△0586 『猿丸幻視行』 >井沢元彦/講談社文庫

 背表紙あらすじ:奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき―百人一首にも登場する伝説の歌人、猿丸太夫が詠んだ歌に秘められた謎。そして“いろは歌”に隠された千年の暗号とは?友人の不可解な死に遭遇した、後の民俗学の巨人・折口信夫の若き日の推理が、歴史の深い闇をあぶりだす。江戸川乱歩賞受賞の永遠の傑作。

 出張者の方から「読み終わったからあげるよ」といただいたもの。忙しくて本を読む機会は少なくなったが、中国で日本の書籍を入手するのは難しく、ありがたかった。

 内容の方は、非常に凝ったもので、よくここまでいろいろと考えたものだと、素直に感心。柿元人麻呂と猿丸太夫を同一人物とする仮設など、歴史ミステリーの醍醐味たっぷりである。古代史にはあまり興味がなかったのだが、すんなりと頭に入ってくる内容であった。また、歴史上の謎を歴史上の人物である折口信夫に解明させるという手法も斬新。和歌に隠された暗号を読み解くというのも興味深かった。

 一方で、なぜわざわざ舞台を現代に設定し、SFめいた夢で過去にさかのぼる薬を持ち出す必要があったのかが疑問。過去と現代を行ったり来たりするのなら話は分かるのだが、2度ほど往復するだけ。最初から折口を主役に据えれば事足りたように思うのである。

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