2007年06月10日
44 東洋町日誌(5)
6/1の『JanJan』の記事に「安全神話の闇に葬られる原発被曝労働者」がありました。私は、一読して、200人ほどにメールで記事の存在を知らせました。記事の力で、たぶん、もっと多くの人に広がっていったことでしょう。
中に「写真がリアルですね」という返事がありましたが、考えてみれば、初めて見る原発内部がリアルというのも妙な話です。あのクールな文章と重ね合わせるとき、どこにでもありそうな現場写真がリアルに感じられるのでしょうか。
原発の「安全神話」は、意図的に広報され、犯罪的に守られているということ、そのため、今この瞬間にも被曝者は増え続けているということ、いろいろ思い知らされます。
戦後、憲法9条で、日本は「武装」していたのですが、その「武装」が解かれようとしています。歴史的に辛酸をなめた人類の英知の結晶が、「日本国憲法第9条」だと思うのですが、へたに武装すると逆に「丸腰」になってしまうような気がするのですが、……。
今、高知県では、「核廃棄物拒否条例」の制定に向けて、署名運動を展開しています。国も自治体の首長も信用できないことを、「東洋町」が教えてくれたからです。この放射能汚染に対する「武装」に、22,000の人が名を連ねています(5/31現在)。
「3月21日 利潤追求より人命尊重 」
3/14の高知新聞・夕刊に、「三菱重工・米で初の原発単独受注」という記事がありました。1979年のスリーマイル島の原発事故以来凍結していたアメリカとしては、約30年ぶりの原発建設再開で、受注額は最大6000億円になる見込みだそうです。これでも安いのだそうです。2基でこの価格、アメリカは今後20数基新設する計画というから、さらに大きな商いになる可能性もあります。
地球温暖化の追い風を受けて、ドイツでも「脱原発」を見直す動きが出てきていると聞きます。発展途上国では、無条件に科学技術が信奉され、環境問題は軽視されがちですから、すんなり原発が受け入れられていく傾向があります。これは、今後、日本の原発輸出がグローバルに加速していく転機となる重大ニュースなのかもしれません。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場を建設するために、1980年代に、高知県で19地区を調査していたというのは、実は、この三菱重工です。この2つの情報が重なって、ウーン、とうなってしまいました。原子力産業は、長期的展望に立って、原発のサイクルを確立しようとしているように思えます。
原発は、よく「原子力の平和利用」と言われますが、昔から三菱重工は名だたる兵器産業です(兵器生産の割合は13%)。 兵器作りのノウハウが原発に転用できるのか、原発のノウハウが兵器作りに転用できるのか、わかりませんが、私には、原発と兵器のイメージはどうしても重なってしまいます。ともに人命を危うくするものだからです。
原発関連の放射能汚染や劣化ウラン弾で苦しんでいる、世界中の多くの人々のことを想うとき、原発のどこが「原子力の平和利用」なのか、理解に苦しみます。原発のゴミは兵器作りの材料にもなっているそうです。核兵器作りの材料であるプルトニウムも、ゴミとしていくらでも出てきているそうです。この核兵器に化けるかもしれない原発のゴミに対して、IAEAは、多くの予算をさいて六ヶ所村を監視しているのだそうです。
国の後ろに原子力産業がひかえているのか、原子力産業の後ろに国がひかえているのか、さあ、どちらでしょうか? 断言はできませんが、原子力産業の利潤追求に都合のいいように、国の原子力政策が決定されているというのが、真実に近いように思います。
原発の危険性については、国も原子力産業もよくわかっているはずなのです。なのに、「安全神話」を表看板に、原発は増殖を続けているのです。問題は、国民不在のまますべてが決定され、事態が進行しているということです。
今後、原発関連のニュースで「三菱重工」の名前が出てきたら、岩崎弥太郎が高知出身だったことも思い出してください。坂本龍馬だけが、高知出身ではないのです。ご存知のように、三菱の創立者は、「明治の政商」と言われ、政治を動かすことで巨利を得た人です。
