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中国共産党の習近平総書記は10月23日に新指導部を発足させた。23日の重要会議、中央委員会第1回全体会議(1中全会)で党高官の人事を決めた。22日閉幕した党大会で選出された約200人の中央委員が24人の政治局員(指導部)と7人の政治局常務委員(最高指導部)をそれぞれ選んだ。

習近平(Xi Jinping、69)党総書記
李強(Li Qiang、63)首相※
趙楽際(Zhao leji、65)全国人民代表大会常務委員長※
王滬寧氏(Wang Huning、67)全国政治協商会議主席※
蔡奇(Cai Qi、66)党中央書記処書記
丁薛祥(Ding Xuexiang、60)筆頭副首相※
李希(Li Xi、66)党中央規律検査委員会書記
 ※は候補・見通し

共産主義青年団(共青団)出身の胡春華副首相は政治局員から外れ、ただの中央委員になった。胡氏は首相候補だったが異例の「降格」といえる。個人的な予想では胡春華が最高指導部入りしてバランスを取るのかと思いきや、まさかの降格。結果として最高指導部は習派一色となった。

それにしても、前国家主席の胡錦濤(フー・ジンタオ)氏が退席を迫られたシーンには驚いた。外国のテレビカメラが入場を許されたタイミングで起こったとのことだが、これは胡錦濤氏のささやかな抵抗だったのだろうか。

ロシアではプーチンの独裁が進み、誰も暴走が止められない状態になっている。その結果がウクライナ侵攻である。習近平への権力一極集中は、台湾侵攻という同じ末路を辿りそうで非常に恐ろしい。

一方で、中国の経済に陰りが出てきており、先行きに不安も感じる。中国では易姓革命といって人民の心が離れると王朝を交代させてもよいという思想がある。天子の徳がなくなれば天命が別の姓の天子に改まり変わるという中国の政治思想だ。今の中国共産党を1つの王朝に見立てれば、あり得なくはない。歴史は韻を踏む。

経済の翳りに関しては、海外のマーケットも反応しているようだ。習氏はトップ24人までも取り巻きで構成し、経済政策や金融実務を取り仕切れる専門家を追いやった。これ伴い人民元安が加速したり、米国に上場しているアリババの株価が急落したりしている。

また、中国の景気減速は短期的には「ゼロコロナ政策」の影響を受けているが、長期では人口減のほうが強く作用する。一人っ子政策の反動で人口減が日本よりも加速するとの予想が出ているが、一人っ子政策を撤廃しても人口は簡単には増えない。

その一つの足枷が教育費の高騰だと言われており、これに対すべく塾の廃止など教育産業の過熱に歯止めをかけようとしている。しかしながら国が長期的発展をしていくにあたって、教育に金をかけないというのは時代に逆行しないだろうか。

小平が唱えた「先富論」から習近平の「共同富裕」に舵を切ったわけだが、学習塾の非営利化など教育産業への規制強化は「公平性の維持」にも繋がるという。教育格差が貧富の格差を生むという理屈であり、その側面だけを捉えれば間違っているとは言えないのだが。。。

同じような動きがIT業界でも起こっている。アリババのジャック・マー氏の拘束は有名な話だが、ここにも共同富裕の思想が透けて見える。もっと言うと、習近平よりも影響力を持つものが民間に現れてはいけないというシグナルでもある。

結果としてIT業界に対してかなりの規制がなされることになったわけだが、これによってこれまで富を得ることを一つの目的としていた中国の起業家たちの意欲は大きく削がれることになるだろう。

教育とITという、将来の経済に必要な牽引力を同時に規制して抑えつけてしまう。さらには人口減、高齢化による労働力の減が迫っており、中国は本当に国力を保っていけるのかという疑問が去来する。

現実問題として、大規模ロックダウンの影響もあり、中国の経済にはブレーキがかかっている。党大会前に発表されるはずだったGDPの実績は、発表が延期された。(それでもちゃんと延期したところはえらい、昔の中国だったら平気で数字を捏造しただろうという識者のコメントには笑ってしまった)

これまでの中国は、毛沢東時代の文化大革命の轍を踏まぬよう、集団指導体制を維持してきた。しかしながら習近平に権力が一極集中することで、誰も習に逆らえない、物申すことができない状況に陥ってしまう。

今回の規約改正の焦点となっていたのが、習氏の権威を高め党員に忠誠を事実上義務付ける「二つの確立」だ。習氏の党の核心としての地位と、習氏の政治思想の指導的地位を確固たるものにする意味が込められている。党規約に明記されることが有力視されていたが見送られた。

「二つの確立」と対をなすスローガン「二つの擁護」は明記された。習氏の党の核心としての地位と、習氏を中心とする党中央の権威を守るものだ。双方の意味は近いが、習氏の政治思想に触れていない点が異なる。

習氏の政治思想を示す「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を「習近平思想」に縮めて「毛沢東思想」と同格にする案も取り沙汰されたが、実現しなかった。

毛沢東に使われた「領袖」の呼称や、毛が死去するまで手放さなかった当時の党の最高位のポスト「党主席」の復活も見送られた。共通するのは、個人崇拝の復活につながりかねないと党内で懸念がくすぶっていた点だ。

これらは前述の胡錦濤氏ほか、長老たちが反対した結果だとも言われている。個人崇拝の復活を阻止する代わりに、人事では習近平の意見を通したというのが一般的な見方だ。

若い人たちの間では「中国の西朝鮮化」という言葉が流行っているらしい。一党独裁ではなく、一人の個人による独裁。その弊害がいかに大きいかは歴史を見れば明らかである。

先日エントリーした日経新聞の特集「大中国の時代」に関して、有識者がさまざまなコメントをされていた。その一部を引用しておきたい。

■「中国は国力上昇のサイクルにある」 レイ・ダリオ氏

−中国政府によるハイテク企業の規制強化や子供のビデオゲーム使用時間の制限など政府のコントロール強化への批判もあります。

「中国国内の問題は外国人には理解が難しいだろう。私は過去34年間にわたり中国政府幹部との関係を築いてきた立場から、彼らの言い分は米国が個人主義の国であるのに対し、中国は国家が家族の延長であり、指導者はしつけの厳しい親だと説明するのがわかりやすいと考える」

「だからこそ、ビデオゲームの使用時間に干渉したり、データを扱うハイテク企業に対して規制が追いつかないほどのスピードで金融サービス事業を拡大することを統制したりしようとしている。馬雲(ジャック・マー)氏といった億万長者の起業家が力をつけすぎて国に害を及ぼすような間違いを犯さないように親の立場で監督している。もっとも、国家の共通の繁栄を享受することが、小平氏以前の共産主義に戻るということではない」

■中国は「兄」 拒むロシア ドミトリー・トレーニン氏

・21世紀は地政学的な覇権よりも、国内の問題に重点が置かれる時代だ。外交より内政を重視する米国の路線は、アフガン撤退を断行したバイデン大統領が初めて打ち出した政策ではない。オバマ政権の頃から重視され始め、トランプ政権にも引き継がれたものだ。同様にロシアや欧州でも、内政重視が基本となっている。

・かつてソ連が崩壊したように、中国もいずれ崩壊すると予測するのは邪道だ。かといって、以前の米国のように、中国が普遍的な価値観を世界に広める覇権国家になると考えるべきではない。中国人は元来、米欧の人々と違い、普遍的価値観を世界に植え付けようという野心を持っていない。

・中ロ関係に関して、ロシアが中国の弟分になっているとか、いずれ弟になるといった論調がある。だがロシアは原則として、外国に指図され、牛耳られることを嫌う。いかなる対外的な指令や統制も受け入れないはずだ。90年代、ソ連崩壊後のロシアが西側の陣営にうまく溶け込めなかった大きな理由のひとつは、米国主導の世界秩序を最終的に受け入れなかったからだ。ロシアは結局、米国が提供した米ロ協力、西側共同体への入場券を拒否してしまった。

・米ロ関係の悪化により、ロシアは経済的に中国依存を強めざるを得ない側面があった。だが米中対立の激化で、今度は中国のほうがロシアの軍事技術を重視し、ロシアに依存せざるを得なくなっている。中ロ間では一定のバランスが維持されていくはずだ。

■「中国は超大国になれない」 エマニュエル・トッド氏

・人口学者としてみれば、出生率の低さや高齢化の(進展の)速さから、中国が世界を支配する超大国になることは非現実的だ。2020年の合計特殊出生率が1.3と極めて低かったことから、中国が中長期的な脅威ではないことは明らかだ。実態を知るには、いつから低水準だったのかを解明する必要がある。労働力となる20〜64歳の人口は60年までに15年比で35%以上減るとみられている。巨大な人口規模から労働力の一部を国外で補うこともできず、中国の人口減は日本よりも深刻なものになるだろう。

・中国の農民世帯では、古くから親子間は権威主義的であり、兄弟間は平等な関係だ。これが権威と平等を重んじる文化を生み、共産主義の発展と中国共産党の権力維持を支えてきた。

・生活水準の上昇や核家族化が進んでも、社会の根幹にある価値観の変化はとてもゆっくりとしたものだ。権威主義がシステムに根強く残る中国が、リベラルな民主主義国になることはないだろう。民主化を急ぐよう(国際社会など)外部が中国に促してもあまり意味はない。

・中国には平等の文化があったため共産主義革命が起きた。社会に根付く平等の価値観と、現実に拡大する格差は緊張関係にあり、人口減によって状況は一段と悪化するだろう。中国の指導者層は今でも、革命が起きることに不安を感じているはずだ。

・(中国の今後を読み解くうえで注目しているのは)高等教育だ。若者の25%が大学に行くようになると、社会の古いシステムが崩れる。中国はまだこの段階に至っておらず、おそらく今後10年で新たな危機を経験することになる。共産党が非常に厳しい局面を迎えるのは間違いないだろう。

・日本は米国に付いていくか、中国と対話をしていくかを選ばなければならず、歴史的に重要な場面を迎えている。日本の真の課題は戦争ではなく、低出生率という人口問題だ。米国という国の本質や世界での振る舞いをよく分析する必要がある。本来は、人口減という共通課題に日中両国がともに向き合うことも可能なのだ。中国の人口減は安全保障面で日本の恐怖を減らすかもしれないが、経済面では深刻な影響になりうる。

■「中国、ピークを前に強硬」 マイケル・ベックリー氏

・台頭する大国は歴史上、経済の減速や他国からの包囲網によって国力がピークを迎え、衰退に転じる際に攻撃的な行動をとってきた。長期的には状況が悪くなると分かり、いま目標を達成しなければチャンスがなくなると考えるためだ。戦前の日本や第1次大戦前のドイツ帝国がこうした『ピークパワー』の代表例だ。中国は同じ道をたどっているようにみえる。中国の衰退が実際には米中対立の激化を意味すると懸念している。

・米中間の経済力、軍事力の差は多くの人が考えるより大きい。中国の国力が米国を追い抜くことはない。中国のような人口大国は国内総生産(GDP)や軍事支出の数字は膨らむものの、14億人もの国民の面倒をみなければいけない弱みがある。食糧確保や治安の維持といった費用を差し引くと中国の実質的な富は見かけよりも小さい。さらに中国は水やエネルギーなど資源不足は深刻で、取り巻く国際環境も過去と比べて敵対的だ。これら全てが長期的に中国にとって逆風となる。一方で米国はこうした難題に悩まされていない。

日経新聞で特集が組まれていたのだが、そちらと連携してテレ東系のテレビでも特集番組をやっていた。新聞記事の文章を理解しながらじっくり読むことも大切かもしれないが、この手の情報は映像の方がインパクトがある。

最初の特集は中国の住宅事情について。かねてからバブル的な状況ではないかと懸念されている中国の不動産業界。中国と米国は土地面積はほぼ同じだが、時価総額だと中国が米国の2倍以上になっているとのこと。恒大集団が多額の債務を抱えて経営危機に陥っているのも連日ニュース報道されていた。

ニュースではそんな過熱した不動産業界のゆがみともいえるゴースト・マンションの様子を撮影していた。資金繰りが行き詰まり建設が止まってしまっているマンション。一方で住宅ローンは返済が必要であり、家賃が払いきれなくなった人が、未完成のマンションで居住している。窓もないためテントを張り、煮炊きは携帯用のガスコンロ。マネーゲームのつけが結局は一般の市民にしわ寄せられている様がよく見て取れた

中国政府がバブルを警戒する一方で、地方政府は土地からの収入に頼らざるを得ない状況だというもの実態だそうだ。地方財政の4割は土地関係から来ており、縮小すると公務員のボーナスカットなど社会不安につながってしまう。特にGDP成長が低下傾向にある昨今、2022年度は成長ありきの政策も出されており、地方政府は舵取りに苦労しそうである。

成長率が低下しているとはいえ、中国の名目GDPは2033年に米国を追い抜くと試算されている。しかしながら一人っ子政策のしわ寄せによって少子高齢化が加速し、人口が減少することで2050年には米国が再び中国を追い越すとも言われている。中国の出生率は1.1〜1.2倍と日本よりも低い状態である。

テレビ放送は2夜にわたって行われたのだが、翌日の目玉は台湾に向けて橋の建設をスタートさせたというニュース。これは知らなかった。新聞記事にも詳しく記載されていたので、引用しておこう。

「香港から広東省珠海市、マカオを結ぶ世界最長級の「港珠澳大橋」開通式典に出席。中国大陸と香港、マカオを一体化する全長55キロメートルの海上大橋と海底トンネルを9年余りで完成させ、習は壇上で「国力だ」と誇った。香港市民は巨大橋の完成を恐れた。「このままでは、香港が大陸にのみ込まれる……」。わずか1年半後。香港国家安全維持法(国安法)がスピード成立し、香港は中国の強権下にあっさり落ちた。まず造る。既成事実化し、あとは押し切る。リアルな軍事力ではない。それが最善の近道だ、と中国は知っている。戦わずして勝つための作戦が進む。次は台湾だ」

「中国が台湾統一に向け、狙いを定めるのは、米軍が警戒する27年ではない。反目する台湾総統、蔡英文(ツァイ・インウェン)の任期が切れる24年だ。「いまは待っている。次期総統選で親中派の国民党を勝たせるよう後ろ盾となり、その新政権とともに24年から統一を目指して事を仕掛けていくのだろう」。中台の外交専門家らのほぼ一致した見方だ。いまの台湾なら、ミサイルや爆撃機を使わずとも、容易にねじ伏せられる。中国はそう踏む」

確かにしたたかな中国であれば実行に移しそうな作戦である。軍事力を強化して台湾有事をちらつかせておき、実際には香港と同じように取り込んでしまえば、戦争勃発よりはましだという世論形成も出来るかもしれない。番組では、台湾統一は習近平の面子にも関わる問題なので、あらゆる手段を使って実行に移すのではないかというコメントがなされていた。

日本はこのようにしたたかな中国と、同盟国である米国との間に立たされて、バランスを取るのが難しい状態である。しかしながらバイデン政権が何を言っているかだけでなく、何を実行しているかもよく見て行動すべきとのことであった。特に、安全保障と経済政策とを分けて考えること。一部の経済政策、例えば半導体技術に係るものなどは安全保障と密接に関わるため注意が必要だが、それ以外の経済分野については米中は未だに大量の貿易を行っている。この事実を踏まえつつ、必要以上に恐れないことも必要だと感じた。

