芝桜と母子大池−いつでもLOUPE散策会61吹田くわい

2011年05月04日

歌川国芳展−文明開化先取

     楢 水明子(13期風)

 歌川国芳の展覧会が没後150150年を記念して6月5日まで大阪市立美術館で開かれている[1][1]。国芳は幕末を生きた浮世絵師、その芸域の広さは北斎をも上まわり、明治維新を迎える前に早くもヨーロッパを取りこんでいる。文明開化の先取りをしていた国芳の浮世絵を紹介しよう。絵が微細なので、ぜひ画像をクリックにより拡大して見てほしい。
 

 まずはガリバー旅行記の類想から「朝比奈義秀小人遊」。義秀は鎌倉時代の武将、それが奴姿で小人と遊んでいる。右手の指先に乗った曲芸師を見て楽しんでいるようだ。耳から吊り下がった籠からもみあげに鋏を使っていたり、お臍を覗き込んでいる人物もいる。右下でとび職が引いているのはピストルならぬ煙草道具。いたるところにウィットとユーモアがあふれている。国芳はガリバー旅行記を見たことがあるようだ。

朝比奈義秀小人遊(1842)       ガリバー旅行記挿絵(1726)[2]
朝比奈義秀小人遊htm


 





右は1726年に出版されたガリバー旅行記の挿絵。この絵をよく見ると二本差の侍や鎧武者がいる。平安時代の衣装を着ている人や中国風の人物もいるが、日本の風俗を描いているらしい。ガリバー旅行記の第33編で最後に寄る国が日本なのである。実名で出る唯一つの国で、かなり正確な江戸時代の日本が記述されているという。

 次の図は忠臣蔵の吉良邸討ち入りの場面であるが、建物は右図そっくり。右の絵はニューホフ著「東西海陸紀行」からとったもので、16821682年にオランダのアムステルダムで出版された銅版画である。意外と調和してほんとうらしく見えるから不思議である。国芳は他にも何枚か「東西海陸紀行」の図を利用している。


忠臣蔵十一段目夜討之図(1831)           ニューホフ「東西海陸紀行」挿絵(1682)[1]
忠臣蔵十一段目夜討之図忠臣蔵十一段目夜討之図moto













 下の絵の人物は多数の人体の組み合わせからできている。襟から体は1人の人物で11枚目の朝比奈義秀らしい。そうなると顔を造る人物たちは小人だという。髷は黒人だし、手はパンツをはいた異国人というように国際色豊か。舌は赤い越中褌という芸の細かさ。賛は「大ぜいの人がよってたかってとふといい人をこしらへた とかく人のことは人にしてもらわねばいい人にならぬ」とある。

 この絵とよく比較されるのが右の「ウェルトゥヌス」。ウェルトゥヌスというのは季節の変化や果樹園を司るローマの神様のこと。ジュゼッペ・アンチボルトがルドルフ2世を描いたもの。ハブスブルグ家の皇帝はこの肖像画が気にいって画家に貴族の称号を与えたという。国芳がこの絵を見ていたかどうかはわからない。他の例から推定すると見ていたとしても不思議はない。なにしろ好奇心と勉学心のかたまりのような人だったから。

みかけハこハゐがとんだいい人だ(1847) ウェルトゥヌス(1590)

みかけハこハゐがとんだいい人だウェルトゥムヌス

















 さて国芳の戯画の紹介はこのくらいにして、純日本風の作品も紹介しておこう。

 「幼童席書会」は書き初めの集まりを描いたもの。子供たちの顔立ちの愛らしさ、晴着の文様の細かな美しさをぜひ堪能してほしい。国芳はこういう子供の純な様を表現できる純な心を持った浮世絵師だったのである。

幼童席書会(1842))

幼童席書会


















 国芳の美人画を一枚。団扇用に刷られたもの。宮戸川というのは浅草界隈の名酒の銘柄だという。右上の画題のところにギヤマングラスなどさまざまの酒器が描かれている。この美人お酒ですっかり出来上がって桃源郷にいるがごとく。現代劇画のはしりかもしれない。

名酒揃 宮戸川(1846)

名酒揃宮戸川














 「宮本武蔵の鯨退治」はなんとも美しい絵だ。構図が素晴らしい上に愛嬌がある。黒い鯨の肌に点在する白玉は牡蠣だという説もあるが、波しぶきを象徴したものとみなした方が美しい。白い胴体に波打つ黒い帯は、顎の下の盗人結びの続きのように見える。国芳一流の遊び心なのだろう。こんなに美しく愛らしく描かれた鯨はないだろう。鯨冥利に尽きるというものだ。

この絵は江戸美学の真髄を示している。日本という国は国芳のようにたぐいまれな画家を幾人も輩出している。誇るべきことだ。

宮本武蔵の鯨退治(1847)
宮本武蔵の鯨退治


















文献

[1]「歌川国芳図録」日本経済新聞社(2011))

[2] httpwww.kufs.ac.jptoshokangallery059.htm

[3]VISUAL DECEPTION(だまし絵)展図録」中日新聞社(2009)



nara_suimeishi at 21:50│Comments(0)TrackBack(0) アート・イベント 

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