60年代作品

2019年11月08日

成瀬巳喜男没後50年記念上映会

成瀬巳喜男没後50年にあたり、神保町シアターでは11月9日より12月20日まで成瀬作品が上映されます。
上映作品の中で個人的お勧めは、『おかあさん』と『はたらく一家』あたりなのですが、『乱れ雲』と『乱れる』もしばらく見ていないので、改めて観たい気分です。
『乱れ雲』では、浜三枝が窓ガラスにハンカチを貼っています。
私が小さい頃には、浜三枝のように洗ったハンカチを窓ガラスに貼って乾かしていました。
皆、そうしていたと思います。こうするとハンカチの皺伸ばしになって、アイロンをかけなくても済んだのです。
私が成瀬映画を知り、『乱れ雲』を初めて観た時には、ハンカチを窓ガラスに貼ることは一般的でなくなっていましたので、「ああ、そういえば、こうしていたなあ」と懐かしく思ったものでした。


原節子主演の『めし』、『驟雨』、そして『山の音』が上映されず、めったに取り上げられない『妻の心』(こちらの主演は高峰秀子)はやはり落選しています。
一方で、『旅役者』、『お国と五平』、『石中先生行状記』といった作品が上映されるのは珍しいかもしれません。
『石中先生行状記』は原作が石坂洋次郎です。
劇中に原作者(石中先生)が登場するのですが、石坂洋次郎が出演依頼を断ったため、原作の挿絵を描いた宮田重雄が先生を演じています。
さて、この宮田重雄ですが、獅子文六の『青春怪談』の挿絵も描いています。それを原田治著『ぼくの美術ノート』で見ましたが、巧いです。
(獅子文六も今年、没後50年。獅子文六の小説はたくさん映画化されていて、11月末まで阿佐ヶ谷ラピュタにてモーニング上映されています。)

成瀬と結婚し別れることになる千葉早智子主演の『妻よ薔薇のように』もお勧めです。
この映画で千葉早智子の父を演ずる丸山定夫は、太宰治と交流があり、広島の原爆で命を落とした人です。



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2016年02月27日

『にっぽんのお婆あちゃん』の出演者たち

『にっぽんのお婆あちゃん』は今井正監督、1962年の映画。
この映画にはミヤコ蝶々・北林谷栄・飯田蝶子といった昔テレビで親しんだ人たちが出ている。
ミヤコ蝶々なんて随分久しぶりじゃないか!

浅草の仲見世で北林谷栄とミヤコ蝶々が出会う。
二人とも嫌なことがあって街に出て来たのだった。
一方、養老院には成瀬映画や小津映画で見知ったおばあちゃん、おじいちゃんが大勢。
中でも驚いたのが斎藤達雄。
成瀬では『夜ごとの夢』(1933年)、小津では『落第はしたけれど』(1930年)など多くの無声映画に出ているので、相当な高齢だろうと思いきや、小津映画で見知った姿より少しふっくらして、かっぷくもよい。
本当に斎藤達雄??とにわかには信じられなかったが、間違いではなかった。
下の画像は『夜ごとの夢』の斎藤達雄(右端、「映画読本 成瀬巳喜男」より)。

夜毎の夢


そこで、この映画に出演しているおばあちゃん、おじいちゃんの実年齢を比べてみることにした。(ウィキペディアを参照)
斎藤達雄は1902年生まれ、当時60才。渡辺篤、中村是好、飯田蝶子より若い。

東山千栄子(当時72才):小津の『麦秋』『東京物語』
左卜全(当時68才):成瀬の『あらくれ』
飯田蝶子(当時65才):小津『一人息子』(1936年)他、成瀬『妻として女として』
渡辺篤(当時64才):成瀬『石中先生行状記』他、小津『和製喧嘩友達』(1929年)
中村是好(当時62才):成瀬『旅役者』『おかあさん』他
斎藤達雄(当時60才):小津のトーキーでは『戸田家の兄妹』『宗方姉妹』他
浦辺粂子(当時60才):成瀬『あにいもうと』『稲妻』
菅井一郎(当時55才):小津『麦秋』の原節子のお父さん役、東山千栄子と夫婦役
織田政雄(当時54才):成瀬『女が階段を上る時』の高峰秀子のお兄さん役
伴淳三郎(当時54才):成瀬・小津の映画には多分出ていない
沢村貞子(当時54才):成瀬『晩菊』(この映画では養老院の栄養士役)
北林谷栄(当時51才):成瀬・小津の映画には多分出ていない
柳谷寛(当時51才):成瀬『旅役者』(この映画ではお巡りさん役)
ミヤコ蝶々(当時42才):成瀬・小津の映画には多分出ていない

『にっぽんのお婆あちゃん』は、お話が最後に落ちなかったりで今一だったが、久しぶりにミヤコ蝶々の姿が観られたことに満足しよう。
他におばあちゃん・おじいちゃん役ではないが、殿山泰司、三木のり平、渥美清、小沢昭一、十朱幸代、市原悦子、木村功、田村高廣のみなさんが出演。

