アメリカ漫遊思い出話(1980年、35歳) その16
キ―ウエストはいろんな人の楽園だった
マイアミからキ―ウエストへ。
キ―ウエストまで約260キロだ。
キ―ウエストはてっきりKEY・WESTつまり鍵・西という意味だと思っていたら、
さっき調べたら、なんとスペイン語でカヨ・ウェソ(人骨の島)と言うんだそうで、カヨがキ―、ウェソがウエストになったんだとか。
ワシはキ―ウエストというヒビキが好きで、キ―ウエストと聞くとすぐにワシの頭のイメージは、サンゴ礁の無数の島を32の橋を渡って走るオーバーシーズハイウエイを思い出す。
それが、アメリカ大陸南、フロリダから、まるで「キィ」の形をした地形になっていると思い込んでいたから、
勝手にそんなふうに格好良く思っていたのだが、なんだ、そうじゃなかったんだ(笑)。
ここを車で走るのはアメリカでは一番気持ちがいいのではないかと思う。
「ご機嫌だぜぃ!」と口に出てくる。
途中のサンゴ礁で出来たところもきれいで素晴らしいのだが、ワシのように車でアメリカ一周を目指しているものにとって、結局は途中に寄ることはなかった。
いつか、本当に観光目的で来たいと思っている。
最南端のキ―ウエストに一日滞在することにした。
ここは、椰子が生い茂る南国の楽園である。
白い浜辺に透き通った海。
アメリカ人は幸せである。アメリカの国内に、熱帯の楽園があるのだから。
たとえば日本だったら、沖縄があるが、沖縄には船か飛行機で行かねばならない。
日本の鹿児島から陸路で途中何本もの橋を経由して沖縄に行っているようなものなのだ。
アメリカ国内にでも変化に富んだ地方がたくさんあり、ひとたび、陸続きの外国に目を向ければ、アメリカは車さえあれば、ガソリン代を考慮に入れなければ、
それこそ、メキシコにも南米にもブラジルにも、北はカナダにもアラスカにでも行けるのだから、ワシはこの意味ではアメリカ人が羨ましい。
なんせ、日本は島国なんだからねえ。
ワシはサンフランシスコに落ち着いてからは、メキシコにも行ったし、カナダまでスキ―をしにいったことがある。
メキシコは2回いったが、その1回は、誰と行ったと思います?
もの凄いお人と二人で行ったのですよ。
実はワシがアメリカ滞在中にある超有名な大物漫画家がいらっして、なんと、ワシのボロ車で、サンジェゴまで連れていってほしいとオファーがきたのだ。
もったいぶらずに言うと、その方は、なにあろう、
あの手塚治虫大先生なのだ。
手塚先生とのサンジェゴ行きは、別テーマを立てて、このブログで書いていこうとおもっています。
乞うご期待を。
さて、キ―ウエストだ。
どこも南国特有の空気に溢れていて、素晴らしいのだが、アメリカから来ている若いカップルを見るにつけ、なんでワシはひとりぼっちでこんな美しいところにいるんだろう?
要するに、寂しいのだ。
ムチャクチャ寂しさが込み上げてくる。
かといってそれにめげるわけではない。
ワシもいつかは、漫画で財を成して、超美人の彼女を作って、こんな南国の島を訪れてやるっ!!!と妙な(空)元気を抱いたりする(笑)。
カフェでぼんやりとコーヒーを呑んでいたら、40くらいの、なかなかハンサムな男がワシの隣に座る。
「日本人?」
「そうです」
「どうですか、車でキーウエストご案内しますよ」
ワシは気のいい男について行った。
車に乗る。しばらく走ったら、海岸の人がまばらなところに止まった。
すると、ワシの股間にスーッと彼の手が伸びる。
おっとっと、アレか、ゲイだったのか。
サワサワとズボンの上から触られる。
意外と気持ちがいい。
なんせ、寂しい。
ふらりとそんな関係になってもいいかなと頭に過ぎる。
悪い男ではない。
ホテルにこれから行かないかとお誘いが。
ワシのペニスは情けないことに勃起している。
しかし、この時、アメリカ人の友人の声が聞こえてきた。
「アキラ、スケベなきみはアメリカで当然、女遊びをしょうとするだろう。それは、時期が悪い。今、アメリカでは妙な病気が流行りつつある。
エイズといって、セックスで感染していくやつだ。
絶対に不特定多数の女とセックスしないように。
それと、なぜかゲイの間で流行りつつある。」
やはり、ビョーキは怖い。
ワシはお断りをした。
なぜだ? という。
理由を言うと、エイズの事は知っている。コンドームを使うから心配いらないと。
そんなことを言われても、やはり、気持ちが悪い。
そんなことがあってから、再びこのキ―ウエストの街を眺めると、
なんと、ゲイのカップルがうじゃうじゃいるではないか。
カフェでゲイカップルがキスしている。
こんな光景はここでは当たり前なのだ。
調べてみると、新聞広告や、町の広告に、やたらとゲイ専門のホテルが出ている。
なんのことはない、キ―ウエストはゲイ達が集まる世界一のゲイ天国楽園だったのだ。(現在はどうなのか知らないが)
ワシ、ビックリ!
ワシは、女遊びをするわけでもなく、
この夜は、一人で車のなかでビールを飲んで寂しく寝た。