2007年06月01日
42 東洋町日誌(4)
チェルノブイリ原発事故20周年の2006年に公開された、ドイツ映画『みえない雲』(小説の映画化)を5/22に観ました。恋愛映画の背景には原発事故のパニックが流れていました。
映画の中で、原発事故のサイレンを先生より早く聞き分ける高校生たちがいました。また、避難途中で、丘の上に車を止め、車から出て、風向きを確かめ、青ざめた顔を見合わせる高校生たちの姿がありました。もし、日本であのような原発事故が起こったら、日本の高校生たちは、あのように行動できるのでしょうか。
ドイツは、原発全廃の世論70%、国策として脱原発の道を歩んでいますが、現在17基が稼動しています。一方、日本は、国策として原発を推進しており、現在55基が稼動しています。大地震を想定しての避難訓練があるなら、原発事故を想定しての避難訓練もあっていい、と思いました。
チェルノブイリ原発事故の死者は4万人といわれ、今なお放射能汚染による死者は増え続けています。
「3月11日 電気利用の歴史は0.1ミリ」
今日は、久しぶりに合気道の練習に行ってくたくたで帰り、昼寝をしようとしているところに、県議会議員選挙立候補予定者の訪問を受けました。「核廃棄物に関する公開質問状にどう答えたらいいのか、教えてほしい」とのことでした。「高知県・核廃棄物拒否条例」制定のための布石として、県議選立候補予定者に対し質問状を送付していたのです。
その人は、「条例に賛成していいのかどうかわからない」ということでした。それで30分ほどレクチャーして、条例賛成派に洗脳しておかえししました。
私は、「いの9条の会」の7人の設立メンバーの1人なのですが、そのうちの1人の革新系いの町議が、その人を連れてきたのです。「新聞しか読んでいないので、よくわかりません」ということでしたが、(新聞を読んでいれば、わかるはずですが……)と心中思いました。
「電気なしでは人間は絶対暮らしていけません。そういう恐ろしい放射能のゴミは、離れ小島にでも捨てたらどうです?」などと粗野なことをおっしゃるので、「人類の歴史を4mで表わすと、100年は0.1mm、電気利用の歴史はせいぜいその程度のもんです。今の日本人のように湯水のごとく電気を使わなくとも暮らしていけるはずですよ。原子力発電がなくてもやっていけると思いますよ」というお話をしました。
人類出現の歴史については、諸説ありますが、アフリカで発見されたアウストラロピテクスに始まるとすると、400万年前まで遡ります。そして、蓄音機、電灯、映画、アルカリ蓄電池、トーキーなどを発明したエジソンが亡くなったのは、1931年です。だから、人類の電気利用の歴史は、せいぜい、ここ100年くらいと考えていいのです。
今、400万年を4mで表現すると、100年は、0.1mmです。そうとらえると、電気なしで人は暮らしていけないと考えるのは、間違いです。人は、その歴史のほとんどの時間を電気なしで暮らしてきたのです。いやむしろ、電気に依存しすぎることで、今、人はさまざまな能力を見失い、その文明は危機的な状況を迎えつつあるように思います。
「破滅」と「節約」、どちらが得か、よーく考えてみよう。
「再考」
原発に反対だと、科学的じゃないように言われることがあります。しかし、科学的にも、経済的にも、やはり原発はかなりヤバイと思います。「原発に代わるクリーン・エネルギーを言え」ともよく言われますが、クリーン・エネルギーがあればいいですが、なければ、電力不足でも我慢する、「進歩発展」を諦めるという選択肢もあります。