この映画の養老院の名前は「福寿園」。
『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』(1960年、鈴木英夫監督)で笠智衆の次男がお菓子を届ける養老院も「福寿園」だったような気もするが、、、違っただろうか?(もっとも、『にっぽんのお婆あちゃん』の養老院はロケではなくセットだと思われるが。)

メモ:
斎藤達雄のウィキペディアのページによると、彼は一時期、井上雪子と結婚していたという。
井上雪子は、小津の『美人哀愁』(1931年)『春は御婦人から』(1932年)に出演したオランダ人とのハ−フ女優。この2作品に斎藤達雄も出演している。
蓮實重彦著『監督小津安二郎』の最後にあった井上雪子インタヴューによると、小津は彼女のおでこをとても気に入っていたそうである。
 



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2015年08月25日

『娘・妻・母』再観

 

先に読んだ2冊の本(『成瀬巳喜男 映画の面影』と『原節子 あるがままに生きて』)に出てきた『娘・妻・母』の原節子と仲代達矢のキスシーンが果たしてどんなものだったか、気になり、『娘・妻・母』を再び観る。
『娘・妻・母』はDVD化されており、レンタルもできるので御やすいご用である。

問題のキスシーン、(あくまで個人的感想であるが)今観ても仲代達矢が気持ち悪い!
仲代は原に3回もキスをするのだが、どれも仲代の後頭部側からの撮影で本当のところはわからないものの、中尾さなゑ(原の親友)さんのお願い通り、本当のキスはしていないように思われる。

映画は最後、原節子・森雅之・草笛光子・宝田明・団令子という5人の子供の母・三益愛子が、
1)再婚して京都に行く原と一緒に生活するか(原の希望)、
2)長男の森雅之・高峰秀子夫婦と生活するか(高峰の希望)、あるいは、
3)老人ホームに入るか(本人の考え)、
という三択から結局どれを選ぶのか、、、の結果を見ないうちに終わる。

三益愛子が、穏やかで理解があり、実によい母である。
彼女が還暦のお祝い時に着ていたちゃんちゃんこが赤ではなくだいだい色だったので、フィルムの色が結構褪せているのかもしれない。

メモ1:
レンタル用DVDの特典で観ることができる当時の予告は、「17大スターの競演!」と宣伝している。
その17大スターとは。。。
原節子(ウィ!)、高峰秀子(ウィ!)、草笛光子(ウィ)、淡路恵子(ウィ)、団令子(ウィ)、北あけみ(誰?)、中北千枝子(ウェ)、森雅之(ウィ!)、宝田明(ウィ!)、小泉博(ウィ)、太刀川寛(う〜ん)、仲代達矢(ウィ)、加東大介(ウェ)、上原謙(ウィ!)、笠智衆(ウィ)、杉村春子(ウィ!)、三益愛子(ウェ)

メモ2:
銀座で買った高いショートケーキ(一切れが大きい!)が80円。
三女の団令子が家に入れていたお金が月2500円。
それじゃあ、私は5000円ね、と出もどりの原は言う。



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2007年06月26日

『女が階段を上る時』(1960年)

銀座のバーのお雇いママ、高峰秀子のお話。
こういった世界は苦手であるので、敬遠してきたが、改めて観ると、初めの方に藤木悠と横山道代が出ている。山茶花究も出ている。他に、沢村貞子、細川ちえ子、中村鴈次郎、千石規子、菅井きん、といった面々が出ているのだが、銀座の夜の世界に埋もれてしまっているかのようである。
音楽は黛敏郎。小津の『お早よう』の音楽とはうってかわったジャズ風。

秀子は、この世界が嫌になっていた。
占い師に観てもらったら、「近々良い縁談がある」と言われた。
母が加東大介のことを、良さそうな人じゃないか(太った人に悪人なし)と言った。
加東がダメもとで結婚を申し込んだ。
その直後に嫌なことがあり、秀子が動揺しているところへ加東が現れて、優しくした。
そして、秀子は加東と結婚することにしたのだった。
しかし、、、

秀子と4本の煙突この映画で、一番印象的な場面:

遠くに工場らしき建物が見える殺風景な空地に、加東大介の妻(本間文子)と秀子が向い合って立っている。
その周りを、三輪車がぐるぐると回っている。
三輪車をこいでいるのは、二人の男の子で、ひとりは座って一生懸命ペダルを踏んでいる。
もうひとりは、その子の背中にひっついて後輪の軸に片足を乗せ、もう一方の足で地面を蹴りながら、本間と秀子を見ている。
三輪車は、紐の先に空き缶を引きずり、カラカラと乾いた音をたてている。
本間は、洗濯物が入ったタライを両手にかかえている。

