Namuraya Thinking Space

― 日々、考え続ける ― シンプルで、しなやかに ― 

WOWWOWで放映されていたものを視聴。1997年の作品だそうだが、実は過去に視た記憶がある。しかしながら、内容はまったく覚えておらず、かすかにラストシーンのみが記憶にあるのみ。そのラストシーンが記憶にありながらも、息もつかせぬサスペンス仕立てで、ドキドキしながら見入ってしまった。

ストーリーの方は、最初からゲームであると明かされているのだが、どこまでがゲームでどこまでが現実かが、分からなくなってくる。その混沌とした不安感が最後まで続いていく。

この映画を視て、何か得るものがあったかというと、少し困ってしまう。強いて言うならば、仕事一筋では駄目だということであろうか。(主人公は投資銀行に勤める冷酷なビジネスパーソン)

それにしても、どこで視たのか何時視たのかすら記憶にない。映画館にはほとんど行かないので、恐らくレンタルビデオであろう。昔は映画もよく視ていたのだ。。。最近、勉強や読書にちょっと疲れており、たまにはこういったスリルを楽しむためだけの娯楽もよい気分転換になるなぁと感じた次第。。。

◇1697 『日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術』 >W・A・ヴァンス/阪急コミュニケーションズ

『パワー英単語100』という本が手元にある。ビジネスシーンなどで使用するワンランク上の単語集。例えば tell ではなく share を使ったり、say ではなく note を使うといった感じ。今の私のレベルにとっては非常に有用であり、しっかりと学習してみたいと思っている一冊。こちらはまだ完了していないので、感想は後日として、この本の筆者であるDr.ヴァンスが書いた英語に関するエッセイが本書。日本人の盲点とも言うべき点が満載。これは学校では教えてくれない、実践的な英語のための一歩になるであろう。

詳細な具体例は割愛するが、ポイントは下記の通り。指摘されなければ、ついつい使ってしまいがちな日本人的英語がたくさん例示されており、特に欧米人と接する際には、一度読んでおくとよいであろう。

・お礼を言う時はThank youだけでなく、appreciate や be grateful for を使用する。また、単にThank youではなく「for」を付けて、何に感謝をしているのか理由を説明するのが丁寧。

・I'm sorryは日本人がつい口にしてしまいがちだが、自分が悪いのか状況が悪いのかを考えたうえで、本当に自分が悪いときのみsorryを使用すること。

・相手が行ったことが聞き取れないときは、臆せず何度も聞き直す。聞き直す際のフレーズを覚えておくと便利。

・個々の発音にこだわるよりも、1つ1つの単語を伸ばしてゆっくりと発する方が英語らしく聞こえる。

・相手の言ったことに「very」や「really」を付けて繰り返すことで、相手のことをよく聞く人だと思ってもらえる。自分が何を言うべきかを考える為の時間稼ぎにも使える。

・メールでは感嘆符(!)を使用したり、強調したい単語を、括弧やハイフンで括って目立たせ、感情を少しだけ見せるのもコツ。 - late - 、(late)など。

・Noと言わずに、unable や difficult など、否定形を使用せずに断るとポジティブな印象を与えることができる。

・断るときはYes + but だが、相手の質問に Yes + and で会話を膨らませる。

・同義語であっても程度が異なる。どのレベル感かを意識することも大切。例えば「難しい」であれば、Formidable、Difficult、Challengingの順で程度が強→弱となる。

・メールの頭語と結語に留意する。コロン「:」やカンマ「 , 」の使い方にも注意。

・句動詞を使いこなせると、英語が上手だと見てもらえる。




【目次】

第1章 日本人の知らない意外な常識
第2章 相手の心理をつかむ英語コミュニケーション
第3章 今すぐできる少しの工夫で絶大な効果を得る
第4章 さあ、とんでもない誤解を解こう
第5章 ビジネスパーソンからプロフェッショナルへ

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「週刊経営財務」に掲載されていた記事。エーザイの常務執行役CFOである柳良平さんという方のもの。柳さんのことは存じ上げなかったのだが、東洋大学の客員教授もなさっており、論理と実務の両面を深く理解されている方だと感じた。5ページ程度の短い投稿だが、非常に示唆に富む内容であり、財務に関わる人は一読すべき内容である。

ちなみに、あまりにも感銘を受けたので、記事の末尾に紹介されていた柳さん著の『ROE革命の財務戦略』と『ROE経営と見えない価値』を早速購入。勉強せねば。

・基本的にCFOは企業価値を生む投資を可能な限り採択して積極的に将来のための投資を行った後に、配当で株主に資金を返還することを考える(残余利益配当方針)。この原則から考えるとキャッシュフロー計算書に記載されるFCFは全額株主還元にあてることが基本とも言える。なぜなら、FCFは営業活動から創出された(人件費や研究開発費は控除済み)キャッシュフローから資本的支出、つまり将来の成長のために必要な有形・無形の資産を取得する投資をまかなったうえでの「フリー」なキャッシュフロー(株主へ帰属する現金)だあるからである。

・過去の内部留保が過剰(過小)になれば株主還元を見直す必要もあろう。配当は損益取引ではなく資本政策であり、自己資本(比率)の増減に影響する。つまり、バランスシートの最適化も考えなくてはならないのである。

・過剰にキャッシュを積み上げるとエージェンシー問題が派生して経営者の保身につながるという考え(FCF仮説)もある。また、成長企業は無配でも投資を優先し、投資機会の限られた成熟企業は手厚い株主還元を行うべきというライフサイクル仮説もある。あるいは、配当政策が市場に示唆するシグナリング効果や、顧客たる株主の配当に対する要望に応える側面(ケータリング効果)もあろう。

・日本では配当神話が根強いが、実は米国は配当よりも自社株買いを重視する国であるため、配当性向ではなく、総還元性向で比較を行う必要がある。米国ではライフサイクル仮説でよりフラットな分布かつ、100%以上の総還元比率の企業が極めて多い。

・世界の投資家の求める配当政策は、圧倒的に「最適資本構成に基づく最適配当政策」である。これはCFOのバランスシートガバナンスとも言えるだろう。ガバナンスと資本効率の観点からは、配当性向よりもフリーキャッシュフロー仮説が示唆するエージェンシー・コストの削減や企業勝つの最大化を企図した最適資本構成が重要なのである。

・良質なガバナンスを有する企業の保有現金は「リアルオプション」になり、資本コストを上回る投資に有効に使う。あるいは株主に還元され評価される。しかし、ガバナンスの劣悪な企業の保有現金はエージェンシー・コストになる。すなわち、日本企業は一部の投資家から、「資本効率や資本コストが意識されず価値破壊の事業投資をする」「経営陣の保身のためにキャッシュを貯め込んでいて株主価値を破壊するおそれがある」とみなされている。

・バフェットは「配当性向30%等を目標に掲げる企業は多いが、なぜそれが株主にとって一番良いのかを説明している企業はほとんどない」「企業が内部留保を許されるのは今日のその1ドルが1ドル以上になると証明できるときだけだ」といった趣旨を述べている。

・日本企業は配当政策において「安定配当」「将来投資のための内部留保」を記載する傾向が強いことが確認された。それに対してグローバルな機関投資家は、日本企業の配当政策において「資本効率」を最も重視しており、配当政策の開示やIRでの説明に不満とするサーベイが報告された。また、国内投資家からも企業の配当・株主還元の方針が資本コストやROEに裏付けて合理的に説明されていない点が指摘されている。

◇1696 『図解CIOハンドブック』 >野村総合研究所/日経BP社

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになったが、今ひとつピンと来ていなかったというのが正直なところ。先日読了した『デジタルトランスフォーメーション経営』でも、概念は理解できるものの、じゃぁどうするんだという具体的な部分が今ひとつ見えていなかった。ところが、先日ある方と話をしていて、あぁそうか、これがDXだと腹落ちした。

一般的なDXとは、例えばIoTの技術を用いて、装置の稼働状況をデータとして常に把握し、予兆診断を行いメンテナンスの時期などを顧客に提案することを言う。もう少しかみ砕いて言うと「今までデータ化できなかったものをデータ化=デジタル化し、そのデータを活かして顧客への付加価値を上げる行為」のこと。デジタル化だけでは意味がなく、それを活かしたビジネスモデルを作り上げるところまでを含めての「DX」だと理解したのだ。

しかしながら、私のような経理の仕事でDXと言われても、なかなかビジネスモデルにまではたどり着かない。そこで考えられるもう1つのデジタル化によるメリットは生産性の向上であろう。今まで人間が手作業でやっていたことをデジタル化するのだ。

例えば経理の作業でいまだに煩雑なのが売掛金と顧客からの入金の照合・消込作業。毎月発生する実務だが、顧客によってはクセがあり、なかなか自社の売掛金とマッチしなかったりする。これを職人技でこなしているのが実態だ。しかしながら、AIを使用したりRPA(Robotic Process Automation)の技術を使用することで、従来手作業だったものが自動化される。こういった従来自動化できなかった部分にもスポットを当てて、自動化していくのも「DX」の一種と言えよう。

さて、本書ではそんなデジタル化時代におけるCIOの果たすべき職責についても詳細に解説されている。特に第1部は「デジタル時代の競争力強化」と、まさにど真ん中のテーマ。第2部以降は少し専門的な各論に入っていくので、概観を知りたい方は第1部のみでも読んでおくとよいのではなかろうか。



【目次】

序章 デジタル化がもたらす変化
第1部 デジタル時代の競争力強化
第2部 デジタル時代のITマネジメント
第3部 デジタル時代のITケイパビリティ 
第4部 デジタル時代のITリスク管理

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日経新聞[2018.06.16]「新釈漢文大系」全120巻が完結

私の手元には本シリーズの『貞観政要』と『韓非子』がある。それぞれ上下二冊セットだ。きっかけは『貞観政要』の全文を読みたいと思ったから。非常に示唆に富む内容であり、山本七平さんや出口治明さんの本で概要は知っていたのだが、巷には要約版しか出ていない。そんな中、見つけたのが本書である。

