2018年12月13日

「現代農業の神話−有機物と微生物から考える」

<地球セミナ127-2 D・モントゴメリー著「土・牛・微生物」第2> <水明子>

 

<緑の革命がもたらしたもの>

 1万年ほど前に農耕が始まってから農業に次の4回の革命が起きている。
1.鋤と畜力の導入
2.輪作、マメ科植物の間作、堆肥の投入
3.機械化と化学肥料の投入
4.緑の革命―品種改良、化学肥料、農薬

(ついで遺伝子組み換え作物と除草剤などの化学製品の組み合わせ)


 これらの革命によって農業生産は飛躍的に増加してきた。穀物生産の推移を示す図を前の記事(第1章)に続いて再掲することにしよう。1人を養うに必要な耕地面積は1960年には21.1エーカーだったものが、2010年には10エーカーを切っている。狩猟採集時代には1人あたり250エーカーが必要だったというから大変な進歩である。

世界の穀物生産の推移[1] 
1970[1]

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2018年12月11日

「肥沃な廃墟―人はいかにして土を失ったのか?」

<地球セミナ127-1 D・モントゴメリー著「土・牛・微生物」 第1章> <水明子>

 

<はじめに>

 「土・牛・微生物」という本の第1章は次のように始まる。

『世界に食料を与え、汚染を減らし、大気から炭素を取り除き、生物多様性を守り、農家の収入を増やす比較的簡単で費用効果の高い方法があると、私が言ったら読者はどう思うだろう? これが本当なら、世界中の政府が大慌てで採用するに違いない。まあ、あるにはあるのだが、採用されてはいない。少なくとも今のところは。』

 
 著者のモントゴメリーが提案する解決策は本の末尾で次のようにまとめられている。

『鋤を捨てる、被覆を作る、多様な作物を栽培する。このような再生可能な農法は、最先端の技術も新しい発明も必要としない。先進国でも開発途上国でも既存の技術を使ってすぐにでもでき、農場の大小に合わせて規模を調節することが可能だ。これまで見たように、すでにこのような農法に従っている革新的な農家は、それが土地とそこで働く人の両方によい結果をもたらすことを証明している。』


 この本は、新しい農業のあり方を訊ねて世界をめぐった探訪記である。土壌学者である著者の住む北アメリカはもとより、アフリカのガーナ、中米のコスタリカなど新しい農業を試みている農場を訪ね、当事者の案内で現場を見て説明を聞く。日本や中国訪問の話も出てくる。ただし、著者本人ではなく、明治後期の日本と中国を訪ねたのはアメリカ農務省のフランクリン・H・キングだったが。本書は、全世界の人々に善い結果をもたらす希望の書になっている。

世界の穀物生産の推移[1]
1970[1]

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2018年12月08日

書籍紹介:「海底二万里」

<ジュール・ベルヌ(集英社、子どものための世界文学の森 71994918円)>  <水明子>

 

小学校低学年向きの名作全集の1冊です。小学校3年生の孫の誕生日に贈りました。念のため同じシリーズから2冊を購入し、通読してからよい方の「海底二万里」を贈りました。原作と比べれば数分の1のボリュームに圧縮されているので、出来栄えは読んでみなければ解らないからです。


 この本は圧縮されている割には原作の面白さを生かしているように思いました。潜水艦の名前はノーチラス号。博士や銛打ちが助けられ、客人として艦内で過すのですが、彼らがノーチラス号に驚きあきれる様子がよく描かれています。まだ帆船の時代で潜水艇など誰も知らないのにその中で暮らしたのですから。ネモ艦長の雰囲気もかなり写し取られています。大人が読めば1時間くらいで読了してしまいますが、子供にはちょうど良い長さでしょう。


 私が小学校3年生の頃は終戦後でしたから本屋も店を閉めていて新しい本は手に入りませんでした。ずっと年上の兄たちの本をむさぼるように読んだものです。その中に「譚海」という雑誌がありました。
1920-1944年の間しか発刊されなかった雑誌です。冒険物語、推理小説、SFが詰まっている雑誌でした。この「海底二万里」を読んで、子供のころの冒険物語がとても面白かったことを思い出しました。