本間:お恥ずかしい話ですが、うちの人は見かけによらない女癖の悪い人でしてねえ、いつも結婚を餌に女の人をだますんですよ。
【カメラ、秀子を映す】今までに何度シリ(?)を持ってこられたか、わかりゃしません。
【カメラ、本間を映す】実は今度も、お隣の自動車をかったまんま、もう1週間もうちに帰らないんです。いまさら、焼きもちを焼く気もありませんが、あんまりお隣から責められるもんで、ちょうど忘れていった住所録の手帳から、
【カメラ、秀子を映す】女の名前で電話のあるところへ全部かけた訳なんです。
【カメラ、本間を映す】根はそう悪い人じゃないんですけど、柄にもなく見栄っ張りでしてねえ、でまかせの嘘をついているうちに、いつかそれを本当のように自分でも思い込んでしまう、
【カメラ、秀子を映す】そういう人なんですよ。やたら電話したばっかりに、とんだご迷惑をおかけしました。
【カメラ、本間と秀子の後姿をやや引いた位置より映す】あのう、まさか、あなたのような綺麗な方に、そんな間違いはなかったんでしょうねえ。
(わずかに微笑んで首をゆっくりと横に振る秀子)

話すのは、本間ばかりで、秀子は一言も発しないが、カメラは本間と秀子を交互に映し出す。
秀子を映す画面の右隅には4本の煙突が見える。空には薄く黒煙が漂う。
本間の話が終わると、相変わらず三輪車はぐるぐる回っていて、空き缶の音が高くなる。まるで、秀子を馬鹿にしているようである。
シュールである。

名画に映る東京の橋”に紹介されていた三吉橋は、オーナーの山茶花究のところに行った帰りに、秀子と仲代達也が話をする場面に映る。映るといっても橋全体は映らないので、それが三叉橋であることもわからない。
ちなみに、成瀬巳喜男生誕百年記念号『キネマ旬報2005年8月号』にあった“成瀬巳喜男東京絵地図”(絵と文・宮崎祐治)を見ると、清洲橋が映る映画として“名画に映る東京の橋”に挙げられていた『如何なる星の下に』(豊田四郎監督1962年作品)に登場するスターホテルが、この場面で見えるそうである。
さらに、ちなみに、この映画でも、やはり、秀子が一番好きだった森雅之は、北海道出身、作家の有島武郎の息子、京都大学哲学科卒。また、小津の『彼岸花』や『秋日和』の原作者である里見はおじさんにあたる、とか。



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2007年04月19日

小津安二郎の『秋日和』(1960年)

DVD『秋日和』パッケージの写真より未亡人・原節子の一人娘・司葉子は24才、お年頃。原の亡夫の旧友三人、中村伸郎・佐分利信・北竜二のうち、中村・佐分利は「いい奴がいる」と動き出す。しかし、司は「お母さんが一人になってしまうから」と結婚に後向き。それならば、原を再婚させればいいと、思いついた中村と佐分利は、その相手に身近なところで、妻を亡くしてやもめの北竜二を冗談のように思い付く。「嫌だよ」を連発して尻込みする北であったが、、、

(←左写真は2003年発売『小津安二郎 DVD-BOX 第一集』の1枚『秋日和』のパッケージより)

北と息子・三上信一郎との会話:
【息子】どうしたんだい。
【父】何が。
【息子】元気ないじゃないか。
【父】あー。
【息子】どうかしたのかい。
【父】いやぁ、どうもしないけどね。(間)おまえ、どう思う。
【息子】何が。
【父】父さん、断ってきたんだけどね。お嫁さん、もらわないか、っていう話があるんだ。
【息子】俺のかい。
【父】いや、お父さんのだ。
【息子】お父さんのか。
【父】うん。
【息子】誰だい、相手。
【父】いやあ、相手はとにかくとしてだ、おまえ、どう思う。
【息子】どう思うって、そりゃあ、相手次第だよ。俺の知っている人かい。
【父】うん。
【息子】誰だい、言ってごらんよ。隠すなよ。
【父】隠しゃあしないよ。
【息子】じゃあ、誰さ。言いなよ。
【父】うん。おまえ、ミワのおばさん、知ってるな。
【息子】ああ、あの人。すごいじゃねえか。あの人だったらいいよ。
【父】そうか、いいかい。
【息子】いいさ、それ、お父さん、断ったのかい。
【父】うん、まあね。
【息子】馬鹿だなあ。断ることないじゃないか。
【父】そうか。
【息子】そうだよ。
【父】じゃあ、おまえは賛成か。
【息子】もちろん、賛成だよ。俺はね、お父さん。前からね、お父さん、早く後妻、もりゃあいいと思ってたんだ。
【父】ほう、どうして。
【息子】だってさ、俺が結婚するだろ、その時、お父さん、一人だったら、俺のとこ、来るだろ。邪魔だよな。俺の嫁さん、かわいそうだよ。
【父】馬鹿。
【息子】けどさ、そんなのお父さんだって、やだろ。だから、もらっちゃいなよ、ミワのおばさん。チャンスじゃないか。
【父】チャンス?
【息子】でも、本当に来てくれるのかい。
【父】いやあ、それは、まだ、わからん。
【息子】なんだあ、わかんねえのか。自信もちなよ、自信。
【父】おまえも賛成か。
【息子】ああ、賛成だよ。大賛成だ。
【父】そうか。
と、急に元気になって、その気になるのである。

中村伸郎の妻が三宅邦子、佐分利信の妻が沢村貞子で、夫婦それぞれの会話、そして、中村・佐分利・北の会話が、“本日も晴天なり”的で可笑しい。
『お早よう』で、だんまり作戦を展開し馴染みになった二人の兄弟、島津雅彦・設楽幸嗣が、それぞれ中村・佐分利の息子になって登場するのも一興。
母の再婚話に、いつまでもつむじを曲げる司葉子に多少腹が立つものの、実に心穏やかに楽しい映画である。殿方間に下品にならない下ネタ多少あり。
原作:里見。