希少本なのか、Amazonで注文すると1冊2万円近くするのだが、発行元に直接依頼すると9000円程度の定価で買える。あの出口さんが「基本的に人に本を読めと言ったことはないが、本書だけは元同僚の岩瀬大輔さんに読むように勧めたとのこと。出口ファンとしても読んでおきたいと思い、取り寄せたもの。

少しずつ噛みしめながら読み進めているため、まだまだ時間はかかりそうだが、本格的に古典を読むのは初めてかもしれない。昔の人たちはこういった本を、それこそ中学生とか高校生の頃に読んでいたのだから、根本的な何かが違うのかもしれない。まぁそんなことを言っていても始まらないので、遅ればせながら少しずつ進んでいこう。

さて、こんなことを書いたのは、日経新聞に下記の記事が掲載されていたから。新刊書が書店に溢れる昨今、こういった本をじっくりと読み込む方が、差別化につながると思うのだが。。。



古典中国語、すなわち漢文で書かれた代表的な思想、歴史、文芸の文献を集めた「新釈漢文大系」(全120巻、別巻1、明治書院)が5月刊行の『白氏文集(十三)』で完結した。古代に始まる日中の交流を経て、漢文は日本語に深く根を下ろしている。原文に書き下し文、日本語訳、詳細な注釈を付けた同シリーズは、日本文化のルーツともいえる漢文に現代日本をつなぎ留める役割を担っていると専門家は指摘する。

1960年に第1巻の『論語』が刊行された。当初は『大学』『孟子』や『文選』『十八史略』など日本文化に大きな影響を与えた計22巻に限って刊行する予定だったが、研究の進展や読者の要望に応え、唐代伝奇小説、日本漢詩などにも収録範囲を広げた。

「誰でも容易に漢文を読めるようにした」。5月22日に開いた記者会見で、明治書院編集部の佐伯正美部長は編集のねらいを述べた。書き下し文に全て読みがなを振り、日本語訳は一読して理解しやすいように工夫した。注釈を充実させたためページ数は増え、全120巻のうち3分の1は500ページを超える。

面白いのは「余説」と題した項目。語釈にとどまらず該当の文章にまつわる歴史的な解説を加え、校注者の筆がさえる。「論語」の「子曰(いは)く、学びて思はざれば則(すなは)ち罔(くら)し。思ひて学ばざれば則ち殆(あやふ)し」の段では、漢学者の吉田賢抗が東京帝大法学部の入学試験でこのくだりを評論させたことがあったと回想する。大正〜昭和初期は左翼と右翼の思想対立が激しく「左の者は乱読し、右の者は狭く考えこんで、共に一方に偏するきらいがあった」。出題は「博学と思索の両立」を学生たちに諭す「老婆心」だったと記す。2000年以上前の孔子の言葉を日本人がいかに受容し応用してきたか、その一例が垣間見られる。

漢文を日本語に書き下した漢文訓読調の文体は、長らく日本の文章、中でも公的文書の規範をなす土台だった。だが筑波大の堀池信夫名誉教授によると近年は日本文化研究者の読解能力が低下し「資料を正確に読めていない論文が多い」。「漢文訓読は(中国語ではなく)日本語の技術」(堀池名誉教授)。「新釈漢文大系」などを通じて漢文訓読のモデルを次代につなぐことが「日本文化の防波堤になりうる」(同)という。

◇1695 『拡張の世紀−テクノロジーによる破壊と創造』 >ブレット・キング/東洋経済新報社

出張時に東京駅近くの大型書店で購入。平台にドンと積まれていたので、思わず手に取ってしまった。パラパラと目次を見ると、面白そうな内容。最近の私の興味にも通じるところがあり、さっそく読み始めたのだが、、、

残念ながら、私にとってはどこかで聞いた話の寄せ集めのように感じられてしまった。レイ・カーツワイルの『シンギュラリティは近い』をベースに、最新情報をアップデートしたような感じであろうか。

AI、ロボット、自動運転、ドローン、人工臓器とDNA治療、太陽光発電と蓄電、ビットコイン、などなど、取り扱っている分野は最先端で幅広い。テクノロジーの最先端で何が起こっているかを概観したい方にはお薦めである。また、こういった情報は常にアップデートが必要であり、同じような内容であろうと、ペンキを塗り重ねるように適宜本書のような情報に触れ続けるも大事なことである。

本書のよいところは、それぞれの技術を結び付けて未来を予想しているところであろうか。例えば、将来的には自動運転をする自動車が、所有者が使用するとき以外は、自分でウーバータクシーとしてお金を稼ぎ、そのお金をビットコインで蓄積し、保険料や電気代を支払う、というのだ。この場合、お金の所有者は自動運転をする自動車となる。自動車が銀行口座を持つ時代が来るかもしれないというのは面白い発想である。

また、本書を読んでいて感じたのが、スマホやそれに準ずるウェアラブルなデバイスを常に携帯する時代になり、その情報が常にトラッキングされる時代になれば、アリバイ工作などが難しくなり、犯罪が激減するのではなかろうかというもの。本書で直截的に触れられる内容ではなかったが、自分の行動や会話がすべて記録される世界になると、やましい行為までもが記録されてしまい、あるいは記録されていない行為があればそれはイコールやましい行為とみなされ、犯罪がやりにくい安心な世界が生まれるのではなかろうか。

最後に、本書で引用されていたビル・ゲイツの言葉が面白かったので引用しておきたい。何と1996年時点のものだ。「私たちはいつも、2年後に起こる変化を過大評価する一方で、10年後に起こる変化を過小評価するものだ」



【目次】

スマート化された生活

第1部 ディスラプションの250年
 テクノロジーによるディスラプションの歴史
 「拡張」の時代
 姿を消すコンピューター
 ロボットの優位性

第2部 スマート・ワールドの進化の仕方
 Human 2.0
 人間の「拡張」
 ライフストリーム、エージェント、アバター、アドバイザー

第3部 「拡張」の時代
 鉄道、航空機、自動車、住宅
 スマートバンキング、決済およびマネー
 「拡張」世界における信頼とプライバシー
 「拡張」都市とスマート市民
 新時代のエンゲージメント

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最近、新聞を読んでいて気になるのが中国ITの進化の速さ。私が駐在していたのはもう6年も前のこと。この6年で、大きく状況が変わっている。日本にいるとなかなか見えてこないが、駐在から帰任した方や、現地の同僚に話を聞くと、完全に日本の方が遅れている側面もあると危機感を抱いてしまう。

少し古い情報もあるかもしれないが、新聞記事や現地の方に聞いた話を箇条書きにして記録しておきたい。

・現在、中国ではほとんど現金を持ち歩かない。小さな商店ですらスマホ決済が可能。

・出前もスマホで対応可能。宅配の配達人が、都市部における新たな職として台頭してきている。

・電子マネーの発展は自販機の普及にも貢献している。従来は硬貨の流通地域が一部に限られていたため、自販機は少なかったが、スマートペイのおかげでスマート自販機が普及。コンビニに変わる存在として台頭してきている。

・米国ではAmazon Goなどの動画解析による無人コンビニが普及し始めているが、中国ではRFIDなどの電子タグを活用した無人店が登場してきている。

・習近平政権が目指すのは4つのAI特区構想。シンセンをヘルスケア(医療映像)特区(中心企業はテンセント)、杭州をスマートシティ特区(中心企業はアリババ集団)、合肥を音声認識特区(中心企業はアイフライテック)、雄安を自動運転特区(中心企業は百度)と定めた。これらの中心企業を総称して4大プラットフォーマーと呼んでいる。

これらは、消費者にとっても便利さを享受できる、よい動きだと思うが、一方では中国ならではの、ちょっと怖いと感じさせられる一面も。

・コンサート会場に来ていた指名手配中の容疑者が、顔認証で逮捕された。中国の監視カメラは全国で1億000万台を超えており、現在も増え続けている。人工知能により、毎秒30億回というスピードで照合する。全国民14億人を1秒もかからないでふるいにかけることができるとのこと。

・欧州では個人情報の保護に向けて規制が強化される動きがあるが、中国にそのような規制はない。中国の研究者とスタートアップ企業は、世界では一般的なプライバシーとセキュリティーの制約を受けずに、DNA情報などを含む「人間のデータ」を大量に準備できる。

・フェイスプリントと呼ばれる顔認証による本人証明は、金融取引に使用できるほどセキュリティが強固だが、中国ではこの情報を警察が享受しており、大規模な監視のために利用している。

・ドローンで隠れている人間を見つけ出すという、AI兵器に近しいものまで開発中。ドローン技術については、中国が米国に追いつきつつある。

◇1694 『知らないと恥をかく世界の大問題9−分断を生み出す1強政治』 >池上彰/角川新書

書店に並んでいると迷わず買うようにしているのが本書。8冊目をつい最近読んだと思ったら、もう9冊目が発刊。1年に1回くらいのペースだと思うのだが、歳をとったせいか、サイクルがとても早く感じる。

最近は、時間がなくても新聞の国際欄にだけは目を通すようにしている。以前であれば、まずは経済欄、次に国内のニュース、最後に国際欄という順番だったのだが、新聞の読み方も変わってきた。日本の政治も重要なのだが、森友・加計問題と国際問題のダイナミズムを比べると、どうしても後者の方に目が向いてしまう。また、国際情勢の気になるキーワードを、手帳に書き留めているのだが、そうやって意識をしながらニュースを読んでいると、ある程度の情報は理解できるようになってくる。

そんな状況なので、本書で書かれていることは自分にとっての復習のようなもの。あるいは、自分が集めた情報に欠落しているものがないかを確認するようなものである。幸い、大半は知っている情報であったが、初めて聞いた話についてのみ、記録しておきたい。