とにかく何とか「進歩発展」しなければいけないと考えるところに発想の本末転倒が生じます。そして、人は何とかしようとして原発に手を染めることになっていくのではないでしょうか。私は、「何をするか」ではなく「何をしないか」ということが環境問題の着眼点だと思っています。
日本の場合は、人口3000万をキープした江戸時代の再評価が必要かと思います。(封建制については、ここでは目をつぶる)鎖国時代の日本列島は、理想的な循環型社会であったと見ることができます。その認識が、宇宙船・破滅号のばく進を弱めるひとつの思想に育っていくのではないかと考えます。
最先端の河川の近自然工法も江戸時代の工法にすぎないというではありませんか。近年もてはやされている有機農法も江戸時代の農法にすぎないというではありませんか。江戸時代に来日したヨーロッパ人は、人口100万の江戸の町(当時の100万都市は世界で江戸だけ)の環境的な調和を見て、驚きの目を見張ったといいます。そして、本国政府に対し、「この国と戦争をしてもたぶん勝てない」と報告したといいます。ここで想起すべきは、江戸時代には、世界中に電力はなかったということです。
「自然」という漢字の意味をよーく吟味して、「進歩発展」信仰から解放されることが必要かと思います。人間だけが選ばれた生き物であるかのように考え、自然を軽んじ続けた「進歩発展」によって、人類は今、自らの生存の危機に直面しています。「今世紀末には、地球上の生物の3分の2が死滅するであろう」という状況を迎えつつあります。今や、地球の自然環境にとって、最も有害な生き物は人類です。ばく進する宇宙船・破滅号からは、今や、飛び降りるより他の選択肢はないようです。
政府は、原発推進を急ぐあまり、そのデメリットについて意図的に国民に知らせていないと思います。のみならず、意図的にメリットばかりを誇大に宣伝していると思います。
元祖・環境問題活動家・田中正造は、足尾銅山鉱毒事件に対する明治政府のあまりの無策に、総理大臣・山県有朋に対し、国会で、「脳がない」と言ってのけました。彼は、学問のある人ではなかったけれど、人間や人間社会について深く考え、そのあるべき姿を洞察していました。そして、何よりも類まれな行動の人でした。
とても「脳がない」人たちが、お国の舵取りをしているのは、今も昔も変わりません。「歴史はくりかえす」というのは正しく、状況は酷似しているように思えます。この危機に直面し、「国家百年の大計」に無関心であることは、田中正造の言葉を借りれば、「亡国」です。
「参考資料」
高知県議会議員選挙(4/8)の立候補予定者に対する質問は以下のようなものでした。(原発さよならネットワーク高知)
1.
高レベル放射性廃棄物の地層処分候補地として、県下19地区が1980年代に調査されていたことをご存知ですか?
2.
高レベル放射性廃棄物には、100万年もの間、放射能が減衰しない核種が混入していることをご存知ですか?
3.
高レベル放射性廃棄物の地層処分は、世界のどの国も未だ確立できていない技術であることをご存知ですか?
4.
文献調査が決定すると、「核のゴミの高知」という風評がたつ可能性があります。一次産品販売や観光に悪い影響があると思いますか?
5.
文献調査が決定すると、新年度から東洋町には最高10億/年の交付金がおります。この交付金が、真に東洋町の財政の建て直しと町の活性化に役立つとお考えですか?
6.
住民や議会の過半数が反対しても、自治体の首長が応募すれば文献調査に進めるという国のしくみを公正だとお考えですか?
7.
県民県土を放射能汚染から護るため、「高知県・核廃棄物拒否条例」制定にご賛同いただけますか?
