第10回 梨本塾 オク耐 レポ③ K-RUN-GP Aクラス


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2012 オク耐 K-RUN-GP Aクラス 決勝の模様をお伝えしたい。

グリッドには当初予定の8台ではなく7台がつくことになった。決勝自体を申し出たのは予選3番手を獲得した佐々木FZ750。

「テイスト・オブ・ツクバの前に転んでしまっては元も子もないので………」


危惧されたとおり決勝はフルウェットコンディション、大事な本番レースを前にして賢明な判断かもしれない。

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グリーンフラッグとともに、各車一斉にスタート。勢いよく飛び出したのは予選でも今期ベストをマークと好調な篠塚。

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その篠塚が1コーナーにトップで進入する。すぐ背後に人見。

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さらにその後方に山中、坂垣内、生駒、中尾、渡邉と続く。

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直後の2コーナー、この二年間数々の名バトルを繰り広げてきた梨本塾の双頭竜がいきなり激突。

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午前フルウェットでも30秒台をマークした人見が果敢にアタックをしかけていく。しかし篠塚もこれを軽くいなしてトップをキープ。

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「ハードウェットコンディションであることから、レースは25周から20周へ減算」

スタート前、レースディレクションからはこう発表があった。しかし周回数は短いが、ラップペースは通常ドライより4秒以上も伸びるため、所要時間にはそれほど差がない。長い神経戦が始まった。

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3コーナーにトップで入る篠塚、その直後に人見。

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人見は毎コーナーのようにしかけていく。

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その後方には山中、そして坂垣内。

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さらにその後方に生駒、中尾。

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中尾が思わず止まりきれずにおっとっと。その後ろは渡邉だ。

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順位は動かず迎えた2周目ホームストレート。

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やはりここでも人見が仕掛けていく。

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狙い済ましたように1コーナーブレーキングで篠塚のインに飛び込む。

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非常に難しいコンディションの中でのハードブレーキングだったが………

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これでトップを奪取。

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篠塚は2番手へ。

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その後方では順位変動ナシ。

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グングンペースを上げる人見。3周目に入る頃には後続との差を一気に1秒以上広げて帰ってきた。

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5月以来5ヶ月ぶりの参加となったが、むしろ走りには鋭さが増している。日ごろの練習は欠かしていないようだ。快調なペースでアドバンテージを広げていく。

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一方2番手に落ちた篠塚は、この人見のスタートダッシュに当初ついていけなかったが………。

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同じく人見に気圧されるように山中も離されてしまう。

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4番手は坂垣内。

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写真でも分かるように、人見はディアブロSC1の前後セットというドライタイヤを装着。それでも31秒前後のペースで周回を重ねているから驚きだ。

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2番手の篠塚、

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3番手の山中、

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そして4番手の坂垣内まで全選手がディアブロコルサのSC1、及びSC2の組み合わせである。写真ではもうひとつ分かりにくいが、路面は飛沫が上がらない程度の、フルウェット状態だ。

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生駒を先頭にした5位争い。

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序盤ペースの上がらなかった山中だが、数周するとコツをつかんだかのように一気に篠塚との差を詰めてきた。

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逆に篠塚は山中から追い立てられる格好だ。

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今年これまで、K-RUN-GPで一度も雨が降っていなかったというのは大きい。ならば、このウェットの決勝で少しでも感触をつかみながらペースアップしていく他ない。

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さて5位争いには動きが出てきた。

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山中同様、やはり数周を過ぎてから雨の走り方を思い出したかのように渡邉がペースアップ。

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中尾、生駒の2台を一気に抜き差って5番手へと躍り出る。ちゃんと雨用のつなぎに着替えている辺りも若さに似合わず冷静な証だろう。

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周回を重ねるごとに着実に前との差を詰めていき………

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4番手の坂垣内の背後へ。

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いつものドライであればそれほど優位とはいえぬGSXR1000だが、ウェットではその乗りやすさを最大限生かして………

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前後連動ABS仕様のCBR600RRをブレーキングでノックアウト。

