Namuraya Thinking Space

― 日々、考え続ける ― シンプルで、しなやかに ― 

◇1621 『考える技術・書く技術−問題解決力を伸ばすピラミッド原則』 >バーバラ・ミント/ダイヤモンド社

ロジカル・シンキングといえば本書、というくらい、有名な本。多くのMBAホルダーなどが推薦している名著の分野に入る著書であろう。しかしながら、私とはどうも相性が悪く、今までに3回、途中まで読み進めて挫折しているのである。

内容的には文書を書く際にはピラミッド構造を意識しようというのが主な主張であり、それ以外には演繹と帰納の違いについて説明されていたりと、さほど難しい内容ではない。もしかすると、翻訳が悪いのかとも考えたが、そこまで読みにくい訳でもない。

まぁたくさん本を読んでいるとこういうこともあるものだ。個人的には、この手の本では照屋華子さんの『ロジカル・シンキング』の方が分かりやすく感じた。MECEやSo What?、Why So?といったキーフレーズも『ロジカル・シンキング』で学んだ。

このような状況だから中途半端な引用はやめておこうかなとも思ったのだが、第1章の一番重要な箇所だけを要約しておきたい。

読み手にとって最もわかりやすいのは、まず主たる大きな考えを受け取り、そのあとにその大きな考えを構成する小さな考えを受け取るという並べ方である。すべての知的プロセス(考える、記憶する、問題を解決するなど)は、グループ化や要約の思考プロセスを伴う。したがって、頭の中にある情報は、いくつものピラミッドの巨大な複合体として構築されているとも言える。このような構造の頭の中に対して物事を伝える際には、こちらが伝えようとすることが、相手の頭の中のピラミッドにうまく対応することが必要なのだ。

ちなみに、MBA系のロジカル・シンキングと、野矢先生が書かれているような論理学の本とでは、内容が全く異なる。前者はどちらかというと仕事に直結しており、後者はもっと脳味噌の深い部分を鍛えるイメージである。本当の教養を身に付けたい人は、きちんと論理学を学ぶべきなのであろう。



【目次】

第1部 書く技術
 なぜピラミッド構造なのか?
 ピラミッドの内部構造はどうなっているのか?
 ピラミッド構造はどうやって作るのか?
 導入部はどう構成すればよいか
 演繹法と帰納法はどう違うのか?

第2部 考える技術
 ロジックの順序に従う
 グループ内の考えを要約する

第3部 問題解決の技術
 問題を定義する
 問題分析を構造化する

第4部 表現の技術
 文書構成にピラミッドを反映させる
 文章表現にピラミッドを反映させる

追補A 構造なき状況下での問題解決
追補B 本書で述べた重要ポイントの一覧

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日経新聞[2017.05.01〜05.31]私の履歴書・加賀見俊夫(オリエンタルランド会長兼CEO)

「オリエンタルランド」で、通じると思うが、ご存知ない方のために。オリエンタルランドとは、東京ディズニーランドやディズニーシーを運営する会社。その会長の履歴書である。まだ浦安が海だった頃からの叩き上げの会長。TDLを立ち上げるまでの物語が面白かった。

漁業組合との交渉が難航するなど、今のTDLの繁栄からは想像もつかないご苦労をされてきたとのこと。計画当初は富士山麓にTDLをという話もあったそうだが、米国のディズニー社から、富士山近くだとお客様はTDLではなく富士山を見るのが目的になってしまうと却下。結果、現在の舞浜に落ち着いたとのこと。

そんなTDLの発展を支え、大局的な視点でリーダーシップを発揮したのが高橋元社長。加賀見氏の恩人とも言える元社長が逝去された回では、筆者の恩人への熱い思いが込められており、思わず目頭が熱くなってしまった。

ある晩訪ねた帰り際、高橋さんは「後は100%君に任せる。思う存分やってくれ」と笑顔で手を振った。2000年1月31日とうとう逝ってしまった。86歳だった。

通夜・葬儀は密葬だった。生前、告別式など盛大にやるな、と言っていたが、後日お別れの会を開くことを決めた。私は「高橋さん、骨身を削って造ったパークに行きましょう」と亡骸に語りかけて車を先導し舞浜に向かった。

到着したのは閉園後の東京ディズニーランド(TDL)。正面から車が入りワールドバザールを抜ける。高橋さんがよく座ってパレードを見ていたベンチ。シンデレラ城の上にあがる花火を見ている嬉しそうな笑顔。パークの中には思い出が詰まりすぎている。色々な姿を思い出して泣けてきた。

車は建設中の東京ディズニーシー(TDS)外周を回った。海のテーマパークに夢を賭けていた高橋さんは、まだ夢の途中にあるこの場所を見ずに逝った。夜空は満天の星だった。与え続けてくれた人だった。こういう人にはもう二度と出会えない。思い出が次々に浮かんできた。


 ▼

順風満帆のようなTDLとTDSだが、現在は古くて新しい課題「混雑の解消」に取り組んでいるとのこと。営業時間の延長、夜間限定チケットの販売、長い列ができるアトラクションへの入場整理券の配布、レストランの拡充など。混雑の緩和はゲスト満足度最大化のために不可欠であり、対策を怠るとボディブローのようにじわじわと影響が出てくるとのこと。

ゲストが増えるから混雑が増すわけであり、うれしい悲鳴とも言えそうだが、度を過ぎると経営には悪影響を与える。私自身は経理部の所属だが、例えば業績が好調なときはこなすべき伝票の数が増えて忙しくなる(=業務が混雑する)と言える。具体的なアイデアは思い浮かばなかったが、こういったところにも業務の平準化のヒントが隠されているのではないかと感じた。

◇1620 『論理トレーニング101題』 >野矢茂樹/産業図書

先日の『入門!論理学』に引き続き、挑戦してみたもの。本書は、佐藤優さんだけでなく、いろいろなところでお薦めの本として紹介されている名著。『論理トレーニング』などで、論理学を一通り学習した人が、さらに自学自習することを目的として書かれた本である。

タイトル通り論理学に関する問題が101題掲載されているのだが、内容的には接続詞を補いなさいだとか、演繹として正しいかどうかを判定しなさいだとか、隠れた前提を述べなさいだとか、なかなか手強い問題が並んでいる。

読み始めてすぐ、「論理的になるためにはどうすればよいか」「接続表現に自覚的になるのが一番」、これが答えである、と書かれている。私が望んでいた答えではないか。ちなみに、接続関係には7種類あるとのこと。こういった知識も、何となく理解するのではなく、このように体系立てて説明されると頭に入ってきやすい。

7つの接続関係:付加・理由・例示・転換・解説・帰結・補足

興味深かったのは「論証を批判的にとらえる」という章。少し本文から引用してみよう。

あえて波風を立てること。しかも、対立する者としてでも、馴れ合う者としてでもなく、第三者的な視点からそれを行うこと。議論に不整合はないか。説明不足な点はないか、導出に飛躍はないか。根拠は確からしいか。全体の説得力はどのくらいか。そうしたことをチェックしていく。

・立論:あることを主張し、それに対して論証を与えること。
・異論:相手の主張を対立するような主張を立論すること。
・批判:相手の立論の論証部に対して反論すること。対立する主張までは出していない。
 →異論は対立であるが、批判は対立ではない。


この辺りは日本人が弱いところであろうなぁ。日本人は、異論と批判を混同するどころか、異論と人格や好き嫌いまで混同してしまいがち。中国人は、会議の場では喧嘩かと思うくらい激しく議論するが、相手の人格までは否定しない。米国などもこういった議論の技術には長けていると聞く。

さて、何とか最後まで解き終えたが、本書はいわゆる問題集である。一度読了したからといって満足するのではなく、何回か繰り返して学習した方がよいであろう。『入門!論理学』で頭を解きほぐし、『論理トレーニング』で大系を学び、本書でさらに頭に負荷をかける。こんなことを少しずつでも繰り返していけば、少しは論理的な人間になれるだろうか。

まぁ論理的ではありたいけど、理屈っぽくはなりなくないんだよなぁ。。。



【目次】

1.議論を読む
 接続表現に注意する
 議論の骨格をつかまえる

2.論証する
 論証とはどのようなものか
 演繹の正しさ・推測の適切さ
 論証を批判的にとらえる

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インテグラートというコンサルのセミナーに参加。紹介されていた「仮説思考計画法(Discovery-Driven Planning)」が面白かったので、さわりだけ紹介しておきたい。

DDPはペンシルバニア大学ウォートンスクール教授のイアン・マクミランとコロンビア・ビジネススクール教授のリタ・マグラスが考案した計画立案と実行に関する手法。計画は、計画通りに進まないものだ、という考え方が根底にあり、実行時に仮説(前提)の検証と、必要に応じた計画の修正を求めることが特徴。

「Discovery-Driven」とは、「気づきや学習に基づいて事業を推進しよう」という意味であり、不確実性の高い戦略投資に適した計画法である。(いわゆる「マーケット感覚」に近しい方法だと感じた)

一般的に事業投資にあたっては、モラルハザードが起こりがちである。なぜなら、その収支計画の結果が出るのは数年後であり、担当者も責任者も後退している可能性が高い。よって、意思決定さえ乗り切れば2〜3年はOKという動機が生じ、稟議を通すための計画を策定する傾向にある。

そもそも収支計画とは未来の数値であり、すべて「仮」のもの、誰かが「作った」ものである。誰も正しいと断言できないし、もっともらしく見えても過去の事実ではない。であるならば、どのように数値が作られたかを理解することが重要となる。つまり、あくまでも仮である「数値を合意」するのではなく、「仮説を合意」するということ。

収支計画が仮説(=成功に必要な条件)で構成されているのであれば、その仮説を明確にし、仮説を継続的に確認していく方が有効だろうという考え方。もし仮説が外れたならば、その時点で柔軟に事業計画を修正する。ここでいう仮説とは、具体的には市場規模はxxの市場調査を根拠とする、人件費はxxの案件と同等とする、製造原価はxxの実績から算出する、といった「前提条件」や「数値の根拠」のこと。

経営上、目標数値を決定することは不可欠だが、数値ありきになってしまうと、事業環境への変化に対応しにくくなる。よって、仮説を合意し、その仮説をフォローアップすることで事業環境に柔軟に対応していこうというのだ。

最後に事業投資業務プロセスの10のチェックリストを紹介しておきたい。

(1)ビジネスプランは、計算結果だけでなく、使われている数字の前提が、具体的に説明できる項目に分解され、詳しく説明されているか。
(2)成功に必要な条件、失敗を避けるために必要な条件は、明確に示されているか。
(3)数字は決め打ちではなく、起こりうるシナリオが洗い出しされ、一事調査等の裏付けがあるか。
(4)収支計画の計算構造がブラックボックスになっていないか。
(5)計画段階の様々な想定の重要度は、感度分析等によって、整理されているか。
(6)計画段階の様々な想定を確認するタイミングが設定されているか。
(7)意思決定時に加えられた条件は、事業の実行担当に、正確にフィードバックされているか。
(8)中長期の事業見通しは、十分な信頼度を持って、経営陣に提供されているか。
(9)事業投資の実行状況は、目標の達成までの期間、継続的に管理されているか。
(10)事業投資の全体を俯瞰したアセットの入れ替え、撤退条件(ポートフォリオマネジメント)は、検討されているか。

◇1619 『入門!論理学』 >野矢茂樹/中公新書

仕事を進めて行く上で、論理的な、ロジカルな思考は非常に重要である。しかしながら、どうすれば論理的になれるのか、論理力を磨くことができるのかが、今ひとつ分からない。

私自身は、かなり本を読み込んで来たことと、このブログでたくさんの文章を書いて来たこともあり、論理が決定的に弱いとは思っていないが、それじゃあロジックが強いかというと、そこまで言う自信はない。何とか、自分の論理的思考能力を少しでも高めたいと手にしたのが本書である。

もともとは佐藤優さんの著書で本書の筆者である野矢さんのことを知り、『論理トレーニング』という本を読了しており、出て来る用語などについては、さほどの抵抗はない。しかしながら、入門と冠してはいるものの、やはり私にとって論理学は難しく、今まで使っていなかった頭の一部を使うような感覚に襲われながらの読書であった。

本書は、数式を使わず、しかも画期的なことだそうだが、縦書きで論理学について書いた本である。縦書きがすごいと言われても私にはピンとこなかったのだが、なるほど、読み進めるにつれ、これだけの内容を数式を使わずに噛み砕いて説明するのはかなりチャレンジングなことだったであろうと感じた。

このブログは、自分が学んだことを整理して記録してのを目的としており、本来であれば本書で得た知識を列挙していきたいところなのだが、残念ながら私にはその力量が不足している。とてもではないが、野矢先生が苦労したものを、素人の私が要約して書き残せるものではない。

このように書くと、非常にハードルの高い難しい本のように感じるかもしれないが、文章は平易であり、非常にくだけた語り口調での記載となっており、文系の私にはとっつきやすい本であったのも確か。行きつ戻りつしつつも、本書を最後まで読み通すことができれば、少し頭が良くなったように感じるのではなかろうか。

果たして本書を読んで論理的思考能力が高まったかどうかはよく分からない。論理力というものは、一朝一夕で身につくものでもないし、本を一冊読んだくらいで理解できるものでもない。しかしながら、こういった本を読むことで、普段使っていない脳味噌をフル回転させるのも、よい刺激になる。

本書に関しては、新書で手軽に持ち運べるので、たまに旅のお供などに携帯して読み返したいなと思った。



【目次】

第1章 あなたは「論理的」ですか?
第2章 「否定」というのは、実はとてもむずかしい
第3章 「かつ」と「または」
第4章 「ならば」の構造
第5章 命題論理のやり方
第6章 「すべて」と「存在する」の推論

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日経新聞[2017.04.01〜04.30]私の履歴書・大橋洋治(ANAホールディングス相談役)

大橋さんのことは、カンブリア宮殿で2回、お話を聞いた記憶がある。2回目の時は随分と痩せておられた印象だったが、病気だったとは知らなかった。少し時間が経ってしまったが、今年の4月に連載されていた私の履歴書を通読。正直、話の内容はカンブリア宮殿の方が面白かった。

そんな中、やはり経営者は古典をきちんと勉強なさっているんだなと感じた箇所を引用しておきたい。

・幕末期、財政破綻寸前の備中松山藩の再建を任され、7年間の改革で借金10万両(現在の価値で約300億円)を返済。同時に10万両もの余剰金を生み出した方谷は真心と慈愛の精神を意味する「至誠(しせい)惻(そく)怛(だつ)」という考え方を広めたことで知られる。

「義を明らかにして利を計らず」とも説いた方谷の教えは当時の私にとって、一筋の光だった。航空会社にとっての「義」とはすなわち、安全と安心である。どんなに苦しくても、そのことを忘れてはならない。心中深く、私は自分にそう言い聞かせていた。

・中国・明朝末期の儒者・呂新吾はその著書「呻吟(しんぎん)語」の中で、指導者に求められる資質として「深沈厚重(どっしりと落ち着いていて深みのある人)」、「磊落(らいらく)豪雄(細事に拘らない豪放な人)」、「聡明(そうめい)才弁(頭が切れて弁の立つ人)」の3つを列記している。一見すると3番目が良いようだが、実は1番目が最善の資質とされている。

◇1618 『世界を変える100の技術−日経テクノロジー展望〈2017〉』 >日経BP社編/日経BP社

「ビジネスパーソンが知っておくべき、広くて深いテクノロジーを、日経の専門誌編集長30人が徹底解析」というのが帯のタイトル。自動運転、AI、IoT、ドローン、再生医療、FinTech、スマート治療などなど、興味深い分野が並んでいる。

私は文系ながら、こういったテクノロジー関係の情報には興味を持っており、細かいところは分からないながらも、この手の本はついつい手に取ってしまう。特に、最近は日経ビジネスの購入を止めてしまい、テクノロジーに関する雑誌・記事などを読む機会が減ってしまったので、余計に情報に飢えている。

