2010年03月01日

2010年03月01日(月) 社説

朝日新聞 社説
市民の自治―口を出して、汗もかこう
チリ大地震―「遠地津波」の怖さ改めて 
産経新聞 主張
チリ巨大地震 津波防災へ教訓生かそう 
冬季五輪閉幕 次は「金」へ総力挙げたい  
日経新聞 社説
経営の暴走も萎縮も許さぬ新会社法を
毎日新聞 社説
大津波警報 経験を精度に生かそう 
冬季五輪閉幕 多彩さ増した17日間 
読売新聞 社説
大津波警報 チリ地震を教訓に対策急げ  

 
朝日新聞 ; 市民の自治―口を出して、汗もかこう
大阪のベッドタウン、池田市は3年前、市役所の予算の使い道の決定に市民が参加できる制度を始めた。11の小学校区ごとの住民組織「地域コミュニティ推進協議会」に、地域での事業と予算の提案権を認めたのだ。協議会の委員は公募で、限度額は1校区あたり年約700万円。防犯パトロール車の購入と住民による巡回、小学校の校庭芝生化、高齢者の配食サービスなどがこれまでに実現した。一部とはいえ税の使い道を市民が決める工夫である。倉田薫市長は「自分たちの地域は自分たちでつくる。それには市民が税を支配し、汗もかいてほしい」とねらいを語る。将来は限度額を広げ、小学校の体育館改築といったハード分野まで含めたいという。池田市の地域型に対し、千葉県市川市はテーマ型だ。市民が納める住民税の1%分を、自分が応援したい市民活動団体の資金支援に回せる仕組みだ。5年前に導入した。「年金暮らしでも参加したい」という声がお年寄りから出て、指定のボランティア活動などでもらえる点数もお金に換算して支援に回せることにし、より多くの市民が参加できるようになった。2009年度はNPOなど130団体に計2100万円が回った。二つの制度が生まれた背景には自治体の財政難がある。行財政改革だけでは追いつかず、市民に自治や協働を求めざるを得ない台所事情だ。一方で、市民の側には多様な公共サービスを自分たちも担おうという機運の高まりがある。コミュニティーを再構築しようという動きでもある。千葉県我孫子市は、市役所が担う約1100の仕事すべてを対象に民間委託や民営化の提案を公募した。市役所と民間のどちらがやれば、より市民の利益になるかという視点で提案を吟味し、これまでに妊婦対象の教室や公民館講座などの37件が採用された。肥大化した行政サービスを見直そうという3市のような試みは、ほかの自治体にも広がっている。しかし、民間が市役所の単なる下請けになったのでは意味がない。行政サービスは画一的になりがちだ。地域のニーズをきめ細かくつかんだ新しいサービスの形をつくり出したい。そのためには、予算づくりをはじめとする行政情報が市民に公開されている必要がある。そして市民が税金の使い方にもっと口を出す。汗もかく。地域の力を生かし、市民の意思で動く市役所へと変えていく。そうした変化は鳩山政権が唱える「新しい公共」にも共鳴することになるだろう。地方分権が進み、権限と財源が政府から自治体へと移っても、首長の力が大きくなるだけでは足りない。分権の実をあげるためには、市民の自治こそが欠かせないのでは。

