
良質なパッケージング
【Z1000のフルカウルバージョン】というのがファーストインパクトだったが実際に走らせると運動性は大きく異なり、ポジティブな意味でもう一つの可能性を感じる一台となった。
9000回転で136PSを発揮するエンジンには、1速で引っ張ればしっかりとフロントタイヤをリフトアップさせる加速力が備わり、10000回転を超えてもパワーダウンする気配はない。
それでいてビックネイキッドにありがちな過度なピッチングモーションも少なく、足回りは腰高でややハード気味に落ち着いているため、ワインディングでもハイアベレージでの走行が存分に楽しめた。
もちろん高速巡航性はネイキッドモデルとは比較にならないほど高く、直進安定性も抜群にいい。フルカウリング化されたことによる整流効果は思いほのか大きかった。こういった全体の良質な雰囲気が、かつての名機FZSを思い起こさせる要因ともなった。
市街地、首都高などのテクニカルな低中速レイアウト、そして高速道路、ワインディングなどあらゆるシーンにおいて、ハンドリングは極めて素直な特性であり、ネガティブな場面はほとんどなかった。

つい遠回りしてしまいたくなる特性であり絶対速度依存ではなく、アクセルのオンオフ、ブレーキング、バンキング、切り替えしなど、単純な操作だけで「バイクを操る楽しさ」が満喫できてしまう。
狙った速度への加速、及び減速、目指したラインのトレース、修整などが「普通に」こなせてしまう。こういった特性は結果的にライダーを疲れさせることがなく、また長く接していても飽きることが少ない。昨今のZ1000はあくまでシティユースを視野に入れたビックネキッドという位置付けだが、このNINJAに関しては、それよりも走りに重きを置くライダーにとって、刺激的なツールとなることだろう。
これまでのZ1000も非常に面白い存在感を放っていたが、このNINJA1000は、実践的な意味でワンランク上の走りを実現している。ヨーロピアンツアラーをイメージさせるようなハイスピードレンジから、流す程度でも十分速く走れるワインディングまで、その守備範囲は広く、楽しい。11シーズンを代表する1台となるかもしれない。
なお、この記事はダイジェスト版です。完全版は月刊モーターサイクリスト2011年2月号をご参照下さい。
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