期待しながら本書を手に取ったのだが、幸い、新聞記事などでも技術情報はフォローしているため、まったく知らない知識というのはさほど見当たらなかった。建材や工法、防災などの土木分野は門外漢であり、自分の仕事とも全く関係ないため、未知の分野であったが、ここまでフォローすると大変。この分野は諦めてもよかろう。

それ以外は、知らない情報はありつつも理解できないというレベルではなかった。(多分に解説者の方々の分かりやすい説明に負うところが大きいのだが) ただし、もう少し掘り下げてもよかったのではと感じてしまうのは否めない。エコノミスト誌の『2050年の技術』の方が深堀出来ていたという印象。

そんな中、これは面白いなぁと思うテクノロジーが2つあったので紹介しておきたい。

・どこから見ても同じに見える表示:円柱面に表示した画像などが、どの方向からでも同じように見えるという技術。開発したのは産業技術総合研究所(産総研)の人間情報研究部門。位置によって見え方に制約がある既存の標識や広告などの視認性を大幅に改善する可能性がある世界初の表示技術。表示物は印刷物でも動画を含む電子情報でも構わない。交通インフラの案内をはじめ、建物内の非常口表示、駅などの柱に設置している広告といった用途に使える見込み。特殊なレンズによって光路(光の経路)を調整するとともに、その光路に合わせて人が見る像を形成するような加工を表示物に施している。

・凝縮系核反応:凝縮系核反応とは、金属内のように原子や電子が多数集積した状態で、元素が返還する現象。軽い元素が融合して重い核種に変わる「核融合」は、その際に膨大なエネルギーを放出する。それを発電システムに活用する「核融合炉」の実用化を目指し、フランスや日本などが開発を進めている。しかしながら実用化が難しく、一部の研究機関で地道に開発されているにすぎない状態。凝縮系核反応の実験の多くは中性子や放射線をほとんど出さない。この点を含め、現在の物理学で説明できないこともあり、依然として懐疑的な見方もある。ただ、実用化された場合、核融合による熱出力のエネルギー密度は化学反応の千倍に達するとも言われている。


後々、参照することもあると思うので、目次に記載されている100個の技術全てを列挙しておきたい。



【目次】

1章 すべてが変わる
ここまで来たテクノロジーのインパクト

■人に近づく
1「チャットボット」
2「揺れ抑制スプーン」
3「電気味覚フォーク」
4「小型シーケンサー」
5「スマートフォン画像診断」
6「ジェスチャーインタフェース」
7「ひずみなし音声強調」
8「においセンサー」
9「生体埋め込み機器」

■人の力を拡大する
10「半身麻痺でもこげる車いす」
11「階段を上れる車いす」
12「VR(仮想現実)」
13「AR(拡張現実)」
14「ドローン」
15「3Dプリンター」

2章 交通が変わる
自動車は馬車になってしまうのか

■車が変わる
16「自動運転」
17「自動運転用ソフトウエア」
18「渋滞状況を自動判定」
19「走行中給電」
20「オンデマンド型配車サービス」
21「3D計測」

■道路が変わる
22「大深度地下トンネル掘削」
23「橋の床版更新」
24「道路の物理的デバイス」

■移動が変わる
25「未来の飛行機」
26「再利用可能ロケット」
27「超小型ロケット」

3章 住まいが変わる
「木造の時代」再び

■建材や工法が変わる
28「木造天守閣の復元」
29「木造超高層ビル」
30「CLT(直交集成板)」
31「木質ハイブリッドビル」
32「耐火木材」
33「セルロースナノファイバー」

■住宅・建築設備が変わる
34「サイホン排水システム」
35「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
36「建材一体型太陽光発電(BIPV)」

■街が変わる
37「どこから見ても同じに見える表示」
38「緑化の新工法」

4章 医療が変わる
再生医療はどこまで来たか

■治療が変わる
39「免疫チェックポイント阻害薬」
40「腸内細菌の利用」
41「ゲノム編集」
42「再生医療」
43「臓器の3Dプリンティング」
44「動物で人の臓器を生成」

■現場が変わる
45「スマート治療室」
46「次世代手術支援ロボット」
47「マイクロニードル」
48「リキッドバイオプシー」
49「ネットワークヘルスキオスク」
50「ネット遠隔診療」

5章 産業が変わる
あなたの仕事はどうなる

■農業が変わる
51「農業ドローン」
52「生産支援クラウド」
53「畜産IoT」

■「お金」が変わる
54「FinTech」
55「ブロックチェーン(分散台帳)」

■ものづくりが変わる
56「マス・カスタマイゼーション」
57「デジタルツイン」

■商売が変わる
58「接客ビッグデータ」
59「サービスロボット」
60「ドローン配達」
61「AIによる不動産鑑定評価」

■エンターテイメントが変わる
62「スマートスタジアム」
63「スポーツクラウド」
64「シェアリングサービス」

6章 テクノロジーで危険から守る
見守りから設備点検、地震対策まで

■見守る
65「高齢者見守りシステム」
66「インフラモニタリング」
67「SNSによる災害情報活用」
68「防犯カメラ」

■情報を守る
69「Web/メール無害化」
70「サイバーインテリジェンス」

■災害を防ぐ
71「長周期地震動対策」
72「木造住宅の制振」
73「非構造部材の耐震」
74「敷地丸ごと免震」
75「橋の制振」
76「液状化対策」
77「軽量止水設備」

7章 もっと速く、もっと便利に
すべてを支えるICTとエネルギー

■プログラミングが変わる
78「AI(人工知能)」
79「機械学習」
80「子供向けプログラミング言語」
81「超小型コンピューター」

■コンピューティングが変わる
82「IoT」
83「エッジコンピューティング」
84「クラウドネイティブ」
85「イベント駆動」
86「マイクロサービスアーキテクチャ」
87「不揮発メモリー」
88「ラックスケールアーキテクチャ」
89「量子コンピューター」

■ネットワーキングが変わる
90「LPWA」
91「NB-IoT」
92「IEEE 802.11ah」
93「Bluetooth 5」
94「5G/ネットワークスライシング」
95「マルチギガビットイーサネット」
96「マルチコアファイバー」

■エネルギーが変わる
97「EVのためのポストリチウムイオン電池」
98「バーチャルパワープラント(VPP)」
99「人工光合成」
100「凝集系核反応」

8章 今なお残る課題を見極める
死角はないか

日経BP社の技術専門媒体の4編集長が
テクノロジーを使いこなすための現状の把握から実現への課題、
人間への影響について考える

日経BP社執行役員 寺山正一
日経テクノロジーオンライン 狩集浩志
ITpro 戸川尚樹
日経コンストラクション 野中 賢
日経バイオテク 橋本宗明

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ハーバード・ビジネス・レビュー[2016.10]プラットフォームの覇者は誰か

先日読了した「エコシステム」に関するHBRに続いて、関連の高い「プラットフォーム戦略」についても、紐解いてみた。こちらの方が、2016年10月の記事で古いのだが、論点は非常に近しい。一番印象的たっだのは次の一文。

・社会プラットフォームとは、人々が快適に生活を送るためのインフラとしてのコミュニケーションとエネルギー、そしてモビリティ(移動手段)を提供するものである。

これなど『限界費用ゼロ社会』で着目されていた3要素とまるまる同じではないか。この記事の筆者は早稲田大学ビジネススクール教授の平野正雄さんという方。ビジネススクールの先生だから、『限界費用ゼロ社会』くらいは読んでいるであろうし、そこから発想を得たのかもしれない。しかしながら「限界費用」という概念と、「プラットフォーム」という概念とが、まさに交差するような不思議な感覚に陥った。

その平野さんがイーロン・マスクを次のように評している。

・この稀代の起業家が手掛けているベンチャーは、電気自動車と自動運転(Tesla)、太陽光発電(SolarCity)、超高速鉄道(HperLoop)とプラットフォームの柱であるエネルギーとモビリティを中心に、果ては宇宙輸送(SpaceX)にまで及ぶ。これらの事業がはたして成功するかどうかは無論わからない。だが、そこには新たなプラットフォーム構築にビジョンを見出し、みずからの手でそれを築くという強烈な意思を感じずにはいられない。

ここではエネルギーとモビリティのことしか出てこないが、周知のとおりイーロン・マスクはペイパルで起業家としての橋頭保を築いた人物。つまり金融という金銭のやり取り=コミュニケーションでもすでに成功しているのである。

さて、この他に気になった箇所を引用しておきたい。

・(アプリの開発者と利用者という)二種類のユーザーグループがともに拡大するにつれて、価値も増段していった。「ネットワーク効果」と呼ばれるこの現象こそ、プラットフォーム戦略の柱を成すものである。

・プラットフォームは多種多様ではあるが、例外なく生態系(エコシステム)を持つ。エコシステムの基本構造はすべて同様であり、4つのタイプの関与の仕方がある。プラットフォームの所有者は統治(ガバナンス)と知的財産の管理を行う。提供者は、プラットフォームと利用者とを橋渡しする。つくり手は製品やサービスを生み出し、買い手はそれらを使う。

・パイプライン型に特化した企業の多くも依然として高い競争力を保っているが、同じ市場にプラットフォーム型企業が参入すると、ほぼ例外なく後者に軍配が上がる。

・プラットフォーム型事業では、フィードバックに基づく循環・反復型のプロセスを通して、拡大するエコシステムの全体価値の最大化が追求される。

・インターネット経済において競争相手よりも「量」を稼ぐ企業、つまり、より多くのプラットフォーム参加者を獲得する企業は、トランザクション当たりの提供価値も平均すると高くなる。なぜなら、ネットワークの規模が大きければ大きいほど、需要と供給がうまく合致するばかりか、合致相手を探すためのデータも豊富だからである。

・需要サイド主導の経済においては、外部の要因はプラットフォーム型事業の価値増大に寄与する可能性がある。したがって、供給サイド主導の経済下で企業にとって脅威となる納入業者や顧客の力は、プラットフォームにとっての資産とみなしうる。

・業務運営・物流部門はかねてから、ジャスト・イン・タイム方式の在庫管理を重視している。しかしこの手法は、「他人様の在庫」(部屋やアプリなどネットワーク参加者の資産)の管理に取って代わられる例が相次いでいる。

・プラットフォーム型事業では、インタラクション、つまり、つくり手と買い手によるプラットフォーム上での価値交換に重点が置かれる。インタラクション件数やそれに伴うネットワーク効果が、競争優位の最大の源泉なのである。

・繁栄するプラットフォームはたいてい、たとえ当初は量が稼げなくても、高い価値を生み出すインタラクション手段を一つだけ用意してサービスを開始する。やがて、隣接の市場へ進出したり、類似のインタラクション手法に対応したりして、価値と量をともに増やしていく。

・プラットフォーム型事業の上層部は、アクセス(誰をプラットフォームに参加させるか)と統治(プラットフォーム上での買い手、つくり手、提供者、さらには競争相手の行動のコントロール)に関して、賢明な判断を下さなくてはならない。

・プラットフォームへのアクセスを無条件に認めると、インタラクションを妨げる不正、行きすぎ、コンテンツの質の低下といった弊害を生み、価値を毀損するおそれがある。

・純然たるプラットフォームはおのずと外部志向で築かれる。しかし、パイプライン型事業を手がける旧来企業が、既存事業に加えてプラットフォーム型事業を企画、統治し、迅速に拡大していくには、新たな中核的な能力(コアコンピテンシー)と発想を培わなくてはならない

・マーケットプレイスがクリティカルマスの分岐点に到達すると、ネットワーク効果が発動し、成長の軌跡が直線的ではなく指数関数的な上昇カーブを描き始める。ネットワーク効果は新規参入を防ぐ壁もつくり出す。多数の買い手と売り手が一つのマーケットプレイスを利用するようになると、ライバル企業がそれを奪い取ることは困難になる。

・プラットフォームを軸とするビジネスモデルでは、主にユーザーとサードパーティをつなぐことで価値を創造し、そのプラットフォームへのアクセスに料金を課すことによって価値を獲得する。

○1617 『限界費用ゼロ社会−モノのインターネットと共有型経済の台頭』 >ジェレミー・リフキン/NHK出版

一読した時は、本書のすごさが今ひとつ理解できていなかったのだが、書評を書く際に重要なところを再読していて、大きな気づきを得た。積読本をこなそうと思って、難しい本まで速く読もうとし過ぎていた弊害であろう。この手の本はゆっくり精読すべきであった。

さて、本書が分かりにくいのはそのタイトルのせいであろうか。会計に関わっていないひとは「限界費用」といってもピンとこないかもしれない。少し会計的な話になるが、重要なところなので詳しく書いていく。まず、製造業の原価計算でよく出てくる用語に、固定費と変動費というものがある。製造にかかる費用を固定費と変動費に分解したうえで、売上から変動費を引いたものを「限界利益」と呼ぶ。これは日本語訳が今ひとつであり、「限界」という言葉はその定義を分かりにくくしている。

「限界利益」は英語だと「Marginal Profit」という。日本語訳では「貢献利益」とも言う。世の中一般的には「限界利益」という方がメジャーなので私も仕事では「限界利益」という単語を使用しているが、個人的には「貢献利益」の方がしっくりくる。訳し方が異なるだけで定義は同じなので、「貢献利益=売上−変動費」である。これは、売上から変動費を引いた利益が、固定費の回収に「貢献」するから、と理解すれば分かりやすいであろう。

さて、本書のタイトルの原題は「The ZERO Marginal Cost Society」である。これを直訳して『限界費用ゼロ社会』となっているが、私なりに分かりやすく翻訳すると「貢献費用がほぼゼロの社会」となるであろう。ここでいう「貢献費用」とは、貢献利益の裏返しなので、「変動費」ということになる。なので、意訳すると「変動費がほぼゼロの社会」となる。

「ほぼゼロ」というのもミソであり、完全なるゼロではない。つまり、もっと意訳すると「かなりの固定費は発生するが、変動費がほぼゼロの社会」となる。分かりやすい例でいうと、太陽光発電。ソーラーパネルなどの投資が必要であり一定の固定費はかかるが、パネルを設置してしまえば太陽光から電気を生み出すことができる。太陽光は無料で手に入れることができるので、いわゆる変動費がほとんどかからないということになる。ここで「ほとんどかからない」というのは、ソーラーパネルの保守費用などが多少なりとも発生するからであるが、全体からすれば「ほぼゼロ」と言っても許される範囲だということ。

本書では限界費用ゼロのビジネスモデルの走りはインターネットだとしている。つまり、光ファイバーやサーバーなどの非常に大きな固定資産の投資があってはじめて、インターネットを快適に使用できる。これらのインフラさえ整えてしまえば、そこにアップされるテキスト、画像、動画などのコンテンツの大半が無料である。これらコンテンツから享受できる情報量から比べると、支払っている通信費=インターネットの使用料=変動費は、「ほぼゼロ」といってもよいレベルであろう。

このように固定費はかかるが変動費がほとんどかからないもので、インパクトの大きいものが3つあるというのが本書の主張。その3つとは「コミュニケーション」「エネルギー」「輸送マトリックス」である。

コミュニケーションは前述のインターネットで行われるものであり、エネルギーは太陽光や風力などの無料の自然エネルギーを利用したもののことである。輸送マトリックスが少々分かりづらいかもしれないが、これは、コミュニケーションとエネルギーの組み合わせで、自動運転自動車が、インターネットの地図情報などを活用し、かつ太陽光などの自然エネルギーで動くようになると、固定費はかかるが変動費はかからない乗り物になるというのだ。

現在であれば、自動車で誰かに目的地まで連れて行ってもらうには、ガソリンという変動費が必要であるし、タクシードライバーの人件費という変動費も必要となる。しかしながら、自動運転が実現すると、これらの変動費が「ほぼゼロ」になるのだ。


これ以外にも、下記の事象が紹介されている。

・3Dプリンターによってモノづくりが消費地で行われるようになる。
・MOOCによって、教育はほとんど無料になってきている。
・ロボットが発達すると作業労働者は不要になり、AIが発達すると知的労働者ですら不要になる。
・シェアリングエコノミーによって、自動車や住居などは、所有からシェアへ変化してきている。
・クラウドソーシングやクラウドファンディングにより、起業が容易になってきている。
・ブロックチェーン技術により、通貨が民主化してきている。


