2012 第1回 梨本塾レポ5 K-RUN-GP Cクラス

やや日も傾いてきた頃、本日最後のレースとなるCクラス決勝が始まろうとしていた。

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1月としては好天に恵まれた一日。計測するまでは信じられなかったが、路面温度は15℃を超えた。

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スタート直前グリッド上ブリーフィング。ここで最終的なK-RUN-GP時のレギュレーションが確認される。提唱されるのは、およそ以下のようなものである。

イエローフラッグ時はまずトラブル地点を確認して危険回避、速やかに(急激に、という意味ではない。加速区間での急減速は二次事故に直結する)全車30km/hまで速度を落としてキープ、スピードメーターが装着されていない車両は前走者とのスペースは詰めずに走り、グリーンフラッグが振られるのを待つ。

コントロールライン上でグリーンフラッグが振動されたら、スタート&ゴールラインを超えてからレース復帰する。但しペース回復後に30km/hキープ中の車両に追いついてしまった場合にはその後ろで同様に走り、その車両がスタート&ゴールラインを超えるまで同じように30km/hをキープする。

周回遅れに対してブルーフラッグが振られた場合、その車両は1コーナーからS字、奥の右コーナー(通称帝王コーナー)までコース外側から1メートル以内を走行し、追い越し車両を優先させる。帝王までに追い越してこない場合には、後方を確認してレース復帰する。

K-RUN-GP決勝中は、いかなる場合も3コーナー(帝王の次の左)立ち上がりから、最終コーナー進入までの区間で追い越しをしてはならない。これまで梨本塾においてもこの区間での接触転倒が非常に多く、ほぼそのすべてが重大事故、重症を負う結果となっているための安全措置である。なお、これに違反した場合は即刻失格となる。

梨本塾レギュレイションに関してはここに詳細があるので、初参加する予定の人などは参加前に熟読しておいたほうがいいだろう。

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フロントローに並んだのはCBR1000RR、600F4i、そしてCB400SFとホンダ一色となった。

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全7台が整列し………

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グリーンシグナルとともに一斉にスタート。

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各車キレいにスタートを切ったように見えたが………なんとポールスタートの菅原が大きく出遅れてしまう。

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逆に初参加でセカンドポジションからスタートした鈴木、そしてサードポジションからスタートした西村は好ダッシュを見せる。

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西村、鈴木と続き、その後方には梨本がジャンプアップ。一気に4位まで落ちてしまった菅原、さらに吉村、加野というGSXR勢が続く。

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トップに躍り出た西村。二ヶ月ぶりのレースとなるが、果たして。

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その後ろに初参加の鈴木、そして梨本。30代と70代のバトル勃発か。

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さらにその後方、4番手にダウンしたのはポールスタートの菅原、そして加野。

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その後方に同じく初参加のR750を駆る吉村。GSXRを駆る男として、これ以上はないというほどのネームマッチングだろう。

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そして7番手には高土と続く。

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西村がややリードを奪う形で最終コーナーへ。

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一周目を終えたところで、トップの西村は後続に1秒ちかい大きなアドバンテージを築いた。

さすがに初トミン、初梨本塾、そして初K-RUNと初物尽くしの2番手鈴木にとって、このファーストラップは非常に難しい状況となった。

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快調にペースアップしていく西村CB400SF。

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なんとかそれを追いたい鈴木だったが………

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後続からはCクラスハンターの異名を持つ梨本亮を筆頭に集団が追いかけてくる。前回紹介したように、当然ここでも追う者の優位さが発揮されそうである。

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睨(ね)めつけるように鈴木を追う3位グループ。

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これを尻目にトップを快走する西村。

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最終コーナーで動きがあった。レギュレイション抵触スレスレの状況で菅原が梨本のインに潜り込むのの、この後一旦引き下がり………

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再度ストレートにおいて梨本をパッシング、これで3位に上がる(この状況検分はレース後、ビデオ、及び当事者二人に話を聞いて、レースディレクションより今回は問題なしという判断が下された)。

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やや面食らった格好の梨本、その内側に今度は加野も入り込んでいく。これで菅原は3位、加野は4位となり、梨本は5位にポジションウン。

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後方でそんなバトルがあるとは露知らず懸命に初レースを力走する鈴木だったが………

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その後方には先月の失敗を糧に獰猛にペースアップする菅原がヒタヒタと迫ってきていた。

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そして早くも現れたバックマーカー処理に手間取っている間に………

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鈴木のすぐに背後に菅原が迫る。

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理想的な捕食体勢を作り上げた肉食獣のように、CBR1000RRがCBR600F4iを捉えた。果たして逃げ切ることは出来るか。

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その後方で4位争いも活性化。バックマーカーを挟んだ難しい状況の中で………

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梨本と吉村がインの奪い合い。

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高土、加野、吉村、梨本という四人、四台のマシンの思惑とラインが交錯する。

