組織で働く為に必要な能力は二つあります。

1、市場で通用する能力
2、社内で通用する能力

「市場で通用する能力」とは一言で言えば汎用的な能力のこと。語学力だったり、技術力、プレゼン能力や営業力など、組織が変わったとしても価値を持つ能力のことです。

一方、「社内で通用する能力」は読んで字のごとく、その会社に特化した能力です。言い換えれば、その会社でしか意味のない能力のこと。例えば、社内のキーマンを熟知している、その人に首を縦に振ってもらうにはどういうアプローチが重要か、自社の製品についての知識、社内用語、様々な手続き方法…。

もちろん、実際にはこれら二つの中間のようなものもあるでしょうが、ざっくり二つに大別できると思うのです。

さて、実際に組織で働くことを考えると、この両方の能力が必要です。いくら汎用的な能力が高くても、自社の製品についての知識がなかったり、手続きがわからないとお仕事にならないし、いくら自社の能力が高くても一般的な話がわからなければ役に立たないであろう事は簡単に想像がつきます。どちらか片方だけでは成り立ちません。

で、ここで気にしたいのはそのバランス。

その会社で仕事をする能力 = 市場で通用する能力 + 社内で通用する能力

市場で一般的に通用する能力を上げ、社内で価値を出して行くというのは非常に費用対効果が薄いです。一般的な知識・経験なので「基礎」「応用」でいうと「基礎」にあたる。もちろん、これがあるのと無いのとでは後に大きな差が出てくるでしょうが、さしあたって当面の能力アップにはハッキリした効果が出づらい。即効性がないのです。一般的な知識は社内で一生使わないものもあるでしょうから、パフォーマンスの悪さは想像がつきますね。

一方で、社内で通用する能力は即効性が高いです。キーマンと仲が良くなればすぐに仕事の効率が上がるであろう事は想像に難くないし、自社の商品に特化した知識は、身につけたもの全てが無駄なく役に立ちます。なので、こっちに力が入りがちです。

以上は非常に当たり前の話なのですが、"だから"非常に危険な気がする。

一生同じ組織で勤め上げるのであれば、その企業で通用する能力は100%無駄になりません。でも、もし組織を出る事を考えると「その企業でしか通用しない能力」は100%無駄なのです。

上では単に能力だけで分類しましたが、もっと大きな視点で語れば「市場で通用する人材」「社内でしか通用しない人材」という分類になります。

終身雇用がお得だった時代には社内で通用する人材になることはそれなりに合理的だったかもしれません。でも、今は一社で勤め上げる事がお得な時代ではないし、これからもどんどんその傾向が強くなってくるでしょう。その時に「次」があるのはどういう人か考える必要があります。

会社からみた労働者とは「社員」ではなく「商品」です。


商品を売る時に、相手が何が欲しいか考えずに売る人っていないですよね。売り手が売りたいものを買い手に提示しても意味がない。普通は買い手が何を欲しているのか考えて、その商品を作っていくハズです。

何故か、労働市場だと、顧客がどういう商品を欲しているのか?という考えがスッポリ抜けているような気がするのですよ。自分が一生その組織に属していられるという強靭な運を持っているというのならば別ですが、そうでないなら、今の組織で市場価値が高められるか?という考えを持った方が良いです。

組織に属していても、あらゆる人は「自分という商品を売る商売人」である事を忘れないようにしたいですね。自戒の意味を込めて。

ではでは