Namuraya Thinking Space

― 日々、考え続ける。 ―

◇1485 『一死、大罪を謝す』 >角田房子/新潮文庫

映画『日本のいちばん長い日』を見て読みたくなった。妻の蔵書から拝借。映画で見た役所さんの演技の印象が強く、少しその印象に引っ張られながらの読書になってしまったが、映画でも描かれていたシーンがたびたび登場し、既視感を覚えながらの不思議な読書となった。

角田さんの作品を読むのは初めてだが、妻曰く、史実をきちんととらえて客観的な視点で歴史をとらえている作家。女性はともすれば感情的になりがちだが、角田さんは極めて冷静にものごとを見据えている、と高評価。他にも蔵書があるので、そのうち読んでみたい。

さて、本書では、終戦時の阿南大将の言動が、果たしてどのような意図によるものだったのか、を読み解こうという探求的な作品となっている。もちろん、本人が自決してしまっているので、事実は不明なままなのだが、近辺にいた多くの方の証言から、推測を試みている。それはまるでミステリーを読んでいるかのごとく、興奮させる内容でもある。果たして終戦間際の阿南大将の行動は、腹芸(擬態)だったのか否か。

本書では明確な結論は書いてはいないものの、腹芸説を裏付ける証言が多く記録されている。おそらく筆者も腹芸説を信じていたのではなかろうか。また、映画『日本のいちばん長い日』でも、役所さんが陸軍の兵士たちを欺くような電話をかけているシーンが登場する。

いずれにせよ、陸軍のクーデターを抑え、本土決戦を回避して戦争を終わらせた功績は大きいと感じる。もちろん、陸軍の罪は重く、その代表たる阿南大将に対する賛否両論はあろうが、私としては、一死をもって戦争を終わらせた阿南大将に敬意を表したい。

それでは、気になったシーンを引用。

・幼年学校長時代に、阿南は生徒に向かって「顔を作れ」と語りかけている。それは−人から尊敬され、信頼を受け、愛される人間になろうと不断に心がければ、自然にそのような顔になる。そういう顔になる内容を作れ−というものであった。彼は日ごろの自分の心がけを語ったのだ。

・大君の深き恵みに浴みし身は 言ひ遺すへき片言もなし

・徳義は戦力なり。

・豪北の第二方面軍司令官時代、海軍によってしばしば「煮湯ヲ飲マサレシ思ヒ」を味わった阿南だが、その経験があればこそ一層、陸海軍一体化の必要を痛感していたのであろう。彼の頭脳は飛躍はしなかったが、極めて現実的で柔軟だった。

・阿南は特攻隊について語るとき、よく日露戦争や旅順口封鎖を例にして、その根本精神に疑問を投げかけたという。旅順口封鎖は決死隊ではあっても生還の道が講じられていたので、東郷指令長官はこれを許可したと伝えられている。それに反して、敵艦に体当たりする航空特攻は、死によってのみ任務遂行が可能となる。それを命じることは、上司として余りに「武士の情」に欠ける、というのが阿南の気持ちであった。

・「阿南は智将でもなく、政将でもないが、徳将であった」といわれる。一部で「八方美人でありすぎた」とはいわれたが、それ以上のケチをつける人はいない。公正無私、外柔内剛、挙措端正など、軍人の理想像を形づくる言葉がよせられているが、阿南を知る人はみなこれらを肯定する。

・「勇怯の差は小さいが、責任感の差は大である。真の勇者とは責任感の強い者をいう」

・「敵火の中に飛込んでいって、慌て者といわれても恥にはならない。しかし尻ごみして卑怯者といわれては、指揮官は勤まらない」

・阿南の最大の関心事は、内地237万余、外地310万余、合計550万の大軍を陸相としてどう誘導し、一つには天皇の意志に添い、一つには帝国陸軍の悲壮な最期を飾るにふさわしい秩序ある降伏を成し遂げるかであった。それは陸軍の最高統率者の最後の責任であり、彼に加えられている重圧であった。また彼を奮い立たせる美意識であったかもしれない。

・阿南さんは、自分にはよく理解できないことも、また自分とは違う意見に対しても、それが大切なことなら、まず相手のいうことを理解しようと努め、よく考えてみようとなさる。

・「私は”大罪”について大臣にたずねたわけではないが、おそらく、満州事変以後、国家を領導し、大東亜戦争に入り、遂に今日の事態に陥れた過去及び現在の陸軍の行為に対し、全陸軍を代表してお詫び申し上げたのであろう。遺書には陸軍大臣阿南惟幾とあり、辞世には陸軍大将惟幾と書いて、これを区別してある。遺書の方はもとより大臣としての職責に基づいたものであるが、それは8月9日からの終戦論議で、聖慮は即刻和平であることを知りながら、あえて継戦ないしは条件付講和を主張し、聖慮に反した行為をとった事を主としたのかもしれない。昨日、政府がポツダム宣言受諾を通告したことで、日清、日露の戦役を経て、赫々たる名誉と伝統に輝いた帝国陸軍は亡んだのである。陸軍は名誉と共に、幾多の罪償をも担っていた。阿南大将は亡びゆく陸軍の代表者として、その罪償を負うて自刃したのであると、私は思っている」 (竹下の証言より)

・どのような形にしろ、終戦は必至の時であった。阿南が第一に考えたのは国家のために軍の暴発を防がねばならぬということであろうが、それと同時に、青年たちを無傷のまま無事に戦後の世界へ送り届け、日本の再建に力を注ぐ後半生を送らせたかったのではないだろうか。この点、阿南の心境は、思慮の浅い息子たちを善導しようと腐心する父親のそれに近いものかと想像される。


一番感動したのは最後に引用した一文。自分の命に代えて、青年たちの未来を勝ち取り、青年たちに未来を託したのだ。命を投げ出すことに比べたら、自分の地位だのプライドだのを投げ出すことに何のためらいがあろうか。そんな思いを抱かせてくれる名著であった。

半藤さんの名著を映画化したもの。WOWWOWで放送されていたのを録画していたのだが、なかなか見る機会がなく、結局民法が終戦記念日に放映していたものを見た。CMが煩わしいなと感じながら、これならWOWWOWのものを見ればよかったと思いつつ。

原作を読んだのは2013.11.13。それまで、終戦前日の8月14日にクーデターまがいの事件があったことなど知らなかった。いかに近代史をきちんと勉強していなかったかを思い知らされ、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた本だった。原作がよかっただけに、映画を見るのには少し抵抗があった。せっかくの原作の雰囲気を損ねてしまう場合があるからだ。しかしながら本作は原作に負けず劣らぬ迫力のあるよい作品。十分に堪能することができた。

原作を読んだときは、そこに描かれている史実のすさまじさに圧倒され、ただただ事件の概要を追うばかり。阿南大将の自決のシーンではさすがに感情が動いたが、それ以外は圧倒されただけで終わったという感じであった。しかしながら、原作を踏まえたうえで視聴した今回は、それぞれの人物に感情移入することもでき、違った楽しみ方をすることができた。

主なキャストは、次の通り。役所広司:阿南惟幾、本木雅弘:昭和天皇、松坂桃李:畑中健二、堤真一:迫水久常、山崎努:鈴木貫太郎。役所さんの阿南大将の男っぷりはさすがだし、熱血漢畑中も松坂さんが好演。そして、最初は恐れ多いと出演を断ったといわれる本木さんの昭和天皇。昭和天皇の終戦にあたっての苦悩がにじみ出るような圧巻の演技であった。

ちなみに、このエントリーを書くにあたって、本作のことをWEBで調べてみたのだが、岡本喜八監督によって1967年に一度映画化されているとのこと。こちらのキャストも豪華であり、三船敏郎、笠智衆といった名優が出演している。機会があれば、ぜひこちらも見てみたいと思った。

さて、今回、半藤さんの名著を改めて映像という形として見ることで、戦争の悲惨さと、終戦に向けての緊迫感を体感することができた。世界情勢が、不穏な方向に向かっている今日、戦争の悲惨さを再度噛みしめる時ではなかろうか。多くの人に見てもらいたい名作である。

○1484 『日の名残り』 >カズオ・イシグロ/早川書房

随分と時間をかけて読み進めた小説。非常に「静かな」小説なので、読んでは止まり読んでは止まり。一気に読了するのがもったいないような、また筆者には申し訳ないが少しだけ退屈な、けれどもとても美しい、そんな物語だった。

翻訳が素晴らしい。執事という職業を見事に表している丁寧な文体。おごそかで格調高い文章のリズム。そんなリズムに乗って、物語は主人公のスティーブンスが休暇を取り、ドライブに出かけるところから始まる。物語の進行が「行きつ戻りつ」だと感じてしまうのは、ドライブの途中に、過去の回想が何度も入るから。スティーブンスが経験した、執事としての数々の職人技。最初は、職人気質の堅い人物だと思っていたのだが、途中から話題の中心に一人の女性が入り込んでくる。

気が付くと、「ああ自分は恋愛小説を読んでいたのだ」と不思議な感覚に襲われてしまった。ラストシーンの喪失感は、何物にも代えがたいくらい深いものになってしまった。静かな小説であり、これといったクライマックスがなかったからこそ、その深さは底が見えない。

多くの人が絶賛するだけある美しい小説。時間を置いて、またこの静けさに身を置いてみたいものだ。

先日のエントリーで、経営哲学を学ぶことの大切さについて触れ、その学びが私の強みの一つになっているのではないかと述べた。経営哲学と会計と海外経験。この3つを3本柱としていきたいと思っているのだが、もう1つ、これは強味ではなく、苦手なためもっと鍛えたいと思っているものがある。論理的思考、ロジカルシンキングである。

仕事を通じて知った会社の先輩や社外のプロの方々で、この人は仕事ができると思わせる方に共通しているのが、論理的思考能力の強さ。人によってその現れ方は異なるが、ある人は説明が単純明快であったり、ある人はシステムの矛盾点をいとも簡単に発見したり、またある人は事務ミスの原因(真因)を少しの事象を聞いただけで言い当てたり。

自分自身が弱みだと思っているので、過去にも論理学だとか、ロジカルシンキングに関する本は何冊か読んだのだが、いわゆる学問上の論理学と、仕事で使うロジックとは若干異なるのではと感じている。そうすると、じゃあどうやって論理的思考力を鍛えればいいんだ、と行き詰ってしまうのだ。

結局、近道など存在せず、仕事の一場面一場面で、深く考えることを繰り返すしかないのであろう。私はこんなブログを書いていることもあり、考えることは嫌いではない。しかしながら、仕事が忙しくて時間がなかったりすると、短絡的に結論を出したりしてしまう傾向がある。もう少し、腰を据えて考えるべきときに、きちんと考え切れていないのだ。これでは、自ら鍛錬の場を放棄しているのと変わらない。

仕事を進めていくうえでは、自分が尊敬する人たちのことを思い浮かべ、あの人ならどういう判断をするだろうか、と考えてみることも有効かもしれない。また、自分より少し高いレベルの本を読むこともロジックを鍛える訓練になるだろう。一冊の本を精読することで筆者の思考を追いかけていく。こんな地道な作業もロジックを鍛えるには不可欠だと感じるようになった。

「あの人は仕事ができる」という言い方はよくするが、「あの人はロジックが強い」とはあまり言わない。目に見えるものではないし、判断するのが難しく、それこそ自分がある程度のレベルに達しないと、ロジックが強いか弱いかの区別すらできないであろう。なんとももやもやして、ちっともロジカルじゃないエントリーになってしまったが、文書に書き出してみると少しはすっきりすると思ったのだ。

◇1483 『そうか、もう君はいないのか』 >城山三郎/新潮文庫

背表紙あらすじ:彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる―。気骨ある男たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作家が、最後に書き綴っていたのは亡き妻とのふかい絆の記録だった。終戦から間もない若き日の出会い、大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに家庭を築く日々、そして病いによる別れ…。没後に発見された感動、感涙の手記。

書評を書いていない本が20冊以上溜まると、なかなか書く気が起こらなくなってしまう。読み進めることに集中して、積読本が随分解消されたのは良かったが、思わぬ副作用である。次からは気を付けよう。

さて、本書は比較的印象深い作品。素敵なタイトルに惹かれて随分前に購入したのだが、城山さんの奥様が亡くなってしまう話であり、辛い結末を想像して手に取ることができなかったのだ。160ページ程度の薄い本なのだが、そこには城山さんの奥様に対する深い愛情が溢れている。出会った頃の話や、一緒に過ごした思い出話が多く、思っていたほど読み進めるのが辛いものではなかった。それでもやはりラストシーンでは落涙。切ない気持ちになってしまった。

自分の妻がいなくなってしまったらどうしよう。そんなことも考えながら、一方で果たして自分は、妻のことを「妖精」などと万人に向かって書くことができるか、などとも思いながら、ページを繰っていった。

最後の解説で知ったのだが、本書は遺稿を集めたものらしい。城山さんご自身が亡くなった後に発見されたそうで、これを手にした娘さんたちの思いは、いかほどであったであろうか。

最後に作中で引用されていたイタリアの経済学者パレートが好んだという箴言を引用して筆をおきたい。ちなみに、この箴言の大元は、おそらく中国の「寧静致遠(ねいせいちえん)」であろう。

「静かに行く者は健やかに行く 健やかに行く者は遠くまで行く」

仕事を続けていくうえで、自分の強みに磨きをかけていくというのは大切なこと。特に40代も半ばになると、不得手なものを無理に克服するよりも、得意分野を伸ばした方がよいであろう。20代の若手の頃は、与えられた仕事を選り好みせず、自分の新しい可能性を開くかもしれないと考え、幅広い分野にチャレンジすべきであるが、年を取るにつれ、自身の人生戦略にも選択と集中が必要になってくる。

私の強みといえば、会計と海外経験であろうか。会計に関しては、しばらく実務から遠ざかっていたこともあり、IFRSを学びなおす必要がある。また、会計から派生して、ファイナンス理論、国際税務、原価管理なども学んでいきたい。将来的には子会社のCFOにでもなれれば理想的である。(本社のCFOを目指すべきかもしれないが、そこまでの器ではないことは自覚している。目標は高い方がよいのかもしれないが、出世を目指すのは好きではないので) また、子会社といえどもCFOを経験すれば、引退後に社外取締役などにもなれるかもしれない。

海外経験は中国で苦労したことが今でも役に立っている。また、うまくローテーションに乗れば、もう一度どこかへ駐在できるかもしれない。そのためにも、最近サボり気味だった英語学習を再開しなければいけない。(思い立ったら吉日、がモットーなのでさっそく今日から英語学習を再開した)

さて、今回のエントリーは会計や海外経験が本題ではない。タイトルにも書いた通り「経営哲学」を学んできたことが、自分の強みになるのではないかと考えたのだ。きっかけは東芝の粉飾決算に関する本を読んだことと、後輩の悩みを聞いたこと。後輩の悩みというのは、ひどい上司の下で随分と苦労しているというもの。

会社経営という大局的な話と、部下への応対という現場レベルの話とでは次元が異なるかもしれないが、両者に共通するのは「誠意をもって対応することが大切」だということ。会社経営に責任を持つというのは、利己的にならず正直な経営を心掛けることであるし、部下に接するときはたとえ年下であろうと一人の人間として敬意をもって接することを忘れてはいけない。

こういったことを、もちろん会社の先輩方からも学んだのだが、私の場合は松下幸之助や稲盛和夫といった名経営者の「哲学書」とでもいうべき本から学んできた。私がその手の本に興味を持ちだしたのは20代後半で初めて部下を持った頃。どうやったらチームとしてうまく仕事を進めていくことができるかと思い悩んで手にした本の数々。1冊1冊から受けた影響はさほど大きくはないかもしれないが、毎年100冊近い読書から得た、1粒1粒の雫が静かに蓄積して、今の私を形成しているように感じる。

「哲学」というと、ソクラテスだのカントだのといった名前が思い浮かぶが、正直、私の頭ではついていけない。きちんと読んで深く考える習慣をつけるにこしたことはないのであろうが、個人的には松下幸之助や稲盛和夫の哲学を学ぶだけでも充分だと感じている。もう少し背伸びをするならば、中村天風や安岡正篤といった日本の哲学者の著書を紐解けばよいであろう。あとは、駐在経験もあって親しみを感じている中国の古典に手を出してみるか。

好きこそものの上手なれではないが、以前からこの手の本を読むのが好きだった私。気が付けば後輩が、私のアドバイスは一味違うと言ってくれるようになった。「哲学」「生き方」「美学」「理念」。一言で言い表すのは難しいが、このような概念が強みになるのではないかと考えた次第。年齢を重ねるにつれ、ポジションが上がるにつれ、「経営哲学」が大事になるのではないかと。

◇1482 『東芝・粉飾の原点−内部告発が暴いた闇』 >小笠原啓/日経BP

随分と読書日記が滞ってしまった。見返してみると8月22日から新しいエントリーをしていない。しばらくは書評を書くよりも、積読本を読むことに集中していたためである。おかげで約20冊を読了。書評は、読了後すぐに書いた方がよい場合と、少し時間を置いた方がよい場合とがあるが、私の場合は印象が新鮮な時の方がよいものが書ける。そういった意味で今回は失敗だったかもしれない。

さて、そんなことをぼやいていても仕方がないので、記憶の新しいものからどんどん書いていこう。本書は東京に所要があった際に立ち寄った本屋で買ったもの。正確には積読本とは言えないのだが、これが一番最近読了した本なので、本書から始めたい。

東芝の粉飾決算(東芝自身は不適切会計と言っているが)については、日経ビジネスで詳しくレポートされていたので、会計に携わる身としては常に興味深くそれらの記事を読んでいた。本書は日経ビジネスの取材班がまとめたルポタージュであり、日経ビジネスに連載されていた記事の集大成とも言えるもの。よって、既知の内容が多かったのだが、それにしても改めて読み進めてみると、呆れて物も言えないというのが正直な感想。