これらの事象は、今までに読んできた技術動向の本の内容と、さほど変わり映えがしないのだが、「限界費用ゼロ」という視点から改めて眺めてみると、まったく異なる世界が見えてくるように感じてしまった。

ここまで書いてきてふと考えたのが「食糧」はどうなのだろうか、ということ。穀物や野菜であれば、種子と水・土・光があれば生産できる。種子は作物から取得できるし、水・土・光には変動費がほとんどかからないので、限界費用ゼロで生産できるかもしれない。今後は、水資源を確保するのが難しくなってくるかもしれないが、これもエネルギーがあれば海水から真水を精製することが可能だし、寒冷地であればエネルギーをLEDなどの光に変換することもできる。穀物が限界費用ゼロで生産できれば、牛や豚などの家畜の飼料も生産できるということであり、ロボットを使用して飼料を与えることができれば、畜産物も限界費用ゼロの世界に導入することができるかもしれない。

本書は第1部で資本主義の歴史が語られており、まず最初にここで躓きそうになる。少々退屈だというのが正直な感想。そして第2部は、インターネットやエネルギーの無料化の話が出てくるので興味深く読み進めることができる。第3部、第4部では、これらを踏まえた未来の社会像を描いているのだが、正直、一度読んだだけでは咀嚼しきれなかった。

今回、書評を書いて改めて本書の面白さに気づくことができたので、少し時間を置いたうえで再読してみたい。恐らく、また新たな気づきに出会えることだろう。



【目次】

市場資本主義から協働型コモンズへの一大パラダイムシフト

第1部 資本主義の語られざる歴史
 ヨーロッパにおける囲い込みと市場経済の誕生
 資本主義と垂直統合の蜜月
 資本主義のレンズを通して眺めた人間の本性

第2部 限界費用がほぼゼロの社会
 極限生産性とモノのインターネットと無料のエネルギー
 3Dプリンティング―大量生産から大衆による生産へ
 MOOCと限界費用ゼロ教育
 最後の労働者
 生産消費者の台頭とスマート経済の構築

第3部 協働型コモンズの台頭
 コモンズの喜劇
 協働主義者は闘いに備える
 インテリジェント・インフラの規定と支配をめぐる争い

第4部 社会関係資本と共有型経済
 所有からアクセスへの転換
 社会関係資本のクラウドファンディング、民主化する通貨、人間味ある起業家精神、労働の再考

第5部 潤沢さの経済
 持続可能な「豊穣の角」
 生物圏のライフスタイル
 岐路に立つ日本

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ハーバード・ビジネス・レビュー[2017.06]ビジネスエコシステム・協働と競争の戦略

最近、周りで「エコシステム」という言葉をよく耳にするようになった。気になったので、知り合いの情報通に聞いたところ、HBRの特集号が分かりやすいとのこと。早速取り寄せて通読してみた。なお、今回は紹介しないが、情報通の方曰く、日本におけるエコシステム研究の第一人者は、井上達彦さんという方。WEBでも閲覧できる論文があるので興味のある方は検索してみてください。ちなみに井上さんは何冊か著書を出されているが、エコシステムに関するものはなさそうである。

さて、HBRは複数の方が書いた論文を掲載しているもの。よって、気になった箇所を頭から順番に引用していくと、つながりが良く分からなくなってしまう。(それぞれの論文は独立しているので) よって、今回は、一度引用したものを関連性に着目して順序を並べ替えて記載しておくことにした。

・エコシステムとは、事業展開に必要な一連の構成要素において、限られた企業や団体がまとまった生態系を形成し、他の生態系に対する優位性の確立や、生態系外からの他企業の参入に対して圧倒的な障壁を築くことである。

・すべての技術要素を自社で完璧に用意する企業は稀であり、他社との相互依存性、すなわちエコシステムが形成されることが一般である。

・ビジネスエコシステムの本質は、自社が展開する事業領域内外に存在する、IoTを通じた新たな事業機会について、全体感を持って可視化することである。それにより、大きな事業機会が存在する領域において、いかに他社に先行するかといった議論が可能となる。

・技術そのものだけでなく、それを支えるエコシステムにも目を向けること。競争は新旧技術間ではなく、むしろ新旧のエコシステム間で起こるかもしれない。

・技術エコシステムにおいては、それら技術スタックの中で自社が注力すべき技術領域はどこか、あるいは、どの領域に他社の技術を活用して補完するかが主要論点となる。

・価値提供を実現できるかどうかは、技術、サービス、規格、規制など、相互補完的な数々の要素に左右される。エコシステムを形成するこれら要素の有用性と成熟性こそが、新規技術が成功するかどうか、そして旧来技術が通用し続けるかどうかのカギを握る。

・21世紀に最も成功を収めているビジネスモデルの大半は、顧客の習慣や使用パターンの情報を取得するソフトウェアを用いて、人々の暮らしにリーチする能力を基盤とする。デジタルによって、これまでになく密接な顧客関係が実現し、企業は顧客に合わせて提供物をパーソナライズしたり、サービスの提供方法をより適切に調整したりできるようになった。

・スタートアップ企業にイノベーションを起こしてもらい、そこを買収するという手法ではなく、新しいプロセス(=エコシステムイノベーション)に参加する企業は、力を合わせて新たなコンセプトを考え出し、それをビジネスにする。

・デジタルはゼロサムゲームではない。可能な限り、自社とパートナーの両方に新しい機会を生み出すことが大切だ。

・IoT関連技術は新興国と親和性が高いといわれている。その理由としては、新たなインフラ投資が積極的に行われる中、先端的なシステムを一から導入しやすい環境にあることが挙げられる。

・IoTエコシステムの4つの勝ち筋:(1)プラットフォーム型。総合プラットフォームを形成して勝つ形。一連の技術スタックを他社活用も合わせて、すべて取り揃える必要がある。(2)テクノロジー型。技術スタック内で特定の技術領域に特化し、その領域でのデファクトスタンダードを目指す。(3)サービス型。ある業界に対象を絞り、その業界における特定のニーズを満たす一気通貫での独創的なサービス提供を追求する。(4)オペレーション型。IoTを活用して自社オペレーションの変革を追求する。

・ハイブリッドエンジンは、充電ステーション網を必要とする電気エンジンとは違い、エコシステムの発展度合いによる制約を受けなかった。

・ウーバーの成功はビッグデータの物語ではない。顧客から新しい方法で直接取得した、スモールデータの物語である。ウーバーは、タクシー利用に関する情報を大量に良さ集めて分析する必要はないと見抜いた。同社がしなければならなかったのは、単純に、利用者の最も有意義な情報を適切なタイミングで取得することだった。つまり、利用者がいる「場所」と、利用したい「時」である。

・データには防衛力がある:GEの保守ソフトウェアは、数兆個のデータポイントを利用して今後のパフォーマンスを予測する。予測アルゴリズムの複製に成功する者はいるかもしれないが、数ペタバイトに及ぶ訓練用データが伴わない限り、GEと同等の価値を顧客に届けることはできない。

・ネットフリックスは、一つひとつの予測を積み重ねることによって、時間をかけてデータセットを拡大し、これまでになく大きな価値を顧客に届けられるようになった。利用増加に伴って、よりよいものになるという特徴は、情報ベースの多くのサービスに共通する。

・すでにIBMやGEのような企業は、ワトソン(Watson)やプレディクス(Predix)などといったIoTの機関となる新たなサービスを打ち出し、世界的な事業展開を図っている。

◇1616 『高等学校・世界史A』 /第一学習社

池上彰さんお薦めの本、といっても高校の教科書である。教科書にはAとBがあるそうだが、受験を意識した「日本史B」「世界史B」に対して、商業・工業高校など受験を意識しない高校で使われる教科書が「日本史A」「世界史A」。分量もコンパクトで、社会人に必要な近現代史に比重が置かれているので、歴史の流れと要点がわかりやすく、「社会人の学び直し」には便利だとのこと。

複数の出版社が「世界史A」の教科書を出しているが、第一学習社のものが一番お薦めとのこと。教科書なんて社会人が買えるのかなと思って検索したところ、教科書取扱店で買うことができるとのこと。しかしながら、ちょっと面倒なのでAmazonで検索したところ、ネットでも購入可能。さっそく取り寄せてみたもの。

さすが池上さんが薦めるだけあって、読み易い。写真や図がふんだんに使われており、本文は少ないのだが、図や表に見入ってしまい、意外に読了するまでに時間がかかった。本文が少ないということは、余計なことが書かれていないということであり、本書で大まかな流れを掴んでおけば、社会人の知識としては十分ではなかろうか。後は、気に入った時代を趣味的に深堀していけばよいであろう。

世界史に関しては、ここ数年頑張って学習しているのだが、特に中世から近代にかけてのヨーロッパ史が苦手で、なかなか大局がつかめない。まぁ本書を繰り返し読むなどして、ゆっくりと身につけていこう。すぐに身に付く知識は、すぐに役に立たなくなるというから。焦らずに。

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◇1615 『経営戦略の論理−ダイナミック適合と不均衡ダイナミズム』 >伊丹敬之/日本経済新聞出版社

本書に関しては、どうやって感想を書いたらよいか迷ってしまった。そんな時は、まず引用から。

・ありたい姿:
(1)誰になにを売るか(製品・市場ポートフォリオ)
(2)そのためにどんな仕事の仕組みにするか(ビジネスシステム)
(3)その仕事をきちんとやれるように、どんな能力・資源を自分でもつか(経営資源ポートフォリオ)

・ビジネスシステム設計:
(1)どの業務を自分が行うか、なにを他人にまかせるか(他社との分業のあり方)
(2)自分で行うことを、どのように行うか(企業内の仕事の仕組み)
(3)他人に任せることを、どうコントロールするか(分業した業務のコントロール)

・情報の3つの特徴:
(1)同時に複数の人が利用可能
(2)使いべりしにくい
(3)使っているうちに、新しい情報が他の情報との結合で生まれることがある

・戦略的対応の原則:
(1)ある程度予知可能な変化に対しては、それを見越した戦略展開の案をもつこと
(2)競争構造の変化を把握しやすい仕掛けをもつこと
(3)かなり不確実な競争構造の変化に対しては、さまざまなありうる構造に対応できる見えざる資産を蓄積しておくこと

・資源の裏づけ:
(1)戦略の実行に必要な資源の裏づけがある
(2)戦略が資源を有効に利用する
(3)戦略が資源を効率的に蓄積させる


うーん、何だか今日は筆が進まない。本書は8月の夏休みに読了したものだが、2カ月程度で大半の内容を忘れてしまっている。どうも最近の伊丹先生の著書とは相性が悪いのか、あまり面白いと感じられない。先日読了した土光さんの伝記も正直今ひとつと感じてしまった。

本書は1980年に初版が出され、今回で第4版である。36年間も読み継がれてきた本だから、恐らく私の感性の方が鈍っているのであろう。読書には読むタイミングというものがあり、ぴたっと自分の抱えている課題にはまったときなどは、大変面白く感じるのだが、そうでないときは印象が薄くなってしまうことも。本書は、そんなタイミングで読んだ本なのかもしれない。何だか、ろくな感想になっていないが、調子が悪いので今日はこの辺で。



【目次】

第1部 戦略の基礎概念
 経営戦略とはなにか
 ビジネスシステムと見えざる資産

第2部 ダイナミック適合の論理
 顧客のニーズをダイナミックにとらえる―戦略の顧客適合
 競争優位をつくる―戦略の競争適合
 資源を有効利用し、資源を効率的に蓄積する―戦略の資源適合
 技術を活用し、技術を進化させる―戦略の技術適合
 人の心を動かし、刺激する―戦略の心理適合

第3部 不均衡ダイナミズムの戦略
 市場創造の戦略―製品戦略の不均衡ダイナミズム
 ビジネスシステムが成長をドライブする―ビジネスシステムの不均衡ダイナミズム
 オーバーエクステンション戦略―見えざる資産の不均衡ダイナミズム

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時々、マインドフルネスを実施しているのだが、その時に聞く定番曲が『G線上のアリア』である。随分前に、ロックやポップスだけでなく、たまにはクラシックくらい聴かなければと思い、iTuneでクラシックが50曲程度入っているアルバムを購入したのだが、その中で一番気に入ったのがこの曲。

ウィキペディアを調べてみると、下記の説明がなされている。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した『管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068』の第2曲「アリア(エール)」をヴァイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミがピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏のために編曲したものの通称。通称は、ニ長調からハ長調に移調されているため、ヴァイオリンの4本ある弦のうち最低音の弦、G線のみで演奏できることに由来する。

この説明を読むまで「線上」ではなく「戦場」だと思っており、戦争の物悲しさを奏でた曲なのかなと勘違いしていた。ゆったりした響きとシンプルなメロディが美しいのだが、このシンプルさは、ヴァイオリンのG線のみで演奏することによって得られるものであろうか。

ウェブで検索していくと、いろいろなアレンジがなされていることを知ることができるが、やはりオリジナルのヴァイオリンによる演奏が一番だという声が多い。iTuneで試聴しながら検索していると千葉純子さんという方の演奏が、一番柔らかく感じた。

音楽は好きなだけで素人なので良し悪しは分からないが、個人的な感性ではこの演奏が一番気に入ったので、買ってしまった。(といっても250円ですが) シンプルな曲だけに、何度聴いても飽きない。リラックスしたいときの定番曲になりそうである。

ちなみに、元気を出したいときは坂本龍一さんの「Rain」を聴いている。テレビの演奏会で見かけていい曲だなと思ったのだが、曲名が分からないままずっともやもやしていたのだ。ある時、ラストエンペラーのサウンドトラックだと知って、迷わず購入。よい曲との偶然の出会いというのは、うれしいものである。

◇1614 『正しい本の読み方』 >橋爪大三郎/講談社現代新書

前作に引き続き読書論。どのような本を読めばよいかと、常に試行錯誤しているので、読書論的な本があるとついつい手を伸ばしてしまうのだ。

本書は、丹羽さんの読書論に比べると随分硬派である。文体は平易でさらりと読めるのだが、求めているレベルは高い。ズバリ言ってしまうと「大著者100人の本をできるだけ早い段階で読み込んでおくべし」というもの。ここでいうところの「大著者」とは、カントやヘーゲルなどの哲学者や、ドストエフスキーやトルストイなどの古典の作家ばかり。恥ずかしながら、紹介されているリストの中で、読んだことがあるのは4冊の小説だけだった。

しかしながら、いきなり原書を読むのが難しければ入門書でも構わないとのこと。私にとっては、入門書ですらハードルが高そうなのだが。。。

ただし、本書はいたずらに古典を読めと言っているのではない。本にはネットワークがある(その本が書かれたネタ本がある)とか、本を読むとはその前提を発見することだとか、本というものの本質に迫る記述が多いのも特徴的。このような本は初めてかもしれない。こういった根本的な考え方に触れられる本というのは貴重である。

・教養こそ、前例のない出来事が起こったときに、ものごとを決めるのに唯一参考になるもの。

・本にはその本を生み出した別の本がある。本はネットワークを作っている。本のネットワークの構造がわかれば、読むべき本をうまく選ぶことができる。ネットワークの節目になる本を読めばよく、そのほかの本は中抜きできる、つまり読まなくてよい。

・難解は本は原典を読まなくてもよいが、クラシックス(古典)に書かれている内容は知っていないと、本のシステム(相互関係)がわからなくなる。これを補うのが入門書である。

・ベストセラーにそれほど良い本はないので、スルーしても実害はない。ベストセラーを買うのは最悪ではないが、ベストセラーだから買うのは最悪。

・著者には、何を書いて何を書かないかの選択権がある。大事なことなのに書いていないのは、うっかり書いていないのかもしれないし、あえて書かないのかもしれない。テキストには必ずこのような二重性、ポジとネガが隠れている。

