
大分時間がたってしまったが、昨年震災後にエッジテストを行ったトライアンフデイトナ675Rのインプレを綴っておきたい。実際に走らせ記事を書いたのは2011年4月である。

※東日本大震災直後のテストということもあり、エッジテストで初めてチャリティステッカーを貼り付けてテストを行った。そういう意味でも強い印象が残っている。
2006年にデイトナがデビューしてから、ミドルスーパースポーツシーンは激変した。当時は異形ともいえた675cc3気筒エンジンは、その後見事に世界を席巻してみせた。
これをベースに09年型ではさらなる改良を施す。エンジンのパワーアップはもちろんのこと、車体の軽量化や足廻りの装備充実を図り、それまで以上のパフォーマンスを手に入れる。今回テストした「R」はこの09年モデルをベースにしたプレミアムバージョンでありオーリンズ製サスペンションやブレンボ製ブレーキキャリパー、クイックシフターなどを標準装備している。
トミンモーターランドでのエッジテストにおいて「27秒以上に落ちた事がないマシン」それがデイトナだ。600ccであった04年モデルから09年型まで一貫して26秒台をマーク、同時にこの年にはエッジレコードをマークした。他の機種で、モデル年式問わず一貫して好タイムをマークするマシンはそんなに存在しない。
もちろん今回の「11年型R」ではさらなる更新が期待できた。エンジンスペックも我々のシャーシダイナモ実測値で最高出力は110.9PSを発揮、同トルク6.7kgmと充分パワフルであり、装備重量はクラス最軽量レベルの192kgだった。

スタンダードモデルと比較するとハンドリングは激変している。オーリンズうあブレンボが導入されたことでプレミアム感が出たのは元より、「玄人好み」するセットアップとなった。つまり、それほどイージーではないということでもある。
実際に走らせてみると、乗り出しのフィーリングから従来モデルとはやや異なった印象を受ける。まずサスペンションの初期作動性、及びタイヤの接地感が違う。デイトナならではの『前低後高』という車体姿勢に大きな違いは感じないものの、アクセルオンオフ時のピッチングは少なく、その分だけブレーキング時の安定感は増したものの、それほどプレッシャーを与えないシーンでタイヤの接地感は希薄だ。
ハンドリングはスタンダードモデルと比較すると蛇角の入り方が緩やかになっており、多少なりともニュートラルなものを求めたセットアップが伺えた。要するにこれは「玄人好み」するようなパッケージングである。普遍的な楽しさという部分では従来型に分があるかも知れないが、実践性では明らかに「R」が上回っている。

ペースレスな自由度という意味ではスタンダードが勝り、より効率的な速さを求めるなら「R」が相応しい。但しこれをしっかりと操るにはサスペンションのセットアップ能力はもちろん、相応のスキルレベルも求められる。フォルムに惹かれて手に入れた場合には、それなりの覚悟を必要とすることも忘れずに。
ちなみにこのテスト時のタイムは26秒37と、残念ながらコンマ1秒強ほどエッジレコードには届かなかった。装着タイヤはOEM指定の中でもっともグリップ力の高いディアブロコルサSPであった。

※ この記事はダイジェスト版です。詳細記事は月刊モーターサイクリスト2011年6月号に掲載されています。
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