのための日本近現代史―なぜ学び直さなくてはならないのか
第7章 武器としての数学―組織力を高めるために

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最近、新聞やネットで読んだ記事から「いい人」について考えてみた。1つ目は土光敏夫さんに関するエピソード。財界の大物であったにも関わらず名刺の受け渡しひとつとっても非常に謙虚で丁寧だったとのこと。一方で、名刺を放り投げて渡すようなやり手商社マンが、最終的には大きな失敗をしたという話。

もう1つは小宮一慶さんの書いた記事。(確かダイヤモンドオンラインだったと記憶している) 経営者は人から好かれる人でなければならない、というもの。結局、人間というのは感情の動物なので、自分が慕っている上司と、嫌だなと思っている上司であれば、慕っている上司から依頼された仕事の方を一所懸命やるため、組織としてのパフォーマンスも向上するというもの。(ちょっと記憶があいまいだが、まぁこんな感じのことをおっしゃっていたと思う)

ブログを書きながら、宋文洲さんのメルマガで、玉塚元一さんの人柄を褒めていたことも思い出した。誰に対しても謙虚で丁寧に接する方だとのこと。

私自身、どちらかと言えば「いい人」に属するのではないかと自己分析するのだが、正直「いい人」に対するコンプレックスもある。ビジネスシーンでは、いい人だけでは駄目であり、時には厳しい発言や態度も必要。必要な時に言うべきことが言えないようないい人は、やがて「どうでもいい人」になってしまう。

以前は、たとえ部下であっても厳しいことを言うのが苦手で、できるだけそういったシーンからは逃げていたのだが、部下を甘やかすのは長期的に見ると部下のためにはなっていない。たとえ嫌われても厳しく指導して、正しい方向へ導くのが上司の役割だ、と尊敬する先輩から言われたことがあり、それ以来意識して、必要に応じて厳しいこともきちんと伝えるように心がけている。

ただ、そんな時でも、頭ごなしに怒鳴りつけるのではなく(もともとそんなタイプではないので、怒鳴ったりできないのだが)、何が悪いのか、何がダメなのかを諭して、理解するようにしてもらっている。また、起こしてしまったミスや、間違った考え方を正すことはあっても、部下の人格まで否定してしまわないよう、気を付けている。

自分自身、ちょっと八方美人的なところがあるなぁと自認しているのだが、これも度が過ぎるとよろしくない。人間関係において、ウマが合う合わないというのは付き物なので、世の中の3〜4割の人には嫌われても仕方がない、そんなもんだ、と考えるようにしている。

ただしこれも嫌われてもいいからと、ぞんざいな態度を取るのではなく、あくまでもあるべき姿や良いと思ったことを貫き通すための真摯な態度を取るべきだ。このあたりの線引きやバランスは非常に難しいところなのだが、結局、相手のため・会社のためを思って「利他の心」をもって接することが一番大切ではなかろうか。

最近、仕事上で色んな人の色んな態度・発言を見聞きしたので、ちょっと考え込んでしまった次第。不思議なもので、こうやって文章にすると、もやもやがすっきりする感じがするのだ。

最近、物欲があまりないという話は以前にもエントリーした気がする。むしろ、物が無いシンプルな生活の方がよいなぁと(枯れるにはちょっと早い年齢だが)そんなことを考えてみたり。

敢えて欲しいものを上げるとすると腕時計とボールペン(ビジネス仕様の高級なもの)であろうか。以前は、腕時計であればIWC、ボールペンはモンブランのものが欲しいなと思っていた。しかしながら、まだまだ自分には分不相応と考えて、もう少し年齢を重ねたら買いたいな、と考えていた。

ところが、最近、少し趣向が変わってきた。中国駐在を経験してから、改めて日本の良さに注目するようになったのだが、食べ物や自然だけでなく、身の周りにはMade in Japanのよいものがたくさんある。舶来もの(言い回しが古いな)ではなく、日本製のものを身につけるのが、日本人としてのちょっとした矜持ではないか、などとも考えるようになった。

一つのきっかけは、海外の同僚が日本に来たときの質問。ペットボトルの水をお出ししたところ、たまたまその水がヴォルビックだったので、「なぜ日本にはおいしい水がたくさんあるのに、外国のものを好んで飲むのか」と聞かれたのだ。確かに、輸入ブランドに執着するのは、日本人の特徴かもしれない。

バッグであればポーター、靴であればリーガルなどは、デザイン・品質ともに世界に誇れる品であろう。私が欲しいと思っている腕時計も、Grand SEIKOという素晴らしい時計があるし、高級ボールペンは伊東屋が復刻したROMEOというブランドが格好いい。

両者とも、少し無理をすれば手に届かない金額のものではないが、果たして自分に似合うかどうか。形から入るという手法もあるが、一流のものを身につけるには自分も一流に、とは言わないまでも、1.5流の人物になってから、などと考えてしまうのだ。

