◇1441 『デスマーチに追われるIT技術者が勉強せずに英語力を身につけてキャリアアップした方法』 >鈴木信貴/秀和システム

本書は筆者から献本いただいたもの。まずは御礼を申し上げる。最近、少しずつ、こういった献本をいただく機会が出てきた。10年以上、本の感想を書き続けてきた、ちょっとしたご褒美であろうか。

さて、本書はタイトルの通り、英語とは無縁のIT技術者である筆者が、残業に追われて時間の無い中、英語を身につけたという話。IT業界には詳しくないので、タイトルに出てくる「デスマーチ」の意味が分からなかったのだが、死ぬほど大変な状態なのだろうなと想像。検索してみると、プロジェクトにおける過酷な労働状況のことだそうだ。「死の行進」という意味。コンピュータプログラマーのアンドリュー・ケーニッヒという人が使い始めた言葉。

残業150時間というと、週末もほとんど休めない状態。そんな時間に制約がある中で、日常のちょっとした行為を、英語学習に結び付けてみようというのが本書の趣旨である。私が、本書を読んでいて一番良いなと感じたのは、筆者自身が英語が得意ではなかったが故に、英語が苦手な人が陥りやすい、心理的な壁を取り除こうとしている点。英語学習の本というと、もともと英語が得意だった人が書いていることが多く、頭では分かるけど行動に移すのは大変だよな、と感じることが多い。本書は、そんな心理的抵抗を除外するところから始めているのが素晴らしい。

具体的には、TOEIC900点は決して高いレベルではなく、達成しても英語がペラペラになるわけではない。だから、誰でも達成可能なレベルなのだ。また、TOEICで話されている英語は、日常会話に比べると早いスピードではない、などなど。また、英語学習の本を買うだけ買って、すぐに放り出していないか、英語は学習すればしただけ成果が出ると思っていないか(実際には階段状に成果が表れるので学習を続けていてもしばらくは成果が感じられない)など、初心者が陥りやすい悪いクセについても言及している。

私が、本書を読んでいてドキッとしたのは2カ所。1つ目は「習慣化するためには1分でもよいから英語学習すること。実際には、忙しいから風邪気味だからと、言い訳を考えてさぼってしまう。この考えが習慣化するための壁になっている」というもの。英語学習の計画を立てて、最初は意気込んで長時間学習するのだが、だんだんとその量が減っていき、気が付くと何日も英語に触れていないということが、ままあるもの。たとえ1分でもよいから、継続せよというのは、その通りだと思う。

もう1つはTOEICで800点を超えたら、「間違ってもいいから英語を話せばよい」を卒業しよう、というもの。私自身、英会話に本格的に取り組んだのは中国駐在時に同僚と英語でコミュニケーションのをとる必要があったから。特に香港の人たちの英語は、ブロークンで、当時、このような記事を書いている。→「ブロークン・イングリッシュの許されるレベル」

現在の私のTOEICスコアは、ちょうど800点前後。日本に帰国して、欧米の同僚とも話す機会が増え、もう少しきちんとした英語を話さなければいけないなと感じていたところだったので、非常に心に響いた。筆者ももっとも役に立ったアドバイスの一つだと述べている。

さて、では具体的にどうすればよいのか、というところまで記載してしまうと、ネタバレであろうから自粛しておく。是非、本書を手に取っていただきたい。ただし、本書はあくまでも英語学習の初心者や、これまでにトライして何度も挫折してきた人向けである。ある程度、学習が進んでいる方が読んでも、物足りないかもしれないので、ご注意を。

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追記:著者の鈴木さんからメールをいただいた。新しくサイトを立ち上げられたとのこと。英語学習に関する情報がいろいろと掲載されているので、よろしければご参照ください。(2017.05.27)

 著者サイト:鈴木信貴 公式サイト



【目次】

1 こんなことをしていませんか?
 ―英語を上達させたいなら変えるべき、14の行動
2 こんな風に考えていませんか?
 ―英語を上達させたいなら捨てるべき、11の思い込み
3 ふだんやっていることを、ちょっとだけ変えてみよう!
 ―英語ができるようになる、18の行動
4 あなたの環境を、ちょっとだけ変えてみよう!
 ―英語の上達を助ける、5つの準備

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