眞鍼堂|奈良県橿原市の鍼灸専門治療院 大和八木駅から徒歩7分

一本鍼が鍼灸の力を最大に発揮。奈良県橿原市で本格的な東洋医学を実践する鍼灸院。肩こり・腰痛はもちろん、うつ・パニック・めまい・アトピー・喘息・不妊症・PMS・更年期障害・発達障害など、全科に対応。

実際の治療例①

31歳男性。

「8歳から花粉症で、28歳で蓄膿と言われました。」
つらそうな鼻声。
「ふくらはぎが重くてだるいんです。」
「ふくらはぎが重いのも、鼻が出たり詰まったりするのも、モタモタした水が原因なんですよ。」
「モタモタした水?」
「水は人間にとってとても大切なもの。でもサラサラ流れていれば生命エネルギーになるけど、モタモタし出すと生命の邪魔をする物質になるんです。これを湿痰と言うんです。」
「へえ」
「水は下に流れるでしょ。だからふくらはぎが重くなる。では鼻に昇ってくるのはなぜか。これはです。火は上に昇るでしょ。熱が湿痰と結び付くので鼻に行くんです。」
まず、熱を取る処置。神道・左右の心兪に鍼。
その後、湿痰を取る処置。右豊隆に鍼。
「どうですか?」

5歳の男の子。
お母さん、今日の昼に発熱に気づく。
検温38℃
いつもよりも元気なく、おとなしい、とのこと。
ここ最近、急に朝晩が寒くなり、注意が足りませんでした、とのこと。
食欲はいつも通り。ということは表証が中心とみてよい。

外関に両掌を触れる。左右差がはっきりしている。表寒の可能性。
太淵は発汗なし。上背部はうっすら発汗している。マオウトウ証かケイシトウ証か判別しがたい。
脈を診る。やや無力。浮いていないが表寒がある。女脈。四霊(滑肉門・天枢・大巨)もしくは胃兪・三焦兪・腎兪の可能性。
腹を診る。反応が弱いのでと断定。臍の左上の前に反応。左滑肉門の可能性。
左滑肉門に手のひらを触れる。反応あり。このツボで効く。

滑肉門に金製古代鍼をかざす。

脈を診る。浮いてきた。だが無力。

不容夢分流打鍼術

脈を診る。非常に力のある堅い脈に変化。
腹を診る。反応が強くなった。と断定。マオウトウ証がでてきた。

合谷に金製古代鍼で軽く叩く。

脈を診る。緩みがでて推進力がある。
外関に触れる。左右差がなくなっている。

「痛かった?(^^)」
「…。」首をかたむけて、笑っている。
「これで今晩、すこし汗をかくといいんですけど。でも無理にかかせないでくださいね。自然に、うっすら汗が出ますから。熱はまだ高くなるかもしれません。ウィルスを殺すには熱が必要なので、体が必要と判断すれば熱が高くなると思っておいてください。それから今日は冷たい飲食はダメ。頭も冷やさないでください。風呂は当然ダメ。冷えが原因なのでね。あとはいつもどおりでいいです。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一週間後、「翌日には、もう普通に元気でした。だから熱ははからないままです。もう必要ないかなって感じだったので(笑)」とのこと。



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腰痛

30歳男性。

「一カ月前に、重いものを持って、ギックリ腰になったんです。接骨院に通っているんですけど、痛みがましにならなくて…」
とのこと。

「なかなか治らないんですね。痛みはどの辺?左とか右とかあります?」
「この辺です。全体が痛いです。」
「どんな痛みですか?」
「重いような痛みです。実は、腰が痛くなると、いつも下痢になるんです。腰が治ると下痢も止まるんです」
消化器と関係のある腰痛であることは明白。
「間食は?」
「よく、お菓子なんかを食べます。ストレスがあると特に量が増えます。」

腰痛は以下のような分類がある。
①気滞血瘀
②湿痰
③脾虚
④腎虚
⑤痹証

重いものを持ち上げ、突然痛くなる、いわゆるギックリ腰は、①に分類される。
①の痛みの特徴は、突っ張るような痛み、または刺すような痛み。
多くは左右どちらかが痛みます。
今回の腰痛は、一か月前に痛めた時は、たぶん①の状態でした。
しかし、治りにくかったのは、もともと間食が多く、体に「湿痰」と呼ばれる副産物をためていて、ギックリ腰で腰の気の流れ(循環機能)が悪くなった所に、湿痰が影響したものと思われます。
湿痰がなければ、一か月も痛みで苦しまなくても済んだかもしれません。
よって今回の腰痛は②の湿痰型と診断しました。

