0f973bac721efc292015年1月20日から21日にかけて、米国主導の支援国軍の空爆が、イラク北部タルアファルTal Afarとモ-スルMosul近郊へ計6回行われ、現地1月21日午前7時、クルド軍のペシュメルガ部隊が、その方面への大掛かりな作戦を開始したと報道されている。上の右の地図で、赤い実線の中がクルド自治国KRG(首都Arbil、Erbil)で、赤い点線内はクルド人居住区とされる地域で、各部族や民族が混住している地域でもある。地図左はモースル市内地図で、中央にチグリス川が流れている。21-01-2015 Peshmerga hitting ISIS on major Offensive to reach Mosul, 映像記録

5f4fc5fe空爆では、IS部隊、車両、建物、攻撃武器、橋などを破壊したとされるが、具体的な場所は公表されていない。地上攻撃ではすでに、先の2カ所に通じる幹線道路は制圧されたといわれている。
記事の中にある橋とは、想像ではモースル市内中心を流れるチグリス川の橋を意味している可能性があり、モースルを2分する作戦だろうか。モースルへはすでに、攻撃を開始する警告のビラがイラク軍によって散布されていた。
付近の幹線道路は左の地図の赤いラインで、緑色は石油パイプライン。 シンジャルShingalへの大掛かりな掃討攻撃はすでに1週間ほど前から始まっている。シンジャルは、イラク北部のISがシリア側から補給を受ける上で重要な拠点であり、シリア側へのISの退路でもある。
バグダッド近郊では、サマッラSamarra、ファルージャFallujahでISの攻撃が確認されているが、イラク軍が撃退したとの報道もある。キルクークKirkukは現在クルド側の制圧下にあり、周辺での軍事衝突はあるが、市への経路をすべて制圧したと1月4日クルド側が報じ、西部からの難民もキルクークの難民キャンプへ収容されている。すでにキルクークからの石油パイプでのトルコ側への送油が開始されているので、経路上の地域、及びタルアファルTal AfarからはISは敗退していると推測でき、空爆ではモーmosulスルからタルアファルへの交通を遮断したのではと思われる。今までの作戦からは、イラク軍、シーア派民兵が補給路を確保しながら,Ramadi方面、Baiji方面にしてモースル南部へ進撃し、クルド側はモースルの東西北から攻撃に入ると想定できるが、今のところ作戦内容は公表されていない。写真下は、モースルに近づいたペシュメルガ兵士と説明されている。 参照記事 過去ブログ:2015年1月モースル総攻撃迫る イラク 追記:モースル、石油施設開放に向け作戦が進行 イラク 2014年6月イスラム教とバグダッド シーア派 スンニ派 そして日本への影響

resized1月23日の記事では、シンジャルShingalのISはペシュメルガPeshmergaに包囲されつつあるようで、ISは市内の市庁舎など、高い建物を爆破しているという。退却の際に、上層階から車両を狙い撃ちされるのを避けるためと言われるが、シンジャルとシリア、あるいはモースルのISとの連絡網はすでに遮断されたといわれ、相当数のISが孤立すると思われる。 写真左は、シンジャルへ向かうクルド軍、下は、モースルの西側を進軍するペシュメルガで、モースル周辺を解放し、破壊されたISの車両や、200以上ともいわれるIS兵士の遺体が散在していると報告されている。参照記事
98645Image1ドイツ製武器で近代化して、モスールへ着々と進撃するペシュメルガとは対照的に、米軍関係者は、イラク軍は訓練を重ね、モースルへのISの補給路を断つ準備に入ったと語りながら、時期としては春前がベストで、イラク軍はできるだけ早く、自ら作戦に着手すべきと強調していることから、米軍の思ったようには訓練が進んでいないようにも取れる。また最近イラク政府は、まだ武器が不十分で、今のままでは戦闘能力に問題があると語ったとされるが、多くの武器をISに取られた事実を思えば、不完全な軍隊にすんなり武器を与える訳には行かないだろう。何となく、イラク軍に懸命さや危機感が無いように感じるのだが、このことはクルド軍が幾度もコメントしている。「世界一だらしない軍隊」と言われるイラク軍、近いうちに戦いぶりが分かるだろう。現在イラク軍は、モースル東部、南部でのISの補給路の分断と同時に、分散している部隊の連携を急ぐための路線確保を行っている。ぺシュメルガPeshmergaの行動は、要衝での最前線の確保と、司令部の構築だろう。IS内部の士気は低下し、兵士の離反が相次いでいると報告されている。 参照記事 参照記事