朝日新聞 ; チリ大地震―「遠地津波」の怖さ改めて
チリ中部沖の海底でマグニチュード(M)8.8の巨大地震が発生した。ハイチ地震の約500倍の巨大なエネルギーである。この巨大な地震によって発生した津波はほぼ一昼夜かけて太平洋を越え、北海道から九州、沖縄まで、休日の日本列島を襲った。気象庁は、3メートルを超す津波が予測された青森県から宮城県にかけての太平洋岸に17年ぶりの大津波警報を出すなど、厳重な警戒を呼びかけた。多くの自治体が住民に避難を指示した。海岸沿いの鉄道が運休、道路も各地で通行止めになり、市民生活には終日、大きな影響が出た。高台に避難して不安な時間を過ごした人もいるだろう。最大で1メートルを超す津波が各地で観測され、道路やビルなどが冠水したが、大きな被害がなかったのは幸いだった。ちょうど50年前の1960年5月にもチリで、20世紀以来で最大のM9.5の巨大地震が起きた。ほぼ1日後、津波が日本列島を襲った。日米安保条約の改定をめぐって国内が騒然としていたころである。このとき津波の到達は全く予想されず、気象庁が津波警報を出したのは津波が到達した後のことだった。未明に最大5メートルを超す津波に襲われ、三陸地方などを中心に140人を超える犠牲者が出た。太平洋の島々の人々も突然、大津波に襲われ、イースター島ではモアイ像が壊れた。全く地震がないのに襲ってくるこうした津波を「遠地津波」と呼ぶ。不意に襲われるうえ、第2波、第3波の方が高くなる特徴があり、恐ろしい。前回のチリ地震津波の経験から太平洋の沿岸国が協力してできたのが、米国ハワイにある太平洋津波警報センターだ。今回も日本をはじめとする沿岸国に素早く津波警報を出した。2004年にインド洋沿岸で大被害を出したスマトラ沖大地震・津波の経験も、より広い地域での地震や津波の観測・警戒のネットワークづくりに生かされている。こうして津波の到達時刻や高さが予測できるようになったのは、大きな進歩だ。予測の精度をさらに向上させ、被害の軽減に役立てていきたい。津波のこわさは、ふくれあがった海が巨大な固まりとなって押し寄せてくることだ。水が引くときに強い力で引き込まれる。数十センチの高さでも大人が流されることがある。決して侮ってはいけない。未明に地震に襲われたチリでは大きな被害が出た。同じ地震国として支援の手を差し伸べていきたい。日本では今回、津波警報が出たのは休日の昼間だった。だが、予期せぬときに襲うのが自然災害である。

産経新聞 ; チリ巨大地震 津波防災へ教訓生かそう
環太平洋の国々を緊張の波が駆け抜けた。南米のチリ中部沿岸沖で発生した巨大地震に伴う津波に対しての警戒だ。地震の規模は、米地質調査所によるとマグニチュード(M)8・8という大きさだった。1900年以降、5番目の強さであるという。観測史上の最大は、1960年5月にチリで起きたM9・5の地震である。このとき発生した津波は1日がかりで太平洋を渡って日本列島に押し寄せ、140人を超える命を奪っている。この災害は「チリ地震津波」として、津波の恐ろしさを世界に周知させることになった。今回の地震の震源は、50年前の超巨大地震の震源域の北側に接している。位置も規模も、半世紀前の悪夢を想起させるのに十分だった。気象庁は、全国の太平洋岸や瀬戸内海地方に警戒や避難を呼び掛けた。青森県から宮城県にかけて国内では17年ぶりとなる大津波警報がだされるなど、厳重な警戒態勢が敷かれたが、幸い大きな被害には至らなかった。不気味に盛り上がった海水が港の岸壁を浸した程度で事なきを得た。予測精度への課題を残したが、避難指示などを甘くみることは禁物だ。津波は地球の裏側から太平洋を越えてやってきた。そのエネルギーの大きさを防災面への警鐘として受け止めるべきだろう。チリの国土は、南米プレート(岩板)に乗っていて、その下に太平洋から押し寄せるナスカプレートが潜り込んでいる。この2つのプレートの相互作用で、頻繁に大きな地震が起きている。海溝型と呼ばれる地震のメカニズムは、日本で警戒されている東海地震や東南海地震と共通する。予想されている規模もM8級で、海底が持ち上がり、津波を併発する点も同じだ。今回のチリ巨大地震では、首都・サンティアゴで市内の建物が倒壊したり、国際空港が損壊したりするなどの被害が出ている。震源に近い同国第2の都市のコンセプシオンの被害は、甚大と伝えられる。通信網や交通網をはじめとする社会の主要インフラへの影響が大きい。死者が23万人に達した1月のハイチ地震では、日本政府の対応に遅れが目立ったが、今回は的確な緊急支援への取り組みを望みたい。被災下での首都機能の維持や復旧面で、日本が学ぶことも少なくないはずだ。