豊隆に鍼を一本打つと、腰をかがめることができるようになりました。
翌日には完全に良くなった、とのご報告を頂きました。

豊隆は湿痰を取り去るツボです。
湿痰が原因ならば、どんな病気にでもよく効きます。
もちろん湿痰が原因でなければ効果はありません。
この患者さんも、一か月前にギックリ腰をやったときならば、豊隆に鍼しても効かなかったでしょう。

6歳の女の子。
あと数日でピッカピカの一年生です。
女の子のおじいちゃんは、開業以来の患者さん。
もう20年近くのお付き合いです。
「孫がね、おしっこが近いんですよ、治りますかね。」
「どんな感じでトイレに行きます?」
「すぐにおしっこに行くんですわ。へたすると10分おきに。聞いたら、1週間か2週間も前かららしいんですわ。」
「へえ、それはひどいですね。」
「春休みで、こっちに帰って来ててね。これ、ちょっとおかしいで、いっぺん、先生に聞いてみるわ、ということで。」
「ああ、1回来てもらってください。こっちにはいつまで滞在ですか?」
「家は京都なんですけど、あさって帰るっていうから、明日、診てもらえますかねえ?」
「ハイハイ、分かりました。」
.................................................
翌日は3月31日。
お母さんとおばあちゃんに連れられて来院。
入ってくるなり、トイレ。
よくしゃべる元気な女の子。
「たぶん、小学校へ行く緊張からかもしれませんね。ハイ、べーして(^^)」
白膩苔。いくらか(消化・吸収・栄養分配機能)の弱りがある。
舌の先が赤い(舌尖紅刺)。上で気滞がある。緊張のせいだろう。
中脘に金製の古代鍼をかざす。
その後、夢分流打鍼術。これを、みぞおち中心に処置。上半身の気を廻らすのが目的。
「緊張のせいで上に気が偏り、そのため下が弱くなって、おしっこが近くなるんでしょう。もともと消化器もやや弱めなので、それを修復できないんだと思います。冷たいものとか、お菓子は控えめにね(^^)」
治療後、いろいろ御説明し時間をとったが、トイレにいかず。
………………………..............
それから2週間後、おじいちゃんが診察に見える。
「こないだ、孫ありがとうごさいました。あれから、おしっこ止まったそうです!一発で効いたらしいです。」
「そうですか?それはよく効きましたね。一回しか診てないから、どうかと思っていたんですけど。でも、子供さんの治療は驚くほど効く事が多いんですよ。我々大人と違って、素直なんでしょうね。」

........................................................ 
その1年後、その女の子のお母さんの友達の子供さんが脳性麻痺とのことで、おじいちゃんから相談を受けました。
「以前は孫がお世話になって。それで、脳性麻痺にも鍼は効きますか。」
「ハイ、効きますよ。治療は早ければ早いほどいいと思います。おいくつのお子さんですか?」
「一歳半くらいらしいです。」
「なるほど、ではそうお伝えください。」
「孫ね、あれから一回もおしっこが近い、ってことは無いらしいですわ。本当に助かりました。ありがとうございました。」