しかもカネボウのように、会社にとってよかれと思い、現場主導でボトムアップで粉飾を重ねていたものとは異なり、明らかにトップダウンの粉飾決算である。しかも、かなり強烈なパワーハラスメントが散見されており、多くの社員がメンタル面でも傷つけられたことであろう。同じ会社勤めの立場としては、怒りを覚えるとともに、やりきれなさを感じてしまう。

最近は、経営書よりも歴史関係の本を手に取ることが多くなったのだが、こういった権力者の醜いさまというのは、古くから見られるものであり、何も今始まったものではないのかもしれない。たまたまこのような人間の性が見えやすいのが、会社という組織なのであろう。一昔前であれば、日本の陸軍がその典型であったように。

場所はなぜか静岡県だということが分かっている。伊豆のあたりを妻とドライブ。広くて車通りの少ない道を走っていると、右手に石油タンクのような建物が見えてくる。コンビナートなどに設置してある大きくて丸い建築物だ。平坦な道路なので遠くからこの建物が目に入る。なぜこんなところに石油タンクがと、不思議に思っていたのだが、だんだん近づくにつれ、球体の表面がなにやらゴソゴソと動いている。

よく見ると、人がたくさん歩いているのだ。球体の表面に、はしごや階段が取り付けられており、そこを人が降りたり登ったり。階段には手すりがついているが、はしごはむき出しで安全対策などなにもなされていない様子。危ないのに何をしているんだと、いぶかりながら通り過ぎる。

もう少し走ると、建築中のビルのような、鉄筋だけのスケルトンの建物が目に入ってくる。途中で建築費用が足りなくなって、そのまま放置されたかのような不気味な雰囲気。赤茶けた錆の浮いた鉄筋が物悲しそうだと思っていると、こちらにもたくさんの人が。鉄筋だけなのだが、なぜかここにも階段とはしごが無数に取り付けられている。そこを登ったり降りたりする人たち。よく見ると小学生程度の子供もいるではないか。

さらにしばらく走ると門(ゲート)が見えてきた。どうやら我々は入り口とは逆の方向から走ってきたようだ。対向車線はゲートの前で一旦停止して、料金を払っている様子。ちょっと気になったので、車を止めて振り返ってみると、「鉄塔アスレチック」という看板が目に入った。あの人だかりは、アスレチックを楽しむ人たちだったようだ。高所恐怖症の私には無理だなと思っていたら、目が覚めた。

・リーダーシップの定義はいろいろありますが、ここでは「メンバーを巻き込み、自ら先頭に立って方向性を示し前進すること」と定義したいと思います。そのためには、メンバーからリーダーとして認められている必要があります。メンバーに認められなければリーダーシップを発揮することはできません。認められる存在であるということは、よく言う「一目置かれる」存在ということになりますが、一目置かれる存在であることではじめてメンバーに対する「影響力」が生まれます。

<影響力>
・仕事への情熱の強さ
・温厚な人柄
・部下の面倒見がよい
・仕事の教え方がうまい
・行動力の高さ
・仕事上の実績
・高い専門知識
・知的な能力が高い
・沈着冷静で頼りがいがある
・社内外での評価が高い

・人は、話を聞いているときに、「話している人」そのものと「話の内容」の両方を判断しています。話している人を信頼できなければ「この人には言われたくない」ということになりますし、信頼を置いていれば「この人が言うんだから」ということになるのです。「話している人」の信頼性を高めるためには、日ごろから信頼を裏切るような言動をしてはいけないことは当然として、信頼を貯蓄しておく必要があります。そのために最も重要なことは「約束を守る」ということです。逆に約束を守ってくれた記憶が増えることでメンバーはリーダーを信頼できるようになるのです。

<責任者としての自覚>
・部下との約束を守る
・自部署運営に関する自己の考えを持つと同時に、明確に打ち出す
・問題が発生したとき、部下に転嫁しない
・自部署の問題を理解すると同時に、対処策を打ち出す
・自部署の目標達成のために、達成方法を考える
・自部署の目標達成のために、自ら率先して行動を起こす
・自分でできることでも、部下にゆだねる姿勢を持つ
・部下に問題行動があったとき、本気で叱る
・「We意識」の定着の推進を徹底している
・会議が効果的に運営されるよう努めている

<ともに行動する姿勢>
・日頃から、意識して部下に声をかける
・「チャンス・ドンマイ・ナイストライ」の声掛けを実践している
・部下との対話時間を優先し作っている
・部下の将来について話している
・部下を尊重する態度を示している
・部下の育成を常に意識している
・部下の仕事を進めやすくするため、上位組織とかけあう
・部下と一緒に、自部署の能力強化策を考える
・部下と一緒に、自部署の問題解決を図る
・部下と一緒に、会社への提言を考える

<正確な判断と迅速な決断>
・部下の意見を積極的に聞く
・会議では、決して結論をうやむやにしない
・予想しない問題に直面しても、あわてない
・私情をまじえず、公平な判断をするよう心がける
・独断で判断せず、関係者の意見を聞いてから判断する
・思い込みでなく、事実情報を基に客観的判断する
・緊急の問題が発生したときは、迅速に判断し、指示を出す
・部下が判断を求めてきたら、必ず自己の見解を伝える
・良いと思ったことは、すぐに実行に移す
・重要な問題は、部下まかせにせず、自分で判断を下す

<指示の合理性・一貫性>
・「なぜそうするか」を明確にして指示を出す
・目的の不明確な指示を出さない
・方向性のバラバラな指示を出さない
・根性論・精神論ばかりでなく、具体性のある指示を出す
・「どのようにするか」を明確にして指示を出す
・部下が実行できる、無理のない指示を出す
・部下の仕事状況などを見ながら、タイミングよく指示を出す
・いちどきに、たくさんの指示を出さない
・思いつきで指示を出さない
・いったん出した指示をコロコロ変えない

・リーダーになったら、他の人が感心するような行動習慣を身につけることを心がけてください。先の例に出た「誰よりも早く出社する」という行動習慣はメンバーの気持ちが引き締まる効果が高いということで、是非お勧めしたい行動習慣のひとつです。その他にも身の周りやみんなで使う場所の整理・整頓・清掃を行うという行動習慣を見せることもいいでしょう。

・メンバーと定期的に必ず交流するというのもメンバーが感心を寄せるリーダーの習慣のひとつです。私の知っている社長で、毎日午前中2時間は自ら職場に足を運び、社員ひとりひとりとそれぞれ10分ほど話をするということを習慣としている人がいます。

・メンバーを叱ると、メンバーとの関係が悪くなるのではないかと考えるリーダーも多いと思います。相手にマイナス感情を抱かせることが容易に想像できるからでしょうが、リーダーが気を回さなければいけないことは、チーム全体に対してであって、ある特定個人に対してではありません。もし、あなたがあるメンバーの行いを良いものだとは思っていないにもかかわらず、叱ることなく放置していた場合、当の本人はマイナス感情を抱かなくても、周囲のメンバーの感情はマイナスに振れるのです。

・リーダーの妥協を許さない態度によって、メンバーはそのコトに関するリーダーの本気度を垣間見ることになります。そして、そのうち価値基準がチームの中に定着するのです。どのような範囲のコトがそれにあたるのか、それはみなさんの考えの中にあることですが、基本的にはチームにとって大切な「目的」「メンバーシップ」「モラル」に関することになるでしょう。

・叱らなければいけないのは、まず行動です。行動を叱るだけでなく、他にも必ずしなければならないことがそこにはあります。それは、なぜその行動をしたのかという考え方を聞き出すことです。つまり、意識と思考を確認するということです。その考え方に問題があった場合は、行動よりもその考え方を叱ったほうがいいのです。そしてもし、考え方自体が間違っているわけではない時は、その考え方を実現する行動とはどんなものなのか一緒に考えアドバイスする必要があります。

・「行動」には単に身体を動かすだけでなく、考えるために動きを止めるという行為も含まれ、「動く」行動の質を上げるための基礎的な位置づけとなります。「止まる習慣作り」、それは、リーダーが若いメンバーに教えなければいけない重要な事柄なのです。むしろ、いかに動くかを教える前に教えなければいけません。

・リーダーと若いメンバーのミニミーティングを毎日30分〜60分行う(主に、メンバーの疑問解消、理解促進のための場になる)→ 毎日30分〜60分の時間を設定する意識が定着したら、その時間で明日以降の仕事の段取りなどをひとりで熟考させる。

・「動くときには、どのような視点を持つべきか」、ということを考えてみましょう。若手メンバーの初期教育で重要なのは、仕上げる仕事量に対する意識です。若手のメンバーには、時間的な制約の中で一体自分はどれだけのことをこなせるのか、そのポテンシャルを実感させる必要があります。覚えたてという特別条件はあるにしても、「この仕事は30分でやる仕事」として業務を指示しなければいけません。1日に指示する仕事量は、あくまでも通常みんながこなせる仕事量にするべきなのです。もちろん、その日のうちには仕上がりませんからあふれます。例えば、半分しかできなかったとしたら、次の日にその残った仕事を半日でしあげるように指示するのです。つまり、アローワンスを持つとしたら、1つの仕事単位や1日単位ではなく、翌日を予備日として2日単位で設定するのです。

・あくまでも指示は「通常やれる量」と「やれる時間」で行うことがポイントなのです。この指示の仕方により、新人は残りを半日でやらなければいけない仕事として強く認識します。この標準時間の考え方を身体に染み込ませるためには、標準時間ではまだ行えない時が大きなチャンスなのです。そうしなければ、その後も必ず不慣れな仕事に関しての「時間観念」が希薄になりますし、時間をコントロールするのではなく、時間という制約条件に振り回されることになるのです。新人のうちにまず覚えさせることは、質よりも量に対する意識です。

・「止まる」という行動は、考えるための行動です。考える内容の質をより良くするためには、考えるための材料ができるだけ多くなければいけません。そのために、日々「動いている」時に感じたことを貯蓄しておくほうが良いのです。多くの「気づき」は現場で実際に動いていると同時に起こっています。実は、多くの人が一瞬一瞬いろいろなことを感じ取り気づいているのですが、その瞬間に記録しないために忘れてしまっているケースが多いのです。または、他の気づきで上書きされていることが多いのです。これは、極めてもったいないことです。

・スケジュール管理の際、予定行動の横に、それを行っているときに感じた「気づき」を記載できるようにしておくことで、打ち合わせの途中にちょこっとメモするのです。その積み重ねが、止まって考えるときに多くのヒントとなって活かされるのです。「気づき」は筋トレと同じです。毎日意識して行い続けることで意義が生まれるのです。

・優先順位は、自分自身の時間管理と密接な関係がありますから、時間の捉え方について考える必要があります。時間には、二つの要素があります。一つは、締切りというデッドラインです。これは、誰もが意識せざるを得ないもので、これに追われて仕事をすることが多いのです。もう一つは、締切りのように区切られた時間ではなく、より適切なタイミングです。この二つの時間は、ハーツバーグの「動機づけ・衛生理論」を借りるとすると、デッドラインは衛生要因(それがないと、人々に不満を起こさせる要因)、ベストタイミングは動機づけ要因(それがあると、人々に満足を与える要因)ということになります。

・行動計画を立てるときに重要なことは、時間配分です。何を配分するのかというと、次の3つの時間です。(1)考えるための時間、(2)コミュニケーション(情報伝達・交換)のための時間、(3)実作業の時間。いい仕事をするため、生産性を高めるために絶対的に重要なことは、考える時間を確保することです。考える時間は事後と事前とありますが、それぞれ重要性の意味あいが異なります。事後に考える時間は、振り返ることによって知恵を蓄えるための時間です。一方事前に考える時間は、知恵を活用するための時間です。両者の時間がないと仕事の質は高めることができません。よく、動きながら考えるという人がいますが、動きながらの考えはとかく目先のことに焦点があうことが多く、長期的なテーマを考えることは余程でない限りできません。残念ながらこの考える時間をしっかりスケジュールに反映している人は少ないのが現状です。しかし、仕事のデキる人は必ず何らかの方法で考える時間を作り出しています。

・プロセスは大きく分けて3つあります。(1)「何をするか」という「要素」、(2)「どうやるか」という「手法」、(3)「いつまでにするか」という「時間」。この3つの要素の組み合わせが、ひとつの仕事のプロセス全体ということになりますが、「何を、いつまでに」という要素プラス時間だけに追われて仕事をしている人が多いのが実際です。優秀ラインを超えるためには、「何を、どうやるか」という要素プラス手法を組み立てなくてはなりません。

・「何を、どうやるか」ということは、仕事をする際に相手(顧客、関係者、上司、同僚など)の満足度をあげるために必要かつ重要なことは何かを考えることによって導き出されるものなのです。そのためには、まず「何をするか」を理解した上で、相手のためにそれを「どうやるか」考えるという手順を踏む必要があります。その手順を整理しておかないと「何を」「どうやるか」が混乱して収拾がつかない状態に陥るのです。「何を、どうすればいいか」ということに関する整理をしたうえで、ここに「いつまでに」という時間プロセスが加われば、行動管理は極めて高いレベルになるでしょう。

・実は、「頭の良さ」には大きく分けて2種類あることをご存知でしょうか? 「業務遂行能力」と「仕事の質を高める」思考力。頭の良さということは、ビジネスの世界では思考力が高いということと同義と捉えていいでしょう。ところで、「思考力」とは、いったい何でしょうか? その問いに答えるために、まず「思考」のメカニズムを確認したいと思います。通常、人は外から得た情報に反応して、発言や行動というアウトプットを決めます。その間、頭の中で情報を加工するわけですが、その加工工程が「思考」にあたるのです。加工の仕方は、それぞれ人によって千差万別で、厳密に言えば、全く同じ加工の仕方をする人はいません。つまり、人それぞれ加工の仕方の差があるので、思考の差異が生まれていると言えるのです。

・加工の仕方は千差万別ですが、大きな方向性として二つの傾向に分けることができると私は考えています。その一つは、自分の業務をテキパキとこなすために必要な思考の仕方です。仕事の覚えが速い、または覚えた仕事の再現力が高い、状況を理解できるというような能力を支えるのがこの思考の仕方で、私は「情報処理系」の思考と言っています。もう一つは、問題解決や新しいアイデアを生み出すために必要な思考の仕方です。問題解決をするにも、新しいアイデアを生み出すにも、取り組むべき課題・テーマを導き出すことが重要ですので、この思考の仕方を「課題形成系」の思考と言っています。

・情報処理系の思考について、その特徴としては、- 新しい仕事をすぐ覚える、- 会議などで、いろいろな意見を整理してまとめることができる、- 業務の処理能力が高い、- 計画的に動ける、- 動きにムダがない、というような点を挙げることができます。これらを支える思考力は、「情報整理」と「情報分析」を中心としたもので、インプットした情報から優先順位づけや最適手段の選択を可能にしています。これらは、通常業務の状況を見ていれば分かりやすいものですので、一般的に「彼は頭がいい」と言われる場合、この情報処理系の思考力が高いことについて言っていることが多いように思います。

・これに比べて、課題形成系の思考については、実際に問題が発生した時などでないと分かりにくく、通常においては見えにくいものです。そのため、こちらの頭の良さは平常時には分かりにくく、場合によっては把握することができないまま終わるということもあります。その課題形成系を構成する思考は以下のものです。- 大局的思考、- 本質的思考、- 情報統合、- 仮説組み立て、- 課題設定、- 施策立案。中でも、情報統合という思考が非常に重要です。情報統合とは、読んで字のごとくいくつかの「情報」を合わせることですが、ただ単に合わせるというよりは、合わせた結果から新しい事実を発見することを言います。いくつかの具体的な情報や事実から共通する要素を見つけ出せる力です。このように情報統合しなければ見えない部分にこそ、本質的な要素が隠されていることが多いですから、極めて重要な思考なのです。

・「課題形成系の思考力がないとできないこと」をやらせてみるときに、覚えておいてほしいキーワードがあります。それは、決して「楽をさせない」ということです。今までやったことがない、自分の力でなんとかしなければならない、という苦しい状況に追い込むことで、平常時とは異なる状況ができあがります。それはまさに本人にとってたったひとりで立ち向かう有事といえる場面で、自分の力で本質的な部分を見たり、あらゆる情報を統合しなければ答えにたどり着けないのです。その人の内面にある課題形成系の思考を引き出すための場面を設定した状態です。そのような苦しい状況を乗り越えるためには、本人の意識が強く働かなければなりません。その意識とは次のようなものです。- 問題意識、- 当事者意識、- 責任感、- 自立性、- 自律性。

・課題形成系思考力のポテンシャルがあるメンバーを育てる方法のキーワードは2つです。ひとつは、「アウトプットさせる」ということ、そしてもうひとつは、「思い切り任せる」ということです。

・アウトプットさせる方法として、「君の意見は?」という突然の問いかけを機会あるごとに行うことをお勧めします。会議や打ち合わせの場では常に問いかけのタイミングをうかがってほしいです。できれば、外部との商談という場面や、社長への報告会という緊張する場面に同席させ、その席で思い切り「君の意見は?」と聞くのも効果的です。その場合に、一言だけ付け加えてほしい言葉があります。「結論が出ていなくてもいいから、今の段階の君の意見や感想を聞かせてくれ」という言葉です。思考のプロセス段階をアウトプットすることは、その後の思考を整理する上でも効果があるということと、何より結論にいたっていなければいけない、という無用なプレッシャーをかけないためです。アウトプットのもうひとつの方法は、書かせることです。会議や商談などについてまとめさせるというのが効果的です。注意しなければいけないのは、どんな話があったかという議事録をまとめさせることではないということです。- 話の内容、- 議論のポイント、- 今後の方針、- 本人の意見、を反映させた内容にさせることが大事です。