◇1582 『本日はお日柄もよく』 >原田マハ/徳間文庫

背表紙あらすじ:OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!目頭が熱くなるお仕事小説。

5月末に「揺り戻し」というエントリーで書いた通り、たまには小説らしい小説を読んでみようと、手に取ってみた次第。名前だけ知っていて、読んだことのなかった原田マハと朝井リョウの作品を一つずつKindleで購入。その内の一冊を中国出張時に読了した。

端的に言ってしまうと、スピーチライターが生み出す言葉が、政治の世界を変える一端になるというストーリー。ちょうど、オバマ大統領が「CHANGE」というキーワードを元に、大統領選を勝ち抜いていっていた頃の話である。一番印象的だったのは、政策スピーチのキモとも言える、次のフレーズ。

「いますぐに、まっすぐに」

私自身、本が好きだし、言葉は重要だと思っているので、非常に共感できる本だったし、作品中に出てくるスピーチは感動的なものが多かった。正直、ちょっとウルっと涙してしまったシーンもあった。

しかしながら、よい作品だと感じたのであえて言うならば、設定が非現実的な感じがして入り込めなかった。主人公は普通のOLなのだが、祖母が日本を代表するような俳句の師匠だし、幼馴染が野党幹部の息子、たまたま幼馴染の結婚式で出会ったスピーチライターが政界でも著名な人物、といった風に、主人公を取り巻く人々がすごい人ばかりなのだ。何と言うか漫画的な感じがして、私にとっては違和感を感じてしまう設定だった。

最後はハッピーエンドだし、読んでいて気持ちのよい作品だっただけに、ちょっと残念。

そうそう、あとがきで知ったのだが、原田マハさんは、原田宗典さんの実の妹だそうだ。宗典さんの作品も、しばらく読んでいないなぁ。

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サラリーマン(あえてビジネスパーソンとは言わない)のお付き合いとして、挙げられるのが酒席、ゴルフ、麻雀ではなかろうか。

この内、麻雀は随分と打つ人も減り、それほどメインの接待項目ではなくなってきているという印象。(私自身も、数度しか経験がなく、実質麻雀はできない)

酒席については、日本だけでなく中国や韓国でも重要な接待の場だが、昔に比べるとアルコールを強要されることも少なくなり、自分のペースで飲んでいれば、まぁ無難に過ごすことができる。むしろ私としては、酒席での会話を重視しており、誰か話の上手い人や盛り上げる人がいるときは聞き役に回り、座が白けているようなときは、笑い話などで盛り上げるよう心がけている。時には海外のエピソードなども話題になるが、このブログのおかげで、そういったネタにもついていくことができているといえよう。

さて、本日のエントリーはゴルフについてだが、実はゴルフは大の苦手である。30代前半から、会社内のコンペには参加するのみで、個人的にプレーしたこともなく練習もしないので、いつも130前後のスコアという惨憺たる結果。それが、茨城に転勤となり、東京に比べるとゴルフ場が安くて近いこともあり、お誘いいただく機会が増えてきた。

苦手なので断ることもできるのだが、今まで話したことのない人と親しくなれるチャンスでもあるので、時には参加するようにしている。そうすると、やはりもう少しスコアを伸ばしたくなるというのが人情というものであろう。

幸い、東京に比べると練習場も廉価である。2〜3時間打ち放題で1100〜1300円、といった相場観。球数が決まっている方が、緊張感を持って練習できるという人もいるが、私の場合は、アプローチなどの近い距離も苦手なので、打ち放題の方が向いている。そんな環境下、週末に空き時間を見つけて、月2回程度、練習場に通うようになった。

ゴルフについては、日本電産の永守さんやライフネット生命の出口さんのように、時間の無駄と切り捨てる経営者もいる反面、ソフトバンクの孫さんや、ユニクロの柳井さんのように、非常に上手な方もいらっしゃる。まぁこればかりは考え方だが、私なりに時間をかけすぎないよう、ある目標を立てて、それが実現できるまでは少し時間をかけてみようかなと思った次第。

その前に、自分で練習するにあたって、参考にしたものが3つあるので記録しておきたい。

1つ目は今井純太郎さんのYoutubeの動画。無料でゴルフスイングの解説をしているのだが、理論的で私には非常に分かりやすく感じたのだ。今まで我流で練習していたのでまさに目から鱗。例えばクラブを構える時、腕の肘を体の内側に向けるだとか、パターは逆ハンドの方がいい、といったことを身体の動きのメカニズムから解説してくれる。

2つ目は、何のサイトだったか忘れたが、初心者はクラブの数を減らしてプレーすべきというもの。たくさんクラブを持っていっても距離の調整など出来ないので、自信のある慣れたクラブでプレーする方がよいという説だ。これに影響を受けて、私自身はドライバー、5番ユーティリティー、7・9番アイアン、PW、SW、パターの7本で回っている。(ゴルフで使えるクラブは最大14本のため、7本のことをハーフセットとも言うらしい)

