2007年05月15日
37 反核町長からオンブズマン町長へ
4月22日の東洋町・町長選挙で有効票の70%以上の支持を得て当選した沢山保太郎氏を東洋町に訪ね、話を聞きました。高知県では、町長選出馬前に市民オンブズマンとしても活躍してきた沢山さんに注目し、住民参加と情報公開を重視する「オンブズマン町長」としての活躍に期待が集まっています。
高知シティFMの収録に同行したときの私の取材メモから、主なやりとりをご紹介します。
―今回の核廃棄物処分場をめぐる町長選挙でのダブルスコア以上の圧勝をどのようにとらえているか。
原子力発電環境整備機構は、東洋町の奥座敷にまで入り込んでいた。本当に苦しい選挙だった。しかし、各地域の女性たちの力で、状況をくつがえした。とても意義深いことだったと思う。あのリーダーたちの真摯な態度を今後の町づくりに生かしていきたい。
―オンブズマン町長として、東洋町をどのような町にしたいか。
私は、民主主義を事業としてとらえている。民主主義は得をするということを、町民にわかってもらいたい。情報を公開し、住民参加を進めれば、町は元気になっていくと思う。町議会を土日に開くことで、町民に公開したい。地域評議会に予算をつけ、自治体制を強化したい。
―町役場内をどのようにしたいか。
法令規則を守らせ、町行政の透明性を高めたい。町役場に入ってわかったことだが、補助金などを使っているのに、領収書が1枚もなかったりする。前町長時代の驚くべき実体がある。たとえば、町経営の駐車場は、年に1000万近い収入があるのに、町の収入になっていない。維持管理は町がしているのに、収入は特定の団体が独占している。そういう不正は、現在どんどん改めているところだ。
―最近、教育委員5人ともが辞めたというニュースがあったが、どうしてか。
教育長は、前町長と一体化していたので、予想はしていた。他の4人は、私が「今後は、教育行政の執行官としてやるべきことをやって欲しい」と話したら、「自分たちにはそんな力はありません」と言って、そろって辞めた。現在、公募制にし、意欲のある人が5人応募してきているので、困らない。
―具体的にどのようにして町を活性化していくのか。
海水浴場のある白浜地区に、2年以内に「道の駅」をつくりたい。その方向で具体的に動き始めている。町内には大きなスーパーがないので、観光客だけでなく、地元町民にも利用してもらい、町内のあらゆる生産活動のてこ入れをしたい。農地の7割が耕作放棄地なので、それを生かして「菜の花プロジェクト」をやりたい。町が美しくなるだけでなく、蜂蜜、食用油、石鹸などが生産できるようになる。
―大阪守口市に東洋町出身者が多いと聞くが、そことの合併を考えているか。
守口市に限らないが、数万とも言われる東洋町の流失人口は大阪に多いので、彼らとの経済的な結びつきを強化したい。
―東洋町の豊かな自然環境を生かした町づくりをどう考えているか。
大人でも子供でも、都会の人にもっと来て欲しい。そのためには、ITなどの先進的な設備も整えたい。現在の商工会の活動は、イベント屋のようなことしかしていない。ばら撒きでなく、もっと地元に金の落ちるような地に足の着いた生活改善の企画を考えたい。現在、農産物、果物、魚介類などを分散して売っているので、一次産品を一箇所にまとめて売りたい。また、大阪方面に販売の拠点を持ちたいと考えている。
インタビューの感想
実質的な住民投票とも言える町長選挙で時間を巻きもどし、前町長の「応募」を白紙撤回させた沢山保太郎氏です。彼だけの力ではありませんが、彼の力量によるところが大きいと私は考えています。この5月20日(日)には、臨時議会で「核廃棄物拒否条例」を制定する予定になっており、今回はたぶん成立するだろうと言われています。
とすると、反核町長としての彼の役割はもう終わってしまいます。口の悪い人は、「もういつ辞めてもらってもいい」などと言います。東洋町の内外でそういう声を耳にしています。しかし、私は、沢山氏には今後、住民参加と情報公開を重視する「オンブズマン町長」として活躍してもらいたいと思っています。これも日本国のあり方に関係していくことでしょう。
