江戸の易占

管理者  奈良場 勝   ブログ内の解題は『術数書の基礎的文献学的研究 ー 主要術数書解題 』第一集(平成19年)、第二集(21年)、第三集(24年)(『科学研究費補助金研究成果報告書』 研究代表者 三浦國雄)に収録されているものです。

『筭法闕疑抄』は礒村吉徳(?~1710年)著

初版  万治三年(1660)未見
    あるいは寛文元年(1661)未見

新板  延宝二年(1674)山本理兵衛版

増補版 貞享元年(1684)長村半兵衛版 後印本として文化元年(1804)版

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『新板筭法闕疑抄』五巻五冊 (架蔵本は一・二・五巻存)

著者 礒村㐂兵衛尉吉徳

寸法 縦226㎜×横154㎜

表紙 青 貼題箋「新板 筭法闕疑抄 一」

匡郭 四周単辺(巻一 七~十丁、巻五 五~八丁のみ四周双辺) 無界
   縦164㎜×横122㎜

柱刻 線黒口 双花魚尾  巻〇 丁数字

文字 カナ交じり行書体 20~21字×13行

刊記 延寶二年甲寅陽月吉日/山本理兵衛新板

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巻一 山﨑立徳序 一丁
   目録    二丁
   本編    四~三四丁(すべて通し丁)

巻二 目録    二丁オモテまで
   本編    三一丁オモテまで

巻五 目録    二丁
   本編    三~三五丁
   奥書    三五丁ウラ~裏見返し
   刊記    裏見返し



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『増補筭法闕疑抄』五巻五冊 

寸法  縦224㎜×横158㎜

表紙 青 貼題箋「頭書 筭法闕疑抄 一」

匡郭 四周単辺 無界
   縦208㎜×横138㎜

柱刻 下部分のみ有界 「増闕疑抄 一」 丁数字

文字 カナ交じり楷書体 28~30字×15行

刊記 貞享元甲子暦 孟冬吉月/京師 書林 長村半兵衛

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巻一 自序    二丁
   目録    二丁
   山﨑立徳序 二丁
   本編    七~四六丁(すべて通し丁)

巻二 目録    二丁オモテまで
   本編    三~四二丁オモテまで(すべて通し丁)

巻三 目録    二丁
   本編    一~六五丁オモテまで(通し丁ではない)

巻四 目録    一丁
   本編    一~四二丁オモテまで(通し丁ではない)

巻五 百好序   一丁
   百好目録  一丁
   本編    一~六三丁オモテまで(通し丁ではない)
   奥書    六三丁ウラ~六五丁(末丁)ウラまで
   刊記    末丁ウラ






初版については未見であるが、

早稲田大学図書館小倉文庫(数学史家の小倉金之助氏(1885-1962)の蔵書)には、

寛文元年(1661)の版が所蔵されているという。

増補版巻頭の自序中に、「板行」について「万治三庚子年中春の比おひ」とあるので、

初版は1660年あるいは1661年と見て良いと思う。

初版と「新板」との違いは未確認である。

「新板」と「増補」の違いは「頭書」部分である。

「新板」の版面に対して、

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「増補」版の特徴は明らかである。

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しかし、もっとも「頭書」の目的がよくわかるのは巻五である。

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「新板」では礒村吉徳が考案した出題文のみが収められているが、

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「増補」では「頭書」部分が問いの解答になっていることがわかる。

さらに各問いの図の挿入も目的のひとつだったと思われる。

したがって、

巻五では増補の目的が明瞭なのだが、

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巻二 三七丁オモテ上段には、

「八卦占法」の胎内の男女を知る術が収められている。

これが当時の和算の領域だったのかどうかわからないが、

1600年代後半には「術」と「数」に未分化の部分もあったのかも知れない。

和算の方面の論文も紹介しておこう



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 『筭法天元指南』九巻五冊

著者 佐藤茂春

出版 元禄一一(1698年)序刊

寸法 縦224㎜×横160㎜

表紙 青 貼題箋「和解圖式 筭法天元指南 一之三」(巻一から巻三 までの意味)