メモ1:だいぶ前、どこかで、誰だったかが、『秋日和』の原節子が、爪を伸ばして銀色のマニキュアをしているのが奇異に思われる、と書いていたが、注意して見ると確かにそうで、なるほど、劇中の原のキャラにはそぐわない気がした。
 



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2007年01月01日

『稲妻』の新田橋、『東京物語』の荒川土手

『東京の空の下、今日も町歩き』(川本三郎著、ちくま文庫)の『越中島貨物線がつなぐ川辺の町「砂町」「亀戸」「新小岩」』の章に、
成瀬『稲妻』で高峰秀子が渡る橋「地下鉄東西線木場で降りる。永代通りを一歩、南に入ると大横川という堀割があり、そこに歩行者用の小さな橋が架かっている。新田橋といって江東区の名橋のひとつ。昭和二十九年に作られた林芙美子原作、成瀬巳喜男監督の『稲妻』で高峰秀子がこの橋を渡っている。近年ロケ名所になっていて、テレビや映画によく出てくる。」
とある。
その橋とは、多分、高峰秀子が姉の三浦光子と渡る、中北千枝子居所近くの橋のことだろう。(上の画像は、DVD『稲妻』より、その場面)
地下鉄東西線木場駅といえば、かつて、東京都現代美術館に行くために降りたことがある。美術館までの道のりがなかなか縮まらず、苦痛だった。近くにそんな場所があったとは、、、

『東武線、京成線が寄りそう町、「押上」「業平橋」「曳船」』の章では、小津安二郎『東京物語』のロケ地が。
小津安二郎監督『東京物語』の土手「堀切駅に着く。急行のとまらない小さな駅。(中略)駅のすぐ向うが荒川。堤に立つと目の前に広々とした水の風景が広がる。永井荷風は昭和十年前後、荒川の茫漠たる風景に惹かれ、何度も足を運んだ。とりわけ、この堀切駅付近の荒川を愛し、『断腸亭日乗』にはそのスケッチを添えた。それを読んだ小津安二郎は、昭和二十八年の『東京物語』で長男(山村聰)の家を、堀切駅近くに設定した。尾道から東京の子供たちに会いにやってきた母親の東山千栄子が、長男の家の男の子(孫)と遊ぶ場所は、小津の荷風への敬意から、この堀切駅近くの土手である。」

小津安二郎監督『お早よう』の土手その土手と同じような風景が、小津の『お早よう』(昭和34年)でも見られる。面白い風景である。(左上と左の画像は、それぞれDVD『東京物語』、同『お早よう』より)








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2006年10月12日

『ひき逃げ』(1966年)

高峰秀子は夫に先立たれ、5才の一人息子、タケシが生きがい。そのタケシが自動車にはねられ死んでしまう。
はねたのは、自動車会社役員、小沢栄太郎の妻、司葉子。年下の愛人、中山仁との逢引の帰りで、中山が同乗していたため、そのまま逃げてしまった。帰宅後、自首しようと思い直した司を、夫の小沢が留める。妻が自動車事故を起こしたとなると、間近に発売を控えた、スピードが売りの新製品によからぬ影響が及んでしまう。そこで、長年無事故のおかかえ運転手(男性)に代わりに自首してもらう。
一方、タケシが運ばれた病院で卒倒してしまった秀子は、頭を打ち入院。その間に、弟、黒沢年男と小沢側の弁護士の間で示談が成立。自首した運転手の裁判も罰金3万円で終わる。
やけになって秀子が飲んでひどく騒いでいる食堂に、事故の目撃者、浦辺粂子がやってきて、車を運転していたのは女性だと言う。秀子は、警察にもう1回調べなおして欲しい、と頼むが真剣に取り合ってくれない。運転手に会いに行ったり、小沢&司宅を見に行ったりするうち、司が怪しいと踏んだ秀子は、家政婦紹介所にはいって、事実の確認と復讐の機を待つ。そして、ついに小沢&司宅に家政婦として入り込むことに、、、

鈴木英夫監督『花の慕情』での司葉子脚本の松山善三は、当時問題となっていた交通戦争を主題に、「子どもを失った女が加害者に復讐を企てるサスペンス」風に仕立てた、という。一方、成瀬は「交通事故の悲惨さを描くのはもちろんだが、子どもを事故で失った女の悲しみといったようなものを追いかけてみたい」と語っていたそうであるが、成功していないようである。酔っ払った秀子の”あばずれ”ぶりに驚いたりする。
交通戦争の悲惨さよりも、事故に対する警察の対応の悪さと秀子の不幸な顛末(それは交通戦争によってもたらされたものであるから、それが交通戦争の悲惨さということなのか、、、)が印象に残る。

イラストは、鈴木英夫監督作品『花の慕情』(1958年)の司葉子。8才の頃から花バサミを持たされた華道家元を演じている。真剣な面持ちで椿の枝を切る司は、成瀬や小津作品での彼女とはやや異なる雰囲気をかもしだしているように思われた。