これまで行政を監視、批判してきた腕利きのオンブズマンが、行政の権力を握ってしまったのです。話を聞くと、彼には、政治哲学もあり、長年温めてきた具体的な行政プランもあるようです。しかし、反核町長としての役割を終えた彼を、選挙のとき支持した人たちがこの先もなお支持し続けるのかどうか、私には、一抹の不安が残りました。
高知シティFMの収録に同行したときの私の取材メモから、主なやりとりをご紹介します。
―今回の核廃棄物処分場をめぐる町長選挙でのダブルスコア以上の圧勝をどのようにとらえているか。
原子力発電環境整備機構は、東洋町の奥座敷にまで入り込んでいた。本当に苦しい選挙だった。しかし、各地域の女性たちの力で、状況をくつがえした。とても意義深いことだったと思う。あのリーダーたちの真摯な態度を今後の町づくりに生かしていきたい。
―オンブズマン町長として、東洋町をどのような町にしたいか。
私は、民主主義を事業としてとらえている。民主主義は得をするということを、町民にわかってもらいたい。情報を公開し、住民参加を進めれば、町は元気になっていくと思う。町議会を土日に開くことで、町民に公開したい。地域評議会に予算をつけ、自治体制を強化したい。
―町役場内をどのようにしたいか。
法令規則を守らせ、町行政の透明性を高めたい。町役場に入ってわかったことだが、補助金などを使っているのに、領収書が1枚もなかったりする。前町長時代の驚くべき実体がある。たとえば、町経営の駐車場は、年に1000万近い収入があるのに、町の収入になっていない。維持管理は町がしているのに、収入は特定の団体が独占している。そういう不正は、現在どんどん改めているところだ。
―最近、教育委員5人ともが辞めたというニュースがあったが、どうしてか。
教育長は、前町長と一体化していたので、予想はしていた。他の4人は、私が「今後は、教育行政の執行官としてやるべきことをやって欲しい」と話したら、「自分たちにはそんな力はありません」と言って、そろって辞めた。現在、公募制にし、意欲のある人が5人応募してきているので、困らない。
―具体的にどのようにして町を活性化していくのか。
海水浴場のある白浜地区に、2年以内に「道の駅」をつくりたい。その方向で具体的に動き始めている。町内には大きなスーパーがないので、観光客だけでなく、地元町民にも利用してもらい、町内のあらゆる生産活動のてこ入れをしたい。農地の7割が耕作放棄地なので、それを生かして「菜の花プロジェクト」をやりたい。町が美しくなるだけでなく、蜂蜜、食用油、石鹸などが生産できるようになる。
―大阪守口市に東洋町出身者が多いと聞くが、そことの合併を考えているか。
守口市に限らないが、数万とも言われる東洋町の流失人口は大阪に多いので、彼らとの経済的な結びつきを強化したい。
―東洋町の豊かな自然環境を生かした町づくりをどう考えているか。
大人でも子供でも、都会の人にもっと来て欲しい。そのためには、ITなどの先進的な設備も整えたい。現在の商工会の活動は、イベント屋のようなことしかしていない。ばら撒きでなく、もっと地元に金の落ちるような地に足の着いた生活改善の企画を考えたい。現在、農産物、果物、魚介類などを分散して売っているので、一次産品を一箇所にまとめて売りたい。また、大阪方面に販売の拠点を持ちたいと考えている。
インタビューの感想
実質的な住民投票とも言える町長選挙で時間を巻きもどし、前町長の「応募」を白紙撤回させた沢山保太郎氏です。彼だけの力ではありませんが、彼の力量によるところが大きいと私は考えています。この5月20日(日)には、臨時議会で「核廃棄物拒否条例」を制定する予定になっており、今回はたぶん成立するだろうと言われています。
とすると、反核町長としての彼の役割はもう終わってしまいます。口の悪い人は、「もういつ辞めてもらってもいい」などと言います。東洋町の内外でそういう声を耳にしています。しかし、私は、沢山氏には今後、住民参加と情報公開を重視する「オンブズマン町長」として活躍してもらいたいと思っています。これも日本国のあり方に関係していくことでしょう。
これまで行政を監視、批判してきた腕利きのオンブズマンが、行政の権力を握ってしまったのです。話を聞くと、彼には、政治哲学もあり、長年温めてきた具体的な行政プランもあるようです。しかし、反核町長としての役割を終えた彼を、選挙のとき支持した人たちがこの先もなお支持し続けるのかどうか、私には、一抹の不安が残りました。