「再考」
5/3は、三上満さん(全国革新懇代表世話人)の講演会に行きました。なかなかのお人で、どうして東京都民はこの人を知事に選ばなかったのだろうか、と不思議に思いました。
三上さんの講演の後、国の無形文化財である室戸市の「佐喜浜にわか」が上演されました。室戸市のとなりの「金でふるさとをウランかった東洋町」、「安倍心臓首相」などがお笑いのネタにされていました。国のやり方、首相のやり方をまな板にのせて、庶民感覚で味付けし、バッサリと料理していきました。
「佐喜浜にわか」の台本は、私の知人が書いたのですが、前夜、「今晩は徹夜」というメールが入っていましたから、本番では、皆さんセリフを憶えていませんでした。しかし、その辺のところも笑いの材料にして、寸劇はドッと笑いに包まれ進行していきました。
登場人物は、佐喜浜の漁師、サラリーマンの九条守君、それに、ボンバル機に乗って命がけで高知にやってきた安倍晋三首相の三人でした。日本国憲法をどうするか、大きな身振りと声で、議論が始まります。議論が沸騰し、もつれてくると、首相は、「やかましいわい!」と大声でどなります。その声が、泣く子も黙るくらい大きいのです。
最後に、漁師が、野球のベースを客席に向かって掲げ、「ライトも、レフトも、センターも、正々堂々プレイしいや!」と叫んで、寸劇は幕となります。
考えてみれば、「原子力発電」は、「憲法改正」と同じく国民投票に価するくらいの大問題です。今後、原子力発電をどうしていくのか、国民的な議論が必要と思います。その際、どちらの問題もフェア・プレイで願いたいものです。
最近、TVのドキュメントで、脱原発のアイスランドの地熱発電を技術的に支えているのが、三菱重工であるということを知りました。三菱重工は、脱原発のエネルギー開発にも力を入れているのです。ということは、原発後のサバイバルを、すでに視野に入れているということなのでしょうか。または、金にさえなれば、何でもやるということなのでしょうか。
「参考資料」
高知県における「核廃棄物拒否条例」制定に向けた請願署名
(原発さよならネットワーク高知)
高知県は、黒潮と深い緑に恵まれ、また自由民権運動発祥の地として、個性ある文化を育んできました。
この地に、国は原子力発電の使用済核燃料を再処理したあとの高レベル放射性廃棄物を埋め捨てようと、すでに19地区を候補地として調査しています。ほかにも、RI・研究用放射性廃棄物や低レベル放射性廃棄物を持ち込まれる危険性があります。
これ以上、現在と将来の高知県民に不安を生じさせることのないよう、以下の理由により、高知県として「核廃棄物拒否条例」を制定していただきますよう請願いたします。
請願理由
1 高知県は92〜150年周期で南海地震が起きており、核廃棄物処分地には向かない。
2 埋め捨てという方法はまだ研究段階であり、いま候補地を決めるのは早すぎる。
3 市町村長の決断だけで候補地を決めるという手続きは、民主主義になじまない。
4 地方自治体を貧しくさせ困らせておいて、候補地として手をあげれば大金をもらえるしくみは、どこかおかしい。
5 そもそも、いのちを危険にさらす原子力政策は、見直す必要がある。
中に「写真がリアルですね」という返事がありましたが、考えてみれば、初めて見る原発内部がリアルというのも妙な話です。あのクールな文章と重ね合わせるとき、どこにでもありそうな現場写真がリアルに感じられるのでしょうか。
原発の「安全神話」は、意図的に広報され、犯罪的に守られているということ、そのため、今この瞬間にも被曝者は増え続けているということ、いろいろ思い知らされます。
戦後、憲法9条で、日本は「武装」していたのですが、その「武装」が解かれようとしています。歴史的に辛酸をなめた人類の英知の結晶が、「日本国憲法第9条」だと思うのですが、へたに武装すると逆に「丸腰」になってしまうような気がするのですが、……。
今、高知県では、「核廃棄物拒否条例」の制定に向けて、署名運動を展開しています。国も自治体の首長も信用できないことを、「東洋町」が教えてくれたからです。この放射能汚染に対する「武装」に、22,000の人が名を連ねています(5/31現在)。
