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犬の譲渡と安楽死を考える

2014年09月11日
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今日、ちょっとうれしい話を聞いた。


ある方が、人慣れしていなくて人間に威嚇をするネコに対して、まばたきしたり顔をそむけたりというカーミングシグナルを出していたら、そばによってきて撫でさせてくれるようになったという。


他の人には慣れていないそうなので、これはカーミングシグナル効果だと思う。


カーミングシグナルは、敵意がないことを伝える礼儀正しい挨拶である。


たとえ相手の動物がはっきりした反応をしなくても、会うたびに必ずシグナルで挨拶していると、「この人は安全だ」と理解してくれる。


わたしは散歩のときに会う近所のネコたちには必ず出しているが、最初は無反応でも、続けているうちにまばたきを返してくれるようになる。


動物にも、愛想がいい個体とそうでない個体がいるが、相手の反応がよくないからとやめてしまわずに、挨拶し続けることが大切だ。


相手がひどく警戒している場合は、もっと距離をとろう。


吠えてくる犬には、そっちのほうを見たりせずに、完全に目線をはずしながら立ち去ると安心する。


もちろん、自分が一緒に暮らしている犬猫たちにも、目が合ったら必ずシグナルを出してあげよう。


さて、昨日の記事で、狂犬病臨床研究会のHPに掲載された、「人道的な犬の個体数管理に関するガイダンスの日本語版」を紹介した。


狂犬病流行地において、犬の福祉を損なうことなく、人道的かつ合理的に狂犬病をコントロールするにはどうしたらいいかという内容である。


狂犬病こそ何十年も発生していないが、2012年度でいえば、年間7万頭以上の犬が収容され、その半分以上が安楽死とはいえない方法で殺されている日本においては、大いに参考になる。


そこで、多くの方に読んでいただこうと、取り上げた次第である。


今日はこのガイダンスの中から、安楽死について紹介したい。


遺棄される余剰犬を出さないためには、犬の個体数を管理することが必要である。


そのためには、不妊・去勢手術によって繁殖自体を減らすとともに、商業繁殖を規制しすることが不可欠である。


これについては昨日取り上げた通りである。


他方、すでに生みだされてしまった余剰犬については、一時保護し、新たな飼い主に譲渡することが推奨される。


ただし、「長期的にみて、ただシェルターを建設するだけでは、放浪犬の問題を解決することはできない」(15ページ)。


というのは、安易な飼育放棄を助長しかねないからである。


また、シェルター運営には費用がかかる。


そこでガイダンスでは、「遺棄の原因ではなく症状のみを治療する譲渡のための施設を作るより、遺棄を減少する方法として、飼い主責任の向上に優先して労力を割くべきである」(15ページ)と結論付けている。


これも全くその通りだろう。


興味深いのは、すでに地方自治体に収容施設がある場合、それを拡充して譲渡をも行う施設として利用するほうが効率がいいと指摘している点である。


施設の設計に際しては、動物福祉のニーズに配慮することが必要だというが、わたしはヨーロッパやアメリカのシェルターを見てきて、こうした配慮が日本に最も欠けていることのひとつだと思っている。


自治体運営方式を日本で採用した場合、地方自治体が費用を負担することになるので、財政状況が厳しいなどと言って拡充や改善が行われにくいという欠点がある。


だが、予算配分は政治の問題なので、有権者の意識次第ともいえる。


また、ヨーロッパ並みに万単位の犬税を課して財源に充てることもできる。


安易な飼育を防止するには、むしろある程度の金額の犬税を課したほうがいいかもしれない。


ガイダンスは、こうした犬の保護・譲渡施設の運用にあたっては、避妊・去勢、譲渡、収容頭数、安楽死にかんする方針を作成すべきであると言う。


たとえば、譲渡に際しては、健康状態と行動を評価するやり方を決める必要があるというが、それは不適切な譲
渡が社会からの信用を下げることになるからだという。


現在日本では、自治体によってあるいは各センターや保健所などによって評価の仕方がさまざまであり、また譲渡先の家庭に関する審査もきわめて表面的なものに留まっている。


これは民間のシェルターでも同様である。


健康や行動に問題があって譲渡に適さない犬や、あるいは譲渡に適した犬でも、「長期間の犬舎生活におい
て、犬の福祉を良好に保つことは非常に困難」(15ページ)なため、安楽死を検討すべきだと述べられている。


日本の動物愛護センターでは、たった数日で殺処分するところもあるが、逆に民間シェルターは何年も狭いケージ生活を強いるところもあり、まさに「犬の福祉を良好に保つことは非常に困難」という状態に陥っているケースもある。


そこで、「治療不可能な病気や、譲渡不可能となるような行動や負傷もしくは、適切な福祉の基準を維持できるほど施設に適応できない動物などを安楽死する必要が生じる」(16ページ)。


