2012 第5回梨本塾 レポ③ K-RUN-GP Aクラス

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いよいよ皐月塾、一つ目のレースが始まろうとしている。

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いつものようにフリー走行開始時には、塾長が出走者全員に「グッドラック」のサインを送る。

これに対する返信率、すなわちしっかりと認識してサインを返す確立は塾長いわく「速さに比例する」という。Aクラスはほぼ100%、Bで80%、Cで50%、Dでは30%、といった具合だ。スタート直前の視野の広さこそが、速さのみならず、うまさや安全性を示すバロメーターでもある。

とかくAクラスに対してはラップタイムやコーナワークの速さに目が行きがちだが、こういった「広義の意味での速さ」がアマチュアライダーがもっとも目指すべき部分である。

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決勝グリッド。ホワイトベース2台、ナンバー付1台、計三台のCBR600RRがフロントローを独占している。その中で#5小椋はタイムアタックで唯一25秒台をたたき出す快走を見せた。そこに26秒0の#3人見、そして26秒2の#2山中と続く。

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グリーンフラッグとともに各車一斉にスタート。

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好スタートを切ったのはアウトから小椋、そしてインから山中。

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人見はやや遅れる格好となり、さらに後方からは篠塚が飛び出した。

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1コーナーへは各車もつれるようになだれ込んでいくが………

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小椋、人見、山中、篠塚と続き、やはり転倒の影響からか二瓶SV650は出遅れる。そのイン側に坂垣内CBRR、さらに中村デイトナ、中尾CBRR、渡邉GSXR1000、佐々木(幸)GSXR600と続く。

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人見が小椋の外側から、そして二瓶が篠塚の外側からそれぞれしかけていくが………

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トップ6の順位は動かず。

しかし後方では中尾が中村にしかけ………

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7番手に浮上。

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年式は異なるものの、CBR600RRのホワイトベース同士によるトップバトルが始まる。選手権さながらである。

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さらにその後方にはナンバー付CBR600RRの山中、12年型WBの#4篠塚、そしてSV650の#1二瓶、ABS仕様CBR600RRの#6坂垣内。

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#6坂垣内の後方で、中尾が熱い。序盤から積極的に仕掛けていく。

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#8中村、#7渡邉はともにレーステックを使用している。予選でタイムを大きく伸ばした佐々木がこれを追従。

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1周目のオーダー。早くも#5小椋がフルスロットル、人見を引き離しにかかる。何しろこの時まで「梨本塾勝率100%」を誇った男だけに、一度火が付くと手に負えないほどの速さを発揮する。鈴木(友)、石川、二瓶、篠塚といった「トミンクオーターレジェンド(25秒台の伝説)」の中の一人となった。

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もちろん人見も黙って引き下がる気はない。冬場のVT250スパーダでの修練を生かすべく、小椋を追いかけていく。

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ラップペースは早くも26秒前半というものだ。

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この二人をなんとかして追いたい山中だったが、序盤ペースの違いからか逆に篠塚、二瓶の両名に追い立てられる。ここまでWBで不振が続いた篠塚だったが、どうやら光明が差し込んだようだ。

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27秒台前半で繰り広げられる、6位争い。

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そして9位争いの2台。

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さらにペースアップし、早々に25秒台に入れる小椋。どうやら目指していたスピードを手に入れたようだ。

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これに対し、これまで限りなく25秒台に近いタイムを出しながらも未だそれを果たせずにいる人見。決勝ではなんとかしてこれを覆し、小椋の前に出たいところだ。

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山中にプレッシャーを与えていくチャンプ篠塚。

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タイムアタックの転倒が響いたか、トミンモーターランドアマチュアレコードホルダーの二瓶は思ったようにペースが上がらない。

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さらにその二瓶を追う坂垣内。

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筑波選手権にも参加している小椋だが、どうやらここへ来てマシンのセットアップも進んだ様子。FI、足回りともに決まりはじめ、どんどんペースアップしていく。

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これに対し人見はどうしても26秒の壁を切り崩せない。1周での差は僅かにコンマ1~2秒程度だが、しかし26秒フラット近辺におけるこの差は、計り知れないほどに大きい。「あの少しずつ離れていく感覚は、とてつもなく大きなものだった」と後に語っている。

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3番手山中もエンジンがかかってきた。なんとかチャンプ篠塚を振り切ろうとスパーク開始。

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予選ではついに26秒2までタイムを伸ばし、決勝でもペースを上げてきた。