・オサマ・ビンラディンの息子、ハムザ・ビンラディンがメッセージの発信を開始。アルカイダ復活の兆しとも見られている。

・イギリスのEU離脱に一番積極的だったのは漁業関係者。イギリス近海の漁業権をEUから取り戻したいという声が強かった。(イギリスはEUの前身であるEECに遅れて加盟したため、加盟の条件としてイギリス近海の豊かな漁場で他の加盟国が漁をするのを認めていた)

・習近平が独裁色を強めているが、一強になったがゆえに、日本との距離が縮まるかもしれない。過去に胡耀邦が日本に近づきすぎて批判を受けてから、中国共産党幹部にとって日本と仲良くするのはタブーであったが、習一強体制であれば、批判を恐れることなく、日本との関係改善を図ることができる。

・韓国は朝鮮半島の休戦協定の当事者ではない。ここで戦争を終わらせるわけにはいかないと署名をしなかった。休戦協定には、北朝鮮と中国、国連軍の3者が署名している。

・ミャンマーのロヒンギャ問題は、日本軍に端を発している。太平洋戦争中にビルマ(現ミャンマー)に日本軍が攻め入った際、イギリスはイギリス領インドにいたロヒンギャに武器を持たせた。一方日本軍は仏教徒に武器を与えてイギリス軍と戦わせた。日英の代理戦争で仏教徒とイスラム教徒が対立し、今の構図が生まれた。日本軍がビルマへ攻め込まなければ、対立はなかったかもしれない。

・インドネシアのチャイナタウンは、世界で唯一漢字表記がない。これは、インドネシアの共産党員に対して毛沢東から何らかの指示が漢字でなされる可能性があると、インドネシア政府が考えたから。昔は漢字で書かれた本の持ち込みも禁止されていた。

日経新聞[2017.11.09〜2018.04.30]田中角栄のふろしき

田中角栄については、意外と知っているようで知らないことを再認識。よくよく考えてみると、石原慎太郎の書いた、今ひとつの伝記を読んだ程度で、きちんと角栄氏の人生をなぞったことがない。一度、ちゃんとした伝記なり記録を読んでみる必要があるなと思わせられた記事。

ちなみに筆者である小長啓一さんとは少しだけゆかりがある。アラビア石油の社長としての小長氏しか知らなかったのだが、こんなに大変な仕事をしていたとは。また、この記事では書かれていなかったが、巡り巡ってアラビア石油の社長になったのだろうなと、想像力をたくましくさせられた。

さて、日経新聞に半年に渡って連載された記事は、私にとっては初めて聞く話が多く、非常に興味深い内容であった。現代史なども少しは勉強したつもりであったが、この時代というのはちょうど抜け落ちてしまっていたのかもしれない。記事は、田中角栄が通産大臣に就任する頃から始まる。日米の繊維に関する貿易摩擦を、日本からの繊維製品の輸出を規制した上で、繊維業界が抱える古い機械を政府が買い上げるというウルトラC。問題はカネだけかと問い、2000億円もの資金を投入して問題を一気に解決してしまったとのこと。

日本列島改造論では、新幹線によって日本に背骨を通し、並行して高速道路網で「面」を形成していくという発想。私は中国に駐在したことがあり、シンセンという元は漁村だった土地から一大都市を生み出した発想力や構想力の大きさに驚いていたのだが、日本にも大きなスケールで考えることができる人がいたんだと、感慨深い思いを抱いた。

その発想は努力に裏打ちされたものだ。毎日、18時、19時、20時と3つの宴会をはしごし、家に帰って22時には寝てしまう。その後2時に起床し、朝まで資料を読み込むというのだ。角栄氏が読むための資料を準備していたのは小長氏をはじめとする参謀たち。毎日0時に次の日に読むべき資料を角栄氏のポストに届けたという。

極めつけは欧州勢との資源外交。特にすごいと思ったのは「石油のスワップ」という奇策。英国の北海油田の権益を持つメジャーであるBPなどから日本が権益を譲り受けプロジェクトに参画、石油を掘る。しかしこの石油は日本には持ってこず、欧州の消費に振り向ける。代わりに日本にはBPがアジアに権益を持つ鉱区で採掘された石油を回す。こうすれば時間を短縮できるし、輸送コストも抑えられる。角栄氏が練りに練ったスワップ方式だったとのこと。

今でこそ、金融業界ではスワップなど当たり前のテクニックなのかもしれないが、当時、このようなスキームを考えだした発想力と慧眼には感心してしまう。

今回のコラムは資源外交のシーンで終了しているが、その後角栄氏はロッキード事件に巻き込まれていく。これは、欧州との資源外交をやり過ぎて、アメリカの虎の尾を踏んだのではないかとも言われている。歴史にイフはないが、ロッキード事件なかりせば、日本はどんな国になっていたであろうか。

田中角栄のことが好きか嫌いかと聞かれると好きではないが、それでも時代が求めた政治家であったのであろう。また、努力家であった点はきちんと評価したい。自分がやるべきと決めた仕事に全身全霊で取り組む。この姿勢はどんな仕事にも共通するものである。

◇1693 『戦略参謀の仕事−プロフェッショナル人材になる79のアドバイス』 >稲田将人/ダイヤモンド社

本書は装丁がシンプルで書店で思わず目を止めてしまった。著者が稲田さんと知ってすぐに購入。稲田さんの本は何度か読んだことがあるのだが、論理の部分と情理の部分とが、うまく折り合っていて読みごたえがある。本書でも、数々の経験に裏打ちされた、企業内部で起こり得る裏事情=人間関係の面倒臭さにまで踏み込んだ解説があり、読み応えのある本ながら、一気に読了した。

一点だけ残念だったのは、他の著書では感じなかったのだが、何となく自慢気に思える描写が何度かあったこと。コンサルタントというのは実績勝負であり、主張したもの勝ちの世界なので、ある程度はやむを得ないのであろうが、参謀役は謙虚であれ、というコメントに反するようにも感じてしまった。まぁこの辺は好みの問題なので。。。

それでは気になった箇所を要約して引用しておきたい。

・ビジネスマンの本来のあり方は、磨いた自分の腕で、企業を通して世の中に貢献すること。

・トップに対して、呆れ、怒りがこみ上げてくるくらいまでに、同じ目線で事業、会社のことを考えることができているならば、経営者としての疑似体験をしていることになる。磨いた腕は社外にまで目を広げれば、ヘッドハンターを通して切望されるものとなる。だから社外のしがらみにとらわれず、思う存分挑戦すればよい。

・組織としての「学習」を行うためには「理」にかなった形で「言語化」した表現が必須。これにより、失敗した時も、どこに読み違いがあったかが明確になる。言語化されてはじめて、組織として学習できるのだ。

・「リーダーシップとは敬服される状態を言う」 日本リテイリングセンター・渥美俊一先生

・トップよりも、業務の現場に近い生々しい声が入り、情報を持ったうえで、トップと共に全社視点でフェアに課題を考え、課題に対応ができる役割、人材や体制を「参謀」としてトップ周りに配置できるかどうか。

・参謀は、上下双方向からの相談相手であり、ダンパー(緩衝)機能でもあるため、組織からの「信頼」がもっとも重要。それゆえ参謀役はむやみに組織の中に敵をつくっていいものではない。その一方で、仮に敵をつくってしまっても、後ろには多くのまっとうなサイレントマジョリティがいることを忘れてはいけない。

・トヨタグループでは「初めてのことに着手する時は、まずCから」と言い、ホンダではPDCAを、問題の「見える化」から入るCをはじめに持ってきて「CAPD(キャップドゥ)」と呼んでいる。

「戦略」はどんなに精緻に作り上げても、ただの精度の高い「初期仮設」である。

・「人、性善なれど、性怠惰なり」

・問題を解決するにあたり、「見える化」の工夫を惜しんではならない。参謀役としては基本的にファクトをしっかりと的確に「見える化」し、その前提で議論が行われるようにしなければならない。

・根拠が希薄であっても挑戦を辞さない人は、自分を信じることができている、つまり何とか自分のPDCA力で乗り切れるであろうという自信がある状態。

・PDCAを廻すためには次の3つが必要。(1)報告のための帳票づくり、(2)会議体そのものの設計、(3)ルーチン系の定例業務の場合はPDCAを廻す業務の定義、業務フローへの組み込みと、その業務手順の明確化。

・Cの際に責任者が確認すべきことはシンプル。今の課題は何かを問う。理に適った形で、分かるように、事実を元に意味合いを抽出し、対策の説明を求める。分かるまで聞く。分かったら次に進ませる。

・参謀役に求められるのは、五感を通して現場を知り、問題があったときに「誰よりも早く、経営目線で最も的確な仮説を思いつくことができる」能力である。

・必要以上に抵抗する人をつくらぬように、常にリスペクトをもって、謙虚な姿勢で丁寧に関係部署と接する。必ず、ファクトベースの議論に持っていき、論点や積み残し課題をあいまいにしない。




【目次】

1 企業における参謀とは、どういう存在か
2 なぜ、参謀機能が必要になるのか?
3 参謀の基本姿勢とマインドセット
4 戦略とは何か
5 問題解決の基本は、MECE×ロジックツリー+仮説思考
6 必修の経営知識と実践知
7 組織のPDCAを正しく起動し、事業運営力を磨き続ける
8 人間の「業」に対処する

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私が文房具好きなのは、このブログでも何度か書いてきているが、最近は定番の筆記具が定まりつつある。普段使いは青色のゲルインクボールペン、チェックや注記・下線は赤色のフリクションボールペン、マーカーは無印良品のノック式のもので、オレンジか黄色を愛用している。

青と赤のペンはそれぞれ0.7mm。すらすらとした書き心地が好きなので、細字よりも太字の方がよい。フリクションボールペンが出る前は、4Bのシャープペンシルを愛用していた。そういえば、シャープペンシルを使わなくなって久しいなぁ。