99038Image12015年1月24日:モースルの中心部へ迫る勢いのペシュメルガに対し1月23日ISは、市内のモスクに住民を集め、聖職者preachersが信者に戦闘への参加を訴えていると報道された。ぺシュメルガ Peshmergaはモースルする周辺を攻略し、西と北部から迫り、初めて市内中心部へ迫撃砲 mortar fireの攻撃を行ったといわれ、このことは、中心部へ数キロまでぺシュメルガ Peshmergaが迫ったことを意味する。ISは強制的に、住民の男女子供を問わず、15歳以上を戦闘に参加させるようだ。
モースルにはアラブ系住民も多数混在することから、クルド側は、アラブ対クルドの対立への発展を懸念し、イラク軍(アラブ系)の積極的な支援、地上戦参加を要望している。現在イラク軍は、周辺への空爆で参加している。ぺシュメルガ Peshmergaによる21日からの攻撃で、ISの軍高官2名が死亡したといわれ、ここ数日で激しい衝突が起きるとIS側が発言しているが、ぺシュメルガ Peshmergaは、しばらくは陣地の構築と、補給態勢の準備に時間をかけるだろう。参照記事 参照記事

現在、クルド人には自治国内で英国とドイツの派遣兵員が訓練を行っているが、1月24日の記事では、スウェーデンも特殊訓練要因の派遣を検討し、議会内の承認を待っている。スウェーデン国内には、すでに10万人規模のクルド人が移住、居住していることで、彼らの母国の危機に、クルド自治国側からの要望があったようだ。クルド人の当局者は、ISは特殊で残忍な相手で、彼らは体や車に爆弾を装着して自爆する潜在的危険性をもち、また、地雷敷設なども行うため、クルド人兵員には特殊な訓練が必要だと語っている。筆者は、クルド語を理解できない若い層の存在もあるのではと想像する。8月からの戦闘で、ぺシュメルガ Peshmerga兵750人が戦死し、4000人以上が負傷した。スウェーデンは、300万人のイラクとシリアの難民支援にも積極的だが、最近の状況から、隣国フィンランドなどと協力して、ドイツ軍の管理下での軍事面での支援も必要だと判断した。現在のスウェーデン議会には、5人のクルド系議員も参加している。参照記事
svg2015年1月25日:この地域の紛争が将来落ち着いたとして、世界各地のクルド人に祖国帰還が相次げば、クルド国家樹立の問題が大きくなるだろう。地図は、クルド語の分布で見た状況で、緑色の混在している地域のほか、大きくは4つのクルド語方言が使われている。軍事面から見れば、クルド軍の攻撃力を知ったイラクが、今後どのような対応をするのか注目すべき点だろう。イラクはマリキ政権時代の国内汚職、軍部腐敗の一掃に、クルド側との協議に入ったとの報道がある。また、すでに1月上旬、モースル地域で、イラク・ヤジーディ族クルド人Iraq’s Yazidi Kurdsの大量虐殺が確認され、埋葬された子供を含む遺体は320を数えたといわれる。今後彼らへの補償問題、無視された小数民族の、イラク人を含むアラブ民族への反感(IS侵攻時、イラク軍は少数部族を捨てて敗退した)など、多くの問題が予想される。
Tal Afar and three near Mosul.
Tal Afar and three near Mosul.


nappi11 at 03:24│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加

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