・本を読むとは、その前提を発見すること。結論は必ず書いてあるが、前提は必ずしも書かれていない。

・異なる意見の本を読むと、それらの著者が自分の頭の中でけんかをはじめる。これが本を読むということ。入門書ではこれは起こらない。しかし、ある著者の書いたナマの本を読むとこういうことが起こり始める。本には生命力があるから。

・『理科系の作文技術』(木下是雄、中公新書)は、トピック、センテンス、メソッドをきちんと解説してある名著。英語にはものごとをきっちり伝えようという態度があるが、これを日本語で実践している本。

・著者の思想には「構造」と「意図」と「背景」がある。

・頭を大事に使う。本の内容は覚えなくてよい。本を覚えようとして頭を無駄に使わないこと。たいていの情報はネットで検索すれば簡単に手に入る。大事なことは忘れないと信じる。あるいは、忘れることができないことが、大事なことだと考える。

・「記憶」と「思考」は別のもの。考えて解くべき問題を記憶で解いてしまうのは有害。思考力が弱くなる。頭の活動の中心になるのは思考であり、思考を強くしなければならない。

・万人向けで、誰でも知っているようなことしか書いていない雑誌は、読むだけ無駄。楽しみのために読むならよいが、自分の知の栄養のために読もうと思うならば、はっきりした目的意識をもって活字を読むべき。プロになりたいのであれば、その道のプロを志した人が読む、少数の比較的限られた人のためのものを読まなければ知識は身に付かない。

・文学を読むことで、人間についてのリテラシーを高めることができる。人間関係や個々人の思考を疑似体験することで、「こういう人間いるよね」という理解力が高まる。

・本を役立てるための1つとして議論がある。人は通常、本をどこかで踏まえて物事を決めたり持論を主張したりする。相手の意見を押し返すには手順が必要。(1)相手の言うことを理解する、(2)自分の考えを理解し組み立てる、(3)討論する。この時に本を「補助線」として活用する。本は、ある考えの道筋が書いてあるもの。それを参考に、相手の考えを理解するのだ。たいていのまとまった主張にはもっともな点もあれば問題点もある。全体としてどうなのかを考えなければならない。

・高校の数学で習う「場合分け」は、議論が成立するための前提を確認する練習。このことを自覚すると、ものごとを考える場合の、深さが違ってくる。




【目次】

<基礎篇>
第一章 なぜ本を読むのか
第二章 どんな本を選べばよいのか
第三章 どのように本を読めばよいのか

<応用篇>
第四章 本から何を学べばよいのか
【特別付録】必ず読むべき「大著者一〇〇人」リスト
第五章 どのように覚えればよいのか
第六章 本はなんの役に立つか

<実践篇>
第七章 どのようにものごとを考えればよいのか
終章  情報が溢れる現代で、学ぶとはどういうことか

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中国については、駐在経験があるがゆえに、人一倍感心を抱いている。習近平氏への権力集中が果たして吉と出るかどうか、心配なところもあるが、民衆は自分が豊かであれば上層部がどうなろうと、感心がない(あってもゴシップ的な関心か)というのが本音のようだ。

というのも、宋文洲さんのコラムで、中国共産党のことを「どうも思わない」と言い放っていたのを目にしたのだ。宋さんの次のコメントが印象的だった。

「我々中国人は国のトップを選ぶ選挙がないからということで可哀そうだと思う日本人も多いでしょうが、豊かな生活と比較的自由な生き方ができれば、誰が政権をやってもいいと思うのです。逆にいくら選挙や民主主義と言っても生活が悪くなっていくと暴動や革命を起こすのです。我々はもともと宗教やイデオロギーに執着がないのです。

中国共産党がそれをよく知る政党です。1949年に国民党政府を大陸から台湾に追いやり、地主から土地を奪い貧しい農民たちに与えるような違法行為をしました。しかし、9割の国民を喜ばせる違法行為なんかは違法ではなくなるのです。人民が暴動や内戦を通じても法律とそれを作った政府を一緒に変えてしまうのです。米国も内戦を通じて今のような社会になったことを忘れてはいけません。

共産党政権はそろそろ70年たちます。文化大革命や天安門事件などの失敗と挫折があっても中国という巨大な史上最大の国家を100年の没落からもう一度繁栄の軌道に乗せたのは事実です。

「本来を忘れず、外来を吸収し、未来に向かう」。9か国語で世界に公開された共産党大会の報告書にある言葉です。人民のためという「本来」、学ぶべき「外来」と向かうべき「未来」を大切にしてくれれば、我々にわざわざ中国共産党を倒すメリットはありません。政治には嘘が満ちていますが、結果には嘘がありません」

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チャイナセブンと呼ばれる政治局常務委員の人事については、いろいろな憶測が飛んでいたが、10月25日に新体制を発表した。これまでの常務委員7人のうち、習近平総書記(国家主席、64)と李克強首相(62)が留任。新たに栗戦書・中央弁公庁主任(67)、汪洋副首相(62)、王滬寧・中央政策研究室主任(62)、趙楽際・中央組織部長(60)、韓正・上海市党委員会書記(63)の5人が昇格した。

若手ホープと呼ばれていた、重慶市トップの陳敏爾(57)や、広東省トップの胡春華(54)の昇格は見送り。今まで、2期目には若手を登用し、次世代のトップとして育てていくという慣習があったが、それを破っての異例の人事。2期10年という規則を改訂し、3期目を狙う布石とも言われている。

それにしても、このホープたちの落胆はいかほどであろうか。次のチャンスは5年後である。中国共産党は、ある程度頭角を現すまでは完全実力主義、超テクノクラートたちが熾烈な出世争いを繰り広げている。上層部になれば政治的な駆け引きが必要となるが、それまでは実績がモノをいう。若いころは必死に勉強し、その後一所懸命実績を上げ、最後に政治的な駆け引きを経てのし上がってきた若手たち。日本の会社組織における派閥争いなどとは比べ物にならない魑魅魍魎の世界。上に上がれなかった人たちの心中を思うと、自分の社内におけるちょっとした評価など、取るに足りないものに思えてくる。

話が逸れてしまった。以下、中国共産党大会・活動報告の要旨を日経新聞から引用させていただく。

【党大会のテーマ】初心を忘れず使命を胸に刻み、「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面的完成の決戦に勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取る。中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に向けたゆまず奮闘する。

【党の歴史的使命】1921年に党が誕生し中国人民の闘争に大黒柱が生まれた。今や中華民族の偉大な復興に近づき、これまで以上の自信と能力を持っている。全党は党の指導と社会主義制度を堅持し、否定する一切の言動に断固反対しなければならない。「新時代の中国の特色ある社会主義」はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、小平理論、(江沢民元総書記が掲げた)「3つの代表」重要思想、科学的発展観を継承し発展させたもの。全党が中華民族の偉大な復興の実現へ奮闘する上での行動指針で、長期にわたり堅持しなければならない。小康社会の完成を土台に、今世紀半ばまでに2段階に分けて富強、民主や文明の調和が美しい「社会主義現代化強国」を築き上げると明確にする。

【党の指導を徹底】党、政、軍、民、学などの各方面や全国各地について、党はすべての活動を指導する。政治意識や核心意識などを堅持し、党の指導の堅持のための体制・仕組みをより完全にする。

【発展の時間軸】党の創立100周年(2021年)には民主や生活などが幅広く進歩した小康社会を完成させ、さらに新中国成立100周年(共産党政権成立から、49年)までに現代化を基本的に実現。社会主義現代化国家を築き上げる目標である。第1段階の20〜35年には経済や科学技術で革新型国家の上位に上り詰め、文化的ソフトパワーが強まり中華文化の影響力が広く、深く強まる。中所得層の割合が増え都市・農村間や地域間の発展や生活格差が著しく縮小する。生態環境も改善し、「美しい中国」の目標が基本的に達成される。第2段階の35年から今世紀半ばには、社会主義現代化強国を築き上げる。物質、政治、精神、社会、生態文明が向上し、トップレベルの総合国力と国際的影響力を有する国になる。中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立っているであろう。

【経済発展】経済は既に高速成長から質の高い発展を目指す段階へと切り替わっており、供給側改革を進め経済の質的優位性を高めなければならない。国有資本の授権経営体制を改革し、国有経済の戦略的再編を速める。ビッグデータやインターネット、環境、シェアリング・エコノミー、人的資本サービスなどの分野で新たな成長の原動力を作り出す。農業・農村を優先的に発展させる。請負地の権利の分離に関する制度を充実。農村集団財産権制度の改革も深化させる。辺境地区の安定と安全保障に万全を期し、海洋強国化を加速させる。金融の実体経済へのサービス能力を強化。直接金融の割合を引き上げ資本市場の健全な発展を促す。

【中国文化の発展】文化産業の発展を推進し、北京冬季オリンピック・パラリンピックの準備をしっかり行う。国際的発信力の向上を図り、国の文化的ソフトパワーを強める。

【庶民の生活向上】効率的な社会統治と良好な社会秩序を築き上げ、人民の幸福感をさらに満たす。教育では一流大学・一流学科づくりを加速する。雇用の質を高め、所得水準を向上させる。社会保障制度を充実させ、住宅制度の確立を急ぐ。貧困救済も貫き、2020年の農村貧困人口の脱却を実現する。

【環境や生態系保護】エネルギー生産・消費革命を推進し、クリーンで低炭素を目指すエネルギー体系を築く。大気汚染対策を実施し、青い空を守る戦いに勝利する。生態系の保全や管理体制の改革にも取り組む。

【国防・軍隊の現代化】国防・軍隊建設は新たな歴史的起点に立っており、質と効率を高める。伝統的安全保障の分野と新しいタイプの安全保障の分野の軍事闘争への備えを統一的に進める。国防・軍隊の現代化を35年までに基本的に実現し、21世紀半ばまでに「世界一流」の軍隊を築きあげるよう努める。

【外交】世界が直面する不安定性は際立っている。一心同体となって貿易と投資の自由化などに進むべきである。中国は公正・正義などを旨とする新型国際関係の構築を推進し、他国の内政に干渉し、強い者が弱い者をいじめることに反対する。ただし正当な国益は放棄しない。いかなる者も中国の利益を損ねる苦い果実を飲み込ませようなどという幻想は抱かない方がいい。中国はどれほど発展しても永遠に覇権を唱えず、拡張もしない。引き続き責任ある大国としての役割を果たしていく。

【香港・台湾】(香港での)「一国二制度」は世界が認める成功を収めている。愛国者を主体とする「香港住民による香港管理」を堅持し、同胞の愛国意識を強化し、ともに民族復興という歴史的な責任を負い栄光をわかち合うようにする。「一つの中国」原則は両岸(中台)関係の基礎。これを体現する「92年コンセンサス」を承認すれば台湾のあらゆる政党や団体との往来における障害もなくなる。祖国の統一は必然的な要請だ。両岸同胞は運命をともにする骨肉の兄弟で、家族である。「台湾独立」勢力のいかなる形の分裂活動も打ち破る断固たる意志と自信、十分な能力がある。国家主権と領土を断固守る。

◇1613 『死ぬほど読書』 >丹羽宇一郎/幻冬舎新書

東京への出張時にエキナカの書店で購入。丹羽宇一郎さんの書いた読書論となると、手に取らずにはいられない。200ページ弱のさらっと読める内容で、帰りの電車で読了してしまった。

一番心に残ったのは次の一文である。「読書は心を自由にしてくれる。読書によって自分の考えが練られ、軸ができれば、空気を中心に思考したり、行動したりすることはなくなる。世間の常識や空気に囚われない、真の自由を読書はもたらすのだ」

また、思わずニヤリとしたのは、「西田幾太郎著『善の研究』などの哲学書のように難解で、思うように読めないという本もある」というくだり。今の経営者の年代は学生運動の真っただ中を通り抜けてきた方が多く、難解な哲学書などを読み込んでいる方が多いと感じていた。私自身は、何度か挑戦したものの、どうにも読み進めることができずに諦めていたのだが、丹羽さんほどのかたでもそうなのかと、勇気を頂いた気がする。

それでは気になった箇所を要約して引用。

・人間にとって一番大事なのは、「自分は何も知らない」と自覚すること。「無知の知」を知る。読書はそのことを、身をもって教えてくれる。

・筆者が考える教養の条件:「自分が知らないということを知っている」ことと、「相手の立場に立ってものごとが考えられる」こと。

・本を買う決め手(判断材料)は目次。

・週刊誌は人のなかにある「動物の血」を騒がせるもの。心の栄養にも頭の栄養にもならない。いってみれば、栄養がなく、カロリーばかり増えるスナック菓子のようなもの。

・動物の血を抑えるのは、それと対極にある「理性の血」しかないと思う。「理性の血」とは、ものごとを俯瞰してみる力、相手の立場を理解しようとする能力をさす。

・30代で中間管理職になった際、経済評論家・高橋亀吉氏の『大正昭和財界変動史』『日本近代経済形成史』『日本近代経済発達史』『昭和金融恐慌史』を読み込んだ。日本経済が明治・大正・昭和時代にどのように発展してきたかが手に取るように分かり、非常に勉強になった。

・重要だと思った箇所には線を引き、かつ、読書ノートに書き写す。読書は目だけでなく、手も使う。手を使って時間をかけてノートに写すと、頭に残りやすい。

・多読と精読はどちらがよいとは言えない。本の内容によって自分で決めればよい。

・三国志の一文「悪、小なるを以て之を為すなかれ。善、小なるを以て之を為さざるなかれ」 どんな小さな悪でもやってはいけないし、どんな小さな善であっても、それを実行する勇気を持ちなさい。

・「問題は人との関係であり、一人で解決するものでもない。他人への想像力と共感が、解決へ導いてくれる。問題がある限り、またそれを解決する答えも必ずどこかにある。問題があるというのは、生きている証だ。問題があることを喜べ」




【目次】

第1章 本に代わるものはない
第2章 どんな本を読めばいいのか
第3章 頭を使う読書の効用
第4章 本を読まない日はない
第5章 読書の真価は生き方に表れる
第6章 本の底力

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◇1612 『道具としてのファイナンス』 >石野雄一/日本実業出版社

ファイナンスを理論ではなく実務の世界に落とし込んで著述するというコンセプトの意欲作。筆者は米国で苦労してファイナンス理論を身につけ、それを日産で実践したという経歴。それ故に、実務に根差した理論が学べるのではないかと期待して読み始めた。また、エクセルを駆使すれば難しいファイナンス理論も事務で使いこなすことができるというのも魅力的に映った。

そんな筆者の心意気が感じられるのが次の一文。「ファイナンスはツール(道具)にすぎない」「分析するだけなら誰でもできる。それをどうアクションに結びつけていくかだ。マネジメントの意思決定に使えないものは単なる自己満足にすぎない」

さて、読了したのちの正直な感想は、次のようなもの。
・知識としては知っているものが多く、普通の入門書と変わらない。
・思ったほどエクセルでの計算テクニックが出てこなかった。
・第6・7章は結構難しかった。(デリバティブやブラックショールズモデル)
・下記に列挙する、実務に根差したファイナンスの本質を言語化している点がよかった。

という訳で、個人的に「あぁそうだったのか」と腹落ちした理屈(ファイナンスの目的)などを列挙しておきたい。

・企業が行うべき3つの意思決定:
(1)調達した資金をどこに、いくら投資すべきか(投資に関する意思決定)
(2)投資のための資金を、どこから、どのように調達してくるか(資金調達に関する意思決定)
(3)株主に対して、資金をどのような形態で、いくら還元すべきか(配当に関する意思決定)

・企業のゴールはリターン(収益率)を高めることではなく、企業価値を高めること。(したがって企業は、内部収益率[IRR]が高いプロジェクトよりも、NPVの絶対額が大きいプロジェクトを選択しなければならない)

・我々に求められているのは、リスクを回避することではなく、そのリスクの程度を把握し、かつ、そのリスクに見合ったリターンを受け取ることが可能かを判断する能力を身につけること。リスクとは「予想することができない不確実性」

・CAPMの知られざる問題点とは、CAPMが過去のデータから求められている点と市場データを使用することから未上場企業や事業部ごとの株主資本コストを算出できないこと。