最後の3つ目が、たまたまサイトで見つけた中田英寿さんのゴルフレッスンの動画。引退したとはいえ、キープしている筋力があるため、相当なパワーヒッターになれそうなのだが、距離に対しては一切興味がなく、むしろ正確性を磨きたいという姿勢に興味を持った。その発想から、ドライバーをよりもアイアンを重視し、ティーショットも1番アイアンで打つという徹底ぶり。私も距離が出ないタイプなので、正確性で勝負するのが向いているなと思った。

さて、そんな私の目標だが、現時点では以前からは少し改善して120前後のスコア。これをダブルボギーペースの108にまで向上させたい。ゴルファーであれば、100を切るのが一つの目標になるようだが、私の場合は、そこそこ楽しめて、同行者にご迷惑をおかけしない程度で良いと割り切っている。

今でも、球筋がそれほど大きく左右にぶれることはなく、むしろグリーン周りのアプローチやパットで大叩きしてしまっている。なので、左右の林に打ち込んで、みんなに探していただくということもなく、プレー時間を遅らせてしまうこともないので、まぁ良いのだが、もう少しだけ頑張ってみよう。

嫌いなはずのゴルフなのだが、長々とエントリーしてしまった。練習に通うようになって、少し球がまっすぐに飛ぶようになってきたおかげで、ちょっとだけ、面白いかなと思えるようになったのだ。何事も、嫌だ嫌だと逃げていては上達しないということの好例であろうか。

◇1581 『ハイブリッド外交官の仕事術−情報収集から大局観を構築するまで』 >宮家邦彦/PHP文庫

中国関係に詳しいと評判の宮家邦彦さんだが、著書を読んだことがなかった。確か、佐藤優さんとの対談集を読んだことがあるだけ。たまたま立ち寄った本屋で平積みされていたので、購入。ノウハウ本の一種なので、どこかで聞いたような話もあるが、宮家さんのノウハウが集約されている一冊といえよう。

一番印象的だったのは、英国の地図をひっくり返すという発想。英国と日本が非常に似ていることを感じさせる素晴らしい着眼点である。本に掲載されている画像を掲載したかったのだが、著作権もあると思うので、グーグルマップを加工して、自分で作成してみた。

Japan

England

大陸と絶妙な距離にある島国という共通点。執筆当時の英国の対欧州基本戦略は、大陸での勢力均衡、大陸問題への非介入、シーレーンの確保だとのこと。ブレグジットで多少の変動はあるにせよ、基本路線は大きく変わってはいないであろう。

また、筆者は日本と英国とを、教育レベルが高い労働資源がありながら、天然資源と市場を海外に依存する海洋国家だと喝破している。英国の動きを視ていれば、日本の中国との距離感やかかわり方が見えてくるのではなかろうか。

それでは、他にも気になった箇所を要約して引用。

・中国人とアラブ人の共通点:(1)世界が自分を中心に回っていると思っている、(2)自分の家族、民族以外の他人を信じない、(3)何よりも面子を重んじる、(4)援助は「させてやるもの」で、「感謝するもの」ではない、(5)都合が悪くなると、外国の陰謀論を持ち出す。

・外国では都度、新しい友人を求めるのではなく、古い友人を通じた定点観測の方が重要。

・英語をはじめとする語学は、8割の暗記と2割の応用が必要。基本は地道に単語と例文を暗記するしかない。毎日毎日学習を繰り返す以外に、語学が上達することはない。

・外国語で、相手に興味を持ってもらえそうなネタを作って、披露する。自分が得意とする分野でのネタを増やしていくことで、語学が向上するとともに、面白いやつだと認識してもらえる。

・地政学とは、ある国を取り巻く国際政治的環境を、その地理的位置関係とそれから生まれる歴史的背景を念頭に置きながら、説明する学問的手法。

・中国の将来を考える上でも、地政学的発想は役に立つ。地政学では、各国・各民族の利益は彼らが置かれた地理的環境に依存すると考える。したがって、大陸国家は陸の国境を重視し、隣国との歴史的確執を常に考える。これに対し、海洋国家には海があり、その海を通じた交易・交流を守ることがその国家の命運を決めると考える傾向がある

歴史を振り返ると、漢族が支配するいわゆる「中国」は基本的に大陸国家だった。歴史的に中国にとっての潜在的脅威は3つ。すなわち、匈奴やモンゴルといった北方遊牧民族、ウイグルなどの西方の遊牧系イスラム勢力と、チベット、インドなどの南方民族だった。

しかしながら、現在の中国はまったく新たしい地政学的環境下にある。近代の北方民族・ロシアとの対立は沈静化し、内モンゴルを制した後のモンゴルも中国の敵ではない。西方ウイグルと南方チベットも今や自治区として管理下に置き、事実上緩衝地帯として機能している。潜在的脅威であるインドとの関係も一応安定しており、現在大陸国家中国に目立った脅威はない。