産経新聞 ; 冬季五輪閉幕 次は「金」へ総力挙げたい
バンクーバー冬季五輪が1日(日本時間)閉幕する。開催国カナダが金メダル争いでトップに立ち、日本も終盤のスピードスケート女子団体追い抜きで銀メダルを獲得し有終の美を飾った。これで日本のメダルは計5個(銀3、銅2)となった。前回トリノ五輪(金1)や前々回ソルトレークシティー五輪(銀、銅各1)を上回る成績である。メダルまであと一歩だった選手もおり、よくやったとねぎらいたい。しかし、テレビの前で声援を送った国民の中には、メダル数でカナダや米独など欧米勢に迫った韓国や中国選手の活躍と比べて、物足りないと思った人も少なくなかったのではないか。国旗を背負うオリンピック代表選手の活躍は、国民に誇りと活力を与える。健全なナショナリズムの発露である。とくに金メダルの価値を軽視してはなるまい。女子フィギュア銀メダルの浅田真央選手は、日の丸を身にまとって拍手に応え、そして「悔しい」と涙した。ひたむきな精神をもつ選手を今後も育てたい。日本の冬季スポーツ界の全般的な停滞は、不況のため企業チームの休廃部が相次ぐなど従来の選手育成システムが崩壊したためといわれる。競技団体主導の強化策を取り入れたり、フィギュアのように大学が専用リンクなど環境整備に力を入れて代表選手を育てた成功例もあるが、一部の競技にとどまっている。2018年の冬季五輪招致を目指す韓国、さらに中国は国を挙げて選手育成に取り組んでいる。日本はスキーのジャンプや複合など、金メダルの実績もある競技・種目が不振に終わった。選手の世代交代はうまく進んでいるのか。日本オリンピック委員会(JOC)など関係者はさまざまな角度から新たな強化策を検討すべきだ。日本のスポーツ関連予算総額は微増したものの、鳩山政権の事業仕分けでJOCへの国庫補助金が減額された。有望な若手を育てるエリートアカデミーが全額カットされたのは残念だ。しかし今大会、事業仕分けで補助金減額の対象となったリュージュとスケルトンで、選手が規定を超える重りを装着したり、規定合格のステッカーをはがす不注意から失格になったことは、初歩的なミスである。14年のソチ五輪に向けた教訓としてほしい。