追伸)本番組のコメンテーターとして加藤嘉一氏が登壇していた。現在は楽天証券研究所の客員研究員とのこと。中国にいた頃は、彼のブログで中国の実態を知ることができ、重宝していたものだ。最近お名前を拝見する機会がなかったのだが、お元気そうで何より。

中国のIT系大企業であるアリババが、政府から目を付けられて規制を受けたことは記憶に新しいが、最近、配車アプリを提供するディディ(滴滴)も規制対象になった。具体的には、米国に上場したディディに対して、米国への情報漏洩が懸念されるとして審査や立ち入り検査を実施したもの。これによってディディの株価は大幅に下落した。

米国上場に関しても、現在はVIE(変動持ち分事業体)という方式により、中国企業が迂回上場することが暗に認められているが、この制度に規制が入ると中国企業の株価はそろって暴落する危険がある。

また、本件に関しては米国への情報漏洩が直接的な懸念事項かもしれないが、巷では中国のIT企業が中国共産党を上回る力を持ち過ぎないように規制を厳しくしているという見方が強い。

中国の経済発展の大きな原動力となってきたIT企業だが、このような規制強化は企業の競争力を削ぐことになるであろう。中国共産党も、そんなことは百も承知で、こういった規制強化に踏み切っているということは、よほど大きな焦りがあるのかもしれない。

また、もう1つ新しいニュースとして中国政府が、学習塾の業界を非営利団体に転換すべしという方針をだそうとしている。これは教育費の高騰によって少子化が進んでいることへの対策である。また一部の報道では、海外からの教育産業への参入によって、中国政府にとって不都合な情報が生徒に提供されるのを防ぐためだという説も囁かれている。

しかしながら、資本経済に慣れてしまった中国が非営利の事業にどれだけ注力するであろうか。もちろん、教育に関しては義務教育を充実させればよいのだが、長期的に見ればこういった学習塾への規制も教育という将来への投資を手控えさせる要因になるであろう。

こうやって見ていくと、わざわざ自ら国力を減退させかねない施策を次々と打ち出しているように感じる。中国の台頭を懸念する欧米各国からの様々な制約を受け、従来のような成長路線が描けなくなっている中国。一度経済が停滞すれば、共産党の基盤は意外と脆いのかもしれない。これまで幾度も易姓革命を繰り返してきた中国にとって、人民を飢えさせないことは至上命題なのだ。

『上海女子図鑑』がなかなか面白かったので、ついついこちらも見てしまった。同じ企画なので、どうしても比較してしまうのだが、個人的には「上海」の方が好みだろうか。

「北京」の方も地方から北京に上京した女性が、成長していく様を描いているのだが、仕事で成長するというよりは、恋愛を通じて成長していくような感じ。また女性を武器にしているようなところも感じられて、あまり好みではなかったというのが正直な感想である。

一方、中国のリアルな生活の状況をうまく伝えているのは「上海」よりも「北京」の方だと思った。普通の家には住めないため、暗くて狭い地下室での生活を余儀なくされている若者たち。壁に携帯電話を乗せる籠がかかっているのだが、地下室では唯一そこだけ電波が届くというのがリアル。

偽物のバッグが話題になったり、北京戸籍に関する話が出てきたりと、中国ならではの話題が満載である。特に北京戸籍を獲得するために、ダメ男と結婚してしまったくだりは、笑うに笑えない現実だと感じてしまった。一方、物語の後半には電子マネーによる支払いのシーンがたくさん出てくるなど、これらも「上海」では見られなかった町の風景である。

主人公は陳可依という女性。成都の大学を卒業した後、一念発起して北京に上京する。人に依存するのをやめようという意思の表れであろうか、自分で名前から「依」を取って「陳可」と名乗るようになる。田舎の可愛らしい少女が、都会の洗練された美人に変身していく様は見もの。最初は観月ありさに似ているかなと思ったが、後半は桐谷美玲に似ているかなと思った。ちなみに「上海」の主人公の羅海燕は小池栄子似。

このドラマで気を付けなければならないのは、主人公が地元の友人と話すときに四川語を話しているということ。字幕を見ていると何となく何を話しているのかは分かるが、初学者はこれを普通語と思わないよう、注意が必要である。少し勉強した人であれば、明らかに北京語ではないと分かるとは思うが、念の為。



追伸)ドラマの最終回で流れていた曲がいい感じだったので、エンドタイトルをチェックしてYoutubeで探してみた。金志文という方が歌う「遠走高飛」という曲だった。こちらも映像をアップしておきたい。



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2020年12月03日 ドラマ 『上海女子図鑑』

何がきっかけたどり着いたのかよく覚えていないのだが、YouTubeで「中国を学ぶのに最適なドラマ」という紹介の動画を見た。アメリカにいるのだから、中国のドラマなどを見ている場合ではないのだが、日本語の本やドラマをできるだけ見ないようにしようと思っていたら、少し息が詰まってしまったようである。

その中で紹介されていたのが「上海女子図鑑」というドラマ。もともとは日本で撮影された「東京女子図鑑」というドラマ(こちらは見ていない)がベースとなっており、中国版に焼き直したものだそうだ。中国の最新の状況も分かるし、リスニングにも役立つとのことで、ちょっと見てみることに。

Youkuという中国版YouTubeのような会社が作成したWEBドラマとのこと。YouTube上でも無料で見ることができる。1話が25〜30分程度と、日本のドラマに比べると少し短め。その分回数が多くて20回完結という構成。細切れに見ることができるのは、最近の若者を意識したのであろうか。トータルの時間は日本のドラマのワンクールと変わらない。

物語は、中国の片田舎から出てきた女性が、上海の有名大学を卒業し、広告関係の企業に就職するところから始まる。最初は右も左も分からない状態だったのが、最後には自分で起業するにまで至る。ちょっとペースが速すぎるような気もしないでもないが、今の中国のスピード感はこのようなものなのかもしれない。ちなみにドラマは2003年から2018年までの15年間を描いている。

仕事だけでなく、恋愛にも旺盛。様々な男性との恋と破局を繰り返し、と波乱万丈だが、最後は納得のいく終わり方であった。上海のお見合い事情、田舎の父母が結婚しろとうるさいこと、上海人は上海人と結婚したがる、90后の若者世代の実態など、現代中国の文化も垣間見ることができる。それにしても主演の女優は、女性の成長をうまく演じ分けているなぁ。

田舎から出てきてハングリー精神を保ちながら、たくましく生きていく。自分が社会人になって誰も知り合いのいない東京に出てきた時のことを思い出したり、上海の街並みを見て辛かった中国時代のことを思い出したり。。。初心に帰って頑張らなければという気持ちにさせられたのは、よかった。

YouTubeで無料視聴可能なのだが、残念ながら字幕は中国語のみ。それほど難しい内容ではないので、私の中国語レベルでも字幕を見ながらだと9割は理解できた。途中、物語のキーになりそうなところで、何を言っているのか分からないところだけ一時停止して、辞書で意味を調べたりしたが、せいぜい1話につき2〜3カ所程度。

ビジネスシーンもたくさん出てくるので、仕事で使う中国語を学ぶという意味でも、なかなかよい教材になるのではなかろうか。「幸会(xing4hui4)」「久仰(jiu3yang3)」など、ビジネスシーンで使うと、ちょっと中国語が出来るなと思ってもらえるかもしれない。



追伸)ドラマのラストで毎回流れる主題歌がなかなかPopでいい歌。動画をアップしておこう。歌手は阿肆、歌の名前は「起床歌」である。



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2020年12月05日 ドラマ 『北京女子図鑑』

日経新聞[2020.09.16]戦狼中国と真珠湾攻撃前の日本

中沢克二氏の記事は、中国の政治に関する多くの示唆を含んでいるので必ず目を通すようにしている。今回は特に興味を惹かれたので、要約して引用しておきたい。

・中国国内で現状の戦狼外交が、真珠湾攻撃前の日本に似ているという警鐘が出されている。

・中国の現状は厳しい。南シナ海、香港、台湾といった問題も絡む米トランプ政権との対峙、報復合戦に陥ったオーストラリアとの関係、45年ぶりに死者を出したインドとの衝突、華為技術(ファーウェイ)が絡むカナダとの摩擦、台湾が関係するチェコとの確執……。さらに中国寄りが目立ったドイツも初のインド・太平洋外交の指針(ガイドライン)を閣議決定するなど微妙にスタンスを変え始めた。

・日本はハワイ真珠湾攻撃によって米、英、フランス、豪、中国、最後はソ連までも同時に敵にしてしまった。また、当時の日本の統治者は自らの能力を高く評価しすぎた結果、壊滅的な結果を招くというミスを犯した。

・1940年夏より前、米国は日本の中国侵略に抗議していたが、なお対日経済関係は保たれ、鉄スクラップ、石油を日本に供給していた経緯にわざわざ触れているのが興味深い。ところが日米開戦前になると、米国は鉄スクラップの禁輸から、南部仏印進駐を契機にした対日石油全面禁輸に踏み込む。いわゆる「ABCD包囲網」の完成である。米英中にオランダを加えた対日貿易制限は日本に大きな痛手を与えた。南部仏印進駐はマレー、ビルマといった英国の権益にも脅威を与え、米英がともに「喉元に突き付けられた刃」と感じたのは大きい。

・あえて深読みすれば、日本軍による南部仏印進駐が現在の中国による南シナ海での人工島造成と軍事化。米国が日本に供給していた鉄スクラップと石油は、現代中国が米国中心の供給網に依存してきた半導体とその関連技術に見えてくる。80年近く時を隔てた日本軍の南部仏印進駐と、中国による南シナ海の人工島造成。米国が自国の利益への挑戦とみなす点では確かに両者は酷似している。


なるほど、東南アジアへの侵略と鉄スクラップ・石油という当時の産業のコメを絶たれたというアナロジー。日本はその後、「見たくないものは見ない」という国民性から日米開戦に踏み切ってしまった。中国は易姓革命が何度も起こってきたという長い歴史を持つ国。内政への目配りから米中開戦へ踏み切る、とは考えたくはないが、可能性はゼロではない。ちょっと心配になる記事であった。

この記事が書かれたタイミングでは、まだバイデン氏の勝利は見えていなかったが、対中政策に関しては、手法の違いはあれども厳しい態度を取り続けるだろうと予想されている。日本が半導体大国になった際、大きく叩かれたように。この時は日本が大きな妥協を迫られ妥結した訳だが、今回は相手が、もはや大国と読んでもよいであろう中国。心配の種は尽きない。。。

東洋経済オンライン[2020.11.02]「中国の成功」が終わりに近づいている理由

歴史学者・ニーアル・ファーガソン氏による投稿。興味深い記事だったので、要約して引用しておきたい。特に「新・新中国」「新・旧中国」「旧・旧中国」の3つの中国という表現は、まさに今の中国を端的に表していると思う。

・米中の貿易戦争は貿易の枠を超えてしまっており、今や対立の焦点は技術をめぐる攻防に移りつつある。ファーウェイ製のハードウェアを使って世界の5Gネットワークを中国が支配することを、アメリカはなんとしても阻止しようとしている。戦線は貿易から、投資や地政学、イデオロギーの領域へと広がっている。アメリカは技術などの戦略的な経済領域で中国からの投資を制限し、中国の南シナ海の制海権に異議を申し立て、香港政策を非難し、新疆ウイグル自治区での人権弾圧を批判している。

・勝者がどちらになるのか予測はつかない。アメリカが勝つとは限らない。中国経済はかつてのソ連を遥かに凌駕し、アメリカと比較した技術力も、当時のソ連より優れている。

・資本主義は民主主義と一体であり、市場経済があるのと同時に、選挙で選ばれる代議政治と法の支配がある。市場経済のみが存在して、民主主義が存在しなければ、最終的にはその経済は蝕まれるはずだ。無責任な官僚制度による利益追求が始まり、腐敗が広がっていく。

・中国の経済的な成功は終わりに近づいていると見ている。人口統計学的要素や財政・金融上の逆風により、今後、中国経済は鈍化していくはずだ。今後10年で成長率は半分ほどになると推測している。

・中国はこの40年の間に歴史上最大のブルジョワジー(中産階級)を創り出した。ブルジョワジーは民主主義に興味はない。彼らの関心は財産権だが、それを守るには法の支配が必要だ。が、中国では財産権は保障されていない。市民は法で守られておらず、国家の気まぐれで人々の資産は簡単に取り上げられてしまう。共産党に「お前は腐敗している。規則に違反した」と判断されたらゲーム・オーバーだ。

・中国の中産階級は不安を感じ始めている。だからこそ、中国には資本規制があるのだ。規制がなければ、中国の富の大部分は、法の支配と保護を求め国外へ流出してしまう。中国の富、つまり、中産階級の多くは国外への移住を望んでいる。移民を希望する中国人は多く、中国への移住を望む人は少ないという事実が、それを物語っている。

・中国の国家と中産階級の緊張関係は、経済の最もダイナミックな場所で顕在化している。ハイテク産業の集積地深圳のIT企業の人々は頻繁にシリコンバレーとを行き来している。アメリカのパスポートを持つ人も少なくない。その彼らに、北京の共産党政府は懐疑的な目を向けている。

・中国の友人は「今この国には三種類の中国がある」と語った。「新・新中国」「新・旧中国」「旧・旧中国」の3つである。「新・新中国」とはテクノロジーの世界、つまりテンセントやアリババだ。「新・旧中国」は政党の世界。そこには、共産党員が子供に経営を継がせる高収益の国有企業がある。そして、最後の「旧・旧中国」は北部の寂れた工業地帯にある採算性が低いままの国有企業である。

・これら3つの中国の間には対話も調和もない。特にテクノロジーの「新・新中国」と共産党の「新・旧中国」の間には、「テクノロジー中国」と「政党中国」の間には、指摘したような緊張関係がある。それは、外にいる私たちにはあまり見えない。アリババの創始者馬雲(ジャック・マー)をはじめとするIT企業のリーダーたちが、習近平の顔色をうかがっているからだ。

・中国政府が、その正当性の根拠としていた経済成長は、もはや維持できなくなりつつある。共産党は別の根拠を探さなければならない。その1つが毛沢東思想。近年の習近平や共産党幹部の言説に、その復活が垣間見られる。今後20年の間に、中国は何らかの形で政治的な危機を経験すると予想している。自由な社会がなければ自由経済は長く維持できない。

中国に駐在していたので、中国という国の良さと怖さは、普通の日本人よりは理解しているのではないかと思う。今の中国は、IT化が進み、電子マネーやタクシーアプリなどが普及し、超絶便利な社会になっている一方で、SNSへの書き込みが常時監視されていたり、街中に監視カメラが設置されたりしているというのは周知の事実。(しばらく中国には行っていないので、残念ながらヒアリング情報だが)

しかしながら、中国という国の本質の部分が変わったわけではない。むしろITの進化により本質的な部分がより先鋭化している状態と言えようか。

そんな中国において香港は自由(=民主主義、言論の自由)を謳歌している出島的存在であった。1997年のイギリスからの返還時には、50年間一国二制度を維持するという約束がありながら、その半分にも満たない23年目にして早くもその約束が反故にされてしまった。そう、「香港国家安全法」の裁決である。