今の中国に対する最大の脅威は陸ではなく、海からやってくる。このことはアヘン戦争以来の中国近代史が証明している。イギリスなどの欧州の列強が中国を蹂躙した後にやってきたのが日本であり、その後現在まで歴史的中国の「原状回復」を妨げているのは米国というのが、中国人のインテリの最大公約数的安全保障感。

その意味では、伝統的に大陸国家だった中国は、1990年代以降、おそらく中国史上初めて、「海洋国家」としての大国化を目指し始めたとも言えるであろう。

・国際情勢を分析する際は、ニコ区間関係、地域情勢、グローバル情勢、内政という4つの同心円を考えて分析する。

・中国に初めて赴任した時は「座標軸」分析法を行なった。これは、自分と同世代の人々を念頭に置きながら現代史を学ぶこと。時間のないビジネスパーソンにとって、自分と同年代の中国人が過去どのように生きてきたかを想像することで中国社会を学ぶのが最も効率的だと考えた。そのためにも、近代史は後回しにして、現代史の勉強から始めた。

・中東は、大きく3つの地域から成っている。(1)「地中海世界」の南半分、(2)イスラエル・パレスチナを中心とする「レヴァント」地域、(3)ペルシャ(アラビア)の「湾岸地域」。

・情報分析の基本は、公開情報を丁寧に読むこと。まず押さえるべきは、各国政府や国連、IMFなどの国際機関が出している公式情報。時間がないビジネスパーソンであれば、せめて英語で書かれたウェブサイトをまめに巡回すること。筆者は、少なくともワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、アルジャジーラ、エルサレム・ポスト、環球時報について、それぞれの英語版サイトのヘッドラインを1日に1度は見るようにしている。

・外交官として読んでおくべき本(抜粋)
『あたらしい中世』 田中明彦
『愚行の世界史』 バーバラ・タックマン
『国際政治』 モーゲンソー
『歴史の終わり』 フランシス・フクヤマ
『外交』 ヘンリー・A・キッシンジャー
『ローマ人の物語』 塩野七生
『三国志』 吉川英治
『小説十八史略』 陳舜臣
『英国史』 アンドレ・モロワ
『マキャベリ』 家田義隆
『海の都の物語』 塩野七生
『大英帝国衰亡史』 中西輝政
『古典外交の成熟と崩壊』 高坂正堯
『第三帝国の興亡』 ウィリアム・シャイラー

・有事の際に必要なこと。危機管理の4つの教訓。(1)初動対応で躊躇しないこと。大規模であればあるほど、最悪の事態を考えて、早く決断すること。(2)何か事件が起こり、それが危機であるか否かに迷ったら、それはすでに危機でありただちに決断すべき。(3)初動を誤るもう一つの原因は優秀な部下の不在。自分の代わりに物事を冷静に見て必要な情報を入れてくれるのは当然のこと、「あなたは間違っている、事態は深刻だ」と直言してくれる部下こそ重要。(4)「他力本願」の誘惑を断ち切る勇気。誰かがやってくれると期待した途端に、判断力は鈍ってしまう。

・危機の際に本当に頼りになるのは「マニュアル」ではなく「常識」。また、自己をどれだけ客観化できるかが勝負。

・緊急事態発生時の基本的心構え:(1)政治は結果であり、部外者は結果責任を求めているが、行動なしに結果は生じない。(2)「思考だけして失敗しない部下」ではなく、「行動して失敗した部下」を慰労・処遇すべし。(3)政治判断に迷う場合には、「普通の人の普通の感覚」をつねに念頭に置くべし。

・筆者の友人の米国の戦略思考家は、国際情勢を左右する主な要因を「ドライバー」と呼んで重視していた。情報過多の現在、このドライバーを正確に見つけるのは容易ではない。大ニュースではあるが、国際情勢を決定的に左右するものではないものは「エピソード」と呼ぶ(たとえばソ連崩壊やグローバル化の進展)。また、エピソード以下の大きな歴史の流れとは無関係の事実を「トリビア」と呼ぶ。

・ドライバーを見極めるためには、普段から様々な事象についてドライバーをなのかエピソード・トリビアなのか、自問する癖をつけること。そうやって歴史を振り返れば、国際情勢の流れや歴史の因果関係をより直感的に見ることができる。そうした事象の峻別の際、最も重要と思われるのは「温故知新」。不思議なことに未来は往々にして過去の中にある。歴史は決して繰り返さないが、現在と過去は時に共鳴することがある。過去の歴史的事実は、未来に起こりうる事象を直感する上で、最も参考になる知識の一つになるだろう。最後は「知的正直さ」を忘れないこと。知らないことを知らないと言えることが重要とである。