日経新聞 ; 経営の暴走も萎縮も許さぬ新会社法を
千葉景子法相が法制審議会(法相の諮問機関)に、会社法制の見直しを諮問した。2005年に現在の会社法が制定されてから、初めての見直しとなる。日本企業の経営の質を高めるような法改正を望む。現在の会社法は、ベンチャー企業から上場会社まで、規模にかかわらず一律に経営の自由度を高めた点に特徴がある。例えば、最低資本金の規制を撤廃し、起業を簡単にした。あらかじめ定款に定めれば、株主総会ではなく取締役会で配当の金額などを決められるように改めた。企業買収の自由度も増した。 上場企業に特別の責任 経営の自由度は高まったが、経営者の暴走や不正を監視するルールは手薄なままだった。その結果、ライブドア事件のような企業の不祥事は後を絶たない。会社法見直しの背景には、そうした認識がある。法相は法制審で、経営を監視するための「企業統治のあり方」を、見直し項目に挙げた。今後の議論で参考にされそうなのが、民主党の「公開会社法(仮称)制定に向けて」という政策提言だ。証券市場で株式を公開している上場企業は多くの人からお金を集めるだけに、株式を一般に売り出していない非上場企業よりも強い規制が必要という考えが反映されている。経営者の暴走や誤った経営判断に歯止めがかからなければ、会社は倒れ、株主も損害を被る。企業が持続可能な成長を遂げるための最低条件として、企業統治の役割を高めることには意義がある。その意味で、民主党の「上場企業の社外取締役の条件を強める」との提言には耳を傾けるべき面がある。社外取締役は会社の外にいて、独立の立場で経営の意思決定にかかわる。経営陣の影響を受けず独自の判断ができるかどうかがポイントになる。現在の会社法は肝心の独立性に関する定義があいまいだ。そのうえ、すべての会社に社外取締役を置くことまでは義務づけていない。米英は証券取引所の規則などで、社外取締役の独立性を定める。米国には「過去3年間にその会社の従業員ではなかった」といった規定がある。経営者とのなれ合いを排し、市場の立場から経営を監視する取締役が必要と考えているからで、日本でも参考になる。日本でも会社法で社外取締役の独立性の基準を明記し、取引所規則で人数を決めることなどを検討してもよいのではないか。民主党の提言には「監査役の一部を従業員代表から選任する」とするなど違和感を覚える点もある。従業員参加の主張が、労働組合の経営への関与を狙ったものならば、支持はできない。この提言は、株主と従業員の双方の代表から成る監査役会が、取締役会より強い力を持つドイツ型の企業統治を目指しているとも読める。組合の影響力の強い監査役会の反対で企業経営の効率化が進めにくく、かえって経済の停滞を招いたとの批判が、ドイツでさえ強い。企業統治は経営を萎縮させるものであってはならない。経営資源を有効活用させ、成長を促す仕組みとしてもとらえる必要があるのではないか。その発想が民主党の提案に欠けているようにみえるのは残念だ。企業統治がうまく働けば経営資源の無駄遣いは許されなくなる。事業の選択と集中を促し、産業の再編を進めやすくする効果も期待できる。 社外の声を成長に 米ヒューレット・パッカードの取締役会は05年、フィオリーナ最高経営責任者を事実上解任した。業績不振に対する株主の不満を社外取締役が受け止め、経営の立て直しを図った。後任者はパソコン部門をてこ入れし、直近の四半期は前年同期比で25%増益を達成した。英食品大手キャドバリーは10年1月、米クラフト・フーズからの敵対的な買収提案を受け入れた。最終的には社外取締役である会長が経営環境を総合的に判断し、買収の提案額を妥当と考えたからだ。「社外取締役の役割は経営のリスク管理と、株主のための有効な戦略提言だ」。米エンロンの粉飾決算事件の後、英国の貿易産業省はこんな諮問報告を出した。今では英上場企業のルールになっており、キャドバリーの行動もそれに従った。日本では業績が低迷しているのに、不採算事業を抱え込んだままで、企業価値の向上をなおざりにしている例も目立つ。社外にトップ交代や再編を求める声があっても、株の持ち合いが経営陣を守っている。民主党の提案は「成長を促す外部の声」には直接言及していない。ぜひとも取り上げてもらいたい。会社法改正を規制強化に終わらせてはならない。企業が稼ぐ力を高め、株主に利益を還元し、従業員にも報いることで、経済の活性化につなげる幅広い議論が必要だ。

毎日新聞 ; 大津波警報 経験を精度に生かそう
太平洋をはさみ、チリの巨大地震が及ぼした日本列島への津波は最悪の事態には至らなかった。北海道南西沖地震以来17年ぶりの大津波警報が出され、沿岸部では住民の高台避難なども行われたが、一部の冠水や浸水にとどまった。警報を出した気象庁は、津波は最大3メートル、地形によってはそれ以上の恐れも、と注意を喚起した。結局そこにまで至らなかったとしても、警報は常に最悪のケースも念頭に置いて発するべきで、結果だけで「当たり、外れ」的な評価や批判をするのはなじまない。首相官邸に対策室を設けた政府の対応も適切だった。ただ検証は欠かせない。複雑な自然災害は再現実験などが難しく、予報システムは実体験を重ねて精度を高めていくものだろう。今回さまざまな立場で「大津波」襲来に備えながら多くの人たちが共有した体験は、今後に生かせるはずだ。また自然災害対策は、無数の悲痛な被害の上に積み重ねられてきた。多くの死傷者を出した津波としては、1960年に同様の経緯をたどった三陸のチリ地震津波があり、今回と類似の現象が指摘されたそして遠足の小学生たちも巻き込まれた83年の日本海中部地震、奥尻島などを瞬時に大津波が襲った93年の北海道南西沖地震がある。半世紀前のチリ地震津波では、当時技術も未発達で情報入手や予報が後手に回った。まさかあんな遠隔地の地震からという油断もあった。その痛切な体験と反省から、太平洋沿岸諸国の情報をハワイの太平洋津波警報センターで共有する仕組みが築かれ、今回も生かされた。肝心なのは、いうまでもなく「人の安全確保」だ。そうした観点から、今回住民に避難勧告や指示をし、具体的な対策を実施した自治体は、想定通りにできたか、うまくいかなかったり、大きな課題を残したりしたことはないかを検証してほしい。特に近年気になるのは独居の高齢者や単独行動が困難な「災害時要援護者」への連絡、支援の態勢だ。共同体のきずなが比較的しっかりしている地域とそうでないところの差異も踏まえ、どう仕組みを整備すればよいか対策を急ぎたい。また、さまざまな災害予防でその必要があっても、避難勧告などを無視する人もいるという。それはとても危険で、他の人にも迷惑や被害を及ぼしかねない。津波や水害はわずかな判断の遅れが明暗を分けることを、過去の災害は実証している。当然行政側の出す勧告や指示も適切でなければならないが、災害の可能性がある時はまず最悪の事態を念頭に行動することを、今改めて肝に銘じたい。

