◇1901 『イチから知る!IR実務』 >米山徹幸/日刊工業新聞社
財務関連の仕事に関して、知識の欠損部分がないかと振り返ってみて、内部統制とIR関係が弱いのではと思っている。この内、内部統制については米国公認会計士の学習の際に少しかじったことがあり、かつ会社の実務でも経験しているので、何となくの感覚は持っている。しかしながらJ-SOXに潮流が変わったことなどもあり、もう一度きちんと学習しておこうと手にしたのが『図解・ひとめでわかる内部統制』と『内部統制の仕組みと実務がわかる本』の2冊である。こちらは読了・学習済み。
もう1つの鬼門であるIRだが、こちらは意外によい本がない。東京出張時に八重洲ブックセンターで店員さんに聞いてみたが、あまりよい本には出会えなかった。そこでAmazonで検索してみて、一番よさそうだったのが本書である。
ちなみに、IRの準備段階の仕事、つまり発表用のバックデータの作成や、発表時に使用する数値の分析などは、30代前半に経理関係の仕事をしていた関係で経験あり。しかしながら、いわゆるアナリストや投資家の方と接した機会はほとんどない。
唯一の経験が、中国のシンセンに駐在していた時のこと。香港が近いため、会社のIR活動で香港の投資家説明会(ロードショー)に立ち会う機会をいただいたのだ。私の経験の為ということで、投資家とのミーティングを聞いて議事録を取るだけの仕事であったが、市場の生の声に触れることが出来たような気がする貴重な機会であった。
さて、本書の構成は、IRの仕事そのものについて、対外部との仕事の進め方、社内的な仕事の進め方、情報を届ける相手=投資家について、といった構成になっている。前半部分については、多少なりともIRに関わる部門にいたため、何となく想像ができる範囲だが、後半部分は初めて知る内容も多く、大変勉強になった。大変初歩的な話で恥ずかしい限りだが、セルサイド・バイサイドといった言葉の定義も正確に理解していなかった。
(ちなみに「セルサイド」は証券会社のこと。「バイサイド」は証券会社から株式や債券を売買する資産の運用会社のこと。名前の響きから、株式や債券を売る側をセルサイド、買う側をバイサイドというように思うかもしれないが、違うので注意)
他にも投資家のスタイルなども未知の世界。「インデックス」は株式インデックスに見合ったパフォーマンスを目指す投資家。「グロース」は売上や利益の成長に着目。これは、保有期間が長期に渡る傾向が強い「コア・グロース」と、短期間のうちに頻繁に売買を繰り返す傾向がある「アグレッシブ・グロース」とに大別される。「バリュー」はバリュエーション(企業評価)の絶対水準が低いあるいは市場平均や同一銘柄の過去の水準と比較して低い銘柄に投資するファンドである。
ちなみに、巷でよく耳にする「アクティブ」「パッシブ」という単語は出てこなかったので、WEBで検索してみたところ、次のような解説が書かれていた。
・「パッシブ・ファンド」とは、市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とし、十分に分散化されたポートフォリオを保有するタイプのファンドです。一方、「アクティブ・ファンド」は、市場や投資銘柄に対するさまざまな調査結果や予測を基にして、市場の平均的な収益率を上回る運用成果をあげようとするものです。
パッシブ・ファンドの代表例がインデックス、アクティブ・ファンドの代表例がグロースやバリューとのことで、本書の解説とも明確につながり、すっきりした。
この他、IR担当者が気にすべきこと、対応すべきことなど、実務に根ざしたさまざまな注意点やチェックポイントが書かれていて、非常に丁寧なつくりの実務書だと言えよう。今のところは可能性は無いが、将来IRに関与するようになった場合には、是非とも再読したい一冊である。
【目次】
第1章 IRの始まりと仕事
(IRの始まりを知って、ビジネスの原点を押さえる)
IRの役割
エンロン、サブプライム事件に学ぶIR担当者の教訓
第2章 IR部門の仕事を知ろう(1)
(IR担当者の社内向け仕事を知る)
IR活動はどの部署に属するか
情報開示方針(ディスクロージャー・ポリシー)の作成
投資提案の立案―ドイツの化学最大手BASF/英旅客輸送ゴー・アヘッド・グループ
IR業務リポートの作成
第3章 IR部門の仕事を知ろう(2)
(社外向けIR情報の仕事を知る)
有価証券報告書
決算短信
事業報告と株主通信
英文の決算プレスリリース
アニュアルリポート
IRサイト
ソーシャルメディア
第4章 IR情報を届ける相手を知ろう
(IR情報の相手はだれか。それぞれに企業情報の見方も違う)
アナリスト
機関投資家
個人投資家
第5章 プレゼンテーション
(プレゼンテーションはいつも初めての気持ちで)
パワーポイント作成
―見た目の効果、テキストの書き方、カラーの使い方
スライド・プレゼンテーションの前に
プレゼンテーションで話すときは
