オンナの本性を教えましょう
その324、≪86≫先生、可愛い自慢の女房を鑑定してください。あかねさん(43)パート1
ワシのホットラインには、時々、ご亭主からかかってくる。
「ええ、可愛い自慢の女房です」
「可愛い自慢の奥さん・・・、いいんですか、ボクみたいなわけのわからん男に会わせて」
「先生のことはよく知ってますから」
「漫画のボクをでしょう」
「そのまま、先生が出てますから」
「女房あかねは43、わたしが56です。ある工芸品を、わたし一人で造って生計を立てております。ええ、凝り性ですねぇ、確かに・・・」
「わたしが39のとき、原石を発見したんです。ハハハ、26歳の原石、女房ですがね」
「先生は漫画の中で、品と恥じらいのある女が最高だとおっしゃってましたよね」
「そう、そこに行きつくね」
「もちろん、それは大いに同感です。わたしがあかねを選んだ理由は、処女であったことと、性格が素直だったからです」
「素直さかー、それで、原石なんですね。なるほど、それはいいなァ」
「疑うことを知らない、騙されやすい女とも言えます」
「で、原石は宝石になった! 輝いたわけですね」
「ええ、それで、だれかに認めてもらいたいと思い始めまして・・」
「それで、ボクにその宝石の鑑定をしてほしいと――、けど、奥さん、よく承知しましたねぇ」
「1年前、この話を持ちかけたら、一晩中泣かれましてねぇ、口説くのに1年かかりましたよ」
実はこのダンナさん、若いころからハゲていて、モテるタイプの方ではない。
漫画の出だしのところで、ハゲた彼のうしろ姿をことさら強調してある。
これは、彼が言うには“わたしみたいなハゲオヤジが女房と歩いていると振り返られる、アハハハ”という、彼の思いを漫画の冒頭に持ってきてあります。
富山県、越中八尾駅――――
先生、女房にとっても幸せな一夜になると思います。よろしくお願いします――――
ダンナさんの依頼を受け、ワシはあかねさんを越中八尾駅で待った。
「自慢の宝石、可愛い自慢の女房か、ムフ~~ン」
小さなローカル駅の改札口から出てくる女性が見えた。
「え? あのひと(女)か?」
「はじめまして・・・」
身長160くらい、丸顔ですこし、ふくよかな方。
ツバの広い白い帽子、長袖シャツ、袖で手をすっぽりと覆っている、それに薄ピンクのチョッキ。
スカートはくるぶしまであるロングスカート、カバンと日傘を持っている。
このクソ暑い夏に、このいでたち。汗をハンカチで拭いている。
なんじゃ、こりゃ?と、第一印象はそう思った。
「あ、タクシー待たせてあるんだ。あれで・・・」
彼女がタクシーに乗り込むとき、髪が腰下までのロングヘアであることに気が付いた。尻がデカイ。
「小牧ダムの湖を、ここから船で30分。大牧温泉は船でしか行けないんだ。秘湯の峡谷にある一軒宿だよ」
船に乗っている間じゅう、あかねさんは顔を赤くして、ほとんど話に乗って来ない。
ここ富山県にある秘湯の一軒宿。大牧温泉に船が近づく。
湖岸にせり出した、圧倒されるほど大きな三階建て木造建築の横に長く連なる旅館が迫ってきた。
「すごいな、せり出したように建ってるよ」
「まー、ほんとにすごいところ」
やっと、口を聞いてくれた。
ワシ、ホッとする。
ワシらの部屋は、もちろん和室。襖に大きな文字での墨書がしたためてある。12畳ほどの部屋と8畳のふた間続き。
大きな和風テーブルに向かい合って、お茶を飲む。
改めて彼女の顔を見ると。
「43には見えないよねぇ、30・・・、いや、25くらいでも通るな―」
恥ずかしそうに下を向いている。
「いえ・・」
「鑑定してもらうだけと言われて・・・」
「ハハハハ、そうか、あかねさんにご主人、そう言って、ハハハハ」
「鑑定だなんて、ボクも初めてだよ」
しかし、どこが自慢の女房なのか、正直言ってわからなかった。
「夏なのに半袖にすればいいのに。すごく汗かいてたよ」
「日に焼けたら主人に叱られますから」
「指も出しちゃだめなんです。変でしょう厚化粧。外に出るときは、しっかり日焼け止めさせられます」
このあたりから、初めて、ただならぬ気配をワシは感じた。
ご主人のあかねさんへの思い入れ・・・いや、それ以上の・・・・。
そう、ただならぬ女だったのだ。
次回、パート2に続きます。