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「どうされましたか?」
「4日前に、夕食で舌を噛んでしまって…。それから口内炎ができて、食べにくいし、しゃべりにくいんです。」
「舌を見せてください…。あれ? 舌が歪んでますねえ。口内炎はここか…。うーん、これは…。」
脈を診る。数十時間以内に、体に大きな異変がおこる予兆を察知。
「舌が左側に大きく曲がっているんですよ。このような舌を「偏歪舌」というんですけど、脳梗塞の前兆である場合も考えられるので、注意が必要なんですよ。口内炎で食べにくいんじゃなくて、舌が曲がっているから舌をかむんです。」
「悪い病気なんですか?」
「いや、これから治療して、未然に防ぐから大丈夫。」
左右の太衝に、手を当てると、左右のツボの反応が約5秒ごとに入れ替わる。あまり見られない現象だ。がそうとう不安定になっていると診てとる。
「なんか、大きなストレスとか、ありませんか?」
「いやー、ストレスですか…。さあ…。夜寝るのが遅くなるんですけど、これもストレスというでしょうか?」
「もっと早く寝たいですか?」
「寝たいです…。けど、孫の塾の送り迎えをしないといけないんで…。孫が帰るのが10時半になるから、それから後片付けすると、12時は回るんです。」
ストレスらしきものがないというのが本当なら、太衝の反応は睡眠不足が原因か。
神闕(おへそ)中心に夢分流打鍼術を行う。
脈を確認すると、先ほどの異変の前兆は消えている。
「これで大丈夫ですよ。ただし、今から24時間は、気の張ることは避けること。後日に回せることは、後日に回して、ゆっくりすることを心がけてください。それから、睡眠不足が体にかなり影響している可能性がありますから、ちょっと確認しますね。」
脈診で確認。現行の就寝時間では悪化、10時に就寝すべきとの判定が出る。
「やっぱり睡眠不足が大きいと思いますね。いま、悪化直前の状態を、鍼で通常の状態にもどしました。ただし、睡眠を改善しないと、また悪化直前の状態に戻ります。三日間は10時に寝てください。それが無理なら今日だけでも10時に寝てください。」
「そんな悪いんですか。」
「○○さんは過去に3回も突発性難聴をおこしてるでしょ。普段から突発的な喉の強い炎症も起こしておられる。もともと頭部に異変が起きやすい。今回はちょっと気をつけた方がいいです。」

2診目(1週間後)。
「特に変わったことはありませんでした。治療していただいた日は、がんばって10時に寝ました。」
舌のゆがみは変わっていない。脈診は悪化の前兆なし。太衝の左右の入れ替わりはなく、肝は安定してきたと診る。
「前回は脳梗塞の可能性もありましたが、もう大丈夫です。ただし舌のゆがみは残ってますね。舌下神経麻痺で落ち着いたと言っていいです。今日は舌下神経麻痺の治療をやっていきますね。」
舌下神経麻痺という病名はあまり聞かないが、顔面神経麻痺ならご存知だろうと思う。舌下神経も顔面神経も、脳から直接出た神経で、脳神経という。これらの神経麻痺と脳卒中は、東洋医学的には同じ種類の病気として扱う。重症度がちがうだけなのだ。肝・腎のが虚の状態と診断。陰という正気が虚になる(少なくなる)と、熱がおこる。陰には冷ます働きがあって、それができなくなるからだ。この人の場合、慢性的な睡眠不足が陰(休息・静止)の不足につながっている。熱がおこると風がおこる。これは自然界の現象だが、人体にも同じ現象がおこると考える。熱による風は上に舞い上り、風という不安定で移動しやすい性質をもつ病変として現れる。たとえば麻痺・震え・痙攣などは、風(ふう)が原因として疑う必要がある。陰の不足は舌にも表れており、舌の左側の根元に直径1センチほどのハゲがある。陰が補われたら、コケがはえてハゲがなくなるはずた。

早めに床につくよう指導を行いながら、肝と腎の陰を補う治療。左照海に鍼。

3診目(1週間後)
少し歪み方がましに見える。舌のハゲは境界線がぼやけてきた。できるだけ早く床につくようにしている、とのこと。ドライアイの目薬を常用しているので、止めるよう指導する。目薬などで疲れをゴマ化さず、目がつらいなら目をとじて疲れをとるべきだと諭す。

左照海と百会に鍼。
前回同様、照海で肝腎を補い、風(ふう)そのものを取り去る百会を加える。

4診目(1週間後)
舌がまっすぐ伸びるようになった。舌のハゲは完全に消失。食べにくさ、しゃべりにくさ、なし。



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めまい(頭位性めまい症)

71才のご婦人。

「どうされましたか?」

「一月前から、めまいがするんです。」

「どんな時、めまいがします?」

「寝返りの時です。とくに仰向けになると落ちるような感じがします。それから座っていても上を向くとめまいがするし、スーパーなんかで左右を忙しく見る時もそうなるんです。」