・思い切り任せる:リーダーは思い切って難易度の高い仕事を任せる勇気が必要です。ただし、放っておけということではありません。途中経過などについて報告させる必要はありますし、相談したいと言ってきたら相談にのらなければいけません。ただし、あなたの意見を先に言うことだけは避けてほしいのです。どんなときも「君はどう考える」という問いかけをはじめにしてほしいのです。もし、考えが弱いと感じることがあった場合のあなたの問いかけは次のようなものにしてください。- それは何のため?、- なぜそうなるのだろう?、- もっと情報はないの?、- ポイントは何なの?、- 他のアイディアは考えた? つまり、広い視野を持たせることを第一に考えてほしいのです。本人にとっては答えを教えてもらえない苦しさがつきまといますが、課題形成系の思考を訓練するためには、乗り越えなければいけない大切な壁なのです。

「成果が上がるチームの作り方」の第2弾。18回に渡る連載で、ボリュームも大きいので、私のエントリーも数回に分けることにした。

・生産性の高い、成果が上がるチームを作るためにはメンバーの意識が適切な方向を向いている必要があります。成果は行動によって創出されますが、その行動自体の内容や質を決める根底となるのがその人の内面にある「意識」だからです。ちなみに、ここで言う「意識」とは、「仕事をする上での心構え」のようなものだと捉えてください。仕事をする上で常に自分が意識しておくことで、質の高い仕事ができることです。

・私が、多くの企業の人事評価の現場に立ち会い「困ったマイナス評価」となる人たちの特徴を聞き、まとめたものが次の要素です。(1)責任感がない、(2)言い訳が多い、(3)ミスを繰り返す、(4)言ったことしかやらない、(5)人の話を聞かない。

・「役割意識」=自分が果たさなければいけない役割を充分理解し、その役割を全うするために邁進する意識。「関係性意識」=他者の自分への期待、他者に対して自分ができることなどを理解しようとする、他者視点でものごとを捉える意識。この2つの意識を別角度で表現すると、「自分は何をしなければいけないのか」また「どの程度までやらなければいけないのか」という意識と言うことができます。そして、これらの意識を高めるためのキーワードは「気遣い・気配り」です。

・真に優秀な人材にするためには、「今までより良くするために何をするべきか」「新しい価値をどう生み出すか」ということに対する意識をしっかりと持たせることが大事です。「今までより良くするため」「新しい価値を生み出すため」意識は、次の2つの意識として言い換えることができます。「情報を大切にする意識」=取り巻く情報をより多く、正確に収集するために、自分の周辺にある情報に対して鋭敏になる意識。「自分で考える意識」=得た情報を活用してアイディアを創出するために、他の人に依存することなく、自ら考え出そうとする意識。この2つの意識を高めるために必要なことは、「気づき」です。

・みなさんは、「気づき」は意識してできるものでなく、あるとき偶然のように湧いてくるものだと思ってらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。「気づき」こそ、訓練で鍛えられるものです。「気づき」を鍛える訓練とは、例えば一日を場面ごとに振り返りながら「そこから何かヒントはないか?」と常に意識することで鍛えられます。その意味では気づきのための振り返り日記などは極めて有効な鍛錬ドリルになります。ちなみに、私も含め私の周辺で、この取組みにトライすることで、自身の思考の枠が広がったという実感を持っている人間が多く出ています。このような振り返り、つまり自分自身の経験から「気づき力」を高めることができると、「情報」に対しても鋭敏になると同時に、思考が活性化され、自分自身で考える力を高めることもできるのです。

・「気遣い・気配り」そして「気づき」をベースに「役割・関係・情報・思考」に対する意識を高めることができますが、もうひとつ付け加えたい意識があります。それは仕事の質に対する意識です。「役割・関係・情報・思考」を「質」に転換するために重要なキーワードは「こだわり」です。自分自身を高めよう、自分の仕事の出来をできるだけよくしようという「こだわり」が向上心となって自らの成長をうながすのです。ただ、この「こだわり」は価値観に近い位置にあるため、周りから育成・指導し難いという特徴を持っています。

・「意識」と「思考」という内的生産性は、実際のアウトプットとなる外的生産性に強い影響を与えます。具体的には、「意識」が行動を起こすエネルギーとなり、「思考」によって「行動」の質が決まるのです。

・実は、「意識」の高さと「思考」の強さの状態でメンバーを4つのタイプに分けることができます。意識の高さ、低さを縦軸に、思考の強さ、弱さを横軸に取った次のマトリクスを見てください。
- 意識も高く、思考も強い枠に入るのが「デキる人財」です。
- 意識は高いが、思考に弱さがある枠に「優秀な実行者」が入ります。
- 思考に強さがあるが、意識の低い枠に入るメンバーは、何らかの「管理の必要なメンバー」です。
- そして、思考も弱く、意識も低い枠に入るのは「困ったメンバー」です。

・リーダーは、できるだけ多くの人材を「デキる人財」にするために、意識面も思考面も育成するのですが、思考力は個々のメンバーが本来もっている潜在能力(ポテンシャル)によって発揮の程度が変わりますので、全員に思考力の高さを求めることはできないことを知っていなければいけません。むしろ、リーダーは思考力の強いメンバーを有効活用してチームの生産性を高めることを考えるべきでしょう。

・「管理の必要なメンバー」。意識が低い社員は、たとえ思考力が強くても仕事において全面的に信頼をおくのは危険です。なぜならば、意識が低いメンバーの場合、会社やチームのため、顧客のためではなく、自己都合で動く、人に依存するということが起きやすいからです。この領域にいるメンバーへの対し方として大切なことは、仕事への取組みいわゆる行動の管理です。意識が低いため「言うけれどもやらない」もしくは、「やることもあるが、やらないこともある」など実行動が伴わないことが多いからです。このようなメンバーを管理するための基本は、ひとりにさせないことです。常に上司・先輩と連携して動かなければいけない状態においたり、複数の人間で行わなければならない共同作業に組み入れるというような工夫が必要になります。

・「困ったメンバー」のダメージコントロール。自分からは動かない、いくら言っても理解しない、仕事の成果が低い、周りへ悪い影響が与えるというようなマイナス面がはっきりと表出するこのタイプは、「やらせれば、ちゃんとやる」ということが保証されません。「やらせても、できない」仕事が多いため、リーダーにとってストレスの素となっていることがしばしばです。このタイプのメンバーは残念ながら、やらせてはいけない仕事があることを理解しておく必要があります。ダメージが起こりにくい、万が一起きても決定的なダメージにならない対応可能な仕事が彼らに担当させられる仕事です。仕事というより作業に近いものになるでしょう。

・「優秀な実行者」の育て方。この人たちの強みは意識の高さですから、確実な成果をめざし真面目に自分の役割を果たすために努力してくれます。決められたことを確実に実践するための「実行者」としての価値は非常に高いと言えます。しかし、思考の面で若干の弱さがあることから、問題解決や新しい価値創造という場面で先頭に立てるタイプとは言えません。その強みを活かすためには、戦うための武器を持たせることが大事です。マニュアルの整備なども前線で戦う人にとって武器となり得ます。そして、このタイプのメンバーには、仕事をするときに必ず「何を」「どこまで」やらなければいけないのかということについて考える習慣を身につけさせることが大事です。仕事の組み立て、段取りなどを常に意識させることで、確実に業務遂行能力があがります。方向性が決まれば強みを発揮するこのタイプのメンバーを上手に導くことができれば、チームの実行力があがります。

最近のWebの記事は本当に素晴らしい。もちろんWeb情報は玉石混交なので、会計や法律など間違えてはいけない情報に関しては、注意深く参照する必要があるが、人材育成の考え方など、答えのないものについては、いろいろな視点からの意見を読むのが参考になるし、楽しくもある。

今回は「成果が上がるチームの作り方 」というタイトル、「人材開発・組織構築コンサルタントとして活躍する井上健一郎氏が、若手ビジネスパーソンにチームのモチベーションを上げ、組織的に課題に取り組んでいくための方法を伝授します」という触れ込みで、18回に渡って連載されている記事を拝見した。内容も濃く、ボリュームもあり、1冊の本になりそうなレベルである。コンサルタントとしての宣伝効果を狙ったものなのかもしれないが、このような情報が無料で入手できてしまうのは、ちょっと怖くもある。

さて、まずはいつものように、気になった箇所を引用させていただく。

・チームの成果を高めるために、リーダーが最初にしなければいけないことは、メンバーのマインドを前向きにすること、そのマインドを合わせることです、決して「行動管理」をすることではないのです。

・マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授は、成果の質をあげるためには、メンバー間の関係の質をあげなければいけないと説いています。

・人が話をするときに、相手の話に対してどのように感じるものなのかということを知っておくことは、リーダーとして指示を出す、指導するという時にとても大事なことです。以下に示す、コミュニケーションの基本4原則は、実に当たり前のことなのですが、「指示どおりやらせなければ!」「指導しなければ!」と考えていると、どうしても自分が言いたいことを言うことに重きを置いてしまい、それを言ったら相手がどう思うかということに無関心になってしまいますから、意識しておく必要があるのです。

 基本原則1 人は「聞きたくないことは、言われても腹に落ちない」
 基本原則2 人は「嫌いな人のいうことは、耳に入らない」
 基本原則3 人は「自分のことを分かってくれる人に、心を開く」
 基本原則4 人は「自分のためになると思えば、聞きたくなる」

・コミュニケーションの良いチームを目指すリーダーがしなければいけないことは、「目に見える行動だけに目を向けるのではなく、メンバーが内面で考えていることを良く聞き出すこと」です。そして、そのためには「対話する時間を何よりも優先して作る」必要があるのですが、業務報告などメールでのやり取りの増加、飲みにケーションなどの減少という実状があるように、想像以上に対話する機会が減っていることを強く意識しなければいけないのです。

・仕事の場面ごとの具体的なアドバイスも重要ですが、その前に対話を通して部下に伝えなければいけないことは、「リーダー本人の考えを示す」「会社の考え方を伝える」ということです。

・「やる気」を阻害する最大の要因は、「存在を否定」されたと感じさせることです。そう感じさせないために、リーダーが覚えておかなければいけないことは、全員個性が違うという至極当たり前のことです。当たり前のことなのですが、実際には意識されていないことが多いのです。成果主義という評価制度により、成果結果というひとつの尺度で全員を比較することが常態化していると、なおさらメンバーひとりひとりの個性を大切にする意識が薄くなる危険性があることをリーダーは認識していなければいけません。

・リーダーがメンバーのために意識してあげたいポジティビティは主に次の3つです。「興味(Interest)」「希望(Hope)」「誇り(Pride)」。前述した「メンバーの存在を認める」ということも、「誇り(Pride)」につながることですし、強みを生かして育成することは「興味(Interest)」や「希望(Hope)」につながるものなのです。

・バーバラ・フレドリクソン教授は著書でポジティビティを増やすため方法について述べています。その中で私がリーダーに望むという観点で言えば、「強みを生かす」「将来を夢見る」「絆を作る」という方法に取り組んでほしいと考えています。

・特に、チームで成果を挙げる上で大事なのが、絆を作るということです。絆を作るために大事な行為が次の3つです。「相手を尊重する」「相手を支援する」「相手を信頼する」チームビルディングには欠かせないものですから、強く意識してほしいところです。

・メンバーのモチベーション「やる気」を高めるために、リーダーはそれぞれの個性を把握しなければいけません。個性といっても、明るいとか元気があるというようなメンバー個々の性格や基本性能的なものを見るのではなく、ビジネス現場で発揮されている個性、すなわち仕事への取り組み方の個別特性を見てあげなければいけないのです。「どんな意識で仕事に向かっているか」「どのような場面で良さがでているか」ということを中心に見てあげなければいけません。

・「人間力」を大きな枠で分類すると、まず次の3つの「意識と力」に分類できます。そして、それぞれの意識と力を細分化すると次のようになります。(1)協働する意識と力 → チーム志向、コミュニケーション。(2)仕事をこなす意識と力 → 思考、行動。(3)成長する意識と力 → 成長意欲、育成。この6項目が、仕事をするときの人間力となります。

普段は、週末に惰眠をむさぼっている際に、非常に短い奇妙な夢を見ることが多いのだが、今回は普通の睡眠の際に、非常に長い夢を見た。途中で妻に起こされたのだが、何やら寝言のようなうなされているような声を発していたらしい。

私は猿。というか、周りもすべて猿だ。舞台は城。日本の戦国時代のような感じで、猿たちは忍者のような存在。敵と味方がおり、戦っている。私は猿忍者の小隊長的な役割のようだ。猿なので、階段などを使わず、屋根伝いに城を行ったり来たりできる。屋根に立ち止まって、チャンバラ(なぜか刀を持っている)してみたり、アクロバティックに相手をけり落としたり。

屋根の上の戦いが延々と続く。このあたりの詳細は目が覚めたとたん、忘れてしまったが、とにかく長く辛い戦いであったことだけが、頭に残っている。そのうち、味方側の形成が有利になってきたのだが、敵方が卑怯な手に出てきた。なんと味方の首領の子供を人質にとったというのだ。当方も、有能な戦士たちが怪我をしたり戦士したりしており、それほど優秀でもない私に、救出決死部隊としての白羽の矢が立ってしまった。

私と部下の二人で敵地に乗り込む。首領の息子は城から離れて城下町に捕らえられているらしい。偵察隊の情報をもとに、ある大きな商家に軟禁されていることを突き止め、敵地に乗り込む。何とか忍び込むと、首領の息子が、煮立った釜に今にも放り込まれようとしている状況。これはマズイと、手裏剣で攻撃するが多勢に無勢。私もやられる、と思ったところで、起こされた。

あのまま、夢が続いていたら、果たしてどんな結末が待っていたのか???

今日はオムロン創業者の立石一真氏。立石さんについては、名著『「できません」と云うな』で、その存在を初めて知って大変感銘を受けたのだが、私の履歴書では、そこにも書かれていなかった下積み時代の苦労が赤裸々に描かれている。テキヤ経由で商売したなど、今日であればコンプライアンス的に微妙な表現も混じっているが、これは時代的には問題なかったことということであろう。まぁご愛敬である。

それにしても、昭和の高度経済成長期とはこのような時代であったかと、改めて思い知らされる瑞々しい自伝。お隣の中国に対していろいろと文句を言っているが、ひと昔前の日本も、ビジネスマナー、環境への配慮、人々の民度など、他人のことを言えた義理ではなかったことがよく分かる。

それでは、気になった箇所を引用。

・(親友の)大坪君は長男で、1人の弟と3人の妹がいた。あるとき遊び仲間の1人が私にあるうわさをささやいてくれた。それによると大坪君の病院の看護婦の間で、私がひんぱんに出入りするのは彼の妹たちの家庭教師のアルバイトをねらっているのではないかということだった。私にはそんな気持ちは毛頭なかったので驚いたが、母にも話さず、何日か悩んだ末、一つの“悟り”を開いた。「人にほめられて有頂天になり、人にくさされて憂鬱(ゆううつ)になるなんておよそナンセンス。なぜなら、そんなことぐらいで自分自身の値打ちが急に変わるものではない」と。

・(重要な機械の設計を一手に任されたが、不具合が頻発したときのこと)しだいに見通しが暗くなるにつれ、笠原営業部長と大同電力の支配人との間に善後策が協議された。私はそのつど、技術的な説明のためにかり出された。いずれにしても、この機器の扱いが困難な理由は、日本では未経験の油入形だったからで、お互いに話し合い、致命傷にならぬよう注文を解消してもらった。この苦い経験で、私は新商品を出す場合は、万一不都合が出たら、どう手当てするかをあらかじめ考えておく──いわゆるカリキュレーテッド・リスク(計算された危機)の思想がいかに大事かということを、いやというほど思い知らされたのであった。

・(何度も徹夜をして不具合を解消し、機械の導入に成功したときのこと)おかげで、井上電機では私が誘導形保護継電器のベテランになった。面白いことには当時としては、この技術をもとに将来商売を始めようなんて、毛頭考えていなかったが、くしくもこの技術を身につけていたことが、のちに水先案内のごとく私を立石電機創業へと導いていくことになるのである。まことに下世話にいう“芸は身を助ける”である。私はつねづね若い社員にいう。「いつも自分の受け持ちの仕事に打ち込め。功利的な思惑がなくても将来必ず何かに役立つときがある」と。

・8年間の井上電機勤務は、それが200人足らずの中小企業であったがゆえに、直接担当した仕事はもちろん、その他の仕事の様子ものみ込むことができた。このことはのちに独立して立石電機を経営するようになってから大いに参考になった。これは思いもかけぬ拾いものであった。

・(上司が部下の実績に嫉妬して、重要な仕事を任せないということ)これはまことにもったいない話で、企業の大事な技術をフルに活用する政策としては愚の愚なるものではないかと思う。私は自分で商売を始めてからは、この苦い経験を生かし、若い社員にはヒントを与えて考案・特許の手助けをしてやり、成功したら、その考案・特許は本人を考案者・発明者として出願させ、花を持たせるようにしている。この要領で、一度創造の醍醐味(だいごみ)を覚えると、もうしめたもので、はずみがついて次々と発明、考案するようになる。こういうふうにするのが人を育てるということだと思っている。