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これで4番手へと浮上した。

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あまりペースの上がらない坂垣内の後方には生駒も忍び寄る。

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さらにその後方、中尾の背後には………

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早くもトップの人見が迫った。

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レースはまだ半分を過ぎた辺りだが、それだけ人見のペースが速かったということだろう。

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しかし、実は篠塚のペースも上がってきていた。先ほど山中に迫られた辺りから周回ごとにタイムを詰めており、人見とのディスタンスはおよそ2秒前後で安定していた。ほとんど同じペースで回っている。

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その後方、やや単独走となったのは山中。





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レース後半に入ってもペースを緩めない人見。恐らくこの3コーナーでは後方篠塚が視界に入るのだろう、ハイサイド寸前のスライドを誘発する。

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一方篠塚はその人見を追いかけ揺さぶりを入れる。

「少しでも視界の隅に入ること」

後ろを走っているとき、相手に対してこれほど心理的に有効なものはない。

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前周の人見同様、7位中尾の背後に迫り………

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ホームストレートで一気に加速、

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1コーナーでパス。残りは8周だ。

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さらに人見は続いている5位争い、坂垣内と生駒の後方に迫る。バッチリカメラ目線の坂垣内だが、実際にはそれほど余裕はなさそうだ。

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この集団の前には4位の渡邉がいる。

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ここでもうまく前に出るものと思われたが………

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それぞれのラインが交錯し、人見は生駒のみをパス。ここで一気に後方から篠塚が迫った。

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帝王コーナー進入で人見にパスされたことで、坂垣内がトップ集団が迫ったことに気づく。

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しかしレースコントロールはブルーフラッグ振動させていないため、厳密には後方に進路を譲る必要はなかった。開いたインに思わず生駒が鼻先を差し込むが………。

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晴れて単独首位に立った人見と………

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思わぬフォーメイションの乱れから前に出ることが出来なかった篠塚は、5位争いの中に埋もれてしまう。

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それほど多くの周回が残されていない中で………

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それでもなんとかトップ人見を追いかけていく。

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さらにそこから3秒ほど遅れて3位の山中。

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トップ人見は手綱を緩めることなくペースを保つ。

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そして4位の渡邉の背後にまで迫った。

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スタートで最後尾まで落ちながらも3台を抜き4位に浮上した渡邉だったが………

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人見が完全にロックオン。

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ホームストレートでパス。

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レース最終版、篠塚も負けていない。

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このレースの中で自身のベストタイムを更新しながら、人見との差を僅かに詰めていく。

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まさに双頭竜らしい、ハイレベルな神経戦である。

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なんとかここに割り込みたい3位の山中だったが………

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ポジション的にはまだ5位争いの後方にいる。

77-1

この2台をバックマーカー処理できるか。

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「雨は得意なほうではない」

という中尾だが、ただでさえ神経質なレースベース車両を、ドライタイヤで雨の中しっかりと走らせている。

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トップ人見はいよいよ残り一周。

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幾度かハイサイドしかけたが、二周目の1コーナーでトップを奪ってから、誰にもその座を譲ることなく最後まで力走を続けた。

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オク耐最後のコーナー進入、

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見事に篠塚を振り切り、最終コーナーを立ち上がって、

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チェッカー。今シーズン初勝利を飾った。

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そして2位には僅かに及ばず篠塚。

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一周遅れの4位で渡邉。

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同じく5位、6位に坂垣内と生駒。その後方にトップと同一周回、3位の山中。

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7位に中尾の順でゴール。

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レース終了後、互いを称えあう人見と篠塚。二人の活躍が梨本塾のこの2シーズンを牽引してきたといっていいだろう。

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厳しいコンディションながらも、Aクラスは一台も転倒なく20周のレースを終えた。

「いやあ篠塚さんが後ろに来てると思って最後まで気が抜けませんでした」

とはゴール直後のコメント。今年初勝利とともに、この後素晴らしい逸品を手にすることになるとは、このときまだ知らない。果たして人見が手に入れたものとは………?



つづく。

文中敬称略。ご了承下さい。




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