毎日新聞 ; 冬季五輪閉幕 多彩さ増した17日間
17日間にわたり熱い戦いを繰り広げたバンクーバー冬季五輪は日本時間1日の閉会式で幕を閉じる。夏・冬を通じて五輪史上初めて屋内で行われた開会式は、屋内の利点を最大限に生かし、最新技術を駆使して華やかにショーアップされ、世界中を魅了した。その開会式が象徴するように、冬季スポーツのこれまでのイメージを塗り替える多彩な競技の数々が記憶によみがえる。86年前、フランスのリゾート地、シャモニー・モンブランで行われた第1回冬季五輪はわずか4競技14種目で、参加国・地域も16を数えるだけのささやかな大会だった。今回は新種目の男女スキークロスを含め7競技86種目。冬季スポーツが五輪の回を重ねるたび、さまざまな形で発展してきたことを実感できた。映像を通して選手たちの熱気が伝わるようなスリルにあふれ、手に汗握る魅力的な種目がなんと多かったことか。その半面、大会直前にソリ競技会場でリュージュ選手の死亡事故が起きた。映像的な魅力を増すための高速コースが招いた事故との指摘がある。安全軽視の設営に警鐘が鳴らされたと受け止めるべきだ。さて、日本選手団である。スピードスケート最終種目、女子団体追い抜き(チームパシュート)は惜しくも100分の2秒差で「金」には届かなかったが、女子スピード陣として初めての銀メダルを獲得した。これで今大会の日本のメダルは銀3、銅2の5個となった。金メダルがゼロなのは残念だが、フリースタイルスキー・モーグルの上村愛子選手のようにメダルにはあと一歩届かなかったものの、日本中を感動させた種目も少なくない。全力を出し切った選手たちに温かい拍手を送りたい。残念な事例もあった。ソリ競技では日本選手が規定を超える重りをつけるなど、うっかりミスで2人が失格した。選手を責める以前にコーチら周囲のサポートがどうなっていたのか。出国時の服装の乱れが指摘されたスノーボードの男子選手の場合も同じことがいえるだろう。アジアのライバルである韓国と中国がトリノ五輪に続いて躍進した。かつては冬季競技では日本がリードしてきただけに、中韓の強化から学ぶべきは謙虚に学ぶ姿勢が必要だ。最後に指摘しておきたいことがある。五輪開幕に合わせたようにアフガニスタンで米軍などによる大規模軍事作戦が始まった。2年前の北京五輪でも開幕日にロシアとグルジアの軍事衝突が起きた。五輪に託された夢は単なるメダル争いではない。アフガンの人たちが2年後、ロンドンで開かれる「平和の祭典」を心から楽しめるよう、切に願いたい。