・筆者が考えるドライバーの一例は次のようなもの。ロシアのクリミア侵攻→ポスト冷戦が終了、米軍のイラク撤退→イラクとシリアが破綻国家化、中国公船の尖閣領海侵入→東シナ海の現状も変化、など。

・筆者が外務省生活とその後の人生の中で最も大事だと考えているのは、何事にも全身全霊で立ち向かい、困難や逆境に対して人間として絶対に「逃げない」こと。スポットライトを浴びていなくても、誰も見ていなくても、黙々と責任を果たす人を尊敬する。




【目次】

第1章 人とは一味違う仕事をするための「人脈術」
第2章 人とは違う言語を喋るための「語学術」
第3章 人とは違う結果を出すための「交渉術」
第4章 発想力と発信力を高める「メモ術」と「プレゼンテーション術」
第5章 人とは違う大局観を持つための「発想術」
第6章 人より早く先を読むための「情報術」
第7章 緊急事態発生でもパニックにならない「危機管理術」
最終章 大局観の鍛え方

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ドラマ『リバース』の感想を先日エントリーしたが、同じクールで視聴していたのが『クライシス』 脚本が金城一紀さんの作品なので、楽しみにしていたもの。

過去に曰くのあるメンバーを揃えた警察内部の特殊班。設定的にはどこかで聞いたことのあるようなものだが、やはり金城さんが描くと面白くなる。

主演の小栗旬さんも、本当にいい演技をしている。時折見せる暗くて寂しげな表情が秀逸。以前はあまり好きな俳優ではなかったのだが、いい味をだす俳優ではになったものだ。

さて、ストーリーの方は、現在、世界の各地で起きているテロが、日本でも起こりうるという話。金城さんの野心作である『SP』でも感じたことだが、テーマは平和ボケした日本に投げかける大きな警告と言えるだろう。

残念だったのは全体の構成が散漫に感じられたこと。「平成維新軍」という少年たちの革命組織が登場するのだが、首謀者一人が逮捕されただけで終わってしまい、最終回は主人公の同僚の元自衛官がテロを画策するという話で終了。平成維新軍が最後に登場するものだと思い込んでいたので、最終回であることに気づかなかったほどだ。将来的に続編を作るか、映画化を検討しているためだろうか?

また、ネット情報を駆使すれば、素人でもテロが起こせてしまうかもしれない、という危機感とともに、テロを煽ることになってしまうのではないか、という怖さも感じてしまった。このドラマを見た若者が、警察側ではなく、テロリストの方をカッコいいと思うのではないかと。

◇1580 『情報を活かす力』 >池上彰/PHPビジネス新書

池上彰さんの新刊ということで買ってみたのだが、内容的には佐藤優さんとの共著『僕らが毎日やっている最強の読み方』の方がよかった。

よって、今日は気になった箇所を要約して引用するのみとしたい。

・多くの現代人には、一定期間インターネットやデジタル機器から遠ざかる、デジタル・デトックスを行い、自分の頭で考える時間を確保することが必要。

・複数の新聞を読むことで、相反する意見を知ることができる。これにより、自分とは違う意見に出会った時も、こういう見方ができるのかと、寛容に受け入れられるようになる。

・情報はクリアファイルを使って整理している。そこから得られるのは、雑多な情報の中から、本当に役立つものを「選ぶ力」と、選んだニュースを「並べる力」である。この2つこそが「編集力」となる。

・ペンは常に3本持ち歩いている。(1)メモ用:速記者用の0.9ミリ・2Bのシャープペンシル、(2)原稿用:サインペン、(3)公式用:1.6ミリの太字ボールペン。これらを胸ポケットとカバンに2セットずつ入れて持ち歩いている。

・1つのテーマを理解するためには、そのジャンルの「定本」を見つけること。定本とは、ほかの多くの本や雑誌が参考図書にしているようなそのジャンルの基本図書。定本を一度しっかり読んでおけば、他の本にも同じようなことが書いてあるので、簡単に目を通すだけで把握できる。

・お酒が飲めなかったことで、結果として読書の時間を確保することができた。読書を、いろんな考えや立場の人たちとの「飲み会」だと考えることもできるのではないか。酒を飲む金で本を買って読めば、肝臓にも頭にも良い。

・本を読んだ内容を覚えていられないという質問をよくされるが、池上氏も同じ。読んだものすべてを覚えているわけではなく、穴の開いたバケツで水をすくっているようなもの。しかしながら、穴だらけのバケツであっても、続けていると少しは溜まってくる。どんどん忘れていくが少しは残る。そこに意味があるのではないか。

・発展途上国では、本屋に立ち寄る。若者がたくさん本を読んでいる国は発展が早いと感じている。中国、ベトナム、ミャンマー、イランは本をよく読む国。ラオスや中東(イランを除く)はあまり読まない国という印象。

・テレビの映像はインパクトのあるものを意図的に使うことがある。全体を写した映像なのかごく一部のものなのか、いつ撮られたものなのか、などを意識しながら視聴する必要がある。