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GSXR1000のカウリングが装着されたSV650を駆る二瓶。このマシンでのベストラップも26秒を割り込んでいるようだ。

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6番手争いを繰り広げる2台のRR。今回の予選でもしっかりと26秒台に入れてきた#9中尾が、坂垣内を猛追する。

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レースが半分を過ぎた時点でのトップ、セカンドのディスタンス。

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3番手争いにも変化はない。

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5番手の二瓶はやや遅れ始める。

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6番手の坂垣内、7番手の中尾、そして8番手の中村。

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これに追いつき始めたのは9番手の渡邉。

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さらにその後方に佐々木と続く。




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レース後半に入っても一向にペースを緩める気配のない小椋。26秒を境にするハイペースで後続を引き離していく。

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人見もけして遅いペースではない。むしろ今まででもっとも速いレースペースを維持しているといっていいだろう。それでも小椋が離れていく。

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3位争いも見ごたえ充分だ。これまでなかなか思うように走らせることができずにいたレースベースCBRRのセットアップが徐々に決まってきた篠塚が、急成長中の山中を追い立てていく。

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昨年5月にはスタンダードベースのCBR600RRで25秒台をマークしているだけに、今回のマシンではそれ以上を狙っていきたいところ。


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6位争いの只中にある2台。これを引っ張る坂垣内がアクセルをワイドオープンしていく。

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現在のAクラス常連塾生の中でもっとも梨本塾暦の長い中尾だが、今期は悲願の26秒台を達成、マラソンでもサブ5に成功しているだけに「乗りに乗っている」状態といえるだろう。

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この決勝でもタレることなく坂垣内を見据える。この数年での体力的進化も著しい。

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逆にその後方、8番手の中村はややペースが落ちたか。

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レース後半になってペースアップしてきた渡邉が………

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ついに中村を射程圏内に捕らえる。

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愛機GSXR1000にさらに鞭を入れていく。

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その戦いを後方で見据えるのは佐々木。

「視線は遠くに」


これは梨本塾ならずサーキット走行の永遠のテーマだが、3コーナーにおいて遠い目で彼方を見つめているような視線は完璧………

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と思いきや、どうやらコースサイドすぐ近くにまで入り込んで撮影しているカメラマンへのクレー目(ム)の様子。「いい加減にしろ」という声が聞こえそうなほどの熱視線だ。

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さてトップ小椋はそんな後方の攻防も露知らず快走を続ける。

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ペースが落ちる気配さえなく………

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さらにはボーダータイムが27秒391というハイエンドグループにおいてさえ………

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ラップ遅れを作り出すほど非情なペースを見せ付ける。

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残り4LAPの時点で8位争いさえ射程圏内に捉えた。

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無言の戦いを続けるのは3位争い。

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こちらも驚くほど速いペースで周回を重ねている。しかも山中、篠塚ともに、まったくといっていいほどペースが落ちてこない。梨本塾では50代以下は「若造」扱いされるが、実際その通り強靭な体力の持ち主が多い。世間一般的な年齢概念はここにない。「生涯現役」。

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8位争いのすぐ背後につけた小椋が………

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すぐさまこの2台をパスしていく。

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レースは最終盤へ。

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これになんとか人見もついていきたいところだったが………

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非常に微妙なフォーメイションでの最終ラップ突入………

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8位争い中の中村のインにマシンを滑る込ませようとするが………

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中村は人見の存在に気づかず、人見もインを割り切れなかった。

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結局帝王まで引っかかることなり、万事休す。

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その頃小椋は悠々と3コーナーを回り………

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一度もトップを譲ることなくトップでチェッカーフラッグを受ける。

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その後方には8位争いに混じって人見が2番手でゴール。

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静かだが、非常に迫力のある3位争いを制したのは山中。

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最後までこれに張り付いて見せた篠塚は4位だが復調の兆し。

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レース後、互いの健闘を称えあう。

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ついに26秒切りを達成し、人見、山中、篠塚、そして二瓶までもを背後にしながらブッチギリの優勝を飾った小椋。しかも

「まだまだ伸び代を持った上での素晴らしい走りだった。ゴールはここじゃないはず」

と塾長に言わしめるほど、今後の可能性を感じさせる勝利となった。

挑戦している筑波選手権ST600クラスでの快挙達成、そしてここトミンでも、新たなる伝説を作り上げる存在となるかもしれない。

82

優勝、おめでとう!


つづく。

文中敬称略。ご了承下さい。


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