読売新聞 ; 大津波警報 チリ地震を教訓に対策急げ
倒壊した高速道路や横転したビルが大地の揺れの凄(すさ)まじさを物語る。南米チリを巨大地震が襲った。地震規模を表すマグニチュード(M)は8・8だ。放出されたエネルギー量は今年1月のハイチ地震の500倍超で、観測記録の残る世界の大地震の十指に入る。チリは世界でも地震発生の多い国だ。1960年には、観測記録に残るものとして最大のM9・5の大地震が起きている。 津波の威力軽視するな チリ政府も、建築物の耐震指針や地震発生時の対応要領を定めている。チリは銅などの資源を保有し、経済は比較的豊かだ。地震に強いビルが増えるなど、対策は着実に進められてきた。それでも被害は、多数の死者を含めて甚大になりそうだ。被災者の救援や今後の復興に向け、日本としても貢献したい。20万人以上の犠牲者が出たハイチ地震では、欧米や中国などよりも救援活動で出遅れた。現地の求めに機敏に応じられるよう、準備を整えておく必要がある。今回のチリ地震は、地球をおおっている複数の岩板(プレート)が互いに接している境界部分で発生した。ハイチ地震や阪神大震災のように、岩板の内部で断層がずれる型とは異なる。日本で過去に大きな被害を出した南海地震や東南海地震、東海地震は前者のタイプだ。規模がM8超と大きくなることが多く、被害は広域化、大規模化する。しかも周期的に起きており、この三つの地震は、すでに発生期に入っている。同じ地震国である日本は、現地の被災状況から教訓を学び、対策に生かさねばならない。今回の地震では、約1万7000キロのかなたで発生した津波が発生の翌日、太平洋を渡って対岸の日本に押し寄せてきた。気象庁は、岩手県など3県の沿岸に大津波警報を、この地域以外の北海道から沖縄県まで太平洋側全域に津波警報を出すなど、広い範囲で警戒を呼びかけた。高さ3メートル程度の津波が到達すると予想される大津波警報は、93年の北海道南西沖地震以来で、17年ぶりだ。政府は、官邸危機管理センターに官邸対策室を設置した。津波到来の恐れがある太平洋沿岸部の関係自治体も、住民たちに避難を呼びかけた。各地で、寒さの中、住民が避難所などで警戒解除を待った。加えて、海岸沿いの道路が各所で通行止めになり、鉄道の運休が相次いだ。青森県おいらせ町では、2月28日の町長選挙の一部投票所が津波の影響を懸念して閉鎖され、開票作業が1週間延期となった。様々な分野で市民生活に影響が及んだが、津波の脅威を考えれば適切な対応だったと言えよう。 早急に被災状況把握を 海洋に囲まれた日本は何度も津波被害に遭ってきた。日本語ながら「Tsunami」は、そのまま国際的に通用するほどだ。通常の波と異なり、津波は、海水が巨大な水の塊となって押し寄せる。その猛威は、20万人を超える犠牲者が出た2004年のインド洋津波からも分かる。通常、津波の高さが2メートルになると押し寄せた地域の木造家屋はほぼ破壊される。高さ1メートルの津波でも半壊する。波が引く際には建物や人をさらっていく。波の高さは沿岸の地形により大きく変わる。狭い入り江では10メートルを超えることも少なくない。1896年の明治三陸地震では岩手県などで2万人を超える犠牲が出た。1960年のチリ大地震では、22時間後に押し寄せた津波により、岩手県などで100人以上が犠牲になっている。今回は、沿岸部の一部地域で道路が冠水したり、漁業関連施設が津波で海に流されたりという被害が伝えられている。ただ、警報の対象地域には、孤立した小さな集落も多い。高齢のため避難しようにもできない人々もいる。政府は、被災状況の把握を急がねばならない。 事後検証が大切だ 津波の警報の出し方、対応も現状のままでいいか。十分に津波の怖さを伝えることが大切だ。津波を見ようと、海岸にきた人も各地にいた。自治体などの避難呼びかけを無視するサーファーもいた。こうした行為は、本来必要な対策の足を引っ張る。今回は、チリでの地震発生から丸一日近くたって津波が到来したが、南海地震、東南海地震など日本近海の地震では、津波は短時間で到来するため、対策にかけられる時間はほとんどない。政府、自治体は対応を十分に事後検証して、改善すべき点はないか見直すことが求められる。

nao_2006 at 22:00│この記事をクリップ!社説