青色のゲルインクボールペンについては、三菱のSignoというシリーズが好きだったのだが、0.7mmが販売終了になってしまっている。中国赴任前なので、もう10年以上前になると思うが、以前は同じシリーズのブルーブラックを愛用していたのだが、こちらは早々に販売終了。やむを得ず青色を使用していたのが、こちらも販売終了とは。。。

たまたま、買い溜めをしておいたので、手元にまだ30本ほど残っているのだが、消耗品であり、月1〜2本は使用してしまうので、果たしていつまで持つことやら。ちなみに、AmazonでSignoの青色0.7mmを買おうとすると、1本4000円の値段がついている。本当に買い手がいるのなら、私の手元には12万円分(4000円x30本)のお宝があることになるのだが、、、

さて、基本的に筆記用具は、ノック式の方が便利で好きなのだが、Signoに関してはグリップの握り心地が最高なため、キャップ式でも文句なしに使用している。ただし、会社ではチョコチョコとメモを取ることが多いので、ノック式の方がよい。家で、読書をしながらノートを取ったり、考え事をしながら書くときにはキャップ式でも十分。

0.7mmの方は、仕方がないのでZEBRAのSARASAに乗り換え。SARASAの普及版はグリップの握り心地が今ひとつなので、好きではなかったのだが、最近、SARASAのノック式高級軸を発見した。こちらはなかなかの握り心地である。SARASAシリーズは、色も線の太さもバリエーションが多く、久しぶりにブルーブラックに戻ろうかとも思ったのだが、慣れてしまうと青の発色も捨てがたい。しかもSARASA DRYという速乾性のインクも出ており、まだどれにしようか迷っているところ。

Signoに関しては、青色で1.0mmというリフィルが発売されている。試しにAmazonで取り寄せてみたところ、手元にある0.7mmの軸との互換性もあり、書き心地も滑らか。唯一の欠点は、1.0mmだと太すぎることだろうか。細かい字だと潰れてしまうので、ついつい文字が大きくなりがち。

しかしながら物は考えようで、大きな文字で必要最低限のことだけを書き留めるというのも、よいのかもしれない。私はメモ魔で、何でもメモしてしまい、結果として読み返すことが少なくなってしまっているので、むしろメモの量を減らして、本当に記憶・記録に留めるべきもののみを、メモするようにしてみよう。あえて太字のペンを使って。

◇1692 『不機嫌な職場−なぜ社員同士で協力できないのか』 >高橋克徳/講談社現代新書

筆者は高橋克徳さんの他に、河合太助さん、永田稔さん、渡部幹さん。4名での共著である。この内の1人、渡部さんがダイヤモンドのオンライン版に投稿していた記事が面白かったので、本書を購入してみた。

先にダイヤモンドの記事を紹介しよう。飲み会を断り続けている対照的な2人の話だ。Bさんはシングルマザーで子供の面倒を見なければならないのと、将来のために資格をとっておきたいと勉強しているため、飲み会には参加できない。もう一人のCさんは、若手社員だが職場の上司との折り合いが悪く、他では自分で飲み会を企画するくらい社交的だが、職場の飲み会には参加しない。

Bさんは飲み会には参加しないが、仕事はきちんとこなす。相手の立場を理解しつつも、仕事として譲れないところはきちんと主張する。限られた時間の中ではあるが、自分でできることは率先して行う、など普段の気遣いや仕事ぶりがきちんとしているため、職場からは頼りにされる存在。一方のCさんは職場の集まりには出ず、孤立しがち。何でも自分一人でこなそうとして結局ミスが頻発という悪循環に陥っていた。

また、Bさんは厳しい上司や、うるさい取引先の課長などに対しても、相手がどういう状況かときちんと理解した上でコミュニケーションしており、気難しい相手にも気に入れらるような存在。

渡部氏曰く「不機嫌な職場の解消のために必要なのは、仕事の場での会話の中でも効率的に相手を理解し、相手に自分を理解させる「エフェクティブコミュニケーション」だ。無理矢理に皆が集まる「飲み会」などではない。『不機嫌な職場』を読んだ読者の方々から、「やはり飲み会は大切だということがわかった」といったコメントを多くいただいた。そのこと自体は否定しないが、「コミュニケーションの取れない飲み会」ならば意味はないということも、また強調しておきたい」とのこと。

私自身、飲み会は嫌いではないが、酒に強い方ではない。なので、酒が飲めない人や酒席が嫌いな人の気持ちも何となくわかる。また、自分は非喫煙者だが、喫煙者の方々が喫煙室でのコミュニケーションが重要だというのもわかる。が、非喫煙者の私にとっては、こういったコミュニケーションが出来ないのは不公平なのではと感じたことがある。ということは、酒を飲まない人にとっても、飲み会が不公平だと映っているかもしれない。

コミュニケーションの手法というのは人それぞれであり、複数あってよいもの。酒席がダメなひとにはランチミーティングでもよいし、タバコを吸わない人とはお茶を飲みながら話してもよい。これらはあくまでも場であって、重要なのはコミュニケーションの中身ということであろう。

さて、前置きが長くなってしまったが、このダイヤモンドの記事に感銘を受けて、そこで紹介されていた『不機嫌な職場』を手にしてみたのだが、、、個人的には内容は今ひとつ。現在の職場は昔ほど他部門とのかかわりが強くなくなってしまい、成果主義という名の元、責任や役割が細分化され与えられた仕事だけをやっていればいい、他部門や同僚の仕事には余計な口を出さない方がいい、という風潮が強くなってきているとのこと。

その解決方法として、職場のコミュニケーションの事例が紹介されているのだが、何となく物足りなく感じてしまった。渡部さんのダイヤモンドの記事の方がよほど説得力があり、実践的だと感じたのだ。

本書は後半の解決策よりも、前半の現状分析の方が優れていると思う。何となく感じている職場での不安や不満を、分析し、言語化してくれている。管理職になると見落としがちな大事な視点に気づかせていただいたと思う。個人の力だけがスポットライトを浴びており、個人のつながりの部分がおろそかになっている。これが品質不正などを生んでいるのではないかという分析だ。

組織にはいろいろなタイプの人間がいるのが当たり前のこと。個々人の個性・特性を「つなげて」いくことが、チームを強くする力になるのだが、そのためには本当のコミュニケーションが大切だということであろう。



【目次】

第1章 いま、職場で何が起きているのか
第2章 何が協力関係を阻害しているのか
―協力関係を阻害する「構造的要因」
 ・進む組織のタコツボ化
 ・評判情報流通と情報共有の低下
 ・インセンティブ構造の変化
第3章 協力の心理を理解する
第4章 協力し合う組織に学ぶ
 ・グーグル
 ・サイバーエージェント
 ・ヨリタ歯科クリニック
第5章 協力し合える組織をつくる方法
―協力関係再構築に必要な姿勢/経営者の責務
 ・役割構造に対する工夫
 ・評価情報に対する工夫
 ・インセンティブに対する工夫
最終章 協力への第一歩の踏み出し方

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二宮和也さんの迫真の演技が素晴らしく、医療モノの手術シーンが苦手な私が、最後まで見届けたドラマ。原作がミステリーであり、体内に残されたペアンの謎を解くという構成も私好み。途中、少し中だるみ感が無きにしも非ずだったが、ラストの2回はなかなか見ごたえのあるドラマだった。

スナイプやダーウィンといった最先端の医療技術と、昔ながらのメスによる執刀。機械対人間の対立が隠されたテーマかと思いきや、ラストでは佐伯教授が人間の技術と機械の技術の両立こそが医療にとっては必要というセリフを吐く。なるほど、人間と機械とは対立するものではなく、協働するもの。これはAIやロボットなどが台頭しつつある現代に通ずるテーマであろう。

また、「医者はただただ患者の命を救うだけ」というシンプルな哲学も心に響く。果たして、経理の仕事は何に向かっていけばよいのだろうか、などとまたしても考え込んでしまいそうになる。一時期は、自分の仕事や勤務先に疑問を持ったこともあったが、今は自信を持ってこう言える。経理の仕事は裏方かもしれないが、営業や技術者が世の中に貢献しているのを、陰で支える存在である。会社が健全な利益を稼ぎ、営業や技術者が適切な戦略を立てられるよう、社内のデータを可視化するのが使命である、と。

◇1691 『日本再興戦略』 >落合陽一/幻冬舎

会社の先輩から紹介していただいた本。最近、大型書店に行く機会が減ったので、こういった口コミの紹介は貴重である。ありがとうございました。

さて、本書は大きく2つのパートに分かれていると理解した。前半は日本の再認識。他国に比べて何が得意で何が苦手なのか。歴史や文化も踏まえて振り返りを行っている。後半は、その分析を踏まえて日本は何をすべきか、どこを目指すべきかを提言している。

正直な感想を言うと、前半は素晴らしい、非常に面白かった。しかしながら、後半は現状の国際政治情勢や技術トレンドを踏まえての提言であり、前半ほどぶっ飛んだ感じがせず、少々物足りなかった。よって、前半部分を中心に興味深かったところを要約して引用。

・「指数関数的成長にとって、全ての点は、いつでも始まったばかりだ」

・「変わり続けることを変えず、作り続けることをやめない」

・日本人は外来的に入ってきたものをすべて「欧米」とひとくくりにし、いろんな分野で各国の方式を組み合わせてきた。当時は機能した「いいとこ取り」が、時代の変化によって「悪いとこ取り」に陥ってきている。「いいとこ取り」の旧い最適化モデルを変化させなければいけない。

・まずは日本が近代化以前に得たものと、近代化以後に得たもの、そして我々が今適用しないといけないものをしっかりと整理することが大切。そのうえで、欧州のどこを真似するかという議論は一旦やめて、そもそも「日本には何が向いていたのか」、そして「これから何が向いているのか」を、歴史を振り返りながら考えていかないといけない。

