2007年05月28日
39 東洋町日誌(1)
今年の2月のある日、県外で大学院生をしている娘から電話がかかってきました。「お父さん、東洋町は、どうなっちゅうが?」 その時、新聞社受験を目前にしていた娘に私がどう答えたか憶えていません。しかし、その後、私が娘に伝えた東洋町情報がどのようなものであったかは、その記録が残っています。それを再読し、再考することで、東洋町で1月25日(文献調査応募の日)から5月20日(全会一致で条例成立の日)の間に何が起こっていたのかを振り返ってみたいと思います。
「2月24日 『六ヶ所村ラプソディー』を見る」
昨日、高知市で、鎌仲ひとみ監督の『六ヶ所村ラプソディー』を見ました。もちろん、反対派の企画した上映会です。期待していたよりはるかに優れたラプソディー(叙事詩)に仕上がっていました。監督は、学生時代に『最後の丸木舟』(トカラ列島)というドキュメント映画を見て、この道に入ったのだそうです。私もその映画は見ていたので、なるほどな、と思いました。叫ぶことなく、淡々と事実に語らせる手法だったのです。
冒頭、工業団地を作るための用地買収が終わったところで、いかなる工場もやって来なかったというエピソードが紹介されました。住民は核燃料再処理工場がやって来るとは露知らず、すでに土地を売却してしまっていたのです。今回の東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分施設への「応募」にもそんな罠が仕掛けられているのでは、という予感がしました。国が、住民の反対運動をいかに巧みに、いかに陰湿に、いかに強引に潰していったかもよくわかりました。
また、迫り来る放射能汚染のために、これまでどおり自然とともに生きていこうと固く決意していた人たちの生活が破壊されつつある現実が、ひしひしと伝わってきました。
監督自らが、知的で明瞭な声でインタビューもナレーションも引き受けています。「知識のない声優には任せたくありませんでした。私にしかできないと思いました」と自負を語っていました。実は、カメラも自ら回していたようです。推進派を撮ることになったとき、カメラマンが「推進派は 撮りたくない」と言い出し、衝突したらしいのです。それで、カメラも自ら回したのだそうです。「途中からカメラワークがおかしいのに気づきませんでしたか」と笑っていましたが、気づきませんでした。
鎌仲ひとみ監督が、『東洋町ラプソディー』を作り始めることにならなければいいがな、と思いました。
「再考」
実は、鎌仲ひとみさんとは、大学もクラブ活動も同じでした。鎌仲さんが10年ほど後輩なので、初対面でしたが、映画上映後20分ほど話しました。共通の知人がいて、会話がとても盛り上がりました。私が、「日本人の抵抗精神は、江戸時代の農民一揆の折に、そのDNAを失ってしまったのではないか」と言うと、鎌仲さんが、「そんなことないです。現に、高知の人はこんなに元気じゃないですか」と反論しました。今にして思えば、鎌仲さんのその認識は正しかったということになるのでしょうか。
私は、東洋町でこの『六ヶ所村ラプソディー』を上映すれば、状況が変えられるように思い、しつこくそう働きかけました。しかし、東洋町内部には、私には理解しがたい事情があったようで、「混乱を避けるために」未だにそれは実現していません。今となっては、もうその必要もないでしょう。
2007年5月20日 (日) 東洋町臨時議会において全会一致で可決成立した「東洋町放射性核物質(核燃料・核廃棄物)の持ち込み拒否に関する条例」の全文です。
【目的】
第1条 この条例は、東洋町非核平和都市の宣言に関する決議(昭和61年)の精神に則り、すべての放射性核物質及び放射能による災害から町民の生命及び生活を守り、次世代を担う子供達に美しい自然と安心して暮らせる生活環境を保護し、東洋町及び周辺地域の発展に資することを目的とする。
【定義】
第2条 この条例において、「放射性核物質」とは、原子力発電所など原子力関係施設の核燃料、及びそれらから生ずる使用済み燃料など全ての放射性廃棄物を指す。
2 この条例において「調査等」とは、東洋町において(1)前項原子力発電所等「核燃料」を使用する施設、(2)「放射性物質」の収容施設等、の建設に関する調査及び検査、宣伝等を指す。