私がシンセンと香港を週1回のペースで行き来していた頃は、香港の駅に着くといたるところに中国共産党を批判する立て看板が立っていた。今後はそういったものも撤去されてしまうのであろう。いや、すでに撤去済みだろうか。

日本に居ると忘れがちになってしまう言論の自由。こうして私が好きなことをブログに書いているのも、その自由が保障されているからだ。香港の人たちが、自分たちの最大の権利を奪われまいと、大規模なデモを繰り返したのは記憶に新しい。あわや現代の天安門かというほど緊迫した情勢になってしまった。

【未来ジパングに何度も登場し、注目していた活動家・周庭さんの最後のメッセージ。死すら覚悟する壮絶なメッセージに、涙が出てきてしまった】
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そんな香港だが、私が駐在していた2007年から2010年の間は、香港の中国依存が徐々に大きくなっていく時期であった。従来に比べて中国の方が香港に行きやすくなったため、買い物(いわゆる爆買い)客が急増したのだ。これによって、これまで普通語を毛嫌いしていた香港人たちが、どんどん普通語を話すようになっていった。

商売のためならとことん柔軟になれる愛すべき香港人たちも、さすがに今回の中国政府のやり方には腹立たしさを覚えてのであろう。しかしながら、たかだか700万人の人口が14億人に勝てるはずもなく、一香港ファンの私にとっては、大変残念な結果になってしまった。

中国で生活をしていく上で、政府批判さえしなければ、比較的自由に行動できていた。香港もそんな国になっていくのであろうか。しかしそれはもはや香港ではなく、本当の意味での中国の一部なのだ。

ふと、親しくしていた香港の元同僚のことが頭をよぎる。でも、どんなメッセージを送ればよいのだろうか。私が送るメッセージがすでに監視下に置かれているかもしれない。迷惑をかける可能性を考えると、軽々しいメッセージは送信できない。。。

このまま中国の覇権が続くと、次は台湾だろうかと危惧してしまう。香港のように最低限の流血では済まない可能性もある。中国には是非、覇道ではなく王道を行ってほしい。今や大国となってしまった中国には。

最近、新聞などで「デジタル人民元」というキーワードをよく目にする。新聞を読むのにあまり時間をかけないよう、意識しているのだが、逆に気になった記事はアプリの保存機能を活用して、しばらく保存して寝かせておく。(池上彰さんが紙ベースでやっていた手法のデジタル版といえようか) 保存した記事は、しばらくしてから再読して、興味がなければ削除する。こういったことを繰り返していくと、興味深い記事だけが残ることになる。

デジタル人民元は、このような手法で残った記事。4件の記事が1カ月おきくらいのペースで断続的に取り上げていた内容。中国の技術覇権に向けた戦略の1つになりそうな気がするので、自分なりにまとめた内容を記録しておきたい。

・中国政府は暗号資産(仮想通貨)に関する新法を可決し、2020.01.01から発効している。この流れを受け、今後は中国での中銀デジタル通貨、いわゆる「デジタル人民元」の発行が秒読み段階に入っている。

<デジタル人民元の狙い>

(1)ドル覇権への挑戦:人民元の利用を広めていくこと。一帯一路構想の参加国を中心に、新興国地域へと新たに中国の貿易・経済圏を広げることが必要。そこで人民元の利用を広げ、中国通貨圏に組み入れていくことも重要。しかしながら、現状はドル建てを中心に銀行間の国際送金は米国が牛耳っている。米国がここを押さえると、ドル建て比率が高い中国の貿易は成り立たず、経済は深刻な打撃を受ける。こうした事態に備えるため、中国としては人民元の国際化を進めたいが、デジタル人民元はその起爆剤となることが期待されている。

(2)リブラへの対抗:中国では2015〜16年にビットコインを通じて資本流出が起きた苦い経験がある。裏付けの通貨があるリブラの破壊力はビットコインよりはるかに大きく、人民元が侵食されかねないと危機感を抱いている。リブラは米ドルなどで構成する通貨バスケットに値動きを連動させるが、裏付け通貨に人民元は含まない。資金洗浄などの懸念から米欧金融当局はリブラに厳しい視線を送るが、中国にとって「リブラは長い目で見ると米国の通貨覇権を後押しする道具」だと映っている。デジタル人民元はこうした脅威に先手を打つ狙いも持つ。

(3)ブロックチェーン技術の確立:デジタル人民元にはブロックチェーン技術が使用される予定だが、これにより海外利用者に安価で迅速な支払い手段を提供するとともに、米国に邪魔されないことを狙っている。また、ブロックチェーン技術で米国に優位に立つ狙いもあり、通貨だけでなく、原材料の原産地から製造・流通の工程記録の改ざんを防ぐ製造・物流の管理なども視野に入れている。

(4)金融機関の負担軽減:キャッシュレス化が進む中国で、現金の流通を更に減らし、金融機関の負担を軽くする。デジタル人民元は中国人民銀行が発行し、総量は人民銀がコントロールする。

(5)海外への人民元不正持ち出しの防止:海外への現金持ち出しによる不正な資本流出を防ぐ目的もあり。現状は、アリペイなどを活用して、規制上限額以上の海外向け送金を実施している企業がある。現在の規制強化で、当局はすでに国境をまたぐ資本移動の90〜95%を把握済みであるが、残る5〜10%は現金による持ち出しだと言われている。デジタル化により、この穴を防ぐ戦略。

(6)暗号技術を国家の安全を守る核心的技術と位置づけ:中国共産党によるインターネット空間の統制を一段と強める狙い。暗号法では暗号を、国家の極秘情報を守る「核心暗号」、機密情報を保護する「一般暗号」、政府の情報インフラや国民生活などに関わる情報に関する「商用暗号」の3つに分類する。核心・一般は中国政府が厳格に管理する一方、商用暗号を巡っては産業育成に力を入れる。

日経新聞[2019.10.15]習主席が予言した手ごわい香港「人民戦争」

中沢克二さんの「激変・習政権ウォッチ」は毎週楽しみにしているコラム。中国の動きは今でも目が離せず、このコラムは政治や経済の核心に踏み込む、奥の深い記事。今回は、「一国二制度」のあり方についての洞察に充ちた記事だったので、記録しておきたい。中国を見つめるときのよき視座になりそうな好記事である。

今、香港で続く終わりなき人民戦争は「一国二制度」のあり方を巡るぶつかり合いである。1997年に返還された香港への「一国二制度」適用は、当時の遅れた中国の現状をよく知る小平の現実主義のなせる業だった。西側自由世界の政治・経済システムの優位性を認めて譲歩したのだ。

しかし習近平時代に入って「中国モデル」が西側の制度より優れているとの考えに傾く。そうである以上、かつてのような厳格な形で「一国二制度」を尊重する必要性が薄れた。徐々に中国本土化する方針は香港・マカオを広東省と一体開発する「大湾区構想」にも透けて見える。

香港で起きている人民戦争の根っこには、7年前に習近平が共産党トップに就いて以来の政治的な大転換がある。習は小平式の現実主義を捨てたのだ。そして、爪を隠し、力を蓄える「韜光養晦(とうこうようかい)」といわれる外交・安全保障の大方針も変えた。小平の業績を超えて、建国の父、毛沢東に近づこうとする政治的な性急さが、香港、そして対米関係でも摩擦を激化させている。

香港のデモが過激化している。個人的には、シンセン駐在時に、何度も足を運んだ香港であり、何人もの友人がいる思い入れの深い場所。どちらかというと、香港市民に肩入れしていたのだが、最近の暴徒化したデモを見ると、ちょっとやり過ぎではないかと感じてしまう。それだけ、香港人の危機感が大きいということであろうか。

今回のデモは、「逃亡犯条例」改正案の撤回要求がきっかけ。香港政府トップの林鄭月娥・行政長官は4日、改正案の完全撤回というカードを切ったが、デモが収束に向かう兆しは見えない。むしろ過激化しており、先行きが心配である。デモを撤回しないのは、五大要求が満たされていないから。逃亡犯条例改正案の撤回要求がニュースでは取り沙汰されているが、正確には下記の5つの要求がなされている。(矢印以下は政府の回答)

・条例改正案の完全撤回 → 正式に撤回
・警察の暴力行為を調べる独立委員会の設置 → 既存の監察組織に外部人材を登用
・逮捕者の訴追見送り → 受け入れられない
・デモを暴動とした政府見解の取り消し → 手続き上、定義が存在しない
・普通選挙の導入 → 拙速な議論は社会の分裂を招く

かつては中国の文革の嵐から海を泳いで香港に逃げてきた人もいる。自由の象徴であり、民主主義の象徴でもあった香港。それが一国二制度と言いつつ、実質的に中国共産党の支配下(というと言葉がきついのであれば管理下)におかれようとしていることに、強烈な危機感を抱いているのであろう。

最近、近代史関係のドキュメンタリーを何本か見たのだが、その中に天安門事件に関するものがあった。事件については、中国近代史をそれなりに勉強したので、詳しく理解しているつもりであったが、今回のドキュメンタリーでは人民解放軍が実際に大学生たちに発砲しているシーンや、市民が隠し持っていた銃弾に倒れた学生の死体の写真などが放送されており、改めて現実を思い知らされた。(それまでは活字を通してしか事件のことを知らなかったのだ)

軍隊が市民を攻撃するという異常な事態に、改めて戦慄を覚えたわけだが、今の暴徒化した香港市民を見ていると、天安門事件の再来もあり得るのではと、心配が募ってしまう。流石に30年前とは異なり、大国となり世界の注目度も格段に増している中国政府が、暴力的な鎮圧に舵を切るとは思えないが、予断は許さないように感じる。

李嘉誠が新聞広告に放ったメッセージ「暴力の禁止」は、誰の誰に対する暴力を諫めているのかを示しておらず、読者の自由な想像に任せている、練りに練られたメッセージ。この広告を見た当初は、そうはいっても香港警察や、はたまた人民解放軍、中国政府の暴力を諫めたものだと思っていたが、香港市民側がここまで暴徒化すると、そのメッセージの深遠さに改めて感じ入ってしまう。

先日、シンセンの同僚と話をする機会があったのだが、シンセンと香港を行き来する日本人には、黒いシャツを着たり、マスクを付けたりしないよう注意喚起しているそうだ。また、香港からシンセンへのイミグレーションの際には、スマホの写真までチェックされるとのこと。(当然、本件は中国側ではニュースになっていない)現地の生々しい話を聞き、一刻も早い平和的な解決を祈らずにはいられなかった。

日経新聞[2019.07.25]人民元、ドル覇権に一石 独自決済網89カ国・地域に

少し前の記事だが、中国のしたたかな戦略が透けて見える面白い記事だったので記録しておきたい。

人民元の国際化を狙う中国独自の国際決済システムが存在感を高めている。2015年10月の稼働後、銀行の参加が89カ国・地域の865行に広がっていることが日本経済新聞の調べでわかった。米国が経済制裁の対象としたロシアやトルコなどを取り込み、18年の取引額は前年比8割増の26兆元(410兆円)に達した。米国の対外強硬路線を逆手に取り、ドルの覇権にくさびを打ち込み始めた。

現在の国際決済は、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)のシステムを通じて送金情報をやり取りするのが主流だ。その決済額は1日あたり5兆〜6兆ドル(550兆〜660兆円)とされ、事実上の国際標準になっている。うち4割がドル決済で、SWIFTがドル覇権を支えている状況だ。

これに対し中央銀行の中国人民銀行が導入したのが人民元の「国際銀行間決済システム」(CIPS)。英語での手続きとし、取引ごとの即時決済を採用して人民元決済の間口を広げた。システムに口座を持つ「直接参加行」と、直接行を介してつながる「間接参加行」で構成し、いずれかと取引すれば中国企業の口座に簡単に資金を移せる。


このシステムを活用して、ロシアやトルコといった米国の制裁国を取り込んでいる。これまでは、米国の制裁を受けるとドル決済ができなかったのが、人民元を受け皿とした国際決済が可能になりつつある。今後はイランなどの国も参加することが想定される。

また、一帯一路の沿線国や、アフリカなどの中国が進出している途上国にもCIPSは広がりつつある。一帯一路に参画する国が増えるほど、人民元決済の需要は高まる。

今後も経済制裁の影響を避けたり、米国に国際取引を把握されないようにするため、ドル以外の通貨で決済する手段を確保する動きは広がりそうだ。CIPSのネットワークは確実に広がっており、その潜在力はあなどれない。米国が威圧的な外交姿勢を強めれば、自らドルの基軸通貨としての絶対的地位を危うくする可能性がある。

最近、新聞を読んでいて気になるのが中国ITの進化の速さ。私が駐在していたのはもう6年も前のこと。この6年で、大きく状況が変わっている。日本にいるとなかなか見えてこないが、駐在から帰任した方や、現地の同僚に話を聞くと、完全に日本の方が遅れている側面もあると危機感を抱いてしまう。

少し古い情報もあるかもしれないが、新聞記事や現地の方に聞いた話を箇条書きにして記録しておきたい。

・現在、中国ではほとんど現金を持ち歩かない。小さな商店ですらスマホ決済が可能。

・出前もスマホで対応可能。宅配の配達人が、都市部における新たな職として台頭してきている。

・電子マネーの発展は自販機の普及にも貢献している。従来は硬貨の流通地域が一部に限られていたため、自販機は少なかったが、スマートペイのおかげでスマート自販機が普及。コンビニに変わる存在として台頭してきている。

・米国ではAmazon Goなどの動画解析による無人コンビニが普及し始めているが、中国ではRFIDなどの電子タグを活用した無人店が登場してきている。

・習近平政権が目指すのは4つのAI特区構想。シンセンをヘルスケア(医療映像)特区(中心企業はテンセント)、杭州をスマートシティ特区(中心企業はアリババ集団)、合肥を音声認識特区(中心企業はアイフライテック)、雄安を自動運転特区(中心企業は百度)と定めた。これらの中心企業を総称して4大プラットフォーマーと呼んでいる。

これらは、消費者にとっても便利さを享受できる、よい動きだと思うが、一方では中国ならではの、ちょっと怖いと感じさせられる一面も。

・コンサート会場に来ていた指名手配中の容疑者が、顔認証で逮捕された。中国の監視カメラは全国で1億7000万台を超えており、現在も増え続けている。人工知能により、毎秒30億回というスピードで照合する。全国民14億人を1秒もかからないでふるいにかけることができる。

・欧州では個人情報の保護に向けて規制が強化される動きがあるが、中国にそのような規制はない。中国の研究者とスタートアップ企業は、世界では一般的なプライバシーとセキュリティーの制約を受けずに、DNA情報などを含む「人間のデータ」を大量に準備できる。

・フェイスプリントと呼ばれる顔認証による本人証明は、金融取引に使用できるほどセキュリティが強固だが、中国ではこの情報を警察が享受しており、大規模な監視のために利用している。