「3月21日 利潤追求より人命尊重 」
3/14の高知新聞・夕刊に、「三菱重工・米で初の原発単独受注」という記事がありました。1979年のスリーマイル島の原発事故以来凍結していたアメリカとしては、約30年ぶりの原発建設再開で、受注額は最大6000億円になる見込みだそうです。これでも安いのだそうです。2基でこの価格、アメリカは今後20数基新設する計画というから、さらに大きな商いになる可能性もあります。
地球温暖化の追い風を受けて、ドイツでも「脱原発」を見直す動きが出てきていると聞きます。発展途上国では、無条件に科学技術が信奉され、環境問題は軽視されがちですから、すんなり原発が受け入れられていく傾向があります。これは、今後、日本の原発輸出がグローバルに加速していく転機となる重大ニュースなのかもしれません。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場を建設するために、1980年代に、高知県で19地区を調査していたというのは、実は、この三菱重工です。この2つの情報が重なって、ウーン、とうなってしまいました。原子力産業は、長期的展望に立って、原発のサイクルを確立しようとしているように思えます。
原発は、よく「原子力の平和利用」と言われますが、昔から三菱重工は名だたる兵器産業です(兵器生産の割合は13%)。 兵器作りのノウハウが原発に転用できるのか、原発のノウハウが兵器作りに転用できるのか、わかりませんが、私には、原発と兵器のイメージはどうしても重なってしまいます。ともに人命を危うくするものだからです。
原発関連の放射能汚染や劣化ウラン弾で苦しんでいる、世界中の多くの人々のことを想うとき、原発のどこが「原子力の平和利用」なのか、理解に苦しみます。原発のゴミは兵器作りの材料にもなっているそうです。核兵器作りの材料であるプルトニウムも、ゴミとしていくらでも出てきているそうです。この核兵器に化けるかもしれない原発のゴミに対して、IAEAは、多くの予算をさいて六ヶ所村を監視しているのだそうです。
国の後ろに原子力産業がひかえているのか、原子力産業の後ろに国がひかえているのか、さあ、どちらでしょうか? 断言はできませんが、原子力産業の利潤追求に都合のいいように、国の原子力政策が決定されているというのが、真実に近いように思います。
原発の危険性については、国も原子力産業もよくわかっているはずなのです。なのに、「安全神話」を表看板に、原発は増殖を続けているのです。問題は、国民不在のまますべてが決定され、事態が進行しているということです。
今後、原発関連のニュースで「三菱重工」の名前が出てきたら、岩崎弥太郎が高知出身だったことも思い出してください。坂本龍馬だけが、高知出身ではないのです。ご存知のように、三菱の創立者は、「明治の政商」と言われ、政治を動かすことで巨利を得た人です。
「再考」
5/3は、三上満さん(全国革新懇代表世話人)の講演会に行きました。なかなかのお人で、どうして東京都民はこの人を知事に選ばなかったのだろうか、と不思議に思いました。
三上さんの講演の後、国の無形文化財である室戸市の「佐喜浜にわか」が上演されました。室戸市のとなりの「金でふるさとをウランかった東洋町」、「安倍心臓首相」などがお笑いのネタにされていました。国のやり方、首相のやり方をまな板にのせて、庶民感覚で味付けし、バッサリと料理していきました。
「佐喜浜にわか」の台本は、私の知人が書いたのですが、前夜、「今晩は徹夜」というメールが入っていましたから、本番では、皆さんセリフを憶えていませんでした。しかし、その辺のところも笑いの材料にして、寸劇はドッと笑いに包まれ進行していきました。
登場人物は、佐喜浜の漁師、サラリーマンの九条守君、それに、ボンバル機に乗って命がけで高知にやってきた安倍晋三首相の三人でした。日本国憲法をどうするか、大きな身振りと声で、議論が始まります。議論が沸騰し、もつれてくると、首相は、「やかましいわい!」と大声でどなります。その声が、泣く子も黙るくらい大きいのです。
