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二十四節気の続編、今回は冬至です。
今年は12月22日から1月4日までが冬至です。

大雪期間中は非常に寒かった印象です。12月はこんなに寒くありません。約一か月、季節が進みすぎている感じです。

ここ飛鳥地方での観察にすぎませんが、今年全般的には、季節の進み方は遅かったといえます。春はいつまでも寒く苗代も育ちにくいという声が聞かれ、梅雨の時期には雨が降らずにまるでゴールデンウィークの行楽日和みたいなカラッと晴れた日が続き、お盆になると夜は涼しくなるはずなのに寝苦しい暑さはやまず、過ごしやすいはずの10月は、前半は半そで、後半は秋雨前線が停滞し雨続きでした。秋の長雨は9月20日前後のはずですから1か月の遅れがありました。

ところが、11月に入ると、その時期らしい寒さとなり、11月中旬からは足早に季節が進み、半月から1か月先の寒さとなり、12月に入ってますます寒くなりました。なんという激しさでしょう。

このような変化は、東洋諸国どこでも言えることではありません。その地域々々でそれぞれの気候変化の特徴があり、そこに住まいする人々の体に反映されます。ですから、運気論というのはかなり総論に偏しており、各地域的な各論はそれぞれが構築するものだろうと思います。ただし、各論を考えるうえで、総論は知っておかなければなりません。できる限り総論に帰納しながら展開することが大切だと思います。

それを踏まえ、ここ飛鳥地方での観察を運気論的に説明できるでしょうか。私見だらけですが、やってみたいと思います。かなり専門的な話になりますがお許しください。

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現時点では、季節が前に進まないのは正気の弱り、季節が進みすぎるのは邪気の横暴ととらえています。これはそこに住まいする人々の体に反映されます。

今年は木運不及の年で、肝臓の条達する力が弱く、季節が前に進まない傾向がありました。また11月の立冬から小寒にかけての小運が水運不及となっています。木運不及は肝陰の不足、水運不及は腎陽の不足を意味すると思われ、陰陽ともに不足して陰陽幅が狭まり、急な変化がおこりやすい状態となったことが、季節が急変した原因の可能性があります。もしくは、水運不及という条件だけで陰陽幅が少なくなるのかもしれません。

それに加えて、小雪から大寒にかけて、客気が少陰君火となり、これは在泉でもありますので、かなり強い火ということが言えます。こういう強い邪気が入ってきていることが季節の進みを早くした可能性があります。

まとめると、
●陰陽の幅が少ない + 邪気が強い。

これは人体では、
●脈の幅がない + 腹診(不容あるいは章門)の邪が表現されている
この組み合わせで捉えています。これは通常あまり見受けられず、面倒な組み合わせです。通常、脈幅がないと、腹診の邪がうまく取れません。しかし方法はあります。十二経の正攻法では取りにくいが、奇経を使った奇攻法なら取りやすいことを経験してきました。≫「肋間神経痛」をご参考に。

たとえを試みましょう。源平合戦を思い浮かべてください。源氏方の総大将は頼朝。その頼朝が打倒平氏の大将として立てたのが弟の義経。目下、戦いは義経軍(正経)と平氏軍(邪気)との間で行われています。義経軍は平氏よりも数の上で優位に立っているが、両軍とも兵糧(正気)がないので動けないとしましょう。その戦場に両軍にむけて兵糧が放り込まれるとします。義経軍は数でも力でも優位となり、戦局は決するでしょう。平氏軍も兵糧を得て元気にはなりますが、義経軍に圧倒されてしまいます。

仮に、義経軍(正経)と平氏軍(邪気)は数の上で互角だとしましょう。その戦場に兵糧(正気)が放り込まれると、義経軍も平氏軍も潤うことになり、互角の関係は変わりません。この局面を開く方法…兵糧を戦場にではなく、頼朝(奇経)に届けるのです。そうするならば、頼朝をバックにもつ義経軍は元気百倍、ひそかに援助を受けながら安心して戦うことができます。一方、平氏軍にとってこれは不利な条件でしかありません。義経優位、平氏不利の関係が生まれます。

さて、奇経のどれを使うかですが、陰気が増すこの時期はとくに陰維脈を意識し、それを包括する任脈・衝脈も有効であると考えています。
これを補うだけで、脈幅が生まれ、邪気が取れることを観察しています。
邪気が取れきれなければ、もう一穴使って瀉法も可能です。

さて、これを踏まえて、今の時期…とくに12月の上半期…の特徴に話をもどします。
●陰陽の幅が少ない(脈幅がない) + 邪熱が強い(不容・章門に邪熱がある)
これがこの時期の、複雑な熱証を呈する患者さんの特徴であると思います。特に章門深部下方の邪が最大のポイントで、これは営血分の熱を示します。多くは気営両燔の形をとっており、気分にハッキリとした熱…例えばノド・鼻・耳・目など頭部を中心とする炎症がある場合が多いです。営血分の熱の特徴でもある不眠を伴うことが多いです。
前腕と下腿のほとんどの皮膚がただれた重症アトピーでは、ずいぶんとましになりましたが、手足の末端のみに赤さが残っています。藤本蓮風先生提唱の尺膚診と照らし合わせても面白いと思います。手足末端は空間的に頭部を意味します。
これら炎症を取れにくくしているのが、奥座敷に居座る営血分の熱です。
≫気分・営血分については「足のむくみ(85歳)」をご参考に。
営血分まで邪熱が波及してしまう原因は、おそらく陰陽幅の少なさと邪熱の猛烈さです。陰陽の場そのものが狭いと、邪気は陽(気分)から陰(営血分)にはみ出しやすくなります。