・日本人は公平にこだわり、平等にこだわらない。平等とは対象があって、その下で権利が一様ということ。何かの権利を一カ所に集めて、それを再分配することによって、全員に同じ権利がある状態を指す。それに対して、公平はフェアだということ。システムの中にエラーがない事や、ズルや不正や優遇をしないということ。日本人はゲームがフェアであることは意識するが、権利が平等であることはあまり意識しない。(試験のカンニングは公平ではないと指摘するが、公教育の地域格差などの不平等には無頓着) これは江戸時代の士農工商のような制度に違和感をさほど抱いていなかったことにも通ずる。

・アジアは昔から何かを分断する考えをよしとしない。個人と個人以外、対象と対象以外というように分断する行為は、世界が調和によって成り立っていた安定状態を破壊してしまう行為であると荘子は主張している。つまり、西洋思想の二分法の考え方は、アジア的な安寧に関する感覚、美的感覚や価値観とは合わない。

・西洋的思想の根底に流れるものは、個人が神を目指す、全能性に近づいていく思想。人間はどこまで行ったら最強の個人になれるか、神になれるかという勝負であり、つねに神と対峙し、神に許しを請う思想。これに対して東洋的思想とは、一言で言うと「自然」であり、自然の中にある同質性・均質性にひもづいている。

・これからの日本人にとっては、西洋的人間性をどうやって超克し、決別し、更新しうるかが重要。過去150年くらいにわたって日本が目指してきた、西洋的人間観と文化との齟齬に、どうやって戦いを挑むかという問いに直面している。

・俳句などのコンテクストを理解するためには、東洋文化を理解する必要がある。理解できないのは自分のせいだから修行しようという精神が求められる。わかりにくいものを頑張って勉強することで理解していくのが東洋的な価値観。一方、西洋の精神は個人主義で、みなが理解する権利があると考える。もし内容が理解できなければ、「わかりやすくインストラクションしないお前が悪い」という精神であり、読み手のところまで降りていかなければならない。

・日本は西暦645年の大化の改新を経て、天皇という統治者と官僚という執行者を分けた方が国は上手く治まるという考え方を築き上げた。他の国の歴史を見ると、誰が王になるかという王座の争いを1400〜1500年代まで繰り返していたが、日本はこれに先駆けて今の統治体制に到達した。これは「日本とは何か」を考えるうえで、知っておかなければならない基本。

・日本は天皇一神にならず、八百万の状態となった。神の連合会議を用いてそれ自体をも信仰するという特徴は、他の国ではあり得ないものであって、明らかにイノベーティブなデザインだと考えられる。

・インドのカーストは仕事を定義する制度だが、我々日本人が考えるよりもその意味は広い。例えばこれまでドアを開ける仕事をしている人が、自動ドアの普及で仕事がなくなったらどうするか? 自動ドアを設置する会社に勤めるそうだ。カーストがあると職業選択の自由はない反面、ある意味の安定が得られる。未来においても自分の子供が同じ仕事についているだろうと分かる安心かつ康寧な制度だともいえる。

・インドのカーストに当たるのが日本の士農工商制度。これは現在にも応用できる。「士」は政策を決定する政治家や官僚、新しいことを考える学者などクリエイティブクラス。「農」の中心は百姓だが、百姓とは単なる農民ではなく、生業が100個ある人たち。いわば自営業者、マルチクリエーターであり、100個くらいの職業を職のバリエーションとしてポートフォリオ・マネジメントする人たち。「工」は専門家で、クラフトマンシップを追求する人。一本足打法のクリエーター、つまり職人。「商」がビジネスパーソン。企業のホワイトカラーや、金融を扱う人々。農と工は明らかにモノを生み出しているが、商は生産には関わらない。商はゼロサムゲームを行うため、多すぎると国が成り立たなくなる。


後半は前述のとおり少々物足りなかったのだが、それでも面白いなと思ったのが2点。1つ目は、今後は自動翻訳の技術が飛躍的に高まるため、外国語の習得よりも正確な日本語の習得の方が重要になるという指摘。つまり、「ごはん、何食べる?」と聞くとランチかディナーかの判別ができないが、「夕食は何を食べるか?」と聞くとディナーと訳される。こういった日本語に潜む曖昧さを排除した話し方が必要というもの。

2つ目は日本は少子高齢化で人口が減っていく社会。こういった社会ではAIやロボットが人間の仕事を代替していくことへの抵抗感が少なくなる。仕事を奪われというネガティブな反応ではなく、足りない労働力を補ってくれるというポジティブな反応を得やすいというもの。

それにしても、本書の著者である落合さんは29歳。恐るべき才能である。本書は結構売れているらしいが、どういった年齢層の方が読んでいるのだろうか。是非とも20代くらいの若い世代が読み、刺激を受けてもらいたいものである。



【目次】

はじめに なぜ今、僕は日本再興戦略を語るのか?
第1章 欧米とは何か
第2章 日本とは何か
第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか
第4章 日本再興のグランドデザイン
第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)
第6章 教育
第7章 会社・仕事・コミュニティ
おわりに 日本再興は教育から始まる

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自閉症の主人公が、裏社会の会計士として生計を立てていたところ、とある会社の不正を見抜いてしまい、その会社から依頼を受けた殺し屋に狙われるという話。主人公の会計士は父親が軍人であったため、幼いころから武術や銃火器の技術を叩き込まれており、殺し屋たちに立ち向かっていくというアクション映画。

主人公が会計士というのが面白く、ついつい最後まで見入ってしまった。また質素で規則正しい生活や、表の顔の会計士としての堅実な仕事ぶりも興味深い。こういった描写が前半に積み上げられていくため、視聴者の1人としては、主人公である会計士に感情移入していく訳だが、襲ってきた殺し屋を返り討ちにするのはまだしも、悪徳会社役員などもあっさりと殺してしまうのは、いかがなものかと感じてしまった。

要所要所で、電話で主人公を助ける女性の正体も、ラストでは明かされており、こちらも非常に納得感のいく仕上がり。また、ネタバレになるが、☆主人公は最後まで逮捕されることもなく、一見ハッピーエンドのような終わり方をしている。これだけ殺しておいて、いいのかな、と、疑問を感じてしまった。正義のためなら殺人を犯してもいいのか、という単純な疑問である。

まぁアクション映画とはこういったものであり、他の映画も似たり寄ったりなのかもしれないが、悪徳会社役員だけは、生かしておいて罪を償わせるべきではなかったか。正義のためには手段を選ばない、つまりは、米軍のテロ対策という名のもとの中東への空爆などを、暗喩的に肯定するような作品だとも感じてしまった。

◇1690 『仕事が速いのにミスをしない人は何をしているのか?』 >飯野謙次/文響社

自分のスキルアップのために、この手の本を買うことは無くなったのだが、最近は後輩の育成を考えて手に取ることが多くなった。過去に買ったノウハウ本も、一部は手元に残して置けばよかったかもしれない。こういったシーンで読み返すことは想定していなかった。

人が仕事をしている限り、ミスというのは避けられないもの。だから、ミスを責めるのではなく、なぜミスが発生したかの真因を突き止め、仕組みを改めることを重視している。とはいうものの、もう少しシステマティックにミスの防止ができないだろうかと手にしてみた。著者がスタンフォード大学の工学博士というのも読もうと思った理由。ロジカルにミスの発生防止を突き詰めているのではないかと期待したのだ。

読み進めてみると、ごくごく当たり前の内容が書かれている。既知の情報は排除して、なるほどと思ったところを中心に記録しておきたい。

・チェックリストはアメリカ式の方が使いやすい。日本だと「水槽温度の適性を確認する」というチェック項目だが、アメリカの場合は「水槽Aは60度Cより低くない」「水槽Aは80度Cを超えていない」というチェック方法になる。曖昧さを排除したチェック項目にすることで、個人差をなくしている。

・ダブルチェックの本質は「同じ確認を2度」ではない。2人目はチェックリストをひっくり返して、逆さまに確認するのも一手。見る人、見方、見た目を変えるのが効果的。

・勘違いや認識の差による失敗を防ぐため、指示されたことを一段階ほぐして言い換える。部長「例の書類3日後までによろしく」→部下「見積書と提案書を24日の17時までに部長にお渡しすればよいですね」 ・・・指示する側もあいまいさを排除した依頼方法を心掛けるべき。

・失敗は「注意不足」「学習不足」「計画不良」「伝達不良」から発生する。




【目次】

1章 なぜあの人は、仕事が速いのにミスをしないのか?
2章 仕事の質とスピードを同時に上げる方法 入門編
3章 うっかりを防ぐ「最小・最短・効率」仕事術
4章 メールを制する者が、ビジネスを制する
5章 自分のパフォーマンスを最大まで高める仕事術
6章 「ずば抜けた仕事」の決め手となる人間関係とコミュニケーションのコツ
7章 仕事の質とスピードが同時に上がる逆転の発想法
8章 「自己流・万能仕事術」のつくり方
9章 自己実現を最短でかなえる仕事の取り組み方

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韓国でヒットしたドラマを日本版に焼き直したもの。初回を見逃してしまい、2回目から見始めたせいもあるだろう、最初は、時系列が複雑に入り組み過ぎていてストーリーを追うのに精一杯。正直、分かりにくいドラマだなと感じていた。最近は、視聴率を稼ぐためであろうか、週末の昼間に見逃したドラマのダイジェスト版を再放送してくれる。これを見て、漸く全体像が見えてくる。最初は3つの時点が入り組むため、複雑に感じるが、徐々に現在と過去という2つに収斂されていくので、分かりやすくなっていく。そうなると、先が読めないストーリーが面白くなってきた。

このドラマのキモは、壊れたトランシーバーがいきなり動き出し、過去の刑事と通信ができるというところ。いつも23:23という決まった時間に数分だけ交信できる。この過去との通話を利用して、事件を解決しようとするのだが、なかなか思うようには進まない。日本のドラマであれば予定調和的に、助かったであろう人物が、過去を変えることができず助けられないかったりと、なかなか一筋縄ではいかない展開も面白い。韓国ドラマはほとんど見たことがないが、これは純粋に面白いと感じた。

