2012年10月25日
奈良・西ノ京を歩く〜薬師寺から秋篠寺まで〜
＜いつでもLOUPE散策会69 譲里 葉子＞
10月16日、秋晴れの気持ちの良い一日、「いつでもLOUPEの会」のメンバー8人は、奈良・西ノ京の散策に出かけた。まず当日のコースを紹介しましよう。
西ノ京駅（10時集合）―薬師寺―唐招提寺―西大寺（昼食）―秋篠寺（解散）
西ノ京駅に集合した８人は、まずは薬師寺へ。ここでの見所は、東塔、西塔、金堂、薬師三尊像と大唐西域壁画などだ。東塔は現在修復工事中であり、シートですっぽりと覆われていた。私は昨秋もここを訪れたが、その時は1,300年間の風雪に耐えた“凍れる音楽”という愛称をもつ東塔の美しさに圧倒された。今回は昭和56年に453年ぶりに復興された色鮮やかな西塔をじっくり眺めた。今回の散策プラナーであるTさんの「裳階をつけているので、六重に見えるけど実は三重の塔です。」の説明に、「他で見ることが出来ない律動的な美しさだなあ」と改めて白鳳時代の文化の高さに驚嘆した。平山郁夫さんの大唐西域壁画を見て、玄奘三蔵が経典を求めて進んだ広大な砂漠の風景にまず目を奪われた。次にメンバー一同、天井の美しい青と床のタイルに描かれた砂漠の草に感じ入った。
薬師寺西塔
唐招提寺の見所は、勿論大修理後の金堂、国宝の三尊と鑑真廟である。井上靖著「天平の甍」を読むと親しみが何十倍にもなる。三尊の中で千手観音像は、まさに千本の手を持っておられ、それぞれの手に何を持っておられか見定めるだけでも見飽きるということはない。日本国内で、本当に千本の手を持つ千手観音像は珍しい。大方の千手観音像は、それぞれの大脇手が何十本かの手を象徴していて、手の総数は数十本におさめられているそうだ。金堂の軒下四隅で大屋根を支えている「隅鬼」は歯を食いしばって重みに耐えているが、どことなくユーモラスであった。鑑真廟の苔の緑は木立の中で一層きれいに映えていた。メンバーが注目したのは廟の前の何気ない木「ケイカ」で、白いアジサイのような可憐な花を夏の到来を知らせるように咲かせるそうだ。「その頃又来たいわねえ。」ということになった。
唐招提寺苔庭
西大寺の境内で昼食を食べ、11月に計画している旅行の打ち合わせに話が弾んだ。佐賀県の吉野ケ里遺跡、大分県にある日本最大の八丁原地熱発電所、九重夢の大吊り橋、黒岳原生林、臼杵石仏など北九州横断旅行に思いを馳せた。
西大寺から秋篠寺まで歩いて15分、ぎっくり腰が治ったばかりのKさんはタクシーで一足先に。私たちはススキ、エノコログサ、コスモスが風に揺れる細い歴史街道を元気よく歩いた。京都の自然は人の手が入って繊細な美しさ、奈良の自然はありのままの自然で田舎臭くて懐かしく、いつ来ても心が落ち着く。
私が秋篠寺を訪れるのは初めて。Tさんが絶賛する伎芸天が見られるということで期待が高まる。門を入って鬱蒼と茂る木立とその下に広がる美しい苔に、この日に訪れた他の3寺とはちがった落ち着きを感じる。そこは訪れる人が少なく森閑としていた。鎌倉時代の建築とされる端正な本堂に入ると、薄暗い中に薬師如来を中心として、左右に日光菩薩、月光菩薩、その他十数体が厳かに並んでおられた。その中で、「あっ、これが伎芸天だ」とすぐわかる仏像が入り口近くに立っておられた。一般に、やさしい顔にしろきびしい顔にしろ仏像はいつでも厳かであるが、伎芸天は腰をちょっとひねったポーズが実に艶めかしくもあり生きているようである。お顔も天女様であるから優しい。さすが諸技諸芸を司る仏さまのしぐさと色気を感じる。素敵だなあと思った。仏像と相対して壁際に長椅子が置いてあった。そこに座って何時間も仏像とお話しする人がいるのでしょう。私たちも10分ほど座って仏像と対話した。TさんはA4サイズの伎芸天の写真を数枚購入した。写真を居間に飾って、毎朝眺めて豊かな気持ちになって、一日の仕事に励むそうだ。いいお寺であった。
大和西大寺駅構内の喫茶店に入り、“一番搾り組”と“スイーツ組”に分かれて一時間余り、またペチャペチャとおしゃべりをした。
秋の楽しい一日でした。