映画の中で、原発事故のサイレンを先生より早く聞き分ける高校生たちがいました。また、避難途中で、丘の上に車を止め、車から出て、風向きを確かめ、青ざめた顔を見合わせる高校生たちの姿がありました。もし、日本であのような原発事故が起こったら、日本の高校生たちは、あのように行動できるのでしょうか。
ドイツは、原発全廃の世論70%、国策として脱原発の道を歩んでいますが、現在17基が稼動しています。一方、日本は、国策として原発を推進しており、現在55基が稼動しています。大地震を想定しての避難訓練があるなら、原発事故を想定しての避難訓練もあっていい、と思いました。
チェルノブイリ原発事故の死者は4万人といわれ、今なお放射能汚染による死者は増え続けています。
「3月11日 電気利用の歴史は0.1ミリ」
今日は、久しぶりに合気道の練習に行ってくたくたで帰り、昼寝をしようとしているところに、県議会議員選挙立候補予定者の訪問を受けました。「核廃棄物に関する公開質問状にどう答えたらいいのか、教えてほしい」とのことでした。「高知県・核廃棄物拒否条例」制定のための布石として、県議選立候補予定者に対し質問状を送付していたのです。
その人は、「条例に賛成していいのかどうかわからない」ということでした。それで30分ほどレクチャーして、条例賛成派に洗脳しておかえししました。
私は、「いの9条の会」の7人の設立メンバーの1人なのですが、そのうちの1人の革新系いの町議が、その人を連れてきたのです。「新聞しか読んでいないので、よくわかりません」ということでしたが、(新聞を読んでいれば、わかるはずですが……)と心中思いました。
「電気なしでは人間は絶対暮らしていけません。そういう恐ろしい放射能のゴミは、離れ小島にでも捨てたらどうです?」などと粗野なことをおっしゃるので、「人類の歴史を4mで表わすと、100年は0.1mm、電気利用の歴史はせいぜいその程度のもんです。今の日本人のように湯水のごとく電気を使わなくとも暮らしていけるはずですよ。原子力発電がなくてもやっていけると思いますよ」というお話をしました。
人類出現の歴史については、諸説ありますが、アフリカで発見されたアウストラロピテクスに始まるとすると、400万年前まで遡ります。そして、蓄音機、電灯、映画、アルカリ蓄電池、トーキーなどを発明したエジソンが亡くなったのは、1931年です。だから、人類の電気利用の歴史は、せいぜい、ここ100年くらいと考えていいのです。
今、400万年を4mで表現すると、100年は、0.1mmです。そうとらえると、電気なしで人は暮らしていけないと考えるのは、間違いです。人は、その歴史のほとんどの時間を電気なしで暮らしてきたのです。いやむしろ、電気に依存しすぎることで、今、人はさまざまな能力を見失い、その文明は危機的な状況を迎えつつあるように思います。
「破滅」と「節約」、どちらが得か、よーく考えてみよう。
「再考」
原発に反対だと、科学的じゃないように言われることがあります。しかし、科学的にも、経済的にも、やはり原発はかなりヤバイと思います。「原発に代わるクリーン・エネルギーを言え」ともよく言われますが、クリーン・エネルギーがあればいいですが、なければ、電力不足でも我慢する、「進歩発展」を諦めるという選択肢もあります。
とにかく何とか「進歩発展」しなければいけないと考えるところに発想の本末転倒が生じます。そして、人は何とかしようとして原発に手を染めることになっていくのではないでしょうか。私は、「何をするか」ではなく「何をしないか」ということが環境問題の着眼点だと思っています。
日本の場合は、人口3000万をキープした江戸時代の再評価が必要かと思います。(封建制については、ここでは目をつぶる)鎖国時代の日本列島は、理想的な循環型社会であったと見ることができます。その認識が、宇宙船・破滅号のばく進を弱めるひとつの思想に育っていくのではないかと考えます。
最先端の河川の近自然工法も江戸時代の工法にすぎないというではありませんか。近年もてはやされている有機農法も江戸時代の農法にすぎないというではありませんか。江戸時代に来日したヨーロッパ人は、人口100万の江戸の町(当時の100万都市は世界で江戸だけ)の環境的な調和を見て、驚きの目を見張ったといいます。そして、本国政府に対し、「この国と戦争をしてもたぶん勝てない」と報告したといいます。ここで想起すべきは、江戸時代には、世界中に電力はなかったということです。
「自然」という漢字の意味をよーく吟味して、「進歩発展」信仰から解放されることが必要かと思います。人間だけが選ばれた生き物であるかのように考え、自然を軽んじ続けた「進歩発展」によって、人類は今、自らの生存の危機に直面しています。「今世紀末には、地球上の生物の3分の2が死滅するであろう」という状況を迎えつつあります。今や、地球の自然環境にとって、最も有害な生き物は人類です。ばく進する宇宙船・破滅号からは、今や、飛び降りるより他の選択肢はないようです。
政府は、原発推進を急ぐあまり、そのデメリットについて意図的に国民に知らせていないと思います。のみならず、意図的にメリットばかりを誇大に宣伝していると思います。
元祖・環境問題活動家・田中正造は、足尾銅山鉱毒事件に対する明治政府のあまりの無策に、総理大臣・山県有朋に対し、国会で、「脳がない」と言ってのけました。彼は、学問のある人ではなかったけれど、人間や人間社会について深く考え、そのあるべき姿を洞察していました。そして、何よりも類まれな行動の人でした。
とても「脳がない」人たちが、お国の舵取りをしているのは、今も昔も変わりません。「歴史はくりかえす」というのは正しく、状況は酷似しているように思えます。この危機に直面し、「国家百年の大計」に無関心であることは、田中正造の言葉を借りれば、「亡国」です。
「参考資料」
高知県議会議員選挙(4/8)の立候補予定者に対する質問は以下のようなものでした。(原発さよならネットワーク高知)
1.