・ドローンで隠れている人間を見つけ出すという、AI兵器に近しいものまで開発中。ドローン技術については、中国が米国に追いつきつつある。

米国と中国の貿易抗争が過熱しているが、日経新聞の複数の記事で、中国のしたたかな戦略が紹介されていたので引用しておきたい。先日、中国の金融市場の外資への開放が発表されたが、恐らく金融の世界では外資が来ても大丈夫だという段階に至ったからであろう。自動車ですら外資の出資比率増加を認め始めたということは、エンジン技術は習得済みか興味がないということなのかもしれない。

今後は半導体が気になるところ。しかしなかが、中国企業は素人のサッカーのように、ボールがあるところへ皆で集まってしまうので、液晶パネルや太陽光発電パネルのように、急速な価格下落が心配される。まぁ消費者にとってはよいことなのだが。。。

・専門家によると、中国の模倣は段階的になされている。(1)他国の特許公開情報を読み込み、技術を学ぶ(2)機器やソフトを解析するリバースエンジニアリングによって実際に模倣してみる(3)うまくできない場合、先進国に研究者を送り込んだり技術者をヘッドハンティングしたりしてノウハウを補う――の3段階だ。

・米国が主張する手口は(1)高い関税で輸入品を締め出し、中国市場に入りたい外国企業には国内生産を求める(2)中国企業との合弁会社設立を条件とし、合弁会社はバッテリーなど中核技術の知財を保有しなければ製品を売れない規制を設ける(3)最終的には技術を中国側に渡さなければ事業ができない――の段階を踏む。

・米政権が主張する中国の「4つの手口」 (1)外資規制で技術移転を強要:電気自動車など新エネルギー車の中核技術を中国企業との合弁会社に移さないと事業化できず。(2)技術移転契約で米企業を差別的な扱い:米国が中国企業に技術供与契約を結ぶとき、中国企業間ではかけない厳しい規制をかける。(3)先端技術を持つ米国企業を買収:中国企業が特許侵害で争う米プリンター大手を買収。中国政府が資金支援。(4)米国企業にサイバー攻撃:人民解放軍の攻撃を受け、鉄鋼や原発などの米企業から情報漏洩。

少し前の話だが、中国に出張した際に現地の方から聞いた話。恥ずかしながら、5年半の駐在経験を持ちながら、このお茶の種類については、知らなかった。当時はプーアル茶を好んで飲んでいたのを思い出す。

さて、中国茶を、発酵度合いで6種類に分類したものが「6大茶」というそうだ。以下、6種類について説明していきたい。

(1)緑茶(リュウチャ)

中国で消費される中国茶の80%近くが緑茶と言われており、最もポピュラーな中国茶。緑茶は、発酵をさせていない「不発酵茶」を指す。代表銘柄は、龍井茶(ロンジンチャ)、黄山毛峰茶、信陽毛尖、碧螺春など。

(2)白茶(バイチャ)

最も古い歴史を持つお茶と言われているが、最近は「血糖値」「血圧」「コレステロール」を下げる効果も報告されている健康茶。白茶は、茶葉が芽吹いて産毛が取れないうちに採取し、非常に浅い発酵度の段階で自然乾燥させて作られる「微発酵茶」。代表銘柄は、白豪銀針、白牡丹、寿眉など。

(3)黄茶(ホアンチャ)

黄茶は「弱後発酵茶」に分類される中国茶であり、中国茶の中でも最も希少価値が高いお茶として有名。黄茶は荒茶製造工程中に軽度の発酵を行うお茶であり、緑茶よりもまろやかで香り高く、黒茶程のクセが無いお茶である。代表銘柄は、君山銀針、蒙頂黄芽、北港毛尖、霍山黄大茶など。

(4)青茶(チンチャ)

青茶は、茶葉を発酵している途中で加熱することによって発酵を止めた「半発酵茶」。発酵が銘柄によって15%〜80%とかなり幅がある。烏龍茶も青茶の一種。代表銘柄は、凍頂烏龍茶、東方美人、武夷岩茶、鉄観音など。

(5)紅茶(ホンチャ)

紅茶は「完全発酵茶」に分類される中国茶であり、茶葉を最後まで発酵させて作られており、発酵が最も進んだお茶。我々が知っている紅茶の元祖が中国茶の紅茶である。ミルクや砂糖を入れずにストレートで楽しまれることが多い。代表銘柄は、祁門紅茶、英徳紅茶、雲南紅茶など。

(6)黒茶(ヘイチャ)

黒茶は「後発酵茶」に分類される中国茶であり、麹菌の力によって発酵させた独特の製法によって作られるお茶。製茶後に、湿った茶葉を高温多湿の場所で寝かせることにより、発酵させたお茶が黒茶となる。代表銘柄は、普洱茶(プーアル茶)、六堡茶など。

少し古いが2017.07.02の日経新聞より。漢字学者・阿辻哲次さんの投稿である。中国語を学習し、漢字に興味を持っている私としては、非常に興味深く、かつ目から鱗の記事であった。その内、ブログに書こうと思ってスクラップしていて、そのまま放置してしまっていたのを発見したのだ。今度は忘れないうちにアップしておこう。

いまの中国では字形を大幅に簡略化した「簡体字」が使われているが、その中でもっともよく見かけるのが「个」だろう。「个」は矢印の記号ではなく、れっきとした漢字であって、日本語の「冊」とか「枚」のように数字と名詞をつなぐ働きをする文字だが、その本来の形は「個」であった。しかし「個」をどのようにいじくりまわしても「个」にはなりそうにない。「个」は実は「個」の異体字である「箇」の上にある《竹》を半分にした形からできたのだが、しかしそれは近代の文字改革によって作られた新しい字ではなく、非常に早い時代から「個」の俗字として使われていた。戦国時代に作られた文献『春秋左氏伝』のなかにも、すでにその用例が見える。

ところで活字体での「个」は三画になるが、実際に中国人が手書きで書く時にはすべての筆画を続けて書くから、結果的にカタカナの「ケ」とよく似た形になる。これが日本語で「ケ」を「個数」の意味で使うようになった由来であり、もともとは中国から輸入された荷物の箱などに「个」という字が手書きで書かれていたのを、日本人が「ケ」と誤読したのが始まりだろう。

中国については、駐在経験があるがゆえに、人一倍感心を抱いている。習近平氏への権力集中が果たして吉と出るかどうか、心配なところもあるが、民衆は自分が豊かであれば上層部がどうなろうと、感心がない(あってもゴシップ的な関心か)というのが本音のようだ。

というのも、宋文洲さんのコラムで、中国共産党のことを「どうも思わない」と言い放っていたのを目にしたのだ。宋さんの次のコメントが印象的だった。

「我々中国人は国のトップを選ぶ選挙がないからということで可哀そうだと思う日本人も多いでしょうが、豊かな生活と比較的自由な生き方ができれば、誰が政権をやってもいいと思うのです。逆にいくら選挙や民主主義と言っても生活が悪くなっていくと暴動や革命を起こすのです。我々はもともと宗教やイデオロギーに執着がないのです。

中国共産党がそれをよく知る政党です。1949年に国民党政府を大陸から台湾に追いやり、地主から土地を奪い貧しい農民たちに与えるような違法行為をしました。しかし、9割の国民を喜ばせる違法行為なんかは違法ではなくなるのです。人民が暴動や内戦を通じても法律とそれを作った政府を一緒に変えてしまうのです。米国も内戦を通じて今のような社会になったことを忘れてはいけません。

共産党政権はそろそろ70年たちます。文化大革命や天安門事件などの失敗と挫折があっても中国という巨大な史上最大の国家を100年の没落からもう一度繁栄の軌道に乗せたのは事実です。

「本来を忘れず、外来を吸収し、未来に向かう」。9か国語で世界に公開された共産党大会の報告書にある言葉です。人民のためという「本来」、学ぶべき「外来」と向かうべき「未来」を大切にしてくれれば、我々にわざわざ中国共産党を倒すメリットはありません。政治には嘘が満ちていますが、結果には嘘がありません」

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チャイナセブンと呼ばれる政治局常務委員の人事については、いろいろな憶測が飛んでいたが、10月25日に新体制を発表した。これまでの常務委員7人のうち、習近平総書記(国家主席、64)と李克強首相(62)が留任。新たに栗戦書・中央弁公庁主任(67)、汪洋副首相(62)、王滬寧・中央政策研究室主任(62)、趙楽際・中央組織部長(60)、韓正・上海市党委員会書記(63)の5人が昇格した。

若手ホープと呼ばれていた、重慶市トップの陳敏爾(57)や、広東省トップの胡春華(54)の昇格は見送り。今まで、2期目には若手を登用し、次世代のトップとして育てていくという慣習があったが、それを破っての異例の人事。2期10年という規則を改訂し、3期目を狙う布石とも言われている。

それにしても、このホープたちの落胆はいかほどであろうか。次のチャンスは5年後である。中国共産党は、ある程度頭角を現すまでは完全実力主義、超テクノクラートたちが熾烈な出世争いを繰り広げている。上層部になれば政治的な駆け引きが必要となるが、それまでは実績がモノをいう。若いころは必死に勉強し、その後一所懸命実績を上げ、最後に政治的な駆け引きを経てのし上がってきた若手たち。日本の会社組織における派閥争いなどとは比べ物にならない魑魅魍魎の世界。上に上がれなかった人たちの心中を思うと、自分の社内におけるちょっとした評価など、取るに足りないものに思えてくる。

話が逸れてしまった。以下、中国共産党大会・活動報告の要旨を日経新聞から引用させていただく。

【党大会のテーマ】初心を忘れず使命を胸に刻み、「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面的完成の決戦に勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取る。中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に向けたゆまず奮闘する。

【党の歴史的使命】1921年に党が誕生し中国人民の闘争に大黒柱が生まれた。今や中華民族の偉大な復興に近づき、これまで以上の自信と能力を持っている。全党は党の指導と社会主義制度を堅持し、否定する一切の言動に断固反対しなければならない。「新時代の中国の特色ある社会主義」はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、小平理論、(江沢民元総書記が掲げた)「3つの代表」重要思想、科学的発展観を継承し発展させたもの。全党が中華民族の偉大な復興の実現へ奮闘する上での行動指針で、長期にわたり堅持しなければならない。小康社会の完成を土台に、今世紀半ばまでに2段階に分けて富強、民主や文明の調和が美しい「社会主義現代化強国」を築き上げると明確にする。

【党の指導を徹底】党、政、軍、民、学などの各方面や全国各地について、党はすべての活動を指導する。政治意識や核心意識などを堅持し、党の指導の堅持のための体制・仕組みをより完全にする。

【発展の時間軸】党の創立100周年(2021年)には民主や生活などが幅広く進歩した小康社会を完成させ、さらに新中国成立100周年(共産党政権成立から、49年)までに現代化を基本的に実現。社会主義現代化国家を築き上げる目標である。第1段階の20〜35年には経済や科学技術で革新型国家の上位に上り詰め、文化的ソフトパワーが強まり中華文化の影響力が広く、深く強まる。中所得層の割合が増え都市・農村間や地域間の発展や生活格差が著しく縮小する。生態環境も改善し、「美しい中国」の目標が基本的に達成される。第2段階の35年から今世紀半ばには、社会主義現代化強国を築き上げる。物質、政治、精神、社会、生態文明が向上し、トップレベルの総合国力と国際的影響力を有する国になる。中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立っているであろう。

【経済発展】経済は既に高速成長から質の高い発展を目指す段階へと切り替わっており、供給側改革を進め経済の質的優位性を高めなければならない。国有資本の授権経営体制を改革し、国有経済の戦略的再編を速める。ビッグデータやインターネット、環境、シェアリング・エコノミー、人的資本サービスなどの分野で新たな成長の原動力を作り出す。農業・農村を優先的に発展させる。請負地の権利の分離に関する制度を充実。農村集団財産権制度の改革も深化させる。辺境地区の安定と安全保障に万全を期し、海洋強国化を加速させる。金融の実体経済へのサービス能力を強化。直接金融の割合を引き上げ資本市場の健全な発展を促す。

【中国文化の発展】文化産業の発展を推進し、北京冬季オリンピック・パラリンピックの準備をしっかり行う。国際的発信力の向上を図り、国の文化的ソフトパワーを強める。

【庶民の生活向上】効率的な社会統治と良好な社会秩序を築き上げ、人民の幸福感をさらに満たす。教育では一流大学・一流学科づくりを加速する。雇用の質を高め、所得水準を向上させる。社会保障制度を充実させ、住宅制度の確立を急ぐ。貧困救済も貫き、2020年の農村貧困人口の脱却を実現する。

【環境や生態系保護】エネルギー生産・消費革命を推進し、クリーンで低炭素を目指すエネルギー体系を築く。大気汚染対策を実施し、青い空を守る戦いに勝利する。生態系の保全や管理体制の改革にも取り組む。

【国防・軍隊の現代化】国防・軍隊建設は新たな歴史的起点に立っており、質と効率を高める。伝統的安全保障の分野と新しいタイプの安全保障の分野の軍事闘争への備えを統一的に進める。国防・軍隊の現代化を35年までに基本的に実現し、21世紀半ばまでに「世界一流」の軍隊を築きあげるよう努める。

【外交】世界が直面する不安定性は際立っている。一心同体となって貿易と投資の自由化などに進むべきである。中国は公正・正義などを旨とする新型国際関係の構築を推進し、他国の内政に干渉し、強い者が弱い者をいじめることに反対する。ただし正当な国益は放棄しない。いかなる者も中国の利益を損ねる苦い果実を飲み込ませようなどという幻想は抱かない方がいい。中国はどれほど発展しても永遠に覇権を唱えず、拡張もしない。引き続き責任ある大国としての役割を果たしていく。

【香港・台湾】(香港での)「一国二制度」は世界が認める成功を収めている。愛国者を主体とする「香港住民による香港管理」を堅持し、同胞の愛国意識を強化し、ともに民族復興という歴史的な責任を負い栄光をわかち合うようにする。「一つの中国」原則は両岸(中台)関係の基礎。これを体現する「92年コンセンサス」を承認すれば台湾のあらゆる政党や団体との往来における障害もなくなる。祖国の統一は必然的な要請だ。両岸同胞は運命をともにする骨肉の兄弟で、家族である。「台湾独立」勢力のいかなる形の分裂活動も打ち破る断固たる意志と自信、十分な能力がある。国家主権と領土を断固守る。

6月末は、中国へ出張。昨年の11月に出張した際は短期滞在だったが、今回は1週間。一番印象的だったのが、ネット環境の変化である。

前回はホテルのWifiからラインが使えたと記憶しているが、今回はまったく不通。同様に、グーグルやフェイスブックも完全シャットアウトであった。以前は、ホテルのなどの施設では、時々使えていたように記憶しているのだが、より情報統制が厳しくなったということであろうか。

今の中国の経済状況を見ると、それもうなづける。最近は新聞の国際欄や、未来世紀ジパングで情報を得る程度だが、GDP成長率が安定化してきており(それでも6%超の高い水準だが)、秋の党大会に向けてより微妙なコントロールが求められている時なのだ。

国民の不満がフェイスブックなどの書き込みを通じて拡大しないように、統制の利く中国企業のみが、SNSなどを運営できるという仕組みである。

一方で、経済効果への深慮遠謀もあるのかもしれない。今や日本では、グーグルやフェイスブック、アップルに対抗できる企業はなく、かろうじて楽天がアマゾンから日本市場を奪われまいと健闘している程度。しかしながら、中国では、国の規制によって、検索やSNS、ネットショッピングなどの分野で、それぞれ中国独自の企業が急成長している。

