Keith Jarrett(P)
Gary Percock(B)
Jack DeJohnette(Ds)
Rec. Jaly 22,2001,Montreux (ECM 2021/22)

いくら美味しいものでも毎日食べると飽きてくるのと同じで、キース・ジャレットのスタンダーズ・トリオは正直言ってあといいやって感じなんだけどなぁ。なにせ結成されてからもう20年以上っすよ。最初の頃はこのメンバーでスタンダードをやるってことでだいぶ興奮したけれど、それもいいとこ1988年の「Still Live(日本タイトルは枯葉)」あたりまで。以降の作品はほとんど惰性で買っている。その中で本当に感銘を受けた作品は「Blue Note The Complite Recordings(95年)」ぐらいかな。
それにしてもイントロをおもむろにピアノソロからスタートさせて、テーマ部分のキメごとは特にないという演奏スタイルを、よくもまあ飽きずに長年続けていられるものだね。いや本人たちにしてももうウンザリってところがあるかもしれない。私たちのような素人のピアノトリオのセッションでさえやっているほど、こんなに楽な演奏方法はないからな。そのような何一つ工夫のない演奏でも、スタンダーズ・トリオは他の一流ジャズメンと比べて法外なギャラを貰うことができる(と思う)のだから、もう飽きたからといって簡単にやめるわけにはいかないよね(笑)。でもキースが真面目に曲作りに取り組んでいた70年代が懐かしい。またあの頃のように音楽に対して貪欲なキースに戻って欲しいけどなぁ。その時はもちろんメンバーを一新してね。というかここが一番重要なポイントなんだけどね。とにかくわたし的にはこのメンバーでのスタンダードは(ついでに即興演奏も)もう沢山って感じですな。
本作は2001年のモントルー・ジャズフェスにおける2枚組みの実況盤。なんで今ごろになってリリースされたのか、まあキースの作品にはよくあるパターンだよね。ECMで一番の稼ぎ頭。ジャズファン以外にもキースの作品だけは買うといった人は多いので、出せば売れるに決まっている(笑)。

Disc1が6曲にDisc2が7曲で、全13曲。楽曲は今までのアルバムでも取り上げているものが中心となっている。トータル108分の長丁場なので、きっとステージの模様を丸ごと収録したのだろう。曲順は若干変えているかもしれないけどね。
前置きでなんだかんだ書いているけど、いざ聴くとなるとやっぱりスタンダーズ・トリオはいいですなぁ(苦笑)。最上質のピアノトリオ演奏が楽しめる。キースの珠玉のフレーズの数々、それにピッタリと寄り添っているピーコックのベースの反応の速さ、バッキングの域からはみ出して自らが場面を切り開いていくディジョネットのドラミングの凄さ等、どれをとっても超逸品。こんな演奏に文句なんてあるはずがないっすよ。なにも本作だけではなく、他のどのアルバムもみんなそれぞれ素晴らしい。ただあまりにも長く続けていることを問題視しているだけです。
昔のスタンダーズ・トリオの作品はオーディオチェックに用いるほどに良い音していたけど、ヤン・エリック・コングスハウクが録音に携わらなくなってからは神経が研ぎ澄まされたような独特な空気感や緊張感が薄れてしまったかなって感じ。でもそのおかげで今まで雲の上の存在だった至高のトリオが、なんとなく身近な存在に感じられるようになったりして、わたし的にはこの温かい雰囲気も決して嫌いではないね。
モントルー・ジャズフェスという場所柄か、リラックスした演奏になっている。もちろんその中にもキース独特の緊張感(例えば曲が終わるまでは拍手がないといった)はあるけどね。Disc1のラスト曲からDisc2の2曲目までラグタイム風なお遊び演奏が続いたりして、いつもとはまた違った一面を垣間見ることができる。
さあお次はいよいよニュートリオを期待してますぞ。まあそんなことはありえないかも知れないけどね(苦笑)。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)