・(創業期に借金で苦労したことを受けて)このとき私はハラに決めたことがある。借金をしないということ。事業の借金にしても失敗すれば、あいつは資本金を食ったといわれる。所帯の借金は、つい心安立てに親類、友人に無理をいうことになるが、生活費を借りるわけでなかなか返せないし、人生においてかけがえのない大事な交友を失うことにもなりかねない。この借金をしないという信条は後年、事業の再建などで、大いに役立ったと思っている。

私の履歴書の復刻版・第2弾はソニー創業者の井深大氏である。ソニーについては、一時、たくさんの本を読み込んだのでその歴史については、おおよそ知ってはいたが、創業者である井深氏の幼年期や創業間近のエピソードなどは、初めて目にするものもあり新鮮であった。日本の総合電機メーカーは、落ちるところまで落ちた感があるが、ここへきてパナソニックとソニーの復調が著しい。やはり、創業者がしっかりしており、きちんとした経営理念を持った会社は強いということであろうか。

なお、今回の履歴書はエピソード中心であり、経営理念や哲学的な記述の多かった松下翁の回にくらべると、引用したいと思うところが少なかった。そんな中、「小型ラジオ――部品屋くどいて製作 全世界へ50万台以上売る」という回が、非常に日本的で印象的だったので、引用しておきたい。反省の意を込めて。

成長型トランジスターはさっぱり成長せず金をくうばかりで、なかなか使えるものが出てこない。私はこのころトランジスターに手を出したことはたいへんな失敗だったかと幾度も反省させられた。それでもやっとどうにか使えるものがたまに出てくるようになった。それを待ち構えていてラジオにつけて働いた、働かないで大騒ぎであった。

歩どまり5%、つまり100個こしらえて及第するものが5個になったとき、ラジオの生産に踏み切った。前にも書いたように世界で2番目のトランジスターラジオの商品化はかくしてできあがったのだが、世界で2番になれるのは当然である。あたりまえの企業家だったらこんなむちゃな計画は立てるわけがない。しかし歩どまりは必ず向上する目算があったので私は思い切って決断したのである。

もしあの時、アメリカでものになってからとか、欧州の様子をみてからこれに従ってなどと考えていたとしたら日本が年間500億円の輸出をするトランジスターラジオ王国になっていたかどうかははなはだ疑わしく、したがって今日のソニーもありえなかっただろうし、この無謀ははなはだ貴重な無謀だったと考えている。

さて、見本のラジオができあがるとこの歩どまりでは相当高価なものになるし日本での販売よりは海外に売る方がよさそうだということで、盛田君はさっそく米国に飛んだ。したがってトランジスターラジオは生まれるときから輸出品になる運命を負っていたようだ。

どこにもない物をつくるのだから、いくらでも売れてしまうのだったが、なにしろ遅々として上昇しない歩どまりとにらみ合いの生産で、思う存分売ったとはいえなかった。けれども私は後になって世界中にソニーが有名になったのは、こんな時代から売り込んだおかげだと思っている。

次にトランジスターをいちばん生かすのはうんと小型なラジオをこしらえることだと思って小型化を企画した。最初は部品屋さんが全然相手にしてくれないのをやっと頼み回って、しぶしぶきいてくれたのが今日のミツミ電機とフォスター電機である。今日世界中で小さなラジオを製作するには大なり小なり日本の部品屋さんのご厄介にならなければならないのもこんなところに起因している。

こうして63型と称したポケットへはいるラジオが世界で最初に生まれた。これも生まれるまでは社内でも大反対があった。大きなラジオでさえ1万7000円なので高くて国内販売はなかなかのびない。これを小さくしたらもっと金を取りにくくなるというのが営業の声だった。しかしこの63型はついに家庭のラジオから個人のラジオへの革命のいとぐちを作って全世界へ50万台以上も売れていった。これはもちろんラジオとしての世界記録だった。クリスマス・シーズンには米国へも空輸しなければならないぐらいになった。

しかし、国内メーカーもだまっていたわけではなく、約1年半か2年ほどのギャップで追い付いて来た。かくて日本は世界最大のトランジスター生産国になったのはよいが、たちまち乱売が始まり、トランジスターラジオの安値競争は世界的に有名になって値段はどんどん下落した。新しいマーケットを開拓する努力をせず、他人の築いたマーケットにわり込み、ただ値段をくずすだけしか能がないという典型的日本商法をいやというほど知らされた。

これを切り抜け、振り払うために、われわれは短波用、超短波用(FM用)トランジスターを開発しなければならなかった。おかげで世界最初のトランジスター短波受信機、FM受信機を出すことができ、これがトランジスターテレビにまで進展することになった。過当競争も日本にはよい刺激剤と考えるべきかもしれない。

人がやったというニュースだけで日本では同じものがすぐにできるというふしぎな性質がある。これはそれを作るだけの技術力はじゅうぶん持っていながら、これを思い切って企業化しようという勇気にかけていることを証明しているようだ。すべての分野で日本の技術力に自信を持ち思い切った決断を下せるようになったときこそ真の日本の暁は訪れるだろう。

日経新聞の電子版で私の履歴書の復刻版を連載している。昭和の名経営者たちの履歴書が読めるのはありがたい。さっそく、印刷して一気に読了した。まずは、やはり松下幸之助翁。創業当初から、随分と哲学的で壮大な構想を抱いていたことを知り、大成する人はどこかぶっ飛んでいるんだなと感心した。

それにしても昭和51年、1976年の時点で書かれたものとは思えないほど、現代の日本や世界の他国が抱えている問題とシンクロする指摘が多い。詳細は下記の引用に任せるとして、簡単に列挙してみよう。

・日本の貧困からの脱出は世界の新興国の貧困問題解決のヒントになるかもしれない。
・税金がどのように使われるかという問題はタックスヘイブンや企業のグローバル化が加速した今、別の課題を浮かび上がらせている。
・技術ロイヤリティと経営指導料の話は役務の輸出入や移転価格の問題ともとらえられる。
・自前主義(垂直統合方式)は水平分業という波に飲まれて大きく転換しようとしている反面、その揺り戻しも起こりつつあるように感じる。
・日本が観光立国を目指すべきだというのは、ようやくこの数年で実現されつつある。
・貿易論はTPP問題に通じる。
・週休二日制の導入は、現在の働き方改革の走りである。
・所得倍増計画に対する批判は、アベノミクスに対する批判のようにも感じる。
・総合電機メーカーの過当競争と数の多さの指摘は、いまだ改善していない課題の一つ。
・過疎の問題、地方創生の問題も同じく、まだまだこれからの問題。
・最後に、経営者の引退問題は、セブン・アイ・ホールディングスやソフトバンクの騒動が記憶に新しい。

果たして、松下翁がすごかったのか、日本が進歩していないのか、その両方か。。。それでは気になったところを引用。

・このころの私には商売に対し反省がわいていた。いままでは世間の通念どおりの商売をやってなんとかうまくいっていたが、次第にこれでは物足りないという気持ちが出てきた。一体生産者の使命はなんだろう、こんなことを連日夜おそくまで考えた結果、私なりに一つの信念が生まれた。

それは簡単にいうと、この世の貧しさを克服することである。社会主義者みたいなことをいうようだが、たとえば水道の水はもとより価のあるものだ。しかし道端の水道を人が飲んでもだれもとがめない。これは水が豊富だからだ。結局生産者はこの世に物資を満たし、不自由を無くするのが務めではないか。こう気付いた私は昭和7年の5月5日を会社の創業記念日とした。開業した大正7年から14年も経ってから新しい創業記念日を設けるとは不思議に思われるかもしれないが、私が使命を知ったときとしてこの日を選んだのだ。そしてこの使命達成を250年目と決め、25年を一節、十節で完成することにした。つまりわれわれの活動は第一節でこの基礎を固めることだ。

少し話がそれるが、ここらで私の商売に対する考えを簡単に述べよう。創業時代、やや油の乗りかけたときのこと、熱心なある同業者から「どうも仕事がうまくいかないが」と話しかけられて私はこういった。「商売というものは損したりもうけたりしながら成功するものという考え方があるが、それは誤りだ。商売は真剣勝負と同じで、切られているうちに成功することはあり得ない。やればやっただけ成功するものでなければならぬ。うまくいかないのは運でもなんでもない。経営の進め方が当を得ていないからだ。だから確たる信念を持っている人は不景気のときほど、もうけるではないか」。

・あるとき、真冬の海水浴場を見に行きたくなった。「この近くに海水浴場はありませんか」とたずねたところ、相手の人は「なぜ、いまごろそんなところを見たいのか」とけげんそうな顔をしていた。行ってみると、だれもいない海水浴場なのにきれいに整備されていた。便所をのぞいてもこれが公衆便所かと思うほどよく手入れされていた。私が思わず「きれいだなあ」と感嘆すると、案内の人は「きれいなのは当たり前だ。そのためにわれわれは税金を払っている」と答えてくれた。

私は初めてアメリカの繁栄の原動力を垣間見る思いであった。日本人は政府に税金を納めたら、政府がそれを何に使おうと無関心である。自分が義務さえ果たしたら、それでいいと思う。ところがアメリカは違う。税金は自分たちが生活や事業を営むうえで必要な政治をやってもらうためにあるのだと考えている。

私は、このようなアメリカ人の税金に対する考え方に思い至ったとき、「民主主義というものは繁栄主義だ」と強く感じた。日本も真の民主主義になったら、必ず繁栄する。私は1日も早く、日本において民主主義の誤りのない普及に努めねばならないと心に決めたのである。

・技術の導入料は当然出さなければ、相手が承知しないし、提携によって、3人なら3人の技術者が合弁会社に常駐するのだから、それは認めなければならない。しかし、松下電器の役割はどこにあるのかということを静かに考えてみると、松下電器はやはり経営担当者というものを新しくできる合弁会社に送ることになる。その経営担当者を無料で送る理由はないと私は思った。それで「あなたの方が3人の技術者を寄こすのであれば、こちらも経営担当者というものを赴任させて経営をやるのだ。そこで初めて合弁事業というものが成り立つのだ。だからあなたの方に技術指導料を納めると同様に、こちらにも経営指導料を納めてほしい」と言ったら、非常に困ったような顔をしていた。しかし、私は経営の価値を正当に評価すれば、特許料や技術指導料と同じように、当然、これは主張してもよいことだと思う。

この点、われわれ日本人は、経営というものに対する価値判断に、まだ目ざめていないというか、きわめてその意識が薄いようだ。そこに今日の日本の経営体が弱体化する原因がひそんでいるのではないだろうか。

・昭和28年、大阪府門真市に新しく中央研究所を建設した。ここを基点にして松下電器の技術革新は本格的に始まった。この中央研究所は、基礎研究はもとより、来るべきオートメーション時代に対応して、新しい機械設備、冶工具の研究開発までを一貫して行なうために、専門の機械製作工場をもっていた。

この機械製作工場を新設したのはアメリカを見て感じるところがあったからだ。すなわち昭和26年1月、私が初めて渡米したとき、アメリカで最新式だという乾電池の製造機械を買ったが、2度目の渡米で、ある乾電池工場を見学して、さきに買った最新式だという機械が、その工場では一番古い機械になっているのを見て驚いた。一般に売っている機械は平凡なものであって、一流メーカーは自社で考案した機械をもち、それを門外不出にして公開しない。したがって、一流メーカーのもっている機械は、一般の機械業者が売る機械よりも数段すぐれている。

この事実を知って私は、自主的な気構えなしに教えをうけようとしたり、自らの意思なしに他人の力や金に頼るのは力の弱いものである、自らの考案、労作にあらずして、本当の考案はあり得ないことを痛感したのである。自らの研究考案によって、本当に生きた仕事をしていきたい。こう思って私は、専門の機械製作工場をもったのである。

・こんな美しい景観の美を、日本人は今まで自国のみで独り占めしていたのです。考えてみればもったいない話で、石炭や石油ももちろん大事ですが、美しい景観もまた立派な資源だとすれば、むしろ日本の場合は、その重要さにおいていかなる埋蔵資源にも勝るとも劣らないと言えるのではないでしょうか。

そのうえ、日本は東洋のはてにあります。しかし、日本が欧米から遠いことは、決してマイナスではなく、むしろプラスです。つまり、総じて遠くに魅力を感じるのが人間の心理だからです。この点、日本はおあつらえ向きです。まして今日は飛行機の時代です。

戦後、経済自立の道として、工業立国、農業立国あるいは貿易立国などとやかましく叫ばれて、多くの金も費やされました。しかし私は観光立国こそ、わが国の重要施策として最も力を入れるべきものと思います。

というのは、なんといっても観光立国によって生み出されてくる最大の利益は、日本が平和の国になるということにあるからです。ですから観光立国は何も金もうけのためだけでやるのではありません。持てるものを他に与えるという博愛の精神からも、また国土の平和のためという崇高な理念からも、堂々とこれを実行すべき唯一の立国方策なのです」。

・「なぜできるかと申しますと、これは広く一般大衆の要望だからであります。すなわち、これはわれわれに課せられた大衆の要望を、それをそのまま数字に現したにすぎないのでありまして、私ども自体の名誉のためとか、あるいは単なる利欲のために行なおうとするものではないからです。いわば社会に対する義務の遂行です。だからわれわれの働きに怠りさえなければ、これは必ず実現できると思うのです。われわれは世の中に奉仕するという崇高な義務に基づいて、仕事をやっているのでありまして、名誉とか成功とか、そういういわば私的な欲望から発しているものでは断じてないのであります。

言い換えますとこれは、私どもが大衆と、“見えざる契約”をしていることになるのであります。もちろん別に契約書を交わしたわけでもなければ、口約束をしたわけでもありません。しかし、われわれの仕事の使命をはっきり自覚するならば、そこに“見えざる契約”“声なき契約”が交わされているのを知ることができるのであります。だからこの“見えざる契約”を素直に見、“声なき契約”を謙虚に聞いて、その義務を遂行するために、常日ごろから万全の用意をしておくことは、これは私ども産業人に課せられた大きな義務だと思います」。

・そもそも貿易の本質というものは、自国内の求めを満たした上で、それでもなお余裕があれば、それを他に分け与えるというところにあると私は思う。例えば、自分の腹は減っているのに、持っているものを他に与えるということは、これはこれでたいへん意義のあることだとは思うが、自分は食わないで、他人に物を与えたら、そのときはよくても、あとが続かない。いつも他の人に物を与えたいというのであれば、まず自分の腹を満たしておかないと、他人に与える活動すらもできなくなってしまう。貿易というのはこれと全く同じで、自国内を満たしたその上で、海外に出していくというのが、その正しいあり方であろう。

私は貿易によって、自国も相手国もともに繁栄しなくてはならないと思う。そのためには、相手国の身になって考え、相手国に喜んで受け入れられるものを工夫し、生み出していかなくてはならない。そうした使命感をもって貿易という事業を進めていかない限り、日本にどれほど余力ができたとしても、貿易の本質を全うすることにはならないと思う。私が貿易についてあえて社員の奮起を促したのは、こうした意味からであった。

・「これからは国と国との間の競争が激しくなります。やがて、自由貿易になります。為替も自由になります。少なくとも両3年のうちにはそうなってまいります。そうすると、日本は、世界の本舞台に放り出されるのであります。実力がなければ、日本は非常な窮乏に陥ります。今はいろいろな保護政策をやっておりますから、アメリカの品物がよくても、欧州の品物がよくても、日本は輸入を許しておりません。けれども、自由貿易になってきますと、欧米の物を買おうと思えば買えるのです。電気製品でも、欧米にいい物があれば、どんどん買えるようになるのです。従って国際競争に勝たなければ、日本の企業は非常に衰微するのです。今は競争といっても、日本国内の同業メーカーと競争しているのでありますが、今度は世界の同業メーカーと競争しなければならないことになります。そのときにひとたまりもなく負けてしまうということではいけないのであります。

そうなったときにも、松下電器の製品はどんどん海外に出て行って、海外のメーカーと競争する状態でなければならないのであります。国内の同業メーカーと競争しているような生やさしいものではないということを覚悟しなければならないのです。そのためには、工場の設備をさらに改善し、オートメーション化するものはオートメーション化し、能率をウンと上げて、海外に覇を唱えるといいますか、海外との競争に打ち勝つようにしなければならないのであります。

そうなりますと、私はどうしても週2日の休みが必要になってくると思うのです。どういうわけかと申しますと、非常に毎日が忙しくなって、今までゆっくり電話をかけていたというようなことでも、ゆっくりかけていられない。3分間かけていたものでも、1分くらいですますように、しかもそれで用件がチャンと果たせるように訓練されなければならないのです。工場の生産もまたその通りです。つまり、8時間の労働では相当疲れるということになります。ですから、5日間働いて1日は余分に休まなければ体はもとに戻らない、ということになろうかと思います。

・昭和36年に、私は文藝春秋社から依頼されて雑誌『文藝春秋』12月号に「所得倍増の二日酔い」という一文を寄せた。大変な反響で、私はこのとき“読者賞”というのをいただいた。当時は、池田総理の提唱した“所得倍増論”が世論の中心を占めていたころで、人々は日本経済のもっている体質に目を向けることなく、ひたすら高度経済成長への道を歩んでいた。そうした動きに対して、私はひとつの警告を発する意味もあって『文藝春秋』に所信をまとめてみたのである。

その一文の中で私は、戦後日本の発展してきた姿を振り返りながら、「日本は自力で発展してきたのではなく、ほとんど他力本願でここまできた。他力によって日本の経済は戦後16年でこれだけの発展をしたのだと思う。そのことを自己の力によって発展したかのごとき錯覚を国がもち、政府がもち、国民がもっているというような感じがする。そこに大きな問題がありはしないかと思う」と、前年までは順調であったが、ようやく金詰まりの企業もでてきた状況や保有外貨も少なくなってきた日本の経済界に反省を促しておおよそ次のように説いたのである。