13億人という人口を抱える中国で、そのユーザーから得られる利益をすべて米国企業に持っていかれては、たまらないであろう。情報統制という名の、非関税障壁に守られた構図と言えるかもしれない。

こういった状況は、日本であれば「ガラパゴス化」と揶揄されるところであるが、さすがに13億人のマーケットがあれば、ガラパゴスであっても生き残っていけるのであろう。

加えて、中国独自のネット環境については、随分と便利になっているようである。今年の4月から駐在されている方に聞いたのだが、バスの行き先を知ることができるアプリがあるので、タクシーに乗って行き先を中国語で(あるいは筆記で)告げなくても、好きな場所に行けるし、バスの駅からは地図アプリが使える。また、出前アプリで好きな食べ物を近くのお店から出前することができるし、代金は決済アプリで支払うことができる。支払いアプリへのチャージもスマホでできるとのこと。こういったアプリを駆使すれば、最低限の中国語で何とか生活できるのだそうだ。

私が駐在していた頃は、スマホが中国でも市民権を得つつあった頃だが、私自身はダイヤルをプッシュするタイプのいわゆるガラケーを使用していた。(iPhoneを使い始めたのは、日本に帰任してから) 駐在員同士でちょっとしたメッセージを送るにも、日本語が使えないので、携帯のショートメッセージをピンインを使って打ち込んでいた。

タクシーに乗る際も、行き先を紙に書いて運転手に渡したり、目的地にたどり着くために事前に地図を印刷しておいたりと、苦労したのを思い出す。

しかしながら、一方で感じたのが、便利過ぎると言葉を話す必要性が薄れるのでは、ということ。タクシーに乗る際に、いつまでも紙に書いているのは格好悪いので、大きな声で目的地を告げて、結局運転手には通じたようで通じていなくて、行きたいところとは違う別の場所に連れていかれたり、といった苦労を通じて、語学を習得していったのだ。

言葉というのは必要に迫られた時が一番覚える時である。今の環境では、サバイバル中国語など必要ないであろう。一概に便利なのがいいとは言えないな、とも感じた1週間であった。

【大連の繁華街】
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【ホテルの前の大通り】
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取り溜めた未来世紀ジパング1年半分を視ているのだが、古いものから順にではなく、アジア地域、中国関係などテーマごとに視聴している。その方が、トレンドの変遷が理解できるし、記憶にも定着する。中国関係は、さすがに最多登場で合計10本もあった。アトランダムに、気になったキーワードを記録しておこう。

・ウイグルは民族問題とエネルギー問題の両者が焦点となっている重要な地域。

・剰女=主に都心部で結婚できない女性のこと。

・拝金主義が食の安全などを脅かしている。

・一人っ子政策緩和前には、ロスで出産する女性が増えていた。メリットは3つ。(1)政策違反の罰金を回避できる。(2)米国籍を取得できる。子どもが米国籍だと親もグリーンカードを取得しやすい。(3)食事や空気が安全。

・シャドーバンキング。バブル崩壊。鬼城(ゴーストタウン)。ゾンビ企業。

・山下智博:日本文化を紹介した1分間動画を毎日放送し中国でブレーク。

・雑誌『知日』

・SNH48:AKB48の上海版。総選挙(=人気投票)を実施したが、民主主義的な選挙方式は共産党にとって目の上のたんこぶ。

・中国人が心配する安全問題:(1)食品、(2)医療、(3)環境、(4)交通、(5)社会治安、(6)プライバシー、(7)情報、(8)財産、(9)公衆衛生、(10)学校施設

・インターネットでの隠語:パナマ文書=姉夫、天安門事件=64、89、最近はこれらの数字隠語も規制対象になっているので、「5月35日」や「8の2乗」が新たな隠語に。

・IoTや通信分野で世界の覇権を握る。KUKA買収。5G開発。

・新シンセンモデル。従来の安い賃金による大量生産モデルを脱却し、研究開発拠点へ。


それにしても、未来世紀ジパングは、全体的に中国に対してはネガティブなトーンが多い。唯一肯定的に感じたのは新シンセンモデルの紹介の時。中国の躍進に対する危機意識が強いということであろう。

日経ビジネス[2015.09.07]中国の歴代の国家主席および首相とその在任期間

「中国混乱の責任を問われる李首相」というタイトルでの記事。李克強氏は温家宝氏のように10年首相を務められるか、という副題が付けられた表が掲載されていたので、記録しておきたい。恥ずかしながら李先念などの人物は知らなかった。。。

■国家主席
毛沢東:1954.09〜1959.04
劉少奇:1959.04〜1968.10
 − :1968.10〜1975.01 副主席が代行
 − :1975.01〜1983.06 主席廃止期間
李先念:1983.06〜1988.04 約5年
楊尚昆:1988.04〜1993.03 約5年
江沢民:1993.03〜2003.03 約10年
胡錦濤:2003.03〜2013.03 約10年
習近平:2013.03〜

■首相
周恩来:1949.10〜1976.01 約27年(在任中に死去)
華国鋒:1976.04〜1980.09 約4年5カ月
趙紫陽:1980.09〜1987.11 約7年2カ月(在任途中に退任)
李 鵬:1988.04〜1998.03 約9年11カ月
朱鎔基:1998.03〜2003.03 約5年
温家宝:2003.03〜2013.03 約10年
李克強:2013.03〜


本記事は、「この段階で首相のクビをすげ替えるのことはリスクがあまりにも大きい。だが、2017年の次の党大会まで待って首相の座から降ろせば、党の面目が保たれるという考えもあり得るだろう」と、結ばれている。どこまで現実的かはわからないが、あり得ない話ではない。

日経ビジネス[2015.06.22]エズラ・ヴォーゲル氏・外交では事実認識が大事

中国を含むアジア研究で知られるエズラ・ヴォーゲル氏へのインタビュー記事。(『ジャパン・アズ・ナンバーワン』や『小平』などの著書を執筆)

習近平は若くして福建省長や浙江省党委員会書記を務めるなど、地方では行政手腕を発揮し、高く評価されてきた。しかし、国家主席に就任するまで世界情勢を学んだり国際政治に接したりする機会はあまりなかった。ここが小平とは大きく異なる点。

米国でも州知事から大統領になる人は、行政は経験が豊富で強いが、世界情勢には疎いケースが多い。一方、連邦議員から大統領になる人は世界情勢には詳しいが行政に弱い。

習近平は小平時代と異なり、中国は今や経済面でも軍事面でも大変な力を付けてきており、自身を深めている。国際政治の経験が乏しい一方で自信を持ったがゆえに外交をうまく展開できなかったと私は見ている。

例えば尖閣諸島問題を棚上げしていたら、いろんなことがうまくいっていたでしょう。しかし、自信満々だったから、強気に出てしまった。


なるほど、「自身と強気」。今の中国を端的にあらわしている表現である。南シナ海の埋め立て問題も同じような遠因から発しているものであろう。外交と行政の両立が難しいことも語られているが、だからこそ集団での政治が必要なのだが、習近平に権力が集中しすぎている弊害がこんなところにも出ているのかもしれない。

また、「オーストラリアの元首相で中国語にも堪能なケビン・ラッド氏が今春、中国に関して発表した論文は非常にバランスがとれていていい内容だが、メディアは注目しない」とのコメントもあったので、検索してみたところ、下記のリンクから閲覧可能。残念ながら英語だが、50ページ程度なので頑張って読んでみようと思う。

ちなみに、ケビン・ラッド氏は中国語堪能とのことなので、You Tubeで動画を見てみたところ、なるほど確かに流暢である。自分も中国語のレベルを落とさないように頑張らなければと感じさせられた。

※ケビン・ラッド氏:2007年12月〜2013年9月18日まで首相を務めた。2014年から米ハーバード大学行政大学院(ケネディースクール)のフェローとなり、今年4月に1年かけて執筆したという「U.S.−CHINA 21 THE FUTURE OF U.S.-CHINA RELATIONS UNDER XI JINPIN:(21世紀の米中:習近平政権下における米中関係の将来)」と題した52ページの論文を発表している

海外駐在員キャリアインタビュー

書類整理をしていて発見したコピーの束。2013年1月に、とある会社のインタビューを受ける機会があり、自分のコメントを記事にしていただいたもの。他の方のインタビューも混在している形の記事だが、自分のコメントの箇所だけを記録しておきたい。

・赴任先では部長という職位であったが、部長といいつつ実務を見ていた。それを課長に仕事を任せて、自分としてはあまり細かいところに入り込まず、大きな視点で見られるように、組織や仕事のやり方を変えて、少し余裕が出てきた。

・部下に任せて、「あなたに任せているんだからね。私はもう見ないよ。信頼しているんだからね」とする方が意気に感じてやってくれるし、ミスの発見もやりやすい。

・中国人は、日本人よりもやると決めたらスピードが速い。日本人は議論して議論してなかなか進まないが、中国ではけっこうどんどん進んでしまう。ジグザグだけど進むのが中国だから、斜めのベクトルをうまく上の方に向けていく。

・部下との面談ではざっくばらんに話をしようとしたし、不満は無いか必ず聞いていた。不満は出てきた。最初はでないが、だんだん出てくるようになった。やはり彼らは様子をみている。言ったはいいけれど逆になるということもあるので。ちゃんと聞いて、全部は無理でも少しずつ改善する姿勢を見せるとか、今は無理だけど分かったよと言うとか、その時の受け答えの仕方でも不満の出方は違ってくる。

・中国には発展空間という概念がある。自分が成長できる可能性、発展できる余地があるとき、そこをできるだけ伸ばしてくれるところがいいと考えている。会社のためというよりは、どれだけ能力を高められるかがキーになっている。


読み返すと、そんなこと考えていたなぁと懐かしい。もう一度くらいは、海外駐在を経験してみたいものである。

2014.11.09の日経新聞記事より。中国の鉄道車両メーカーの中国南車集団と中国北車集団の合併構想が明らかになったとのこと。実現すれば中国の鉄道車両生産をほぼ独占する巨大企業が生まれる。国内競争による消耗を避け、海外での高速鉄道の受注を有利に進める考え。

以前は、中国内でも独占企業を分割し競争させていた。南車と北車の2社も旧鉄道省に属する国有車両メーカーが分かれて生まれたもの。再び独占容認に動くのは競争の舞台が国内から世界へと変わったとみているから。世界で競うためには規模こそが物を言うとの見方。

独占・寡占の強みを最初に発見したのは韓国企業。アジア通貨危機を経て、韓国企業はどの業種も集約が進んだ。自動車は現代自動車が約7割、家電はサムスン電子とLG電子の2社だけ。韓国企業は独占・寡占によって国内から上がる利益を設備投資やマーケティングに投じ、世界企業へと飛躍していった。

韓国企業の方向転換は見事であった。アジア通貨危機というやむにやまれぬ事情があったこと、国内のマーケットだけでは限界があったこと(人口規模は日本市場の2分の1程度)を考慮すると、他に道はなかったのかもしれないが、政府主導で一気に業界再編をやり切ったのは、官民が一体となり、改革を断行したからであろう。危機感とリーダーシップがうまく融合した結果。

一方、もっとしたたかなのは中国である。業界の揺籃期にはあえて企業を分割して競争させ、成長を促す。中国国内で力をつけたら再度合併し、世界へ打って出る。しかも、鉄道のような基幹産業は、100%外資系の企業設立が認められておらず、からなず地場企業との合弁が義務付けられている。これにより外資企業は中国マーケットへの切符を手にすることができるが、地場企業は技術を手に入れることができる。

政府の力が強く、一党独裁の利点と言えよう。一党独裁については賛否両論あり、メリット・デメリットの両者があるのは承知の上で、この長期的視野からのしたたかな戦略については、大したものだと言いたい。一方の日本企業は、半導体、液晶ディスプレイなど、じり貧になってからの再編ばかり。勝てる分野での更なる再編が必要なのではなかろうか。

かつてのシンセン駐在時代に、週1回は訪れていた香港。シンセンが私にとっての初めての海外であり、言葉も通じない中国というハードシップ。慣れるまで、香港という土地は、私にとって心休まる地であった。(もちろん、慣れてからは中国のことも好きになったが)

そんな香港が揺れている。香港行政長官選挙に向けて、現状は約1200人の「選挙委員」しか持っていない投票権を広く市民に拡大する一方で、成否が認定した「指名委員」の過半数の支持を受けたもののみが候補者になれるというもの。中国政府の意に沿った候補者以外が経つことは無く、有権者にはほぼ選択権がない。この形式だけの普通選挙の方針が出されたことに対して、学生を中心にデモ運動が広がっているのだ。

ここからは個人的な感想である。中国は香港を怖れすぎているのではなかろうか。昨今のウルムチ地区を中心としたテロ活動や、今でも問題としてくすぶっているチベットの問題など、民族の独立問題を中国政府はひどく恐れている。あれだけ広大な土地を持ちながら、時差の無い国。ひとつの中国に徹底的にこだわっているのである。

そんな中国が妥協的に受け入れているのが、香港とマカオの存在。一国二制度という名のもと、大陸よりもかなり緩やかな法律で運営されている。その際たるものが香港であり、特に外貨送金をはじめとする金融に関する規制は、人民元を守ろうとする大陸に比べると、非常に融通が利く。不正送金などを別にすれば、ほぼ自由といってよいであろう。

そんな香港だが、1997年の返還当初は、中国の傘下に入ることを嫌い、海外移住した人も多いと聞くのだが、その後は、大陸の人々を相手に商売した方が儲かることに気づき、したたかに普通語を操るようになった根っからの商売人でもある。そう、チベットやウルムチと異なり、香港人というのは、ルーツは同じ中国人なのだ。

今や香港が、中国大陸無しでは成り立たないことは香港人が一番よく分かっているであろう。だからこそ、多少自由を認めたとしても、中国から独立しようという動きは、出てこないと考えている。むしろ、中国が王道ではなく「覇道」を目指した時こそが、香港人から愛想を尽かされる時ではなかろうか。ベトナムだのフィリピンだのとのいざこざを起こしている中国。おひざ元である香港でまでこのような騒ぎを起こしてしまっては、むしろ歩み寄ろうとしている香港人との距離を、自ら大きくしているように感じるのは私だけであろうか。

3月の放映なので少し古くなってしまったが、備忘のメモを。中国については、駐在していたこともあり、注目しているし、ある程度の理解はしているつもり。今回のタイトルが三大問題とあったので、「食の汚染」「大気汚染」「金融不安」の3つかなと思ったのだが、金融不安を覗けば、正解だった。

・三大問題は、「食品」「PM2.5」「経済失速」の3つ。これらに加えて「シャドーバンキングや理財商品」「汚職」「テロ・暴動」の問題が加わり、中国は危険な状態。

・GDP成長率が7%台を維持しているが、実際はもっと少ないのではないか? 信頼できる指標は「銀行の融資額」「鉄道の貨物量」「電力消費量」の3指標。

・最近力を付けてきている中国のスマホメーカー小米(シャオミー)。携帯電話には「mi」というロゴが書かれているが、これをさかさまにすると、「心」という文字に見える。