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乗り換え二ヶ月目となった加野GSXR1000。

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初参加で膝スリ目標の吉村。まだ地球はやや遠いか。

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高土を避けて各車はインサイドへとマシンを振り………

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1コーナーへとなだれ込んでいく。

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順位は動かず。

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2位争い、4位争いが激化する一方で、トップの西村は快走に次ぐ快走を重ねる。ブランクなどどこ吹く風、このクラスの中でももっとも心地よさそうに1月の風の中を泳いでいる。

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一方で肉食獣はタイミングを逃さない。

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やや隙の出来た1コーナーでインサイドを抉り取り、一気に2番手に浮上する。

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それでもどうやらその目は満足していないようだ。さらなる獲物を求めて、インラインフォーが咆哮を上げる。



写真撮影:梨本塾・影兄・中尾氏 ※ ブログに掲載される写真は、梨本塾参加者の方に限り転載自由とします。その際には梨本塾へのリンククレジット(http://kei74moto.client.jp/)を必ずお願いいたします。それ以外の方の無断使用は固くお断りいたします。

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ここまでほとんど後方に気を揉むことなくいいペースで周回を重ねてきた西村。

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果たして四年越しの夢である、悲願の梨本塾初優勝なるか。

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一方満腹を知らぬ獰猛さでペースを上げる菅原は………

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しっかりとその視野に西村を捉えた。

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ここまでと同じく、完璧な捕食体勢に入る。

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周回ごとに熱を帯びてきた4位争いだったが………

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ここで加野が1コーナーでややオーバーラン。

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その隙を逃さずにインに入り込む吉村。1000に対してハンドリングの優位性を見せ付ける750の真骨頂でもある。

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これで4位に浮上。前方には同じく初参加で友人の鈴木がいる。

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さらにインに戻れずにいる加野のインサイドへ………

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梨本も鼻先をねじ込む。

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チラリと梨本を見やる加野。一気に6番手までポジションを下げてしまった。これはもしかするとブルーフラッグを見間違えたか。

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さらにこの後、4位に上がった吉村、5位に上がった梨本のバトルとなる。

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ここまでトップを堅持してきた#43西村、なんとかして菅原を封じこめたいところだったが………

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前方にバックマーカーが現れ………

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一瞬だけ躊躇した西村の隙を菅原は見逃さずになんとアウトから仕掛け………

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半ば強引に勝負を挑んでいった。

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やや驚いた西村は引かざるを得ず………

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レース大半に渡って堅持してきたトップの座をあえなく差し出すこととなってしまう。

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残り周回はそう多くはない。

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ここまで這い上がってきた菅原の獰猛さに、西村は対向できるか。

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なんとかして再度勝負を挑みたいところ。

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チャンスはわずかに数箇所といったところだろうか。しかし勝利をつかむとはつまり、そういうことである。

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懸命に食い下がっていく西村。ここまで来て四年越しの夢を打ち砕かれるわけには行かないのだ。

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3位鈴木は独走状態となっていたが、4位争いは引き続き混沌としている。

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4位に上がった吉村だったが、決定的なほどラップタイムは上がらず。またレース後半もけしてタレない梨本、加野の両名に追い立てられることとなった。

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いよいよレースは最終ラップ。CB400SFにとっては最大のパッシングポイントである3コーナーでやや差を詰めたが………わずかに届かず。

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そのまま菅原は最終コーナーを立ち上がり………

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追う者の強みを最大限に生かして力強くフィニッシュ。

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先月のミスを最高の形で払拭することになった。

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西村は残念ながら2位。3位には鈴木、4位にはその座を守りきった吉村が入った。

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レースを終え、なぜかガッツポーズの西村。

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「胸を張れ。手痛く負けたときこそ、胸を―賭博黙示録カイジ、第13巻より」


そんな格言を実行するかのように勝者を称える。

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負けてなお清々しい姿は、次戦を期待させる。悔しさが先立つのではなく、戦う時間を共有した喜びを分かち合うことこそ、ダンディスムなのかもしれない。

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一方勝者の菅原は

「今回は慎重に行きました」

と謙遜気味。さすがに先月の大転倒が響いたようだが、今回はそれを補って有り余る結果となった。

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今後は経験をつんでBクラス入りを目指し、出来れば今シーズン中に28秒フラットを目指していきたい。可能性は十分あるだろう。

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敗れて潔し―。2位の西村は颯爽とパドックへ引き上げたが………

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しかし同胞が近づき慰めの言葉をかけると思わず本音が。

「初優勝が~ッ(悔)」


………いつまでも男の子であることもまた、バイク乗りには大切なことなのかもしれない。


つづく

文中敬称略





写真撮影:梨本塾・影兄・中尾氏 ※ ブログに掲載される写真は、梨本塾参加者の方に限り転載自由とします。その際には梨本塾へのリンククレジット(http://kei74moto.client.jp/)を必ずお願いいたします。それ以外の方の無断使用は固くお断りいたします。

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