「ご承知の通り、アメリカから100億ドル以上もの金が、その16年間に日本に入ってきています。技術も随分入っています。しかし、今日大半の企業がそれほど危機感をもっていないのは、金をもらい、技術を導入し、経営の方法や考え方までも教わる状態の中で、日本が今日こうなったのは自力によるものであると錯覚しているからです。また、そのために、経済の行き詰まりというか、転換が急速に起こってきたといえます。ですから今度の経済危機は、相当深刻なものだと思います。

政府は貿易の自由化を近く90%行なうと発表しています。そうなりますと、設備の近代化を図って、品質のよい、原価の安いものを作りだしていかないと国際競争に負けることになります。ところが、今日では逆に物価は上がってきています。そのために輸出が伸びにくくなっています。これが今日の日本の状態です。

私は所得倍増はけっこうであると思います。しかし、それをやるためには、なんといっても基本的な力が必要です。いままで時速50キロで走ってきた自動車を、所得倍増ということで、100キロで走らせるには、自動車そのものを吟味しなければなりませんし、また、運転手の腕も吟味しないといけません。そうしないと、50キロで安全運転していたからといって、100キロになっても安全運転ができるとは言えません。と同時に、私はやはり国民精神の基体的な作興【さっこう】運動というようなものを基礎に所得倍増をのせていかなくてはならないと思います。一つのことを行なうにあたっては、やはり精神的な面も並行させていかなければならないのに、どうもそういう呼びかけはほとんどありません。

所得倍増の言葉に酔って、非常に甘い考えになっているのが、日本経済の現状であります。だから、いわばザルに目ばりをせずに、倍増の水を流したようになっています。そこでザルに目ばりをしなければなりません。その目ばりが、とりも直さず国民の精神だと思います」。

・「一昨日から、みなさんはいろいろ苦情を言われた。それに対して、私は会社の立場からみなさんにいろいろ反撃しました。率直に言って、私はみなさんがたにも悪い点があると思う。今日集まっていただいているなかにも三十数社は、ちゃんともうけておられる。松下電器が申している理屈に、分がないとは思えません。しかし、2日間十分言い合ったのですから、もう理屈を言うのはよそうではありませんか。よくよく考えてみますと、結局は松下電器が悪かった。この一語に尽きると思います。みなさん方に対する私どものお世話の仕方が不十分でした。不況なら不況で、それをうまく切り抜ける道はあったはずです。それができなかったのは松下電器の落ち度です。ほんとうに申しわけありません。

私は、いまから30年近い昔のことを、ふといま思い出したのであります。電球をつくってみなさん方へ売りに行ったときのことです。“いまはまだ電球については信用や品質ともに超一流ではありません。いわば幕下です。しかし将来はきっと横綱になってみせます。どうかこの電球を売ってください”私は、こうお願いして回りました。“いや、ほかのものならともかく電球だけは売りたくない”と、おっしゃる方もありました。“値段を安くしたら売ってあげてもいい”とも言われました。私は、そうしたみなさんのお言葉に対して、はなはだ僣越【せんえつ】な言い方でしたが、“いま、みなさんにこれを育てていただくことができなかったら、どうしても超一流の電球は日本に生まれない。そうお考えになって、みなさんのお力で横綱に育ててほしい”と、頼んだのであります。

そうしますと、私の頼み方がよかったのかどうか分かりませんが、“よし、分かった。キミがそこまで決意して言うなら売ってあげよう”と言って、電球を大いに売ってくださったのです。そのおかげで、松下電器の電球は世の中に出、その後も改良に改良を重ねて、今日、ようやく名実ともに横綱に育ったのです。

松下電器の発展の過程には、こういうことがあったことを、私はいま思い出しました。そういう並々ならぬご愛情なり、力をいただいている松下電器が、今日の体たらくは、実は申しわけのない不始末だと思うのであります。力なき姿であったときの松下電器でも、このように共鳴いただいて、ご商売をしていただいたのであります。

そういうことを考えるにつけ、今日、松下電器があるのは、本当にみなさんがたのおかげです。私の方は一言も文句を言える義理ではないのです。恩顧を忘れてしまって、ものを見、判断し、考えるから、そこに、一つの誤りなり弱さが現れてくると思うのです。

これからは、心を入れ替えて出直したいと思います。そのことをお約束します」。

そう話しているうちに、万感胸に迫るものがあって、私は思わず目頭を熱くし、絶句した。ハッと気がついてみると、半数以上の人がハンカチを出して目をふいている。もうみんな粛然としてしまった。こんな情景は私も生まれて初めてであった。この話のあと、妙なもので、それまでは攻撃的だった会の雰囲気がガラリと変わった。

「われわれも悪かった。これからはお互いに心を入れ替えて、しっかりやろう」と言ってくれる人が続出した。私は、このとき、人間の性は、やはり善なのだ、相手の立場に立って率直に話し合えば、必ず有無相通ずるものがある。それが人間の心なのだ、ということをつくづく感じたのである。

・「日本の一流メーカーが参加して、7社ありますね」と答えると「そうですか、7社もあるんですか」と、驚いたような顔をしている。そこでさらに聞いてみると、「私の銀行は世界中にカネを貸していますが、電算機メーカーは、ほとんどどこも経営がうまくいっていない。アメリカでもいまやIBMとGEなど数えるほどしかありません。それもIBM以外はしだいに衰微しているんです。日本に7社もあるのは多すぎます。そう思いませんか」と言う。

私にもピンとくるものがあった。「いや実は、私も内心ではちょっと多すぎると思っているんです。日本では3社ぐらいでいいという感じがしてるんですがね」と言うと「そういうあなたのお考えは賢明でしょうな」と言って、彼は帰って行った。

私は考えた。私もかねがねそうではないかと考えていたが、彼はカネを貸した先の実情を見て、そう言っている。判断に誤りはなかろう。そう思うと、これはここで思い切って撤退しようと迷わず決断したのであった。

・「わが国の各企業は戦後、借金経営でここまでやってきた。それはいわば非常時であったから、それでよかったかもしれない。しかし戦後20年たった今日のわが国は、もう戦後の非常時ではない。いわば常時と考えなければならないと思う。そうすると、戦後の特殊な事情のもとで許されてきた信用膨張、借金経営の姿を、いわば当たり前の姿として今日にそのまま当てはめることは好ましくない。もうそろそろ、常時における会社経営のあり方というものに、考え方を切り替えていかねばならない。アメリカのように余裕のある、安定した経営の姿に移行させていかねばならない。そういう決意をすべきときにきていると思う。その一つの経営のあり方として、私は、ここで“ダム経営”というものを提唱してみたい。

ダムというのは、なんのために造られるかというと、川の水を流れるままに放っておいて、その値打ちを生かさないというのはもったいない。また、もし一度に水が増して洪水になれば、多くの被害が出るし、日照りになって水が足りなくなっても困る。そこで河川の適正なところにダムを設けて流水の調整を図り、あるいは水力発電に利用するわけである。つまり、天から受けた水は、一滴もムダにしないで有効に使おうじゃないかというのが、ダムを造る目的だと思う。また、そうしておけば安全である。会社の経営についても同じことが言えるのではあるまいか。つまり経営にもダムが必要ではないかと思う。

私の言う“ダム経営”とは、最初から、例えば1割なら1割の余裕設備をもっているということである。そうすれば、経済的に少々の変動があったり、需要の変化があったとしても、それによって品物が足りなくなったり、値段が上がったりすることはない。そのときは余分の設備を動かせば事足りる。その逆に、もし品物が余り過ぎるようだったら、設備を少し余計に休ませればよい。これはあたかもダムに入れた水を必要に応じて徐々に流しているようなものだ。資金、在庫、人材にも同様のダムが必要である。

このダム経営の意義をお互いに正しく認識してやっていくならば、健全で利潤の高い経営の姿に移行することができる。そして、ダム経営によって社会に真の安定的繁栄がもたらされるのである」。

・「これは相当の規模の会社では、初めての試みであり、世間からも注目されています。いろいろ考えてみますと、松下電器全体としては、まだ週5日制に入る十分な体制が整わない半ばで、実施の時がきたという感が深いのです。ですから、きょう5日制に入ったことが誤りであったと言われないために、引き続き相当の努力を要すると考えています。

もう一つ考えなければならないことは、若い社員がふえた1日の休みを、単なる遊びに終わらせないで、経済人、社会人として向上していくための勉強に充てるかどうかです。会社がつきっきりで指導するわけにはいきませんが、導くべきは導き、言うべきは言って、誤りないようにしなければなりません。

経済界は今、非常に悪い状態にあります。毎日のように倒産会社が出ています。しかし、新しい販売制度の改革と、よい製品をつくることによって、思わしくない環境下においても、松下電器の経営は一応安定すると思いますが、外部の大きな変化によって災いされる面が起こってくることも考えられます。2、3年前から私は“経済国難”がくることを警告してきましたが、ちょうどその“経済国難”に直面しているときに、私たちは週5日制を実施するのです。これは容易ならぬことだと思います。

みなさんは、これらの点をよくお考えいただきまして、5日制の先輩国であるアメリカ以上の合理的経営を生み出す決意をもっていただきたいと思います。そして日本を一挙にアメリカに近づけたい。そして日本人、日本国の声価をあげるようにしたいと思います。その先達を松下電器が担うのだという意気込みでやってまいりたいと思います」。

・青 春
青春とは心の若さである
信念と希望にあふれ、勇気にみちて
日に新たな活動をつづけるかぎり
青春は永遠にその人のものである
 松下幸之助

・私は、「経営の価値ということにも言及して、日本の企業をより一層力強く発展させるためには、お互いが経営の価値を高く評価して、外国の企業にそれを認めさせるとともに、経営にみがきというものをかけていかなくてはならない。そのみがきをかける一つとして、私は本来高い価値をもった経営について『経営とは芸術なり』という見方もできる」と話した。

つまり、芸術は、非常に価値の高い創造活動であるが、経営もそれと同じように高い価値をもった創造活動といえるのではないだろうか。例えば、いま1枚の絵を描くという場合、絵を描くには、鉛筆なり絵の具なり墨なりを使って、さまざまな方法で白紙に何かを創造していくが、できあがった作品が、それを見る人に「これはすばらしい絵だ。この絵には作者の魂が生き生きと躍動している」という感動を起こさせるなら、その絵は立派な芸術作品といえる。同じように、企業経営も、経営者はまず基本方針を定め、人なり資本なりをどのようして調達するか、工場はどういうものを建てるか、また何をどうつくり、売るか、ということについて、白紙の状態からひとつひとつ積み上げ、各方面にわたるバランスを図って、細かい心くばりのもとに経営を進めていく。

言うなれば、絶えざる創意工夫を通じて、無から有を生み出し、あらゆる面でよりよい創造活動を行なっていくのが経営であると思う。だから、それらの経営活動が、非常に適切にバランスよく行なわれるならばそこに経営者の生命が生き生きと躍動した姿であらわれ、それを見る人に大きな感動を与え、すばらしい経営だな、と嘆賞されるようなものが創造されてくる。私は、経営というものは、本来このように非常に高い価値をもった芸術的行動だと思う。

ところが、残念なことに、世間はそう評価してくれない。徳川時代に「士農工商」といって、商売を低くみた見方が、いまだにあり、商売は金もうけのためにやっているのだ、と低位に考えられている。しかし、私は決してそんなものではない、と思う。人間の共同生活を、よりよい姿に変えていく、という総合芸術が、商売なり経営なりに息づいている。そして、その中には真理が含まれており、善も美も生かされていて、国家社会のために大きな貢献をするものが、われわれの経営である。そう考えると、お互いは総合芸術家といえよう。

・「本年は、わが社の創業50周年であると同時に、国家として明治100年に当たります。明治は、政治、産業、教育の各面で、新しい近代的な感覚のもとに国家の経営に入ったと申していいと思います。以来、国内の整備、発展に努め、戦争などいろいろの起伏もありましたが、そういう起伏を乗り越えて、線でこれを結びますと、結局、上昇の一途をたどってきました。そして、100年たった今日、日本は多くの点において大きく脱皮、発展をみたと言っていいと思います。

この記念すべき明治100年の正月に、現在、世界の繁栄の中心をなしているアメリカから、大統領の特使が派遣されてきました。最近、アメリカの経済も、なかなか安泰ではあり得ない、ドルの安定を図るとか、その他経済上の問題に関しましても、日本にも協力をしてもらいたい、という意向が伝えられたのです。100年前は、あらゆる外国の知識を吸収するために、海外に援助を求めなくてはならなかったのですが、明治100年のこの年の正月に、世界第一の実力のある国、アメリカから頼られる国となったことは、まことに意義深いことであります。アメリカから頼られるというのは、とりも直さず、世界から頼られる国になったと言ってもいいでしょう。

これからは、お互いに世界的な地位に目ざめた日本人として、明治維新の志士のような強烈な信念に立ち、身を挺して、世界に範を示し、世界の繁栄に尽くす昭和維新、世界維新の志士の役割を果たそうではありませんか」――。

・これからは、積極的に地方へ工場を建てて、若い人たちに郷土で働ける機会を与えてあげないといけない。有為な若者たちが、みんな大都会へ出てくるのは、働くところがないからだろう。人口の過疎過密を解消する一つの方策として、ぜひこれはやらなくてはならない。

企業は、これまで工場を建設する場合、まず第一に経済性ということを考え、立地条件のいいところを選ぶのが普通であったと思う。そのことは、すぐれた製品をより安く需要者に供給するという企業の使命、社会的責任という点からみて、一面当然のことといえる。しかし、今日の日本の現状に立って考えるとき、これらはたとえ多少経済性が劣るということがあっても、あえて人口の減少が著しい県へ工場を建設していくことも必要になってくるのではないだろうか。それが、より高い立場における企業の使命として、今日要求されているのではないか――私はこう考えて、経済性は第二義としても、過疎地に工場を建てていこうと決心したのである。

調べてみると、人口の減少率の一番高いのは島根県だが、絶対数で一番多く減っているのは鹿児島県であった。年々1万人以上もの人が県外へ流出しているという。そこで私は、まず鹿児島県に工場をつくろうと決めて、そのことをある席上で話した。そうすると、早速、翌日の新聞に報道され、鹿児島県からは私のところへ電報が届けられ、知事からも商工会議所からも“ぜひ来てほしい。県をあげて歓迎する”という丁重なお誘いまで受けた。それほどみなさんは、過疎というものを切実に感じておられたのである。

その後、私のこの考え方にもとづいた工場は、鹿児島県の伊集院町をはじめとして、全国各地に展開され、現在では、九州・四国の全県に工場が完成し、工場のない県は全国で10県だけとなった。そして、それぞれの工場は、地元から非常に喜んで迎えられただけあって、いろいろな面で、惜しみない協力と理解を得ることができ、すべてにわたって、立派に成功を収めてきている。

こうした過疎過密の問題は、日本が20世紀に直面した大きな課題の一つであると思う。これが行き過ぎると、日本の発展は単に経済面ばかりでなく、政治上あるいは治安上においても、大きく損なわれてくる。お互いが、これ以上の人口集中は避けねばならないという基本に立って、国をあげて真剣にその対策を講じ、それに取り組む必要があるのではなかろうか。そうすることによって、日本全体がバランスのとれた好ましい発展をすることにつながると思う。

・思えば、私が今日までこうしてやってこられたのも、世間からいろいろのことを教えられてやってきたからである。そのことを静かに考えてみて、私は創業会長として次代の人たちに“社会のすべての人々を師表と仰ぎ、大事なお得意と考え、常に礼節を重んじ、謙虚な態度で接すること”を強く要望したのである。

・私はいまこんなことを考えている。私は明治生まれであるが、明治生まれの人間は、明治、大正、昭和と生き抜いて、つねに社会の指導者層を形づくっていたように思う。かつての太平洋戦争にしても軍部に責任があったというが、もっと大きな意味では明治人の責任であるとも言えよう。そして、戦後の再建を緒につかしめたのも、明治生まれの人である。その人たちが、いまや高齢になり、一番若い人でも69歳以上になってしまった。そういう人たちがボツボツ第一線を引こうとしている。いつまでも先頭に立っていては、若い者に対して悪いというような引っ込み思案になっているように思われるのである。

しかし私はそれではいかんと思う。いま日本がうまく理想的にいっているのだったら、それでもいいけれど、いまはまだ、戦後の三十有余年の復興というものが理想的に出来ていないのである。高度成長そのものはよかったけれど、それに関連するいろいろな問題が起こってきているのである。どちらかというと今までの復興は、一方的復興、物質的な復興だけで、物心両面の復興になっていない。それなのに、われわれが功なり名遂げた形で下がっていってよいのだろうか。言うなれば片一方の輪が不完全な車をつくっておいて、大正や昭和生まれの人に、あとはうまくやってくれと言っているようなものである。これは卑怯【ひきょう】だし、無責任だと思う。だから、私は私なりの責任を果たさねばならないと考えている。

『蛍・納屋を焼く・その他の短編』 >村上春樹/新潮文庫

短編集が無性に読みたくなる時がある。疲れ切って寝床に入るのだが、深く眠りすぎて朝4時ごろに目が覚めてしまったときなど。そんな時に、手に取るのは短編集。長編小説だと、朝まで読み入ってしまう。可能であれば、もうひと眠りしたいし。などと、打算的なことを考えるまでもなく、なんとなく短編を手にしてしまう時間というものがある。

本書は再読。深夜についつい手に取ってしまったもの。再読だから感想は簡単でいいやと思ったのか、しおりに殴り書きのメモが。「違う本。同じストーリー。リンゴ。リンゴというもの」。。。