・幾何平均=CAGR(Compound Annual Growth Rate)、年複利成長率ともいう。

・IR活動のゴールはWACCを下げること。

・ROEはあくまでも、株主の立場から見た収益性を図る指標。

・資本構成のトレードオフ理論:最適資本構成は、負債の持つ節税効果(支払利息は税務上の損金となる)と財務破綻コストのトレードオフであること。

・配当政策とは、利益を配当金の形で株主に還元するか、あるいは企業の内部に留保し、優良な投資機会に再投資するかを決めること。

・配当政策のシグナリング効果(signaling effect of dividend policy):増配する場合は、経営者が今後とも企業の業績に自信があると考えることができ、減配する場合は、経営者が将来の企業業績が厳しいと考えていることを株主に伝えることになる。

・株式は、簡単に言うと、会社の価値を小口に分割したもの。株価は、その分割した株式についている値段。株価=会社の価値/発行済み株式数。ここから、会社の価値=株式x発行済み株式数、という式が導き出される。




【目次】

序章 ファイナンスの武者修行
第1章 投資に関する理論
第2章 証券投資に関する理論
第3章 企業価値評価
第4章 企業の最適資本構成と配当政策
第5章 資本市場に関する理論
第6章 デリバティブの理論と実践的知識
第7章 ブラック=ショールズ・モデル

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○1611 『シンギュラリティは近い−人類が声明を超越するとき』 >レイ・カーツワイル/NHK出版

これだけAI技術が話題になっていると「シンギュラリティ」という言葉もメジャーになり、知っている人も増えていることだろう。私が初めてこの言葉を耳にしたのはいつだろうか。具体的には思い出せないが、ブログを検索すると2015年4月に『ゼロ・トゥ・ワン』の書評で初登場している。ちなみにこの本もNHK出版だった。

シンギュラリティとはレイ・カーツワイル氏が『ポスト・ヒューマン誕生』という著書で2007年に提唱した考え方。具体的には2045年にコンピュータが人間の知能を超える技術的臨界点が来るであろうというもの。この手のものはきちんと原書を読みたいなと思っていたのだが、700ページ近いボリュームに手が出せなかったのだ。ところがそのエッセンス版があることを知り、手に取ったのが本書である。まぁ専門家でない私のようなレベルであれば、むしろエッセンス版をきちんと読み込む方が理解が深まるであろう。

シンギュラリティという言葉を聞くたびに思い出すのが、『トランセンデンス』という映画。視聴当初(2014年8月)は荒唐無稽な映画だと思ったのだが、シンギュラリティの世界を知ると、あり得るかもしれない、と思えてくるから不思議である。

しかしながら、個人的にはAIが人類を支配する世界が来るとは考えていない。シンギュラリティについては警戒した方がよいという派と、大丈夫だという派があるが、私は後者の楽観派。1980年代はパソコン、1990年代はインターネット、2000年代はスマートフォン、そして今はAIの時代と言われている。この言葉が象徴するように、これらはあくまでも道具であり、インターネットがスマホが日常生活に入り込み、生活を便利に改善したように、AIも道具として日常的なものになるであろう。

もちろん(スマホがゲーム機やデジカメに置き換わったように)AIによって無くなる仕事も出てくるであろうが、代わりに新たな仕事も生まれてくるであろう。いや、もっというならば、AIで生産性が劇的に向上するのであれば、人間は週休三日、週休四日を謳歌すればよいのだ。まぁ賛否両論はあるようだが、このような課題を提示したという点で、本書は特筆すべきだし、歴史的な本と言えるであろう。

さて、本書はエッセンス版と言えども、さまざまな要素が含まれており要約するのは難しいのだが、冒頭で筆者自身がシンギュラリティとは何ぞやという事例を6ページに渡って紹介してくれている。少し長くなるが、この部分を引用しておきたい。

・パラダイム・シフト(技術革新)の起こる率が加速化している。今の時点では、10年ごとに2倍。

・ITの能力(コストパフォーマンス、速度、容量、帯域幅)はさらに速いペースで指数関数的に成長している。今の時点で毎年およそ2倍。この原則は、さまざまな計測単位にも当てはまる。人間の知識量もそのひとつ。

・ITにおいては、指数関数的成長にはさらに上の段階がある。指数関数的な成長率(指数)が、指数関数的に成長する、というものだ。理由は以下のとおり。テクノロジーのコストパフォーマンスがさらに高くなり、技術の進歩に向けてより大きな資源が投入される。そのため、指数関数的な成長率は、時間の経過とともに大きくなる。たとえば、1940年代にコンピュータ産業において実施された事業のなかで、歴史的に重要だと今なおみなされるものはわずかしかない。それに対し今日、この業界での総収益は1兆ドルを超える。よって、その分だけ、研究開発にかける予算も高くなっている。

・人間の脳のスキャンも、指数関数的に向上しているテクノロジーのひとつ。脳スキャンの時間的解像度、空間的解像度、帯域幅は、毎年2倍になっている。今や、人間の脳が働く原理の本格的なリバースエンジニアリング(解読し、それをAIなどのテクノロジーに応用すること)に充分なツールを手にしている。すでに、脳の数百の領域のうち数十は、かなり高度にモデル化されシミュレーションされている。20年以内には、人間の脳のすべての領域の働きについて、詳細に理解できるようになる。

・人間の知能を模倣するために必要なハードウェアが、スーパーコンピューターでは10年以内に、パーソナル・コンピュータ程度のサイズの装置ではその次の10年以内に得られる。2020年代半ばまでに、人間の知能をモデル化した有効なソフトウェアが開発される。

・ハードとソフトの両方が人間の知能を完全に模倣できるようになれば、2020年代の終わりまでには、コンピューターがチューリングテストに合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになる。

・コンピュータがここまで発達すれば、人間の知能に従来からある長所と、機械の知能にある長所とを合体させることができる。

・人間の知能に従来からある長所のひとつに、パターン認識なる恐るべき能力がある。超並列処理、自己組織化機能を備えた人間の脳は、捉えがたいが一定した特性を持つパターンを認識するには理想的な構造物だ。人間はさらに、経験をもとに洞察を働かせ、原理を推測することで、新しい知識を学習する力をもっている。これには、言語を用いて情報を収集することも含まれる。人間の知能の中でも重要なものに、頭の中で現実をモデル化し、そのモデルのさまざまな側面を変化させることで、「こうなったらどうなるだろう」という実験を頭の中で行う能力がある。

・機械の知能に従来からある長所には、何十億もの事実を正確に記憶し、即座に想起するという能力がある。

・非生物的な知能には、また別の利点がある。いったん技能を獲得すれば、それを高速かつ最適な正確さで、疲れることなく何度も繰り返し実行することができる。

・たぶんこれが最も重要な点だが、機械は、知識を極端に速く共有することができる。これに比べて、人間が言語を通じて知識を共有するスピードは、とても遅い。

・非生物的な知能は、技能や知識を、他の機械からダウンロードするようになるだろう。そのうち、人間からもダウンロードするようになる。

・機械は、光速(毎秒およそ30万キロメートル)に近い速さで、信号を処理し切り換えることができるようになる。これに対して、哺乳類の脳で使われている電気化学信号の処理速度は、およそ毎秒100メートル。速度は、300万倍以上も違う。

・機械は、インターネットを通じて、人間と機械が合体した文明にあるすべての知識にアクセスし、そのすべてを習得することができる。

・機械は、それぞれがもつ資源と知能と記憶を共有することができる。2台の機械−または100万台でも−が集まってひとつになったり、別々のものに戻ったりすることができる。多数の機械が、この2つを同時にする、つまり、同時にひとつにも別々にもなることができる。人間はこれを恋愛と呼ぶが、生物がもつ恋愛の能力は、はかなくて信用できない。

・こうした従来の長所(生物的な人間の知能が持つパターン認識能力と、非生物的な知能の持つスピードと記憶容量と正確さ、知識と技能を共有する力)を合体させると、恐るべきことになる。

・機械の知能は、設計とアーキテクチャが完全に自由だ(つまり、ニューロン間結合の切り換え速度が遅いとか、頭蓋骨の大きさといった、生物としての限界という制約を受けない)。そのうえ、常にパフォーマンスが一定している。

・非生物的な知能が、人間と機械の従来からの長所を併せもてば、文明の知能の中の非生物的な部分は、機械のコストパフォーマンス、速度、容量が二重の指数関数的成長をとげる事により、継続的に利益を得ることになる。

・機械が、人間のもつ設計技術能力を獲得すれば、速度や容量は人間のそれをはるかに超え、機械自身の設計(ソースコード)にアクセスし、自身を操作する能力ももつことになる。人間も、これとよく似たことをバイオテクノロジーを使ってなしつつあるが(人体の遺伝情報プロセスなどを変化させる)、機械が自身のプログラムを修正することでできることと比べると、速度はかなり遅く、用途はひじょうに限られている。

・生物には本質的な限界がある。たとえば、すべての生命体は、例外なく、アミノ酸の一次元的な配列が三次元的に折りたたまれてできたタンパク質で構成される。タンパク質をベースとしたメカニズムには、強さと速さが不足している。人間は、身体と脳にある生物としてのあるあらゆる器官や組織を再設計することで、性能をいっそう高めることができる。

・人間の知能には、かなりの可塑性(それ自身の構造を変化させる力)が、これまで考えられていたよりもある。それでも、人間の脳の設計には、どうしようもない限界がある。たとえば、頭蓋骨には、100兆のニューロン間結合しか収まる余地がない。人間が、先祖の霊長類よりも大きな認知能力を授かる事になった重要な遺伝的変化は、大脳皮質が大きくなり、脳の中の特定の領域で灰白質の容量が増えたことだった。しかしこの変化は、生物進化というとてもゆっくりとした時間の尺度で起き、脳の能力には本質的な限界がある。機械は、それ自身の設計を組み替えて、性能を際限なく増加させることができる。ナノテクノロジーを用いた設計をすれば、サイズを大きくすることもエネルギー消費が増大することもなく、生物の脳よりも能力をはるかに高められる。

・機械は、ひじょうに速度の速い三次元分子回路を用いることで、さらに発達する。今日使われている電子回路は、哺乳類の脳で使われる電気化学スイッチの100万倍以上も速い。将来の分子回路は、ナノチューブのような装置を用いるものになる。ナノチューブとは、炭素原子でできた微小な管状の分子で、幅は原子10個分しかなく、今日のシリコンベースのトランジスタの500分の一の大きさしかない。信号が伝わる距離が短いので、数テラヘルツ(毎秒数兆回の動作)の速さで作動することができる。これに比べて、今の集積回路の速さは、数ギガヘルツ(毎秒数十億回の動作)でしかない。

・テクノロジーの変化率は、人間の頭脳の速度だけに影響するのではない。機械の知能も、フィードバックのサイクルによって自身の能力を高めるため、機械の支援を受けない人間の知能では追いつけなくなる。

・機械の知能が自身の設計を繰り返し改善するサイクルは、どんどん速くなる。このことは、まさに、パラダイムシフトの起こる率が加速し続けるという公式で予測されていた。パラダイムシフト率が加速し続けるという理論に対しては、人間には追いつけないほど速くなりすぎるので、そんなことはありえない、という反論も唱えられている。しかし、生物的な知能から非生物的な知能に移行すれば、加速し続けることは可能になる。

・非生物的な知能が加速度的なサイクルで向上するのに加え、ナノテクノロジーを用いれば、物理的な事象を分子レベルで操作することができる。

・ナノテクノロジーを用いてナノボットを設計することができる。ナノボットとは、分子レベルで設計された、大きさがミクロン(1メートルの100万分の一)単位のロボットで、「呼吸細胞」(人工の赤血球)などがある。ナノボットは、人体の中で無数の役割を果たすことになる。たとえば加齢を逆行させるなど(遺伝子工学などのバイオテクノロジーで達成できるレベルを超えて)。

・ナノボットは、生体のニューロンと相互作用して、神経系の内部からヴァーチャルリアリティ(VR)を作りだし、人間の体験を大幅に広げる。

・脳の毛細血管に数十億個のナノボットを送り込み、人間の知能を大幅に高める。

・非生物的な知能が人間の脳にひとたび足場を築けば(すでにコンピュータチップの動物神経組織への移植実験によってその萌芽が始まっている)、脳内の機械の知能は指数関数的に増大し(実際に今まで成長を続けてきたように)、少なくとも年間2倍にはなる。これに対し、生物的な知能の容量には実際的な限界がある。よって、人間の知能のうち非生物的な知能が、最終的には圧倒的に大きな部分を占めるようになる。

・ナノボットは、過去の工業社会が引き起こした汚染を逆転させ、環境を改善する。

・フォグレットと呼ばれるナノボットは、イメージや音波を操作して、モーフィング技術を使って作成したVRを現実世界に出現させることができる。

・他者の感情を理解して適切に反応するという人間の能力(いわゆる感情的知能)も、将来的には、機械知能が理解して自由に使いこなすようになるだろう。人間の感情的な反応の中には、自身の知能を最適化し、脆弱で限界のある生物的な身体の埋め合わせをしようとするものがある。未来の機械知能も、世界と作用するために「身体」を持つだろう(VRにおける
ヴァーチャル身体や、フォグレットを使って本当の現実に投影した身体など)。こうしたナノ技術でできた身体は、人間の生身の体よりもはるかに性能がよく長持ちする。よって、将来の機械知能が示す「感情的」な反応のいくつかは、大幅に強化された身体的な能力に合わせて再設計されている。

・神経系の内部で作られるVRの解像度や信頼度が、本当の現実に匹敵するようになると、人々は、ますますヴァーチャル環境での経験を重ねることになる。

・VRでは、人は、身体的にも感情面でも違う人間になることができる。それどころか、他の人(ロマンスの相手など)が、あなたが自分のために選ぶ身体とは違う身体を、あなたのために選ぶこともできる(その逆もあり)。

・収穫加速の法則は、非生物的な知能が、宇宙の中のわれわれの周囲にある物質とエネルギーを、人間と機械が合体した知能でほぼ「飽和」させるまで継続される。飽和とは、コンピューティングの物理的性質を理解したうえで、物質とエネルギーのパターンをコンピューティングのために最大限利用することだ。この最大の限界に至るまで、文明の知能は、宇宙のすみずみまで広がり、その能力を拡大し続ける。拡大する速度は、そのうちすぐに、情報が伝達される最大速度に至る。

・最後には、宇宙全体にわれわれの知能が飽和する。これが宇宙の運命なのだ。われわれが自分自身の運命を決定するので
あり、今のように、天体の働きを支配する、単純で機械的な「もの言わぬ」力に決定されるのではない。

・宇宙がそこまで知的になるまでにかかる時間は、光速が不変の限界なのかどうかで決まってくる。光速の限界を巧みに取り除く(または回避する)可能性がないわけではなさそうだ。もしもそういう可能性があるのなら、未来の文明に存在する壮大な知能が、それを利用することができるだろう。


久しぶりに大量の文書を打ち込んだ。引用には慣れているつもりだが、内容も難しく、流石に疲れた。。。



【目次】

第1章 六つのエポック
第2章 テクノロジー進化の理論―収穫加速の法則
第3章 人間の脳のコンピューティング能力を実現する
第4章 人間の知能のソフトウェアを実現する―人間の脳のリバースエンジニアリング
第5章 衝撃…
第6章 わたしは技術的特異点論者だ

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週刊東洋経済[2017.07.08]ビジネスのための使えるAI

今年の7月の雑誌だが、たまたま手に取る機会があったので、気になった箇所を引用しておきたい。AIに関しては、何冊か本を読んでいたので、よい復習になった。未知の知識を中心に引用。

