その11、②、懐かしくも昔の車はオソロシかった。ベンツ・600SL・V12・R129(1992年―2001年)
ハンドリング不調。エアサス不調。アクティブサス不調。エンジンと駆動系切断。
これらのトラブルでまたしても事故寸前に陥った。
この旨、ヤナセ中古部門の担当に文句を言ったら
「中古ですから、新車とは違います。何らかのヘタリはあります」
のらりくらりとはぐらかす。
ワシは頭に来て、この車を見にこちらに来てくれと言った。
何日か経って、しぶしぶ来た。
ワシは言った。
「アンタは、ワシをまるっきり車を知らない素人と思っているんだろう。ワシはこれまで、何台も車を乗り継いできた。こんな最悪な車は初めてだ。」
「当社としましては、中古ということで、販売していますので、ある程度は仕方がないことだとご理解を得ていただきたいのですが」
「だから、アンタはワシを素人だと思っているのかと言っとんじゃ」
「そ、そんな、そうは思ってはいませんが、なにぶん中古ではありますから、新車と同じだとは・・・・」
「中古だといっても、2年落ちだ。走行距離も24000キロ。ベンツがそれだけでヘタルか?
もし、この距離でこんなになったらおかしなもんだ。
おそらく、ヤナセもこの前オーナーに騙されているんだよ。
この距離数は変だ。巻き戻しされている。
運転席のシートのヘタリがひどい。
このヘタリ加減から見ると、おそらく、6万から10万キロくらい走り込んでいるだろう。
1年で3万から5万だ。
この前オーナーは所有者名から見ると、芸能プロの車だ。
おそらく、毎日、相当の距離走っていたと思われる。タレント送迎とか、地方巡業とかね。
ワシもこのシートのヘタリは後から気が付いた。
ヤナセを全面的に信用していて、注意深く見なかったのが失敗のもとだ。
まさか、ヤナセがと言うのがワシの感想だ。」
「巻き戻しはないと思いますけど・・・・」
知らばっくれるワイ(知ってるくせに)。
シートのヘタリは走行距離を物語っている。
「はっきりと言おう。この車は、ハンドリング不調。アナタが走って見ればわかる。これが正常だというのなら、アンタは車屋ではないよ。
それから、エアサスが効いていない。同じくアクティブサスも壊れている。
この三つを完全にしていないとアナタは欠陥車を売ったことになります。
中古と言っても800万ですよ。こんなに高い買い物をして欠陥車をですか?
第一、危うく、カーブで死ぬところだったんだ。
こんないい加減な商売していて恥ずかしくないのかっ!!!ヤナセともあろうところが!」
「社に戻って、検討してみます。少し、お時間をください」
そう言って、担当はワシの車を運転して帰って行った。
1週間後、
「確かに不具合がありました。整備に1週間ほどかかりますが、申し訳ありません、お預かりいたします」
1週間後、ベンツ600SLは届いた。試乗してみる。見事に、変身していた。
ハンドリングも良し、エアサスもアクティブサスも効いている。
「これがこのSLの本来の動きなんだな。完璧だ」
「新車と同じになっていると思います。どうもご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「ちなみに、エアサス、アクティブサス、ハンドリング、修理にいくらかかったの?」
「軽自動車、一台分。54万かかりました」
「だいたい、中古として売るときに、その54万かけて、問題ない車にして売るのが通常なんじゃないの」
「すみません、今後、車をよく見てから販売して行きます。今回の件、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「天下のヤナセだ。ワシはヤナセだから信用して大枚をはたいたんだ。
まあ、こちらの言うことを聞いてくれたんだから許してあげるが、買い手が素人だったら、あのまま、乗っていただろうね。
あこぎな商売はしないほうがいいな。天下のヤナセが泣くぜ」
まあ、今から20年ほど前の話だが、ヤナセがこんな状態だったのだ。
こうして一件落着して、ワシは快適に、このあとは走れたが、この車は験(ゲン)が悪い。
あと一つ、突然、エンジンと駆動系が切断する可能性が十分にある。
首都高速でそうならないとも限らない。不安な車だ。
それに燃費が圧倒的に悪い。都内で4~5キロの、ガブ飲み車(笑)。
ワシは3カ月ほどで、乗り換えることにした。
ヤナセに引き取ってくれと言ったら、買い取るとしたら、200万だという。
仕方がないので、他の中古車屋で、もう忘れたが200万より少し高く売って処理した。差し引き約600万!
たった3ヶ月で600万が消えた。
まあ、早い話が、ヤナセにしてやられたんだね。ワシも人がいいねぇ(笑)。
もう、二度と中古車は買わないと決心した。
思えば、5万円の中古カメラも欠陥機だったっけ。ワシは中古についていない(笑)。
次に乗り換えた車は、ワシの一生で、最後の車にしょうとした、つまり、10年も20年もしっくり馴染めば一生乗るつもりの車に乗り換えたのだ。
それは超高級車、BMWのスポーツカー、Z8だった。
しかし、これも、これまでの地獄の車に輪をかけたひどい車だったのだ。
Z8の欠陥ぶりは次回に書きます。
成田アキラの電子書籍