・あらかじめ考えた仮説に従って内容をまとめる方法を「演繹法」、調査した内容をもとにストーリーを組み立てるやり方を「帰納法」とすれば、ゆるやかな「演繹法」が効率的。たとえば現地調査に行く場合は、事前準備で得た情報をもとに、報告書のだいたいの構成を考えておく。現場に行って改めて新しい情報を手に入れたら、それによって仮説を修正していく。

・図解をする際、矢印にはいろいろな意味を持たせることができるので、その意味を明確に表記することが重要。単なるデザインとしての矢印は使用すべきではない。

・情報番組で使用されているフリップは、重要な部分を隠しておき、説明を進めながらそれをオープンしていく。これにより、視聴者は段階的に理解を進めることができる。一度に全部を見せれば一目瞭然と考えてしまうが、人間は情報を一つひとつ咀嚼していく生き物であり、すべてを一度に理解するのは困難なのだ。

・説明をする際は、説明を受ける対象者が誰かを明確にするところから始まる。子供向けなのか、お年寄り向けなのかで、説明の仕方は変わってくる。




【目次】

序章 情報活用力をいかに高めるか
第1章 私の情報収集術
第2章 私の取材・インタビュー術
第3章 私の情報整理術
第4章 私の読書術
第5章 私のニュースの読み解き方
第6章 私の情報発信術

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6月末は、中国へ出張。昨年の11月に出張した際は短期滞在だったが、今回は1週間。一番印象的だったのが、ネット環境の変化である。

前回はホテルのWifiからラインが使えたと記憶しているが、今回はまったく不通。同様に、グーグルやフェイスブックも完全シャットアウトであった。以前は、ホテルのなどの施設では、時々使えていたように記憶しているのだが、より情報統制が厳しくなったということであろうか。

今の中国の経済状況を見ると、それもうなづける。最近は新聞の国際欄や、未来世紀ジパングで情報を得る程度だが、GDP成長率が安定化してきており(それでも6%超の高い水準だが)、秋の党大会に向けてより微妙なコントロールが求められている時なのだ。

国民の不満がフェイスブックなどの書き込みを通じて拡大しないように、統制の利く中国企業のみが、SNSなどを運営できるという仕組みである。

一方で、経済効果への深慮遠謀もあるのかもしれない。今や日本では、グーグルやフェイスブック、アップルに対抗できる企業はなく、かろうじて楽天がアマゾンから日本市場を奪われまいと健闘している程度。しかしながら、中国では、国の規制によって、検索やSNS、ネットショッピングなどの分野で、それぞれ中国独自の企業が急成長している。

13億人という人口を抱える中国で、そのユーザーから得られる利益をすべて米国企業に持っていかれては、たまらないであろう。情報統制という名の、非関税障壁に守られた構図と言えるかもしれない。

こういった状況は、日本であれば「ガラパゴス化」と揶揄されるところであるが、さすがに13億人のマーケットがあれば、ガラパゴスであっても生き残っていけるのであろう。

加えて、中国独自のネット環境については、随分と便利になっているようである。今年の4月から駐在されている方に聞いたのだが、バスの行き先を知ることができるアプリがあるので、タクシーに乗って行き先を中国語で(あるいは筆記で)告げなくても、好きな場所に行けるし、バスの駅からは地図アプリが使える。また、出前アプリで好きな食べ物を近くのお店から出前することができるし、代金は決済アプリで支払うことができる。支払いアプリへのチャージもスマホでできるとのこと。こういったアプリを駆使すれば、最低限の中国語で何とか生活できるのだそうだ。

私が駐在していた頃は、スマホが中国でも市民権を得つつあった頃だが、私自身はダイヤルをプッシュするタイプのいわゆるガラケーを使用していた。(iPhoneを使い始めたのは、日本に帰任してから) 駐在員同士でちょっとしたメッセージを送るにも、日本語が使えないので、携帯のショートメッセージをピンインを使って打ち込んでいた。

タクシーに乗る際も、行き先を紙に書いて運転手に渡したり、目的地にたどり着くために事前に地図を印刷しておいたりと、苦労したのを思い出す。

しかしながら、一方で感じたのが、便利過ぎると言葉を話す必要性が薄れるのでは、ということ。タクシーに乗る際に、いつまでも紙に書いているのは格好悪いので、大きな声で目的地を告げて、結局運転手には通じたようで通じていなくて、行きたいところとは違う別の場所に連れていかれたり、といった苦労を通じて、語学を習得していったのだ。

言葉というのは必要に迫られた時が一番覚える時である。今の環境では、サバイバル中国語など必要ないであろう。一概に便利なのがいいとは言えないな、とも感じた1週間であった。

【大連の繁華街】
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【ホテルの前の大通り】
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5月まで毎日ブログを書き続けていたのが、6月になって激減。ブログが仕事や生活リズムのバロメーターにもなっているが、今回はどちらかというと、意図的にエントリーを減らしていた。