・AIの「賢さ」は精度と再現率で評価する。例えば、企業の財務データを学習させ経営破綻の可能性を予測させる機械学習システムを構築する際、次のどちらがより正しい回答と言えるだろうか。(1)30社が破綻可能性ありと予測され、その全社が実際に破綻した。ただし可能性なしと判断した企業群でも70社が破綻しており取りこぼしがあった。(=精度:プレシジョンが100%)(2)200社が破綻可能性ありと分類されたが、その内100社しか実際には破綻しなかった。ただし可能性なしの企業はどこも破綻しておらず取りこぼしはなかった。(=再現率:リコールが100%) →精度と再現率はトレードオフの関係であり、どちらを選ぶかは人間が決めなければならない。

・機械学習:AIの一種。大量のデータをコンピュータ上のアルゴリズムに入力し、コンピュータ自身にデータの中の規則性や特徴を見つけさせる。ディープラーニングは機械学習の一種。
・ニューラルネットワーク:人の脳を模して、コンピュータ上に疑似的なニューロン(神経細胞)のネットワークを作り、ニューロン間のつながりを学習で変化させるアプローチ。ネットワークは大別すると「入力層」「中間層」「出力層」の3部分で構成される。データをネットワークに入力すると、入力層〜中間層でデータから特徴を抽出し、それを中間層〜出力層で組み合わせてさらに複雑な特徴を抽出する。

・ディープラーニング:機械学習の一種。日本語で「深層学習」という。ニューラルネットワークの中間層を多層構造にすることで、コンピュータが大量のデータから自動的に特徴を抽出できるようにした。従来の機械学習と比べると複雑な学習が可能で、画像や音声認識で高い精度を発揮している。また、「GPU」という半導体を使ったディープラーニングにより、飛躍的にAIが進化するようになった。

・強化学習:機械学習方式の一つ。選択結果によって報酬を与え、AI自信に試行錯誤させて学ばせる。機械は最初はランダムに選択するが、次第に報酬が大きくなるよう法則性を見いだし、記憶していく。グーグルのAlphaGoはこの方法を採用している。

・マルチコアのCPUは逐次処理が得意で、OSのように複雑なプログラムに向いている。GPUはCPUよりもはるかに多い何千というコア(計算処理をする部分)を持ち、並列処理をできる点が特徴。GPUはもともとビデオゲームのグラフィックプロセッサーとして搭載されるなど、映像処理が強みだった。並列処理とは、1つの作業をバラバラのアプローチを並列で行うこと。この中で成功したアプローチを採用するという仕組み。これは「LazySMP(怠惰な並列処理)」と呼ばれ、将棋などのボードゲームのAI開発では有名な事象。

・AIを有効的に活用するには条件がいる。特に重要なのはその過大に発生頻度が高い事象があるか否か。将棋や囲碁などのボードゲーム、グーグルが実施しているデータセンターのエネルギー効率改善など。

・AIの技術的な限界:(1)機械学習は過去のデータからパターンを発見し、将来を予測する技術である。これが実社会で役立つには、過去と未来が連続していなければならない。誰にも予測不可能な事態には対処できない。(2)たとえ過去から連続していても発生確率が極めて低く、過去のデータが十分に存在しない事態には対応しにくい。例えば工場の火災のような不測の事態に対しては、実際に発生したデータがなければ対処は難しい。(3)機械学習は無作為に抽出したサンプルを統計的に処理し全体像を推測するもの。選んだサンプルに偏りが偶然あった場合、結論が現実にそぐわないことがあり得る。

・AI開発のために顧客情報をIT会社に提供する必要がある場合、(1)適切な委託先を選定している、(2)委託契約を締結している、(3)委託先における個人データ取り扱い状況を把握している、の3点が基準になる。また、個人情報を氏名を消すなど個人を特定できないように、かつ情報を復元できないようにした「匿名加工情報」として活用する場合がある。2017年5月に施行された改正個人情報保護法は、匿名加工情報を第三者に提供する際はあらかじめ、どの項目を提供するのか公表する義務があるとしている。このため、匿名加工情報にした方が委託するよりも企業側の負担が大きくなる場合もある。


ちなみに、今回の記事で一番印象的だったのは、AIブームは早晩終わるであろうという予測。これはAIが廃れるという意味ではなく、インターネットのように日常のものとなり、わざわざ取り沙汰される存在ではなくなるというもの。納得感の高い意見であった。

◇1610 『世界のエリートがやっている最高の休息法−脳科学×瞑想で集中力が高まる』 >久賀谷亮/ダイヤモンド社

最近、健康オタクのように健康に関する本を数冊読んできたが、一応本書で打ち止め。シリコンバレーだのスタンフォードだの、ちょっとうんざりするようなタイトルが続いたが、本書は「世界のエリートがやっている」ものだそうだ。こういったタイトルを冠さないと売れないのであろう。

(そういえば先日、とある本の著者の方から聞いた話だが、以前と比べて本の出版点数は増えているとのこと。一方で書籍の売上は落ちているとのことなので、たくさん出して少しでも売る、という戦略になっているらしい。その分、玉石混交となり、質の低下を招いているとか。インターネットと書籍とで一番差別化できるのが信頼性。質の低下からその信頼性までも揺らいでしまっては、書籍の未来は暗いといえそうだ)

健康関連の締めくくりとしてマインドフルネスや瞑想に興味を持ったのだが、この手の本は、怪しげなものも混在しているので、何を読めばよいのかが分かりにくい。信頼できる読書家の友人に教えていただいたところ、本書がお薦めとのことで手にしてみた。

最初に、本書のキモとなりそうな箇所を要約しておこう。

・脳は意識的な活動をしていないときでもアイドリング状態で動き続けている。アイドリング中に浮かんでくる雑念が、脳疲労の最大要因の1つであり、その雑念を抑えることで脳を休ませるというのがマインドフルネス瞑想の基本メカニズムである。

・マルチタスクは脳の集中力を下げる。逆に、マインドフルネスにより集中力や注意力を高めることができる。

・「メッタ」とは人に対する愛情と慈しみを内面に育てる方法。もっと簡単に言えば、ポジティブな感情を自分の中に育てる技術。

・脳が回復する5つの習慣:
(1)オン・オフの切り替えの儀式を持つ。(特定の音楽を聴くなど。脳は2つをドジにできないので、仕事モードと休息モードを切り替える)
(2)自然に触れる。(人を越えたスケールの非人工物に触れることで、日常・仕事モードからの解放を促進する)
(3)美に触れる。
(4)没頭できるものを持つ。
(5)故郷を訪れる。

・雑念(モンキーマインド)が消えないとき、大切なのは「考え」に対して傍観者であり続けること。人間というのは「考え」を自分自身だと思いがちだが、本来、自分というのは容れ物にすぎない。自分と雑念を同一視する必要はない。

・同じ雑念が繰り返し現れるときの対処法:
(1)捨てる。
(2)例外を考える。(その考えが当てはまらない前提を考える)
(3)賢者の目線で考える。
(4)善し悪しで判断するのをやめる。
(5)由来を探る。(なぜその雑念が何度も浮かんでくるのか原因を探る)

・怒りへの対処法(RAIN):
(1)怒りが起きていることを認識する(Recognize)
(2)怒りが起きているという事実を受け入れる(Accept)
(3)身体に何が起きているかを検証する(Investigate)
(4)怒りと自分を同一視せず、距離をとる(Non-Identification)

・マインドフルネスは、自己へのとらわれを抑制する働きも持つ。「自分が、自分が」というエゴが顔を出しにくくなる。

・「目の前の一歩一歩にフォーカスする」 マインドフルネスは走りながら休むための方法でもある。

・人間は競争する生き物だが、競争に負けたくないという気持ちほど、脳を疲弊させるものはない。

・幸福度を高める生き方の因子として、繰り返し登場するのが「感謝」の心。


マインドフルネスの具体的な方法についても書かれているが、脳科学の見地からの分析が興味深かった。ちなみに、私が少し試してみたのは、椅子に腰かけて椅子と身体との設置点に神経を集中し、ゆっくりと呼吸しながら呼吸のリズムに意識を移していくという方法。雑念が消えていくのが分かるのだが、すぐに寝入ってしまう。これでも効果はあるのだろうか?

読み進めながら宗教と近しいような、ちょっと怪しげな感覚を持たなくもなかったが、その点は本書の主人公が禅寺の出身で、宗教的な座禅が嫌いで家を飛び出したという設定によって、うまく宗教色を緩和させている。私としては、雑念を追い払ってポジティブなことだけを考えるだの、感謝の気持ちを持つだのといった考え方は、中村天風や稲盛和夫の考え方に通ずるものがあり、比較的馴染みやすかったといえよう。

2カ月間、マインドフルネスを続けると脳の構造が変わるという。イライラが消え、集中力が増すそうだ。前述の本書を進めてくださった友人もその効果については実感しているとのこと。私の場合、すぐに寝てしまうので瞑想になっているのかどうかが不安だが、神経が疲れている時にあえてリラックスの時間を持つというのは重要だと思うので、しばらく瞑想を続けて見ようと思う。



【目次】

先端脳科学が注目する「脳の休め方」
「疲れない心」を科学的につくるには?―脳科学と瞑想のあいだ
「疲れやすい人」の脳の習慣―「いま」から目をそらさない
「自動操縦」が脳を疲弊させる―集中力を高める方法
脳を洗浄する「睡眠」×「瞑想」―やさしさのメッタ
扁桃体は抑えつけるな!―疲れを溜め込まない「不安解消法」
さよなら、モンキーマインド―こうして雑念は消える
「怒りと疲れ」の意外な関係性―「緊急モード」の脳科学
レジリエンスの脳科学―瞑想が「折れない心」をつくる
脳から身体を治す―副交感神経トレーニング
脳には脳の休め方がある―人と組織に必要な「やさしさ」
思いやりのメッタ

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◇1609 『スタンフォード式・最高の睡眠』 >西野精治/サンマーク出版

健康のためには食事・運動・睡眠のバランスが大切、というのは誰もが知っている常識であろう。最近、自分の中で健康本ブームなのだが、今回は睡眠に関する本を読んでみた。きっかけはたまたま視ていたテレビ番組で、筆者である西野氏が解説していた内容に論理性と説得力を感じたから。

睡眠が大切なのはわかっているが、平日はせいぜい6時間から6時間半の睡眠時間を確保するのが精いっぱい。やはり本書で述べられているような質を上げることを意識しなければならないであろう。体に悪いと知りつつも、頭が疲れたときはついつい寝酒に頼りがちなので、今後は出来るだけ止めるようにしていきたい。

また本書を読んで早速実行し始めたのが、朝の時間差目覚まし時計。今まではスヌーズ機能を使用していたので約8分後にアラームが再度鳴っていたのだが、睡眠学的には20分の感覚を開けた方がよいらしい。あとは短時間の昼寝。10〜15分程度であっても、会社の椅子に座って眠るだけで、午後の仕事効率がかなり違ってくる。

・眠らないと、「インスリン」の分泌が悪くなって血糖値が高くなり、糖尿病を招く。
 眠らないと、食べすぎを抑制する「レプチン」というホルモンが出ず、太る。
 眠らないと、食欲を増す「グレリン」というホルモンが出るため、太る。
 眠らないと、交感神経の緊張状態が続いて高血圧になる。
 眠らないと、精神が不安定になり、うつ病、不安障害、アルコール依存、薬物依存の発症率が高くなる。

・睡眠に課せられた5つのミッション
(1)脳と体に「休息」を与える。
(2)「記憶」を整理して定着させる。
(3)「ホルモンバランス」を調整する。
(4)「免疫力」を上げて病気を遠ざける。
(5)「脳の老廃物」をとる。

・慢性的な寝不足からくる「睡眠負債」は週末の寝だめでは解消できない。(40分の睡眠負債を解消し、正常な8.2時間睡眠に回復するまでには、14時間睡眠を3週間続けなければならない) 忙しいビジネスパーソンが14時間眠るのは不可能であり、これに代わる「睡眠メンテナンス方法」として、「最初の90分」を深くするメソッドを提唱する。

・身体の深部温度と皮膚温度の差が小さくなるほど眠気が強まる。入眠前は手足が温かくなり、皮膚温度が上がって熱を放出し、深部体温を下げていく。よって、就寝90分前に入浴する(時間がなく、すぐ眠るときはシャワーの方がよい)、靴下を履かない(足からの熱放散が妨げられてしまう)などに気を付ける。

・眠るためには「モノトナス(単調な状態)」が好ましい。いつも同じ音楽を聴くなど、「睡眠のためのルーティーン」を確立する。

・目覚まし時計は20分間隔で2つ用意する。これによりレム睡眠のサイクルに合わせた起床ができる。1つ目のアラームですっきりしていたらそのまま起床。まだ眠ければ次のアラームで起床。

・起きた後は、(1)朝陽を浴びる、(2)裸足で歩く、(3)冷たい水で手を洗う。(2)(3)は深部体温と皮膚温度の差を広げるため。

・寝酒はよくないが、飲むならばナイトキャップ的に、度数の強いお酒を少量飲む。(睡眠導入効果がある)

・時差ぼけを解消するためには、出発前から現地時間に合わせて食事・睡眠をとる。

・30分以内の短い昼寝は有効。昼寝の習慣がない人に比べて認知症発症率が約7分の1だった。一方、1時間以上昼寝をする人は、昼寝の習慣がない人に比べて発症率が2倍以上も高かった。




【目次】

0章 「よく寝る」だけでパフォーマンスは上がらない
1章 なぜ人は「人生の3分の1」も眠るのか
2章 夜に秘められた「黄金の90分」の法則
3章 スタンフォード式最高の睡眠法
4章 超究極!熟眠をもたらすスタンフォード覚醒戦略
5章 「眠気」を制する者が人生を制す

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◇1608 『シリコンバレー式自分を変える・最強の食事』 >デイヴ・アスプリー/ダイヤモンド社

ジョコビッチの食事の本が興味深かったので、こちらも衝動買い。本書では、ジョコビッチが推奨していたナッツ類は体によくないとし、ジョコビッチが避けていたカフェインは推奨するなど、意見に相違もある。両者に共通しているのは、小麦に含まれるグルテンは体に悪影響を与えるというものと、血糖値の乱高下は肥満のもとになるというもの。

私は大のコーヒー好きなので、本書の主張を信じたい。人間は自分に都合のよい論を信じてしまうものなのだ。しかしながら、おいしいコーヒーにオイルを入れるのには抵抗があったのだが、本書で紹介されているギーとココナッツオイルをコーヒーに加えてみたところ、なかなかクリーミーで不味くはない。(ただし、コーヒー本来の味ではないように感じるが) コーヒー+オイルは本書で言うところの「完全無欠飲料」だそうだが、確かに朝飲むと、昼食まで空腹を感じることが少なくなった。

オリーブオイルはオメガ9を含む良質のオイルである。醤油はグルテンを含むため、塩の方が体によいとのこと。これを読んで、本書には書かれていないが「豆腐+納豆+黒ゴマ+オリーブオイル+海塩」という我流「完全無欠」料理を作ってみた。夕食時に、ご飯の代わりにこれを食べると満腹感も得ることができる。どの程度の効果が出ているかは不明だが、昨年6キロ減量してから、それ以上はなかなか落ちなかった体重が更に2キロほど落ちてきた。内臓脂肪はほぼ取れたので、あとはいかに皮下脂肪を落とすかである。

・ダイエットをする際、食品のよって満たすべき5つの基本:
(1)脳のためのエネルギー
(2)体のための燃料
(3)細胞のための栄養素
(4)無用な毒素の排除
(5)満足感

・フルーツの果糖では、空腹ホルモンのグレリン(空腹感をオンにして満腹感をオフにする食欲をコントロールするホルモン)をオフにする効果が持続しない。(すぐにお腹が減る) また、果糖は肝臓でブドウ糖(グルコース)か中性脂肪に変換し、後者は脂肪として体に蓄えられる。

・塩分は体にとって必要。特にストレスがあるときにこそ体は塩分を必要とする。ストレスホルモンのコルチゾールを生成するには塩分が必要なのだ。塩分は高血圧の元と言われるが、すでに高血圧の人にとっては有害であっても、そうでない人にとっては塩分は重要。「ピンクソルト」(古代海底地層から採れた汚染ゼロの塩)が最高だが、添加物ゼロの海塩でもOK。