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2018年12月05日

花のm4/3 夕暮のジェット機着陸を撮る

<眼福亭>

 

 伊丹空港滑走路の南東端の千里川堤防は飛行機の着陸を撮る絶好のポイントである。伊丹空港には2A滑走路と3B滑走路がある。前者は小型機用で後者は大型機用である。そのB滑走路の端を千里川が流れている。堤防の上に立つと下の写真の情景が撮影できる。

 
 陽が沈んで滑走路にライトが灯り、飛行機がまだ見える、暗くなる前の短い時間帯がねらい目である。そのころになるとカメラマンが多数集まってくる。平日でも20人くらいはいるだろうか。カメラを持たずに見物だけの人はさらに多い。高さ2mほどの三脚に長さ数十センチのバーズカ砲のようなレンズをつけた人もいる。踏み台に乗ってフェンス越しに滑走路を撮ろうというのだ。

p700着陸

OLYMPUSM1Mark60mm F2.8 Macro、追従連写、手持C-AFF5.01/800秒、ISO800011月下旬、豊中市、クリックで拡大)。

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2018年12月02日

花のm4/3 サフランの紅い雌蕊

<眼福亭>

 

 万博公園の北口を出るとすぐのところに阪大薬学部薬草園がある。阪大吹田キャンパスの東南の隅である。紅葉の季節で花などあるまいと思っていたらサフランが咲いていた。花の中央の黄色が雄蕊、紅い紐のようなものが雌蕊である。雌蕊は3本に見えるがひとつの雌蕊の柱頭が3つに分かれたもの。


 この雌蕊は1g1000円ほどする高価なものである。ブイヤベースの色付けなどに使う。ブイヤベースは魚介類をぶつ切りにした魚汁だからそのままではスープの色があまりよくない。サフランを入れると紅いきれいな色に仕上げることができる。私の得意料理のひとつだからサフランを常備している。少量用いると黄色になる。この点は紅花とよく似ている。


 サフランが薬草園に植えられていたのはブイヤベースのためではない。めまい、頭痛、ヒステリー、不眠症などに効くからである。更年期障害、月経不順、生理痛などの婦人病にも効くという。紅い雌蕊の効能である。

p7002サフラン11ds

OLYMPUSM1Mark60mm F2.8 Macro、深度合成、手持AFF8.01/60秒、ISO40011月中旬、吹田市、クリックで拡大)。



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2018年11月29日

書籍紹介:「アメリカ経済の終焉」

<若林栄四(集英社、20181031日)>  <水明子>

 

この本のタイトルは、世界で最大最強のアメリカの経済が終わるというものである。この種の経済本には売らんかなと極端なタイトルをつけるものが多い。「〇〇国の経済が世界一になる」という本と「〇〇国の経済が破綻する」という本が書店の本棚に並んでいたりする。けれども、この「アメリカ経済の終焉」は本当かもしれないと思うので紹介することにした。


 アメリカ経済の代表的な指標であるダウ(ダウ・ジョーンズ工業株価平均)19291941年の大恐慌のときに40ドルという底値を付けて以来86年間にわたっておおむね上昇し続けてきた。この本の予測は、1世紀近く続いたアメリカ経済の繁栄がもうすぐ終わるというものなのである。現在のダウは26000ドル台という高値だが、著者は2023年に12000ドルまで暴落すると予測している。それだけではなくアメリカの覇権も失われるだろうと示唆している。

20181118アメリカ経済の終焉

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2018年11月27日

花のm4/3 アベマキの黄

<眼福亭>


 紅葉といえばイロハモミジなどのカエデ類を思い浮かべるかもしれないが、クスノキ科やブナ科の黄葉も捨てたものではない。とくに黄葉の美しいのがアベマキである。アベマキといってもすぐにはピンと来ないかもしれないが、関西に住んでいる人なら見たことがあるはず。ブナ科コナラ属でコナラやクヌギの仲間である。クヌギは茶の湯に用いられる菊炭の原料である。川西の黒川集落で今も作られている。