最近の悪い癖で、ドラマなどを見ていても主題は何かと考えてしまう。このドラマは、大山というひたむきで正義感溢れる刑事が、微力ながらも巨悪に立ち向かうという構図。何事も諦めなければ成就するという箴言だろうか。あるいは、変えられたかもしれない過去、という誰もがもつ憧れのようなものを具現化したものであろうか。

ラストは若干思わせぶり、意味深な終わり方ではあったが、3カ月間楽しむことができたドラマ。今度、WOWWOWで韓国版のオリジナルの方を放映するようなので、こちらも見てみようかなぁ。

◇1689 『決定版・上司の心得』 >佐々木常夫/角川新書

東京に出張した際に、駅の書店で購入。駅の書店は上野駅の方が充実しているだろうか。東京だと八重洲ブックセンターや丸善も駅近くにあるが、時間がない時はなかなか足を延ばすのも難しい。

さて、「決定版」というタイトルに惹かれて買ったのだが、個人的には今ひとつ。ごくごく当たり前のことが述べられている。管理職になりたての人などは一度目を通してもよいであろうが。

新たな気づきを得ることができたのは次の2箇所。まぁ1冊の本から1つでも気付きを得ることができたのであれば、良しということであろう。

・「リーダーに一番必要な能力を決断力だ」と言う人がいる。もちろん決断力は大切な能力だが、私はそれが一番だとは思わない。むしろ一番重要なのは「現実把握力」である。どんなに決断力があっても、現実を間違って把握してしまえば、誤った決断を下すことになるからである。主観や偏見も、人の判断力を狂わせる。決断力を発揮する前にまず大切なのは、現実を正しく把握することである。

・事を起こせば必ず摩擦はある。雑音も出る。しかし、ザワザワ批判している人は事情も知らぬまま断片的な事実で無責任なコメントをしている場合が多い。うまくいったら拍手喝采するのもこの連中。そういう外野に右顧左眄せず、確信のある事は断固やれ。そして必ず自分が火の粉をかぶれ。




【目次】

第1章 会社とは何か―組織の論理と個人の使命
第2章 仕事とは何か―ビジネスマンとして生きていく
第3章 人を導くとは―自分のなかに従うべき志はあるか
第4章 活力ある職場をつくる―日々の充実をこの仲間たちと
第5章 自分を変える―リーダーの資質を身につける
第6章 部下を育てる―上司の最重要課題と心得よ
第7章 上司が未来をつくる―後悔しない選択のメソッド

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人物伝などを読んでいると、時々「水のような人物」という表現に出会うことがある。この描写が何となく好きで、自分自身、水の如くありたい、と思うようになった。これは私のモットーのひとつ「シンプルでしなやかに」にも通じるものである。

まず、水というのは純粋である。つまりシンプル。混じり気の無い純水は、シンプルそのもの。シンプルだからこそ、飲食にも使えるし、工業にも使えるし、農業でも使われる。これほど、多様な用途を持つ物質は、他にはないのではなかろうか。

水というのは柔軟である。どんな姿にも形を変えることができる。どんな容器にも入れられるし、どんな隙間にも入り込むことができる。時には水蒸気や氷のように、液体から気体や固体に性質まで変えることができる。川の流れは柔軟であるが、時には水そのものが川の流れを作ることもある。水はまた、力強くもあるのだ。

水の力強さといえば、大きな波や、川の濁流、滝などを思い浮かべるだろうか。普段は静かでありながら、いざという時には大きな力を発することができる。そんな力強さも兼ね備えている。

一方で、水というのは静かである。大きな湖は静かに水を湛える。その湖面は鏡のように静かで美しい。時にはいたずらな少年が小石を投げ込み、波紋が生じることもあるが、そんなささいな雑音は静かに飲み込んでしまう。

地球の表面を覆う海も水からできているし、人間の体も多くが水分から成っている。生きていく上で水は不可欠であり、生命の源ともいえる存在。

身近にありながら、よくよく考えると不思議な存在の水。居ることが当たり前なんだけど、居ないと困るよねと言われるような存在。そんな水のような生き方をしてみたいものである。

◇1688 『常在戦場−金川千尋100の実践録』 >金川千尋/宝島社

超優良企業として名高い、信越化学工業の会長である金川さんの著書。信越といえば『教わらなかった会計』など、財務関係の著書をたくさん出されている金児昭さんが有名で、金川会長ご自身の本は珍しいなと思って手にしたのだが、過去のブログを検索してみると『社長が戦わなければ、会社は変わらない』という本を読んだことがあった。

本書では金川会長の言葉を100個抜き出して紹介しているのだが、どれをとっても「当たり前のこと」「基本的なこと」である。正直、当たり前すぎて、経営としては当然だよなと思いながら読み進めたのだが、こういったことを実直に、しかも全社をあげて取り組むことができるところに信越の強さがあるのだろうなと感じた。

それでは気になった章のタイトルだけを引用しておきたい。

・多数決の意思決定を好む経営者は、他の人も賛成したという保険が欲しいだけだ

・新規事業は、こだわりがないと成功しない。しかし、間違ったこだわりは会社に損害を与える

・オールドエコノミーだからというのは、事業撤退の理由にならない

・誠実で人から信頼される人柄でなければ、経営者はできない

・「景気が悪いから売れない」ではなく、景気が悪いときにどうするかだ

・易きにつくな、狭き門よりは入れ

・リスクには人一倍敏感で、同時にリスクを恐れ過ぎない

・報告書の配布先を見れば、その報告書を作った人間の頭の良し悪しがわかる

・冷たい人は叱ることができない

・経営は、経営書からではなく、実践から学ぶしかない




【目次】

第1章 組織の原点
第2章 経営の本質
第3章 リスクと成長
第4章 人材と働き方
第5章 人生とめぐり合わせ

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日経新聞[2018.02.01〜02.28]私の履歴書・松井忠三(良品計画元会長)

無印良品を軌道に乗せた立役者。無印良品が不振の際には、ショック療法で売価100億円、原価38億円の衣料品を償却したり、売れ筋商品の自動発注の仕組みを整えたり。仕事のやり方も抜本的に見直している。会議資料はA4一枚。紙の量と実行力は反比例するとの持論。承認印は責任の所在を明確にするため、それまで7、8個あったものを最大3個にした。

極めつけの改善は「MUJIGRAM」の編纂であろう。それまで店舗ごとに異なっていたレイアウトの仕方などを、すべてマニュアル化したもの。2000ページにおよぶそのマニュアルは、仕事の標準化による効率化を生んでいる。私も経理部門に所属しているが、マニュアル化というのは非常に難しい永遠の課題。特に日本では口伝だったり職人技でこなしていたりして、標準化が遅れていると感じる。

残業が多い時には「太い幹と太い枝を遺して小枝はばっさり捨てろ。午前中はメールを見なくていい」と指示を出したとのこと。合理的な人物だ。社長業が6年を過ぎ、誰も反対意見を言わなくなったころ、自分で引き際を悟っているところも素晴らしい。しかも自分に似た人では会社が小粒になると、正反対の人を推している。本当に会社のことを考えている人の発想は、こうでなければならないと感じた。

2月は28日しかなく、休刊日を入れると連載が27回。もう少し経営のノウハウなどを開陳していただきたかったなぁ。

◇1687 『甘粕大尉』 >角田房子/ちくま文庫

本書は甘粕正彦という昭和の激動期を駆け抜けた人物の物語である。本書を読むまで甘粕正彦という人物のことは知らなかったのだが、満洲にて夜の帝王と呼ばれて活躍した人だとのこと。満洲については過去に『キメラ−満洲国の肖像』という本を読んでいるが、未だに私にとっては掴みどころのない存在である。

本書は大きく3部からなっている。まずは甘粕が大杉栄という社会主義者を殺害したと疑われる事件。次に、刑期を終えフランスへ一時滞在する時期。そして満洲にて活躍する時期である。個人的には満洲という組織が持つ不思議さと、甘粕という男の持つ不思議さに似たようなものを感じたせいか、特に後半部分について非常に興味深く読み進めることができた。

本書では大杉栄を甘粕が本当に殺害したのかどうか、その結論は確認されていない。筆者の角田さんも、明確な否定理由がないため、フィクションを交えるわけにもいかず断定できなかったと書いている。殺人者かもしれない冷酷な一面と、任務に対しては度が付くほどの生真面目さを見せる一面。両者が合い混じって、甘粕正彦という人物を形成していく。

天皇という幻想に付いていくしか生きる道がなかった甘粕は、敗戦とともに自らの命を絶っている。結局、彼自身が、昭和戦時下の日本という魔物の被害者であり、傀儡であったのだろう。。。



【目次】

1 大杉栄殺害事件―大正十二年九月十六日(一九二三年)
2 軍法会議―大正十二年十〜十二月(一九二三年)
3 獄中―大正十二年十二月〜十五年十月(一九二三〜二六年)
5 フランス時代―昭和二年八月〜四年一月(一九二七〜二九年)
6 満洲へ渡る―昭和四年七月(一九二九年)
7 満洲建国―昭和七年三月(一九三二年)
8 満映理事長となる―昭和十四年十一月(一九三九年)
9 敗戦―昭和二十年八月(一九四五年)

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『満願』 >米澤穂信/新潮文庫

やらかしてしまった。本書は再読なるも意図的なものではなく、過去に読んだことを忘れていて文庫本をわざわざ買ってしまったもの。近所の書店に並べられていたのを見て、つい手に取ってしまったのだ。

自宅ではハードカバーの本を読むことが多い。新書や文庫本は出張時や、ちょっとした外出時に持っていくのに便利であり、本書も外出時の待ち時間に読み始めたもの。最初の短編である『夜警』を途中まで読み進めて既視感に襲われた。最初は、どこかで聞いた話だなという感覚。その後、この話は読んだことがある、という確信に変わる。