・「脂肪」を理解するためには2つのポイントがある。1つ目は脂肪の分子の長さ。分子が短いほど希少で抗炎症性がある。バター(酪酸)やココナッツオイル(中鎖脂肪酸)がこれにあたる。2つ目は安定性。最も安定しているのは「飽和脂肪酸」で、これは酵素が酸化でダメージを与えられる余地がほとんどない。酸化した(ダメージを受けた)脂肪は老化を加速させ、体に炎症を起こし、効果的でない細胞膜を作る。「不飽和脂肪酸」は安定しておらず炎症性が高いが、「オメガ3」「オメガ6」などは独特の化学構造を持ち、体に加える作用も異なる。特にオメガ3は抗炎症作用を持つ。

・オイルは「オメガ3」を中心に取るとよい。オメガ3は抗炎症作用を持つ。一方、オメガ6も重要だが、鶏肉などにも含まれており通常の食生活で十分に取得できるので、オイルを取るのであれば意識的にオメガ3を摂取するのがよい。オメガ6はキャノーラ油、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、サフラワー油、大豆油、ひまわり油などの植物油である。

・小麦に含まれるグルテンは悪い副作用が多い。

・カフェインが脳を守る。脳内の炎症を防ぎ、認知機能の衰えを軽減し、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる。




【目次】

あなたの食事をバイオハック!減量と人生のアップグレードをする方法
その習慣でいいの?―思いがけないデブ、ヘタレ、バカの原因
カロリー計算をやめて、もっと脂肪を食べよう―脳は脂肪でできている
同じものでも「食べる時間」で毒になる―なぜ朝、ヨーグルトを食べると太るのか?
睡眠をハックして、寝ているあいだに痩せる―使える時間が「16年分」増える睡眠法
運動を減らせば、もっと筋肉がつく―週1の「たった15分」の運動で筋肉質
ハイパフォーマンス・モードを「オン」にする―人が「最も健康になる」食べ方
完全無欠ダイエット・ロードマップ―楽しく進める「オシャレ地帯」編
完全無欠ダイエット・ロードマップ―少し気をつけたい「怪しげな地帯」編
完全無欠ダイエット・ロードマップ―慎重に動くべき「危険地帯」編
ゆでれば「薬」になり、あぶれば「毒」になる―栄養は調理しだいで変幻自在
空腹知らずで、「1日0.5キロ」痩せる―人生が劇的に変わる2週間プログラム
生涯「完全無欠」宣言

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◇1607 『ジョコビッチの生まれ変わる食事−あなたの人生を激変させる14日間プログラム』 >ノバク・ジョコビッチ/三五館

錦織圭選手の登場で、たまにテニスを見るようになった(それまではテニスに対しての興味がなかった)のだが、錦織選手の前に圧倒的な強さで立ちはだかるのがジョコビッチ選手である。そんなジョコビッチが、実は体調不良に悩んでいたこと、それを食事で克服したことを知り、興味を持ったので読んでみた。

結論を先に述べよう。ジョコビッチの肉体改造の最大のポイントは「グルテンフリー」。グルテンは主に小麦粉に含まれる成分である。実家がピザ屋であるジョコビッチにとって小麦粉は主食以外の何物でもなかったのだが、とある試合で急に動きが悪くなったのを、母国セルビア出身の栄養学者・イゴール・セトジェヴィッチ博士がたまたま見ていて、連絡をくれたことがきっかけだとのこと。

私はパンも麺も好きなので、週2〜3回は小麦粉主体の食事をしてきたが、本書を読んでからまずは試してみようと、小麦粉の摂取をやめてみた。正直、劇的な変化は感じられないが、朝の寝覚めが良くなったような気がする。これ以外にも、乳製品や人工甘味料の弊害についても書かれており、食品会社が作り上げた健康な食品のイメージと、栄養学的な見地から安全・健康と言える食品には大きな隔たりがあることを知ることができた。

体質には個人差があるし、ジョコビッチのような体を資本にして戦うアスリートでもない一般人が、どこまで厳密に食事を考えるかは、それぞれのシチュエーションに合わせればよいと思う。たまには好きなラーメンをがっつり食べるのもよいであろう。ただし、こういった知識は知っているか知らないかが重要であり、正しい知識を得たうえで、リスクを承知してそれでもパンや麺を食べ続けるという選択肢ももちろんありである。(死ぬわけではないのだから)

また、血糖値の乱高下に関するリスクについても触れられている。ジョコビッチはアスリートとして血糖値を一日中安定したレベルに保つことをこころがけたとのこと。そのために、血糖値を急上昇させるグルコースを排除した食事を続けている。血糖値を安定させることで、体が脂肪(グルコースが多すぎたときに増える代物)を蓄積しなくなるとのこと。血糖値のメカニズムについては本書を読むまで知らなかったので、備忘のためメモしておこう。

血糖(グルコース)は臓器を腐食する要素を持っており、このため肉体は血液内の糖分を排除しようとする。(だから血糖管理ができない糖尿病にかかると様々な障害が出てくるのだ) 肉体は肝臓と筋肉内の細胞を覚醒させるホルモンのインシュリンを分泌し、同時に体内全体に脂肪細胞をばらまき、グルコースを血液内から取り出して蓄積しようとする。血糖値が高ければ高いほど、さらに大量のインシュリンが必要となり、脂肪も蓄積されるようになる。こうした悪循環により体内のインシュリン受容体は時が経つにつれさらにインシュリンに対して鈍感になり、膵臓はさらに多くのインシュリンを作り出す必要に迫られる。これが糖尿病の始まりである。

一方で、肉体は脂肪を蓄積し、ほとんどは新陳代謝の根拠地となる内臓かその周辺に集まることになる。内臓脂肪と呼ばれるこの物質は、毒物を放出し肉体のさまざまな部分に炎症を引き起こし、長期的に健康に影響をもたらす。この毒物が肝臓や心臓に侵入し、これらの臓器の機能を低下させるのだ。インシュリンを急上昇させる食べ物というと、糖分が多い食べ物を連想しがちだが、糖分以上に速く体内にインシュリン反応を引き起こす食品がある。それが「小麦」なのだ。


ジョコビッチ選手が体に良い・悪いと考えている食材を列挙しておこう。

<体に良い食材>
・肉、魚、卵
・低炭水化物野菜(葉野菜、茎野菜など。一方ジャガイモ、かぼちゃなどは炭水化物が多い)
・果物(糖分を取り過ぎない程度)
・穀物類(特にキノア、そば粉)
・ナッツ・豆類(アーモンド、クルミ、ピーナッツ、ヒマワリの種、かぼちゃの種など)
・健康的なオイル(オリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、亜麻仁油)
・ハチミツ(糖分は主にハチミツで取る)
・メラトニンサプリ(時差ぼけを解消する天然のホルモン)

<体に悪い食材>
・グルテン(小麦粉で作られた食品。パン、パスタ、ケーキ、ドーナツ、クラッカー、シリアル、ビールなど)
・一部の乳製品(乳製品をやめるとカルシウム不足が懸念されるが、これはブロッコリー、ツナ、サーモンなどで補う)
・カフェイン




【目次】

序章 私を生まれ変わらせた食事
 ―わずか18カ月でドン底から世界王者へ
第1章 バックハンドと防空壕
 ―すべてのプロテニス選手が富裕層のカントリークラブから出てくるわけではない
第2章 夢を叶えた、私の食べ方
 ―私はどうやって世界一のテニスプレーヤーになったのか?
第3章 オープンマインドになるだけで体は変わる
 ―あなたの人生を激変させる14日間
第4章 あなたの動きと思考を邪魔するもの
 ―頭と体を密かに鈍らせているものの正体
第5章 食事に関する、私のルール
 ―勝利するための食卓
第6章 圧倒的成果を出す、思考のトレーニング
 ―集中力強化とストレス解消戦略
第7章 誰でもできる簡単なフィットネスプラン
 ―ビジネスにも日常にも活かせるエクササイズ

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実話を元にした映画であり、かつ綾野剛が主演ということで視聴。四半期決算で忙しく、帰宅が遅くなる日が続いたのだが、久しぶりに残業が続くと妙に疲れる。以前は深夜残業が数日続いても平気だったのだが、最近は働き方改革で残業が減ったせいか、たまに遅くなると妙にこたえるのだ。年齢のせいなのかもしれないが。。。

身体は疲れているのだが、頭だけは妙に冴えているという時は、寝酒は身体に悪いと知りつつ焼酎のロックを手にしてしまう。ビールを飲むと夜にトイレで目が覚めてしまうので、強めのお酒を少しだけ。この映画は、そんな寝酒のお供に視始めた。2時間15分と、映画としては普通の長さなのかもしれないが、平日の夜に視るには不適切な長さ。映画をぶつ切りで視るのはマナー違反かもしれないが、結局3夜に分けて視終わった。

ストーリーの方は警察がやくざとつるんで銃の摘発のやらせを行っていたというもの。実話に基づいた話であり、時代設定が一昔前のことだと認識しながら視ていたのだが、最後に主人公が逮捕されるのが2002年、コンプライアンスなどが十分うるさくなってからの話である。公務員というのは、競争世界にいないがゆえに、コンプライアンスなども含めて改善意識が民間に比べると薄いのかもしれない。

それにしても綾野剛の演技は凄まじい。覚せい剤に手を出してしまうところなど、鬼気迫るものがあった。ネットでこの映画のことを少し調べてみたところ、撮影中に体重を10Kg増減させたり、顔に酒を塗って肌荒れ感を出したりしたそうだ。決してイケメンとは言えない爬虫類系の顔だが、妙な色気もある。これからも活躍してもらいたい俳優の一人である。

◇1606 『最難関のリーダーシップ−変革をやり遂げる意志とスキル』 >ロナルド・A・ハイフェッツ/英知出版

思わずタイトルに飛びついてしまった本。しかしながら、たまにあるのだが今の私が読むには早すぎたと感じさせられた本であった。

本書ではビジネスパーソンが直面する課題には、「技術的問題」と「適応課題」の2種類があると分析しており、そのうちの適応課題に対する対応方法を記したものである。最初に適応課題について説明しておこう。

適応課題(Adaptive Challenge):問題の当事者が適応することによってのみ前進させられる課題。「適応を要する課題」とも訳される。

後半の「適応を要する課題」と訳した方が理解しやすいであろうか。この目に見えにくい課題を解決するために、筆者は「バルコニーに上がって」観察することを推奨している。こちらも分かりやすく言うならば、一歩引いて客観的に状況を見る、となるであろう。

すべての組織は、1つの全体的なシステムではなく、一連のサブシステムの集まりである。自分の周りで起きている状況を多様な視点でとらえるには、3つの要素を見ればよい。構造(インセンティブ・プログラムなど)、文化(規範や会議の手法を含む)、習慣的対応(問題解決や思考行動様式といった習慣化しているプロセス)と記載されている通り、目に見える構造だけでなく、文化や習慣的対応にまで踏み込んで変革しなければならないということである。

そのためにも、対峙する相手の深層心理にまで踏み込む必要があるだろう。また、時には会議などで空気を読まずに問題点を指摘する必要もあるだろう。本書では「エレファント」という面白い比喩表現が出てくる。

エレファント(Elephant in the room):重大な問題でその場にいる誰もがその存在を認識しているが、見て見ぬふりをされているもの。 まるで日本人のような反応だが、米国などでもこのような事象があることに驚いた。欧米人はこれらの指摘をもっとずけずけと行っていると思っていたのだ。

適応力のある組織というのは、こういったエレファントと呼ばれるタブーを比較的自由に指摘することができるという。エレファントを指摘し、表に出づらい見解も速やかに会議に取り入れることができるのだ。だからこそ、変化に強い組織が生まれるのであろう。インテルでは「何か見落としていることはないか? 表面化していないが爆発しそうな課題はないか?」と常に潜在的な課題をすくいあげる努力をしていたとのこと。

さて、適応課題は見つけ出すこと、表に出すことも難しいが、解決するのはもっと難しい。具体策としては、「非公式な権威や影響力を駆使する」「対立を組織化する」などの策が記されている。前者は社内のコネクションなどを活用して課題を解決に導いていく手法であり、後者は対立する人たちを敢えて一堂に会させて意見を噴出させるという荒業。どちらも、先日読了した『ダークサイド・スキル』に通ずる高等テクニックが必要である。

しかしながら、私自身が社内政治的な動きがあまり好きではないからであろうか、こういった手法を知ってもワクワクしないし、自分で使いたいとは思えないのだ。『影響力の武器』を読んだ際にも感じたが、自分が騙されたり利用されたりしないために、こういった手法を知っておくのは大切かも知れないが、それを使うかどうかは別の話ということ。

私としてはこういったテクニックも重要なのかもしれないが、同僚からの日常のちょっとした依頼や質問に真摯に応えることで、信用を積み重ねていけば、いざこういった難しい課題に直面したときも、助けてくれる人が出てくるのではなかろうか、と考えてしまった。

という訳で、私自身が政治的な解決に頼らざるを得ない場面に遭遇しない限りは、あまり役に立たないかなと感じてしまった本。ポジションが上がれば必要になるかもしれないスキルなので、再読の機会があるかもしれず、しばらく書棚に寝かせておこう。



【目次】

第1部 イントロダクション:目的と可能性
 1章 本書の活用法
 2章 アダプティブ・リーダーシップの理論
 3章 はじめる前に

第2部 システムを診断する
 4章 システムの診断
 5章 適応課題の診断
 6章 政治的状況の診断
 7章 適応力の高い組織の特性

第3部 システムを動かす
 8章 解釈する
 9章 効果的な介入をデザインする
 10章 政治的に行動する
 11章 対立を組織化する
 12章 適応力の高い文化を構築する

第4部 自分をシステムとして認識する
 13章 自分自身に目を向ける
 14章 忠誠心を特定する
 15章 チューニングを確認する
 16章 能力の容量を広げる
 17章 役割を把握する
 18章 目的を明確にする

第5部 自分を戦略的に動かす
 19章 目的とつながり続ける
 20章 勇気をもって参画する
 21章 人を鼓舞する
 22章 実験を行う
 23章 成長し成功する

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岩崎由純さんという方の講演を聞いたので、備忘のメモを。内容は「ペップトーク」という「激励のショートスピーチ」。もともとはスポーツの試合前に、監督やコーチが選手に対してかける言葉のこと。特にアメリカのプロスポーツでは、プロ意識の高い選手を更なる高みへ持っていくため監督やコーチは日々言葉を磨いているそうである。

一番印象的だったのは、「ネガティブな言葉は使わない」という点。人間は頭の中にイメージをするとき、否定形を思い描くのは難しいそうである。例えば「象ではない」という言葉を聞いて、犬や猫を思い浮かべる人はいるだろうか。まずは「象」を思い浮かべ、その上にバッテンを付けるなどして「象ではない」というイメージを作るのではなかろうか。このように、「象」という言葉が出た時点で、それをいくら否定しても頭の中にはすでに「象」の像が思い浮かんでしまっているのである。

同じように、試合前には「負けるな」ではなく「勝てる」と声をかけるべき、というのがペップトークの特徴である。ポジティブな、かつシンプルな言葉で選手を鼓舞するのである。これをビジネスに応用するならば、部下に声をかけるときに「君ならできる」とか「期待している」などの声をかけるのがよいであろう。「なぜ出来ないんだ」などとネガティブな言葉をついつい口に出していないだろうか。

この「なぜ出来ないんだ」「なぜ分からないんだ」というのは禁句だそうである。特に新人などは、自分が何が分かっていないかすら分かっていないことが多い。だから「どこまで分かったの?」と理解度を確認するのがよいとのこと。自分自身、工場勤務となった当初は、複雑な原価計算の仕組みに戸惑い、何が分からないかすら分からない状況に陥ってしまったので、この感覚には非常に共感できた。

ペップトークは決して優しい言葉をかけることを奨励しているのではない。もともとがスポーツから発祥した技術なので、時には激しい言葉を使ってもよいそうだ。ただし、あくまでも前向きに、ポジティブに、愛情をもって。