匡郭 四周単辺 無界
   縦172㎜×横134㎜

柱刻 上象鼻「筭法天元指南」  上片黒魚尾  巻〇 丁数字

文字 楷書訓点漢文体(一部カナ) 23字×11行

刊記 元禄十一龍集戊寅孟春良辰 雒陽 書肆 田中庄兵衛壽梓

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巻一 佐藤茂春序 三丁
   目録    二丁
   用字凡例  二丁
巻二 本編    四~一三ウラまで(用字凡例から通し)
巻三 本編    一一ウラまで  (巻三までで一冊)
巻四 本編    九丁ウラまで
巻五 本編    七丁ウラまで  (巻四・五で一冊)
巻六 本編    三四丁ウラまで (巻六で一冊)
巻七 本編    三丁ウラまで
巻八 本編    一二丁ウラまで (巻七・八で一冊)
巻九 本編    二八丁オモテまで(巻九で一冊)

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天元術ではこのような「算盤」を用いる。

このマス目に算木を置いて演算を行う。

算盤を用いない時は隣の桁と混じらないように

算木の縦横を変えることがあるが、

算盤を用いていれば基本的に変えなくてよいようだ。

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序文に、

「予澤口一之に随て之を學び」とあるように、

佐藤茂春は澤口一之の門人である。

澤口の『古今筭法記』に比べ、

全編にわたって算木の図の多さが際立つ。

算木を使った天元術の普及を意図したことは明らかである。

設問は「~と問ふ。」に始まり、

「答えて曰く、」から「問いに合ふ。」で終わる形式である。

『算法天元指南』巻四巻頭に「太極の下に一算を立るを天元の一と云うなり」

とあるので、

「天元の一を立てる」が占筮の「太極」を立てる作法のもとになっている(あるいはその逆)可能性がある。




架蔵本『古今筭法記』『筭法天元指南』はどちらも京都の田中庄兵衛版である。

紙質と劣化状態から見て、おそらく後印本であろう。

少なくとも寛文年間に田中庄兵衛は開業していないと思う。

大雑書の版本の出版を考慮すると、貞享・元禄年間以降の書肆であろう。

あるいは両方とも1800年以降の版本かも知れない。






和算資料として二種の版本を記録する。

「暦数」が術数研究に欠かせない領域である以上、

近世の和算資料は「数」の面から再検討されるべきであろう。


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『古今筭法記』七巻五冊

著者 澤口三郎左衛門尉一之

出版 寛文庚戌(十年、1670年)序刊

寸法 縦224㎜×横154㎜

表紙 青 貼題箋「古今算法記 一 俱五」(巻二は 二 倶五)

匡郭 四周単辺 無界
   縦156㎜×横112㎜

柱刻 双花魚尾 巻〇 丁数字

文字 かな混じり 行書体 20~22字×11行

刊記 京極第五橋書林 田中庄兵衛壽梓 (年紀なし)

東北大学本の刊記は形式が違うようだ


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巻一 福本道閑序 三丁
   沢口一之跋 二丁
   目録    三丁
   本編    五二丁オモテまで
巻二 本編    三五丁オモテまで
巻三 本編    五七丁オモテまで
巻四 本編    三六丁オモテまで
巻五 本編    三三丁オモテまで(巻五・六・七は合冊)
巻六 本編    二三丁ウラ まで
巻七 本編    二四~二九丁ウラ(巻六から通し丁)

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算木を用いた「天元術」は

元の朱世傑『算学啓蒙』(1299年)に始まるとされる。

『算学啓蒙』の和刻本として『新編算学啓蒙』(1658年)、

和解として『新編算学啓蒙註解』(1672年)と『算学啓蒙諺解大成』(1690年)

があるようだ。

森本光生氏「算学啓蒙の日本における受容」(2009年)参照


澤口一之は『算学啓蒙』の翻刻とは違う方法で

天元術を示したということになるのだろうか。

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巻四から巻七までは、

和算の問題が収められている。

吉田光由『塵劫記』(1627年)以来、

和算書の巻末には「遺題」という読者への出題があったようだ。

例えば七五番の問題には、「鈎・股・弦」の語が見えるが、

これは直角三角形の辺の比、

鈎の2乗+股の2乗=弦の2乗

(ピタゴラスの定理)

に内接する円の問題であろうか。

どの問題も、

「術曰、立天元一為〇〇。」(術に曰く、天元の一を立てて〇〇と為す。)