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2006年03月07日

『娘・妻・母』(1960年、カラー)

三益愛子を母に、長男夫婦・森雅之&高峰秀子、長女・原節子、次男夫婦・宝田明&淡路恵子、次女夫婦・草笛光子&小泉博、三女・団令子の家族。
杉村春子が草笛の姑、そして、上原謙、笠智衆、加東大介が顔を出すという、豪華キャスティング。

気配で原節子に迫る仲代達也原節子は日本橋の老舗に嫁いだが、そこになじめないまま、夫がバスの事故で亡くなり、母・兄夫婦・妹の令子が暮す実家に戻ってくる。勤めに出るか、再婚するか。
これが全財産という夫の保険金百万があることが知れると、兄の森、そして妹の草笛から貸してほしいと頼まれる。ここは『稲妻』の光子を想起させる。

次男の宝田、三女・玲子と遊ぶうち、節子はワインを作っている仲代達也と知り合い、楽しい時を過ごす。年下で独身の仲代は節子に惹かれる。この仲代がいけない。どうも好きになれない。顔と低い声が苦手である。宝田のアパートで、二人きり、仲代が節子に気配で迫ってゆくシーンは、だから、なおさら、こわい、見ていられない。

会社勤めなどとても出来ない節子に、女友達が京都に住む上原謙との縁談を持ってくる。
もう、結婚はこりごり、と言っていた節子であるが、そして、仲代とそれなりに付き合っていた節子であるが、実家の家を売らなければならないことになり、再婚することにする。ここらへんが、大人というか、結構したたかである。

意地悪なお母さんという印象があった三益愛子は、成瀬の映画ではいい人である。ここでも、子供たちが、自分の世話を互いに押し付けあう様を見て、ただ静かに悲しむ。『夜の流れ』で見せた、おばあさんを表す、あの仕草は全くない。
子供たちが親の世話を押し付けあう、と言えば、小津の『東京物語』を思い出すではないか。そこで、原節子が優しさを見せるところも似ている、といえば似ている。

ラスト、散歩がてらの買い物途中の公園で、1日70円で人の子の子守をする笠智衆の姿を見て、三益愛子は一体何を思ったのだろうか。



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2006年02月28日

『夜の流れ』(1960年)

フィルムアート社の「映画読本 成瀬巳喜男」の解説によると、「正統派リアリズムの名匠成瀬とデフォルメ派の川島雄三の合作として、当時話題に」になり、「成瀬と川島の分担は、全136シーンのうち、成瀬が古い世代の側と料亭の場面等71シーン、川島が若い世代の側と芸者屋等動きの多い部分65シーンを、それぞれ別のスタッフを編成して、平行して撮影した」そうである。

料亭の女将、山田五十鈴山田五十鈴は料亭の雇われ女将。娘・美也子(司葉子)がある。料亭には、三益愛子の芸者置屋から、一花(草笛光子)、金太郎(水谷良恵)、紅子(市原悦子)ら、賑やかな面々がやってくる。美也子は、そんな芸者たちとお座敷に出たり、遊んだり。どこか影のある板前(三橋達也)に、若い娘の明るさでさかんにアプローチするが、三橋は静かに防戦。
一方、五十鈴は、スポンサーである志村喬の旅の誘いを、あれこれと言い訳を作って、断るばかり。
実は、三橋と五十鈴は内密の親密な関係。それが、美也子に知られ、三橋が出て行くと言い出し、五十鈴が取り乱したことから、皆の知られるところとなってしまう。

『流れる』から4年しかたっていないが、カラーのせいなのか、山田五十鈴の美貌は落ちているように感じられる。しかし、それでなおさら、愛しい人に去られてしまい、職も失ってしまった後の、落胆ぶりが身につまされ、涙を誘う。
美也子から「どうして陰でこそこそ、卑屈すぎるわ!じめじめして嫌い!」と責められ、「かあさん、そういう女なんだよ。何て言われたってしようがない」と、さめざめと泣き出す姿に、「しっかりしているように見えて、優しいところがあるのよ」と秀子に言われた『流れる』のつた奴が重なる。
実際、お客さんの勘定も未収が「ざっと見積もって50万」たまっていることが、新しい女将との事務引継ぎで明らかになったりする。

美也子は、芸者になり、母と二人暮す分、稼いでいこうと決心する。
そんな美也子の姿を見ながら、すっかり老け込んだように見えた五十鈴が考えていたこと、、、それは三橋のこと。
美也子のお披露目の日、置手紙をして、もう戻らない覚悟で、三橋のいる神戸へ旅立つのである。
そこまで思い詰めなくてもいいのに、ダメだったら戻ってくればいいのに、うまくいったらうまくいったで、また、娘に会いに帰ってきても何の問題もないのに、、、と思うところだが、かあさん、そんな女なんですね。

『映画読本 成瀬巳喜男』解説は、「両者(成瀬と川島)が刺激し合って、より高次元の表現に達した訳ではなく、ストーリー展開に追随した風俗映画に終わった」と締めているが、水谷良恵の金太郎はじめ賑やかな芸者たち、一花の元亭主、北村和夫のしつこい嫌な男ぶり(ある意味、五十鈴の男版)、越路吹雪の女将など、楽しく観た。
共同監督で、両者が刺激し合って、より高次元の表現に達すると、一体どんなものができるのだろう?