思えば、去年の7・8月にも営血分の熱がホットな時期がありました。この年は1年を通じて水運太過で寒邪が激しい年です。また7・8月の客運が火運太過で、そこに司天が少陽相火という要素も加わり、非常に邪熱が激しい期間でした。この年は気分に寒邪が居座るために激しい邪熱は格拒されて営血分にこもりやすかったと分析しています。この時と今回で共通するのは、小運や客気で邪熱が非常に強い時期だった、ということです。

僕の観察するところですが、営血分の熱をしめす腹証は通常、章門の浅部と深部下方に邪が現れます。また不容の浅部と深部に邪が現れることもありますが、このときは章門の浅部には出ず、章門の深部下方にだけ現れます。これらの深部の邪が曲者で、すべて締め付けるような感覚がある邪熱です。共通するのは章門の深部下方の邪熱で、これが営血分の熱を示すと考えています。

今回の営血分の熱の出方は、はじめてみる特徴が3つありました。
①不容と章門の邪が浅深部とも一度に現れる。
②不容も章門も左右ともに出る。しかも、不容の浅部は気分を示すと思われるが、これも邪熱である。
③脈幅がない。

①不容と章門一度に現れるというのは、気分の邪熱も営血分の邪熱も両方強い可能性があります。
②左右が一度に出るというのは、左右の消長(胆経)が効いていないことを示すと思われます。とくに左右の章門がそろっているというのが問題です。
③脈幅が少ないことは前述したように陰陽の幅が少ないということです。陰陽の幅が少ないと陰陽の境界もひ弱となり、邪熱が営血分に波及しやすくなるだけでなく、腹診の左右という陰陽もそろってしまうのではないかと思います。

治療としては、まず陰陽の幅を増すことが一番になります。ただし、体は邪気を表現していますので、単なる十二経の補法ではなく、奇経を補う形で陰陽幅を増すことが大切だと考えています。陰維脈を使ったり、陰脈の海である任脈、あるいはもっと大本になる衝脈など。

実際の治療では、脈は左右で浮沈の位置が異なることがあります。これはおそらく深浅を支配する少陽枢、つまり胆経が機能していない状態で、これにくわえて左右の章門がそろうと、少陽が二重に機能していないこととなり、境界…任脈・督脈を動かすことが必要となります。こういう状態が多いです。穴処は上脘・中脘がポイントになると思います。熱証に中脘は発想しにくいですが、これで病勢が開きます。

任脈を補うだけで営血分の熱が消える場合もありますが、その後、邪熱が強いと営血分に熱が残る場合もあります。これは三陰交などがポイントだと思います。

脈の深浅が左右でそろっている場合、あるいは、腹診の邪が左右どちらか一方しか出ない場合もあります。これらは、任脈を使わなければならないほど動きにくいものでなく、脈幅を増やす目的で四肢の奇経を補法すると動いてきます。その後、営血分が残れば、二穴の取穴となりますが、三陰交が必要です。

この場合、便法として三陰交一穴の補瀉でも可能です。三陰交は腎経の築賓(陰維脈)と交信(陰蹻脈)の間にあり、陰維脈(表裏)にも陰蹻脈(左右=胆経)にも響くのではないかと思います。陰維脈で陰陽幅を増やし、陰蹻脈で左右の章門を動かし、同時に営血分の熱も取ることができると思います。この時の三陰交は通常の穴処よりやや上部、築賓よりにでることが多い気がします。

もちろん、脈幅が中等度ある患者さんもおられますし、腹診の邪が左右どちらか一方しか出ない場合もあります。これらは今まで経験しているところです。邪が章門のみであれば、三陰交や神門などの一穴に補瀉すると取れます。邪が不容の深浅両部と章門深部であれば、不容の浅部に出る邪の種類に合わせて然るべき穴処に鍼を打ち、少し深部に邪を感じればそこまで鍼を進めるだけで、営血分の熱が取れてしまうこともあります。それでもまだ残っていれば不容の邪が消えて章門浅部に邪が移動してくるので、三陰交や神門などに瀉法すると取れます。とにかく、営血分の熱を体表から伺い知ることがポイントだと思います。

営血分の熱を残すと、気分に熱が出やすく、また陰陽の幅も回復してきません。営血分の熱が取りやすい穴処…三陰交・神門などの邪気をよく見て、これが浮いてくるように治療することが大切だと思います。上手に浮かすとそれだけで取れてしまうこともあり、浮かしさえすれば瀉法も簡単にできるからです。

木運の年に火熱が加わると激しい…そんな印象をもちました。症状に出る人も出ない人もいますが、多数の患者さんが同じような脈の変化・ツボの変化があると思います。生活様式がそれぞれ異なる人たちが同じ変化をするときは気候の影響です。運気論は勉強し始めたばかりですが、続けるべきだと思いました。次はこうなるぞ…という心構えがあるのとないのとでは、対処のスピードが違います。患者さんが気づかぬ間に治してゆく。「未病を治す」という大きな目標に向けて。


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