池井戸さん原作のドラマをWOWWOWで視聴。WOWWOWのドラマは5話完結のものが多いのだが、この作品は全9話。取り溜めておいて、週末に一気に視た。最近は読書が中心だったので、久しぶりにドラマをゆっくりと視た気がする。

池井戸さんらしく、銀行の話であり、企業再生の話である。階堂彬を向井理が、山崎瑛を斎藤工が演じる。脇役陣も豪華キャストで重厚な仕上がり。最初はケインとアベル的な話かと思いきや、二人のあきらがライバルながらも協力し合うというストーリー。階堂家が物語の中心であり『華麗なる一族』的な側面も持たせていて、うまいなぁと思わせる構成である。

時代背景はバブル全盛期から崩壊にかけての数年間。まだ机の上にパソコンがなく、携帯電話も珍しい時代。あの頃に比べると、生産性は格段に向上したのであろうが、何だか余裕のない社会になってしまったなと感じることも。そんなノスタルジーさえ感じさせるドラマであった。

さて、この作品は原作を読んでおらず、ドラマを先に視てしまった。こういった場合、原作も読んでみようと思う人が多いのか、ドラマでストーリーは分かったのだから、原作は読まなくていいと思う人が多いのか。私の場合、原作を読んだものがドラマ化されると、興味本位で見てしまうことが多いのだが、よくよく考えると映画やドラマで視たものの原作を読み返すことはほとんどないかもしれない。。。

◇1605 『難題が飛び込む男・土光敏夫』 >伊丹敬之/日本経済新聞出版社

土光敏夫×伊丹敬之、となると買わずにいられない。書店で見かけてすぐに購入。土光さんの本については何冊か読んでいるが、私が読んだのはどれも土光さんご自身の発言をまとめたもの。土光さんがどのような足跡を残してきたのかは意外に知らなかった。石川島重工(現IHI)と東芝を再建させ、行政改革をリードしたという程度の知識しか持ち合わせていなかったのだが、本書を読み、その偉大なる実績に改めて感服した。

私が感じる土光像は、「私心がなく、原理原則を貫き、決めたことは断行する」というもの。一行で簡単に書いてしまったが、これをすべて実行するのがいかに難しいか、実際に現業で仕事をしているかたであればお分かりであろう。

まず「私心なく」。人間だれしも自分中心に考えがちであり、評価されたい、あるいは無能とみなされたくないという思いを抱くでものあろう。会社の金を着服するなどは論外だが、公私混同といった次元ではなく、自分を大きく見せたいなどという個人的な思いなども排除するとなると至難の業である。

「原理原則を貫く」のも難しい。原理原則が重要なのは誰しも分かっているし、基本的にはその通りに実行するであろう。しかしながら、難しい局面に差し掛かったときなど、原理原則から外れてトリッキーな応用技に走ってしまうことも。これは頭がよい人ほど陥りがちな罠かもしれない。私の信条は「難しい局面ほど正攻法で」というものだが、実践できているかと問われると自信はない。

最後に「断行」。日本人の多くは計画を作るのが得意で実行が不得手ではなかろうか。そんな中、とにかく現場を歩き回り、多くの人を巻き込んで難しい再編などを断行したのには頭が下がる思いしかない。今の私に一番欠けている能力かもしれない。

こんな理想的なビジネスパーソンであるが、伊丹氏の松下幸之助と土光さんの比較が面白く、土光さんの限界と人間味を感じさせてくれるものであった。伊丹さん曰く、土光さんの経営スタイルは直接話法的手段が多く、松下幸之助は間接話法的手段が多かったとのこと。伊丹さんは土光さんの実績を、2勝1分けと評している。これは、石川島と臨調を2勝、東芝の実績を引き分けと評価したものだが、東芝の引き分けの理由を、この「直接話法的手段」が一因だと分析しているのだ。

つまり東芝の再建では、事業部の自主責任体制が不十分だったと分析しているが、これは松下ではすでに導入されていた事業部制の導入が、東芝ではタイミング的に遅くかつ徹底しきれなかったとのこと。また、直接話法、つまり対面の達人だったがゆえに、人事に関してウエットなところがあり、これが不採算事業の立て直しの際などに詰めの甘さとなってしまったのではないかとのこと。

ちなみに間接話法のスタイルとは、組織設計や経営管理制度などを通して間接的に人々に働きかけようとする経営のスタイルである。松下幸之助は自身が病弱だったこともあり、部下に任せるスタイルを取っていった。これが日本で初めての事業部制組織の導入につながり、管理会計の仕組みを重んじて業績管理を徹底させるという間接話法の経営スタイルにつながっていったのだ。

土光さんは、頑健でありバイタリティに溢れていたがゆえに、直接話法的なスタイルを取ることが多かったのであろう。伊丹さんは、どちらがよいとは名言していない。ケース・バイ・ケースであり、その時々の状況に応じて使い分けるのが正解であろう。

それでは気になった箇所を引用しておきたい。

・再建役の条件:
(1)難題の核心に自分が飛び込むというキャラクターであること
(2)再建に必要な巨大なエネルギーを持っていること
(3)現場が再建へと自ら動くように仕向けられる経営の工夫を考えつくこと

・土光の母校である関西中学の校訓
(1)至誠を本とすべし
(2)勤勉を主とすべし
(3)徳操を体とすべし
(4)知能を用とすべし
(5)報告を期すべし
(6)国土魂を養うべし

・石川島着任時の経営方針五箇条
(1)各工場別採算の確立
(2)健全経営の確立
(3)受注の計画化・製品機種の統一
(4)組織の活用と事務能率の向上
(5)社風・社紀の高揚

・「私は読書によって賢くなろうとは思わなかった。また事実そうである。今となっては私から読書を取除くことは出来ない。思想というものは停まることは出来ない。人間は考える動物である。われわれ多忙な人間は考える為には読書が一番よい。ほんとうに自分の心の求めている本を手にした時は心の充実を感じる」

・東芝でのトップ指針抄
 ・決めたことは、必ず実現するルールを確立せよ。社外にも、東芝は必ず計画を実行するという迫力を示せ。
 ・社内コミュニケーションは臨時活発に。海外へも触角を伸ばし、その情報は、積極的に吸収せよ。
 ・議論は抽象を廃し、具体的数字を積み重ねて行え。
 ・不況を口にすることをやめよ。現在の不況は、むしろ体質改善の絶好のスタートである。
 ・事業部長は、社長団と対等の立場に立つプロフィットセンターである。
 ・各人は、チャレンジとレスポンスを常に上にも下にも心がけよ。
 ・顧客を動かすのは、結局、誠意である。真に誠意をもって当たれば、不信すら信頼に代えることができる。
 ・手の打ち方のタイミングを考えよ。桜の蕾は冬の間に用意されている。

・臨調時の土光評
 ・臨調のような大きな仕事は、中心になる人がどっしりとかまえていて、細かいことは事務局にまかせ、つまらない事はしゃべらないことが重要です。その点、土光さんは立派でした。
 ・土光さんは、太い線を示し、脇道にそれませんでした。政治家に頭を下げることもなく、泰然とことに当たりましたね。土光さんではなくてはできなかった行革で、まさに土光臨調でした。

・土光語録20選
1.組織活動にユサブリを与えよ。このチャレンジに対しレスポンスが生じ、組織活動はダイナミックになる。
2.活力=知力x(意力+体力+速力)
3.権限をフルに行使せよ。責任とは権限を全部使い切ることだ。
4.トップの方針が徹底しないのは、電離層があるからだ。電離層をなくそう。
5.幹部は極端なことを考えよ。常識的な考え方では経営は発展しない。
6.こまかい問題の合理化が行われてこそ、経営は前進する。
7.体質改善は水を高きに上げるが如し。寸時も油断すれば水は流れ、体質は悪化する。
8.問題を掘りおこし体当たりをせよ。摩擦を恐れるな。頭がよくても、問題や摩擦を避けていては組織は動かぬ。
9.わかっていてもやらないのは、わかっていないのと同じだ。やっても成果がでないのは、やらないのと同じだ。
10.やりとりは真剣勝負だ。問題をたえず意識している人は短時間ですむ。然らずば長時間をかけても結論を得ない。
11.決断は失敗をおそれず、タイムリーになせ。決めるべき時に決めぬは度し難い失敗だ。
12.意思決定は最後は勇気の問題に帰着する。
13.手の打ち方のタイミングを考えよ。桜の蕾は冬の間に用意されている。
14.未来に生きよう。われわれの既知の分野よりも未知の分野の方がはるかに広大である。
15.顧客を動かすのは、結局、誠意である。真に誠意を持って当たれば、不信すら信頼に代えることができる。
16.物事をとことんまで押しつめた経験のない者は、成功による自信が生まれない。能力とは「自信の高さと幅」だといえる。
17.失敗した時、反省は必要であってもいい訳の努力は不要である。
18.現場には「銀座通り」もあれば、裏通りもある。幹部は裏通りを歩くべきだ。
19.火種が強ければ青草でも燃えあがる。
20.幅の広い奥行きのある人間になれ。幹部はカミソリの刃であるよりもナタであれ。しかも切れるナタであれ。




【目次】

序章 再建の連続という人生
第1章 人間タービンの誕生
第2章 しょっぴかれるように、本社社長に
第3章 大型経営者の登場
第4章 東芝再建への苦闘
第5章 メザシの土光さん
第6章 母の教え
第7章 現場の達人、凛とした背中
終章 日に新たに、日々に新たなり

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◇1604 『医療イノベーションの本質−破壊的創造の処方箋』 >クレイトン・M・クリステンセン/碩学舎ビジネス双書

イノベーションのジレンマが医療の世界にどのように応用されるのかと興味を抱いて読んでみた。内容的には、破壊的イノベーションについて書かれているというよりもむしろ、病院経営の水平分業に関する要素の方が強いと感じた。つまり、総合病院は、今後機能が解体されていくであろうという予測。これが医療の破壊的モデルという主張である。

病院に限らず、事業というものは、集約(統合)した後、分散する傾向があるとのこと。例えばパソコン事業は、従来垂直統合型であったのが、水平分業化し、CPU・モニターなど複数メーカーが専業化する状態となった。病院でも同様の事象が起こるであろうと、筆者は予測する。

具体的には、3つの事業に分割される。
(1)ソリューションショップ型事業:問題を診断し、解決策を提案する。
(2)価値付加プロセス型事業:確定診断のついた問題を比較的標準化された手順で治療する。
(3)ネットワーク推進型事業:専門家や患者が情報交換し助け合う。カルテや検査画像の共有など。


また、医療は直感型→経験的→精密医療へと発展していくという。それぞれの特徴を記載しておこう。
・直感型医療:患者の症状によってのみ診断が可能なもの。
・経験的医療:因果関係は明確でないものの、ある薬を投与すると症状が改善するなどの症例・事例を積み重ねて、確率論的に推測するもの。
・精密医療:患者の状態をさまざまな機器を使用して測定し、病因を特定していくもの。


ここで重要になってくるのが「診断」である。精密医療のために正しい診断が必要になるのだ。診断後は、医者であったり、あるいは技術的な専門家(例えば血管のステント治療や腎臓透析の専門家)が治療を行う。

超高齢化社会へ突入しようという日本も医療はホットなテーマである。課題先進国として医療機器だけでなく総合的なサービスのビジネスモデルを確立し、高齢者の健康寿命を延ばすとともに、日本の医療ビジネスモデルを世界に広げられるようになると、二重の意味で日本は活性化していくであろう。



【目次】

第1章 製品やサービスを手ごろな価格で身近なものとする破壊的技術とビジネスモデルのイノベーション
第2章 破壊的イノベーションを起こすための牽引技術
第3章 病院のビジネスモデルを破壊する
第4章 診療所のビジネスモデルを破壊する
第5章 慢性疾患診療の破壊的なソリューション
第6章 実現に向けた統合
第7章 償還制度を破壊する
第8章 製薬業界の将来
第9章 医療機器と診断装置の将来
第10章 医学教育の将来
第11章 規制改革と医療の破壊的イノベーション

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◇1603 『世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと』 >クリス・ベイリー/TAC出版

献本御礼。TAC出版の方からはこれで2冊目のご献本。年に数冊だが、本をいただけるときが書評を書いていてよかったなと思える瞬間である。改めて、御礼を申し上げたい。ありがとうございました。

さて、自宅に届いた本を取り出してみると、大きな赤いフォントでタイトルが大きく書かれている派手な装丁。最近はこのくらい目立つ装丁でないと、書店で売れにくいのかもしれないが、個人的にはずっと本棚に置いておきたいと思わせる落ち着いた装丁の方が好みである。とはいえ、本は中身で勝負すべきもの。そう思って早速ページを繰っていった。

まず最初に、私が本書のキモだと感じた箇所を3つ引用しよう。

・生産性とは多くのことをより速くこなすことではなく、目標を定め、じっくりと考えながら適切なことを行うことだ。

・あなたが生産的になりたいなら、時間管理より活力と集中力のコントロールを第一に考えるべきだ。

・生産性があがっても、自分にやさしくなれないなら、取り組む価値はない。


本書ではマルチタスクではなく、シングルタスクに集中することを推奨している。そのためのテクニックとして、今日やるべきことや今週やるべきことを3つに絞り込むことや、メールの通知機能をオフにすることが効果的だと述べられている。確かに、自分自身の仕事を振り返ってみると、緊急だが重要でない仕事に追われて、緊急ではないが重要な仕事(本当はこれが一番やらなければならない仕事であることが多い)を先延ばしにしてしまっていることがおおい。これはマルチタスクの弊害と言えよう。細かな仕事を複数こなすことで、何となく満足してしまっているということだ。

メールの通知機能も集中力を阻害する大きな要因。本書によれば、一度中断した集中を取り戻すのには25分かかるとのこと。また、集中と中断を頻繁に繰り返すことは脳にとって大きなストレスになるそうだ。確かに30分ごとにメールをチェックしていては、限られた時間で重要なタスクを完遂することなどできないであろう。私は会社のスマホをメール着信があるとバイブレーションするように設定していたのだが、確かに着信があるごとにヴーヴー言うと、どうしても集中力が阻害されてしまう。本書を読んで早速、バイブレーションは電話着信のみとし、メールが届いても画面にポップアップ表示されるのみとした。

先延ばしのメカニズムについても記載されている。「ぼくらは、未来の自分を他人とみなしがちだ。本当は自分の問題なのに、他人に渡すように未来の自分へ仕事を渡す。結果、仕事を先延ばしするようになる」  脳科学的にも、先延ばしをすると快感中枢が刺激されるとのこと。

私自身、苦手な仕事を先延ばししてしまうことがあるが、これは人間誰もが持つ習性と聞いて少し安心した。しかしながら、重要なタスクは不快なタスクだからこそ意味があるのであり、だらだらと先延ばししていても何も生まれない。思い切ってやり遂げるか、楽しいと思える作業に変化させるか、はたまたそのタスクを得意とする人にお願いしてやってもらうか。

筆者はTEDへ出演したことがあるそうだが、YouTubeにその動画がアップされていたので、参考に貼りつけておきたい。少し早口だが非常に分かりやすい英語なのでリスニングのトレーニングにもなるであろう。導入部分のジョークはよく聞き取れなかったが、開始から3分程度経つと、本書で述べられている内容が簡潔にプレゼンされていくので、理解しやすいと思う。



最後に1つだけ残念だった点を述べて筆を置きたい。筆者の置かれている環境では、難しかったのかもしれないが本書は「個人の生産性」に特化したマニュアルである。会社などの組織で仕事を進めていく上では、個人の生産性も重要だが、チームの生産性が更に重要になる。今後、筆者には現在の知見を活かして、チームの生産性向上に関する研究を行っていただきたいと感じた。



【目次】

1 基本となる四つのこと
2 時間とは浪費されるもの
3 時間管理がすべてではない
4 タスクを断捨離する
5 頭のなかを整理する
6 集中力を鍛える
7 飲食・運動・睡眠の攻略法
8 生産性を上げたいあなたへ

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