川島雄三では、フランキー堺主演『人も歩けば』がマイ・フェイバリット。

おばあさんの仕種をする三益愛子気になったこと。三益愛子がする仕草:着物の胸のあたりを、両手または片手で押して、軽く上げる、と同時に、首をこころもち、亀のように伸ばす仕草、意地悪ばあさんの青島幸男もやっていたような気がする、おばあさんであることを示す仕草であるが、どうしてあんな仕草をするのだろう?今ではほとんど見ないが、多分、着物と関係アリ?

1960年『キネマ旬報』12月増刊号「自作を語る」から、成瀬と川島の言葉

成瀬:たまたまシナリオが分担撮影できるものなので、半分を若い人にやってもらったらと僕が提案して出来た作品です。、、、僕が21日間で撮り上げ、川島君もちょうどその位でした。なんでもこんな風にできるというわけにはいかないけれど、これは面白かった仕事でしたね。川島君が器用なんで僕の方にあわせる撮りかたをしてくれてます。別々に撮影していって、最後に1本のフィルムにして見た時には、大へん楽しかったです。

川島:最初のプールの場面が川島で、チンドン屋の出てくるところが成瀬、などと文春だったかの映画欄にありましたが、そのチンドン屋のところが僕の演出だったり、なんてところのある写真です。僕は成瀬さんみたいな撮り方じゃありませんが、いっしょにやっていて勉強になりました。撮影部分の割りふりをやったら、芝居として面白くないところばかりきたので、酒を飲んで成瀬さんにおこったことがありました。



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2006年02月20日

『秋立ちぬ』(1960年)

『秋立ちぬ』の順子と秀男勉強好きな秀男(大沢健三郎)は六年生。父が結核で亡くなり、東京出身の母(乙羽信子)に連れられ信州から東京に出てくる。ふたりは八百屋を営む叔父(藤原釜足)のところにやっかいになる。

乙羽・母はほどなく近くの料亭に住込みの働き口を見つけ、秀男はひとりに。
「そうずら」「寂しくないじゃん。かあちゃんがいるけ」と、かなり耳にひっかかる田舎言葉を話す秀男は、転校生の例にもれず、同級生からいじめられる。
飼っているカブト虫のリキが友だち。

「もう、感ずかれちゃったみたいなんですよ。何だか居づらくって。(ここで働き始めてから)10日もしないうちにコウキュウ取ったりしたから、、、」と、真珠売りの客(加東大介)に言う乙羽・母。
そのコウキュウはこの男のために取ったのであった。
一方、秀男が店のトマトを料亭に届けに行った時、「今度のコウキュウに海に連れてってよ、おかあさん!」と言っても、しぶしぶ顔の乙羽・母。

料亭おかみの一人娘、順子ちゃんと仲良くなった秀男は、カブト虫のリキをあげると約束したが、リキがいなくなる。
八百屋の長男(夏木陽介)が「カブト虫くらい何だよ。東京にだっているさ。今度のコウキュウに一緒に取りに行ってやるよ」と言って、秀男を元気づけるが、カブト虫は見つからない。
そこへ、信州のおばあちゃんから大きな木箱で林檎が届けられる。
釜足・叔父が「秀男、おまえこんなに食べられないだろ?少し、店で売ろうか」と箱を開けると、「なんだ、こりゃ!」林檎の間からカブト虫が!
それを持って、秀男は一目散に順子ちゃんのところへ走るのだったが、、、

コウキュウは公休であるが、今では全く耳にしない言葉である。
ちなみに、『杏っ子』のしょうのない夫となる亮吉が飼っていたのは、こおろぎ。



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2006年01月26日

『女の中にいる他人』(1966年、白黒)

644429ed.gif原作は外国もの心理サスペンス、エドワード・アタイヤ『細い線』。

小林桂樹は、親友である三橋達也の妻の色目に負けて浮気。
彼女は、マゾの気があるのか、私の首を絞めてと言う。もっと、私の目が閉じるくらい強く、ああ、気持ちがいい、ああ、とやっているうちに、小林も夢うつつの状態になり、一線を軽々と越えて、本当に首を絞めてしまう。
黙っていれば、捕まらずにすんだかも知れない状況だったが、重い秘密を自分の中に閉じ込めていられず、まず、妻の新珠三千代に、ついで、三橋達也に打ち明け、心が軽くなった勢いで、自首することを決心するのであるが、、、

 

 

日傘に着物姿の新珠三千代
新珠三千代の洋装でエプロン姿、新珠三千代の和服で日傘姿、昔々のテレビドラマ『細腕繁盛記』を思い出したりして。


鎌倉にあるらしい小林&新珠の家は洋風。
三橋達也の職業は建築技師。
小林はこの映画では、最初からずっと苦悩の表情でタバコを吸ってばかりだが、母親の長岡輝子がいつもの調子のなごみキャラ。



naruse2005 at 12:32|Permalinkclip!