「歩いている時は?」

「歩き始めはふらつきます。でも歩いているうちに無くなります。」

「普段から頭が重いとか、体がだるいとかはありますか?」

「いえ、それは無いです。」

「何か原因で思い当たるようなことはありますか? たとえば気を使うことがあったとか…」

「ハイ、親戚が集まって、一週間ほど私の家にいたんですけど、みんな帰ってから、めまいが出たんです。疲れたのかな…」

「そりゃ、気を使いますよね。食欲は変化出ました?」

「いえ、食べるのはおいしいです。」

「なるほど、分かりました。」

東洋医学的に、めまいは

①肝鬱気滞

②肝陽上亢

③湿淡中阻

④気血不足

⑤腎精不足

のパターンに分けられます。

このうち、②と④と⑤は体力の弱りを示します。この患者さんの場合、歩いているうちにましなるので、②、④、⑤ではありません。

また、食欲があり、頭や体の重さを感じないことから、③も否定できます。

可能性が高いのは①の肝鬱気滞。これは、ストレスが原因で肝臓に異常が起こった状態。めまいがおこる前、気を使うことがありましたので、おそらくこれが原因。

ただし、老齢なので②・④・⑤は一応意識しつつ治療を行う必要があります。

ストレスで肝がダメージを受けると、気滞が生じます。

=機能…循環も含めた機能がある場所で停滞すると、上下のアンバランスや左右のアンバランスが、当然起こってきます。

これがめまいの原因です。

体を見ると、臍の左上に圧痛があります。これは体の左上の気(機能)が停滞していることを示します。

後渓に手を触れると、ツボの左右差がハッキリしています。

この方の場合、左の後渓の反応が強く出ていました。

後渓は肝鬱気滞によく聞くツボです。しかも手のツボなので「上」、しかも「左」に反応があります。

効く条件は整いました。左後渓に鍼を一本打ちます。これを計4回、半月間治療。

4回目来院時、症状を聞くと、「1週間、めまい無く、調子よかった」とのこと。
                                                       
                                                     




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左肩関節痛

44歳の女性。
「10日前から左肩が痛くて、夜中に痛みで目が覚めるほどだったんですが、法事が親戚であって、帰りの車でうたた寝してしまって、、目が覚めると、その痛みが強くなって…。日中も痛いんですが、前にもまして夜中が痛いんです。」
「うたた寝はいつですか?」
「4日前です。」
「目が覚めた時、寒気はなかったですか?」
「とにかく、痛くて、どうしようってなったんで、あまり覚えてないんですが、そう言えば、寒かったかも…。」
「10日前から痛いのは何か思い当たる原因は?」
「自宅で法事があって、忙しかったんです。気も使うし…。」
「自宅の法事のすぐ後に親戚の法事か…。ちょっと重なりましたねえ…。」
「ハイ…。」
「その他の症状は?」
「胃が弱くてゲップがでます。あと、食べ過ぎるとすぐに胃が痛くなります。それから、体がだるい…。」
「ストレスでお腹にきますか?」
「ハイ、ストレスがあると胃が苦しくなります。それから、緊張すると下痢と便秘を繰り返すんです。生理前にもそうなります。お腹は若い時から弱いんです。」
「なるほど。まず、カゼを引いていますね。カゼのとき、体の節々が痛くなることがあるでしょ? 同じカラクリで、肩や腰や膝などの痛みが、カゼが入ることでひどくなることがあるんです。まず、それを治療しますね。」
「はい。」
「うたた寝でカゼが入る原因になったのは、体の抵抗力が落ちているから。その原因はストレスによる気の停滞(機能の停滞)と、消化器の弱りです。」
「そうなんですか。」
「消化器とストレスによる気の停滞は、シーソー関係にあるんです。」
「?」
「消化器を強くすると、気の停滞が取れる。気の停滞が取れると痛みも取れてくるんですよ(^^)」

初診の治療は、
申脈・左後渓に2本鍼を打つ。
気の流通を図り、カゼを追い散らすツボの配合。同時に脾臓(消化器)も助ける作用がある。

2診目
「痛み、ましになりました。うたた寝する前の痛みの程度になってます。昨夜は2回しか目が覚めませんでした。」
「うん、もうカゼは治ってますね。」
公孫に一本鍼。
公孫は脾をバックアップする。それにより、肝の気滞がオートマチックに取れる。肝は左右の問題を起こしやすく、肩関節は左右のバランスを崩したことによるものなので、肝が正常に働くと肩の痛みに効いてくる。ただし、脾の弱り=体力の弱りなので、治療は少し根気が要る。