【番組ホームページより】

2012年の尖閣問題や反日デモ以降、外交的に冷えきった関係が続く日中関係。その中国は今、世界経済を揺るがしかねない危険な火薬庫とも言われている。中国経済は危機にあるのか、その真相を探るべく総力取材を敢行。さらに中国の主要都市(北京・上海・広州)で「中国の一番の問題は何か?」緊急インタビューを実施。浮かび上がった中国が 抱える三つの問題。「中国三大問題」その知られざる衝撃の現場に迫る。

少し前になるが日経新聞の7月13日の記事。面白い内容だったので記録しておきたい。記事の後半部分を全文引用させていただく。

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上海市中心部。目抜き通りの南京西路に金色の装飾がまぶしい「静安寺」がある。三国時代の247年に建立した寺を前身とする名刹は日本と浅からぬ関係がある。

時は1953年。静安寺の持松法師が境内に真言宗を伝える道場を開いた。真言宗は、かつて空海が今の狭西省西安にある青龍寺で会得した密教を日本に持ち帰って開いたもの。実は空海が日本に帰ってから、中国では密教が廃れてしまっていた。

その密教を中国でよみがえらせようと日本に渡ったのが持松法師。29歳のときに初めて和歌山県高野山に登って以来、3回、来日して密教の教えを請うた。中国での密教復活の裏には、日中間での仏教交流があったのだ。

だが、静安寺は空海と持松法師がつないだこの交流史を表に出していない。50元の入場券の裏に静安寺の説明がかかれているが、持松法師に絡む記述は1953年の道場開設のみ。ホームページの紹介文にも高野山真言宗の訪問団が1985年に訪れたことは記されているが、日本に渡った密教を再び持ち帰ったことは明らかにされていない。

文化大革命中に破壊された静安寺は1985年に修復され、密教道場も改めて作られた。その道場も今は「改装中で非公開」。交流の経緯を確認しようと静安寺に取材を申し込んだが、回答は得られなかった。

持松法師が訪れた高野山真言宗の総本山、金剛峯寺の広報担当者は「10年ほど前に上海で空海に関する学会を中国側と企画したことがあったが、それ以降は交流がない」と話す。

中国仏教界に詳しい関係者が言う。「中日関係がぎくしゃくするなか、党・政府の上層部門を含めて、あえて日本との関係を公にする必要がないという雰囲気がある」。古代から異文化交流が活発な上海ですら、かすむ一つの史実。日中の政治対立が招いた今の状況を空海はどう見ているだろうか。

衝撃的な内容だった。日経産業新聞の2014.05.08の記事。

手書き書類などの「文字のデータ化」は、ビッグデータ時代に必須である一方、膨大な作業。これを日本企業から請け負うのが、大連などの中国人。1万人以上の作業者が、日本人よりも早く正確に業務をこなす。早く、というのは毎分180字以上、毎秒3字超のハイペース。正確に、というのは誤字率が1万字に1(0.01%)以下であり、日本人の1000分の1の正確性(日本人の誤字率は10字に1字)。

医師の書いたカルテなど、文字が乱筆であっても正確にデータ化していく。これは、乱雑な手書き文字を読み取る能力を鍛え、さらに医学用語を覚えているからだという。「水晶体」「心膜炎」「近視矯正手術」などといった専門用語を黙々と暗記していく。3ヶ月かけて7000語を覚えるという。

日本IBMは中国IBMの大連拠点を使い、東燃ゼネラル石油の経理・人事業務を受託している。100人の中国人が単純な伝票処理に加えて、決算資料の作成や給与明細についての日本国内の社員からの問い合わせ対応までこなす。コストは日本で同等の業務を行うよりも3〜4割安くなる。

中国人のスキル向上とともに受託する業務の種類も広がりをみせており、「間接業務」の域を超えて拡大している。中国全体のBPO(Business Process Outsoursing)市場は2015年に09年比2.6倍の約10億ドルまで伸びるという予測もある。


我々日本人は、このような優秀な人たちと競争していかなければならないのだ。正確性という点では、日本人の方が勝っていると思い込んでいる人の方が多いのではなかろうか。これは実際に聞いた話だが、某銀行では、上海での事務作業の方が、日本での事務作業よりも正確だとのこと。応用が必要な業務については、まだまだ日本の方が優位性を持っているが、送金手続きなど単純な事務処理だけならば、日本人のミス率の10分の1程度だと言う。(記事中の1000分の1はちょっと過大なように感じた。さすがに10字に1字の間違いは起こさないだろう)

私自身、中国に駐在経験を持っており、このブログでも何度か触れてきたが、とにかく中国人のモティベーションの高さには驚かされた。それもそのはず、努力すれば努力しただけ給料が上がるのだ。例えば、数年前の事例だが、日本語が話せるか話せないかで倍半分の給与差が発生する。給料が倍になるなら相応の努力もするであろう。アベノミクスで少しは改善してきたといえ、デフレが続いてなかなか給料が上がらない日本とは大違いである。

しかしながら、これ以上自分の給料を下げないため、自分を守るためにも、もっともっと自己研鑽が必要。危機感を持って自己研鑽している人ほど、こういった世界的な潮流にも敏感で、さらに努力を重ねていくが、自分の置かれている環境に無関心な人は、自己研鑽の必要性すら感じていない。外国人に負ける筈が無いという根拠の無い過信が拭えないのではなかろうか。

日経新聞05.11より。

・中国の人口の90%以上は漢民族だが、ウイグル系、モンゴル系、朝鮮族、チベット族、ミャオ族など、中国政府が認定する少数民族が55存在する。

・その中で、中央政府との対立が続いているのが、ウイグルとチベット。両民族に共通するのは、強い信仰を持つ宗教があること。ウイグル族はイスラム教、チベット族はチベット仏教。

・中国共産党は、もともと宗教を認めず、文化大革命(1966〜76年)の期間中は、仏教寺院を壊し、仏像の首をはねたり、モスクをつぶしたりする弾圧が行われた。

・無神論の共産党と、イスラム教はもともと水と油。79年にソ連がアフガニスタンに侵攻、傀儡政権を樹立し、イスラム教徒を弾圧したことで、社会主義政権とイスラム教徒の溝が決定的となった。

・中国でも、49年の新中国成立以来、ウイグル族、カザフ族、キルギス族などの動きがあったが、中国共産党は軍事的な弾圧、漢民族の入植政策という「ムチ」、財政支援、投資などの「アメ」の2面的な政策でコントロールしようとしてきたが、それが行き詰まりを見せてきている。

・ウイグル族にとっては、テロ行為などの大きな事件を起こすことで、中国政府の抑圧に対する反発、挑戦を世界に知らせる目的があるとみられている。

・中国が、ウイグル族に対して妥協的な姿勢を取れないのは、中国のエネルギー安全保障という大きな課題があるから。新疆ウイグルは、エネルギーの大産出地域であるとともに、カザフスタンやトルクメニスタンなどからの、石油や天然ガスのパイプラインの「通り道」となっているため、強行的な態度をとっている。


ウイグルは中国駐在時代に一度訪れた街。想像以上に都会で驚いた記憶がある。今の治安を考えると、ちょっと足がすくむ。訪問しておいてよかった。しかしながら、実際に街を歩いた経験からすると、土地の人々はとても優しいし、とてもよい街だった。民族の問題は複雑であり、一朝一夕に解決できないことは分かっているが、せめて暴力的な手段は取らずに、解決への道を踏み出してもらいたいものである。結局、困るのはその土地に住む一般の人々なのだから。

ウルムチ・トルファン(初日)
ウルムチ・トルファン(2日目)
ウルムチ・トルファン(3日目)
ウルムチ・トルファン(4日目)

NHKスペシャル。中国が抱える大きな課題の一つとして農民戸籍の問題がある。農民が都市戸籍に変更するのは非常にハードルが高く、農民である内は土地を与えられ耕作権を得ることができるが、年金等の社会保障が非常に薄くなっている。天候等に左右され、重労働である農業を嫌い、都市戸籍を求める人が多いのが実態。私が駐在していた深センでは、一定の勤続年数などを条件に、都市戸籍に切り替えられる人がいたが、その門戸は非常に狭かった。

この大きな課題を先駆的に改革しようとしているのが重慶市。安置房と呼ばれる住居を農民のために準備し、農民を移住させる計画だ。移住した農民は、農民戸籍から都市戸籍に切り替わる。耕作権を捨て、変わりに年金等の権利を受けるのだが、家賃が不要である安置房で暮らす人々は、年金等でそこそこの暮らしができる。

この安置房や、福祉の費用はどこからくるのか? 農民から接収した土地に、企業を誘致し、その使用権や税収からまかなう計画。また、企業誘致は雇用も生む。しかしながら、経済発展の頭打ちにより、企業誘致が思うように進まず、計画は遅延。農民戸籍を捨てたにもかかわらず安置房に入れず、仕事にもありつけずに、細々と食いつなぐ人が多くいるのが実態である。

番組では、3年間待ってようやく安置房に入居できたが、仕事が見つからず出稼ぎにいく家族が取り上げられていた。中国は全国で都市:農村=4億人:9億人という比率を、都市戸籍10億人に変化させようとしているとのこと。急激な変化の影には、多くの犠牲が見え隠れする。出稼ぎに出て行ったお父さんは、今自分が苦労すれば次の世代が楽になる、と歯を食いしばっていた。

日経ビジネス[2013.09.06]エズラ・ヴォーゲル氏インタビュー

先般『トウ小平』を出版した、ハーバード大学名誉教授・エズラ・ヴォーゲル氏のインタビュー記事。『トウ小平』という本には着目しており、そのうち読んでみたいと思っていたのだが、筆者があの有名な『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を書いていた人だとは知らなかった。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』も未読。1979年の執筆だそうだが、今こそもう一度注目されてもよい本かもしれない。

そんなエズラ・ヴォーゲル氏が、尖閣問題は戦争に発展するリスクがあるという警鐘を鳴らしている。このリスクは私自身も懸念していること。日本政府には、したたかな中国に対して冷静な対応を行って貰いたいものである。

一番感銘を受けたのは「取材を終えて」というコラム。エズラ・ヴォーゲル氏は中国で取材を受けるときは中国語で、日本で取材を受けるときは日本語で、と決めているそうである。『トウ小平』の執筆に当たっては膨大な数の中国人にインタビューし、膨大な中国語の資料を読みこなしたという。

生の情報に当たる大切さを思い知らされるとともに、その努力の凄まじさに驚いた。欧米人が漢字を含む日本語や中国語を学ぶのは大変なことだっただろう。一流の方の努力を垣間見ると、自分の努力などたかが知れている、もっと頑張らなければと思わせて頂ける。

■推薦図書■

『トウ小平』
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』

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巷で話題になっている中国のシャドーバンキング。私自身、中国に駐在していたこともあり、中国の状況については、アンテナを高くしているつもり。言葉尻だけでは分かりにくいシャドーバンキングという仕組みだが、きちんと解説されている記事を目にしたので、記録しておきたい。

まず、仕組みだが、銀行が個人投資家に「理財商品」と呼ばれる金融商品を販売する。個人投資家は高利を目的としてこの理財商品に投資する。銀行は、この理財商品で集めた資金を地方政府や中小企業などへ融資する、という構造。

 個人投資家 ー理財商品→ 銀行 ー融資→ 地方政府・中小企業など

銀行理財商品は、「元本保証型」と「元本非保証型」の2種類に大別されるが、前者は銀行の自営業務であり銀行預金金利と同等の年3%程度、理財商品によって調達した資金と運用資産が銀行のバランスシートに計上される。一方、後者は銀行の中間業務として取り扱われており、投資リスクは投資家が負担することが一般的で、銀行は手数料を取る。リスクが高い分、利回りも高く4〜6%程度。元本非保証型の理財商品は、銀行の預金吸収に寄与するが、銀行のバランスシートには計上されない。よって、預金準備金の対象外であり、運用資産も預貸比率規制の対象から外れる。

預貸比率とは、銀行の預金残高と貸付残高の比率であり、中国では金融引き締め政策の一環として、これを75%以下に抑えるよう規制している。つまり、預金100に対して、貸付を75以下にしなければならないのである。このような規制があると、地方政府や中小企業など、資金需要のある融資先への融資に制限がかかってしまう。しかしながら、理財商品を経由しての融資であれば、銀行のバランスシートに計上されず、規制の対象にもならないため、自由な融資が可能となるという仕組みである。銀行のBSに計上されず、公的なものでないことから、シャドーバンキングと呼ばれている。

それでは、なぜこのような仕組みが普及したのであろうか? 2008年の金融危機発生後、中国では4兆元対策と呼ばれる大規模な経済対策が実施され、大幅な金融緩和によるインフレ進行、不動産価格高騰が加速した。また、この4兆元の財源の多くが地方政府負担であった。2010年以降、インフレや不動産価格高騰に対応するため、マクロ政策が金融引き締めへと転じ、銀行の貸出管理が強化された。不動産はもとより、地方政府や中小企業への新規貸出が厳しく規制されるようになった。銀行は預貸比率や自己資本比率などの政府からの監督要求をクリアするために、理財商品による預金吸収に注力したのである。

結果として、シャドーバンキングは、広義にとらえると約30兆元と、GDP総額のほぼ6割を占める規模に拡大したのである。

現在、理財商品は当局の管理監督下に置かれているため、当面、金融リスクを起こす可能性は低いと見られているが、急速な拡大ペースに当局の対応が追いつかず、一部で不透明な取引が行われる等の問題が顕在化している。問題としては次の3つが挙げられる。

(1)理財商品は6ヶ月未満のものが8割を占めている。一方で運用先は社債や信託融資を通じて長期プロジェクトに回されているため、資産・負債の機関にミスマッチが生じている。満期を迎える理財商品の償還資金の借り換えができないような場合、銀行が流動性リスクに陥る危険が生じる。

(2)中国経済が減速する中、投資先の生産能力過剰・債務問題などの影響により、投資収益が約定利回りを下回るような状況になった場合には信用リスクを引き起こしかねない。

(3)シャドーバンキングの資金運用は、不動産や生産設備など政府が規制対象としている分野に流れていく傾向にある。これは、政府のマクロ経済政策の効果を弱めることになる。

中国政府は日本のバブルを徹底的に研究したという。最近の中国経済は踊り場を迎えているが、バブルを崩壊させず、ソフトランディングさせていくためには、非常に微妙な舵取りが要求されている。「上に政策あれば、下に対策あり」の典型とも言えるシャドーバンキング。こういった一つひとつの対策が蟻の一穴となるリスクもあり、まだしばらくは中国からは目を離せない。

帰国後、2週間以内に住民登録を行わなければならないとのことで、役所へ行ってきた。平日の朝だったせいか、30分ほどで手続き完了。同時に、運転免許更新用の住民票の写しも出してもらう。

その足で電車とバスを乗り継いで運転免許センターへ。海外に駐在して5年半。運転免許は失効してしまっている。失効から3年以内であれば帰国後1ヶ月以内の手続きで、適性検査のみで再発行となるとのこと。