「違う本・同じストーリー」というのは、おそらく本書に収録されている『蛍』という作品が、『ノルウェイの森』の下敷きになったということを言いたかったのであろう。では「リンゴ・リンゴというもの」は、どういう意味だろうか。深夜に朦朧としながら書き留めたのであろうか、まったく思い出せない。不思議なメモだけが残ってしまった。気持ち悪いがどうしようもないなぁ。

あと、本書を読んでいて頭をよぎったのが、ニュース番組でアナウンサーが「納屋」のことを「のうや」と間違えて読んでいたこと。読み間違えなど、たくさんあるだろうに、なぜか「のうや」だけは、ずっと頭の片隅に残っているのだ。果たして「のうや」が焼けたのか、「のうや」で殺人事件があったのかは覚えていないのだが。

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「引き際が大事」というのはよく聞く言葉。名経営者と言われた人が、引き際を誤って晩節を汚すというのもよく聞く話。最近の例だと、ソフトバンクの孫社長が、引き際を延長したが、これが吉と出るか凶と出るか、今後の動きに注目していきたいところ。

さて、今日書きたかったのは経営者の引退の話ではない。「引き際」というのは、何も引退するかどうかだけではなく、役職の各ステップにも存在するのではないかということ。例えば係長から課長に昇格した際、その人は「係長から引退」しなければならない。

係長であったときは、係というチームを任されてはいたかもしれないが、まだまだ係長自身の個人能力が評価対象であり、プレイングマネージャーたることを求められているもの。しかしながら、課長という管理職になるとステージが変わってくるわけであり、いつまでもプレイングマネージャーでいてはいけないのだ。

これを履き違えて、係長の延長線上で仕事をしていると、一生懸命やっているのに、マネージャー本来の仕事をしているといえなくなり、気が付けば上司からも部下からも評価されていないということが起こりうる。この人は、「係長の引き際」を誤ったのだ。

この他、部門を異動したり、それこそ転職したりした際に、前の部門や会社のやり方をいつまでも引きずっていてもいけない。以前のやり方のほうが、明らかに優れており、それがよい方向に出ればよいのだが、得てしてそういった人は、どうでもよいことに固執しがち。前の部門や前の会社から引退できていないのだ。

自分で自分に壁や天井を作ってしまっており、知らぬ間に制約条件を課していないだろうか。自分は大丈夫、と思っている時が一番危ない。謙虚に振り返ってみよう。

PRESIDENT[2016.08.15]すぐやる人、グズな人

久しぶりの雑誌。会社の同僚が読んでいたのを借りたもの。この手の話はどこかで聞いたことがあるものが多いが、やはり一流経営者の方の話は参考になる。

■日本電産会長兼社長・永守重信

・意思決定を先延ばしにしてはいけない。なぜならビジネスが「時間軸」の戦いに入ったから。メーカーにとって品質がいいのは当たり前。残る戦いはコストと時間軸。コストは開発や生産のリードタイムを短くすれば安くなる、つまり、戦いの勝敗は時間軸によって決せられるようになっている。世界中で儲かっている会社は、みんな状況変化に対する反応が速い。競争に勝つには、意思決定のスピードを上げなければならない。

・大切なのは、社員に日々の具体的な仕事を通して理屈で納得させること。なぜ速さが勝負を決めるのか、一秒・一分の遅れがどれだけのコストアップにつながるのかを、繰り返し社員に説明する。近頃「時間軸」と口にしない日はないし、メールで一番多く打っている単語も「時間軸」

・組織のスピードを上げるには、トップが率先垂範して動くことも重要。例えば、メールは1日300件、内返信が必要なものは150件。読んだらすぐに返信する。すぐに返事が返ってくるから下も動かざるを得ない。

・毎日、手帳にやるべきことをすべて書き出した紙を挟み込み、そのすべてが終わるまで帰らないようにしている。書き出すのは前日の夜、帰宅中の車の中が多い。翌日出社すると、1つずつ片づけるが、順番にコツがある。最初に手をつけるのは重要度が高い仕事。それが終わったら次は簡単な仕事。仕事ができない人はここで難しい仕事に手をつけてしまう。そうするとすぐ終わる簡単な仕事まで積み残してしまい、成果が出せなくなる。

・1つの仕事をやり始めたら完了するまでやり抜かなければならない。目標の7〜8割までやって満足し、他の仕事に移って食い散らかす人が意外と多いが、70点、80点は0点と同じ。部下の仕事の食い散らかしは上司にも責任がある。上司は指示を出した後も、「あの件、どうなtった?」と部下を追い回さなければならない。このような部下に対する「御用聞き」は上司の大事な仕事の1つ。

・現在、働き方の大改革に取り組んでいる。以前は永守自身、長時間働くのが好きであり奨励していたが、いまでは長時間労働は女性社員に敬遠されてしまう。優勝な女性社員に管理職として頑張ってもらうため、長時間労働をやめることにした。しかしながら仕事を残して帰ったら戦いに負ける。よって、早く帰るにしても「出来るまでやる」はそのままにして、生産性を高めていく工夫が必要になってくる。

■マネックスグループ社長CEO・松本大

・不便でなければ仕事道具は変えない。しかしながら、仕事については、順調にいっていてもリスクを取って変える判断をしなければならないときがある。それを判断し、決断するのがマネジメント。

■SBIホールディングス社長・北尾吉孝

・すぐやる人とは、「すぐやることが習慣になっている人」のこと。習慣とはその人の「第二の天性」。徳性、技能、知性と並んで重要な、人間を構成する4要素の1つ。

・週末は、仕事が一段落したら頭の中を空っぽにして、思索にふける時間をもうける。落ち着いた雰囲気に浸り、遠大な境地に達する。

・仕事をすぐやるためには、知力・気力・体力が必要。すぐに決断する習慣は常に頭脳をフル回転させることで得られるので、精神面を整えることが重要。合わせて健康も重要であり、首や肩のコリをほぐしたり、サプリメントを愛飲している。


北尾社長が推薦していたネックマッサージ器「も〜む」がよさそう。買ってみようかな。。。



また、厚切りジェイソンが時間の使い方やツールについてコメントしていた。テレビを見ないのでお笑い芸人としての彼の活躍は知らないが、的を得たコメントだったのでブログを覗いてみた。日英併記となっているので、英語の勉強にもなりそう。

今まで、たくさんの経営者の方が書いた本を読んできたが、論旨がぶれず、参考になるなぁと感じたの方の代表が、稲盛和夫さんと出口治明さん。ふと思いついて、出口さんの著書をパラパラと読み返してみた。一度読んだ本なので、線を引いていたり、ページの端を折っていたりする箇所を中心に読み込んだのだが、一貫して次のようなことをおっしゃっている。

今日は自分なりに咀嚼するという意味を込めて、あえて要約や引用ではなく、私が読んで理解したままを書き連ねていきたい。なお、読み返したのは『「思考軸」をつくれ』(2010年7月)、 『百年たっても後悔しない仕事のやり方』(2011年3月)、『「働き方」の教科書』(2014年9月)の3冊である。

<直感>

・ものごとは直感で決める。直感は、ヤマ勘とは異なるものであり、ストックしてある知識を総動員して脳をフル回転させて行う思考作業の結果である。そのためにもインプットの集積が大事であり、人に会う、本を読む、旅をすることでインプットを増やしておく必要がある。

・リーダーになると、「分からないことを決める」必要が出てくる。このときに役立つのが「直感」である。

<人間ちょぼちょぼ>

・歴史を振り返ると、うまくいかない可能性が99%。だから、うまくいかなかっても落ち込む必要はない。一方で、うまくいかないだろうと諦めるのではなく、たとえ1%でも可能性があれば努力をすべき。この1%の努力の集積が人類を発展させてきたのだから。

・人間は動物である。よって、その根源には、食欲・性欲・睡眠欲があり、個々人同士や、国・地域のエゴがぶつかり合うもの。

・人間はそれほど賢くない。長い歴史を見ていると、賢い人と愚かな人の差はそれほど大きくないことが分かる。「どこにいっても人間は皆ちょぼちょぼや」

<トレードオフ>

・人生はイエス・ノーゲーム。たくさんの選択肢の中からイエスかノーかを選んでいくもの。「禍福は糾える縄の如し」というように、良かれと思ったことが不幸を呼び起こしたり、最悪の選択が思いもよらぬ幸運に結びつくことがある。

・すべてのものは「トレードオフ」 何かを選べば、結果としてなにかをあきらめなければならない。(日本人はトレードオフ思考が苦手)

<スピード>

・これからの時代、私たちに求められるのは、すべてをゼロから考え、新しい価値体系を再構築していくこと。そのためには、猛スピード、次々と試行錯誤を繰り返していかなければならない。

・「小さなことでもすぐにどうするかを決めて早く行動を起こせ」

・自分で決めてやり始めたことは、新鮮なうちに一気にやり切ってしまうのもスピードを上げるコツ。

・スピードは、その人の生産性を決定づける重要な要素。ニュートンの「力=質量x加速度」という方式をそのまま当てはめて、「インパクト=仕事量xスピード」となる。

<タテヨコ思考>

・失敗しないためには、何事もゼロから自分の頭で考えなければならない。

・自分の中に新たな座標軸をつくることで、判断ができるようになる。「森の姿をしっかりとらえなければ、木を育てることはできない」のだ。森の姿をとらえるためには、タテ思考=歴史から見ることと、ヨコ思考=ほかの国や地域から見ること。課題に直面したとき、「昔の人はどうやって乗り越えてきたのだろう」「ほかの国ではどうなっているのだろう」と考える。

<インプット>

・アイデアがひらめくというのは、自分の脳に格納されていて意識されていなかったものが、顕在化するだけのこと。そのためにはインプットの「絶対量」を増やすことが必要。

・「最初は自分で選ばず、とにかく大量に取り込む」「一番分厚い本から読む」

・「量」だけでなく、「幅」も重要。自分から未知の情報を積極的に集めること。

<リーダーシップ>

・「やりたいことをもっている」こと。ビジョン。

・「旅の仲間を集められる」こと。仲間を集める共感力。

・「旅の目的地までチームをまとめ、引っ張っていく」こと。メンバーのモティベーションを高い状態にし、計画通りにものごとを進めていくこと。

<数字とファクト>

・変化の激しいビジネスの世界に対応していくためには「数字とファクトでロジックを構築し、ビジネスプランを紡ぎ出すこと」

<思索する武器>

・分析力:木を見る眼と森を見る眼の2つの眼でものごとを見て、歴史の軸と場所の軸の2つの軸で考える。

・集中力:時間を集中して使う習慣を身につける。疑問点やわからない点は必ず調べる癖をつける。

・決断力:トレードオフを忘れるな(どちらかを、捨てる。いいとこ取りは百害あって一利なし)。整合性を忘れるな(首尾一貫して考え、行動する)。関係性を忘れるな(置かれた現実の中で、最適の決断をする)

<経営者>

・社員が朝目覚めて、行きたくなる会社をつくれ。

・わかりやすさ、透明性、正直さ、この3つの体質を維持すること。

・楽しい会社にしたいと願って行動せよ。

<上司>

・部下から報告を受ける際、「こういう点、こういう点、こういう点について、おまえはちゃんと考えたのか」。部下が思いつかない、一段高いところから指導・指摘する。

・部長になったら、自分の得意分野は課長に任せて、自分が知らない分野をしっかりと勉強する。

・一方で、分からない、知らないという不安を捨てないと、よき管理者にはなれない。個別具体的なことが分からないステージに進んだと考え、捨てることを覚えないと、全体が見えなくなっていく。

<世界経営計画のサブシステム>

・すべての人間は、自分の周囲の世界を経営して、自分が思うように世界を変えてみたいという世界経営計画を持っている。

・メインシステムを担うのは神様。人間にできるのは、自分なりの世界経営計画を考え、その計画を遂行するうえで自分が現在のポジションで何ができるかを不断に問い続けること。

・筆者のライフネット生命の企業も、若い人たちが保険料負担に苦しまず、安心して結婚して、赤ちゃんを産める世の中にしたいという、筆者自身の世界経営計画を遂行するためのもの。

・現在の世界は、歴史上に存在した無数の先達の、無数の「世界経営計画のサブシステム」が重なり合った結果できた産物。これから先に続いていく世界も、無数の人の無数の「世界経営計画のサブシステム」でつくられていくだろう。それぞれの人が、それぞれの世界経営計画を見つけ、そのサブシステムを一所懸命に担っていく。それが、次世代のために生きるという、人間本来の役割を担うことに他ならない。

<名言>

・リーダーシップの条件。(1)自分の為すべきことに明快なビジョンを持っていること。(2)そのビジョンをスタッフに論理的に説明し、納得させる説得力を持っていること。(3)そのビジョンの実現に向けて、スタッフ全員のやる気を引き出し、その気分を持続させ、最後まで引っ張っていく統率力を持っていること。(ドイツのDGバンク、ウーリッヒ・フラッハ副頭取)

・「人間は巨人の肩に乗っているから、遠くを見ることができる」(ベルナール)

・「ひたすら古典を読みなさい。数多の先達の洗礼、時代の洗礼を受けてきたものだから、内容に間違いがない。古典が分からなければ自分を無能だと思いなさい。現代人の著書を読んでわからなければ、著者が無能なので読む必要はありません」(大学時代の恩師・高坂正堯先生)

先日のPDCAに続いて、経理部における7Sを考えてみたい。こちらのほうが手こずりそうな予感。まずは、7Sの項目をおさらい。

・ハードのS:(1)戦略(Strategy) (2)組織(Structure) (3)社内の仕組み(Systems)

・ソフトのS:(4)人材(Staff) (5)社内のノウハウ(Skills) (6)経営スタイル(Style) (7)企業の価値観(Shared Value)

分かりやすいところから考えていこう。まずは(2)組織だが、これは経理部の組織体制をどうするかという話。例えば、制度会計担当と管理会計担当を分けるだとか、予算担当と実績担当を分けるだとか。他にも担当部門別(担当する営業部門、技術部門別など)や、連結と個別で組織を分けるなども考えられる。その会社の特性や、成長ステージに合わせて組織を構築する必要があるだろう。また、誰にどのような仕事を任せるかというアサインメントについても考慮すべき。

次に(4)人材。これは優秀な人材をいかに集めるかということであり、採用や他部門からの異動で対応していく。また、人材育成も重要な課題であり、(5)のスキルにも繋がっていく。育成については、OJT・Off-JTを使い分け、社内外で通用するスキルを身につけられるよう、教育体系を整えていく。

(3)の仕組みについては、マニュアルや規則・基準の整備がこれに該当するであろう。また、経理部内の定例会議なども仕組みの一種である。具体的には、属人化を排し、誰もが同じ水準の仕事ができるようになるためのマニュアル整備、社内外で発生するリスクを軽減するための規則整備、ルーチンやプロジェクト業務をフォローするための会議設定などである。

(6)のスタイルは、風土や文化と考えればよい。経理部にとって一番重要なのは、不正を許さない厳しい文化と、ミスを起こしてもミスの発生原因や仕組みを責めて、個々人を責めない(つまりミスを隠さない)文化の醸成ではなかろうか。

ここまで考えてみたが、(1)の戦略と(7)の価値観は、なかなか難しい。ともに全社の戦略、全社の価値観と強く結びつくので、経理部として独自に設定する必要はないのかもしれない。今の私の経験では、このあたりが限界である。戦略と価値観については、また日を改めて考えてみたい。

先日、PDCAに関する本を読んだが、そこで考えたのが、経理部におけるPDCAをいかに廻すかということ。その前に、経理部のような管理部門・間接部門で発生する業務をカテゴライズしておきたい。

(1)ルーチンワーク:決められた日程と手順で進めるもの。毎日の伝票チェックや、毎月の減価償却費の計算など。

(2)トラブル対応:問題やトラブルが発生した時の対応。

(3)プロジェクト:伝票削減プロジェクトのように自部門に関係するプロジェクトの推進や、全社横断プロジェクトの事務局など全体にかかるプロジェクトのサポート。

ルーチンワークについては、とある研修で「SDCA」という言葉を学んだことがある。これはPのPlanの代わりに、S(Standard)を持ってくるというもの。つまりは、標準的な作業手順を決めておき、それを愚直にDoする。その後、仕事の結果をCheckし、改善(=Act)するというもの。なるほどなぁと腹に落ちたのを覚えている。

SDCAは標準手順をきちんと実行し、その結果をチェックし、そこから「継続的改善」につなげるのが寛容であろう。あくまでも「改善ありき」の考え方である。

トラブル対応は臨機応変に対応するもの。重要度(金額的あるいは社会的なインパクトの大きさ)や緊急度によっては、上司を巻き込む必要がある場合もあれば、思い切って部下に任せてみるという方法もある。また、問題発生時には、応急処置、恒久対策、横展開、という3段階で手を打つのが常套手段である。

さて、本題はプロジェクト・マネジメントである。プロジェクトを予算通り、納期通りに仕上げる際に、PDCAが役に立つのではないか、というのが私の仮説だ。通常、PDCAを廻すためにはKPIの設定が重要になるが、ここで提案するKPIはずばり「完了したタスクの数」である。詳細は以下の通り。

[P] 会社全体や部全体で取り組んでいるような大きなテーマを、実行可能なタスクに細分化する。この際、できるだけ細かく分けるのがポイント。タスクはエクセルなどでリスト化し、実行責任者を個人名で記入、期限を日単位で明記する。このとき、担当者を複数名記入してしまうと、どちらかがやるだろうとお見合いになったり、2人とも同じ作業をして重複してしまったりということが起こりやすくなる。また、期限は8月上旬などではなく、明確に8月12日といった日付を記入していく。こうやって[P]を明確にしていく。