3診目
「前よりも肩が動かしやすくなりました。良く眠れるようになりました。でも朝起きた時が痛いです。食欲が出てきました。」
4診目まで治療同前。

5診目
「肩の痛みは無くなりました。胃の調子はましになってきてるけど、まだ気になります。」

「先生、寝ていると右肩がうずくんです。」
 
「夜はうずきで目が覚めますか?」

「こうして寝ててもね、うずくんですよ」

「刺すような痛みはあります?」

「動かしてもこうしたら…。いまもこの辺が…」

「どんな感じでうずく?例えば重い感じとか、つっぱる感じとか、刺かような感じとか…」

「こうしてると痛いんです。」

「昨夜は眠れなかった?」

「いや、寝るのは寝ましたけど…」

「寝られんほどの激痛ではないんやね」

「いやー、でも痛いですよ」

「ウーーン、あのね。いま、瘀血の痛みかどうかを疑って聞いているんですよ。瘀血っていうのはね、つまり、血と言うのはサラサラ流れていたら体のエネルギーです。でも、それがもたもた動きだすと、そのエネルギーの邪魔をするものになる。それが瘀血なんです。瘀血の特徴はね、刺すような激しい痛みが夜にひどくなる特徴がある。あと、可能性があるのは湿痰の痛み。重いような痛み肩をするのが特徴です。それから気滞。これはつっぱるような痛み方をする。これらのうち、どれが中心となって肩の流通が悪くなっているか、診断する必要があるんです。だから色々聞くんですよ。」

「そうですか。いや、刺すほどの痛みではないです。つっぱる感じもあるし、重い感じもするなあ」

「なるほど。」

左の陰谷に鍼をする。二十分後、鍼をぬく。

「先生、右肩、もう痛まないですわ。」

「そうですか。○○さんは、もともと気滞と湿痰がある。そこにたまたま右肩の筋肉を痛めたんやな。で、その気滞
と湿痰がそこに影響して痛みが出たんだと思います。いまは気滞を取っただけで、湿痰も芋づる式に取れました。気滞が中心だったということです。」

「先生、自然に痛くなってきたんです」

「ウン、肩関節ってね、肘とか膝の関節よりも色んなところに動かせるでしょ。だからその周りの組織はよく傷がつくんですよ。だから炎症を起こしやすい。五十肩の正式名称は肩関節周囲炎ですからね。若い人でも、しょっちゅう肩は痛めているんです。でもね、若い人はそれを治す力が強いんですよ。」
 
「年をとると治らない?」

「そうそう、でも大丈夫、本当に年をとると、痛みませんから。炎症を起こす力も無くなってしまうんです。」

「そしたら、私はまだ若いってこと?」

「そうそう! でも炎症を自分で治す力は無いんです。中途半端なんですね。昔は四十肩って言ったんですけど、平均寿命が延びてから五十肩っていうようになったんです。いまは六十肩っていわないとイカンな。」

「私もう七十やで」

「お!若い証拠やん!でも『気だけ若いけど体がついてこない』ってなったらアカンよ。中途半端な年代におこる五十肩にはそういう戒めがあるんですよ。体は必ず老いる。では、気をどのように持つべきかってことやな。しかも…『きれいやなあ』『いとおしいなあ』『ありがたいなあ』…こういうみずみずしい若々しさは忘れずにね。」



