脳梗塞…東洋医学から見た原因と予防法(以下、前章とする)からの続きです。

脳梗塞の後遺症として見られる半身不随・言語障害の治療は、西洋医学ではリハビリが最重要と言われます。しかし、リハビリは継続がかなり難しいのが現状で、費用の面もさることながら、患者本人の気力・体力が保てないと言われます。

前章で述べたように、そもそも「気陰の弱り」という生命力の重度の消耗が、脳梗塞を起こす土台となっています。意識不明の重い病状をくぐった後に訪れる後遺症期に至り、体力が大きく回復する人もあれば、ほとんど回復しない人もいます。気力・体力がどの程度なのか、厳しいリハビリをこなすレベルにあるのか、ここの判断を画一的におこなってはなりません。

脳梗塞の発症原因となる気陰の弱りは、後遺症期も存続します。この弱りをどのようにして回復させるか。リハビリはその一手段であって、すべてではありません。そういう位置づけでリハビリを行うことが非常に重要です。

この弱りの回復を妨げるものは何か。その理解と解決法こそが、後遺症期における最重要事項です。半身不随と言語障害の2項目について考えます。



半身不随
半身不随では「気虚・瘀血」と「陰虚・陽亢」の2つがポイントになります。両者は多くの場合同時に存在し、どちらか一方が中心となります。

気虚・瘀血
梗塞を起こした際に、風邪によって巻き上げられた瘀血は、後遺症期も存続します。瘀血は湿痰に比べて強固で、経絡の流れをほぼ完全にふさいでしまいます。瘀血は、川に蓄積した汚泥のようなものです。しかし、川の流れが弱いため、それを押し流すことができません。この弱りが気虚です。気とは、栄養機能・推動機能・温煦機能・固摂機能のことであり、血の流通・生命保持の原動力となります。血はそれらの機能をストックしておく場所です。気虚とは気の弱りという意味です。
≫瘀血とは…正気と邪気って何だろう(5)

経絡は気血(生命力)の通り道なので、気虚や瘀血があると、生命力そのものである気血が機能しない状態であり、麻痺側の手足はそういう状態に陥っています。ゆえに力が入らず、血色が悪くなります。

気の製造元は脾臓です。脾臓が弱ると浮腫を起こす場合があることは「浮腫…東洋医学から見た5つの原因と治療法」で説明しました。そのため、麻痺側は浮腫が起こりやすくなります。

気の固摂作用は、生命力が外に漏れないように保持する働きです。これが弱ると筋肉は緩み、口角からはヨダレが流れ、小便が近くなり、時には失禁します。

脾臓を強め、川の水かさを増しながら、タイミングをみて瘀血を除去する治療を行います。
脾臓を強めて気を増すことを益気と言います。瘀血を除去することを活血と言います。
≫東洋医学の脾臓って何だろう

益気…脾臓を強め、気を生産し血を強くする。
●鍼灸治療…脾兪・胃兪・公孫・太白など。
●運動療法…適度な運動がどのくらいか脈診で診断し指導する。体が発する声を聞くためには高い技術が必要。適度な運動は益気につながる。過度の運動は気虚をひどくし逆効果となる。
●食事療法…糖分・油脂分の過度の摂取を控えるよう指導。食べ過ぎは気虚をひどくしたり、さらなる副産物を生んだりして悪化の元となる。多くはストレスから過食となりやすいので、ストレスを緩める治療を同時に行い、自然と健康食にしてゆくことが重要。無理な食事制限を強いるとストレスを生み、さらなる陽亢を生む。

活血…脾臓がある程度のレベルまでくれば、瘀血を取る。
●鍼灸治療…臨泣・三陰交・血海など。

益気と活血を根気よく繰り返すことで、麻痺側に気血を充実させていきます。



陰虚・陽亢
前章で述べたように、陰虚陽亢は頭部に風を巻き上げます。このとき、上昇する熱風が激しすぎると、血を巻き上げながら頭部に吹き付けます。その際、血を熱風で乾かし、血を瘀血に変化させながら上昇します。上部の経絡が瘀血でふさがってしまうと、麻痺が起こり、半身不随となります。

陽亢で熱が上に昇るので、顔や唇が赤くなります。長嶋茂雄名誉監督の近況は、脳梗塞前に比べて明らかに顔が赤いですね。陽亢がある証拠です。その他、陰虚陽亢に好発する症状として、めまい・耳鳴り・不眠を伴うことがあります。

一方、陰虚がひどいと腎精不足という状態になります。これは「めまい…東洋医学から見た6つの原因と治療法」で学びました。陰は血+クールダウン機能なので、腎精不足+血の弱り(血虚)という状態が起こります。骨は腎精によって補充されており、筋肉は血によって補充されています。腎精と血が弱ると、骨がもろくなり、筋肉が萎えてしまいます。これは半身不随が治らないベースになります。この場合は、リハビリよりも陰を養う治療が優先されます。

治療は、陰虚陽亢の治療を行います。
百会・合谷・後渓・行間・照海・大巨・関元・陰谷・腎兪など。
くわしくは、「頭痛…東洋医学から見4つの原因と治療法」をご参考に。


言語障害
言語障害では風痰と陰虚の2つがポイントになります。両者は多くの場合同時に存在し、どちらか一方が中心となります。呼び名は変わりますが、陰虚陽亢がベースになっていることが、以下からお分かりいただけると思います。

風痰
陰虚陽亢による上昇気流の風とともに、湿痰が頭部の滑舌に関わる処を侵すと、言語障害が起こります。滑舌は、読んで字のごとく、舌がよく滑る。これを粘着性が特徴の湿痰が侵す。ろれつの回らないしゃべり方は、湿痰が原因です。この湿痰は、もともと飲食不養生で、体内にためていたものと、上に立ち昇る熱風で体液が蒸し乾かされてできるものとがあります。どちらにしても、湿痰が激しく熱化すると上に上昇します。これを風痰と言います。
≫湿痰とは…正気と邪気って何だろう(3)

百会・合谷・豊隆・公孫など。
陰虚
陰には筋肉を潤わせる作用があります。この作用が弱り、舌の筋肉が養えないと、滑舌が悪くなります。

腎兪・照海・大巨・関元・陰谷など。



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