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二十四節気の続編、今回は大雪です。
今年は12月7日~21日までが大雪です。

ここ飛鳥地方では、11月25日に風が強く吹き、翌26日に少し雨が降り、27日から腫れて温かくなり、27日は最高気温が19℃となりました。ところが12月に入ってから再び風が吹き、それから寒くなりました。1月上旬並みという寒さです。冬のこずえに風が容赦なく吹き付けています。

12月7日の大雪初日の診療では、「表証」の患者さんが多かったです。

「表証」とは裏証と相対する概念で、簡単に言うとカゼ。でも、カゼの自覚症状が全くなくても表証と診断することが少なくありません。皮膚表面に冷えなどの気候変化が入った状態を表証というので、カゼとは重なる部分が多いですがイコールではありません。ここでは、ほとんどカゼ症状がない表証についてお話します。

こうした表証は、意外と頻繁に見受けられるもので、先日、風が吹いて急に寒くなった日、仕事帰りにスーパーに立ち寄った際、レジ待ちの合間に客や店員さんをこっそり望診(目視)で20人ほど診察したところ、4割近くが表証でした。こういう遊びはよくやりますが、気候が安定していても1割程度見受けられます。

「風邪は万病のもと」といいますが、表証が一枚からむかからまないかで、普段の症状に大きな違いが出ます。表証がからむと、例えば痛みや凝りが倍増します。アトピーの炎症もハッキリと急変し悪化します。表証がからむと体の表面の流通が急停止するからです。生命は一つながりの環のようにつながってグルグル循環していますので、表面の流通が悪くなると、即座に他に影響します。

このような表証ですが、多くは治療すると簡単に取れます。すると痛みや凝りの症状なら、多くはその場で緩解します。ただし、体を冷やしたり負担をかけたりすると、またすぐに入られるので、治療当日のお風呂・冷たい飲食物の摂取・運動・無用の外出は禁止です。不安定なのはその日のみで、一晩休むと、翌朝には完全に回復するものです。

「鍼治療のあとは効果を持続させるため入浴や運動はしないこと」と指導する鍼灸師は多いと思いますが、鍼治療のあとは悠々自適であるべきで、さもなければ気機は十全の働きをなしません。禁止事項は余程のことがある時のみだと思います。しかし、このように頻度の高い表証なので、その存在を見破ることができなければ、入浴・運動によって効果が出ない、あるいは悪化するというのは十分ありえることです。画一的に入浴・運動禁止と指導するのも仕方のないことかもしれません。

体は刻々に変わるものなので、体調の変化は付き物です。その変化が、どういう原因で起こったものなのかシックリ来ないまま治療しても効果は上がりません。逆に、その原因かがハッキリわかると、患者さんご自身も日々の生活のありようが成長し、よくなり方がスムーズです。そういう意味からも、表証の診断は不可欠です。

一般に表証は、傷寒論にもある通り、頭やうなじに凝り・痛みを自覚し、さむけがあり、脈が浮く…というのがセオリーです。でも、表証のすそ野は広く、脈も浮かず悪寒もない、うなじもなんともない、そういう場合が少なくありません。初心のころは、これにかなり頭を悩ませました。

僕自身、昔はしょっちゅうカゼで寝込みました。体が弱いので脈が浮かないのが教材として優良だったかもしれません。とにかくそのたびに、カゼをひいたときに共通する法則性を脈で探しているうちに、脈の浮位から沈位のある位置で、推進力の方向が通常とは逆向きになるという法則を見つけました。おそらく衛気が通常の流れ方をしていない状態が脈に反映されているのかと。もちろん、こういうことは教科書的に記載がなく、記載しようとしても伝えるのが難しく、一流の先生方はみなそれぞれ自分のやりやすいやり方を持っておられると思います。

それ以降は、無症状の表証をドンドン見破ることができるようになりましたが、一つ問題が。脈を見せてくれない乳幼児に使えない。それを何とかするために望診に目をつけ、天突付近の気の流れ方(出入)を診ることで割と即座に見破れるようになりました。この望診が先ほどの脈診と符合するか、いちいち確かめながら。印堂のあたりも参考にできますが、天突の方がすべての表証を拾うことができるという印象です。これは天突でなくとも背側の大椎でもできますので、グズっている乳幼児にお母さんに抱っこしてもらいながら治療する時も使えます。治療すると、その場で機嫌よくなることは決して珍しいことではありません。無症状の表証の特徴です。

「カゼひきかけてるよ」というと、「そうなんです!先生わかるの?」という方もおられれば、意外な顔をされる方もおられます。そういう場合は「ここ数日で、変に寒いな、と感じることなかった?」と聞くと、多くは「そういえば…」とおっしゃいます。これは軽い悪寒です。普段の症状がそれ以降に悪化しますので、納得されることが多いです。こういう裏付けもマメにしながら、診断に確信を持つようになりました。

表証の治療で、オーソドックスなやり方は、外関・列缺・合谷・身柱などです。一穴に補瀉を同時に用いる場合が多いです。
滑肉門・天枢・大巨や、太淵・合谷・太白などで正気を補うのみで表証を取ることもあります。
神門・心兪・太衝などで心神を調節して表証を取ることもあります。

2時間での解熱(2才)
39.5℃の発熱(5歳)
営血分の熱(真夏の悪寒発熱・12歳)
腹痛(5歳)
をご参考に。

病気は複雑で、表証をクリアできたとしても、それだけでは当然対処できません。患者さんの声に耳をすまし、手を当てて体の訴える声を聞き、分からないことは東洋医学の歴史に問いかけながら、日々研鑽あるのみです。一本の鍼にすべてを込めるために。


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