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「失礼します。」

「おはようございます、お願いします。」

まず脈を診る。沈んだ脈。腎が問題か。

腹を診る。機能の弱りが診てとれる。

弱りが主体なので体力を補う必要がある。腎の可能性が増す。

もともと、精神的緊張の強い患者さん。

喉の渇きも常にある。舌はいくらか乾燥。

これらはすべて熱をしめす。

心身をクールダウンする機能が弱っている可能性が高い。

心身をクールダウンする働きは、腎の一部だ。

この働きを腎陰といい、その働きが低下するのを腎陰虚という。

腎陰虚に効果のある「照海」に触れてみる。

左右の差が大きい。

右のツボが充実し、沈んでいる。

左側の照海は空虚で、触れると浮いてくる。

この左のツボは効きそうだ。

腎陰虚に効果のある「陰谷」に触れてみる。

浮いてこない。このツボは効かない。

「ハイ、うつぶせになって。」

腎陰虚に効果のある腎兪を診る。

左が空虚で右が充実している点は照海と同じ。

ただし、触れても浮いてこない。このツボも却下。


「今日は調子は?」

「こうやってても足がだるいんです。」

「どの辺?」

「ふくらはぎ…」

「左右は?」

「両方です。」

「両方ね…」

どちらか一方がだるければ、湿濁の可能性がある。

両方となると、湿濁も考えられるが、弱りの可能性も高い。

「こうやって寝ていても、だるくて動かしたくなる…」

「そうですか。」

「それから、この辺が(と胸を押さえながら)ザワザワする感じ…」

じっとしていられないというのは、動=陽だ。

静=陰で、腎陰は静かにさせる働きであり、この働きが不足すると動的(陽)になる。

足のだるさは下半身の問題。腎は下半身と関わりが深い。

症状からも腎陰虚が類推される。

体の反応と、患者さんの訴えとが合致する。

この左照海は確実に効く。

ここに鍼。

刺してすぐ脈を診ると、沈んだ脈が、すでに正常な位置に戻っている。

刺した状態で10分経過。すわってゴソゴソしているので覗いてみる。

「先生、だるいから叩いてるんですけど…いいですか?」

「ハハハ、いまは、辛抱して寝ておいてください」

「ハイ。」

20分経過。

「どうですか?」

「膝の内側がだるくなってきた」

「ふくらはぎは?」

「ふくらはぎ…感じないです。」

30分経過

「いま膝の内側は?」

「膝はだるくないんですけど、また、ふくらはぎがだるい…」

「最初と同じくらい?」

「いえ、ましです。」

治療をして、だるさや痛みの場所が変わるのは良い反応である。

50分後、鍼を抜く。

「今どう?」

「今ですか?今…感じてない…」

「胸は?」

「落ち着いてきました……て言うか、何もないです。楽。」

次に、百会と左大敦に鍼してすぐに抜く。腎陰虚を起こす原因になった精神的緊張を緩める処置。

「ハイ、うつ伏せになって。」

腎兪の左右差が無くなり、ツボが左右とも浮いている。よく効いている。

「はい、今日はこれで結構ですよ。」



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「先生、もうすぐ生理なんですけど、無性に甘いものが食べたくて…」

「ふん、ふん」

「それで、先生に言われたように、間食しないように、
お菓子が欲しくても、食事時に食べるようにしてるんですけど…」

「えらいなあ。そうそう、そうやって時間の節度を守ることです。三食でまとめるようにね。」

「食後でも30分過ぎたら間食だ、って先生おっしゃってたんで、
間食にしたらアカンと思って、頑張ってるんです…。
でもお菓子を、だいぶ食べてます。」

「それでいい、それでいい。で、調子は?」

「朝食も食べ過ぎてしまって、お腹が苦しくて…。
そのあとすぐに散歩に行ったら、めまいがしました。気絶しそうで怖かった…」

「食べたものが、さばけてないんやな。
さばけないと、余りが残ってしまい、それが雲のように上の方で邪魔して、『きれいな気』(正常な働きのこと)が、頭に行かなくなる。
それで起こっためまいやな。
そのうえ、今日は雨だから、湿気も加わって、その邪魔な雲を厚くしてるんですよ。」

左右の神門に手を当てる。緊張はしているが沈んでいない。たぶん鬱にはなっていない。

「今日は、落ち込むような不安感はないでしょ?」

「ハイ。それは大丈夫。」

「あの不安が一番つらいなあ。」

「そうなんです、あれと比べたら、今日はまだまし。」

「今日は、甘いもの食べ過ぎてきてるから、満員電車みたいなもんやな。
ギュウギュウ詰めでシンドイ。
けど、間食せずに時間の節度を守ってるから、ダイヤは乱れてない。
しんどいけれど、目的地には着ける…。そんな感じかな。」



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「先生、痛み、だいぶ良くなったから、散歩してもいいか見てほしいんですけど。」

「ハイハイ、できそう?太ももの内側でしたね?」

「ハイ。」

散歩することが、体にとってメリットが大きいか、デメリットが勝つか。

それを脈で判断する。

「うーーん、体は『まだ早い』と言ってますね。」

「そうですか…。前は針で刺すような痛みが急に来るんで恐かったんですけど、
今はあっても鈍い痛みなんで…できるかなって…」

「刺すようなのは無くなりましたか。」

「そうなんです、だからだいぶ楽になりました。この痛み、今までに何度か経験あるんです。以前、薬局で『あなたの体に合いますよ』ということで漢方薬をもらって、それを飲み始めたら、そうしたら出たんですよ。」