オンライン・プレゼンテーション
財務関連の仕事に関して、知識の欠損部分がないかと振り返ってみて、内部統制とIR関係が弱いのではと思っている。この内、内部統制については米国公認会計士の学習の際に少しかじったことがあり、かつ会社の実務でも経験しているので、何となくの感覚は持っている。しかしながらJ-SOXに潮流が変わったことなどもあり、もう一度きちんと学習しておこうと手にしたのが『図解・ひとめでわかる内部統制』と『内部統制の仕組みと実務がわかる本』の2冊である。こちらは読了・学習済み。
もう1つの鬼門であるIRだが、こちらは意外によい本がない。東京出張時に八重洲ブックセンターで店員さんに聞いてみたが、あまりよい本には出会えなかった。そこでAmazonで検索してみて、一番よさそうだったのが本書である。
ちなみに、IRの準備段階の仕事、つまり発表用のバックデータの作成や、発表時に使用する数値の分析などは、30代前半に経理関係の仕事をしていた関係で経験あり。しかしながら、いわゆるアナリストや投資家の方と接した機会はほとんどない。
唯一の経験が、中国のシンセンに駐在していた時のこと。香港が近いため、会社のIR活動で香港の投資家説明会(ロードショー)に立ち会う機会をいただいたのだ。私の経験の為ということで、投資家とのミーティングを聞いて議事録を取るだけの仕事であったが、市場の生の声に触れることが出来たような気がする貴重な機会であった。
さて、本書の構成は、IRの仕事そのものについて、対外部との仕事の進め方、社内的な仕事の進め方、情報を届ける相手=投資家について、といった構成になっている。前半部分については、多少なりともIRに関わる部門にいたため、何となく想像ができる範囲だが、後半部分は初めて知る内容も多く、大変勉強になった。大変初歩的な話で恥ずかしい限りだが、セルサイド・バイサイドといった言葉の定義も正確に理解していなかった。
(ちなみに「セルサイド」は証券会社のこと。「バイサイド」は証券会社から株式や債券を売買する資産の運用会社のこと。名前の響きから、株式や債券を売る側をセルサイド、買う側をバイサイドというように思うかもしれないが、違うので注意)
他にも投資家のスタイルなども未知の世界。「インデックス」は株式インデックスに見合ったパフォーマンスを目指す投資家。「グロース」は売上や利益の成長に着目。これは、保有期間が長期に渡る傾向が強い「コア・グロース」と、短期間のうちに頻繁に売買を繰り返す傾向がある「アグレッシブ・グロース」とに大別される。「バリュー」はバリュエーション(企業評価)の絶対水準が低いあるいは市場平均や同一銘柄の過去の水準と比較して低い銘柄に投資するファンドである。
ちなみに、巷でよく耳にする「アクティブ」「パッシブ」という単語は出てこなかったので、WEBで検索してみたところ、次のような解説が書かれていた。
・「パッシブ・ファンド」とは、市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とし、十分に分散化されたポートフォリオを保有するタイプのファンドです。一方、「アクティブ・ファンド」は、市場や投資銘柄に対するさまざまな調査結果や予測を基にして、市場の平均的な収益率を上回る運用成果をあげようとするものです。
パッシブ・ファンドの代表例がインデックス、アクティブ・ファンドの代表例がグロースやバリューとのことで、本書の解説とも明確につながり、すっきりした。
この他、IR担当者が気にすべきこと、対応すべきことなど、実務に根ざしたさまざまな注意点やチェックポイントが書かれていて、非常に丁寧なつくりの実務書だと言えよう。今のところは可能性は無いが、将来IRに関与するようになった場合には、是非とも再読したい一冊である。
【目次】
第1章 IRの始まりと仕事
(IRの始まりを知って、ビジネスの原点を押さえる)
IRの役割
エンロン、サブプライム事件に学ぶIR担当者の教訓
第2章 IR部門の仕事を知ろう(1)
(IR担当者の社内向け仕事を知る)
IR活動はどの部署に属するか
情報開示方針(ディスクロージャー・ポリシー)の作成
投資提案の立案―ドイツの化学最大手BASF/英旅客輸送ゴー・アヘッド・グループ
IR業務リポートの作成
第3章 IR部門の仕事を知ろう(2)
(社外向けIR情報の仕事を知る)
有価証券報告書
決算短信
事業報告と株主通信
英文の決算プレスリリース
アニュアルリポート
IRサイト
ソーシャルメディア
第4章 IR情報を届ける相手を知ろう
(IR情報の相手はだれか。それぞれに企業情報の見方も違う)
アナリスト
機関投資家
個人投資家
第5章 プレゼンテーション
(プレゼンテーションはいつも初めての気持ちで)
パワーポイント作成
―見た目の効果、テキストの書き方、カラーの使い方
スライド・プレゼンテーションの前に
プレゼンテーションで話すときは
オンライン・プレゼンテーション