もちろんこれは犬を減らすためのものではなく、健康な動物がすべてもらわれていくという理想的な状態に移行するまでの暫定的な措置である。


「安楽死が使われる場合は、動物が苦しまずに、無意識の状態から死亡するよう保障する、人道的な方法が用いられなければならない」(16ページ)。


動物愛護センターでは、長らく炭酸ガスによる苦痛死が行われてきたが、最近になってようやく麻酔方式を導入するところが出てきたというお粗末な状況である。


わたしも何度もセンターに要望したが、炭酸ガスでも「十分に人道的だ」などという驚くべき回答が返ってきていた。


まだまだ炭酸ガス方式のところも多いので、今後の課題である。


それから、アメリカなどの民間シェルターでは、安楽死をしない「ノーキル」を掲げるところと、このガイダンスのように安楽死を許容するところとで、長らく論争が行われていた。


だがわたしは、極度の怖がりや攻撃性があるなど、明らかに譲渡に適さない動物を譲渡された人と犬が、お互いに非常に苦しんでいるという状況を数多く見てきた。


日常的な世話すらも困難な状況では、犬は散歩にも行けずにつながれたり閉じ込められたりして、飼い殺しの状態になる。


これでは犬の福祉を良好な状態に保つことなどできない。


黄道上の問題がある犬を譲渡してしまうことは、その団体の信用を下げ、ひいては譲渡活動自体の信用をなくすことにもなる。


その意味で、自治体にしろ民間団体にしろ、安楽死の問題を避けて通ることはできない。


「ノーキル」や、「殺処分ゼロ」というスローガンは、犬の福祉から目をそらすことになりかねないという点に注意が必要だ。


ただし安易に、あるいは恣意的に安楽死が選択されないよう、行動や健康を評価するための、明確な指針や手順が作成される必要があり、またそうした情報が広く公開されるべきであるとわたしは考えている。


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コメント
投稿者:リンダ(2014年09月12日 10:29) 
おはようございます。
カーミングシグナルについて、オススメの本、
以前ご紹介があったと思うのですが、忘れてしまいました。よろしければ、また教えてください。

それから、9月1日は防災の日、そして昨日は9・11から13年という節目でいろいろ考えてしまいました。グラさんは、たくさんワンちゃんがいらっしゃいますが、同行避難や防災対策についてどのようにお考えですか?
また、準備されているものやオススメの書籍などありましたら、ぜひブログでご紹介いただけると嬉しいです。
グラさんをとても尊敬しています。
投稿者:グラ(2014年09月12日 13:06) 
>リンダさん

カーミングシグナルについての決定版は、やはりT.ルーガスの『カーミングシグナル』です。
これにまさる本はありませんね。

同行避難や防災対策は、居住地区の事情によるところが大きいと思います。
うちは土砂災害危険地域ですが、近所もすべてそうなので、絶対安全な避難場所というのがありません。
空き地はいくらでもあるので、そういう場所で野宿がベストでしょうね。
水はいくらでも湧いているし、不便な地域なのでみなさん食糧の備蓄をしており、火をたくこともできるので、そんなに不便はなさそうです。
投稿者:ララ(2014年09月12日 14:16) 
友人の飼い猫に、飼い主にも猫パンチしたり噛んだりして、なかなか触れない(触られるのが明らかに好きではない)猫さんがいるのですが、その猫さんにカーミングシグナル出したら、同じようにゆっくりまばたきをして、ゴロンとひっくり返ってお腹を出してくれました。撫でて欲しい様子だったので、触ってみましたが、キックもパンチもガブリもなし。
友人が用事があって出かけていて、猫さんと二人きりのお留守番中だったので、無音カメラで撮って送ったら、「飼い主にもお腹なんて滅多に見せないのに!」と非常にびっくりしていたことを思い出しました。

先日、犬の散歩中に野良猫さんと鉢合わせになったときも同じようにしたら、距離がある程度あったこともありますが、香箱になってました。人にも犬にも慣れていそうな猫さんでしたが、通じている感じがなんだか嬉しかったです。愛犬もリード固定で段々と落ち着いてきていて、こちらもほっとしています。
今日、出勤時に、初めて私を玄関まで追いかけてきませんでした。リビングからのお見送りです。保護後、8ヵ月ほど経ちますが、これは分離ストレスが軽減されてきた兆候と捉えていいのでしょうか?


