2015年10月12日

『日本の枯葉剤』

一昨年、私の書いた『枯葉剤がカワウソを殺した』が、『週刊金曜日』の「ルポルタージュ大賞」に入賞した。高知県で枯葉剤を散布した人、埋設投棄された枯葉剤を回収した人、回収作業の総指揮をとった人に会って、話を聞いた。その際、私が参考にしたのが、この本である。

どんなことが書かれているかというと、およそこんなことが書かれている。

第二次大戦中、アメリカは、日本が原爆投下によっても降伏しないことを想定し、次なる一手を準備していた。それが、24Tである。日本の稲作に壊滅的な打撃を与えるための強力な除草剤である。アメリカは、日本人の主食を断とうとしたのである。しかし、日本が原爆投下によって降伏したので、それは不良在庫として残ってしまった。

不良在庫の24Tは、ベトナム戦争時に245Tとして進化し、ベトナムのジャングルを枯らすために使われた。日本もその生産に加担した。

アメリカは、「人体に影響がないので、化学兵器ではない」と主張したが、国際世論は散布を許さなかった。国際世論に押されて、ニクソンが使用中止を命じ、世界中で生産されていた245Tは、だぶつき始めた。さらには、1975年、アメリカの敗北が決定的となり、245Tもまた、不良在庫として大量に残ってしまった。

行き場のない245Tは、沖縄に集められ、日本の林野庁が処分することとなった。除草剤として、日本の山林にまかれたのである。散布を中止した後は、国有林内に埋設投棄された。それは、日本の18の道県に及び、とりわけ高知、宮崎、鹿児島などの人口の少ない場所に埋められたのである。

著者の原田さんは、「日本人の母乳からダイオキシンが検出されるが、それは、約40年前に散布、埋設投棄された245Tのせいではないか」と書いている。日本の自然環境中に漏れ出した枯葉剤によって日本の自然がこうむった被害は甚大だったはずである。カワウソ激減の大きな要因になったと想像される。

私の『枯葉剤がカワウソを殺した』は、昨年、東京の月刊ミニコミ誌に1年間にわたって連載され、原田さんも読むところとなった。それで、フリーライターのMさんと原田さんが高知に取材に来ることとなった。

(2015・8・30記)


narijun1 at 05:21│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