というのも、TOEIC受験に向けて集中的に文法を学習していたから。以前からこのブログでも書いているが、英文法が苦手で、ずっと避けていたのを、期間限定で頑張ろうと、次のTOEICまでという期限を区切って頑張ってみたのだ。

自宅に帰っても、時間があれば出来るだけ問題集に向かう生活を続けてみた。結果として、ブログのエントリーが少なくなってしまったという次第。

振り返ってみると、6月は書評のエントリーが一つもないが、本を読まなかったわけではない。読了して、書評を書かずにそのままになっていたのが、5〜6冊。こちらも、感想を書かなければと思うのだが、時間が経つと、億劫に感じてしまう。

週末に一気に書き溜めていくか、毎日コツコツ書いていくか、まぁ少し書き始めればまたリズムが戻ってくるであろう。

来週は中国に出張。久しぶりの海外出張で、忘れ物がないようにと過去の出張準備リストを眺めていたのだが、必要なものが何点か入れ替わっている。

一番変わったのは電子機器。以前は、海外出張というとパソコンが必需品だったが、今やスマホでメールが閲覧できるので、1週間程度の出張であれば十分仕事ができる。代わりにスマホ用のキーボード(ブルートゥースで繋ぐタイプのもの)が必需品になった。これがあるのとないのとでは、入力スピードが格段に違うのだ。

もう1つのマストアイテムはノイズキャンセリングのイヤホン。普通のイヤホンはいつもカバンの中に入っているのだが、飛行機に乗る際はノイズキャンセリングのものが非常に快適。快適さを求めるものといえば、アイマスクも重要。整髪が乱れない耳に引っ掛けるタイプのものを使っている。

その他はあまり変わらないだろうか。絶対忘れてはいけない三種の神器は(1)パスポート、(2)eチケット、(3)クレジットカード。これらがあれば何とかなる。(もしかしたら、パスポートがあればeチケットも無くても何とかなるのかもしれないが、持たずに行く勇気はない) ついつい忘れがちなのは名刺。それから、現地の方へのお土産も重要だと思っている。

◆必需品
□パスポート
□航空券(eチケット)
□クレジットカード

◆会社資料
□手帳
□必要書類
□名刺
□電卓
□筆記用具

◆携帯品
□財布
□外貨用財布
□外貨(残っていれば)
□時計
□ハンカチ
□ティッシュ
□ウエットティッシュ
□アイマスク
□保険証
□文庫本
□土産

◆情報
□緊急連絡先カード
□カードNo一覧表(紛失時)
□旅程表(時刻表)
□ホテルのコンファメーション
□訪問先電話番号
□訪問先地図
□ガイドブック

◆電子機器
□スマートフォン(個人)
□スマートフォン(会社)
□スマホ充電器
□スマホ用キーボード
□ノイズキャンセリング・イヤホン

◆着替え
□下着(上・下・靴下)
□Yシャツ
□ネクタイ(1本)
□上着(夏でも冷房対策必要)
□私服 (最低限)
□スリッパ(部屋履き)
□タオル
□歯ブラシ
□整髪料
□常備薬
□洗濯物袋(ビニール袋)
□予備バッグ
□折りたたみ傘

湊かなえ原作のドラマ。最近、映画を少し見る程度でドラマからは遠ざかっていたのだが、久しぶりに毎週楽しみにできるドラマに出会うことができた。しかしながら、湊かなえ原作のものは『Nのために』でちょっと残念な結末だったので、少し警戒しながら。。。

案の定といおうか、予想通りといおうか、途中までは非常に面白く楽しみながら見ることができたのだが、最終回とその前の週あたりで、一気にミステリーとしての完成度が損なわれてしまったように感じたのが残念だった。

ネタバレになってしまうが、☆広沢が蕎麦アレルギーだったのが途中で判明するのは、まだ許せるが、その直後に蕎麦を原料にしたハチミツのことを思い出すのは、偶然の要素が強すぎると感じたのだ。また、最終回の別荘で窃盗を重ねる若者のエピソードも、蛇足な感じがした。

『Nのために』もそうだったが、湊かなえの小説はミステリーとして楽しむのではなく、青春の物語として楽しむ方がよいのかもしれない。私自身、自分が大学生だった頃や、社会人になりたての頃を思い出しながら視聴していた。

そういえば、最初に『リバース』というタイトルを見たとき、主人公の深瀬がタイムスリップする物語だと勘違いしてしまっていた。第1回目を視ながら、深瀬はいつタイムスリップするんだろう、と変な期待をしながら視てしまった。。。

最近、雑誌などでマインドフルネス(瞑想)という言葉をよく眼にするような気がする。自分がちょっと疲れているための、カラーバス効果かもしれないが。記事によると常にアイドリング状態になっている脳は、意識して休ませないと休むことができないという内容。確かに、ちょっと気になることが頭に引っかかっていると、脳というのはずっと動き続けているのかもしれない。