「刺すようなのが?」

「ハイ、で、薬局の先生にそう言ったら、『薬がきついのかもしれないから量を半分にしなさい』って言われて。で、半分にしたんですけど、やっぱり痛くて。それで、薬をやめたら治ったんです。それから調子悪くなると、そういう痛みが出るようになったんです。」

「うーーん…そうなんや…。なんていう薬か覚えてます?」

「いやー、もう忘れました…」

「うーん、瘀血(おけつ)と診て、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)とかかなあ…」

「そうそう、瘀血とか言っておられました!」

「ウーン、間違いやすいと思うなあ、出ている症状は瘀血やから…。でも、瘀血ができた原因は、体の弱りやから…。それを見抜くのはなかなか難しいんですよ。」

「そうなんですか。」

「ウン、一見○○さん、元気そうでしょ。弱りがあると見抜けるかどうかやなぁ。このお体で瘀血を取ろうとすると、かえって悪化するやろうね。ウチでは瘀血を取る治療は一回もやってません。だだ、ひたすら体力を増す治療。まあ例えるなら、川の水かさを増す治療やな。それで水の流れを強くして瘀血のような濁ったものを流し取るようにしてるんです。結果的に瘀血は取れつつある。だから刺すような痛みが無くなってると言うことですね。」

「なるほど、人によって体質は違いますもんね。十人十色なんでしょうね」

「そうそう、その通り!」

「漢方薬が合わないのかと思ってました。」

「そんなことない、誰でも合う処方はあるんですよ。ただ、体質を見抜くのが難しいだけでね。」

「なるほど。よくみなさん、合うとか合わないとか、言っておられるけど、そうじゃないんですね。」



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パニック障害の患者さん。

「先生、胸が苦しいんですわー。昨夜は寝苦しくて…」

「最近、ちょっと良くないなあ。」

「嫁はんの具合が悪くて…」

「そうやなあ、心配やろうし、○○さんの仕事も増えるやろうしねえ。」

「そうなんですわ。車の運転ぜんぶ自分でしないといかんのが、こたえているんです。お医者さんで心臓の薬も出してもらってるんやけど…」

「安定剤は?増えた?」

「いえ、前のままです。」

中脘に鍼をし、30分後に抜く。

「今、胸はどうですか?」

「落ちつきました。」

「ちょっと、明日はゆっくりできたらええんやけど…無理やねえ…」

「先生、安定剤、増やした方がいいでしょうか。」

「車の運転を控えて、安定剤は増やさずに行けるなら、その方がいい。けど、そうもいかないなら、しかたないなあ。」

「この胸の苦しさは、心臓の薬より、安定剤の方がよく効きますか?」

「それはそうでしょ。心臓自体はまだ悪くない。まだ機能的な段階、東洋医学でいえば気の段階です。病は気からっていうでしょ。あれは精神的なことが病気の原因だと言ってるんでは無しに、まず、気…つまり機能が悪くなる、ということを言ってるんです。そして、その後に器質的…つまり血管がつまったり、心臓が肥大したりという形体の段階になるんです。○○さんは、そこまで行ってませんよ。」

「安定剤、増やした方がいいんですね」

「うーーーん、お医者さんの薬では『つかれ』は取れんからねえ。薬は症状を消すのでは無しに、症状の原因になる『つかれ』を、一時見えにくいところに隠すだけやから…。一時的にましにするっていうのは『モノは使いよう』で大切なんですよ。でもね、それを繰り返して薬に頼ってしまうと、それこそ器質的な変化がおこってきます。鍼治療で『つかれ』を取る方がいい。けど週に一回の治療では心もとないですねえ…」

「そしたら、車の運転を控えた方がいいんですね。」

「そうそう、可能であればね。」



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ご婦人の患者さん。

リウマチ。

今日が初めての治療。

症状・経過・その他の所見、二時間かけて詳しく聞く。

患者さん「あちこちが腫れて変形して・・・。
右膝が特に痛いんです。立ち上がる時とくに・・・。」

「雨の日とか、寒い日とか、痛みはどうなります?」

「関係ないみたい。とにかく立つときが痛いんです。」

「お風呂に入ったら、どうなる?」

「先生、それがメチャクチャ楽になるんです。」

「そうですか。でもずっとお風呂に入ってるわけにもいかんしなあ。」

「ハイ、そうなんですよー。」

お風呂に入って楽になるのは、気の段階(機能の段階)だからだ。

症状は激しくても治りやすい!