【基本施策】
第3条 東洋町は、町地域内においていかなる場合も放射性核物質の持ち込みを禁じ、またそれを使用したり、処分したりする施設の建設及びそのための調査等を拒否する。
【立場の表明】
第4条 東洋町は、第1条の目的を達成するために、国及び関係機関に対して、前条基本施策を通知して、その立場を明らかにする。
【権限】
第5条 東洋町は、第3条に規定する事項に関する計画等があると疑われる場合においては、関係機関及び関係施設に対して関連情報の提供を求め、立ち入り検査を行なうことができる。
2 東洋町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、調査及び施設の供用及び操業の即刻停止を求めることができる。
【町民の義務】
第6条 東洋町住民は、この条例の趣旨を守り、核物質・放射性廃棄物等の町内持ち込みをさせないよう努めなければならない。
【町長らの義務】
第7条 町長、副町長、教育委員、農業委員、町議会議員、町職員ら公務員はこの条例の趣旨を守り、第2条に係る東洋町への放射性核物質の情報については速やかに町民、近隣市町村、高知、徳島両県知事に知らせ、これを隠してはならない。
【委任】
第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、別に規則で定める。
附則
この条例は、公布の日より施行する。
「2月24日 『六ヶ所村ラプソディー』を見る」
昨日、高知市で、鎌仲ひとみ監督の『六ヶ所村ラプソディー』を見ました。もちろん、反対派の企画した上映会です。期待していたよりはるかに優れたラプソディー(叙事詩)に仕上がっていました。監督は、学生時代に『最後の丸木舟』(トカラ列島)というドキュメント映画を見て、この道に入ったのだそうです。私もその映画は見ていたので、なるほどな、と思いました。叫ぶことなく、淡々と事実に語らせる手法だったのです。
冒頭、工業団地を作るための用地買収が終わったところで、いかなる工場もやって来なかったというエピソードが紹介されました。住民は核燃料再処理工場がやって来るとは露知らず、すでに土地を売却してしまっていたのです。今回の東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分施設への「応募」にもそんな罠が仕掛けられているのでは、という予感がしました。国が、住民の反対運動をいかに巧みに、いかに陰湿に、いかに強引に潰していったかもよくわかりました。
また、迫り来る放射能汚染のために、これまでどおり自然とともに生きていこうと固く決意していた人たちの生活が破壊されつつある現実が、ひしひしと伝わってきました。
監督自らが、知的で明瞭な声でインタビューもナレーションも引き受けています。「知識のない声優には任せたくありませんでした。私にしかできないと思いました」と自負を語っていました。実は、カメラも自ら回していたようです。推進派を撮ることになったとき、カメラマンが「推進派は 撮りたくない」と言い出し、衝突したらしいのです。それで、カメラも自ら回したのだそうです。「途中からカメラワークがおかしいのに気づきませんでしたか」と笑っていましたが、気づきませんでした。
鎌仲ひとみ監督が、『東洋町ラプソディー』を作り始めることにならなければいいがな、と思いました。
「再考」
実は、鎌仲ひとみさんとは、大学もクラブ活動も同じでした。鎌仲さんが10年ほど後輩なので、初対面でしたが、映画上映後20分ほど話しました。共通の知人がいて、会話がとても盛り上がりました。私が、「日本人の抵抗精神は、江戸時代の農民一揆の折に、そのDNAを失ってしまったのではないか」と言うと、鎌仲さんが、「そんなことないです。現に、高知の人はこんなに元気じゃないですか」と反論しました。今にして思えば、鎌仲さんのその認識は正しかったということになるのでしょうか。
私は、東洋町でこの『六ヶ所村ラプソディー』を上映すれば、状況が変えられるように思い、しつこくそう働きかけました。しかし、東洋町内部には、私には理解しがたい事情があったようで、「混乱を避けるために」未だにそれは実現していません。今となっては、もうその必要もないでしょう。