海外に駐在していた証明書を、会社から発行してもらわなければならないと聞いていたので事前に免許センターに確認したところ、パスポートを見れば駐在期間が分かるので書類は不要とのこと。本籍が記載されている住民票をパスポートを持参すればOKとのことであった。

適性検査については、ペーパーテストのことだと思っていたので、今更交通ルールの勉強をするのも億劫だと思っていたが、適性検査=視力検査ということが分かって一安心。

しかしながら、日本を離れて長いため、2時間の講習を受けなければならない。また、赴任前はゴールド免許だったのだが、今回は初心者扱いになるので、ブルーの3年免許に逆戻り。さらには、半年間は初心者マーク(若葉マーク)をつけなければならないとのこと。

イチから運転免許を取り直すことを考えると、この程度で済んでまずまずと言えようか。結局、午後3時くらいまでかかってしまったが、1日で公的な手続きが完了し、漸く一息ついた感じ。どちらの手続きもお尻が決まっているのでずっと気になっていたのだ。

後は帰国後の健康診断を受ければ、一通りの手続きは完了。なかなか生活が落ち着く感じがしないのだが、まぁぼちぼち慣れて行くのであろう。

中国から帰国して約2週間。日本の生活に慣れるのに時間がかかるかと思いきや、やはり住み慣れた土地、馴染むのも早い。さほど違和感なく、過ごしてしまっている。

上海では、通勤も地下鉄だったし、通勤時間も現在とさほど変わらない。朝は少し早めに出社しているため、ラッシュに巻き込まれることもなく、まずまず快適。会社内では、どの部署がどの階にいるのかが、まだ覚えきれず、少し迷ったりするが、それもしばらくすれば慣れるであろう。中途入社の方や新人など、知らない顔も随分増えたが、こちらも時間が解決する。

生活面では少し寂しく感じるのはマッサージとタクシーが高いことだろうか。中国にいたときは、どちらも手軽に利用できる便利なもの。今は高くてなかなか手が出せない。まぁタクシーは無くても平気だが、マッサージはどこか安くて上手なところを探さなくては。

うれしいのは本屋と文房具屋が充実していることであろうか。週末は、妻と本屋へ。ついつい衝動買いしてしまい、結構散財してしまった。まぁ本にお金をかけるのはよいことだと考えているので、散財とは言わないか。

時間が経てば経つほど、日本の生活に慣れていくのであろうが、中国で学んだコアの部分は忘れてはいけない。語学もすぐにさび付いてしまうであろうから、とにかくリスニングはスキマ時間を利用して続けなければと思っている。欧米とのテレビ会議などもあるので、英語もブラッシュアップしなければ。

と、まぁやることはいっぱいありそうな日本での生活。日本に安住せず、日本から世界を見つめていければよいなぁ。ぼちぼち楽しんでいきます。

帰国の飛行機の中でこれを書いている。昨日は上海事務所内で最後の挨拶回り。途中で思わぬ温かい言葉をいただき二度程泣けてきそうになった。

今日は同僚が空港まで見送りに来てくれ、またまた感激。それでも涙腺は何とか死守できた。

泣いてしまうともう二度と来れないと予言しているようで。

中国での5年4ヶ月。楽しいことよりもむしろ苦しいことの方が多かったが、振り返るとそれらの困難をひとつひとつ乗り越えてきた経験は、少しだけ自信に繋がったと思う。

最後に中国人の同僚には、「私は中国のことが好きだし、戻ってきたいと思っているが、一方で、ここにいる皆さんが頑張って、私が来なくても大丈夫、安心して任せてください、と言って欲しい」と言い残してきた。

飛行機で2時間。非常に近くて、それでも何となく距離を感じてしまう中国。またこの地で仕事ができるといいなぁ。再見上海、再見中国!

先週木曜日から土曜日まで北京に出張。新システム導入に関する打ち合わせや、新規ビジネスの進捗状況のフォローなどを兼ねて。今回で北京を訪れるのは最後。北京のスタッフにお別れの挨拶をするのも一つの目的。

しかしながら、政府お膝元だけあり、抗日デモの影響が上海よりも大きい。暴動的な動きは内陸部のみであり、さすがに北京で危険な目に遭うようなことは少ないらしいが、タクシーの乗車拒否、日本料理店の営業休止など、上海よりは深刻な様子。

いつもは空港からホテルまではタクシーで移動するのだが、今回は社用車を用意いただくなど、緊張して北京入り。もともと土曜日には、最後の北京なので、訪れるチャンスのなかった景山公園(故宮を見下ろすことができる)と盧溝橋に行きたかったのだが、断念。盧溝橋などもってのほかである。

オフィスに入ると、そこは何も変わることのないいつもの風景。スタッフは気軽に話しかけてくれるし。思いがけない送別品をいただいたりして、とても温かい気持ちに。政府間の摩擦はある程度仕方ないにせよ、人と人とのつながりは変わらない。そう信じたい。

少し目頭が熱くなったが、最後は笑顔でこの街をあとにしたいと思い、我慢。このブログを書いていて、今になって少し涙腺が緩くなってきてしまった。

再見、北京!

帰任後も、それなりに忙しくなりそうなのだが、今よりは自分の時間が持てるのではと思っている。自己研鑽に励みつつ、プライベートの、特に家族との時間も大切にしなくては。

中国へ来て、世界遺産を中心にあちこち旅行したのだが、日本にも世界遺産が16ヶ所ある。京都、奈良などは、小中学生の頃、修学旅行で行って以来なので、記憶から抜け落ちてしまっている。改めて歴史を感じてみるのも一興。その他、訪れたことのない地がたくさんある。休みが取れたら、日本国内を旅して、日本の良さを噛み締めてみるのもよさそうである。

<文化遺産>
法隆寺地域の仏教建造物 - (1993年12月)
姫路城 - (1993年12月)
古都京都の文化財 - (1994年12月)
白川郷・五箇山の合掌造り集落 - (1995年12月)
原爆ドーム - (1996年12月)
厳島神社 - (1996年12月)
古都奈良の文化財 - (1998年12月)
日光の社寺 - (1999年12月)
琉球王国のグスク及び関連遺産群 - (2000年12月)
紀伊山地の霊場と参詣道 - (2004年7月)
石見銀山遺跡とその文化的景観 - (2007年6月)
平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群 - (2011年6月)

<自然遺産>
屋久島 - (1993年12月)
白神山地 - (1993年12月)
知床 - (2005年7月)
小笠原諸島 - (2011年6月)

また、自己研鑽としては、中国語のレベルをキープしたいと考えている。せっかく、それなりに話せるようになったので、向上は難しいにしても現状維持に努めたい。また、英語ももう一度勉強しなおさなくては。

一方で、教養を身に着ける必要も感じている。今、興味を持っているのは「世界史」と「経済学」 世界史については、中国の近代史を学んでいく中で、他の国はどうだったのだろうと興味が湧いてきたもの。また歴史だけでなく、今足元で起こっている「国際情勢」や「宗教問題」などについてもしっかりと頭に入れていきたい。経済学については、大学が経済学部だったにもかかわらず、何も自分の中に残っていないことに愕然とし、再度勉強し直す必要を感じているもの。ちなみに、「ファイナンス」についても、経済学の一環として勉強を深めていきたい。

「世界史」「経済学」+「語学」 以前のように、MBA的な勉強はそろそろいいかなと考えている。仕事上の実務に必要な、法律の勉強などはしっかりとやる必要はあるが、いわゆる「リベラル・アーツ」を磨いて、仕事だけではなく、人生が豊かになるような勉強を、少しずつ進めていきたい。

40歳。不惑といえども、迷いっぱなしの人生に、そろそろ、羅針盤を設けていきたいものである。

ここでは政治的な発言は避けたいと思うが、今回のデモは今まで以上に若者のストレス発散的要素が強いように感じる。少しは落ち着いてきたとはいえ、物価の上昇が続く中国。大学を卒業しても就職できるとは限らず、なかなか生活が向上しない。そんな日常の悩みが爆発したように感じる。

相手は日本でなくともよい。何かターゲットがあれば。愛国無罪という看板をかかげ、半分お祭り騒ぎのような様相をなしているのではないだろうか。それにしても、火を放ったり、店を滅茶苦茶にしたりというのは、やり過ぎだと感じる。中国人が経営する日本料理店なども巻き込まれており、そこにはポリシーなど無いように感じる。

かといって、ここで中国と距離を置いてはいけないようにも感じる。一部の中国の友人は、今回のことに腹を立てているし、今回の事件をきっかけに、ステレオタイプに「中国は、中国人は…」という風潮にならないようにしたいもの。部分否定はよいが、全否定してはいけない。これはお互い様であろう。私は日本が好きだし、中国も好きである。その気持ちは、恐らくよほどのことがない限り変わらないだろう。

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今回のデモ騒動で感じたのは中国政府の影響力の低下。特に内陸部では暴動を抑えきれず、統制力を失っているように感じる。これは非常に怖いこと。一党独裁の是非は置くにしても、今の中国をしっかりコントロールできるのは、現行体制だと思うし、民主化という名のもとに内乱状態になってしまってはいけないと思う。民主化を否定するつもりはないが、要はタイミングと方法が大事ということ。

さらには、日本の影響力の低下も否めないであろう。中国だけでなく韓国とも領土問題が紛糾しているが、これは日本が経済的にも影響力を低下させており、日本など無くても問題ない、と軽んじられている所以ではなかろうか。経済的な面も大切だが、政治面、思想面でもしっかりとプレゼンスを発揮していかなければ、日本は世界の端っこの小国に成り下がってしまうように感じる。

少し前に発生した事例を紹介。中国から海外へ輸出通関を行う際の新たな規制に遭遇。一度に2パターンの規制にひっかかってしまい、ちょっと慌ててしまった。どうも地域差があるようなので、該当しそうな場合は事前に通関業者に確認されることをお勧めしたい。

まず、通常の輸出通関時に提出を要求される書類は下記の通り。

・通関委託書
・INVOICE
・PACKING LIST
・契約書
・核銷単
・貨物明細

しかしながら、最近、これらに加えて次の2つの書類を要求されたのである。

・増値税発票
・授権証

まず増値税発票であるが、これは仕入先から発行されるもの。輸出価格の妥当性を示すためのものであり1INVOICEが10万米ドルを超える場合に要求される場合があるとのこと。

授権証については、偽ブランドの輸出防止のため。著名なブランド品を輸出する際には、メーカーがその輸出を輸出者に対して認めているかどうかを示す証明書が必要となる。

発票の方は比較的容易に手に入るが、仕入先の規模が小さいと発行枚数や桁数に制限があるため、金額が大きくなると一度に準備できない可能性があるので注意が必要。

授権証については、直接メーカーとやり取りしている場合はよいが、代理店や二次代理店など間接的なビジネスを行っている場合、輸出当事者に対して授権証明を行ってもらえない場合もありうるので、こちらも要注意である。

ややこしいのは地域差が激しいこと。同じ上海でも税関によって見解が異なるようである。まぁ、これぞ中国なのだが。。。

週間ダイヤモンド[2012.01.21]特集・あなたは中国経済を信じますか

 少し前の特集であるが、中国経済のことをよく分析してあって面白かった。経済や政治については、他の雑誌などでも特集されているので、今回は米中関係を読み解くキーワードとして紹介されていた「北京コンセンサス」という言葉についての解説を抜粋しておきたい。監修は加藤嘉一氏。

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「北京コンセンサスvsワシントンコンセンサス

 米中の国家戦略の対立構図のこと。いまや米国型の発展モデル、政治体制、新自由主義的な思想が相対的に衰え、”ワシントンコンセンサスから北京コンセンサスへ”と言われることもある。

 ワシントンコンセンサスとは、米国政府やIMF(国際通貨基金)が途上国に対し、貿易自由化や公営部門の民営化といった、いわば市場主義の導入を提言するというものだ。これに対し北京コンセンサスは、一党独裁体制による統制で開発・市場経済化を進めすスタイル。2008年の金融危機以降、欧米の景気回復が遅れるなか、世界第2位の経済力を実現した中国モデルに熱い視線が注がれ、このモデルがアフリカ諸国やベトナムなどのアジア各国に浸透しつつあるわけだ。

 もっとも、最近では環境破壊や賄賂の横行に対し、中国の支援を受けるアフリカ諸国が反発。ミャンマーに至っては11年10月、中国と共同開発中のダム建設中止を発表するなど、北京コンセンサスの見直しの動きも出始めている。

 これらは国際社会における影響力や発言権をめぐる米中の対立といえる。どちらがより多くの地域・国家で支持されるか、米中のレースが今後も繰り広げられそうだ」


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 発展独裁という言葉をよく聞くが、これは中国の様に発展途上の間は政府が強行に開発を推し進めることによってインフラなどを一気に整えてしまう政策のこと。確かに中国では、土地はすべて国家のものであり、高速道路や高速鉄道の敷設にあたっては、かなり強引な立ち退きなどを実行している。その是非は問われるであろうが、インフラなどを整備する国家発展の段階では、むしろ効率的ではある。

 諸手を挙げて賛成はしかねるが、全面的に否定もしがたいこの政策。ある程度インフラが整った後、どのような政策に出るかで今後の中国の真価が問われるであろう。中国政府も、いつまでもこのままでよいと思っている訳ではあるまいし。

 4月14日、中国人民銀行は銀行間直物市場(インターバンク・スポット市場)における人民元対米ドルの日中変動幅を人民銀行が公表する基準値の±0.5%から±1%へ拡大すると発表し、16日から実施した。これは2007年5月に±0.3%から±0.5%に拡大して以来、約5年ぶりのこと。

 このニュースを聞いた瞬間、これは人民元高が加速するな、と感じた。今まで、人民元高に一定の歯止めを掛けるため、1日の変動幅を抑えていたのだが、それが拡大されるということは、中国政府が人民元高を容認したということだと理解したのである。

 さて、私の中国語の先生は、銀行勤務経験がある方。仕事で使える中国語を身につけたいと考え、語学学校に特別にお願いしている。その先生と本件について議論したところ、先生の意見は逆。つまり、中国政府としては過剰な人民元高の要素が払拭されたため、変動幅を緩めても人民元高が一気に加速することはないだろうと判断したのではないかという意見。

 また、私は知らなかったのだが、4月16日には銀行向けに米ドル売りポジションの解禁通達が出されているとのこと。従来、米ドルの売りポジションは禁止されており、むしろ一定の外貨を保有しておくような指導がなされていた。つまり米ドル売り・人民元買いの動きを規制して、人民元高に歯止めをかけようとしていたのである。この外貨保有義務が撤廃され、更には売りポジションが解禁されると、米ドル売り・人民元買いが加速しかねない。このような規制緩和を行ったのは、急激な人民元高は発生しないという自信の表れだと理解しているそうである。

 中国では内需が拡大してきているとはいえ、やはり輸出への依存度も大きい。特に欧州向けは金融危機の影響が未だに尾を引いており、なかなか回復してこない。このような中、人民元高は輸出企業にとってはネガティブ要因となるはずだが、このような状況下にもかかわらず、上記のような舵を切ったということは、人民元高トレンドに変化が起こってきているのかもしれない。

