国民皆保険

2014年08月31日

第899回 国民皆保険

75ff6864.jpg“死に場所としての自分の家−といえばお分りだろう。戦前は原則として自分の家で死んだ。今は自分の家で死にたくても許されない。かかりつけの医者がいなくなったからである。いても往診してくれなくなった。臨終にたちあわない医者は死亡診断書を書くことができない、禁じられている。

「変死」かもしれないから警察に通報しなければならない。だから救急車を呼んで病院にかつぎこめば死んだことだけは証明してくれる。

開業医が往診してくれたのは昭和三十年代なかばまで、高度成長以来都市では次第に往診してくれなくなった。“


 今から10年前に出版された山本夏彦「夏彦の写真コラム傑作選2」の文章である。山本夏彦は平成14年2002年に亡くなっているのでだいぶ前に書かれたものであるが、夏彦さんなら今日の在宅往診への回帰をどう評論しただろうか。介護保険法は平成9年1997年制定だが、施行は平成12年2000年からなので生前評論するに十分な資料がなかったことだろう。彼ならこのように評論するに違いないと様々に考えたりするが、私は夏彦さんのような筆力はないので書かない。


 開業医が往診してくれた昭和三十年代なかば、国民皆保険が始まった。それ以前の昭和30年年頃まで、農業や自営業者、零細企業従業員を中心に国民の約3分の1に当たる約3000万人が無保険者で社会問題となっていたという。昭和33年に国民健康保険法が制定され、昭和36年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、国民皆保険体制が確立した。(2014年8月31日)


naramachi_sakura at 16:32|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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