『妻として女として』(1961年、カラー)

秀子のおばあちゃん役の飯田蝶子大学の建築学科の教授、森雅之夫人である淡島千景は銀座にバーを持っていて、その雇われマダムが高峰秀子。
森&千景夫婦の間には二人の子供、星由里子と大沢健三郎があるが、実は二人とも、戦争中、千景が疎開して不在時に知り合った森と秀子の間にできた子供だった。
子供たちや世間はそうとは知らずに、森&千景&秀子の三角関係は20年近く続いていた。

やや秀子よりの視線で描かれているものの、主役の女優が二人いるので、どっちつかずで、秀子も千景も好きになれず、どちらの味方にもつけずじまい。
会話にもディテールにも印象に残るところがなく、、、


なごみキャラのひとりである秀子のおばあちゃん、飯田蝶子(「1本つけるかい?」)も何だかお顔が違って(入歯をはずしているのかしらん)不思議な感じ。

映画冒頭、『秋たちぬ』では主役、『女の座』では電車事故で死んでしまう、おなじみの大沢健三郎少年が、湯船につかりながら、当時の流行歌であろう、愉快な歌を歌うのが微笑ましい。



naruse2005 at 12:03|Permalinkclip!

2005年11月18日

『女の座』(1962年)

宝田明の六角谷(むすみや)さんアパートを営む長女(三益愛子)が実家である石川家に、男性を連れてやって来た。庭で漬け物をつけていた皆の前に出して「誰だと思う?」と聞く。
皆の前に突き出されて、借りてきた猫のように縮こまっているのは、三益のアパートの新しい住人、六角谷(宝田明)。“むすみや”と読む。実際あるにしても、ずいぶん変わった名前(姓字)にしたものである。
六角谷(以後、宝田)は何と!、父(笠智衆)の後妻である杉村春子が初婚でもうけ、嫁ぎ先に残してきた子だった。

石川家長男の嫁で夫に先立たれた高峰秀子は、ひとり息子の健(高校生?)だけが心の頼り。そんな秀子に宝田は好意を持つ。
しかし、石川家の次女、草笛光子が「結婚はしない」と言っていたようなのに宝田に夢中になってしまう。
そして、一悶着あり、バタバタしているうちに、健が電車にひかれて死んでしまう。
その葬儀に長女夫婦(三益愛子&加東大介)、次男夫婦(小林桂樹&丹阿弥谷津子)、三女夫婦(淡路恵子&三橋達也)が集まった。
彼らが自分達のことだけしか考えていない様子を目の当たりにし、呆れた笠智衆は、店(荒物屋)を売って郊外の一軒家で、妻・杉村春子と嫁・高峰秀子の3人で暮そうと考えるだった。

夏木陽介と淡路恵子未亡人となり、嫁ぎ先で孤立し、立場的に好ましくない男性から好かれるという構図は後年撮られた『乱れる』(脚本:松山善三)と同じだ。
息子が電車にひかれてしまう、というのは、この前観た1931年の無声映画『腰弁頑張れ』を思い起こさせる。
また、映画読本の解説に「井手俊郎・松山善三コンビによるオリジナル・シナリオ(であるが、)東宝女優陣顔揃えの興行的配慮(を)前提条件と(し、)家族の解体、、、に集約された主題のオリジナリティは過去の小津安二郎作品に先取りされ」とあるように、『東京物語』を思い起こさせもする。

四女の司葉子と五女の星由里子が好意を持つ夏木陽介の素朴なキャラクターがいい。勤め先は気象庁、ネコ舌。喫茶店で注文したのは、トーストとジャムとミルク。三女の淡路恵子はちょっと面白い髪型で、最初誰だかわからなかった。



naruse2005 at 13:40|Permalinkclip!

2005年11月13日

『乱れ雲』(1967年)

0b1d0a9b.gif成瀬の遺作。カラー。『乱れる』で登場した若き加山雄三が、ほとんど同じキャラクターで出ている。

明治貿易の三島(加山雄三)は、自分が運転していた車で、ワシントンへの栄転を数日後に控えた通産省職員の江田をひき、死なせてしまう。江田の妻、由美子(司葉子)は、妊娠3ヵ月、幸せの絶頂からの突然の転落。不可抗力の事故であったとはいえ、三島は夫を、幸福を奪った憎い疎ましい存在である。
しかし、由美子の「もう二度と私の前に姿を現わさないでください!」との言葉もなんのその、三島は会いに来る、偶然に出会ってしまう、そして三島は会いに来る、時計を忘れて帰る、由美子が返しに行く、と度々会っているうちに、ついにはお互いに好きになるのである。
好ましくない(世間体の悪い)愛というテーマも『乱れる』と同じである。第一、タイトルが似ている。