安楽死は考えるだけで切ないですが、安楽死を必要としない、動物の権利が保証された暮らしを作るために、今は避けて通れないのでしょうね。愛犬も、あと数日ホームページを見るのが遅かったら、殺処分されて、ここにはいなかった子です。
投稿者:グラ(2014年09月12日 14:52) 
>ララさん

そうですか!
やっぱりカーミングシグナルは使えますね〜。
動物への思いやりですね。
出勤時の見送りがなかったとのこと、わんちゃんが落ち着いていられるようになったということだと思います。
うれしい変化ですね。
現状は健康で行動上の問題がない犬猫もどんどん苦痛死させられている状態なので、選別基準を明確化して、問題がない犬猫は譲渡できるようにすべきだと思います。
投稿者:ゆいの母(2014年09月12日 21:14) 
グラさん、こんばんは。

貴重な資料をお知らせくださりありがとうございました。
やっと読み終わりました(^^;)

『飼い主が、飼養している全ての動物とその子孫に対して十分かつ適切な世話を提供する義務を有するということが動物福祉の理念である。』・・・飼い主がそのような意識や知識をしっかりもった上で犬を迎え、責任をもって犬と暮らせるよう、動物福祉の理念を正しく理解しているところ(まさにPONOPONOなど)による教育が必要ですね。
このブログをひとりでも多くの人が読んでくれることを願います。

我が犬たちも保護犬で、1頭は怖がりで譲渡対象から外されていたそうで、幸運にもレスキューしてもらいましたが命が終わっていた可能性も大だったわけで、譲渡と安楽死についてのくだりはやはり読んでいて切なくなります。
でも、グラさんが書かれていた『「ノーキル」や、「殺処分ゼロ」というスローガンは、犬の福祉から目をそらすことになりかねないという点に注意が必要だ。』は理解しているつもりです。死ぬよりマシでしょう、と劣悪な環境で犬を保護するのは、動物福祉の理念から外れていますね。
しかし、安楽死の対象に挙がっていた犬たちの原因の多くも、生まれてからの環境や人間の扱い方によるところが大きく、もともとの犬自身の問題ではないことが多いのであろうことを考えると、つらいです。
理不尽な死を迎える子を少しでも減らすためには、昨日の記事に書かれていることが大事ですね。
投稿者:こは主(2014年09月12日 21:31) 
散歩場所に野良猫さんがたくさん居て、姿が見えなくても臭いでワンコが物凄く反応します。

私が先に猫さんを見つけたときは、瞬きして顔を背ける、をしてますが、距離があると視力の悪い猫に見えてるのかな?と感じてます。
足元のワンコはゼーハーしてるので、セットで嫌われてるかなあと切ないですが…。ワンコ的には嫌われて逃げてくれていた方が良いのかもですが。

実際、瞬きってどのくらいの距離の犬猫に見えてるんでしょうね?
顔を背けるのは伝わりやすいかなぁと思うのですが。
投稿者:グラ(2014年09月13日 10:16) 
>ゆいの母さん

この資料はとても参考になりますよね。
保護活動にかかわっている人は必見です。
譲渡対象の選別に際しては、明確な判断基準が設けられるべきだと思いますが、怖がり犬の評価は難しいですね。
マルちゃんレベルだと明らかに譲渡には向きませんが、人慣れしていなかったコンちゃんのような子の場合は、ちょっと慣れたら飼いやすい子です。
また、小型犬は噛み付き癖がなくても、保護直後には恐怖から噛んでくる犬が多いので、それらを全部譲渡対象からはずすのかという問題もあります。
しばらくいい環境の下に留め置いて、ケアしながら様子を見ないと判断できないと思います。
人間の扱い方次第で、殺されていく犬ができてしまうということを、わたしたちはもっと考えるべきでしょうね。
投稿者:グラ(2014年09月13日 10:23) 
>こは主さん

猫に向かってのまばたきはゆっくりしてくださいね。
開いて閉じてで3秒くらいです。
こういうまばたきは薄暗がりでもよくわかりますよ。
瞳の色は毛や肌の色と違っているので、意外とよく目立ちます。
わたしは視力0.6〜7程度ですが、薄暗いところでも猫のまばたきにはすぐに気づきますし、猫のほうも肌色に黒い目の人間のまばたきにはすぐに気づいてくれます。
なお、まばたきの後に顔を背けてあげるとより親切です。
投稿者:ゆいの母(2014年09月13日 13:20) 
明らかに譲渡には向かないというマルちゃん、グラさんと出会えて本当によかったです。
彼は強運の持ち主ですね。
譲渡には向かないという子だって、きちんとストレスマネジメントをしてPONOPONO生活を送れば、お隣さんに喜んで挨拶に行くようにだってなるんですよね。(そこまでマルちゃんが落ち着けたのはグラさんだからというのはあるでしょうが)
譲渡対象から外さなければいけない子なんて、重篤な病気などを除けば、本当はいないということですよね。
最初からPONOPONO生活が送れていたら、遺棄される子自体大幅に減少するはずですしね。
坊主頭さんのコメントを拝見し、とっても嬉しかったです。
投稿者:グラ(2014年09月13日 14:18) 
>ゆいの母さん

マルちゃんはたぶんもともとの性格が警戒心が強いんだと思いますが、もしはっちゃんみたいに室内暮らしで小さいときから散歩に出していたら、問題なく生活できていたのではないかと思います。
閉じ込めたり、やたら厳しいしつけやトレーニングをしたりすると、心が壊れてしまいます。
そういう犬が減って欲しいと心から思います。
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