仕事では、備忘のためもあって、やるべきことをToDoListとして全て書き出すようにしている。これは、もちろん忘れないためなのだが、逆に言うと「覚えておく必要を無くすため」でもある。紙に書き出すことによって、頭で覚えておく必要がなくなるので、その分、他のことを覚えておくキャパシティが広がる。

仕事以外でも、同じような効果があるのかもしれない。何となく、やらなければと思いつつ出来ていないいことがたくさんある。脳の掃除のためにも、書き出してみよう。

・押し入れの整理(引っ越しの際の段ボール箱がまだ10箱ほど手つかずで残っている)
・引き出しの整理(引っ越しの際、取り合えずと思って仕舞い込んだものの整理)
・断捨離(押し入れや引き出しを整理したうえで、不要なものを廃棄)
・住所変更(茨城に引っ越してきて、まだ住所変更できていないものが残っている)
・ドキュメンタリー番組の視聴(未来世紀ジパングなど。数えたら80本も未視聴)

押し入れや引き出しの整理は、数か所あるし、住所変更も銀行など数件ある。しかしながら、書き出してみるとたったの5項目。頭の中では、10も20も、未処理のような気がしていた。この程度であれば、週末頑張ればできてしまうのではなかろうか。こなしたらこなしたで、新しい雑用が出てくるのだろうけど、今週末は思い切って大掃除でもするかなぁ。

WOWWOWで放映されていたものを視聴。過去に一度視たことがあるはずなのだが、まるで初めて視る映画のように、少々興奮しながら楽しんだ。

高杉良の原作を読んで非常に面白いと感じたのは覚えているし、映画も視た記憶があるのだが、映像的なシーンをまったく覚えていないのだ。ストーリーの方は小説で2回読んだので覚えているし、役所広司、椎名桔平、佐藤慶といった主な登場人物のこともよく覚えているのに、銀行に検察が入るシーンや、元頭取が自殺するシーンなど、かなり印象的であるはずの箇所ですら記憶から抜け落ちている。人間の記憶の不思議さを改めて感じてしまった。(映画の感想よりも、妙なところに感心しているなぁ)

さて、舞台は1990年代、まだ総会屋などがはびこっていた時代である。総会屋に対する不正融資が問題となって、銀行は逮捕者まで出してしまう。このあたりは、原作の小説そのものが実話を元に描かれている。小説の初読は2000年。もう17年も昔の話だ。総会屋などという言葉も聞かなくなり、企業はグローバルな環境でより厳しい戦いを迫られている。日本の銀行も大きく変わったものである。

今回、作品を視て改めて感じたのは、正しいことを貫くことの大切さ。仕事を進めていく上で、妥協を求められることも多いのが事実。しかしながら、大きなことであればあるほど、妥協は退歩を意味するし、後悔を伴うものになるであろう。

2000年に本書を読んでいたころは、単純にこんな世界があるんだと興味本位の面白さに惹かれていたが、気が付いてみると、本書の主人公に近い年齢になっている。ミドルと呼ばれる世代。さて、私に主人公・北野のような覚悟と胆力はあるだろうか。

久しぶりにじっくりと映画を視た。先日も『セッション』という映画を視たが、こちらはどちらかというとサスペンス的な面白さに惹かれて。今回は、あえて少し重たいテーマを選択。1997年の作品で、一度視た記憶があるのだが、細かな内容は忘れてしまっている。

マット・デイモンが演じる主人公のウィルは、数学の天才的頭脳を持ちながらも幼少期から家庭に恵まれず、落ちぶれた生活を送っている。仕事はMITの掃除夫。ちょっとしたきっかけで、MITの教授に見いだされ、数学に関わることになる。その条件としてセラピーを受けることに。セラピーを担当する心理学の先生・ショーンを故ロビン・ウィリアムズが演じる。

この二人の友情が素晴らしい。最初は心に壁を作って自分を守ろうとするウィルだが、徐々にショーンの真摯な語りかけに心を開いていく。クライマックスのシーンは圧巻。「It's not your fault.」と何度も語り掛けるショーン。久しぶりに号泣してしまたった。

自分の可能性を信じるという一面、信じたいという一面、そして、自分をさらけ出すのが怖くて殻に閉じこもってしまうという一面。数学の天才的才能と児童虐待というウィルの境遇はかなり極端だが、我々一人ひとりもポジティブな才能とネガティブな環境を併せ持っているのではなかろうか。映画では、若さ故の葛藤が描かれていたが、年をとってから視ると、もっと澱の溜まった複雑な葛藤を自分の中に感じてしまった。

最後は一服の清涼剤を得たような爽やかな終わり方。心に慈雨をもらったかのような余韻。年を重ねて体には気を遣うようになったが、たまにはこういった別世界に浸って、心も休める必要があると思った。

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