[D] Pで決めたタスクを愚直に実行する。

[C] 1週間に1回程度(繁忙期は頻度を下げてもよいし、切羽詰まってきたら頻度を上げた方がよい)、実行状況を確認する。
・実行済みであれば、次のタスクへ進む。
・実行したがうまくいかなかった場合は、その原因を会議メンバー皆で考える。どうしたらうまくいくかアイデアを出し合い、「次のアクション」につなげる。
・実行できなかった場合も、その原因を考える。時間不足なのか、力量不足なのか、タスクの細分化が甘いのか。時間不足であれば別メンバーがサポートする、力量不足であれば責任者を替えてみる、細分化が甘ければもっと細分化してタスクを複数名に再配分する、など「次のアクション」につなげる。

[A] Cの段階で出てきた「次のアクション」を実行する。

CとAの区分が若干曖昧であるが、Cを次のアクション=改善につなげているところがミソである。こうやって、終わったタスクの数をメンバーで競い合っていくのだ。

経理部でありがちなのが、ルーチンワークが忙しくてプロジェクトのタスクに手を付けられなかったという言い訳。しかしながら、タスクを細分化することによって、言い訳の道を塞いでしまうのだ。タスクはそれこそ、Bさんのアポイントを取る、といった単純なことでもよい。タスクをうまく細分化できた人ほど、完了数を稼ぐことができる。

この発想は、先日読了した『PDCAプロフェッショナル』に加えて、随分前に読んだ『「残業ゼロ」の仕事力』からもヒントを得た。あくまでも仮説の段階なので、機会があれば実務で試してみたい。

マッキンゼーの7Sについては、随分と前から、存在は知っていたのだが、今ひとつどのように使うべきなのかが分からず、腹落ちしていなかった。たまたま、現地法人の経営改革に携わった方の話を聞く機会があり、改革を実践するにあたって、7Sを相当意識したということを聞いた。具体的な事例を聞くとなるほどと思うもの。

私が現地法人で仕事をしていた時は、とにかく日常業務に抜け漏れがないようにと、管理部門の仕事を7つのカテゴリーに区分して考えるようにしていた。いわばオリジナルのフレームワークだ。この発想を延長して、7Sは「改革」を推進するにあたって、考慮・配慮すべき点に抜け漏れがないかをチェックするためのフレームワークだと理解した。

今まで読んできた本の中に、どれほどの記述があっただろうかと、検索してみたところ、3冊がヒットした。『実戦!問題解決法』大前研一、『MBA人材マネジメント』グロービス、『経営戦略・全史』三谷宏治、の3冊だ。残念ながら、どの記録も7Sの項目を列挙しているのみ。いかに表層的に読み飛ばしていたかが分かって恥ずかしい限り。

ただし、『MBA人材マネジメント』については、読んだ時期が駐在期間中だったこともあり、一丁前のことをコメントしている。こちらも今となっては赤面ものだが、引用しておこう。

 これを見て考えるのが、今の自分が置かれている立場について。当社の中国現地法人は、ここ数年で中国成長の時流にそれなりにうまく乗って急成長してきた。人員数や売上高といった事業規模も大きくなり、それに付随するように組織体制の見直しや、規則の整備などを行ってきた。つまりはハードの3Sの改革に力を注いできたと言えよう。

 そんな中に私が転勤してきたのだが、私のミッションは、まさにソフトの4Sを向上させること。従業員個々人のスキルアップを図るため、教育プログラムを考えたり、強い組織を作るためのスタイルや社風を築いたり。目立たない地味な仕事ではあるが、非常に重要だと考えている。社内のスタッフへのインタビューを行い、今の当社に何が必要かを洗い出し、それに対する具体策を期限を付けて策定していく。

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7Sの説明については、同書の出版元であるグロービスのサイト「知見録」に詳しい。ポイントを引用させていただく。

(1)戦略(Strategy)
マクロ環境(政治、経済、社会、技術)や、業界、市場、競合の変化を受け、あるいは変化を見越して、自社のとるべき戦略が変わる。この戦略変更が変革の起点となる。

(2)組織(Structure)
戦略変更に伴い、実行する際に求められる組織を変更する場合がある。例えば、組織を事業部制やカンパニー制、持ち株会社へ変更することなどが挙げられる。

(3)社内の仕組み(Systems)
戦略変更に伴い、経営システムを変更することも多い。例えば、人事・評価制度で成果主義やコンピテンシーによる評価や、管理会計としてBSC(バランスト・スコア・カード)を導入するなどである。

以上のStrategy、Structure、Systemsの3つのSは「ハードのS」と呼ばれ、経営陣の意思決定によって変更できる部分である。しかしその意思決定を行い、ハード面を変更・導入したとしても、その企業で働く社員はすぐには変わらない。そこで、以下の「ソフトのS」が重要になってくる。

(4)人材(Staff)
人材が持つ技能や知識は、そのビジネスで求められる人材像に基づき、採用や育成、業務での経験を通じて長期間にわたって培ったものである。現在自社が抱える人材は、過去数十年にわたる人材の採用・配置・評価・育成の取り組みの結果である。そのため環境変化に伴い、グローバル化への対応が求められることになったとしても、急に「グローバル人材」を増やすことはできない。

(5)社内のノウハウ(Skills)
人材の蓄積を通じた社内のノウハウも同様である。突出した企業には、自他ともに認める強みがある会社も多い。例えば「技術の日立」「営業力のリクルート」と聞いてピンとくる方も多いだろう。

(6)経営スタイル(Style)
その企業特有のビジネスの進め方である。トップダウン、上意下達で迅速に展開していくスタイル、現場からアイデアが出て自律的に動いていくボトムアップのスタイルが例として挙げられる。

(7)企業の価値観(Shared Value)
近年は、明文化された企業理念や「ウェイ」を持つ企業も多い。だがそれらが「額縁」に飾られているだけで、社員に浸透していなければ「共通価値観」とは呼べない。例えば、外資系ホテルチェーンのリッツカールトンが顧客サービスに、トヨタ自動車がカイゼンにかけている熱意のように、全社員に共通の価値観として浸透させていくことが重要である。

PDCAや7Sなどチーム主体のスキルのことをもう少し深堀りして学びたいと思っているのだが、近くに大型書店がなく、Webだけで最適な本を探すのは難しいなと思っていた。と言いつつ、他に手段もないのでWebを検索をしていたところ、「人材育成の基礎知識」というサイトに巡り合った。直接的にPDCAや7Sとは関係ないのだが、チームマネジメントとは突き詰めて考えると部下の育成につきる。参考になる点や新しい物の見方、気づきをいただける素晴らしい記事。なお、この記事は『人材育成の教科書』という本からの抜粋ということなので、こちらは是非とも購入してみたいと思った。

まずは気になった箇所を要約して引用。

・教育体系によって、人材育成の基本枠組みが整理されるが、そこでの教育の焦点は、|亮蔚軌蕁↓▲好ル教育、0媼蔚軌蕕裡海弔了訶世らも整理できる。

・知識教育は、知らない知識を習得させるための教育。知識といっても、商品知識やオーダーエントリー業務のやり方といった業務知識などのように、社内の人間として知っておかなければならない知識のほか、自己の専門領域の知識や担当している事業の革新を進めるための知識など、どちらかというと社外に流通している知識に力点があるものもある。

・スキルとは、いわゆる「できる」ようになる教育。野球には野球の理論がたくさんありるが、そのような理論を知っていても、本当に打てるのかとなると全く別のもの。知っていることとできることとは違う。また、スキル教育には、繰り返しトレーニングするという部分が必ず入っている。

・人材育成はOJTが基本であるが、Off-JTの形式をとったほうが育成効果が上がる場合もある。Off -JTのほうが育成効果が上がる場合とは、(1)その企業では全く経験のない(将来取り入れなければならない)業務を学ぼうとする場合、(2)職場で業務指導ができるものであっても、指導者のレベルにバラツキが大きく、彼らに任せると心配な場合、の2つ。

・底上げ教育とは、ある業務にかかわる全員の業務遂行レベルが上がるように、広く教育対象者を設定して教育をしていくタイプのもの。同じ等級の人材には全員同じ役割教育を施す階層別教育なども、底上げ教育のタイプに分類される。たとえば、係長としての役割認識が不ぞろいであると、第一線業務のレベルが低くなるという問題が生じるため、係長としての目線で役割を発揮し、全体が低くならないよう、底上げ教育を行うもの。

・選抜教育は、特に優れた人や強化したい人を選んで集中的に教育を施すタイプ。特に難しい企画業務や、高度な専門業務にかかわる教育の場合は、優れた人でないと理解できなかったり、活用できなかったりするため、必然的に選抜型の教育になっていく。

・底上げ教育にしても、選抜教育にしても、企業の行う教育とは、社員個人のために行うのではなく、あくまでも企業の業績確保や成長の実現のために行うもの。社員個人の出世のためでも、モチベーションアップのためでもない。今、企業が置かれた状況の中で、だれにどのような教育を行うのが最も効率的かつ効果的かを、いつも考えておくという意識を常に持っておくこと。

・「Aさんを外して教育を実施するのは、本人のモチベーションを損なうからやめてくれ」というのは、二次的な論点。Aさんを外す理由が経営的な意味から明確であれば、納得しないといけない。そのうえで、必要であれば管理者として、どうして教育の対象者になっていないかの説明を本人にして、モチベーションが下がらないようにケアをすること。

・職務充実(job enrichment)とは、部下の仕事の質を高め、高度化していくこと。簡単な作業に専門的・管理的仕事を加えたり、判断が必要な要素を加えたり、より自律的に仕事が進められるように権限を委譲したりすることが職務充実という概念。

・職務拡大(jobenlargement)とは、飽きさせずにたくさんの仕事を覚えているという実感を強くしてやる気を出させるために、担当業務の種類を増やすこと。

・職務充実や職務拡大とは、管理者がマネジメント現場で考えるもの。以上のような視点を常に持ちながら部署の業務を見てみれば、人材育成と生産性向上の同時進行の方法が必ず見付かるはずである。

・階層ごとに求めるものをその階層にいる全員に共通認識させるのが階層別教育であるのに対して、課題教育は、最も関心の深い希望者に教育をするもの。ちなみに選抜教育は、企業が選抜した人に教育をするものなので、課題教育の対象者とは選び方が異なる。選抜教育との対比でいえば、階層別教育は底上げ教育の一種だとみることもできる。

・教育は、いつも重点化の発想で取り組むべきものである。できるだけ少ないコストと手間で、最も大きな効果を上げるにはどうすればよいかを考えて行うのが、優れた教育企画の立て方である。人材育成は非常に難しいもの。行った教育手段が有効だったかどうかを判定することは困難であるため、人が育つには長い年月がかかるものだと割り切って、一つひとつの教育手段の有効性をあまり問わない風潮がある。しかし、経営資源を使って教育を行う以上、なんでもよいではないかというわけにはいかないわけで、本当に何が理由で人が育つのかは未知のものだとしても、仮説だけはしっかり立てて、できるだけ効率的・効果的に教育を進めるように努力するのがよいのではなかろうか。

・教育の目的が明確になると、それにふさわしい対象者を選ばなければならないが、その対象者をどう定義するかが問われる。大事なのは、できるだけ教育対象者を絞れということであり、少しでも候補者を少なくするにはどう考えるかということ。企画の段階では、教育対象者をできるだけ絞って、教育目的を達成するように考えてみるのがよい企画の条件。焦点となる教育対象者を絞れば、教育内容のレベルもそろってくる。

・人材育成手段の体系を考える場合、成長プロセス(段階)をしっかり踏ませることが大事であり、優秀だからといっても、どこかの段階を飛ばしていくことは勧められない。


底上げ教育と選抜教育の使い方、職務充実と職務拡大という概念など、非常に勉強になった。中でも特にそうかと膝を打ったのが、「企業の行う教育とは、社員個人のために行うのではなく、あくまでも企業の業績確保や成長の実現のために行うもの 」という当たり前の概念。何となく教育のことをフリンジベネフィットのようなとらえていたので、大きな間違いだと悟った。こんなに有益な情報を無料で掲載してよいのだろうかと思うほど。筆者への感謝のためにも、本は買わないとなぁ。

◇1481 『PDCAプロフェッショナル−結果を出すための「思考と技術」』 >稲田将人/東洋経済新報社

PDCAサイクルというのは、よく聞く言葉なのだが、特に私のような管理部門に所属していると、今ひとつピンとこないというのが現実。PDCAを回すためには、KPIが必要であり、KPIがなければそのPlanがきちんと実行(Do)されているかどうかが、分からない(=Checkできない)。ゆえに、KPIを設定することが難しい、経理部において、PDCAは無縁だと思っていた。

もちろん、業績数値を取り扱う部署なので、全社的な予算・実績管理など、PDCAを廻すための数値を提供するのは、経理部の重要な役割である。ここで私が言いたいのは、経理部自部門のPDCAの話。

何か参考になるよい本はないかと気にしていたところ、とある雑誌で紹介されていたのが本書。業績の良い社長が推薦していたので目に留まったのだが、よくよく見ると、著者が『戦略参謀』などの稲田さんではないか。これは間違いなかろうと、早速Amazonで購入した。

読み終えての率直な感想は、「私の疑問を解決してくれるものではなかった」というもの。PDCAがなぜ大切かということに、ページの約3分の2を費やしており、実際にどうやってPDCAを廻していくのかという具体例は後半部分のみ。企業によって廻すべきPDCAは千差万別であり、代表的な具体例を紹介するしかないのだろうが、どうやって実践していくかを求めていた私にとっては、少々物足りなかった。

とはいえ、有用な気づきをたくさんいただいたので、気になった箇所を要約して引用。

・仕事ができ、事業を引っ張ることができるのは、「精度と汎用性の高い経験則」を持った人。自身の経験から学んだことを、自ら法則化し、より高次のレベル、いわゆる「メタ知識(知識に関する知識)」として、経験則を積み上げていける人。ビジネスにおける学習とは、自らの経験を、汎用性をもたせて精度高く法則化すること。

→この部分は、大いに共感する。私自身がおぼろげに頭に描いていたことを、見事に言語化してくれている。この文章に出会えただけでも、本書を購入した価値あり。

・Plan:よく考えて企画を行う。正しいPの作法にのっとることで、Cが可能になる。PDCAを廻させる側は、目標を押しつけるのではなく、よく考えられた挑戦的なPを求め、立案の指導を行うべき。

・Do:精度高く実行する。精度高くやりきらないと、Cができなくなる。現場との連携体制、信頼関係がないと、実行精度は落ちる。

・Check:結果を検証する。成功/失敗の因果を明確にするため、Pのどこに読み違いがあったのかを明確にする。失敗は叱責の対象にはならない。ただし、理に適った説明がなされ、得られた「学習」と修正の方向性が明確になるまでは、Cは終わらない。結果を分析、検証して、次回のPの精度を高めるための「学び」の内容を明確にすること。米国ではCheckではなく、Studyという言葉を用いることもある。

・Action:やり方、方法論を見直し、進化させる。発表用資料、報告の仕方などを見直す。特にPDCAを廻し始めた初期の段階は、入念にやり方を見直す。業務の進め方そのものの見直し、新技術などへの挑戦も果敢に行う。やり方、方法論を「進化・改善」させることを意味する。帳票や会議の行い方など、PDCAの廻し方や、業務フローそのものの改善を行い、リードタイム、品質、コストを改善することも含まれる。

・PDCAは「理」をもって繰り返して廻す。

・右脳を動かすためには、まず左脳に情報を徹底的に叩き込む。

・改革の際、「川は2回に分けて飛べない」

・物事を成功まで導くことができるかどうかは、腰が引けることのない、粘り強い、修正・調整の力であり、これをけん引、ドライブするのが、想いの強さ「パッション(情熱)」であり、最初の起動トリガーとなるのは、ちょっとした「勇気」や「好奇心」、あるいはなんらかの「気づき」なのだろう。

・多くの場合、みなが成長に追われて忙しく、PDCAのCを、ついなおざりにしてしまう。CがなされていないPDCAサイクルでは、次のPの精度は間違いなく低下する。市場起点のPDCAのPの精度低下は致命的であり、これが企業の成長を鈍化させる。後から成長期後期の実態を追いかけてみると、この成長期後期の施策が大雑把になっていることがよくある。

・数値をベースにした「見える化」による管理が必須。

・一般的に、市場でのビジネスの難易度はかつてより高まっている。トップだけではなく、現場担当者も戦略を自分のものとして理解して、ハンドルを操作し、ブレーキ、アクセルをこまめに使い分け、進むべき道であるシナリオの修正も行いながら進めなければ、戦略の実践などできない。

・PDCAを廻すためには、的確に「見える化」された検証(C)のための帳票や制度の高い会議体の設計が必須になる。

・PDCAが廻らずに低迷状態に入った会社は、戦略を手にしても、PDCAを廻すために必要な術を知らないがために、成長軌道入りどころか、低迷を抜けることもできないことになる。

・同じ事業、同じ業態にもかかわらず、大きく育っている企業とそうではない企業の差が出るのは、トップが、PDCAが社内の各部門で廻っている状態、文化づくりに真剣に取り組んでいるか否かだといえる。

・PDCAを廻すということは、それぞれの業務における読み違いを明確にすること。成功した創業者は、企画(P)の読み違いなどは当然あるものとして受け入れるもの。担当者を一時的に叱責することはあっても、結局は「過ぎたことについては、それはそれ。で、どうするのか?」と考える。

・PDCAは読み違えた点について、その理由を追いかけて明確にし、組織の知恵として共有化するためのもの。これを表面的な検証(C)で終わらせたり、隠したり隠ぺいをすると、正しく言語化された因果の共有化への努力がなされなくなる。お金と手間をかけて起きた、せっかくの失敗が、学習につながらなくなる。