しかしながら、どこで読んだかが思い出せない。そういえば昔、新潮文庫で警察小説の短編集を出していたなぁと記憶が変な方向へ飛んでいく。こういう時にブログは便利である。手元のスマートフォンで自分のブログを検索してみる。該当したのは2冊。『決断 警察小説競作』『鼓動 警察小説競作』だ。しかしながら、これではない。さて、どこで読んだのか。。。

次に『夜警』で検索してみると、ズバリ『満願』がヒットした。2016.03.29に読んでいる。2年前だ。ブログを読むと図書館で借りて読んだもの。やはり自分で買って読むのと、借りて読むのとでは印象が違うのだろうか。ブログにはそれぞれの短編に関して短い感想が書いてあるが、今回の感想も似たようなもの。我ながら的確に表現できている。

しかしながら、前回読んだ際には気づかなかった、トリックの伏線に気づくことができたのは収穫。さすがに2年前の読書なので、ある程度は覚えている。結末を知りながら読むことで伏線のうまさが伝わってくる。ストーリーを楽しむのではなく作者の技巧を楽しむ。こういう読み方もあるのかもしれない。

◇1686 『イラク・戦争と占領』 >酒井啓子/岩波新書

イラクについて、知っているようで知らないと思い本書を購入したのだが、何となく読む気になれず長い間積読本になっていた。200ページ強の本なので、出張時に持っていけば読み終えることができるかなと思い、東京出張の際にカバンに忍ばせて読み始めたもの。

筆者の酒井さんは、ご自身がイラクに3年ほど住んでいたことがあり、今回(といっても2003年頃なのでもう10年以上前だが)も、現地で取材を重ねていらっしゃる。戦争が終わり米軍の統治下にあるとはいえ、米兵が狙撃されるなどまだまだ物騒な状況のもと、まさに命懸けの執筆である。

しかしながら、取材が綿密であるがゆえに、描写が細部に入り過ぎており、現場の臨場感はひしひしと伝わってくるものの、個人的には全体感が掴みづらい構成だと感じてしまった。

そんな感想を抱いてしまったわけだが、各章の冒頭部分が比較的分かりやすくイラクの状況を説明していると思うので、少し長くなるがそのまま引用しておきたい。

■フセイン、最後の戦い

アメリカのブッシュ政権が、イラクを標的とした、結果的にあまりにも無謀なこの戦争を決意するに至った最終的な理由は、いったい何だったのだろうか。この問いにはまだ確たる答えが示されていない。戦争の前でも後でも、世界各地で行われた世論調査は、「イラクの民主化」というアメリカの「善意」を人々が決して信じていないことを示している。その答えは、「石油利権の独占」であったり、「ユダヤ・ロビーの影響」であったり、「アメリカの新保守主義者による新たな帝国主義」、あるいは「ブッシュ大統領自身のあまりに信仰熱心なキリスト教保守主義」であったりする。おそらく、そうしたさまざまな要素が相互に絡み合って、イラクへの戦争という選択がなされたに違いない。

そのなかでもやはり、2001年の9・11同時多発テロ事件がなければ、その決断は下されなかっただろう。米ランド研究所のジェラルド・グリーン研究員が戦後、ある会議の席上で指摘していたが、9・11事件は中東問題をアメリカ国内問題に変えてしまった。そしてブッシュ政権は、それ以降、「アメリカの国民がテロの不安に再び駆られることなく、安心して生活できるために、政府がそのために常に努力しているのだ、ということを示すために、中東で「テロに対する戦い」を継続していかなければならなくなった」のである。(中略)

なんといっても、「イラクを叩く」という方針が具体性を帯びてきたのは、2001年松のアフガニスタン戦争での、予想外の早い軍事的成功によってであろう。ソ連を長年てこずらせたアフガニスタンで、わずか1カ月程度で政権の交代を実現した、という自信が、イラクでの政権交代も容易に可能だ、という認識を生んだ。とうてい根付くはずもなかろう、とその安定性が懸念されていたアフガニスタンのカルザイ外来政権が、形だけでもなんとか維持されている。同じように次期政権の受け皿がない、と言われるイラクでも、それなりに亡命政権を埋め込んでしまえば、案外もつのではないか。アフガニスタンでのそれなりの「成功」が、イラクでの武力による政権交代を楽観的に見せたに違いない。それが本当に成功だったかどうかは、別にしても。

■「アメリカの占領」の失敗

アメリカの対イラク攻撃は、予想されたよりもかなり短期間に終わった。特に戦闘前半、砂嵐などでもたついた際には、夏まで戦闘が続いて猛暑のなかでの作戦行動が困難になる、といった悲観論まで出たことを考えれば、戦闘終結宣言までに40日余りというのは、意外に短かったという印象を残したといえよう。

対照的に戦後統治が混乱を極めているのは、この戦闘期間が短すぎたからだ、という指摘がある。準備期間が短すぎたので戦後体制に向けて十分準備ができなかった。戦闘が「大成功」に終わったので、その勢いで米軍中心の占領政策が主流となってしまい、民政に配慮を利かせた戦後統治ができなかった。戦争の過程でイラク軍のクーデターや寝返りによって次期政権の核となる勢力が出てくることが期待されたのに、米軍の圧倒的勝利のおかげで、イラク人各勢力間での勝敗の「決着」がつく余地が生まれなかった。こうしたことが戦後の混乱の遠因にある、としばしば指摘される。

だがこうした理由のうち、「時間不足で準備できなかった」というのは、必ずしも適切な答えではないだろう。確かに、アメリカが具体的に力によるイラク政権の打倒を企画したのは、9・11以降であるから、1年強しか時間はなかった。だが遡れば、米政権は湾岸戦争以降、常にイラクの反フセイン勢力との接触を維持し、それらを通じて折に触れてフセイン政権の転覆工作を仕掛けてきたのである。その意味では、10年以上もポスト・フセイン体制について考える時間的余裕があった。

■宗教勢力の台頭

さて、戦争直後のイラクを見て、欧米のイラク研究者たちが一様に驚いたことは、四半世紀のフセインの独裁を経てもなお、イラク国内で意外んも「社会」が生き延びていたことである。フセイン政権は、これまで国家と個々の国民の仲介物を排除し、個人個人の忠誠を直接「国家」、すなわちフセイン自身に結びつけることで、個人独裁体制を強化してきた。つまり、宗教ネットワークや部族的紐帯、共同体的結びつきに基づいた地域社会の指導者の存在をフセインは一切認めず、すべてがフセインに繋がるような、徹底した中央主権体制をとってきたのである。だからこそ、誰しもが政権崩壊後の権力の真空を危惧し、アナーキーな世界の出現を恐れつつも予測してきた。

だがその予想に反して、ポスト・フセインの政治的空白を埋めようとする社会勢力の台頭は、実はイラク戦争後かなり早い時期に見られている。相次ぐ略奪に対しては街区ごとに自発的な自衛手段だ取られ、略奪を防ぐためにモスクなどの宗教施設に公共財産が預けられたが、この崩壊した「国家」の代役を果たしたのは、もっぱら宗教的ネットワークや部族的紐帯などに支えられた地域共同体であった。(中略)

実際に政権が倒れてみれば、「社会」は不在ではなかった。そして、そこではっきりと表出した「社会」とは、アメリカが最も見たくなかったはずの「イスラーム」であった。イラクにおいて徹底的に弾圧されていたはずのイスラーム的紐帯が、なぜ四半世紀の世俗主義支配を生き延びたのか。あるいは、いずれかの時点で「復興」したのか。戦後イラクの「社会」の根強さを支えた要素を見るには、シーア派イスラーム世界における、ハウザ、すなわち宗教的知識人サークルの存在を見ていく必要がある。


本書は2003年に書かれたものなので、フセイン独裁政権崩壊後に台頭してきたのは過激イスラームである、という描写で終わっている。復興に向けてなにをすべきか、アメリカの役割は、日本の役割は、といった疑問を呈しつつ、筆が置かれている。その後、「イスラム国」が台頭したのは周知の事実であるが、それにはもう少し時を待たねばならない。

少し前に読了したニクソンの『指導者とは』という著書の中に、アメリカの政治スタンスに触れている箇所があった。本書の感想は、リーダーシップに焦点を当てて書いたので、気にはなりつつも割愛してしまったのだが、イラクに対する政策は、まさにニクソンの進言を無視したかのような動きなので、ここに引用しておきたい。

「アメリカ人は独裁を嫌うが、多くの国にとって少なくとも現段階では、独裁に代わるべき実際的な代案がない。もし、あすの朝からサウジアラビアやエジプトが民主主義になれば、待ち受けるのは破滅だけだろう。国民には、まだそれを受け入れる心の準備がない。開発の遅れた国に対してアメリカに適した政治機構を押しつけるのは、決して賢明な策ではない。実質的には民主主義など不可能と知りつつ民主主義を強制するに至っては、独善かつ偽善以外のなにものでもない。アメリカ人は、おせっかいをしないよう自戒すべきである」(1982年 ニクソン著『指導者とは』より)



【目次】

第1章 帰還
第2章 フセイン、最後の戦い)
第3章 「アメリカの占領」の失敗
第4章 宗教勢力の台頭
終章 イラクはどこへ

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日経新聞[2018.02.22]行動を越えて思考を変える

高原豪久ユニ・チャーム社長の経営者ブログより。高原さんのブログは時に非常に哲学的に、時に非常に実践的になり、その振幅が面白い。今回はどちらかというと経営哲学に近い話。階段を上るというような表現や、行動を変えなければというのは、私が普段考えていることにも近しく、共感を覚えたので抜粋しておきたい。

世の中の成功している企業や組織には、現実の継続的な変化の連続という「坂道」を登ってゆくこと、に加えて、思考の断続的な進化という「階段」を登ってゆくこと、の両方を実行できるリーダーや人材が必ず育っています。我々にとって最も重要な示唆は、坂道よりも階段を登ることにもっと目を向けなくてはならないということです。