2007年5月20日 (日) 東洋町臨時議会において全会一致で可決成立した「東洋町放射性核物質(核燃料・核廃棄物)の持ち込み拒否に関する条例」の全文です。
【目的】
第1条 この条例は、東洋町非核平和都市の宣言に関する決議(昭和61年)の精神に則り、すべての放射性核物質及び放射能による災害から町民の生命及び生活を守り、次世代を担う子供達に美しい自然と安心して暮らせる生活環境を保護し、東洋町及び周辺地域の発展に資することを目的とする。
【定義】
第2条 この条例において、「放射性核物質」とは、原子力発電所など原子力関係施設の核燃料、及びそれらから生ずる使用済み燃料など全ての放射性廃棄物を指す。
2 この条例において「調査等」とは、東洋町において(1)前項原子力発電所等「核燃料」を使用する施設、(2)「放射性物質」の収容施設等、の建設に関する調査及び検査、宣伝等を指す。
【基本施策】
第3条 東洋町は、町地域内においていかなる場合も放射性核物質の持ち込みを禁じ、またそれを使用したり、処分したりする施設の建設及びそのための調査等を拒否する。
【立場の表明】
第4条 東洋町は、第1条の目的を達成するために、国及び関係機関に対して、前条基本施策を通知して、その立場を明らかにする。
【権限】
第5条 東洋町は、第3条に規定する事項に関する計画等があると疑われる場合においては、関係機関及び関係施設に対して関連情報の提供を求め、立ち入り検査を行なうことができる。
2 東洋町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、調査及び施設の供用及び操業の即刻停止を求めることができる。
【町民の義務】
第6条 東洋町住民は、この条例の趣旨を守り、核物質・放射性廃棄物等の町内持ち込みをさせないよう努めなければならない。
【町長らの義務】
第7条 町長、副町長、教育委員、農業委員、町議会議員、町職員ら公務員はこの条例の趣旨を守り、第2条に係る東洋町への放射性核物質の情報については速やかに町民、近隣市町村、高知、徳島両県知事に知らせ、これを隠してはならない。
【委任】
第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、別に規則で定める。
附則
この条例は、公布の日より施行する。
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この記事へのコメント
1. Posted by 東洋町住民 2007年05月28日 23:09
成川さまは東洋町に『六ヶ所村ラプソディー』を上映を勧められていたのですか?
私たちは日時まで決めて計画していましたが、色々内部でありました。ここでは語れませんが、でも、東洋町自然を愛する会(女性部)として約束しています。
一つは『六ヶ所村ラプソディー』を上映する事、
二つ目は女性部が集めた核廃運動に寄せられたカンパで、「東洋町放射性核物質(核燃料・核廃棄物)の持ち込み拒否に関する条例」制定の記念碑を
建立することです。上映の件に関しては、鎌仲監督にお話しをしています。現在日程の調整中です。
成川さまのたくさんのご活躍を拝見いたしております。
今回の騒動では家の中の事まで知っているほど、親しく、あらゆる繋がり、縁者で結びつきがある中、分断して闘われた選挙です。
まだまだ、東洋町の皆さんの心の傷は癒えておりません。
どうか、どうかあたたかくご援助下さいますようお願い申しあげます。
私たちは日時まで決めて計画していましたが、色々内部でありました。ここでは語れませんが、でも、東洋町自然を愛する会(女性部)として約束しています。
一つは『六ヶ所村ラプソディー』を上映する事、
二つ目は女性部が集めた核廃運動に寄せられたカンパで、「東洋町放射性核物質(核燃料・核廃棄物)の持ち込み拒否に関する条例」制定の記念碑を
建立することです。上映の件に関しては、鎌仲監督にお話しをしています。現在日程の調整中です。
成川さまのたくさんのご活躍を拝見いたしております。
今回の騒動では家の中の事まで知っているほど、親しく、あらゆる繋がり、縁者で結びつきがある中、分断して闘われた選挙です。
まだまだ、東洋町の皆さんの心の傷は癒えておりません。
どうか、どうかあたたかくご援助下さいますようお願い申しあげます。