2014年06月

2014年06月21日

着丈が合わない

たっくんは年長さんだ。
いつも半袖シャツを着て、公園にやってくる。




シャツだからボタンがある。
5歳の子に、ボタン付きのシャツを着せるのは
たっくんのお母さんの方針らしい。


実際6月も後半になると、たっくんも暑いらしく
上着のシャツを脱いでしまって、Tシャツというのか
タンクトップというのか、下着になって、キャーキャー遊ぶ。

たっくんはデブなのだ。
だから暑がりだ。




周辺のお母さんは、そういった事情を承知していて
地面に放り投げられた、彼の服を保護する。

すると生地が立派なのだ。
綿であっても、布地がしっかりしていて、
この時期、麻なんかもあるんだけど、ガキに麻?
そして、染色が絶妙に和風でかっこいい。

こんな服、売ってるんだろうか?








だから『たっくんのシャツ』は近所のママ友の間で
ちょっとうわさに、いや、かなりうわさになった。

彼が帰る時、当然それを保護している近所のママが
『あ、ほら、たっくん。シャツ。』と声をかける。




そうするとたっくんは、もたもたもたもたもたもたもた、と
ボタンをかけるんだけど、必ず左右の段を間違える。

公園に来るときには、そうか1回家に帰ってるんだよな。
それで、お母さんのチェックを受けるのだろう。
左右のボタンは完璧だ。

ところが公園で燃焼しつくした彼は
もたもたもたもた、見ているこちらがいらいらするスピードで
ボタンを掛け、それは、左右どちらかが間違っている。

暑がりのたっくんはシャツを着ても裾を仕舞わない。
だから、彼のシャツの前身ごろは常に着丈が違っている。
右だったりすることが多いかなあ、でも左もある。




こんなだったら、Tシャツのほうが楽じゃないか?
いや、この子だったら前後を間違えるかな?

指先を使うと脳の成長にいい、とか
そんな話を読んだ記憶がある。
痴呆老人にはあえてボタンのある服を着させるのだ、とも
聞いたことがある。でもそんなことなの?
そうはいっても、毎日毎日もたもたもたもた、と。

そして、着丈が違う。










『まあ、そんな変わった家もあるよね。』というのが、
公園にいるママ友の共通認識だった。

この、たっくんのママ、というのが公園にこないんだ。
子供だけ遊ばせても構わないし
別に、毎日来て仁義を切れ、とかいうつもりは、
うーん、たぶんないと思うけど、月に一度くらいしか来ない。









その『たっくんママ』が来た。

っていうかあたしが会うのは1年ぶりくらいじゃないか?
こんな大柄な人だっけ。

『いつもお世話になります。』と如才なく、
周辺に頭を下げて挨拶する。







あたしの横に座ったので、
『あの、たっくんの服、いい布地と色ですよね。』というと。

『ああ、あれ。手作りなのよ。』と言ったから
周辺のママ友の動きが停まった。

知り合いに草木染めを趣味にしている人がいるので、
型紙に合わせて裁った布を持ちこんで染めてもらうのだという。
洋裁が得意な妹さんが縫製をやる。

『でも、ボタンつけだけは、あたしがやるの。
いいボタンなのよ。あいつがいまつけてるのは
シャツの紫陽花色に合わせたパールホワイトのウィンドシェル。』

『…へえ。』

『どうせ奴のことだから毎週2,3個ちぎって落としてくるから
高いのは使えないけどね。』

『どうしてボタンなんですか?』

というと、不思議そうな顔をして

『…だって…』







『ボタンがなかったら、脱がせるとき楽しくないじゃん。』







静かなどよめきが走った。

それは、全く同意のしるしだったので
いままで『変わり者』扱いだったたっくんママは
その後PTAでもママ友の世界でも
篤い尊敬を受けることになった。













なるほど。




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natsu_0117 at 05:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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