とはいえ、リウマチである。

免疫抑制剤を多年に渡り服用している。

左右の太衝を視ると、ツボが大きく緊張し、沈んでいる。

しかも左右の差が全くない。

左右に差が無ければ、生体は動かず、回復もしない。

ここで左の胆兪に鍼。

もう一度太衝を視ると、ガラリ様相一変し、左右差がハッキリしている。

だが、まだツボは浮いてこない。

百会に鍼。

鮮やかに太衝が浮き、左右差が取れる。

これで、右膝の流通も回復しているはずだ。

「先生、わたし、鍼すきですわ。なんか気持ちよくなってきました。」

「そうですか。たった二本しか刺してないけど、
体はダイナミックに動いているんですよ。」

「へえーーー。」

「なんとなく、膝もいい感じでしょ?」

「いやー、それは良く分かりません。」

「そうですか、今日はこれで様子見ます。起きてもらって結構です。」

帰りの受付を済ましておられる彼女に声をかける。

「ベッドから起きる時、膝どうでした?」

「先生!それが全然痛くないんです!」

「ははは、そうですか、良かったなあ。体はダイナミックに動いているんですよ。」

「なんか、足全体が軽いんです!」

「五十、六十歳台に頑張り過ぎたからこうなったんやな。
体がそれをストップさせようと痛みをだしてるんやから、
楽でも無理したらあきませんよ。
大切なことは、まず痛みどめの薬を減らすこと。
そのためには痛みをこうやって取っていくことです。
その先に免疫抑制剤もやめられる日があるんだ、ということを意識しておいてください。
薬を減らしてよいかどうかは、こちらで指導します。 

年配の女性。ひとり暮らし。


圧迫骨折の腰痛が随分ましになってきている。


ただし、痛みが減った分、活動量が増えすぎている。


腸から出血しやすく、体力を増して予防する必要がある。


この冬は活動を控えるよう指導している。


「お正月はゆっくりできましたか?」


患者「はい、どこへも行ってません。
友達と近くのホテルで一泊してお正月を迎えました。」


「へー、家でゆっくりしてたらええのに・・・。」


「ひとりでお正月迎えるのはさびしいし、
ホテルでは夕食いただいて寝るだけだから・・・。」


「うーーーん、これはバーゲンやな。体力を安売りしすぎや。
大事なモンは蔵にしまって、温かくなったら外に出すんよ。
ちょうど春に種まくみたいに・・・。」


「先生、ホテルで泊まることもできなかったら、私、ストレスたまりますわ。」


「そっか・・・。」


・・・緊張から拡散を経て、崩壊する。
崩壊すると、再び凝集を始め緊張(形体)が生まれる。
宇宙の星もそうらしい。

東洋医学は2000年前、すでにそういう思想を持っていた。
陰陽論だ。
今、この女性は明らかに寿命を縮めようとしている・・・。


今日の治療開始。
いつもの体力を補う治療に、
今日は、頭の百会の鍼をプラス。


この百会は、拡散(バーゲン&腸出血)の原因となる緊張(ストレス)をゆるめることで、
凝集する力(蔵にしまっておく力)を引き出すことを目的としている。
その後、来院する度、百会を加える。3診ほど続ける。

最近、表情に何となく落ち着きが感じられる。


「調子は?」


「娘と孫が帰ってきて、バタバタしてる割に大丈夫なんです。」


「頭の鍼、よく効いてるんですよ。」


「そうなんです先生。頭の鍼していただいてから、すごく調子いいんです。」


「そうやな、なんかシックリくるでしょ?」


「ハイ。」



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奥歯の痛い患者さん。

患者さん「先生、右下の奥歯が痛い。」

左右の合谷に両手をあてて診る。

「先生、それ合谷でしょ? 万能のツボなんですよね」

「万能のツボなんかないんですよ。でも合谷は歯とすごく関係がある。いまこうやって合谷に触れても、ツボが沈んでるから、鍼してもきかないです。」

ここで、足の大敦に鍼。その後、もう一度合谷に手をあてる。

「どう?歯は?」

「楽になってきた・・・足のツボで歯痛が治るんですね」

「ううん、ちがう。足のツボで、沈んでた合谷が浮いてきたんよ。合谷が良くなったから歯が良くなったんよ。ツボはハサミと一緒。」

患者さん「・・・?」

「使いようやな。」



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