京都から奈良を経て南に下ると、南紀伊の海岸にたどり着く。そこで、映画ロケの宣伝スタッフとして参加した思い出が蘇る。それは和歌山県新宮を舞台にした『ときめき海岸物語(84)』だ。ちなみに、検索してみると邦画でタイトルに海岸がつくのはこの作品のみ。高校生、サーファーの主人公(鶴見辰吾)と、その思いが寄せられる少女(富田靖子)との青春ラブストーリーで、実は新宮が近畿エリアで有数のサーフィンのスポットであることで舞台となった。
 南紀伊は熊野大社や那智の滝が有名だが、若い世代にとってはサーフィンをしに遊びに来る名所という位置付けとなっているようだ。
ときめき海岸
                   (C)1984松竹
 南紀伊を少し東に向かうと、伊勢志摩があり、ここもまた日本有数の観光地として知られている。志摩は真珠の産地、そして最近ではサミットの開催地としても有名だが、伊勢は伊勢神宮がある場所だ。江戸時代には「お伊勢参り」といって一生に一度は旅する聖地であった。いまでもここを訪れる日本人はひきもきらず、また海外からの観光客も年々数を増している。
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 そんな多数の観光客が訪れる伊勢をあとにして、近くにある鳥羽港に向かう。ここから定期船に乗ると、沖合にある神島にたどり着く。ここは三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった島で、映画も5本作られている。吉永小百合と浜田光夫コンビの作品も有名だが、なんといっても大ヒットしたのが山口百恵と三浦友和コンビによる『潮騒(75)』で、山口百恵による主題歌もヒットした。小さな島であるが、神秘的な雰囲気を醸し出していて、お伊勢参りをした後に時間があれば訪れてみるのもいいだろう。
潮騒
                    (c)1975 東宝
 鎌倉から始まった日本各地の古都・聖地巡り。「お伊勢参り」をもってその旅を終えるとしよう。

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*本稿は2018年10月6日放送(23時~23時30分)内容との連携です。

                                  文 川崎なをや
 


 京都・奈良といえば、今も昔も変わらぬ修学旅行の定番の地であり、海外からの観光客の人気観光スポットでもある。
 日本全国を旅した男はつらいよ」シリーズの寅さんも、第1作目、最初に訪れたのがこの京都・奈良であった。前回は京都・天の橋立を紹介したが、今回は奈良でのロケ地巡り。御前様(笠智衆)と娘の冬子(光本幸子)が、奈良を旅する。二人は法隆寺を訪れた後、東大寺二月堂で外国人観光客を案内している寅さんとばったりと出会う。そして、奈良公園の浮身堂の蓬莱橋に向かい、記念写真を撮る。その時に、カメラを構えた寅さんの前で御前様が「チーズ」と言うべきを「バター!」と間違えるのが観客の爆笑を誘う。
男はつらいよ奈良
 (C)1969松竹
 奈良在住の映画監督と言えば河瀬直美監督が有名で、奈良を舞台にした作品が多くある。河瀬監督作品は海外での評判も高く、外国人観光客の奈良への観光誘致(インバウンド)にも一役買っている。
 外国人にも人気が高いといえば、漫画界の巨匠・手塚治虫を忘れてならない。その手塚治虫の代表作「火の鳥」の一編「鳳凰篇」は、この奈良が舞台となる。東大寺の大仏建立にまつわるドラマで、アニメ映画化(『火の鳥 鳳凰篇』86)もされた。渡辺典子が唄う主題歌「火の鳥」も懐かしい。
火の鳥
 (c)1986KADOKAWA
  奈良一帯は、古の都として、また歴史ロマンの舞台としても旅心を湧き立たせる場所だ。邪馬台国があった場所として、最近の学説では纏向(まきむく)遺跡=奈良県桜井市=がそれだとする説が有力となっている。その纏向(まきむく)遺跡の近くにあるのが、日本最古の神社と言われる大神神社だ。御神体が山自体という変わった神社で、その山を訪れると頂上に巨石が多く積まれている。2000年近く前(あるいはそれ以上?)古代人(弥生人)が信仰の対象とした山だそうで神秘的な雰囲気を漂わせている。
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 邪馬台国がどこにあったのか? 古代人はどこからやってきたのか? そんな古代人が歩んだ古の路が、熊野大社のある紀伊半島の南端まで続いている。次回は、そんな紀伊半島のシーサイド(海岸)を訪れることにしよう。
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                                  文 川崎なをや


 京都の太秦映画撮影所と並び、時代劇の数々を生み出しているのが松竹京都撮影所。ここで最も有名な作品が『必殺!』シリーズ。TVドラマから始まり、映画化もされてきた。その映画化3作目『必殺!Ⅲ 裏か表か(86)』(監督・工藤栄一)の製作宣伝(現場のスタッフとして宣伝を担当)の仕事についた。『必殺!』は、闇の仕事人(暗闇に乗じて悪人を殺める)のドラマだけあって、夜間撮影が多い。昼間は寝て、夜になると起きて仕事をするという、まるで吸血鬼みたい?な生活を送ったことが思い出される。組紐屋の竜役の京本政樹さんと夜間の撮影の合間に、オープンセットの片隅で弁当を食べながら、互いに好きな、ヲタク的ウルトラマン談議をしたのも懐かしい。
 閑話休題…バブル経済絶頂当時、映画の予算も潤沢で、船を燃やす数分のワンシーンのために、京都の北、舞鶴の海岸べりに実物大の木造船を組み立てた。それを、三田村邦彦扮する飾り職人の秀がたいまつに付けた火で燃やしてしまう。工藤栄一監督が派手な映像を撮りたかっただけ?の演出としか思えないシーンだが、宣伝マンとしてはマスメディアを動員しての宣伝効果にほくそ笑んだ。
必殺Ⅲ
                 (C)1986松竹/朝日放送
 さて、舞鶴まで足を伸ばしたついでにもう2箇所、旅をしてみたい。
 先ずは、以下の写真を見ていただきたい。家屋の下に、車庫ならぬ舟庫が並ぶ変わった風景。不思議な景観が広がる。ここは、伊根の舟屋と呼ばれる場所で舞鶴から宮津に向かい、その先北へ車で約30分ほどいった海岸べりにある。『男はつらいよ/寅次郎あじさいの恋(82)』でのマドンナ(いしだあゆみ)の故郷として描かれる場所だ。日本のベニスとも称される、舟で生活をする人々がここに住み、いまでは観光名所(観光船も運航される)となっている。
伊根の舟屋
 そして、もう一カ所は、言わずと知れた「日本三景」のひとつである「天橋立」。こちらも『男はつらいよ(69)』シリーズ第1作目のラストに登場する場所だ。寅さんの相棒である、のぼるがおどけて「股のぞき(股の間から天橋立を眺める行為)」をする。天に舞い上がる龍が見えるとの言い伝えで、運気が上がるともいう。寅次郎の旅のスタートにふさわしい幕切れで、さすが、山田洋次監督のロケ地選びの慧眼(けいがん)は鋭い。

男はつらいよ
               (C)1969松竹 
 日本全国を寅さんが旅をする『男はつらいよ』シリーズ。つい最近、なんとシリーズ50作目の新作が製作されることが発表された。すでに主人公・寅さん役の渥美清さんは鬼籍入りしているので、残された諏訪一家(倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆)が寅さんの思い出を回想するという構成になるようだ。 
 新作も楽しみだが、その前に寅さんと次回は奈良を旅することにしよう。

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