高レベル放射性廃棄物の地層処分候補地として、県下19地区が1980年代に調査されていたことをご存知ですか?
2.
高レベル放射性廃棄物には、100万年もの間、放射能が減衰しない核種が混入していることをご存知ですか?
3.
高レベル放射性廃棄物の地層処分は、世界のどの国も未だ確立できていない技術であることをご存知ですか?
4.
文献調査が決定すると、「核のゴミの高知」という風評がたつ可能性があります。一次産品販売や観光に悪い影響があると思いますか?
5.
文献調査が決定すると、新年度から東洋町には最高10億/年の交付金がおります。この交付金が、真に東洋町の財政の建て直しと町の活性化に役立つとお考えですか?
6.
住民や議会の過半数が反対しても、自治体の首長が応募すれば文献調査に進めるという国のしくみを公正だとお考えですか?
7.
県民県土を放射能汚染から護るため、「高知県・核廃棄物拒否条例」制定にご賛同いただけますか?
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この記事へのコメント
1. Posted by さくら 2007年06月01日 15:03
成川さま。
静岡県浜岡原発の場合、事故を想定した訓練はすでに行われています。しかしそれはあくまでも、平時に原発だけが事故を起こした時の訓練で、地震が原因の原発事故の訓練はなされていません。
「浜岡原発は東海地震で事故を起こしません」というのが電力会社の説明、「原発は事業所なので県の被害想定に入っていない」というのが、県の防災担当の説明です。
先日、県では「東海地震、富士山噴火、集中豪雨」が連続して来た想定で防災訓練を行いました。こんな訓練はするのに、なぜ地震の時原発が事故を起こした想定で訓練をしないのか、不思議でなりません。
静岡県浜岡原発の場合、事故を想定した訓練はすでに行われています。しかしそれはあくまでも、平時に原発だけが事故を起こした時の訓練で、地震が原因の原発事故の訓練はなされていません。
「浜岡原発は東海地震で事故を起こしません」というのが電力会社の説明、「原発は事業所なので県の被害想定に入っていない」というのが、県の防災担当の説明です。
先日、県では「東海地震、富士山噴火、集中豪雨」が連続して来た想定で防災訓練を行いました。こんな訓練はするのに、なぜ地震の時原発が事故を起こした想定で訓練をしないのか、不思議でなりません。
2. Posted by リバー 2007年06月02日 00:39
ドイツを引き合いに出せば、そんな石炭が豊富な国と比較するより、むしろ資源のないフランスを手本に、となってしまうのではないでしょうか。そのドイツでも、CO2問題や石油価格の高騰、また、自然エネルギーの買い取り等で電力料金が高いことから、原子力見直しの気運が高まっているのも事実です。
ドイツやオランダで、最近、EUの環境規制をクリアできる最先端の石炭火力発電施設を受注しているのは日立です。以前に、アメリカで原発を受注した三菱重工のことを書いておられましたが、自然エネルギーの国、アイスランドの地熱発電を支えているのも三菱重工です。いろいろなノウハウがあって、いろいろな技術にアドバンテージがもてるのでしょう。兵器だけを取り上げるのは、ちょっと見方が偏りすぎではないでしょうか。
ドイツやオランダで、最近、EUの環境規制をクリアできる最先端の石炭火力発電施設を受注しているのは日立です。以前に、アメリカで原発を受注した三菱重工のことを書いておられましたが、自然エネルギーの国、アイスランドの地熱発電を支えているのも三菱重工です。いろいろなノウハウがあって、いろいろな技術にアドバンテージがもてるのでしょう。兵器だけを取り上げるのは、ちょっと見方が偏りすぎではないでしょうか。