の決まり文句から演算が始まる。

〇〇の部分が求めるX(エックス)となる。


以下、お手伝い。




成蹊大学文学部の平野多恵と申します。日本文学科の学生による和歌占いのイベントのお知らせです。


成蹊大学文学部日本文学科の平野ゼミでは、例年、秋の大学祭で陰陽師・安倍晴明ゆかりの和歌占い「せいめい歌占」のブースを出展しています。江戸時代の稀少な和歌占い本『せいめい歌占』(成蹊大学蔵)に基づく占いで、2013年以来、大学祭で毎年1000人以上の来場者を占ってきましたが、昨年度の大学祭は新型コロナウィルスの影響で中止となってしまいました。

そこで、オンラインでの「ゼミ祭」を独自に企画し、Zoomを用いた和歌占いのイベントを2021年1月に初開催、2日間で140人以上のお客様をお迎えし、北は北海道から南は九州まで、さらには海外からの参加もあり、好評を博しました。

その好評におこたえして、今回は第2回目の開催です。
昨年よりもパワーアップした内容で、学生がみなさまをお迎えする準備を進めております。

和歌占いって、どんなものだろう?
占いが好きだから気晴らしに参加してみたい。
陰陽師に興味がある。
ゼミのイベントってどんな雰囲気?
PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)に興味がある。
国語の授業に和歌占いを取り入れてみたい。
(和歌占いについては拙共著『国語をめぐる冒険』第2章(岩波ジュニア新書)でも紹介しております)
国語の授業で陰陽師について紹介したい。

それぞれのご関心に応じて、お楽しみいただけるイベントです。
学生が挑戦するオンラインイベントに、ぜひご参加ください!
お近くの生徒さん・学生さんにもご案内いただけましたらありがたく存じます。

> ********************************
【第2回ひらのゼミ祭 開催概要】
・日時: 2022年2月5日(土)13:00~17:00 / 6日(日) 10:00~17:00 定員200名限定
※ゼミ公式ウェブサイト上で占いの予約を受け付けています(事前予約制、各回30分、無料)
成蹊大学ひらのゼミ (hirano-zemi.wixsite.com)

●オンライン和歌占いイベント「開運せいめい☆歌占を体験しよう!」
陰陽師安倍晴明ゆかりの和歌占いが体験できます!
開運☆せいめい歌占はWeb上でワンクリックで占えますが、本イベントでは、ゼミ生があなたのために心を込めて和歌を読み解きます。

開運☆せいめい歌占サイト
https://ssl.japanknowledge.jp/utaura/

オンラインイベント予約サイト
https://hiranozemisai2022utaura.peatix.com/view
イベントの申し込みはPeatixというチケット予約システムを利用しています。
はじめてご利用になる場合、お手数ではございますが、日時を選んだ後に「新規登録」でPeatixアカウントを作成するか、Twitter/Facebook/Google/Appleアカウントでログインしてください。
なお、当イベントは無料ですので、代金の支払いは不要です。

●ゼミ祭コンテンツー陰陽師を見る・知る・楽しむ!
ゼミ祭にあわせて、ひらのゼミ公式サイトで陰陽師の世界が楽しくわかるコンテンツを順次掲載中です。
掲載コンテンツ: 「安倍晴明カルチャーマップ」「陰陽道BOOK MAP」「プロジェクト安倍晴明」「今昔物語集Movie」「陰陽師検定」

ゼミ祭ページ
https://hirano-zemi.wixsite.com/website/%E3%82%BC%E3%83%9F%E7%A5%AD
みなさまのご参加を心よりお待ちしております!

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一枚両面摺り。
縦360㎜×横500㎜。
一枚摺りの「大雑書」に近い。
安政三年(1857)刊。

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特徴としては、
土御門系の占法を謳っていることである。

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しかし、特筆するような占法があるわけではなく、
「方鑑」のような占法を含め、
江戸時代の大雑書的な性格のものと言えよう。




明けましておめでとうございます。
しばらく更新が止まっておりましたが、
2021年9月に大雑書に於ける易についての論文を脱稿。
2021年12月に中世日本の易神の形成についての論文を脱稿。
どちらも2022年出版の論文集に載せていただく予定です。
出版日程が決まり次第お知らせ申し上げます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。


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