スラックスに麦わら帽子姿で山菜を取っている由美子を発見した三島が「(そんな姿のあなた、)がっかりだなあ」と声をかける。由美子は驚いて、しばらくしかめっ面。
三島は夏の日射しのもと、上機嫌。
「何を考えていたんですか?僕のことを想っていてくれたんなら嬉しいなあ」とか、「僕は今、どんなものでも好きになれる」とか、「さっきのびっくりしたあなた、かわいかったなあ。少女のようで。そして、色気もあった」とか、「僕にも飲ませてください」と由美子の水筒のお茶をねだったり。
なぜならば恋をしているから。
一方、由美子は、パキスタンのラホール(こんなところに、最近よく耳にする地名が!)への転勤が決まり、三島が数日後に出発すると知って、浮かない様子を覗かせる。

将来的には、また出会って結ばれる可能性は残るものの、結局、この二人は結ばれず、武満徹の音楽と十和田湖周辺の自然のおかげもあり、私的には、最後はまあ、爽やかなハッピーエンド。

メモ:三島の元恋人(浜三枝)が三島の部屋に忘れていった腕時計がアップにされるが、何か意味があったのだろうか。由美子は心労のためか、流産してしまったらしいが、それが言葉として明らかにされない。



naruse2005 at 14:30|Permalinkclip!

2005年11月11日

『乱れる』(1964年)

『乱れる』の高峰秀子1受話器を取っているのは、酒屋の嫁、礼子(高峰秀子)。
夫は嫁入り半年で出征し戦死。ひとりで18年間、店を守ってきた。
電話の相手は、義理の弟、幸司(加山雄三)。
礼子がこの家に来た時には7才だった幸司は、大学を出て就職したのに、すぐ辞めてぶらぶらしている。
ある日、自分がだらしないことを礼子に注意された幸司は、「姉さんが好きだ」と言い放ち、出て行く。
夜遅く、酔っぱらった幸司からの電話。
「姉さん、怒ってるでしょう。」
「怒ってないから、お願い、早く帰ってきてちょうだい」と礼子。

「どうしたいいんだろうねえ」と困惑中なのは、義理の母(三益愛子)。
好きな人がいるので、酒屋は幸司さんに任せて実家に帰る、と突然、礼子に言われたのである。
それに対して「私、帰るわ」「私も」と、嫁いだ美しい義理の妹たち二人(白川由美と草笛光子)は冷淡。

『乱れる』の高峰秀子2礼子の乗った列車が動きだした。
これで、義理の母、告白された弟、そして間接的にではあるが、義理の妹二人に囲まれた息詰る家から解放された、と思ったら、
「送って行くよ」と幸司が現れる。
酔っぱらって、明るく電話をかけてきたり、こんな風に登場したり、少年っぽくて可愛いとも言えるのだろうが、私はどうも気に入らない。

列車に揺られ、幸司の寝顔を見ているうちに、礼子の心に微妙な変化が生じる。
「次の駅で降りましょう」と二人で途中下車。
その夜、結局、幸司の愛を受け入れられない礼子に、例によってプイと出て行き、酔っぱらって電話をかけてきた幸司は、その後、足を滑らせて崖から転落。あっけなく死んでしまう。

その知らせに動転し、呆然とする礼子の顔のアップで映画は終わる。
「あ〜、結局何もなかったのに。あ〜、二人の仲が皆に知られてしまう。皆の責めを負うことになる。あ〜、こんなことになるなんて。あ〜」と礼子が心の中で叫んでいるように思えた。

みなが選ぶ成瀬映画ベストテン入りにて、DVDあり。



naruse2005 at 15:59|Permalinkclip!

2005年11月10日

『放浪記』(1962年)

カフェの女給、割烹着スタイルの芙美子林芙美子原作『放浪記』の、というよりは菊田一夫の舞台『放浪記』の映画化。
映画読本の解説には「醜女づくりの高峰を含めて具象にとらわれ、ヒロインへの中心化傾向が成瀬固有の豊かさを薄めた」とある。
なるほど、そうなのかもしれないが、高峰秀子、林芙美子を熱演!であろう。
芙美子の母親役で田中絹代が出ているが、主役でないからなのか、少し老けたせいなのか、何だかとても普通で面白くない。

着物に白い割烹着スタイルがかわいいカフェの女給の芙美子。
店に来た劇作家の伊達(仲谷昇)に「チャーミングな目だ」と言われても「近眼なのよ」と受け流し、甘い言葉に乗らないかにみえて、面食いと周りから言われるだけあって、やがて伊達の妻となる。
しかし、すぐ泣き目にあい、女給に逆戻り。

もう二度ともどってこないから!次に現れた二枚目作家の福地貢(宝田明)。一緒になるも、また泣き目に、、、
肺病を患い、書くものが売れない福地は、芙美子言わく「優しい時もあるのよ」なのだが、全くひどい態度なのである。
芙美子が買ってきたたい焼きをけとばす。(ひどい!)
福地の薬のために知り合いの男からお金を借りた芙美子をけとばし、出ていけと言う。(ひどい!!)
ウァー!!何言ってるのよ、私が出て行って、2、3日して寂しくなって「帰ってこいよ」と言って来るのは、いつもアンタの方じゃないのよ! 今度はもう絶対、戻ってこないから!!

作家仲間の白坂五郎役の伊藤雄之助にホッとする。

みなが選ぶ成瀬映画ベストテン入りにて、DVDあり。



naruse2005 at 12:26|Permalinkclip!