・組織としてPDCAを廻す際に必要な4つのこと。(1)その業務を的確にとらえた定義を行い、業務フローを明らかにする。(2)会議のようなPDCAが廻しやすい、管理ポイントが「見える化」された報告帳票の設計。(3)発表、報告の体制づくりと作法の徹底、習慣化。(4)そして「起動」時に、「はずみ車」を廻し始める際の入念な準備。

・PDCAを廻すマネジメントを行うということは、事業運営において、起きていることや、判断の理由をあからさまにできるよう、ファクト(事実)ベースで、言葉やビジュアルで理に適った説明をする状態をつくること。

・Pをまとめる際のステップ:現状把握→意味合いの抽出と解の方向性の明確化→施策の決定→実行計画の策定。

・現状把握:ファクトベースの「見える化」。業務、事業など、Pを行う過大領域において、「過去そして現状、事業や営業、費用対効果などの実態はどうなっているのか」「過去に行ったPの結果はどうだったのか」を見える化し、成功のために必要な因果を明確にしていくための最初のステップ。数字などの事実をもとに、良い結果、悪い結果に結びついたであろう原因となるものが見えてくるように、見える化の工夫を行う。

・意味合いの抽出と解の方向性の明確化:事実を見える化したが、そこ事実に基づいて、そこから何がいえるのかを明示していく。「どこに、どれだけのギャップが存在するのか」「さらに細分化して見てみると、その際の原因となっているのはなんなのか」などを明らかにする。それによって、どこに課題があるのかを特定し、解の方向性を明確にする。根本にある原因が明らかになれば、対処方法、すなわち「解の方向性」も明確になってくる。その事実や役割に精通しないと、的確な「意味合いの抽出」はできないものだが、PDCAを謙虚に廻すことによって、意味合いの抽出能力は上がってくる。

・施策の決定:解の方向性を明確にしたのち、次に具体的な打ち手はどれでいくべきかを評価して決定する。複数の案がでた場合は、それぞれのメリット、デメリットを評価し、どの案でいきたいかを明確にする。その後、トップあるいは責任者の決裁を受けて、施策の決定となる。

・実行計画の策定:決まった施策をガントチャートなどを使って計画に落とし込む。その際、ドライバーたるプロジェクトの責任者に、どのタイミングで進捗状況を報告するかを、必ず計画の中に描きこむ。

・一連の手続きを踏まえたPであれば、検証(C)は楽に行える。(1)どういう事実に基づいた方向性なのか、(2)押さえどころは、どこか、(3)細部の決定事項の前提はなにか、の3点が明確であれば、実行中にどの部分を確認しながら進めればよいのかが明確であり、うまくいかなかった場合も、どこに戻ればよいのかが明瞭になる。しかしながら、通常業務の中で、「やっておいてくれ」と現場に丸投げするような依頼方法では、このような精緻なPは立案されない。結果として、口頭で回答という報告になり、検証もできず、感覚的・主観的な報告になってしまう。いかに精緻なPが重要かということ。

・D:制度の高い実施があってはじめてCが可能になる。そのためにも意図(P)通りの実施を徹底しなければならず、Why(理由)の共有が必須となる。精度の高いDを実現するため、現場社員の士気を高く保つことは必須条件となる。

・C:謙虚に、そして客観的に結果の検証を行う。ドライバー側は、Why(なぜ)の徹底、つまり、因果の不明瞭な部分は妥協せずに、徹底的に言語化や視覚化を促す質問を行わなければならない。報告側は、質問が想定される点については、すべて記述がなされている報告書のまとめを行い、一目で因果がわかり、ドライバーやギャラリーから質問がでない状態を目指すこと。

・PDCAが廻っている限り、失敗は叱責の対象ではない。本来、失敗はその要因を分析する対象であり、断じて隠ぺいすべきものではない。

・A:方法論を磨き、ビジネスプロセスを進化させる。PDCAのAはPの修正というよりも、事業運営やPDCAの廻し方などの方法論そのものを直して進化させていく改善行動を意味する。

・PDCAはプラン・ドゥ・シーに対して、次のPに入る前に、自分たちがとっているやり方、考え方、方法論をより良いものに見直して改善していくActionを行い、より良い次のPに入ろうという1ステップ進んだ考え方。この「進化・改善=Action」には、帳票の見直し、報告会の進め方、因果を解き明かすための見える化のための分析用システムの導入なども含まれる。

・定例会議がPDCAのキモ。定例会議の多くは、PDCAのCからPに連鎖させるブリッジ部分に相当する。ドライバーたる事業責任者のパッション、進行・準備役の参謀スタッフの熱意と知恵、機転があれば、見違えるように会議は進化(A)していく。逆に放置されれば、瞬く間に「人の性怠惰なる思惑」が蔓延する場になる。

・この会議での報告においては、うまくいかなかったときの、要因の深堀りと再対策の発表が真骨頂となる。




【目次】

第1章 PDCAは企業の「実践力」を高める
第2章 優良企業の実践力―成長・発展し続けるために
第3章 なぜあなたの会社のPDCAは廻らないのか?
第4章 PDCAを廻すために必要なこと―個人、マネジャー、そして経営層にとっての技術
第5章 P・D・C・A、それぞれの作法
第6章 PDCAの事例

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先日、経営知識の概観をまとめたが、「知識として知っていること」と「実践・実行できること」は異なる。3C分析だの4Pのマーケティング・ミックスだのといった知識は、経理部門にいると縁遠いもの。もちろん、事業計画を検証する立場となれば、3Cや4Pの視点も必要になるが、自分が使いこなすという感覚はない。では、経理部門においては、どのような手段が有効なのであろうか。

私は今まで様々な本を読んできており、経理知識の本や、一般的な仕事の進め方の本には出会ってきたが、「経理としての仕事の進め方」というのは、あまり見た記憶がない。このような分野は、OJTで教育されるものだからであろうか。

実務担当者に関しては、その会社独自の伝票起票の仕方、管理会計的な勘定科目の使い方など、一般論として語るのが難しい実務知識の習得が求められるであろう。よって、前述のようなOJTが威力を発揮する。しかしながら、係長・主任・課長代理といった役職一歩手前の、係を取り仕切るような立場になったり、もう1段上の経理課長になった際の仕事の進め方というのは、会社によって大きく変わらないのではなかろうか。

自分の頭の整理のために、経理部の係長や課長としての仕事の進め方をまとめてみよう。

・正確な決算実務を遂行するために、分かりやすい(=ミスを起こしにくい)経理規則・勘定科目体系・マニュアルの整備を行う。

・決算実務に抜け漏れが発生しないよう、網羅的なマニュアルの整備を行うとともに、チェックリストを作成し、部下をフォローする。(チェックリストには、賞与引当金の計上は完了したか、など毎月あるいは四半期毎に必要となる仕訳作業などを記載していく)

・効率的で使いやすい会計用のITシステムを構築する、または、継続的なシステムの改良を行っていく。ただし、一方ではパッケージソフトに自社の実務を合わせて標準化していくという視点も必要。

・試算表や、B/S、P/Lをもとに、異常値がないかをチェックする。異常値に関しては合理的な説明を部下に求めること。合理的な説明ができない異常値にはミスが潜んでいる。

・経営に資する資料を作成する。自社が抱える課題を常に意識しておき、その課題を浮き彫りにしたり、課題解決に役立つような統計資料・管理資料の作成をこころがける。時には、その資料を幹部や関係者に発表し、注意喚起する。

・ミスやトラブルが発生した際は、その重大さによってはハンズオンで対応に取り組む。その際、緊急対応(取り急ぎ、ミスをリカバリーする)、恒久対策(ミスの根本原因を突き止め、ミスが起こらないような仕組みを構築する)、横展開(似たようなミスが発生するリスクのある手順がほかにないか確認する)という3段階での対応が必要。

・決算業務以外にも、経理は何かとプロジェクトに巻き込まれることが多い。自らがプロジェクトリーダーになることもあるが、多いのは参謀役としてリーダーをサポートする立場。副リーダーとして、プロジェクトマネジメントを実行する。

・部下の育成とチーム作りを心がける。部下一人ひとりの成長を考えた、段階的な仕事のアサイン(OJT)とoff−JTの教育を実施する。また、係長を中心としたチーム作りを心がけ、互いに補完しあえるような関係、改善提案などが出てきやすい雰囲気、ミスの発生時には皆でリカバリーしようという文化などを醸成する。


工場経理を担当するにようになって、富に意識することが多くなったのが、プロジェクトマネジメントとチーム作り。どちらも自分だけでは完結できず、関係者や部下を巻き込んで実践していく必要があるもの。先日読了した『プロジェクトマネジメント−外資系コンサルが教える』でも、どこへ行っても通用するスキルが大切で、しかもロジカルシンキングやプレゼンテーションのように個人で完結するものではなく、プロマネなどチームで実践するスキルが重要になってくるというのを、改めて意識した。

さて、冒頭に、3Cだの4Pだのといったフレームワークについて、触れたが、上記のようなスキルに役立つのではないかと思っているのが、PDCAとマッキンゼーの7Sである。どちらも、頭では分かるのだが、どうやって使ってよいのか、今ひとつピンと来ないもの。しばらく、この2つのフレームワークを掘り下げて考えていきたい。

とある勉強会のテキスト。経営に関する理論が、ざっと概観してあり、頭の整理になった。細かな内容は書くのを差し控えておくが、一般的な内容であるし、 項目くらいは列挙しても問題なかろう。

■経営戦略

・経営理念(ミッション:社会に果たすべき使命、ビジョン:事業を通して実現したいことは何か?)

・事業ドメイン(事業の定義を明らかにすること。どのような顧客層の、どのようなニーズに向けて、どのような技術に基づく商品やサービスを展開するか)

・コアコンピタンス(木に例えると「根」の部分。コアコンピタンスはアウトソーシングしてはいけない)

・3C分析:顧客 Customer、競合 Competitor、自社 Company

・3Sの定石:選択・差別化・集中

・SWOT分析(環境分析):強味 Strengths、弱み Weaknesses、機会 Opportunities、脅威 Threats

・PPM(プロダクトポートフォリオ):スター、金のなる木、問題児、負け犬

・アンゾフの製品市場マトリックス:既存市場・新市場と既存製品・新製品のマトリックス管理

・ポーター競争優位の基本戦略:コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略

・業界分析5つの力:競争業者、新規参入者、代替品、供給業者、買い手

・バリューチェーン(価値連鎖):購買物流→製造→出荷物流→マーケティング・販売→サービス。このほかに支援活動として、全般管理、人事労務管理、技術開発、調達活動など。

・コトラーの業界地位に応じた戦略:リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワー

・STPマーケティング:セグメンテーション(購買特性が類似した市場の細分化)、ターゲティング(魅力ある市場・顧客にターゲットを決定)、ポジショニング(ターゲットにとって魅力的な企業になる)

・4P(マーケティング・ミックス):製品 Product、価格 Price、プロモーション Promotion、販売チャネル Place

・AIDMAモデル:Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)

■論理思考

・演繹法と帰納法(演繹法はパラシュート、帰納法はレンガの積み上げ)

・ゼロベース思考(常識や固定概念、しがらみを断ち切って、白紙の状態から考える)

・MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive、漏れなくダブりなく)

・ロジックツリー(木と木の枝を利用して論理を展開。「So How?(だからどうする)」)

・プロセス思考:業務をプロセス(手順)で把握する。業務改革や業務効率化の際に必要な思考法。

・ピラミッドストラクチャー(ピラミッド構成で、結論をトップに置き、その結論にいたった理由を下部へ落とし込んでいく)

・オプション思考(1つだけの解決策を考えるのではなく、代替案を想定しながら思考すること)

積読本の整理については、何度か書いてきたが、ようやくゴールが見えてきた。以前、整理したのは次の4つのカテゴリー。(1)じっくり時間をかけて読むべき本、(2)鮮度が大事なので、飛ばし読みでもよいからすぐに読むべき本、(3)いつか読もう読もうと思いつつ、後回しになってきたもので、計画を立てて読むべき本、(4)今の自分には不要な本。

(2)は現時点ではすべて読了できた。(4)については、歴史関係の小説が約100冊と普通の小説が約50冊あるのだが、とりあえず今年中は封印することに。(1)と(3)については、改めて振り返るとなかなか区分が難しい。もう少し定義を明確にしてみると、自分の中では、次のような考え方になる。

(1)じっくり時間をかけて読むべき本 → 今の自分に必須であり、きちんと読み込むべき本。整理すると、実務書、論理学、歴史関係の本に絞ることができた。分厚い単行本が多いので、必要であればメモを取りながら、 きちんと机に向かって読み込みたい。こちらがあと25冊。

(3)いつか読もう読もうと思いつつ、後回しになってきたもので、計画を立てて読むべき本 → 今すぐ読む必要はないが、時間ができたら読むべき本。封印するまではないが、必須とまでは言えない本で、約50冊ある。こちらは、なぜか新書が多いので、出張の際などにでも持っていけばよかろう。

ということで、当面は目の前の25冊に集中する。冊数も限られてきたので、本棚ではなく机の上に移動して、自分にプレッシャーをかけている。今までは、書店に気軽に立ち寄って、興味がある本はすぐに購入し、興味の赴くまま「読み散らかして」きた。長年読書を続けてきたが、今回のように中期的に「読むべき本」をきちんと定めて、計画を立てたのは初めて。

週に1回は書店に立ち寄りたいところであるが、住んでいる立地から、これはなかなか難しい。しかし、よくよく考えてみると、書店が近くにあれば、「読むべき本」ではなく「読みたい本」に手を出してしまう。 怪我の功名ではないが、せっかくの隔離された状態を活かして、読むべき本に集中しよう。

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そんなことを考えつつ、週末、机に向かって、ようやく熟読すべき本の中から1冊取り上げてみたのだが、どうも速読する癖がついてしまっているようだ。目線はどんどん先に進んでいくのだが、内容が一向に頭に入ってきていない。これは大いに反省すべき事象。わかりやすく、頭に入りやすい本ばかり読んできた弊害である。

まじめに読書の方法をシフトしなければならない。ゆっくりと、必要ならば音読したり、逐一メモを取ったりしながら読み進めなければ。手ごわい本ばかりだが、これを乗り越えると、頭の中が一皮剥けた状態になるのではなかろうか。そんなことを期待して、読書に励みたい。少しペースは落ちるだろうが、むしろあえてペースを落とすくらいの気持ちで臨まなければならない。焦りは禁物。急がば回れ。

最後に、今後の計画をフォローアップするために、カテゴリーを再整理。

(A):従来の(1)で今(2016年末までに )読むべき本、25冊。
(B):従来の(3)で時間があるときに読む本、50冊。
(C):従来の(4)で2017年になるまでは封印する本、150冊。

◇1480 『ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 会社設立のしかたがわかる本』 >鎌田幸子他/ソーテック社

ちょっと調べる機会があったので、備忘のために、メモだけ記録。

■会社登記に必要な書類
・登記申請書
・登録免許税納付用台紙
・CD-Rなどのデータ媒体またはオンラインでの提出
・定款(発起人の実印)
・発起人の決定書(発起人の実印)
・取締役の就任承諾書(個人の実印が望ましい)
・代表取締役の就任承諾書(個人実印)
・監査役の就任承諾書(個人の実印が望ましい)
・代表取締役の印鑑証明書
・代表取締役以外の役員の本人確認証明書
・資本金の払い込みを称する証明書(会社実印)
・取締役などの調査報告書(個人の実印が望ましい)
・資本金の額の計上に関する証明書(会社実印)
・印鑑届出書(会社実印・個人実印)
・印鑑コード交付申請書(会社実印)

■会社設立後の各種届出書類
・税務署へ
 法人設立届出書
 青色申告の承認申請書
 給与支払事務所等の開設届出書
 棚卸資産の評価方法の届出書
 減価償却資産の償却方法の届出書
・都道府県税事務所へ
 法人設立届出書
・市区町村の役所へ
 法人設立届出書


会社法に準拠した手続きを中心に、銀行口座の開設方法、資本金の払い込み方法など、会社設立に必要な手続きを、網羅的に解説している。コンパクトにまとまっており、非常に使いやすい本。文字も大きく見やすいし、実務が本当に分かっている人たちが、しっかりと考えて作りこんだ感じが伝わってくる。



【目次】

第1章 会社設立のポイントを知っておこう
1-1 会社設立のための基礎知識
1-2 タイムテーブルで見る会社設立までの流れ

第2章 1つひとつ順を追って決めていこう
2-1 株式会社をつくるにはいくらかかる?
2-2 会社の概要を決めよう
2-3 階社の名称(商号)を決めよう
2-4 お金を出す人と運営をする人を決めよう
2-5 資本金の決め方・資金の調達のしかた
2-6 会社の本店の所在場所を決めよう
2-7 印鑑の手配
2-8 事業目的を決めよう
2-9 決算期と公告のしかたを決めよう
2-10 そのほか決めておくとよいこと
2-11 そのほか確認しておくとよいこと

第3章 定款を作成しよう
3-1 定款は会社のルール
3-2 実際に定款を書いてみよう
3-3 公証役場の認証を受けよう

第4章 登記をしよう
4-1 登記って何?
4-2 資本金の払い込みをしよう
4-3 登記に必要な書類
4-4 登記の申請
4-5 登記完了後に取得する書類

第5章 銀行口座開設と諸官庁への届け出
5-1 銀行口座を開設する
5-2 会社設立後にしなくてはいけない届け出
5-3 資金の調達

第6章 個人事業者が法人成りしたらすること
6-1 法人成りをするとき・したあとにすること
6-2 法人成りをするとき
6-3 法人なりしたあと

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