 今までのように、人民元高一本調子だと思い込んでいると、思わぬリスクが発生しかねない。注視が必要である。

日経ビジネス[2012.01.16]「世界の工場」が終わる

 藻谷俊介・藻谷浩介両氏の中国視察。北京→上海→広州と駆け足で。蟻族(部屋でオンラインゲームなどをしてすごす若者)については、日本の引きこもり、ニート、漫画喫茶で生活する若者などを彷彿とさせ、それが日本の何倍にもなるのではないかと、少し恐ろしくなる。

 藻谷氏は、一人当たり実質GDPに注目しているとのことだが、これが一定水準に達すると人々の欲しいものがなくなり経済成長が鈍化する。日本が1万ドルを超えたのが1971年。それまでの20年間は高度成長時代で年平均9.7%の成長だったのが、2万ドルを超える94年まで3.8%成長にダウン。中国は、2015年ごろに1万ドル超えとなり、その後は5%程度の成長率で推移するのではないかとのこと。

 また、2万ドルを超えたあたりから出生率が低くなり人口減少が始まる。中国では一人っ子政策の関連もあろうが、2万ドルに達する前の低水準の「豊かさ」のまま、人口減少に転ずるのではないかと懸念されている。

 もう1つ興味深かったのが、台湾の大手EMS・フォックスコンの戦略。中国での人件費高騰を考慮し、3年以内に100万台のロボットを導入するという。これは、1日1000台ずつという驚異的なペース。ロボットは1台10万元程度、合計1000億元の投資となる。労働者の賃金は年間3万〜4万元程度で、労働者の3年分の年収に相当する。しかしながら、ロボットを24時間フル稼働させれば8時間労働の3倍の生産量が見込める。つまり、10万元の投資が3年ではなく1年で回収できるという構想だ。

 人件費の高騰は裏を返せば購買力の向上を意味する。最新鋭の生産拠点を中国で作り上げ、厚みを増した「世界の市場」に直接供給しようという戦略である。

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 最後にトップページの編集長の視点を引用しておきたい。非常に重要な記事だと思うのでニュアンスを損なわないよう全文引用させていただく。編集長は編山川龍雄氏)

 「世界の工場」。この表現が広く使われるようになったのは、2000年11月に日経ビジネスが「気が付けば中国は世界の工場」という特集を掲載したのがきっかけでした。家電や衣類など多くの分野で中国製品が世界シェアトップに躍進し、品質面でも日本と拮抗しようとしていることを詳報することで、中国とのつき合い方やモノ作りのあり方を抜本的に見直す必要があることを指摘した企画でした。今回あえてその「世界の工場」というキーワードをリセットします。

 特集でも紹介していますが、このまま中国の賃金上昇が続けば、為替次第で、5〜8年以内に日本の賃金水準と肩を並べます。一人っ子政策による労働人口減少も踏まえると、人海戦術で安価に「メード・イン・チャイナ」を作る戦略は早晩行き詰まるでしょう。

 かといって、工場を中国よりも賃金の安いアジア諸国に一斉に移せば済むというほど、事は単純ではありません。賃金が上昇しているということは、中国が消費市場としての魅力を一段と高めていることを意味します。肥沃な市場の攻略を考えれば、生産は“地産地消”で臨むのが基本でしょう。それに工場を中国から逃がし、雇用貢献を果たそうとしない外資企業に自由に商売をさせるほど、甘い国ではありません。

 既に中国政府は「世界の工場」が曲がり角にあることを十分認識しており、次の一手を模索しています。そんな国とどうつき合っていくか。短期的な景気の変調にうろたえることなく、いかに中国市場に橋頭堡を築いていくか。今年は日本企業の腹の据わり方が試される年になります。

日経ビジネス[2012.02.06]”裸管”の汚職を防げるか

 「裸体官員」という言葉を初めて聞いたのは2年ほど前のことだろうか。中国人の同僚と雑談をしていて出てきた言葉。その時、同僚は、お金やコネがある役人は、家族を海外に住ませることができる。その役人が、自分一人でリスクを負い、収賄などで蓄財し、海外に送金する。万が一、本人が捕まっても家族に害が及ばないようリスクヘッジしている、と説明してくれた。

 2012年1月4日、広東省の共産党委員会の全体会議で「配偶者や子弟が海外に居住している党幹部は、原則として党組織のトップや、重要かつ敏感な部門のリーダーに就任できない」と決められたとの記事。中国が汚職社会であることは有名だが、こういった記事が日本のメディアに掲載されるというのは、よほど注目されているということであろうか。アジアのほかの国にもあることだし、日本だってあまり大きな顔はできない。

 役人だけでなく、病院なども腐敗の温床と化しているようだ。そもそも中国では医者の給料がさほど高くなく、付け届けや薬品会社などからのキックバックを副収入にしているそうである。

 しかるべき地位の人にはしかるべき報酬を与えるというのが教科書的な解決策であろう。仕事の重要性に見合わない安い報酬では、やる気もでないし、別の手段に走ってしまうというのは、分からなくはない。しかしながら、人間の欲望にはキリが無く、たとえ報酬を上げたとしても、根絶するのは難しいであろう。少しでも減らすためには厳罰しかないと思う。

 一方で、清廉潔癖だが政治力のない人と、清濁併せ呑む辣腕政治家のどちらを選ぶか、という究極の選択もある。今の日本を見ていると、多少癖があっても日本をぐいぐいとリードした、田中角栄のような政治家が必要なのかもしれないとも感じる。

 何だか取り留めのない感想になってしまったが、私の考えとして、基本的に汚職は徹底的に排除すべき。しかしながら、そうは言ってもという世界があることをキチンと認識しつつ、人の心理をしっかりと理解しながら物事を進めないと、特に新興国でのビジネスは難しい、というもの。何だか歯切れが悪いなぁ。。。

 今日は旧正月の大晦日。私が中国に赴任してからは、規制が厳しくなり、花火や爆竹は控えめだったそうだが、今年は強烈だった。家の前でも花火と爆竹が鳴り響き、轟音が炸裂。ベランダで見物していると、20メートルほど目の前で花火が。爆竹の赤い残骸が風に待って飛んでくる。見る見る間に煙が充満し、大迫力。

 火災の危険があるからということで、取締りが強化されていたのだが、今年は随分と緩い感じがする。爆竹の音を聞き、煙の匂いを嗅ぐと、正月だなという感じになるから不思議。日本だと除夜の鐘の音を聞くようなものだろうか。

 ベランダからのショットを数枚。新年快楽、大吉大利、万事如意、恭喜発財。

春節


春節2

日経エレクトロニクス[2012.01.09]中国リスク攻略・原料依存を超えて

 まずは一部を要約して引用。

・日本メーカーの「6重苦」 1.円高、2.他国と比べて高い法人税率、3.製造業への労働者の派遣規制、4.自由貿易協定への傘下の遅れ、5.温室効果ガスの排出規制、6.震災後の電力不足。

・中国は世界のレアアースの約97%、天然黒鉛の約73%、蛍石の約55%を生産する。

・17元素からなるレアアースは、ネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)がモータ向けネオジム磁石、ランタン(La)やガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)がレンズ向け光学ガラス、ユーロピウム(Eu)やテルビウム(Tb)などが蛍光灯やLED向けの原料として、セリウム(Ce)はガラスの研磨剤として使用される。

・中国はレアアースの輸出規制を鉱山の環境汚染を名目に推進してきたが、現在は「日本メーカーの中国誘致が目的」だとはっきりと口にするようになった。

・日本メーカーの取るべき道は2つに分かれる。1.中国に進出し現地生産に踏み切る、2.日本に留まり対策技術を開発。

・中国に競合がいない日本の部品・部材メーカーは、中国進出を目指すべき。政府からの要求も少なく、合弁会社設立を求められることもないからだ。

・中国進出時の懸念材料は技術流出。工場設立時に、工場の設計図を当局に提出しなければならず、この段階で技術流出が起こる可能性も否めない。

・レアアースの鉱山からは複数の元素が取れるが、一部の元素について代替が進んだり、少量で済むようになると、同時に生産される、他の「代替が利きにくい元素」で元を取ろうと、価格に上乗せが行われる可能性があるという。


 2011年はレアアースの高騰で、私の勤務先も多少の影響を受けた。特に磁石関係は原料費の高騰が著しく、価格面で相当に苦労した。中国のレアアースに限らず、日本の震災、タイの洪水など、一極集中のリスクがクローズアップされた一年だったように感じる。

 「選択と集中」というのはよく聞く言葉だが、「選択と分散」が必要な時代なのかもしれない。戦力の逐次投入、戦力の分散投入はセオリーからするとタブーであるが、もはやこういった常識すら通用しないほど、世界は様変わりしてきているということであろうか。

 昨日、日経ビジネスの中国関連の記事を読んでいて、あれっと思った。中国の人名や地名など固有名詞の上に、カタカナで中国語の読み仮名が振ってあるのだ。いわゆる「普通語」読みで。

 なぜか今までは、中国語読みをする固有名詞は非常に少なかった。すっと思い起こせるのは上海(シャンハイ)くらいだろうか。北京も中国語読みでは「ベイジン」となる。毛沢東は「モウタクトウ」であり、日本人は誰も「マオツォートン」とは発音しない。韓国の固有名詞はハングル読みをするのに、なぜだろうかと、ずっと不思議であった。

 ただでさえ難しい中国語であるが、中国語を無理やり日本語読みしてしまう弊害は結構大きいと思う。初歩的な会話を進める上で、名詞というのは非常に重要。この重要なコミュニケーション・ツールを、無理やりの日本語読みが奪っているといっても過言ではなかろう。

 筆談が可能なシチュエーションであれば何とかなるが、常に紙やペンを携帯している訳でもなく、口頭でのやり取りが必要な場合、たとえカタカナ読みであっても、中国語読みができれば、少しはコミュニケーションが成立するかもしれない。

 そういった意味で、ささいなことかもしれないが、中国の固有名詞に中国語読みが付記されるというのは、非常によいことだと感じた次第。日本においても、それだけ中国のプレゼンスが高まってきたという証左であろうか。

 家の近くに肉まん屋がある。肉まん1個1元(野菜まん、椎茸まん等も同じく1元)、花巻という具が入っていないものは0.6元(6角という)、刀切というこれも具のないパンのような饅頭が0.6元である。

 非常に人気店で、いつも大量の饅頭を蒸篭で蒸している。一度、毎日何個作っているのか、と聞いてみたところ、決まっているわけではない、とそっけない回答。蒸篭の大きさからして、恐らく200〜300個前後は作っているのではなかろうか。原価は半分程度であろうか。とすると、1日の利益が100〜150元程度である。

 こんなので生活していけるのかなぁと、ずっと疑問に思っていたのだが、先日読んだ『われ日本海の橋とならん』で「暇人」の存在を知り、暇人ではないが地元に家を持っていて、1日数十元稼げば、十分に生活していける仕組みが理解できた。

 ここの饅頭は絶品。肉まんも美味しいのだが、刀切という具の無い饅頭が、ほんのりと麦の香りがして、ほの甘く、大そうな美味なのである。時々朝食として買っているのだが、2つで1.2元、15円程度である。うまい、安い、早い(蒸しあがったものが蒸篭で保管されているから、待ち時間無し)の3拍子揃ったお薦めの一品である。

 先日、上海でタクシーに乗った時のこと。おしゃべりな運転手で、仕事が大変だと愚痴を言ってくる。上海のタクシーは1日交代制で、タクシー会社に1日当たり360元を支払わなければならないそうである。これに加えて、ガソリン代は自己負担である。よって、1日500元近くの売り上げがないと元が取れないそうだ。(シンセンは12時間交代制だった。なぜか、夕方6時くらいの退勤ラッシュの際が交代時間で、乗車拒否されることが多かったなぁ)

 近距離だと15〜30元程度、少し走っても50元、空港など遠くまで行って漸く100元を超える程度、というのがこちらの相場である。500元というと、かなり大変。空港から近場への移動でタクシーに乗り込むと嫌な顔をされる訳だ。また、街中でも目的地が近いと「そんな場所は知らない」と、すっとぼけた乗車拒否をされることもしばしば。

 今まで、何だこいつは、と頭にきていたのだが、360元も払っているのを知ると、少し気の毒に。世の中資産を持っている者が儲かる仕組みになっているんだなぁと改めて実感。

 6月に引越しをしたのは、以前エントリーした通り。引越ししていつも迷うのが、散髪をどうするか。シンセン在住の際も、中山公園に住んでいた時も、家のすぐ近くに美容院があり、そこに通っていた。しかしながら、美容院は少し割高。私の頭でも100元弱の値段である。しかも上海では、シャンプーをアップグレートしないか、パーマをあてないか、など営業活動が盛んで、適当にうんうんと頷くと、後から追加で200元、などということになりかねない。散髪するにも必死である。

 そんな中、田子坊近くの今の家の付近は、下町風情を残す落ち着いた雰囲気。近くには2件の美容院と1件の理髪店がある。妻が以前美容師をしていたので、どこがいいかなぁと聞いてみると、店員の手さばきは理髪店のものが一番いいという。2件の美容院はガラス張りで非常に洒落た造り。従業員も多く清潔感漂う店構え。それに比べると理髪店の方は、お世辞にも綺麗な店舗とはいえず、うらぶれた雰囲気を漂わせている。

 まぁここは妻の言葉を信じてみるか。値段を聞くとなんと15元。以前、地元の理髪店に挑戦したときは、事前のシャンプーが10元、カット10元、カット後のシャンプー5元、と言われたとこがある。これが今までの最安値。ところが、この理髪店では前後のシャンプーも込み込みで15元とのこと。これは安い。

 「上は少しだけカットして、横と後ろを少し短めに」と身振りを交えて説明すると、いきなりバリカンを取り出す。あっと声をかける間もなく、右サイドがざっくりいかれてしまった。少しではなく、かなり短めである。安い分、客単価を上げようとしているのか、とにかく手際がいい。ものの5分で角刈りの出来上がりである。「平頭」という頭の角がきっちり90度の角刈りである。さすがにこれはいただけないので、角を取って丸くしてくれとお願いし、なんとか見られる頭になった。

 途中、少しヒヤヒヤしたが、終わってみると悪くない。しばらくは、ここが行きつけになりそうである。こうやって風貌も中国人のようになっていき、また「日本語お上手ですね、どこで勉強したんですか」などと声をかけられてしまうのである。

 先日、中国の外貨管理において「貿易代金決済改革」が発布されたので、ポイントをまとめておきたい。なお、本件は残念ながら大連など一部の地域限定であり、上海、北京、シンセンなどの主要都市では、まだ様子見の段階である。

・簡素化のポイント

1.貨物代金に関する外貨受払手続きの簡素化。
 輸出入代金決済時に従来は通関単、契約書、インボイスとの個別照合が必要だったのが、「いずれか1つ」との照合でOKになる。

2.輸出増値税還付手続きの簡素化
 核鎖単の提出を免除し、外貨入金データのみ提出すればOKとなる。

3.輸出代金の受領は企業が申請したベースで、外貨経常口座への振替や、元転が可能となる。

4.延払規制の90日ユーザンス管理も廃止される。

・企業分類

 A類:外貨の受払が適切な企業
 B類:外貨操作に問題が見られた企業
 C類:違法行為、外貨管理局の立ち入り検査の拒否などがあった企業

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