 関西の里山は全体に黄葉する。高木層を占めるコナラ、アベマキ、クヌギが黄葉するからである。なかでもアベマキは写真のように美しい黄色になる。右上の樹木はコナラのようである。コナラとクヌギは黄葉すると茶色がかった黄色になる。写真のコナラはまだ青味を残している。



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OLYMPUSM1Mark25mm F1.8、手持AFF8.01/320秒、ISO40011月下旬、川西市、クリックで拡大)。

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2018年11月24日

太陽の塔入館&阪大薬用植物園・医学資料展示室の訪問

<いつでもLOUPE 散策会103>  <宙生子>

 今春から48年振りに公開が始まり、未だに人気の高い「太陽の塔」に入館した。2ヶ月前に12名入館の予約をとり、本日は好天にも恵まれたなか予定通り12名の参加者があった。

 
 太陽の塔は1975年に永久保存が決まり、2016年耐震補強工事、2018年3月に内部再生工事が完了し現在に至っている。そして今や大阪城、通天閣、太陽の塔は大阪の代表するシンボルとなっている。

図: 東京新聞・記事より転載

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spbiel at 16:18|PermalinkComments(0) 観察と学習 

2018年11月21日

「偏見をのりこえてージャガイモと人間の未来」

<地球セミナ126-3 山本紀夫著「ジャガイモのきた道」 終章> <琴>

 この章では、世界中の人が人口増加問題と地球環境の変化に備えて、ジャガイモの特性を理解し生産を増加することが大切だと説いている。著者は、日本人がジャガイモへの偏見を捨て、日本の若者が農業に関心をもち、研究をとおして世界の食糧問題に貢献してほしいと願っている。


 日本では 1940'45年の戦争による食糧難のとき、栽培が簡単で収穫量が多いイモ類で飢えを凌いだ。その体験世代は「イモはもう沢山!」という思いが強い。一方、戦争を知らない世代は戦後のアメリカンスタイルを受け入れ、ポテトチップスやフライドポテトを好み、偏見はない。


 ジャガイモを栄養価から見たらどうであろうか。よくイモを食べると太ると言われるが、100gに付き、米168kcal、小麦149kcal、ジャガイモ84kcalのエネルギー量である。ジャガイモは米、小麦など穀類に比べてカリウム、鉄、ビタミンC、食物繊維も偏りなく含んでいる。このようなジャガイモの優位性を理解し偏見を捨てようと説く。


アンデスのジャガイモ

「新大陸が生んだ食物」 高野潤(中公新書、2015

新大陸ージャガイモ


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nara_suimeishi at 00:00|PermalinkComments(0) 観察と学習 

2018年11月19日

「伝統と近代化のはざまで―インカの末裔たちとジャガイモ」

<地球セミナ126-2 山本紀夫著「ジャガイモのきた道」 第6章><風鈴士>

 

<はじめに>

 この章では伝統的なジャガイモを栽培しているインカの末裔であるケチュア族と

マルカパタという村で筆者が2カ月間一緒に暮らし、彼らの農作業の実態と日常の

生活を紹介している。彼らは伝統的な農作業と放牧による自給自足的な暮らしをし

、最近では過酷な農作業と貧しさから逃れるため、都会へ流失していく状況なども

明らかにしている。結果的に村民によって共同で行われていた伝統的な農業シス

テムが崩壊、作られるジャガイモの品種も変化、今後、彼らの生活がどのように変

わっていくかを見守っていく必要があると結んでいる。

       図―1.ジャガイモを選別するケチャ人の女性達(本書見開き)
           ジャガイモを選別するケチュア人
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belldeer66 at 06:02|PermalinkComments(0) 観察と学習