既存の戦略の寿命が終わりに近づき、さらに業績を伸ばすためには、既存戦略がほとんど役に立たなくなるまでに、どれくらいの猶予しかないのかを冷静に見極めることです。この残された時間を具体的・定量的に知る事は、「行動」を変える動機付けにつながります。「行動を変えなければならない」と思った人は、「では、どのように変えるべきか」を「考え」はじめます。これこそが行動を越えて思考が変わる瞬間です。

〇1685 『リーダーを目指す人の心得』 >コリン・パウエル/飛鳥新社

米国出張時の飛行機にて読了。共感できる箇所が多く、たくさんのページを折り、たくさんの行にラインを引いた。軍人として、国務長官として、考えてきたこと、実践してきたこと。そういった思考と経験の積み重ねが詰め込まれた貴重な一冊である。

特に感動したのは、イラクの大量破壊兵器についての誤解について、自らを省みて事実をきちんと書いている点。わかっていること、わかっていないこと、その上でどう考えるかの意見、この3つを常に区別しろというのがパウエル氏の持論だが、まさにその原則通りの記述である。

多くのページから引用・抜粋したいのだが、どうも最近、大量の文書を引用するだけの気力がなくなってしまった。時間がある時であれば、実は長文をそのまま引用する方が楽なのだ。むしろエッセンスを自分なりに要約して短い文書に落とし込む方が頭を使う。

本書に関しては、どこを引用しようかとラインを引いた箇所を読み返してみたのだが、改めて読み返すとどれも常識的なことばかり。どこかで聞いたような当たり前のこと。しかしながら、この当たり前のことを実直に、継続して、徹底的に実践したところに、パウエル氏の強みがあるのだろう。

私自身、40代の半ばを迎え、自分の価値観や考え方というのは凡そ固まってきたように思う。今後は、これまで築いてきた価値観を、危機に瀕した時、妥協を迫られた時などに、どこまで堅持できるかの勝負ではなかろうか。そんな思いで、本書を振り返った。

最後に「パウエルのルール(自戒13ヵ条)」を引用しておきたい。

1.なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。
2.まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
3.自分の人格と意見を混同してはいけない。
 さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
4.やればできる。
5.選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
6.優れた決断を問題で曇らせてはならない。
7.他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
8.小さなことをチェックすべし。
9.功績は分けあう。
10.冷静であれ。親切であれ。
11.ビジョンを持て。一歩先を要求しろ。
12.恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
13.楽観的でありつづければ力が倍増する。




【目次】

第1章 コリン・パウエルのルール
第2章 己を知り、自分らしく生きる
第3章 人を動かす
第4章 情報戦を制する
第5章 150%の力を組織から引きだす
第6章 人生をふり返って―伝えたい教訓

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米国出張の飛行機にて視聴。原題は『12 Strong』。確かに、馬が活躍するシーンが見せ場ではあるが、『ホース・ソルジャー』という邦題は個人的にはしっくりこなかった。原題のまま『12ストロング』でもよかったのでは。『12人の勇者』などだと、ますます野暮だし。

同時多発テロの翌日にアフガニスタンに入り、タリバンの拠点制圧に挑んだ精鋭たちの物語。実話に基づくものだけに、リアルであり、手に汗握る展開であった。馬で敵陣に近づき、位置情報を連絡し、空爆するという作戦。なるほど、やみくもに空爆するよりも精度が高くなるであろう。

それにしても、前線の兵士たちは身を危険にさらして戦っているが、空爆するパイロット(あるいは遠隔操縦か)は、ゲームと何ら変わりはない。今後、ドローンなどでの攻撃も現実味を帯びてくるであろうが、ドローン+顔認証+自動攻撃などという状況は、考えただけでも空恐ろしくなる。

話がそれてしまったが、この前線からの指示による空爆作戦によりタリバンには決定的な打撃を与えることができ、映画としてはめでたしめでたし、であったが、一方ではISが台頭し、テロの脅威は継続している。ISも壊滅的になってはいるが、結果としてローンウルフが各地に散らばってしまったという事実もあり、テロの脅威はまだまだ続いている。

この映画に出てくる作戦を実行した兵士たちには敬意を表するが、こういった格好のよいところだけをクローズアップして、米国が犯した過ちを見えないようにしようというのは、日本の政治も同じであろうか。映画そのものはよかっただけに、周辺情報に思いをはせると、何となくやりきれない気分になってしまった。。。

◇1684 『遠き落日』 >渡辺淳一/集英社文庫

背表紙あらすじ:【上巻】自堕落にして借金魔。しかし、その一方で、寝食を忘れるほど研究に没頭し、貧農の倅という出自の壁、幼少期の火傷によって負った左手のハンディ、日本人に対する西洋人の蔑視を撥ね除けた。偉人伝の陰で長く封印されていた野口英世の生身の姿を、見事に蘇らせた傑作伝記長編。第十四回吉川英治文学賞受賞作品。

【下巻】日本では将来が望めない。無鉄砲に、単身渡米した野口英世。そんな彼に実力重視の米国は肌に合い、やがて新進気鋭の学者として世界中の注目を浴びる。日本への凱旋、老母との涙の再会。まさに立志伝中の人となるも、提唱した理論が揺らぎ、黄熱病の研究で再証明を試みるが―。野口の栄光と最期を描いた傑作伝記。

野口英世の伝記だと聞いていたのでいつか読みたいと思っていたのだが、この度古本屋で発見。上下揃っていてそれぞれ100円だったので迷わず購入。野口英世については、小学生のころ漫画の伝記もので何度も読んだ記憶がある。幼いころに囲炉裏で手にやけどを負ったエピソード、苦学して渡米したエピソードなどは、今でも覚えている。

また、星新一の実父である星一の伝記にも登場することから、野口英世のだらしない一面についても何となくは知っていた。星一氏も野口英世にお金をおくったクチだが、残念ながら本書には名前が何度か登場するのみ。個人的には、星一氏とのエピソードも少し加えてほしかった。

本書では、どちらかというと美点のみが語り継がれている野口英世の、ダメな面、だらしない面までをも赤裸々に描写している点がすばらしい。綿密な取材を重ねた成果であろう。しかしながら、そのだらしない面が赤裸々であり過ぎるが故に、これは酷すぎると読みながら怒りを感じてしまうほど。

本書の前半は苦学と放蕩の日々を、後半はアメリカに渡ってからの苦労と成功と没落の過程が描かれている。伝記が嫌いなのは、主人公が亡くなってしまうこと。これは歴史上の自明の理であり避けられないのだが、思い入れのある主人公が亡くなってしまうのには一抹の寂しさを感じてしまう。

それにしても、語学を短期間でマスターしてしまう勉強量と集中力、アメリカでの寝食を忘れたかのような実験の日々、どれもが圧倒的な努力を基礎としている。私生活の面では決して尊敬できる人物ではないが、この鬼気迫る努力は、自分自身の努力の甘さを思い知らされたかのようであり、大いに反省させられた。

そういえば、今更ながら思い出したが、野口英世といえば千円札。毎日見ている顔のはずなのに、なぜか印象が、、、

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日本人アーティストの辻一弘氏が、第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことで話題の映画。チャーチルについては、興味があったので、米国の飛行機で本編を見つけて早速視聴したのだが、正直、前半部分は少々退屈であった。

ヒトラーに対し和平交渉をするか、徹底抗戦をするかで悩むチャーチル。国王からいただいた言葉が「迷ったときには国民の声を聞け」というもの。公用車を飛び降り、地下鉄で市民の声に耳を傾ける。徹底抗戦を決意した後の講演は、熱のこもった名演技。思わず落涙してしまった。

しかしながら、物語はここで終了。英国民を奮い立たせた演説がこの映画の主題ということで、それなりのモメンタムは感じたのだが、もう少し余韻が欲しかった。邦題も、確かにチャーチルが徹底抗戦を選ばなければ欧州の地図はどうなっていたか分からないという意味で、世界を救ったと言えるのかもしれないが、ちょっと大げさだろうか。まぁ欲を言えばきりがないのだが。。。

手元にはチャーチル著の第二次世界大戦という4冊組の文庫本が、ずっと積読のまま残っている。そのうち読もう読もうと思いつづけて、何年経つだろうか。そろそろ手に取る潮時かもしれない。

◇1683 『新・燃ゆるとき−ザ・エクセレント・カンパニー』 >高杉良/講談社文庫

背表紙あらすじ:「サンマル」のブランドで知られる大手食品メーカー東邦水産は、サンマル・INCを立ち上げ、即席麺の米国市場に進出した。長年悩まされた赤字からもようやく脱却し、第二工場も稼動を開始するが、セクハラ問題、ユニオン対策など、従業員の文化の違いに直面する…。山積する問題に、「事業は人なり」の理念で臨んだ結果は、米国市場トップシェアの獲得だった!市場原理主義を標榜する米国で、日本型経営の成功を描く力作長編。

小説は読みだすと止まらなくなってしまう。高杉良作品をもう1冊。本書は、東洋水産をモデルにした企業小説。東洋水産の米国進出先が舞台である。旧版の『燃ゆるとき』は記録によると、何と2000.01.01というミレニアムの元旦に読了している。(過去の読書なので残念ながらブログには未記載) 前作は実名小説だったのが、本書はフィクション形式となっている。

十数年前の小説であるためか、ストーリーはまったく記憶にない。新しい気持ちで読み始めることができたのだが、当時はワクワクと楽しめた高杉良の作品も、歳をとったせいか、今ひとつに感じてしまうのはなぜだろうか。多読は知識を得るには最良の手段だが、たくさんの物語に接してきたが故に感動の閾値が高くなってしまうのは困ったものである。

さて、本書では米国進出企業の大きな2つの悩みとでもいうべき、セクハラとユニオンについて、詳細に書かれている。小説としてよりも、むしろ米国文化を学ぶための教科書としての方が有用ではなかろうか。訴訟社会である米国での経営の難しさを教えられるとともに、誠意は万国共通でありどこであろうと通じるという勇気ももらえる作品である。

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