最後に、漁師が、野球のベースを客席に向かって掲げ、「ライトも、レフトも、センターも、正々堂々プレイしいや!」と叫んで、寸劇は幕となります。
考えてみれば、「原子力発電」は、「憲法改正」と同じく国民投票に価するくらいの大問題です。今後、原子力発電をどうしていくのか、国民的な議論が必要と思います。その際、どちらの問題もフェア・プレイで願いたいものです。
最近、TVのドキュメントで、脱原発のアイスランドの地熱発電を技術的に支えているのが、三菱重工であるということを知りました。三菱重工は、脱原発のエネルギー開発にも力を入れているのです。ということは、原発後のサバイバルを、すでに視野に入れているということなのでしょうか。または、金にさえなれば、何でもやるということなのでしょうか。
「参考資料」
高知県における「核廃棄物拒否条例」制定に向けた請願署名
(原発さよならネットワーク高知)
高知県は、黒潮と深い緑に恵まれ、また自由民権運動発祥の地として、個性ある文化を育んできました。
この地に、国は原子力発電の使用済核燃料を再処理したあとの高レベル放射性廃棄物を埋め捨てようと、すでに19地区を候補地として調査しています。ほかにも、RI・研究用放射性廃棄物や低レベル放射性廃棄物を持ち込まれる危険性があります。
これ以上、現在と将来の高知県民に不安を生じさせることのないよう、以下の理由により、高知県として「核廃棄物拒否条例」を制定していただきますよう請願いたします。
請願理由
1 高知県は92〜150年周期で南海地震が起きており、核廃棄物処分地には向かない。
2 埋め捨てという方法はまだ研究段階であり、いま候補地を決めるのは早すぎる。
3 市町村長の決断だけで候補地を決めるという手続きは、民主主義になじまない。
4 地方自治体を貧しくさせ困らせておいて、候補地として手をあげれば大金をもらえるしくみは、どこかおかしい。
5 そもそも、いのちを危険にさらす原子力政策は、見直す必要がある。
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1. 6月28日にドイツで原発事故発生 [ けんちゃんの吠えるウォッチングーどこでもコミュニティ双方向サイト ] 2007年07月07日 22:54
反原発運動に取り組んでいる知人から「6月28日にドイツで原子力発電所での事故が
この記事へのコメント
1. Posted by リバー 2007年06月11日 02:45
樋口氏の記事ですが、少なくとも「1003ミリシーベルト〜1009ミリシーベルトの被曝線量」は間違いでしょう。本当なら大事件です。
私も、「原発ジプシー」が問題とされた70年代〜80年代初めには集会に参加したりした一人です。あれほどの騒動の後、いくら電力会社が酷くても、同じ事を続けられるはずもなく、「今この瞬間にも被曝者は増え続けている」「何も変わっていないみたい」とは思いません。記事にある四半世紀前の事例…それ以後は反原発運動の中でも優先課題にはなっていませんよね。労災の裁判が続いていることは存じておりますし、個々の件についての断定的な記述にはいろいろ思うこともありますが…。
例えば今「チッソ」に文句があったとして、水俣病をもちだすのはフェアではないですよね。最近反原発活動に入った人が、あの記事で初めて知って驚くのは無理からぬことと思いますが、ルポの専門家としてはいかがなものでしょうか。
私も、「原発ジプシー」が問題とされた70年代〜80年代初めには集会に参加したりした一人です。あれほどの騒動の後、いくら電力会社が酷くても、同じ事を続けられるはずもなく、「今この瞬間にも被曝者は増え続けている」「何も変わっていないみたい」とは思いません。記事にある四半世紀前の事例…それ以後は反原発運動の中でも優先課題にはなっていませんよね。労災の裁判が続いていることは存じておりますし、個々の件についての断定的な記述にはいろいろ思うこともありますが…。
例えば今「チッソ」に文句があったとして、水俣病をもちだすのはフェアではないですよね。最近反原発活動に入った人が、あの記事で初めて知って驚くのは無理からぬことと思いますが、ルポの専門家としてはいかがなものでしょうか。