2006年04月16日

書評 「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」

木に学べ 法隆寺・薬師寺の美 ◇著:西岡常一、小学館文庫。法隆寺金堂の大修理、法輪寺三重塔、薬師寺金堂や西塔などの復元を果たした最後の宮大工棟梁・西岡常一氏が語り下ろしたベストセラー、待望の文庫版。宮大工の祖父に師事し、木の心を知り、木と共に生き、宮大工としての技術と心構え、堂塔にまつわるエピソード、そして再建に懸ける凄まじいまでの執念を飄々とした口調で語り尽くしている。氏が発するひとつひとつの言葉からは、現代人が忘れかけている伝統的な日本文化の深奥が、見事なまでに伝わってくる。

木に学べ 法隆寺・薬師寺の美防災科学技術研究所などが14日、法隆寺五重塔の5分の1模型を揺らす公開実験を行ったというニュースを見たが、その時に思い出したのが、昔読んだ「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」という本だった。著者の西岡常一さんは、1908年、奈良県生まれ。祖父を師に大工見習い、棟梁としての心得、口伝を伝授され、法隆寺金堂、法輪時三重塔、薬師寺金堂や西塔などの復元を果たした最後の宮大工棟梁で、文化財保存技術者、文化功労者。この本には、建築学や考古学など様式を重んじる“学問”ではなく、伝統に裏付けされた“実学”を実践した、技能者としての著者の考え方が記されている。 「今の大工は耐用年数のことなんか考えておりませんで。今さえよければいいんや。とにかく検査さえ通れば、あすはコケてもええとおもっている。わたしらは千年先を考えてます。(中略) 長い目で見たら、木を使って在来の工法で家を建てたほうがいい。今ふうにやれば1000万円ですむものが在来工法で立てると1200万円かかりますわ。そのかわり200年はもつ。1000万円やったら25年しかもたん。200万円多く出せば200年もつ。どっちが得か考えてみなさい。」(P.26〜27) 「1本1本が木の個性に合わせて仕上げられてますから、ひとつとして同じものはありません。強い木は強く、弱い木は弱いなりにうまく木の質を見抜き、それぞれを使える所に使ってます。今のようになんでも規格に合わせて、同じようにしてしまうのは、決していいことではないですな。人も木も大自然の中で育てられますのや。それぞれの個性を活かしてやらなくちゃいけませんな。そのためには、個性を見抜いて、のばしてやる。そういうことが忘れられてますな。(中略) こういうものは、それ1個とりだしてもだめで、全体的なつながりを見ないとわかりません。構造物は社会です。斗や皿斗や柱は個人個人の人間ですな。それぞれが、うまく自分の力を発揮して、組み合わせられて、崩れない形のよい建物ができるわけですな。」(P.92〜94) 「今の人は、物まねをしてすぐに芸術家になりたがる。ちょっと人と変わったもん作ったら、自分は芸術家だと言いますわな。昔は芸術家みたいのはおまへんで。みんな職人でんな。職人の中で達した人が、後世になって芸術家と言われるんで、生きているうちに芸術家と言われる人はおらんわ。」(P.255)など、ものづくりに対する基本的な考え方を、改めて考えさせられる内容となっており、ものづくりに携わる人間には、是非とも1度は読んで欲しい本である。

nao_2006 at 20:00│Comments(0)TrackBack(1)映画・読書 etc. 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 五重塔模型を揺らして実験 防災科研、柱の影響を調査  [ NAOの日記 2006 ]   2006年04月16日 21:35
地震で倒壊したことがないといわれる五重塔の耐震性能を解明しようと、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)などが14日、法隆寺の塔の5分の1模型を揺らす公開実験を行った。今回の実験は、塔の中心を走る「心柱」と呼ばれる柱が、耐震性にどのような影響を与えているか....

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